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81.  ソラリス 《ネタバレ》 
何の予備知識もなかった人には、さぞかし辛い視聴だったろうと思う。ソラリスという惑星が、飛行士たちのイメージから人間らしき 「生物」 を創り出してステーションに送り込んでいるなんて、この映像ですんなり納得できるのだろうか。また、身内を亡くして喪失感に苦しむ遺族が、宇宙の奇蹟によって再び故人と遭遇したら、気が動転して相手を宇宙に放り出したなどと、この感覚だけはどうしても受け入れられない(つまり原作から文句を言いたい)。夢でも会いたいと思う相手なら、何者に姿を変えていてもしがみつきたいほどの喜びではないのか。  ただ、不思議なことにこの作品は、どこか能に通じるものを感じる。言葉数や動きの少ない、俳優たちの抑えた演技が、力強い気を放っているようだった。特にレイアを演じるナターシャは、目が異様に大きく邪悪なものを秘めているようで、観ているこちらは不安をかきたてられた。しかし、まばたきのほとんどないその目は、能役者がかぶる面のようだ。表情が乏しい面の下では、自分が何者なのか、愛されているのか、夫とともにいられるのかといった、自己の存在を懸けた疑問にもがき苦しんでいる。もともと幸せを素直に受け入れられず、プロポーズも、妊娠も躊躇するなど、彼女は生前から自分の存在が希薄だと思いこんでいたのだろう。最初の自殺と違い、クリスを地球に帰すために自ら死を選ぶ彼女の愛は、たとえソラリスの生成物の立場であったとしても、深く胸をえぐられる。死生観あり、オカルト性ありと、『ソラリス』は能の演目向きのストーリーかもしれない。
[DVD(字幕)] 8点(2015-09-06 21:26:47)
82.  ペネロピ 《ネタバレ》 
この映画ほど「レリゴー♪」の歌が似合う作品もないのでは。「美女と野獣」の逆バージョンで、さすが現代版だけあって、他力本願ではなく「自分で呪いをといた」と胸を張るペネロピが最高にかっこいい。自分の顔を世間に公表するあたりから、彼女の勇気に感動しっぱなし。あの失恋の落ち込みレベルは自殺を考えても不思議じゃないのに、そこから始まった彼女の行動は、「死ぬ気ならなんでもできる」を地でいっている。人から愛されるより前に、まず自分自身を愛する気持ち、心の声に耳を傾けることが大切だということを、この映画から教えてもらった。
[DVD(吹替)] 8点(2015-09-05 15:24:52)
83.  ザ・ディープ(2012) 《ネタバレ》 
主人公が海を泳ぎながら「私にもう1日ください」と神に祈る様子や、過去の思い出を断片的に思い返す様子、カモメに導かれるようにして島にたどりつき、街の明かりを一望した瞬間など、どのシーンひとつをとっても、映画のタイトルのようにどっしりと深い味わいがあり、哲学の重みさえ感じ取れた。波の下では生存不可能な厳寒の海に囲まれ、火山の害にもめげずに暮らしを立て直そうとするアイスランドの人々は、つねに神の存在を身近に感じているらしい。そして、情け容赦のない自然を相手に 「戦う」 というより、「共生」 して生きていこうとしているようだ。一神教にすがることはないけれど私たち日本人も、地震や津波、台風などの天災にさらされ続けながら、害のために荒れた地をならしては、新たに生活を築いていく。そう考えながら観ていると、次第にかの国の人々への親近感や畏敬の念が湧き起こってきた。心ならずも死を迎えた者への鎮魂や、試練を乗り切って得た生の営みの尊さを、ひとりの男の奇跡を通して静かに謳いあげている佳作だと思う。
[インターネット(字幕)] 8点(2015-08-05 00:51:09)
84.  ゴーストライター
どんよりと重い曇天、陽を受けない冴えない砂浜。別荘の巨大なガラス窓では、そうした2種の灰色が上下でせめぎ合っている。夕方から夜間にかけての映像も多いし、ほとんどBGMがないもの静かな雰囲気、激しく対立する起爆剤があるでもなく俳優たちのセリフもこそこそと低くていまいち覇気がない、なのに、ジャンルはサスペンスであって、印象に残るシーンも数多くあり、数々の映画賞を受賞・ノミネートしている不思議。監督がロマン・ポランスキーと知って納得した。全編を通して漂っている上質な静けさと、それにマッチしたうす寒い島の風景が見ていてとても心地いい。もう一度観るときはストーリーを度外視して、映像美を主に楽しみたい。ただ、エメット宅の訪問のシーンでは、『アイズ・ワイド・シャット』の似たような場面を想い出し、少し迫力不足を感じてしまった。
[DVD(字幕)] 8点(2015-06-01 15:44:46)
85.  バッド・ルーテナント
蛇といっしょに水の中で撮影に応じた俳優さんにのっけから同情した。ありえない・・・・・(涙)。ニコラス・ケイジの演技はセリフをしゃべっているようには見えない。この映画、本当に台本が存在するの!? あのナチュラルさには演技に感動すべきなのか内容にのけぞるべきなのか・・・・・・本当にアメリカって、こんなに巷でヤクがはびこってるの? 巨大なワニが仰向けにひっくりかえって片脚ブラブラには目をむいたけど、それ以上に強烈だったのが、ドラッグや酒、ギャンブル等の依存者がぞろぞろでてきて、「おかしいなあ、麻薬がらみの映画なんて今まで山ほど観てきたのに」 と不思議に思いつつ、何の免疫もできてなかった自分を再発見する始末。後半から視聴が辛くて、だるくて、「早く終われ!」 と何度も何度も時計を見た。なのに、点数をつけるとなると、不思議なことに・・・・・・
[DVD(字幕)] 8点(2014-10-09 00:31:11)(笑:1票)
86.  みなさん、さようなら(2003) 《ネタバレ》 
「あなたのことが大好きだよ」と、余命いくばくもない本人に幸せな気持ちをプレゼントしてあげる、お酒と料理を囲んで大勢で晩餐会、そういうことができる日本人がどれだけいるだろうかと、深く深く考えさせられた。ハグや握手など、人に触れる文化に乏しいシャイな日本人は、家族が人生のラストを迎えるとき、あの息子が父親に見せた愛情表現をいざ見せられるかというと・・・・・・。こういうシーンを見るたびに、いとも簡単に壁を越えてダイレクトに愛情を伝えられる欧米人が羨ましくなる。また、モルヒネで死ぬタイミングをはかるという演出がズルいというか悔しいというか羨ましいというか、この時間さえわかっていれば、どんな演出も間に合うし、粋な計らいも可能になるというもの。法的に許されないことでも軽々とクリアされているノリを見ると、この映画は「どんな主義を信奉していようがどんな過去を抱えていようが、細かいことは全部忘れて人生の終わりは平らな気持ちで迎えよう(あるいは見送ってあげよう)」ということを人間賛歌として伝えたいのではないかと思う。人づきあいが不器用で問題を多く抱えた人を全身で受けとめる姿は、本当に美しい。
[DVD(吹替)] 8点(2014-03-03 00:19:51)
87.  女はみんな生きている
途中からリスベット・サランデル(『ドラゴン・タトゥーの女』)がゲスト出演してきたかと思った・・・・・・。
[DVD(字幕)] 8点(2014-02-24 10:56:44)
88.  舟を編む 《ネタバレ》 
タイトルの「ふね」は「船」ではなく正しく「舟」だ。軽くてもろく、孤独な舟で言葉の海を渡るのだから、本来なら「舟で編む」が正しいのでは?と思うところだが、「に」を「を」にするだけで、単なる説明ではなく詩的な深みが出るのだから、言葉というものはつくづく油断がならないと思う。馬締君や西岡君の成長ぶりを見ていると、辞書とともに編集者たちも年月とともに練られている。だから、辞書作りの現場や空気感、人間関係、作業の成果などひっくるめて、「舟を」になるのかなと思う。ただ、時の流れを表すのに、キャラたちの髪型だけでは辛い。もっと明確に、10数年たったという背景映像が欲しかった。 それと、バーガーショップでのシーンではたと気がついた(このシーン、かなり好き)。ラーメンや税金、スーパーなど1つのテーマをとことん追究して面白い作品を撮った伊丹監督なら、「辞書の男」とでも名づけたんじゃないかと。彼の作品だったら、煙草の煙が充満した編集室になり、かぐやさんはくわえ煙草のミニスカートで登場したかも。伊丹バージョンの「舟を編む」 できることなら見てみたかった。この映画は個人的にはすごく好きだが、ユーモアが中途半端だった。原作は笑いどころがいっぱいあるのに、それだけが残念。
[DVD(邦画)] 8点(2014-02-13 13:55:13)
89.  アウェイク(2007) 《ネタバレ》 
終盤のつじつまの合わし方には驚かされた。何もかもピースがうまくピタッとはまって、まさに「こう来たか!」という感じ。優秀な外科医と、悪事に手を染める医師が応酬するセリフにも工夫がしてあって、医師に対する間違った先入観を視聴者に抱かせるよううまく誘導させている脚本は、さすがだと思った。 ただ、2つだけ大きな違和感があった。  1つは、あれだけ患者が痛がっていれば血圧は不自然なほど急上昇するだろうになあ?という疑問。手術中、血圧の変化に気づかないドクターなんているんだろうか??? なんといっても術中覚醒している患者は心臓が疾患なんだから、モニターで何らかの異常が見つからないはずなかろうに・・・・・・ここら辺が不自然で、「この先生、胸を切り開く時点でさっそく医療ミスか?」と不安になった。  2つ目は、ラストの医師のもっともらしいつぶやき。しでかしたことが悪質きわまりないのに、優等生ぶりな反省の言葉にどっちらけ。4件も医療訴訟を起こされてることを考えたら、まさに正真正銘のヤブ医者だ。いっそ、本気で手術して失敗したら、罪に問われることなく完全犯罪が成立したのではと嘲笑ってやりたくなる。  最後に、主人公であるクレイトンに深く同情する。手術する数時間前には、新妻も、親友も、母もいたのに、やっと生還してきたら「そして誰もいなくなった」状態。不用意に肋骨は折られるし、手術前に突き放した母からもらった心臓で生き延びるなんて・・・・・・罪悪感なしで生きていけるんだろうか・・・・・・なんて哀れな余韻に浸っているところへヤブ医者の独白がかぶってきて、くどいようだがほんと腹立つ!
[DVD(吹替)] 8点(2013-10-25 01:10:31)(良:1票)
90.  ミレニアム2 火と戯れる女 《ネタバレ》 
ミレニアム1~3すべての原作を読んだ後鑑賞。あの長い話をどう編集したのか見ものだった。各エピソードの取捨選択に納得できて、「さすが」 という感じ。原作にほれ込んだ人が、映像化を楽しむ目的で見る分には充分楽しめる。なつかない山猫のごときリスベットが、かつての上司ドラガンや、親友のミリアム、恩人のパルムグレンに対して、少々びくつきながら上目づかいに相手の出方を伺っているのが、かわいくてしょうがない。ドラゴン・タトゥーをしょいながら、髪をぴんぴんにひっつめ「近寄るな!」オーラ全開だった彼女が、背中を丸めて「・・・怒ってる?」とニャンコになっているのだから、それだけでもう全部許してあげたくなってしまう(笑)。 蛇足ながら1つ。「火と戯れる女」というタイトルに疑問をもつ人もいるのでは。リスベットが戯れているのは他人のPCの中身なのだから、実は火よりもよっぽど危ないのだが。
[DVD(字幕)] 8点(2013-03-28 23:32:02)
91.  フライト 《ネタバレ》 
 この映画を観て得たものは、人間は目が覚める瞬間が来たとき、それに気づきさえしたら、人生をやり直すことが出来るということ。ウィトカーは最初、アルコール依存者の会に参加したとき、せっかくその瞬間がきたのにむしろ逃げた。元恋人に自分の罪をなすりつけるタイミングで、やっと目が覚める。人間はいつどのようにして、神の啓示を受けるかわからない。電気に打たれたように今まで見えていた世界が突然180度違って見えるようになる、などという体験はそうできるものではないけれど、憧れてしまう。実は、自分を変えるネタは見えないだけで、そこらへんに散らばっているのだろう。それを謙虚におしいただいて現状を打破する力に変えていく・・・・・・細かい点でたくさん突っ込みたいところはあるけれど、深い人間賛歌に満ちた作品ではないかと思った。   ところで、「うまくつぶした、あとは君次第だ」と繰り返していたチャーリーとラング弁護士。機長の血中アルコール値をどうやってつぶせたのか、具体的な種明かしはなかったけれど、公聴会のエレンの反応を見て、チャーリーたちが機長の数値を死んだカテリーナのものと交換して報告したとしか思えなくなった。そのとたん、この2人のイメージが最悪に。そうだった、こいつらパイロット組合の連中だった! (まさしく180度の逆さ視点に!) 考えてみたら、この作品中人命をもっとも軽んじていたのは彼らではないのか。「有罪になったら終身刑だ」というのも、彼に飲酒の自白をさせないためのブラフだったのではないかと思う。現にラストで機長本人が刑期は数年間と言っているし。(そこは一応「英雄」なのだから温情措置になったのかも) とにかくすべてのやり方が汚すぎる。公聴会前に酔っ払ったウィトカーに絶句した彼らを見たときはつい同情したが、全くバカバカしい!
[映画館(字幕)] 8点(2013-03-13 23:58:17)
92.  最強のふたり 《ネタバレ》 
「アルプスの少女ハイジ」と同じタイプの作品だと思った。はた目からは全くうまくいきそうに見えない2人が、実は呼吸がぴったりで、一度離れて改めて再会し、互いの絆をいっそう深めるというパターン。私はこの手の感動ものにとても弱い。 ドリスの笑顔もいいが、首から下が動かない重度の障害を負いながら、心の底から嬉しそうに口を開けて笑うフィリップがなんとも微笑ましい。笑顔が笑顔を引き寄せる引力のすがすがしさにあふれた佳作。最後の方で、ひげをおもちゃにするアイデアには脱帽した。  それに考えてみたらこの2人、一度も深刻な喧嘩やいざこざのシーンがなかった。凹凸の凹に凸がぴったり合わさって、誰もつけ入るような隙のない最強の「□」になった感じ。原題はIntouchable(最強のふたり)だが、 Untoucthable でも通るかも。この絆はうらやましすぎる。
[映画館(字幕)] 8点(2012-10-31 20:09:08)(良:1票)
93.  駅 STATION 《ネタバレ》 
「矛盾してるけど、男と女ですからね」 というシーンがいい。この映画は、矛盾に苦しむ人々のドラマだ。だから皆、理解に苦しむ行動をとっている。北の国で生きていくには厳しい自然にさらされ続け、身も心も冷えるので、愛であろうがなかろうが絶えずぬくもりが欲しいのだろう。倉本氏の脚本は、阿久氏の世界観と驚くほど相性がいい。
[DVD(邦画)] 8点(2012-10-28 01:26:52)
94.  この子の七つのお祝いに 《ネタバレ》 
ただのスプラッタものではなく、飛び散る鮮血にはちゃんと意味があるということをひしひしと感じた。戦争が日本人に残した痛み、子供や夫、母などの肉親を失う痛み。それらは、凶器で突かれて肉体が現実に感じる痛みと呼応して、より深い狂気の色に染まって見える。 また、月のものが来るたび母に洗脳されるおぞましさや、自分の正体を知った上で殺される男の愛など、なかなか深いものがあった。もし男が業病にかかっていなくてもマヤは母の声に従って彼を殺しただろうが、激しい濡れ場シーンもなく静かにその手首を切る演出は、マヤの未成熟で不器用な性を強調していて、いっそう哀れを呼ぶ。 視聴が進むうち、画面に現れる赤い色は、すべて女の子宮から流れる血のように思えてきた。流血ざたも、人形の赤い着物も、小さなマヤの晴れ着も、何もかもが狂気のように赤い。ラストのマヤの動きは、飾られた人形のようにぎこちない。まるで壊れた操り人形のように、かくかくと、行きつ戻りつしてそのうち畳に伏せて動かなくなってしまう。私には岩下さんの演技がオーバーアクションには見えない。彼女はまさに人形になりきっていたからだ。命令を仕込まれた「仕掛け人形」だったのだから、指令を失った人形は迷走して力尽きるのは当然だ。成熟した一人の女性として描かれたマヤであったなら、あの不自然な動きはいかにも大げさにすぎるが、あの演技があるからこそ、この作品のラストは、厄介な情念が絡まりあった重たい人形浄瑠璃の幕が、やっと下りたような安堵をもたらすのだと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2012-04-29 01:18:45)(良:1票)
95.  羅生門(1950) 《ネタバレ》 
「大変な受賞歴のある作品」という先入観で視聴してしまったが、間延びしたシーンが多く、また女が泣きむせぶシーンが何回も繰り返されて、さすがに途中から(これはちょっとおかしいかも?)と身を引いてしまった。ラストは芥川龍之介の原作どおり辛口で締めるべきだったし、客観的な事実をつけたしていたのにはびっくりした。事実がわからないからこそ、視聴者(読者)の想像の領域が無限に広がるのに。個人的には羅生門にいた3人は好きではない。むしろいない方がいい。夫婦が曳いていた馬が空馬となって羅生門にぽつんと現れる、というラストの方がよかった。  しかし、登場人物たちの存在感の大きさには驚かされる。全員の表情がエゴでぎらぎらとたぎっているところへ、木漏れ日の白い光が降り注ぎ、力強い生のエネルギーが卍どもえににうずまいている。また、ラストの羅生門の演出が印象的だった。半分は無残に崩落しているが、残り半分は堅固なままだ。人間の悪と善、業の深さと誠を象徴しているように思う。
[DVD(邦画)] 8点(2012-04-07 00:56:38)
96.  わたしを離さないで 《ネタバレ》 
もしブラックジャックがこの話の中に登場していたら、「わたしにゃあ関係ないね」といういつもの冷めたセリフですましていられなかっただろう。何しろ彼は、整形手術にしろ健康な体にメスを入れるのが大嫌いだから。
[DVD(字幕)] 8点(2012-03-29 14:35:50)
97.  フローズン 《ネタバレ》 
氷点下20度で居眠りをすれば、低体温に陥って死ぬだろう。リフトに乗る時点ですでに空腹の女性が2晩も耐えられるはずがない、など突っ込みどころは満載だが、ずっしりと心に残った作品だった。逃げ場のない高さから下を眺めれば飛び降りられると思うのは本当らしい。その錯覚と戦って、いかに冷静に危機を脱するかという決断力が生死を分けるのだ。リフトに乗る前に聞いた「天候が荒れる」という話をちゃんと覚えていれば、月の出ているうち、思考力、体力のあるうちに迅速に行動すべきだと分かったろう。力の勝る方の男性が支柱へ移り、スキーで一気に下山するというベストの選択肢をとれたはずなのに。リフト券の損得でプレーを要求するなど、遊び優先で冬山の怖さに少しも留意しない。自然に対する彼らの甘い認識が、来るはずもない助けを待っていたずらに時間を費やし、まさに生還できる貴重なタイミングを奪ったのだ。またスキー場を営業する立場として見れば、改善策が見えてきて面白い。営業終了時はその旨を広域放送して客の下山を促し、全リフトに人がいないか光源を搭載した車で点検する。狼が出る山ならば、ゲレンデのあちこちに避難小屋を設置し、緊急電話が無料でつながる設備を整える。自然を相手に楽しむスポーツは、サービスする側、受ける側の危機意識なくては始まらない。
[DVD(字幕)] 8点(2012-01-04 10:47:12)(良:2票)
98.  阿弥陀堂だより 《ネタバレ》 
癌の痛みからどうしても伏していられず、それでも座して騒がず、妻に死期を悟った挨拶をする。幸田の潔い姿に、さすがに刀を所持していただけの侍魂を持っていると感動した。一瞬泣きくずれそうになった妻は、夫の死の覚悟を乱さぬよう必死で耐えて、やがて座りなおすのだが、その一過程がたとえようもなく美しい夫婦愛に見えて、侍とその妻の美学を感じた。外国人は刀やちゃんばらに熱くなるけれども、侍のスピリッツがあって初めて美学に通じるものだとは、なかなか分かってもらえないだろう。強ければいい、かっこよければ全てよしだから、例えば、淋しいけれどもモンゴルの人たちは朝青龍引退の件に対して反日感情を募らせるのだし、彼らがこのシーンを見ても、どうして妻が泣き崩れないのか理解できないだろうと思う。また、人の顔をアップにして必要以上に喜怒哀楽を強調せず、かなりカメラを引いて遠巻きから人々を映している。その姿勢には、監督の誠実さを感じずにはいられない。
[DVD(邦画)] 8点(2010-03-14 14:58:35)(良:1票)
99.  カポーティ 《ネタバレ》 
冒頭からひどい皮肉をとばすトルーマンを見て、「性格の悪そうな作家だなあ」と引いてしまったが、事件の取材で、いとも簡単にナンシーの親友から彼女の日記、捜査担当刑事から捜査ノート、犯人のペリーからは日記の提供を受けるのに驚いた。信用がなければ決して人にゆだねることはできない個人的な資料ばかりだ。また、仕事の名誉欲はある、しかし人並みの情もあり、ペリーの死刑を望むべきか否かで苦悩する羽目になるトルーマンの人間臭さに恐れ入った。まるで人間の不合理さを絵に描いたようだ。「もう1人の自分」であるペリーが目の前で処刑され、彼の精神的な何かが一緒に壊れてしまった気がする。自分が処刑されたような自己暗示にかかったのかもしれない。もしペリーがトルーマンと生まれ育ちが全く違い、被害者に対する奇妙ないたわりを見せず、単なる残虐非道な人物であったら、「冷血」以降も作家はペンを取り続けただろう。私には途中からペリーとトルーマンがドッペルゲンガーの関係に見えた。
[DVD(字幕)] 8点(2009-04-22 21:07:03)(良:1票)
100.  4分間のピアニスト 《ネタバレ》 
 厳格な老教師と手のつけられない攻撃的な少女のこのコンビは、まるでサリバン先生とヘレン・ケラー。ジェニーが彼女のやせた頬にいきなりキスをするシーンが目にこびりついている。手錠をはめられたまま、腕の中に彼女を入れてダンスするシーンも。  ラストの前衛的なピアノ演奏は、絵画でいうところの抽象画というか、彼女の心象風景をピアノの音に変えたものだと思う。足で器用にスツールを引き寄せながらの演奏はかっこよかった。あの4分間は、ジェニーにとってピアノの腕だけを披露するのではなく、自己証明でもあったはず。メロディに乏しい無機質な、エネルギーのほとばしるあの曲は、私は正直すばらしいと思った。手錠をかけられながら、「どうだ」といわんばかりのジェニーが、悲しくも美しい。
[DVD(字幕)] 8点(2009-04-19 11:25:42)
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