1001. 抱きしめたい(1978)
‶ビートルズがやってきた”狂騒記。ドタバタコメディにぴったりの素材だけあって、ひと目見ようと狂奔するファンらの無茶苦茶ぶりが可笑しいです。盛ってはいるけど、こういうのは極めて事実に近いって聞きますから凄まじいっすよね。 今みたいに各個人の趣味・興味が細分化する前の、皆で同じものを見ていた時代。プレスリーもビートルズもピンクレディーだってご近所の老若男女みんな知っていた。一つ事の事象に集団でヒステリー気味に熱狂することなど、もう無いのかも。あの時代のビートルズの登場のように、全く新しくて心奪われるような体験を人類みんなでまたできたら楽しいだろうな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-09-17 23:16:15) |
1002. 博士と狂人
《ネタバレ》 実話を映画化するに当たっては、脚色の塩梅がすごく大事だと思うんですよね。出来事の羅列だとつまんないし、フィクションすれすれに盛られても鼻白んでしまうし。 本作はやや後者寄りの演出に感じられてしまった。マイナー氏と被害者女性のロマンス話はわたしにはちょっと煩く、ほんまかいなとの疑問が先立ちます。またショーン・ペンが一切手抜きなしの重ったい演技で惨状感を増すし。 こんなに浪花節的に話をこしらえなくても、OEDの編纂という大事業なのですから他にもっと「へえー」となる裏話エピソードがありそうなものですが。完成まで20年も要しているのですし。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-09-04 00:13:34) |
1003. ストックホルム・ケース
《ネタバレ》 ストックホルム症候群て、人質側の人間が犯人との連帯感を抱いてしまうこと。ペルーで起きた日本大使公邸占拠事件などを見るに、犯人の政治的な動機に共感することを指しているものだとばかり思っていた。・・でも本作を観たら、いやあ単なる恋愛感情なんですねえ。そうか、そうならもうちょっと納得のいく人物造形にしてほしかったな。 イーサン・ホーク、悪くはないけど一日二日で惚れこむキャラではないよな。(個人の意見です)ちょっと馬鹿すぎるし。すぐでかい声出すし。 銀行員もノオミ・ラパスではちょっと違うな。数時間でコロッと男に参るようなタマには見えない。もっと、なんかこう夢見がちな地味女子タイプがこの役にはハマると思うんですが。 まあこれは実話ベースなのでどこまで事実に寄せているのかは分かんないのだけど。一鑑賞者の勝手な感想でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-08-26 23:27:40) |
1004. シェルブールの雨傘
《ネタバレ》 なんと美麗なオープニング。甘やかな音楽と小雨に濡れる石畳を行き交う色とりどりの傘。真上からのショット。完成された美意識にのっけから心を掴まれます。色彩と構図に美的センスが全編にわたって貫かれ、傘店の壁紙とジュヌヴィエーヴとその母の衣装の色合わせには圧倒されました。ピンクの壁とオレンジのスーツ。この色配置が悪趣味にならないところがフランス人、すごい。ジュヌヴィエーヴの花柄(壁もワンピも)も素敵でした。 ということでアートな分野では他の追随を許さぬ完璧な画で押してくる作品なのですが、実をいうと総合点では微妙でして。 台詞がオール歌、という決まり事はともかくも大雑把なあらすじ風メロドラマといった趣のストーリーにはかなり引きました。どんなに美しく悲恋を歌い上げられても、ヒロインのあまりに即物的な薄情さには涙の出ようもありませんでした。帰還した男の荒れようにむしろ私は胸が痛みますね。 そもそも台詞がすべて歌だと細やかな心理描写などできようもないですもん。言いよどんだり、声が上ずったり、人の思いって言葉に出るもの。いきおい宝石商のキャラも大変に浅く、こんな男にあっという間に鞍替えするヒロインもまた共感を得るのが難しくなっちゃうのです。 ミュージカルが苦手な原因が自分でよく分かった映画でありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-08-18 23:40:47)(良:1票) |
1005. スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
《ネタバレ》 学園ドラマとヒーローものを良い塩梅でミックスさせているのは前作通り。学園パートの方は先生やクラスメートら脇役は完全にコメディ要因、親友は安定の「良いヤツ」。アメリカには何十年ものドラマ脚本の蓄積がありますから、ここらのキャラクターの活かし方は手練れ感もあります。 おいしい役回りはジェイク・ギレンホール。まあ彼ほどの実力派スターが「新参のナイスヒーロー」扱いで終わるわけはないだろうとは誰でも思うところですが。 テンポ良く台詞も楽しくベニスの風景も美しい、楽しい二作目です。 でもわたし、トニー・スタークが死んじゃっているということを知らなかったマーベルの一見さんですので、その辺りのネタにピンと来なくて置いてきぼり感はありました。今度アベンジャーズ/エンドゲームも観てみよう。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-08-08 22:09:01) |
1006. スパイダーマン:ホームカミング
《ネタバレ》 世界設定が面白いですね。科学技術がずっと進んでて、地球外との関わりもあって、そのせいかスパイダーマンなる存在は近所のお兄ちゃん的な軽さ。本人もやってることは地域の防犯部長レベルだと自認しているという。ヒーローを等身大のティーンエイジャーにしたことで、ジュヴナイルな要素もはらんで物語の幅が広がりました。 ミスって上司に怒られて落ち込んだり、私生活では女の子のことが何よりも優先だったりと「ヒーローをやってる高校生」のリアルが微笑ましくて楽しい。 ただイベント盛り込みすぎ、同じような追跡シーンが多くて長いかな。どうせ3部作なのは決まってたんだろうから、もう少しスパッと切り上げてくれた方が好みです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-08-07 00:21:49) |
1007. ホット・ロック
《ネタバレ》 中年以降もイケメンだけど本作に見る若き姿は端正すぎて誰だか分らなかったロバート・レッドフォードが主演です。レッドフォードかっこ良すぎだし、70年代の犯罪モノってビビるくらい非情な演出も多いので、本作もどういう展開になるのか読めなかったのですけどご安心ください。誰もむごたらしく死ぬことのない、ユルくて楽しい一品でした。 手に入りそうで、もう少しのところで逃してしまうダイヤモンド。うまくいかないじれったさを上手に転がして観る者を引き付けます。 苦虫噛みっぱなし顔のレッドフォードには同情しつつ笑ってしまいます。胃潰瘍になりそうだなあ彼。 ところで多少の力技はこの手の話には目をつぶろうとは思いますが、最終手段はまさかの荒技。反則スレスレと言いますか、アレが通用するならとっくに何とでもできましたよね。せめてあの女が伏線として前段のどこかで絡んでいればねえ。ラストのレッドフォードの笑顔が素晴らしいカタルシスをもたらす分、非常に惜しい創作の瑕疵と思いました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-07-25 23:20:11) |
1008. 我等の生涯の最良の年
《ネタバレ》 W・ワイラーらしい壮大な人生賛歌。復員兵3名それぞれの心や身体の傷みを性善説でくるんでいるかのようなお話で、まあシビアすぎるリアリズムを見せつけられるよりは心がほっとします。 でも優しいゆえエッジの効きが悪いと感じることも。メンタルの戦争後遺症の描写はとてもゆるいし(ベトナム戦争後の諸作品はこんなもんじゃないですよね)、銀行家のアルはアルコール依存症になりそうだけどエグイ状況になる寸止めに収めていますし。 時代柄もあるのでしょう、女性の造型が良妻型かあばずれかの二種類というのも底浅でつまんないですね。 長尺を感じさせない整った脚本ですが「古き良き」という言葉がぴったりのクローゼット・クラシック。久々に押し入れから出してみたら、うわ古いなあと思っちゃう、そんな感じです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-07-23 23:49:23) |
1009. 地球の静止する日
《ネタバレ》 なになに、地球が静止するって?なるほど地球が自転しなくなってしまうのか!どうなるんだろう。公転はしているのだから昼と夜は訪れる、ってNHKでやってたな。さすがSF映画の先駆作。発想が突き抜けている(感心)。「渚にて」のような人間心理に切り込んだ群像劇だろうか。パニックものだろうか。・・・と諸々の思いを抱いていざ鑑賞。→説教モノでした。まさかの。 核とか危ないことするなってさ。外宇宙にも影響するようなことになったらただじゃ置かないってむしろ恫喝までされてもた。 いやほんと今の世界情勢を見るにつけ、彼にはちょくちょく教育的指導をしに来球してもらいたい気がするよ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-07-06 23:36:21)(良:1票) |
1010. 囚われの女
《ネタバレ》 性の劣等感からSで発出するしかない屈折しまくりの男とM指向を備えた女。倒錯というにはまだ上品な描写で安心?して観られます。前半、彼女が自我を見失いそうになって取り乱すあたりはちょっとハラハラしますけど。 スタン役のローラン・テルジェフがちょっとクセのある顔立ちで役柄に(失礼?ながら)ぴったりでした。しかしながらジョゼと思いが通じてからは変態道を極めるまでには行かず、じつに普通のさわやかカップル然としてしまったのにはがっかりでした。スタン、後半なんかうじうじ悩んじゃってるんだもんなあ。どうしたS変態じゃなかったのか。 のっけからリカちゃん(ではない)人形が全裸で弄ばれてたり、スタンの撮影部屋がザ・SM風味なオブジェと色彩で埋められていたりと雰囲気はちょっと息苦しいくらいの濃厚さがあります。そしてエリザベスの衣装が50年前にしてとても洗練されているのにはモード帝国フランスの凄みを感じました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-30 22:53:29) |
1011. 密告(1943)
《ネタバレ》 影の使い方が印象的なモノクロの映像が陰気な話にぴったりの不気味さ。ナチス占領下のフランスにて撮られた、という状況ですからまあ暗い。密告文書が出回り疑心暗鬼になる人間模様、というのは一級のサスペンス素材であると思いますがそれにしても暗いです。 戦時下でやむなしとはいえ、娯楽性は低くサスペンスフルな盛り上がり演出やキャラクターのふくらましが乏しいのでちょっとノリ切れずに観終わってしまいました。 台詞も持って回った言い回しで理解しづらいな。医者が校長の妹と恋仲だったとはちっとも伝わらなかったので妊娠させてたの?!とびっくりです。犯人の動機もわからないなあ。現代でならゆるがせにしないだろうこの辺の細部が脚本に盛られてなくて、観辛く感じました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-22 23:43:35) |
1012. 007/慰めの報酬
ご都合主義をぐっと減らして路線転換したクレイグボンド第2作。D・クレイグは歴代ボンドの誰よりも乱暴度が高くて、身体を張ったアクションも見栄えがしますが軟派じゃなくなったジェームズ・ボンドって妙に硬い。 愛想の無いクレイグボンドその人同様に話もなんか真面目で、Qの小道具やすっとぼけなボンド味がちょっと恋しい気もします。 お話はやや一本調子にも感じ、意外性に驚くということがないので前作よりはパワーダウンかな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-31 23:25:14) |
1013. アップグレード
《ネタバレ》 ‶AIが人間を支配する脅威モノ”の分野でも新しいバージョン。今作は人間を丸ごと乗っ取ってしまうのでした。そしていつものごとくやっぱりAIの方が強いのね。 ネタとしてはよくあるものなんだけど、見せ方が工夫されていてちょっと目新しかった。AIのコントロール下で超人になっちゃう主人公が、自らの意思と関係なく狼藉を働く時のパニック表情やせりふが動きと真逆でコミカル味を出してたり。動きもまた2Dのゲームみたいなんですよね。コミカルな軽さに油断していると、かなりのビターエンドに心がひっぱたかれます。 100分という長すぎない尺も観易さに貢献していますし、コンパクトにきれいにまとまっている作品と思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-27 17:55:19) |
1014. フィールド・オブ・ドリームス
この映画に感動する人とはアメリカ人か、それと同じくらい野球が好きでシューレス・ジョーはじめアンラッキー・エイトの面々に同情を抱いている人。そして肉親とわだかまりがありながらも、ちゃんと心の底では情愛で繋がっている人。 二つがどんぴしゃにハマればこんなに心に響くファンタジーはないでしょう。たくさんの人がこの映画に感涙していて、そしてそんな人たちを羨ましく思うわたしです。 [ビデオ(字幕)] 6点(2022-05-20 22:59:33) |
1015. LION/ライオン 〜25年目のただいま〜
《ネタバレ》 テレビの情報番組で15分もあれば紹介できる(実際見たことあるような)内容を2時間近くにふくらますのは脚本家も苦労したことでしょう。ドラマチックなのは近年急速に発達したIT技術で何万キロも離れた故郷を見つけ出すことに成功した、というくだりだけですもん。先進国ではたいていの人の日常は淡々と過ぎていくものです。ちょっと面倒な義弟がいたとしてもドラマにするほどのことではない。 どちらかというと前半のインドの混沌の方が圧倒的で、スラムドッグミリオネア再びといった描写には言葉も失います。孤児が道端で寝ていても大人は無関心で通り過ぎていく。あまつさえ犯罪者集団まで現れる。サルーが行政の保護下に入るまで何度もギリギリ犯罪者の手から逃れる場面があって、そんなインド社会の刹那なことにショックが強かったためオーストラリアで成人してからの後半は物語として完全にピークダウンした感がありました。構成としてあまり上手くいってないんじゃないかな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-18 23:35:20) |
1016. セブン・サイコパス
《ネタバレ》 7人(6人)分のサイコパスの方々が入り乱れてのお話なんですけど、どうも一点に収束する力が弱くてまとまりに欠けた結果とっちらかって終わった印象なのですよね。物語上の架空のサイコパス氏もカウントに含めるものだから現実にリンクさせるのが難しく、脚本でも苦労したことでしょう。ベトナム人の件はとても無理矢理です。 ストーリー展開はだからちょっと肩すかしで面白いとはあまり思えないのですが、でも私けっこう観てる間は好感触だったです。 主要人物らが役にハマっていて生き生きしちゃってるんですよ。特にS・ロックウェルとファレルとウォーケンのバランスが良いです。何考えてるのか底知れないお調子者なロックウェルと茫洋と振り回されるC・ファレルと人生経験の差で達観した落ち着きを見せるウォーケン。そこに愛犬家の殺し屋ハレルソンがキレ気味に絡んでくる。この構成がドラマとして配置抜群で役者の演技力も申し分なし。乗せられてちょっと楽しかったです。ほんと、もう少し話に力があったらなあ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-10 17:22:06) |
1017. 007/消されたライセンス
《ネタバレ》 T・ダルトンボンドの作品は脚本がすっきりしていて観易いのだけど、その分今回はちょっとヒネリが無さ過ぎかも。でもまあ敵役はおっかないし火薬の量はすんごく多いし、普通に楽しめました。 Qが現場に出てきた!とか久々仕事のできるボンドガールの存在が大きいとか(ボンド、彼女がいなければ3回くらい死んでますよね)、見どころも多々あります。 若きデル・トロが見られるとは思わなかった。とてもキレてる殺し屋を好演でした。さすがです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-03 14:40:17) |
1018. 007/リビング・デイライツ
歴代ボンド作の中でもすっきりと観やすい一本でした。 ティモシー・ダルトンの身体能力が高くて、てきぱき動けるのも画がもたつかなくて良い一因なのかも。007ぽい能天気で派手な見せ場もスタンダードなカメラ演出で疲れずに観られます。 ボンドガールがこれまでにないレベルのお馬鹿さんで、ボンドの足を引っ張ってるのみにしか見えないのですが、ぱっと見ナスターシャ・キンスキーかと見間違えそうなほどの美形なのが幸い。スクリーンの彩り役割としては満点でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-04-19 22:40:38) |
1019. 天才スピヴェット
《ネタバレ》 物語も画も、子ども向けの上質な絵本といった趣。 個性的な家族と美しい自然と科学への探求心と、心に負った傷。これが10歳のT・Sのすべて。 T・Sが冒険心を起こして向かう状況の全てが「過酷さ」を排しているので、かなりファンタジー寄りです。子ども一人がうろうろしているのに大人が誰も通報しない、というのも子ども目線では理想形。‶人語を話すペット”的な相方がいればもっと完璧だったかも。 T・S役のカイル君が半端ない透明感で、小奇麗な画にぴったりとハマります。ストーリーのユルさは大人には物足りないけれど、とにもかくにも画の美しさに引っ張られての鑑賞でありました。 [地上波(字幕)] 6点(2022-04-12 22:45:47) |
1020. 世界一不幸せなボクの初恋
《ネタバレ》 邦題の”初恋”を乗っけるにはちょっと年のいったおじさんのロマンチック・コメディでした。(正確には初恋ではないし) でもM・フリーマンが40過ぎの純情を演じるに無理を感じさせないキャラクターなのが幸いして、観てるこちらも心から応援したくなります。もっとも未だに”BBCシャーロックのジョン”のイメージは抜けないのですがね。(今作もほぼジョン) なんとなくチャーリーってベサニーのような文系個性的女子と上手くいきそうと思ったけれど、肉食系フランチェスカの方に惹かれちゃうんですね。それもなんか現実にありそうで、わからんでもないです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-04-05 23:56:26) |