81. ブレイブハート
壮大なスケールで俳優M・ギブソンがメガホンを取った史劇の傑作ですね。前作「顔のない天使」での演出もなかなかのものですが、とにかくこの映画では大量のエキストラ導入などスケールの大きな演出が圧倒的な力を持たせる。ですが一つ言えば戦闘シーンが長く、地味に残酷な描写が多いため、最後の方では大味なシーン演出が多かった気がするのと、ストーリーを細かく見ていくと前半がやや退屈。しかし、90年代が誇る秀作であることは間違いなし! 9点(2002-04-08 18:30:22) |
82. 恐怖の報酬(1953)
巨匠アンリ・ジョルジュ・クルーゾーの傑作サスペンス。これぞと言わんばかりにハラハラドキドキのサスペンス描写は秀逸そのもの。仕事を受けるまでのドラマ性は、そのまま仕事中のハラハラドキドキ感の中にも取り入れられていて、それだけにラストの主人公が倒れこむシーンも意味深になっている。これだけ緊張感の張り詰めた映画なのに、不思議と疲れない映画でもあった。この辺は、最近の映像作家にも見習って欲しい。 9点(2002-03-31 21:18:35) |
83. アザーズ
最近似たような雰囲気のヒット作があったので、特に新鮮味がある映画とは確かに言えないです。ひょっとしたらラストも途中から予想つくかもしれません。でも「ふふっ、私を騙せなかった、この映画は甘いな」なんて言わないで、アメナバール監督の雰囲気作りを観て欲しい。細部にわたってよく出来ております。古くからあるオーソドックスな観せ方を堂々と演出しています。正しく映画的興奮の2時間弱です。言葉は悪いですがラストで驚きたければ、文庫本でも読めばいいのです。そう思って観てみたら、この映画の楽しみも人一倍だと思います。最近増えてる視覚効果技術駆使のアトラクションまがいのホラー映画(?)に食傷気味の方には特にお薦めです。 9点(2002-03-27 22:17:36) |
84. ゴースト・オブ・ミシシッピー
確かに素晴らしいヒューマニズムを感じさせる映画でした。アカデミー賞ではJ・ウッズの特殊メイクを駆使した演技しか評価されなかったようですが、この映画の場合は主演のA・ボールドウィンも評価されるべきと感じたのは私だけでしょうか? 私は「評決のとき」のM・マコノヒーの最終弁論以上に、心に迫る勢いを感じましたけどね。日本劇場未公開の隠れた秀作。 9点(2002-03-24 23:18:10) |
85. グッバイガール
洗練された大人の映画。ですが、かといって子供には理解できない映画という意味では決してないです。しっかり考えられたニール・サイモンの脚本が秀逸で、本当にラストシーンは映画史に残る名シーンと言っても過言ではない。アパート内での会話も小気味よく、素早く、映画に良いテンポを与えている。ヒロインのM・メーソンは申し分の無い名演技。 9点(2002-03-24 13:41:18) |
86. アリスの恋
70年代後半に流行った女性の自立を描く映画の先駆けといった感じ。若き日のマーチン・スコセッシの演出も冴えに冴えていて、ミニ・ロードムービーといった趣向で、物語全編ダレていない。結構ヘビーな話しではあるんですが、深刻な問題はあまり言及せず、これからも前向きに生きていこうとするポジティブなストーリー展開となっているので好印象。親子のツーショットから急激にカメラがズームアウトして、現実に引き戻すというラストシーンは、ポジティブでいて問題提起性が高く、見事な名シーンになっている。文句なしに、アメリカン・ニューシネマ後期の傑作です。 9点(2002-03-21 22:35:54) |
87. さらば冬のかもめ
主に70年代に活躍し、佳作の監督と言われた名匠ハル・アシュビーによる心温まる珠玉のヒューマン・コメディー。終始寒さを強調した場面設定とは反対に、登場キャラクターの温かさをコミカルに見せている。初期のJ・ニコルソンも相変わらずハマリ役と言わせる程の熱演。余韻を残すフェードアウトの多用と、小気味良い演出が忘れられないアメリカン・ニューシネマ後期の傑作。 9点(2002-03-16 21:35:13) |
88. 現金に体を張れ
終始テンポ良く、丁寧に描いているキューブリック初期の傑作。主演のS・ヘイドンもスマートな演技でこの映画の雰囲気にピッタリである。鮮烈なラストシーンに映る警察官2人の映し方は、単純だが最高の形でカメラに収められており、警察官と逃亡者を同一スクリーン内で描かなかったというキューブリックの非凡な才能が爆発している。 9点(2002-03-14 13:23:28) |
89. ハドソン河のモスコー
名匠ポール・マザースキーによる共産主義国ソビエトからアメリカに亡命してきたサーカス団のサックス奏者の男が経験する寂しさや、新鮮な感覚といったものを温もり感溢れる映像で綴った素晴らしい映画。R・ウィリアムスが入魂の熱演で、こういった派手さのない喜劇でもいい味が出ている。田舎から出てきて都会で頑張る人はこれを観て、是非元気を出して欲しい。 9点(2002-03-08 10:49:03) |
90. サンセット大通り
ビリー・ワイルダーによるハリウッドの内幕ものですが、この映画は結構シリアスで、サスペンス色も加味されている。往年の栄光にすがる映画女優と、売れない脚本家と女優の家に仕える執事の奇妙な共同生活。印象深いオープニングから始まるフラッシュ・バックも見事な手法で、ワイルダーの映画にしては珍しく陰鬱な調子で映画が進められていく。お見事な残酷物語。 9点(2002-03-06 17:05:59) |
91. ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ
「なるほど、こういう映画なのか」...これが鑑賞後の最初の感想。演技巧者エミリー・ワトソンの熱演はいつもながら凄いんだけど、姉のヒラリーを演じたレイチェル・グリフィスも圧倒的な存在感を示している。この手のノンフィクションものは、あと一歩のところで止めてしまうんだけれども、姉妹2人の内面の掘り下げ方が半端じゃない。一風変わった切り口をもってストーリーを進めていくのですが、ラストにこの物語の結論がしっかりと示されている。『音楽家ジャクリーヌ・デュ・プレはほんとうではないのです』と。とにかく一見の価値あり、お薦めです。 9点(2002-03-04 21:10:56) |
92. ミッシング(1982)
コスタ・ガブラス監督らしい誠実な語り口でビシビシ攻めてくる秀作ドラマ。自らの父親をイメージして演じたというJ・レモンの説得力ある演技と、あてもない焦燥感にかられながらわずかに残された希望に向かって進み、行方不明[ミッシング]となった夫を探し続けるS・スペイセクの存在感ある演技。主演2人による力が大きい作品なのだが、オープニングのオレンジ色の不気味な雰囲気から内政不安定な南米の市街地描写へ昇華させるという何とも巧い演出。以降、一人の青年を数少ない情報から探していく過程を決して欲張らずに誠実に描いたこの映画は正しく傑作だ。 9点(2002-01-10 15:36:30) |
93. ブラック・サンデー
J・フランケンハイマー監督の力強い演出に引っ張られること2時間20分。前半は「ジャッカルの日」のようにテロリストの綿密な下準備を描き、後半では一気に迫力のアクション描写へと転化させるという極上のエンターテイメント。イスラエルの部隊の隊長を演じたロバート・ショーの熱演もさることながら、米軍退役軍人を演じたブルース・ダーンの狂気の演技はハマリ役中のハマリ役。それと同時に徹底したドキュメンタリー・タッチという手法を貫き、それでいて極上のエンターテイメント映画へと昇華させたJ・フランケンハイマーも称えられるべきだ。日本劇場未公開作とはまったくもって残念な力作だ。 9点(2001-12-27 17:53:41) |
94. イングリッシュ・ペイシェント
意外にこちらでの評判が良くないことに驚いてます。私的には、アカデミー賞独占ってのも判らなくもないです(「ザ・エージェント」がこれに負けたってのはどうかと思うけど^^;)。確かに判りづらいストーリー構成に、共感しづらいテーマかもしれないですが「アフリカ」+「飛行機」+「不倫」=という図式が成り立つ映画としては、85年に製作された某映画よりもずっと良いと思った。ただ物語の主眼をレイフ・ファインズの方の恋愛なのか、ジュリエット・ビノシュの方の恋愛なのか、どっちに置いてるのかよく判らなかった。でも完成度は高く、なかなか良い映画だと思いますよ。 9点(2001-12-25 13:41:31) |
95. ハイヤー・ラーニング
高等学問[=ハイヤー・ラーニング]を売りとしている名門大学を舞台に起きた銃乱射事件。この事件の発端と、発展していく過程、そして事件がもたらす波紋を人種問題、同性愛などの若者に存在する様々な社会問題を絡めて描く強烈な問題提起性を持つ90年代の青春映画としては出色の出来。決して観た後の後味がイイ作品とは口が裂けても言えないが、これ一本でジョン・シングルトン監督が底知れぬ力量があることが判る。 9点(2001-12-20 22:25:34) |
96. バンディッツ(2001)
なんか穴馬的存在として2002年のお正月映画として公開されるようだが、ハッキリ言って、それは勿体ない。私はこの映画、素直に気に入った。バリー・レビンソン監督にしては、何ともスピーディーな演出で観ていて何だか微笑ましくさせられる。それでいて心地よい。このオチなんかは、嫌味がないオチで出色の落とし方だと思った(まぁ予想つく人もいるでしょうが、それくらいが丁度イイんです)。 9点(2001-12-10 21:36:46) |
97. サマー・オブ・サム
いや、悪かないと思いますよ。それどころかスパイク・リーの近作としては出色の出来だと思う。確かにサスペンス系統の作品を期待してしまっては裏切られるかもしれないが、いつも通りのスパイク・リーの映画というつもりで観れば、確かに冗長な感も拭えないが、スパイク・リーらしさが爆発している良作だと言えると思う。それでいて従来のスタイルに固執し過ぎていないというスパイク・リーのチャレンジ精神も伺えるエネルギッシュなドラマ。 9点(2001-12-09 22:46:00) |
98. 僕たちのアナ・バナナ
E・ノートンの初監督作とは思えないくらい良く出来たロマンチック・コメディです。長さの割りに今一つ充実感を味わえないという面はあるが、脚本がしっかりしているせいか何故か最後まで惹きこまれた。どうせなら、もっとコメディ色豊かにしたら良かったのか。DVDの特典映像として盛り込まれていた“アナが池に落ちる”とか“アナとジェイクと携帯電話”といったエピソードは削るには勿体なさ過ぎる。まぁそれでも、E・ノートンがカットを判断したという理由も判らなくもない。とにかく良い映画です。 9点(2001-12-02 21:37:23) |
99. マクマレン兄弟
才人エドワード・バーンズが超低予算で仕上げた驚くべき傑作。この普通っぽさを演出できる才人はそうそうたくさんいるもんじゃない。確かにインディーズの色合いが強く、その低予算さからあまりキレイな映像ではなく観づらさを感じるかもしれないが、この映画に関しては是非とも雰囲気を味わって欲しい。あまり大きなスポットを当てられてはいないが、バーンズはディレクターとしての才をドンドン開花させていって欲しい。後作「彼女は最高」や「ノー・ルッキング・バック」を観てしまえば、尚更そう思えるはずだ。 9点(2001-11-28 23:44:10) |
100. 恋はデジャ・ブ
あんまりだ、こんなに素晴らしい作品が“埋もれて”いるなんて。主演のビル・マレーっておっちゃん(?)はコメディアン出身ということもあり元々演技の上手い役者さんだと思うし、ラブ・コメというジャンルを撮らせるには安心して観ていられる感があるハロルド・ライミス。“サタデーナイト・ライブ”のメンバーが作り上げた傑作ラブ・コメディーです。デ・ジャブという不思議な現象を題材に、下手にドタバタさせずアイデア一杯って感じで、まったくもって見事に映像化しました。これは本当にお見事です。 9点(2001-11-19 20:41:15) |