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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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941.  インビジブル(2000)
透明人間になったらエロに走るって、のび太くんと同じ発想なわけです。1億ドルバジェットの大作でこの内容、なんとも素っ頓狂な映画だなぁと思ったのですが、よくよく考えてみれば理に適っています。ただ人間が透明になっただけですからね。社会に影響を与えるような壮大な陰謀なんて実行できるわけもなく、覗きぐらいしかその能力を発揮できる場はないのです。透明人間という設定を徹底的に煮詰めると、必然的に本作の内容になったのだと思います。。。この企画にバーホーベン監督という人事はまさに適材適所で、エロとバイオレンスの描写は実に手慣れたものでした。本作はエロの場面が比較的少ないのですが、そんな数少ないエロ場面でも強烈な印象を残してみせるのはさすがバーホーベン。また、VFXを操らせるとハリウッドで一番の仕事をしてみせる男バーホーベン、ここでも相変わらずの腕前を見せつけます。透明になった科学者と透明になってない科学者が地下の研究施設で戦うだけというなんとも地味な内容の本作において、最大の見せ場と言えば透明化プロセスなのですが、ここでのビジュアルのインパクトはかなり強烈です。VFXの操り方や見せ方を完璧に心得ている監督でなければ、このインパクトは出せませんでした。本作において、バーホーベンはかなり良い仕事をしていると思います。。。問題だったのは脚本で、「Hollow Man(空っぽの男)」のタイトルに負けず劣らず中身がない。透明人間というネタでド派手な物語を作るのは難しいとは言え、ここまで面白みのない脚本はちょっと問題だと思います。登場人物は一様に魅力に欠き、「次はどうなるんだ?」という盛り上がりもない。バーホーベンが監督を引き受けていなければ、目も当てられない作品になったと思います。
[映画館(字幕)] 5点(2010-05-30 20:46:31)
942.  シャフト(2000)
サミュエルがかっこよすぎます。これまたかっこいい音楽に続いてのシャフト登場の時点で「このリメイクは成功したな」と思いました。しかし、肝心の話があまりにつまらなくて倒れそうになりました。。。オリジナルと同じ空気を出すために大作化を意図的に避けていることはわかるのですが、サミュエルの敵がアホぼんと街のチンピラでは、戦う前に勝負がついてるようなもの。クリスチャン・ベール演じるアホぼんも、ジェフリー・ライト演じるチンピラも単独では良いキャラだし、俳優もよく頑張っているのですが、シャフトの敵とするとどちらも役不足。シャフトは大した苦労もせず敵を追い詰め、あっさりと勝ってしまいます。このお手軽さ・無敵さは、もはやセガール映画の域に達しています。アクション映画なら、もうちょっと激しい攻防があるべきでしょう。せっかくシャフトが良かったのに、本作の失敗で続編が製作されなかったことは残念です。
[DVD(吹替)] 4点(2010-05-30 17:19:24)
943.  容疑者Xの献身
「HERO」は酷評し、「踊る大捜査線THE MOVIE」はレビューする気にもなれないほど大嫌いで、フジテレビ製作の映画には不信感しか持っていないのですが、本作の出来の良さには完全にやられました。謎の提示やネタばらしのタイミングが絶妙でサスペンス映画としてレベルの高い脚本だし、淡々としながらも激情を孕んだドラマには心を千切られるような思いがします。この映画の脚本は、日本映画界にありがちな、ただ原作を映画版に手直しただけの代物とは訳が違います。「映画として成立させるにはどうすればいいのか?」という工夫が見て取れるのです。原作は石神の心理描写が克明であり、それがサスペンスやドラマを大いに盛り上げていたのですが、一方映画版では無口な石神の感情をどう表現するかが大きな問題でした。ブツブツと独り言を言わせるのはヘンだし、かと言ってすべてナレーションで説明してしまうわけにもいかない。そこで映画版は、ガリレオこと湯川との対比によって石神が抱える人生への深い絶望と「献身」の重みを表現し、さらに石神と同類である湯川に彼の感情を代弁させることで、この問題を乗り切りました。ここでポイントだったのが堤真一というキャスティングで、原作ではハゲで小太りの醜男だった石神をいわゆるイケメンの部類に入る堤に演じさせたことは大きな改変でした。しかし、原作者が佐野史郎をイメージしていた湯川を福山雅治が演じたことでその人物像が変化したことに合わせ、石神も原作に準拠するのではなく、映像版「ガリレオ」に合わせた形に変更する必要がありました。湯川が石神の代弁者となるためには彼と紙一重の人物像であることが重要であり、人を惹き付ける魅力が偶然備わっていた湯川は幸福な人生を送り、根は同じであっても魅力に欠けた石神は日陰の人生を歩んでいる(冒頭、福山雅治が「愛など下らん」とキザに言う場面は、実はかなり重要)、そのためには堤である必要があったのです。さらに、蛇足と言われている雪山の場面にも意味が感じられます。二人が顔を合わせてホンネを語りあう特殊なシチュエーションとして雪山という舞台は必然性があるし、石神は真相に気付いている湯川を殺すつもりで雪山に誘い出したにも関わらず彼の命を助け、湯川は自分が殺されるかもしれないことを知りながらこの誘いに乗った。性根でつながっている二人の特殊な関係性を描くために、この場面は必要だったと思います。
[地上波(邦画)] 9点(2010-05-28 21:38:43)
944.  暗殺者
ウォシャウスキー兄弟がオリジナルを作り、それをブライアン・ヘルゲランドが手直ししたという、今となっては驚くようなメンバーによって書かれた脚本はかなり魅力的です。ただドンパチ撃ち合うだけのアクションではなく、タクシー車内の防弾ガラスを挟んでの銃撃戦や、部屋にある日用品を利用したマンション室内での銃撃戦など、すべての見せ場には他の映画にはない一工夫がなされており、なかなか丁寧に考えられています。暗殺者という泥臭そうな仕事でありながら、当時まだ珍しかったEメールによってその指示がなされるというアイデアはウォシャウスキー兄弟ならではですが、いくつもの修羅場をくぐりぬけてきたベテラン暗殺者が、パソコンの前でぶつくさ文句言いながら愛想のいい返信をする辺りの捻り方もなかなか面白いと思いました。彼と組むこととなる女性ハッカーのキャラクターもよく出来ています。隣人の生活を覗き見ることを趣味としており、唯一の生き甲斐はネコを溺愛することというかなり危ない人なのですが、そんなエキセントリックな彼女が魅力的に描けているというギリギリのバランス感覚は、やはり脚本家がうまかったおかげでしょう。。。残念だったのは、新人脚本家達によるエッジの立った脚本を任されたベテラン監督の腕前が、あまりに安定しすぎていたことでしょうか。脚本のとんがった部分のほとんどが監督の安定した手腕のために丸く削られてしまい、人物像の作り込みや設定の面白さがほとんど伝わってきません。中年のベテラン暗殺者と若い女性ハッカーという、特殊な専門能力は持つものの社会性ゼロの二人が、お互いに弱みを補完しあいながら危機を乗り切ることが物語の骨子であったはずなのに、二人の人間的な弱みの描写が決定的に欠けているため、よくあるバディ映画にしか見えません。二人とも、暗殺者やハッカーであることを除けば常識的な普通の人にしか見えないのです。二人の病的な部分や、人間的な衝突をもっと描くべきでした(ブライアン・ヘルゲランドが参加している以上、オリジナルの脚本にはそのような描写があったはず)。そこに来て、アントニオ・バンデラス演じる明らかに危ない若手暗殺者のキャラだけが異常に立っており、この辺りのバランスの悪さも映画の出来を残念なものにしています。
[DVD(字幕)] 5点(2010-05-26 22:19:41)
945.  エニイ・ギブン・サンデー
オリバー・ストーン監督とあってはアメフト界の内幕を暴くような作品になるのかと思いきや、なんと直球勝負のスポ根映画でした(DVDジャケットに書いてあった「大逆転の謀略!!」なんてものは一切出てきません)。21世紀に入ってからはすっかり腕前の鈍った感のあるストーンですが、本作では圧倒的な演出力を披露。そのビジュアルはアメフトの迫力を見事に表現しているし、2時間31分の長丁場にも関わらず中弛みなしの熱い熱いドラマは見ごたえ十分です。私はアメフトのルールにそれほど詳しくないのですが、そんな私でも十分に楽しめる仕上がりになっているのですから、余程よく出来た映画なのでしょう。選手達の一挙手一投足がスローモーションで映し出され、「この一撃で勝つ!」というみんなの思いがボールに託されるラスト10秒はスポーツ映画の定番ですが、そんなお決まりのクライマックスをこの映画は血がたぎるような名場面にしてみせます。この辺りの演出の巧さは本当に突出しています。キャスティングも見事なもので、アル・パチーノやジェームズ・ウッズといった定評あるベテランをいとも簡単に使いこなしてみせる一方で、映画への出演経験のほとんどなかったジェイミー・フォックスを物語の中心に据え、10年以上キャリアが低迷し忘れ去られていたデニス・クェイドを掘り起こし、当時はお人形さん扱いだったキャメロン・ディアスに演技力が要求される役を任せています。キャメロン・ディアスについては、すべての出演作中本作がもっとも彼女を美人に撮影しているし、同時に「こんなに演技力あったの?」と驚かされました。俳優の魅力や才能を引き出すことも監督の重要な仕事だとすれば、本作でのオリバー・ストーンの仕事は百点満点だったと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2010-05-26 21:40:15)
946.  氷の微笑 《ネタバレ》 
中学時代に見た時にはエロしか印象に残らず、どんな話だったかはまるで覚えていなかったのですが、あらためて見るとかなり面白い映画でした。史上最高額で落札されたという脚本の出来はさすがのもので、前半は完全にノーマークだったジーン・トリプルホーンが後半にキーパーソンとなってくるという構成は、サスペンス映画としてなかなか巧いのではないでしょうか。キャサリン・トラメルという強烈な人物はよく作り込まれているし、これに対するニック・カラン刑事も一筋縄ではいかない人物像で、魅力的なキャラクターに溢れています。さらに、この脚本を引き受けたのがポール・バーホーベンであったことも幸運でした。この映画の要は言うまでもなくキャサリン・トラメルですが、このエキセントリックな人物を描き切るのは並みの監督では難しいところだと思います。「訳の分からん魅力を放つ悪人」を描ける監督というのはそう多くありません。そこにきて、バーホーベンは当時無名に等しかったシャロン・ストーンを見つけ出し、キャサリンという人物を完全に作り上げてしまったのだから驚異的な仕事をしたと言えます。シャロン・ストーンの後の出演作を見ても彼女の強烈な個性を活かせている作品は本作が唯一であり、バーホーベンの監督としてのカンや手腕は大いに評価すべきでしょう。さらに、その相手役に演技の出来る大スター、マイケル・ダグラスを持ってくるという卒のないキャスティングも絶妙です。ストーリーテリングも巧いもので、前半でキャサリンの怪しい魅力をじっくりと見せつつ、後半謎解きが急展開を迎える辺りからはアクション映画並みのテンションを作ってくるという緩急の付け方は本当に手慣れています。エロ以外にも見るべきところの多い作品だと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2010-05-25 20:52:30)
947.  マイアミ・バイス
テレビシリーズは未見なのですが、この映画版は刑事アクションのひとつの究極形とも言える仕上がりとなっています。フェラーリを乗り回し、「ちょっと飲みに行く」と言って自前の高速艇でキューバのバーまで行き、プロのパイロット以上の腕前で飛行機を操縦するというありえない刑事達が、海外にまで出張して大活躍という無茶苦茶な話なのですが、これを徹底的にカッコよく、バカっぽくなく作ってみせています。「バッド・ボーイズ」や「リーサル・ウェポン」の下地を持ちながら、これを「ヒート」や「コラテラル」のような印象の作品に変えてしまっており、荒唐無稽な刑事アクションを極限まで煮詰めた結果が本作だと言えます。プロの男達を描かせればいつもながらのマイケル・マン節全開で、少ない言葉で状況を理解し、グダグダ悩まず即座に物事を決断するカッコいい男達で溢れています。主演のコリン・ファレル、ジェイミー・フォックスはもちろんのこと(コリンはやたら太っている場面がいくつかあったのが気になりましたが)、敵キャラも状況判断に優れていて、生きるか死ぬかの世界で勝ち抜いてきた男達にきちんと見えています。さらには、コリンとジェイミーの上司にあたる小林亜星みたいな太ったおっさんまでがカッコいいのですから、相変わらずマイケル・マンはプロの男を描かせると最高の仕事をします。銃火器へのこだわり、銃撃シーンでのリアリティの追求も相変わらずで、麻薬取引の現場では後方にスナイパーを待機させておき、いざ撃ち合いになった場合には圧倒的優位をとるという犯罪組織側の戦略はなかなか合理的。さらに、スナイパーがバカでかい口径の銃を撃ち込むと、弾が当たった人間はバラバラに砕け散るという現実的な描写もあり、過去の作品以上に銃の描写にはこだわりが見られます。おまけに俳優達は全員銃の構え方が様になっていて、わかってる監督が撮るとアクションはここまで引き締まるものかと感心します。脚本の練り込み方も良く、テレビシリーズと同様の構成にするためかアクションをラストの銃撃戦のみに絞っていて映画としては見せ場に欠けるのですが、見せ場を分散させなかったおかげで物語がラストの銃撃戦に向けて一直線に進んでおり、チームメンバーが誘拐されたところから一気に話のテンションが上がっていく辺りの高揚感はなかなかのものでした。ラストに至る物語もよく作り込んであって退屈させません。
[DVD(吹替)] 8点(2010-03-12 20:37:12)
948.  ストレンジ・デイズ/1999年12月31日 《ネタバレ》 
今年の賞レースを盛り上げているジェームズ・キャメロンとキャスリン・ビグローが夫婦の頃に製作した作品ですが、このネタで145分はちょっと長すぎ。もっとコンパクトにまとめるべきでした。トム・サイズモアが犯人でしたという最後のドンデンなどはまったくの不要で、ドンデンに対する驚きよりも、「そんなバカな」という落胆が先に来ました。あの一歩手前で止めておけば、物語にムリは少なくなったし、上映時間もよりスッキリしたはずです。また、元警官とは思えないほど弱々しかったレイフ・ファインズがクライマックスで突然強くなったり、殺人の揉み消しをしようと主人公達を追ってるはずの警官が群衆に向けて発砲をはじめたりと、それまで丁寧に作り上げてきた物語がクライマックスで一気に引っ繰り返されていく辺りも理解に苦しみました。そして本作最大の問題はジュリエット・ルイス演じるフェイスのキャラクターで、彼女の行動原理がまったく理解不能。キャメロンもビグローもこのキャラクターに感情移入して作っていないのが丸出しで、かなり適当な描写がなされています。救いはこの役柄を引き受けたのがジュリエット・ルイスだったことで、カリスマ女優だった彼女の魅力と演技力で何とか持ち堪えています。「ナチュラル・ボーン・キラーズ」ですらヌードを披露しなかった彼女が本作では脱ぎまくって大熱演。ありがたい熱演ではありますが、同時にもったいない熱演でした。脱ぎどころを完全に間違えています。。。と、アラの目立つ作品なのですが、才能あるクリエイターの作品だけあって良い部分も多くあります。ありがちな未来像ながら社会・風俗はよく作り込まれているし、ビグローのアクション演出は相変わらずキレと美しさがあります。アンジェラ・バセットがいよいよ追い込まれるクライマックスのアクションなどはキャメロンらしい興奮の展開を見せてくれます。本来、ポテンシャルはかなり高い作品なのです。だからこそ、前述の欠点が悔やまれるところです。
[DVD(吹替)] 6点(2010-02-21 19:57:42)
949.  ペイバック
身震いするほどかっこいいイントロにはじまって、すべてを失ったヤクザが大暴れをはじめる前半部分は最高。ポーターを裏切った後悔からヤク中になった妻は、死んだと思っていた夫が生きて帰ってきたショックから致死量のクスリをやって命を落とします。そして、妻の死体と一晩添い寝したポーターは復讐を決意。「俺はもう生きてる必要がないんだ」と言わんばかりに、どんなヤバイ連中を相手にしてもまったくひるまず、ただひたすら復讐のために突き進む。これぞ復讐映画の醍醐味です。これまで悪人役をほとんどやってこなかったメル・ギブソンが、恐ろしいほどよくハマっています。そして、仇役のグレッグ・ヘンリーはそれ以上のハマり方で、卑怯で変態で恐ろしくむかつく小物ヤクザを完璧に熱演。画面に映るだけで心底イラっとくる素晴らしい悪役ぶりは、仮に作品自体が評価されていればオスカー候補にでもなりえたのではと思うほどです。しかし、グレッグ・ヘンリーを殺して以降は、作品がガラっと変わってしまいます。映画の軸が復讐からロマンスへと移り、前半の殺伐とした空気が突然なくなります。ポーターなどまるで別人で、「リーサル・ウェポン」のマーティン・リッグスのような人格になってしまいます。アクションも突如として派手になり、爆破あり、銃撃ありの普通のアクション映画に。当時流行っていた二丁拳銃まで披露するサービスぶりで、もはや同一の映画とは思えないほど。これは製作時のゴタゴタが原因で、ブライアン・ヘルゲランドの脚本が気に入らなかったメル・ギブソンが「マッドマックス2」のテリー・ヘイズを呼び寄せて脚本を書き変え、実質的に監督権も奪ってしまったため、前半と後半でまったく別の映画になってしまったのです。そのために発生したのが「7万ドル」問題で、どれだけ金額を吊り上げられても7万ドルに固執するポーターがバカにしか見えないという問題は、後半の方向転換により発生しました。前半における「7万ドル」はあくまで復讐の口実のような意味合いで使われていたのに対し(だから金額は重要ではなかった)、復讐の意味合いが薄まった後半においても7万ドルという数字にこだわると、妙な違和感が残ったのです。。。前半の殺伐とした復讐劇のまま続けていればバイオレンスの佳作にはなったはずなのに、どうして後半を変えてしまったのか、不思議で仕方ありません。
[DVD(吹替)] 7点(2010-02-19 22:29:55)
950.  レインメーカー
豪華メンバーの割にほぼ忘れ去られた感のある本作ですが、私は「ゴッドファーザー」や「地獄の黙示録」よりも好きです。本作のような小さめの映画をきっちり面白く作ってみせることは、重厚な大作以上にコッポラの映画監督としての腕前を表しているように思います。DVに白血病とかなり重いテーマを扱う一方で、新米弁護士の爽やかな成長物語や恋愛要素をぶち込み、かつ両者を水と油にしていないのですから、並みの監督の仕事ではありません。大岡越前か、遠山の金さんかというダニー・グローバー判事の登場シーンや、ジョン・ボイト弁護士からの嫌がらせ、有力な証言者を捕まえてきたマット・デイモンの反撃等々、娯楽的な盛り上げ方も手慣れたもので、最後まできっちり楽しませてくれます。特に、困り果てたところでミッキー・ロークから助けが入る件は最高でした。クライマックス直前に意外な支援が入ることは娯楽映画の基本中の基本なのですが、こうした基本をきっちり見せてくれる映画って実はあまり多くありません。また適材適所のキャスティングもバッチリ決まっており、役者選びのセンスもさすがです。若手でもっとも注目されていたマット・デイモンとクレア・デーンズをカップルにする一方で、ミッキー・ロークやロイ・シャイダーなど「あの人は今」状態の俳優を引っ張り出して一緒に演技させる。枯れたとはいえ、かつてはハリウッドの頂点にいた彼らの存在感は抜群で、作品の重要なアクセントになっています。さらにダニー・デビート、ジョン・ボイト、ダニー・グローバーといった安定した俳優で彼らをグルっと取り囲み、鉄壁の布陣を作り上げています。ここまで見事に俳優を使いこなしている映画って他にはありません。まさに教科書のような映画です。
[DVD(吹替)] 8点(2010-02-14 20:38:03)(良:1票)
951.  ザ・フライ2/二世誕生
それほどつまらなくはないのですが、圧倒的な完成度だった「1」と比較するとあらゆる面で完全に劣っており、いわゆる蛇足の部類に入る続編です。視覚効果マンに監督を任せたのが最大のミスで、クローネンバーグのような天才監督の後を継ぐには荷が重すぎました。「1」は特殊メイクの映画だと思われがちですが、実際にはクローネンバーグの才能があの作品の大部分を支えており、その柱を失ってしまったのはかなりの打撃です。「1」と同様の技術、そして3倍もの予算を駆使したにも関わらずビジュアル的な衝撃度はかなり下がっており、気持ち悪いが怖くはない、生涯忘れられないほどのショックも受けない、監督の演出力の差がはっきりと出てしまっています。脚本も平凡となっています。モンスター映画の外見をとりつつ実は切ない愛情の物語だった「1」に対して、本作は勧善懲悪の物語となっているため、ただのモンスター映画に退化したという印象です。モンスター映画にするならするで、エイリアン2のような直球勝負の大アクション映画に転換するという道もあったのですが、そこまでも振り切れていないために本当に中途半端。また「1」は科学的にも練り上げられていたのですが、本作では「悪者にハエ遺伝子を擦り付ければ、主人公は人間に戻ることができる」というハッピーエンドのための意味不明な設定が付け加わったため、話全体が妙に安っぽくなってしまっています。
[DVD(字幕)] 5点(2010-02-13 20:24:42)
952.  ダ・ヴィンチ・コード
2時間半、ひたすら退屈でした。原作の要約に終始するだけで話がまったく面白くなく、映画ならではの工夫や見せ場を入れているわけでもなく、わざわざ大金かけて映画化する必要があったのだろうかという印象です。せっかく映画というメディアを使いながら、謎のほとんどをイアン・マッケランに喋らせて終わりでは芸がなさすぎます。また、銃で撃たれた館長がその場で素っ裸になり、大の字に寝転んで息絶えるというダイイングメッセージの残し方は、映像化すると驚くほどマヌケです。このような文章と映像のギャップを埋める作業が脚本や監督に求められる機能のひとつなのですが、本作ではそれがほとんど機能していません。ロン・ハワードは仕事をしていたんでしょうか?ハワードは常に堅実な仕事をする人だけに、ここまで雑な仕事には驚きました。。。そもそも長大な原作を一本の映画にまとめることが不可能だったとも言えます。駆け足のダイジェストになってしまった結果、原作未読者にとっては情報量が多すぎて話を追い切れないし、既読者にとっては映画版ならではの見せ場に欠けた、ただのおさらいにしかなっていない。結局誰も喜ばない中途半端な出来になっています。「ダ・ヴィンチ・コード」の映像化に手を挙げたのは映画界のみならず、「24」の原案にするという意見もあったそうなのですが、2時間半にムリに詰め込むよりも、「24」にしてしまった方が良かったと思います。主人公がラングドン教授からジャック・バウアーに代わった「ダ・ヴィンチ・コード」って、それはそれで面白そうだし。
[DVD(吹替)] 2点(2010-02-08 00:14:52)(良:1票)
953.  今そこにある危機
脚本が弱かった「パトリオット・ゲーム」の反省からか、スティーブン・ザイリアンとジョン・ミリアスというトップクラスの脚本家を二人も配置したおかげで、脚本の出来は格段に上がっています。登場人物が多く、複雑な話がいくつも同時進行で展開されるというややこしい物語ながら、驚くほど綺麗にまとまっています。俳優陣も細かい役に至るまで全員よくハマっており、キャスティング面も上々。問題なのは監督の演出力が追い付いていないことで、脚本を追いかけることにいっぱいいっぱいで、色気やこだわりのない作りとなっています。特にクライマックスのアクションは酷いもので、何の緊張感もなくダラダラと撃ち合い、殴り合い、本当に退屈でした。52歳のハリソン・フォードが体を張ったアクションを披露しているものの、あまりに監督がダメダメなので頑張り損になっています。「パトリオット・ゲーム」のアクションも酷いものでしたが、その反省がまったくなされていません。
[DVD(字幕)] 5点(2010-02-07 23:35:16)
954.  プルーフ・オブ・ライフ
映画の展開そのままに、撮影現場でラッセル・クロウとメグ・ライアンが本当に不倫をしてしまい、ゴシップの種にはなったものの映画としてまともに鑑賞されなかった気の毒な作品ですが、実はかなりよく出来ています。トニー・ギルロイの脚本は相変わらずキレがよく、プロの男を描かせるとこの人は最高の仕事をします。要件をビシっと述べるソーンの話し方は本当にかっこよく、現場を知り尽くしたプロという設定に負けないキャラクターがちゃんと構築されています。このソーン役にクロウを配置できたことは幸運で、スーツを着て粘り強く交渉する知的な姿も、迷彩服を着て敵地に乗り込む元特殊部隊としての姿も両方完璧にハマっており、「この人に任せておけば安心だ」という安心感も漂わせています。筋肉隆々でありながら知性を感じさせ、おまけにラブシーンをやれる色気を持った役者はハリウッドでもかなり希少であり、クロウでなければ演じられなかったキャラクターだったと思います。彼に対するメグ・ライアンもなかなかのものでした。本作以降は急激に衰えるものの、少なくとも2000年当時はハリウッドのトップにいた女優さんだけあって、華があるし演技も悪くありません。「♪恋する女はキレイさ~」とヒロミ郷も歌ってましたが、全出演作中もっとも美しく撮られているのが本作でもあります。なぜか常にノーブラでしたが、あれには何か理由でもあったんでしょうか?胸の垂れ具合は正直さみしかったです。。。作品の評価に戻りますが、監督も良い仕事をしています。ヘタに見せ場を入れず交渉の緊迫感だけで上映時間の大部分を引っ張っているのは監督の手腕によるところが大きいし、なんといってもラストのアクションがあまりに見事で驚いてしまいました。この監督さんはアクションを撮るイメージがなかったのですが、正直そこいらのアクション監督よりも腕前は遥かに上です。連絡を常にとりながら機動的に動く特殊部隊のアクションのかっこいいこと!ミッション物のアクションでは、本作のラストを超える映画を見たことがありません。ここでもクロウは大活躍で、銃を持った姿が本当に様になっています。彼が銃を撃つ映画は本作以外では「クィック&デッド」と「アメリカン・ギャングスター」くらいしかありませんが、銃がかなり似合う俳優さんなので、もっとアクションをやればいいのにと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2010-02-07 21:04:12)
955.  パトリオット・ゲーム
序盤は素晴らしかったんですよ。余計な説明をテキパキと片付け、一気に襲撃へと持って行くテンポの良さ。主演がアレック・ボールドウィンからハリソン・フォードにグレードアップしたことで画面に華が出たし、初の大作に抜擢されたショーン・ビーンも、登場した瞬間に悪のカリスマとしての魅力をムンムンに漂わせます。しかし、本筋に入ると物語は一気に失速し、最後までダメダメなままでした。最大の問題は、テロリストの行動や警察の対応の描写があまりに雑だったことです。ロイヤル・ファミリーの一員を狙い、殺す寸前までいった重要犯罪人がいとも簡単に脱走してしまうわ、楽々と国外へ脱出し、平然とアメリカに入国できてしまうわというお手軽さ。そして、元CIAにして海軍兵学校の教官にして、ロイヤルファミリーを救った英雄として新聞の一面を飾った重要人物であるライアンに難なく接近してしまえる身の軽さ。ジャック・ライアンシリーズに求められることは知的さの延長にあるアクションなのですが、肝心の論理の部分があまりに雑すぎます。原作を有する作品においては、生身の役者に演じさせ、時間軸などがより立体的に伝わる媒体にシフトした結果として、本で読む分には感じなかった不自然さや論理の不整合性などが往々にして生じるものです。それをうまく料理するのが脚本家や監督の仕事なのですが、本作はそうした映画向けの補強作業を怠っているため、ご都合主義が横行する雑なアクション映画に終わっています。それに加えて見せ場の作り方もイマイチで、ホームパーティーを襲われるラストのアクションなどは、見づらいし、つまらないし、無駄に長いしと良いとこなしでした。一方、中盤において特殊部隊が砂漠のアジトに襲撃をかけるシーンこそがジャック・ライアンに期待される見せ場だったのですが、こういうものに限ってほとんど盛り上げずにスルーしてしまうという選択のまずさ。これは完全に失敗作です。不思議なことは、当時無名だったフィリップ・ノイスが、ヒット作「レッド・オクトーバーを追え」の続編をなぜ任されることになったのか?そして本作を失敗させたにも関わらず、なぜ「今そこにある危機」で続投できたのか?トム・クランシーは「せっかくの原作をB級アクションにしやがった」と嫌っているようですが。
[DVD(字幕)] 3点(2010-02-06 21:38:14)
956.  プラトーン 《ネタバレ》 
さすがは従軍経験者が作った作品だけあって、他の戦争映画とは説得力が違います。ジャングルの行軍で脱水症状を起こしたり、アリにたかられたり、雨の中で寝たりと、実際の現場を知ってる人間ならではの描写がこの映画を支えています。また、「強い北ベトナム軍」がきちんと描かれていることにも感心します。従来のベトナム戦争映画においては、負け戦だったはずなのになぜかアメリカ軍はベラボーに強く、一方で北ベトナム軍はヤラレ役に徹していました。そして、「アメリカは力では勝っていたが、メンタルで勝てなかった」と結論付けるのがお決まりのパターン。アメリカ人にとってのベトナム戦争の認識とは、自分の命も省みず突っ込んでくるアジア人の狂気に近い真剣さに勝てなかったというものであり、キューブリックですら、その認識に縛られた作品を作っていました。一方本作では、アメリカ兵達が強気なのは戦闘員のいない村を襲った時だけで、北ベトナム正規軍がやってくると聞けばビビりまくり、戦場ではパニックを起こしてボロ負けします。アメリカは神出鬼没のゲリラに負けたのでも、アジア人の野蛮なまでの狂気に負けたのでもなく、正規軍同士の戦いで負けたという、恐らくは史実に忠実な描写がなされています。このような切り口のベトナム戦争映画は現在に至るまで本作が唯一となっており、これも当事者として現場に立ち会っていたストーンならではの視点なのでしょう。残念だったのは、味方同士が私怨で殺し合うという展開が極端すぎて、全体から浮いてしまったことでしょうか。本作はストーンの思惑をも超えるほどリアリティの面で成功しており、そのため、戦場における殺人というショッキングな展開がいかにも作りもの臭くなっているのです。味方として与えるべき支援を与えず、嫌いなやつを見殺しにしたくらいの展開の方が調度良かったのではないでしょうか。また、比較的低予算で製作されたため銃のエフェクトがチャチなのも残念でした。こちらも、実際にアジアのジャングルで撮影した他の場面のビジュアルが良すぎたために、弱点が際立ってしまったという印象です。
[DVD(吹替)] 7点(2010-02-06 17:57:01)(良:2票)
957.  ジャスティス(2002・ブルース・ウィリス主演) 《ネタバレ》 
法廷もの、人種問題、人格者の悪役、お坊ちゃんの成長物語、兵士のプライド、脱走計画、これだけの要素を一本の映画にまとめてみせた脚本の出来はなかなかのものです。すべての要素がきちんと関連し合っていて、ラストに向けてすべてが収斂するように物語が計算されており、これだけの要素を放り込みながら闇鍋状態になっていない辺りは見事なものです。娯楽性を保ちながら硬派な題材を扱うことに長けるテリー・ジョージ、本作でも良い仕事をしています。しかし監督がこの題材を扱いきれず、散漫で何が言いたいのかよくわからない凡作になり下がっているのが残念です。収容所に到着するまでの前半部分は、よく出来た見せ場もあってなかなか面白いのですが、本筋がはじまると途端につまらなくなってしまいます。収容所に入ると「脚本通りに撮ってるだけ」という状態になってしまうのです。さらに、地味な本作を興行面で支えるために配置されたブルース・ウィリスが、マクナマラ大佐にまったく合っていないという問題もあります。脚本レベルではもっと深みと威厳があり、知性も感じさせる人物だったと推測されるのですが、彼が演じたためにそれらが失われてしまっています。同時期の「ティアーズ・オブ・ザ・サン」におけるような現場部隊の指揮官役には抜群にハマるものの、指令系統の頂点という役柄にはあまり馴染まないようです。さらに悪いことに、本作で彼に対することとなるドイツ軍のビッサー大佐がよく出来ているために、ウィリスがより浮いて感じられます。
[DVD(吹替)] 5点(2010-02-01 21:15:19)
958.  フルメタル・ジャケット
戦友がバタバタと死に、その度に物語が生まれる戦争というおいしい題材を手にした時、映画監督はドラマや哲学を語ろうとします。プラトーン然り、ディアハンター然り、地獄の黙示録然り。しかしキューブリックは本作においていかなる主張もせず、戦争とは何か、ベトナム戦争とは一体何だったのかという断片を切り取ることのみを行っています。かつて「突撃」でベタベタの人間ドラマをやった以上、同じ題材で同じことはやらんという巨匠ならではのこだわりなのか、それとも天才たる先見性の為せる技なのか、ともかく前述の作品達よりも二歩も三歩も先を行った作品となっています。公開当時、あまりのショックから「これは軍隊の非人間性を描いたものだ」と勘違いされた前半の訓練についても、あれは海兵隊の訓練を忠実に再現しただけのものであって、あらためて見ると非常に客観的です。ハートマン軍曹は新兵達の前に立ち塞がる脅威ではあるものの、ヒールを演じているだけということを匂わせる描写がいくつも存在しています。人種差別はせず、クズとして全員平等に扱うと発言したり、「神を信じない」と言ってハートマンに楯ついたジョーカーを「根性がある」と言って認めたりと、決して個人的な感情から新兵達を罵倒しているのではなく、無茶苦茶に見えて実は訓練に必要な言動をとっていることがわかります。海兵隊に集まるのは徴兵された者ではなく、志願して軍隊に入ってきた者達です。そんな英雄気取りの若者を、わずか8週間の訓練で生きて祖国に帰還できるフルメタルジャケットに育て上げねばならない。いったん彼らの人格やプライドを粉々に壊し、真っ白になったところで生きて帰るための行動パターンや思考様式を流し込んでいるのです。ちなみに私が一番驚いたのはトイレの様子で、個室や仕切りはなく、便器がズラっと並んでいるのみというシンプルにも程がある作り。海兵隊はう○こも人と顔を合わせながらするのかと、そこまで徹底したプライドの破壊には心底恐れ入りました。後半は前半と比較すると平凡になりますが、それでも視覚的な見せ場は充実しています。カメラワークが秀逸で、戦場を走る兵士の背中をローアングルから捉える、戦争映画でお馴染みのショットなどは、本作が初めてではないでしょうか?かねてから素晴らしかった音楽の使い方にはさらに磨きがかかっており、こちらはタランティーノに多大な影響を与えたことが伺えます。
[DVD(字幕)] 8点(2010-01-28 22:12:56)(良:3票)
959.  ウインドトーカーズ
ジョン・ウーがついに戦争映画を撮る!2002年は戦争映画が多数製作されましたが、製作段階において特に注目度の高かったのが本作でした。しかし、蓋を開けると戦争映画としては史上最低クラスの出来。世間一般からは一瞬にして忘れ去られ、ウーファンにとっては触れてはならない過去となったのでした。超人的な主人公が華麗にアクションを決めるジョン・ウーのスタイルは、大人数が泥にまみれながら命をかける戦争映画とは水と油。前半はニコラス刑事が棒立ちでマシンガンを乱射してるだけで見せ場として全然面白くないし、ジョン・ウーがガマンできなくなったのか、とうとうマシンガンをピストルに持ちかえてしまった後半は、もはや戦争映画のルックスではなくなっています。ジョン・ウーの映画なのに、戦争映画なのに、見せ場がつまらないという致命的な欠点を本作は抱えているのです。また、「プラトーン」以降の戦争映画には、史実に基づいてリアルに作るという条件が課せられるようになりましたが、本作は時代錯誤なまでに適当。サイパン島と言えば年平均気温が27度という高温多湿の熱帯気候なのに、まったくそのような風土に見えないという圧巻のロケーションには驚きました。妙に乾燥している地域があったり、日本の秋口のような風情ある風景があったり、そもそも俳優達が暑さの演技をしていなかったり、こだわって作っていないことが丸出しになっています。また、日本人住民の集団自決のあった悲劇の島でもありますが、本作に登場する住民達は実にのどかなもので、アメリカ兵にいとも簡単に懐いてしまいます。ニコラス刑事の常備薬を一錠飲ませてもらったり、チョコレートをひとかけ食べただけでアメリカさん大好きになってしまうという激安野郎ばかりで、本当に何も調べずに撮ったんだなぁと呆れてしまいました。これに追い打ちをかけるのがニコラス刑事の妙な熱演で、この人が演技を頑張れば頑張るほど映画がおかしくなっていきます。酔っぱらった演技などは加藤茶のレベルに達しており、「リービング・ラスベガス」のアル中演技でオスカーをもらったのと同一人物とは思えません。ハゲヅラのお巡りさんと若ハゲのケイジさんが共演すれば面白いのではないでしょうか。また、「ホリョダ!」「ド~シタノ?」「ベイコクキライ!ニホンダイジ!(ダイスキの間違い?)」等を、恐ろしく気合いの入った顔でやられても困ってしまいます。
[DVD(字幕)] 2点(2010-01-24 08:09:30)(笑:1票) (良:1票)
960.  地獄の黙示録 特別完全版
本作がとっ散らかっていることは、この「特別完全版」を見ればよくわかります。映画の完全版といえば、見たことのない場面がいくつか加わる程度のものが大半なのですが、本作における復活シーンはかなりしっかりとした内容です。脚本上はそれなりの重要性があり、かつ手の込んだ撮影がされていたにも関わらずこれらの場面はオリジナルからは丸々削られていたわけで、このことから、撮影時にコッポラの中で映画の全体像が出来上がっていなかったことが推測されます。B級映画の帝王ロジャー・コーマンの下で修業したコッポラに無駄な場面(復活したフッテージはまるで本編に必要がなく、これらを切ったオリジナルの判断は正解でした)を山ほど撮らせることはなかなかの異常事態なのですが、その原因はマーロン・ブランドにありました。カーツ大佐は、神経症とジャングル生活で痩せ細ってはいるが眼光鋭く、得体の知れないカリスマ性に満ちた人物という設定であり、押し寄せる北ベトナム正規軍とカーツの軍隊の繰り広げる死闘が本来のクライマックスだったのですが、ブランドは契約違反とも言えるほどぶくぶくに太って現場に現れ、クライマックスの大アクションを撮れなくなってしまいました。オチが白紙になった状態で撮影を進めざるをえなくなったことで本作は方向性を見失い、その場のアドリブと編集で辻褄を合わせるという無茶なやり方によりなんとか完成。映画の製作過程そのものが、ウィラードの旅と同じく「混沌」に支配されていたのでした。普通なら企画が倒れるか、駄作が生まれるかのどちらかなのですが、コッポラの才能や優秀な現場スタッフの貢献、そして一周して映画のテーマと合致するという奇跡によって、本作は「映画として成立していないが、訳のわからん迫力に満ちた他に類を見ない作品」となったのでした。シナリオ通りのラストであれば映画としては面白くなったはずですが、傑作としての歴史的地位は得られなかったでしょう。禅問答で煙に巻くラストによって何か奥深いことを言っている雰囲気を作り、観客に映画を読み解く作業を与えたことも、結果的に正解でした。。。私?私は失敗作だと思います。ひとつひとつのエピソードは面白くても全体としては統一感に欠けるし、ラストもオチから逃げただけにしか見えません。しかし、失敗作ではあるが駄作と切って捨てられない魅力があるのもまた事実なのです。
[DVD(吹替)] 5点(2010-01-24 07:50:56)(良:2票)
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