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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1061.  復活の日 《ネタバレ》 
尋常ではない製作費を放り込みながら、南極ロケやら(いかにウソをつくかも作り手の才能なんだから、わざわざご当地まで行かなくても…)微妙なオールスターキャストやらにドバドバと金を使い、全体を眺めると大作感を著しく欠いた印象となっています。中盤の潜水艦戦や後半の核爆発といった派手な見せ場がスペクタクル映画としての印象を左右する要だったのに、そういった大事なポイントに限ってお茶を濁しているため、製作費とは裏腹に妙な安っぽさが漂っているのです。また、深作欣二監督がSF向きではなかったのも問題。話は間違いなく世界規模なのに、見ている間は特にスケール感がありません。世界各地で派手にロケをやってるものの観光地巡りに終わっており、全世界を感じさせるところまで行っていないのです。本来この映画は観客の知的好奇心に訴えるべき話だったのに、監督がSF的なトンチを語ることに重きを置いていなかったのが原因だったと思います。例えば「ターミネーター」という映画は夜のLAが舞台の低予算映画でしたが、登場人物から語られる話の背景により、人類規模のスケール感を持たせることに成功しています。SFはいかにトンチを披露するかがカギであり、またこの作品には素晴らしいアイデアが満載されていたというのに、それをほとんど活用できていないのはもったいない限りです。その一方で監督が力を入れていたのがドラマパートだったようですが、これが過剰で笑ってしまうほどでした。とにかく濃いこと。科学者も政治家も医者も、登場するやみんな大声で怒鳴る人ばかり。終末観を煽るための演出でしょうが、「どんだけ短気な人ばっかなんだよ」とだんだんコメディを見ている気分になりました。間寛平みたいにのたうち回る感染者、世界の終わりに過剰に動揺する渡瀬恒彦、白衣でモーターボートを操縦する多岐川裕美、「わしゃもうダメだ」と執務室で毛布にくるまる米大統領等、枚挙に暇がありません。そんな深作演出ですが、これを突っ切ってみせた終盤は非常に素晴らしかったと思います。仙人のような出立ちでひたすら南を目指す草刈正雄の壮絶さは、深作監督でなければ出せなかったと思います。あの無言から発せられるとんでもない執念と、それと表裏一体の絶望感。「あの小さな家にどうやって辿りつけたんだ?」「てか車で行きなさいよ」などというツッコミすら忘れさせるパワーに4点献上です。
[DVD(字幕)] 4点(2008-06-29 05:01:44)(良:1票)
1062.  ヘアスプレー(2007) 《ネタバレ》 
【かなり厳しく批判します。この映画を好きな人は読まないで下さい】ハリウッド映画万歳、娯楽万歳の私ですが、そんな私がもっとも嫌いなタイプのアメリカ映画。純粋無垢な主人公が社会に存在する差別と出会い、「そんなのおかしいじゃない!」と立ち上がるのですが、あくまで優等生的な発言ではなく「純粋な心で考えてみたけど、やっぱ差別はよくないよ」というスタンスがポイント。最後は主人公もサクセスし、古い考えや差別に凝り固まった連中をぎゃふんと言わせてめでたしめでたし。…って、なめとんのか!人種問題を扱っているようでいて、その実何も考えていない、それどころか「悪いのはこの映画に出てくる悪役のような連中なんです。大多数の白人は悪くありませんよ」という弁解にすら聞こえるこの映画の主張にはうんざりしました。ベルマ親子のような極端な人間だけが偏見を持っているのであれば、人種差別はそれほど深い問題ではありません。そこらにいる普通の人々が当然のように偏見を感じる、この映画におけるウォーケン&トラボルタ夫婦のような気の良い人たちが何となく有色人種を避けている、これが差別問題の根深いところではないでしょうか。スピルバーグの「カラーパープル」という映画には、黒人に対して寛大な善人だと自分で思っているものの、無意識のうちに無神経な言動をとる金持ちの白人おばさんが登場します。一方スパイク・リーの「ドゥ・ザ・ライト・シング」という映画には、「それは差別だ!」と大声で叫んで自分の要望を押し通そうとする黒人が登場します。人種問題を真剣に扱おうとすると、このように善悪で割り切れない難しい構図が現れてくるもの。「一昔前の一部の心ない白人が悪いんです」という言い分はあまりに誠実さを欠きます。自分とこの社会でいま現在も続いている問題に対して、よくも他人事のように善人面できるもんだと呆れてしまいました。その無神経さがよく表れているのがクライマックスで、悪意ある人間を文字通り隅に追いやり、「善人」だけが大いに盛り上がって終了というのはあんまりでは。人種によって扱いを変えることが社会の秩序とされていた時代には、こういう映画を作るような人たちが差別の片棒を担いでいたのだと思います。正直、観た直後は最低点をつけてもいいかなと思ったのですが、この映画を愛する多くの方々への敬意とミュージカル部分への評価を乗せて、ここは2点としました。
[ブルーレイ(字幕)] 2点(2008-06-24 02:32:32)
1063.  エイリアン3/完全版
多くの監督・脚本家が関わりながらも一向に作品がまとまらず、ニュージーランド出身のヴィンセント・ウォードがようやく監督に就任するもあまりに突飛なアイデアの数々にスタジオや現場もついていけなくなって降板。巨大セットを組み、人材も集め、公開日も決定している中、監督・脚本がないという異常事態で呼ばれたのがフィンチャーだっただけに、完成した作品には製作時の混乱がよく表れています。ハゲ頭に同じような格好の囚人は誰が誰だか区別がつきませんが、あれは脚本未完成のまま撮影に突入したため、ひとりひとりの個性やエピソードが固まっていないことから必然的に生じた混乱でしょう(同一人物とは思えないほど性格がコロコロ変わるキャラクターも何人かいます)。また、見せ場の少ない本作において作品の要となるべきはクライマックスのアクションですが、薄暗い廊下を囚人が走り回っているだけという地味なもので、しかも作戦の概要や位置関係がよくわからないので、作戦が成功しているのか失敗しているのかすらよくわからないというグダグダぶり。挙句、作品の完成度に疑問を持ったスタジオによってズタズタにカットされ、さらにまとまりの悪くなった状態でエイリアン3は世に出されてしまいました。スタジオによる干渉を受ける前の形であるこの完全版は劇場版に比べて出来がかなり向上していますが、やはり前述した根本的な問題点を抱えたままなので、完成度の高い作品とは言えません。しかし、結果的に不完全な形になってしまったものの、この作品が目指した深遠なドラマは注目に値するものです。「2」を継承した娯楽大作にするのが観客受けを簡単かつ確実に狙える路線だったはずですが、そうした安直な方法に走らず、あくまでSFとしての斬新さやドラマ性を追及した製作陣の姿勢は評価に値します。また、天才監督デビッド・フィンチャーの才能が、「セブン」や「ファイト・クラブ」にはない面白い形で発揮されています。「地獄の黙示録」がそうであったように、作品が不完全であることの味が漂っているのです。寝てても面白い映画を撮れる天才監督が、極限まで追い込まれて作った作品に漂う狙っては出せない味。エイリアン3にはそれがあるので捨てがたい。なので「2」と同じ8点をつけました。
[DVD(吹替)] 8点(2008-06-23 01:43:28)
1064.  エイリアン2/完全版
「コナンPART2」にシュワルツェネッガーを持っていかれ「ターミネーター」の撮影が1年近く中断した際、お母さんから仕送りしてもらわないと食うにも困っていたキャメロンがバイトで執筆を引き受けたのがエイリアンの続編とランボーの続編だったということですが、当時から傑作の誉れ高かった「エイリアン」をここまで自分流にアレンジしてしまう若手は怖いもの知らずというかタダモノではないというか、やはりキャメロンは普通ではありません。リドリー・スコットは続編の依頼があればぜひ引き受けようと思っていたそうですが、この脚本があまりに目を引いたためか監督はそのままキャメロンに決定し、リドリー・スコットには声すらかからなかったとのことです。密室スリラーから戦争アクションという大転換は今から見ても斬新ですが、大味に見えて第一作との連続性が十分に保たれているのは巧いところ。リプリーが収容されてからLV426へ戻るまでの過程が丁寧で、ここが第1作との橋渡しの役割を果たしているので、人間がエイリアンを殺しまくるという前作とまるで逆のことがはじまっても違和感はありません。また、機械や重火器の描写を得意とするキャメロンのおかげで宇宙海兵隊がきちんと強そうに見えるので、殺されまくるエイリアンが必要以上に弱く感じられることも避けられています。SFオンチ、機械オンチの監督ではこうはいかなかったでしょう。クライマックスにおいては【舞台の爆破→ギリギリの脱出→しつこく船に紛れ込んでいたエイリアン→宇宙への放出】と第1作と同じ展開のアップグレード版となっており、あれは意図的なオマージュでしょう。監督3作目(「殺人魚フライングキラー」は撮影3日目でクビになったので実質2作目ですが)にしてキャメロンの演出はとにかく冴えまくっています。見せ場の連続と評価される本作ですが、実際の見せ場は◆海兵隊とエイリアンの初コンタクト、◆立て籠った拠点へのエイリアンの襲撃、◆ニュートの救出、◆クィーンvsローダーの4つだけで、海兵隊がはじめて発砲するのは本編開始から75分地点。意外にも見せ場は少ないのですが、まったく弛まない緊張感と「アクションまだ?」と微塵も感じさせないドラマパートの充実により、2時間35分すべてに渡ってえらいものを見せられた気分にさせるのです。わんこそばのように見せ場を流し込むだけの昨今のアクション映画とはまるで作りが違います。
[DVD(吹替)] 8点(2008-06-22 19:00:34)(良:4票)
1065.  GODZILLA ゴジラ(1998)
よく言われることですが、日本人の描く怪獣は人間では対抗することのできない神に等しい存在で、一方ハリウッドのモンスターはやがて人間の力によって命を奪われてしまう存在。これをはじめて見た時は、ヘリや潜水艦からの攻撃、果ては歩兵の撃つ自動小銃からも逃げているゴジラの姿が印象的でした。最近公開された「クローバーフィールド」は日本の怪獣映画を参考にして作られたと言われますが、結局あれも軍隊の力でモンスターに対抗していたので、やはり怪獣の捉え方は日本独特のものだと思います。そんな特殊な文化的背景を持つ「ゴジラ」の製作ですから、エメリッヒも相当苦労したと思います。例えばゴジラの出自ひとつとってみても、不思議なことに日本人はあれが一体何者なのかということに説明を求めません。ゴジラが水爆実験によって復活した太古の恐竜という設定を知らない人は意外と多いのではないでしょうか?キングギドラの基本設定がコロコロ変わったり、最後のつがいが死んで絶滅したはずのラドンが次作に登場したり、ゴジラに息子がいたりしても何となく受け入れてきたのも、やはり「怪獣は人智の及ばない存在」という捉え方から来ているのだと思いますが、ハリウッドで映画化するとなればそれなりに納得できる説明が必要となります。批判の多い巨大イグアナという設定にしても、さすがに太古の恐竜という話を世界マーケットでそのまま押し通せるものでもないので、あれはあれで仕方のない方便だったと思います。そんな難しい映画化でしたが、前半は非常に巧く作られていて感心します。主人公が局地的な異変を辿りながらゴジラの存在に行きつく展開はこれまで製作されたどの続編よりも1954年版に忠実で、かつ退屈になりがちな序盤の前振りをここまで面白く撮っているのはさすがです。ミミズの突然変異を研究してる学者、テレビ局に勤める野心家の元カノ、愛妻家のカメラマン、保険調査員と称して事故現場に現れるフランス諜報部員と、普通ではちょっと思いつかない登場人物を配置してるのも面白く、かなりよく考えて作られた映画だと思います。ただしエメリッヒ作品毎度のことですが後半になるにつれ演出がグダグダになっていくし、ゴジラが軍隊から逃げ回るという同じような見せ場を何度も見せられたのでは飽きてくるし、せっかくの登場人物を活かしきれていないしと、明らかな問題点も指摘できるので、ここは5点という評価で。
[DVD(吹替)] 5点(2008-06-22 03:51:00)(良:2票)
1066.  シーズ・ソー・ラヴリー 《ネタバレ》 
恋人のためなら触るもの皆傷つける痛々しいまでの愛情を描く映画かと思いきや、中盤辺りからどんどん雑になっていき、最終的にドタバタコメディで締めくくるという闇鍋状態の映画でした。前半はすごく面白かったんですよ。乱暴者のショーン・ペンが彼女に注ぐ愛情がよく描かれており、そんな大事な彼女がレイプされたなんて知れば、相手の男に対して何をするかわからない緊張感や危なっかしさもよく出ています。しかし短い尺のためか説明不足が多く、中盤以降は唐突な展開が何度も起こって話が怪しくなってきます。ショーン・ペンが逮捕される展開など、事前に彼の精神に異常のある描写がなく、ヤンチャのすぎるお兄ちゃんという印象しかないため、突如異常行動をはじめる展開にかなりの違和感。また彼の退院時。長い治療によって「カッコーの巣の上で」状態となっていたショーン・ペン。失われた時間の重みを感じさせる壮絶な場面なのですが、その後トラボルタ家に行く頃には、映画的な理由付けもないまま10年前と特に変わらない元の彼に戻ってしまいます。なんで?またトラボルタ家の描写も非常に浅く、クライマックスの決断と対比されるものが家族愛であることを考えると、その描写が薄いというのは映画としてのバランスがよろしくありません。前半が丁寧だった一方で、本来話のメインであるはずの後半パートが杜撰なのは残念です。とはいえこの映画の着地点は非常にユニークで私は嫌いではありません。クライマックス、ショーン・ペンがトラボルタに「彼女は俺のこともあんたのことも愛してないんだ!」と叫びますが、あれがこの映画の言いたかったことでしょう。女性というのは恋に恋してるだけで、別に男性に対して愛情を持ってるわけじゃないんだよと。しかし男は、女性から愛されようと必死になってしまう。そんな女性の身勝手さと、女性に右往左往させられる男のどうしようもなさがこの映画の主題ではないでしょうか。ベタベタなタイトルも、女性に対する男たちの気恥ずかしいまでの思いと健気さを表したものだと思います。話のキーとなるロビン・ライト・ペンの心情を後半においては一切描かなかったのも、これは女性に振り回され、それでも愛されたいと頑張る男目線のラブストーリーなので、意図的に彼女の心情は描かなかったのでしょう。そんなわけで、目の付け処は悪くないのにそれを活かしきれなかった本当に残念な映画でした。
[DVD(字幕)] 4点(2008-06-08 04:26:31)(良:1票)
1067.  ミスト 《ネタバレ》 
監督は一般にドラマ路線のイメージの強い人ですが、「エルム街の悪夢3」でデビューした、元はこっち方面の人。その時代の「ブロブ/宇宙からの不明物体」は出色の出来で、観客の先読みを読んでその裏をかいてきたり、静かなテンポからスペクタクルへの大転換をやってみせたりと、B級モンスター作品でありながらかなりの技量を見せた人物です。また「ザ・フライ2」や「フランケンシュタイン」では異形の者の悲しみを描いており、ホラーとドラマをこなす人物なのですが、その2つの才能が本作では見事に発揮されています。丁寧かつ周到な人間描写と、タイミングを心得たモンスター描写の巧さ。何も見えない霧という設定が非常に秀逸なのですが、外部の状況が読めない、解決策が見えない分、人々は答えをスーパー内部に求めようとします。最初は「変な人ね」とバカにされてたあのウザイおばちゃんが、人々の不安の中で多数派の指導者となっていきます。主人公のような具体的な行動は何ひとつしていないのですが、「悔い改めて神の意志に従うことで救われる」という解決策を唯一持っている人物なので、答えを求める人々が彼女の元に集まってくるのです。そして宗教的な熱狂と集団心理から、何の責任もない下っ端の軍人をリンチし、子どもを生贄として差し出そうとまで言い始めるあたりの怖さとリアルさ。主人公もまた、この事態から脱するための答えを求めています。彼の信じた答えはより現実的で、駐車場の車まではなんとか辿り着けるだろうから、車に乗ってともかく行けるところまで逃げようというものでした。観客にとってもマトモに思える答えでしたが、これを正解としなかったのがこの映画のニクいところ。エンドクレジットで響くヘリの音は軍による大規模な救援を意味し、スーパーに留まっていればじきに助けが来ていたことの暗示でしょう。「主人公のやることは最終的に正しい」という映画の定石を逆手にとり、とんでもなく絶望的な印象で映画を締めくくってしまいます。またモンスター描写も圧巻で、モンスターが登場するシーンはそれほど多くないのですが、圧倒的な恐怖演出と描写の不快感、タイミングのうまさで、終始とんでもないモンスターに取り囲まれているという緊張感が全編を貫いています。ここまで全身に力を入れながら見入った映画はここ数年なかったと言えるほどで、久しぶりに10点を献上できる作品に出会いました。
[映画館(字幕)] 10点(2008-06-02 02:46:37)(良:8票)
1068.  HERO(2007) 《ネタバレ》 
テレビ版が好きだったので見に行きましたが、相当な期待外れでした。映画らしいと言えばフジテレビの威光でやたら豪華なキャストを揃えているところのみで、脚本も演出も映画館で見るに値するレベルに全然及んでいません。とにかく荒さの目立つ脚本で、特にすごいのが「男魂」の扱い。「男魂」とペイントされた容疑者の車が事件の有力な証拠だということでこの車両の捜索が映画前半のメインエピソードとなるのですが、韓国まで追いかけてようやく発見したこの車両が後半の裁判で決定的な役割を果たすのかと思いきや、被告側の弁護士である松本幸四郎の一言であっけなく証拠としての採用を棄却され、後半では「男魂」の「お」の字も出てきません。普通の映画文法では、前半であれほど時間をかけて追いかけたものは後半の伏線になるはずなのですが、ここまで無意味になってしまうのはさすがにどうかと思いました。1時間ドラマ程度の内容しかない脚本の時間稼ぎのため、またゲスト出演のイ・ビョンホンを登場させるべく韓国へ舞台を移すため、車両の捜索という本筋とは無関係なエピソードをねじ込んだようにしか見えませんでした。またキムタクのキャラクターも映画版ではあざとく感じました。ラフな服装と型破りな言動で一見すると検察官としての能力はなさそうだが、実は熱い心を持って事件にあたる久利生公平。彼の人間味溢れる捜査で事件のみならずその背後にある人間ドラマも解決していくこと、またパっと見で彼を判断する連中を最後にはギャフンと言わせる痛快さがドラマの面白さでした。それはやはり1時間枠のテレビドラマで、しかも月曜9時。深く考えずに1時間でさくっと見るからこその面白さだったのだなと映画版を観て再認識しました。上映時間は倍以上になり、見ている側の集中力も格段に違う映画においてはやはり勝手は違います。どうでもいい捜査を延々見せられた末に、ラストはキムタクの演説で判決が出てしまうという適当さ。キムタクが人情話をすれば、状況の吟味や証拠の検証などもすっ飛ばしてみんな「はは~」っと納得してしまうわけですよ。それはあんまりでしょ。
[映画館(字幕)] 4点(2007-10-06 19:13:02)
1069.  ドッグヴィル
この監督、ものすごい天才だが精神年齢は幼稚園児並のような人ではないでしょうか。線が引かれているだけというセットとも言えないセットで、文学的なナレーションに沿って進むこの話。ここまで実験的な体裁をとった作品は他にありませんが、これを3時間退屈しない出来にしているのはやはりすごいことだと思います。また衝動的に作っているように見えて非常にはっきりとした起承転結を持っている話であり、クライマックスに至っては観客にカタルシスすら与えているだけに、やはり見る側の感覚や面白みもきちんと計算して作った作品だと言えます。村人の嫌らしさや憎たらしさもよく表現できており、なかなかうまいものだなと感心させられました。脚本・演出の腕前は本当に一流だと思います。その一方でこの監督の人間観は非常に幼稚だと言えます。過去の作品を見ても、この人は人間を善悪の二面で捉えている傾向があります。登場するのは良い人か悪い人で、良い人であっても何かをきっかけに突然悪意を向けてくる。絶望的とも言える人間観ですが、しかし実際のところ、人間は善悪そこそこでバランスをとりながら生きている存在であり、またお互いに影響を与え合いながら生きている存在ではないでしょうか。自分に対して悪意を向けられる場合においても、その根元には必ず相手と自分との関係性の変化があり、その原因は相手と自分の両方にあるのです。しかし監督はこの「お互い様」を理解できない人なのか、この人の作品の登場人物は毎度一方的に悪意を受け、傷つくような描写がなされます。この監督は本質的に人間というものが見えていない人なんだと思います。なぜ人は悪意を向けてくるのか、その原因がわからないからこそ病的なまでの人間不信なのでしょう。クラスにはたいていいじめられっこタイプがいます。その子に悪意はないものの空気の読めない言動で次第に周りから嫌われるのですが、悪意を向けられると途端に被害者モードに入ります。自分の何が悪かったのかを考えないまま周囲を悪者にして殻に閉じこもるというその性質が、この監督からは感じられます。そういった意味では、この監督の作品は空気の読めない人にとって世界がどう見えているのかを理解するよいサンプルだと言えます。
[DVD(吹替)] 7点(2007-09-08 21:06:23)
1070.  ゴーストライダー
ものすごく偏差値の低い映画で最高でした。メラメラと燃えてるガイコツがバカ笑いしながら大好きなバイクで爆走。スーパーマン・リターンズやバットマン・ビギンズが描いていたような苦悩や葛藤、トラウマは一切なく、バカなヒーローがうれしげに腕力を振るうのみという素晴らしい内容でした。特に最初に変身した後の豪快な暴れっぷりは見もので、父親とのドラマや悪魔との契約や業というそれまでの話がコンマ1秒で飛んでいくほどのバカさ加減を披露していました。こんなバカのためにえらいもったいぶっていたメフィストもバカに見えました。また、こんなバカにあっけなく倒される敵もバカに見えました。同様に、こんなバカに振り回される警察もバカに見えました。何より、あれやこれやと気を揉み、将来を約束した恋人を捨てるほど悩んでいた姿がこれかいと、ニコラス・ケイジがすごいバカに見えました。頑張って苦悩の演技をすればするほど、「夜になればアレに変身するんでしょ」と本当にバカに見えます。とにかくバカに溢れた映画ですが、それがあまりに突き抜けており、かつ脚本のレベルの低さと反比例してビジュアルが丁寧に作りこまれているので嫌いになれません。メラメラと燃えるバイクがビルの壁を垂直に登る!水の上も走る!馬も燃える!怪力でヘリコプターを振り回す!こんなどうしようもない場面をきっちりと実写で見せてしまうわけです。技術スタッフの努力の賜物と言えますが、同時にこの監督のビジュアルイメージも実に達者だなと感心させられました。今回は敵が弱いこともあって「ゴーストライダー誕生篇」という感じでしたが、ぜひともシリーズ化して次回作は「死闘篇」として、もっとすごい戦いを見せてくれればなぁと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2007-09-08 20:11:56)
1071.  トランスフォーマー
子供の頃に大好きだったトランスフォーマーがハリウッドでまさかの実写化!しかもマイケル・ベイ&スピルバーグ!全世界ですさまじい大ヒット!公開日を指折り数えるほど期待しつつ見に行ったのですが、ここまでつまらないとはと愕然としました。正体不明のヘリがロボットに変形し、突如カタールの米軍基地を襲うイントロは最高。また冴えない主人公のために愛車(実はトランスフォーマー)がお節介を焼く前半部分もほほえましく、最初の1時間は本当に楽しめました。「宇宙戦争」や「ET」の良いところを合わせた感じで、スピルバーグの味がよく出ているなと。しかし話のテンションを上げていかねばならない中盤以降になってもくだらないギャグは止まらず、ダラダラと緊張感のない展開に辟易。マイケル・ベイ印のアクションは毎度音だけはデカイものの、細かいカット割りで訳が分からず。キャラクター物って、立ち姿やファイティングポーズをこれでもかとかっこよく見せてあげるのが大事だと思うのですが、その美学が完全に抜けていました。またトランスフォーマー達に個性がないのも重大な欠点。アニメのトランスフォーマーがヒットしたのは、それぞれのロボットに個性があったことです。トランスフォームする前の乗り物やアイテムに沿った性格付けがなされ、トランスフォーム後もアイテムの特性を引き継いだ強み・弱みがありました。また同じような強みを持つ個体が敵の集団にもいて、各キャラクターにライバルがいました。このようにキャラクターが面白いことで話も面白くなっていたのですが、今回の実写版ではどのキャラクターも同じようなデザインでオプティマス・プライム以外はほとんど判別がつかず、一応性格や特技の設定は設けられていたものの、いざバトルに突入してもその特技が活かされることがまったくないという状態。否定的な意見はもっぱらマイケル・ベイに向けられているようですが、この実写版はトランスフォーマーへのそもそもの理解の部分で失敗しているように思います。アニメではあれほど強烈だったスタースクリームの個性がなくなっていたり、メガトロンをあっけなく殺してしまったり(しかも人間の手で)と、オリジナルが好きな人が作ったとは思えない部分が多々ありましたし。
[映画館(字幕)] 3点(2007-09-08 19:11:56)(良:1票)
1072.  デス・プルーフ in グラインドハウス
期待して見に行ったのですが、あまりに面白くなくてガッガリでした。そもそも「グラインドハウス」は上映形式が先立った企画のはず。上映時間が短く内容も薄いB級映画だが、2本同時に見られて、おまけにいかがわしい予告編もあって妙な満足感がある。いわば新橋のそば屋の「カツ丼&そばセット」のようなものです。ひとつひとつのメニューは誉められたものではないが、ふたつを同時に味わえるからそれはそれでいいじゃないかという。そんなチープなボリューム感を復活させることが趣旨の企画であり、それぞれの作品も同時上映を前提に意図的に安っぽく適当に作られているだけに、一本ずつに切り離されてしまうと相当ツライ。しかも本来内容のない映画を一本の上映作品として成立させるため、オリジナルにはなかったシーンを追加して上映時間を水増ししてしまったのがさらに裏目に出ているように感じました。ダラダラと続く会話が退屈で仕方なく、内容からするとこの映画は90分程度が限界だったと思います。商売に合わせて作品を勝手に編集することで有名なワインスタイン兄弟ですが、ここでも兄弟の儲け主義が作品の価値を失わせてしまっていて本当に残念です。本編開始前に流れた「プラネットテラー」の予告が相当面白く期待が膨らんだのですが、「デスプルーフ」がこの状態では「プラネットテラー」も推して計るべしだなという感じです。「プラネット・テラー」はあえて劇場に行かず、DVD発売の際に「デス・プルーフ」との同時上映にして「ひとりグラインドハウス」を楽しみたいと思います。
[映画館(字幕)] 4点(2007-09-08 18:14:41)(良:1票)
1073.  サンシャイン 2057 《ネタバレ》 
死にゆく太陽を復活させるというあらすじ、おまけに主要キャストに日本人俳優と聞けば映画の出来がクライシスだった「クライシス2050」を思い出しますが、こちらはハードSFとして相当レベルの高い仕上がりです。破壊的な太陽光と常に隣り合わせで宇宙をポツンと航行しているという、想像するだけで背筋が凍るようなシチュエーションを見事に映像で表現しており、特に前半などは「2001年宇宙の旅」や「エイリアン」などと比較してもまったく遜色ないほどの仕上がり。人間関係がひたすら淡々としていることも、かえって不気味さを煽ります。「地球を救うために絶望的なミッションを引き受けたクルーはどうなっていくのか?」ということを突き詰めて考えた結果がこれなのでしょうが、いちいち心情の説明をしてもらわないと話を理解できないような客層をはっきりと切り捨て、終始ドライに徹することで作品の味を保っていると言えます。また科学考証についても同様で、かなり厳密な科学考証に基づいて書かれた隙のない脚本ですが、説明的な描写が入らないので知的好奇心の高い人でないとついてくることは難しいのではと思います。このように明らかに客を選ぶ映画であり、娯楽という呪縛から解き放たれたおかげでハードSFとしては成功しているのです。そして、クールな前半から一転して後半は演出・脚本・編集のすべてが大暴走をはじめ、観念的な世界に突入します。監督&脚本家の前作「28日後…」同様ここで一気に作品が崩壊をはじめるのですが、本作ではより確信犯的に作り手たちが作品を破綻させています。要は「イベント・ホライゾン」とまったく同じ末路なのですが、「5人いる…」から一気にテンションを上げてこの見せ方というのが実にうまい。娯楽的なわかりやすさを徹底的に排除することで、作品が陳腐になることを回避できているのです。一応はミッションの成功という形で締めくくられますが、イカロス2号であれほどの事があったとは知らず太陽の恵みを受ける地球の人々を描くことで、見終わった後もいろいろ考えさせる映画になっているのも見事。SF好きは要チェックの映画だと思います。
[映画館(字幕)] 8点(2007-04-20 16:01:53)(良:7票)
1074.  ブラッド・ダイヤモンド
「ラスト・サムライ」では時代劇で日本人を感動させるというウルトラCをやってのけたエドワード・ズィックがまたしてもやりましたね。綿密な研究により極めてリアルにアフリカの問題を描いた良作です。ダイアモンド争奪戦を軸に、政府軍とゲリラ勢力の対立、虐殺、少年兵、先進国の無関心、貧困につけこむ大企業・傭兵とさまざまな要素をぶち込み、これを破綻させることなく上質なドラマにまとめ上げ、さらに娯楽作としても満足の仕上がりにしてみせる手腕は相変わらず見事としか言いようがありません。ロケーションにこだわった映像の説得力は抜群でアフリカの悲惨な現実を浮き彫りにするし、アクションも見ごたえ十分。少年兵のくだりなどは特に恐ろしかった。また、主人公3人がそれぞれの思惑を持ってダイアモンドを目指すあたりにも感心しました。なんだかよくわからない理由でアクションをやる主人公の映画が多い中、本作の登場人物たちはそれぞれにしっかりとした動機を持っているので、余計な疑問を持たずにドラマに集中できましたから。「アミスタッド」「グラディエーター」とアフリカ人役でおなじみジャイモン・フンスゥ、頭の良い美人をやらせたら天下一のジェニファー・コネリー、「ハムナプトラ」「24シーズンⅣ」など胡散臭いえらいさんにピッタリのアーノルド・ボスルー、各自よくハマっていました。ただし唯一残念だったのがディカプリオで、確かに彼はよく頑張っていました。超現実派のひねくれ者が次第に人間味を取り戻す過程を嫌みなく巧みに演じていたし、アクションも非常によかった。ただ、アフリカの内戦を戦い抜いた百戦錬磨の傭兵にはどうしても見えないという大きな弱点が。体の線が細いし、あの童顔ではヒゲを生やしてもあまり強そうには見えません。同世代の俳優であればマーク・ウォルバーグあたりの方がより傭兵らしく見えたと思います。こういうとこ、顔のいい俳優は損ですよね。本人がいくら頑張っても、ルックスのせいでできる役柄が相当限られてしまうので。トム・クルーズもブラッド・ピットも苦労しているところですが、ディカプリオは兄貴分のジョニー・デップのように演技とルックスを両立できる俳優になれるのか。とりあえず今は成長過程だと思います。
[映画館(字幕)] 7点(2007-04-13 01:41:28)(良:2票)
1075.  L.A.大捜査線/狼たちの街 《ネタバレ》 
この時期はなぜかポリスアクションが流行ってましたね。そんな時代の1本ですが、70年代に頂点を極めた監督の作品とは思えないほど珍妙な仕上がりとなっています。当時はかっこよく見えてたのか知りませんが、気の抜けるようなダサダサのスタイリッシュが画面を席巻。全裸のウィレム・デフォーが偽札を燃やすシーンには爆笑してしまいました。「新しい信仰 ”気にしない”という宗教」という意味のわからない歌詞の主題歌がいかにもかっこいいでしょってタイミングで流れたりと、フリードキンが柄にもないことやってんの丸出しで、見てる私が照れてしまう程です。とにかくこの映画で使われる曲はどれも意味不明で、サントラが欲しくなってしまいました。ただしそんな無様なスタイリッシュを除けば、フレンチ・コネクションの血を引いた無骨な刑事アクションとなっています。たまたま刑事やってるだけで根は悪人と変わらない主人公が、どんな手段を使っても標的を追い詰めるという漢の物語。主演は「ビースト/巨大イカの大逆襲」でおなじみのウィリアム・ピーターセン。「ビースト~」の時は胡散臭いおやじという印象だったピーターセンも、本作ではマシュー・マコノヒーを思わせるイケメンとして登場します。本当にかっこいいので女性方は驚いてください。そんなピーターセン演じるチャンス捜査官、彼女に対しては常に冷たく当たり、捜査についてもルール違反はへっちゃらな男の中の男なのですが、いかんせん弱いのが難点。すぐに敵の反撃を受け、準備してた捜査プランがどんどん悪い方向へと転がっていくバカっぷり。そしてラストでは、主人公なのにあんなことに…。リッグス刑事かアクセル刑事に弟子入りすることを強くお勧めしたい逸材です。それに対するはウィレム・デフォー。怪優のイメージの強い御仁ですが、本作ではミステリアスなイケメンカリスマ犯罪者として登場します。本当にかっこいいのでこちらも女性方必見です。そんなふたりの対決ですが、脚本の出来がいまひとつで話があちこちへ飛んでいってしまうので、対決という一番おいしい部分に焦点が合っていないのが残念。役者のハマり具合や話自体は悪くないので、もう少し整った脚本であればよかったと思います。冒頭の爆弾魔だとか明らかに必要のないエピソードが混じってるわりに、描くべき部分が端折られたりしていましたから。
[DVD(字幕)] 5点(2007-04-08 02:20:43)(良:1票)
1076.  エネミー・オブ・アメリカ
トニー・スコットならではのテンションの高い映像が楽しく、掴みは上々。トニー・スコットの手腕はもはやの名人芸のレベルで、チェイスシーンにおいてはただ細切れアクションを見せるだけでなく、NSAの操るハイテクの実力や、追う者と追われる者の位置関係等の情報を実にスムーズに見せてきます。こういう巧い映像を余裕で作ってしまう辺り、マイケル・ベイなんかにはまだまだ負けない娯楽アクションの王様の実力が感じられます。ただし作品自体は、そんなトニー・スコットの手腕におんぶにだっこの状態で脚本が致命的なまでに弱いのが残念。最初こそ盛り上がったチェイスも、同じような構図を何度も何度も見せられては飽きてしまいます。テンポをぐっと上げていかねばならない後半になると、逆に話のテンションまで失速気味に。諜報機関による殺人を隠蔽したいというそもそもの目的がありながら、街中でヘリを飛ばすはカーチェイスするはの大騒ぎという本末転倒な内容自体が、最後までテンションを引っ張っていく求心力に欠けていたように思います。こういうアクションのためのアクション映画って、見た目こそ派手でも最後まで緊迫感を保つことは難しいですね。またザ・ロック、アルマゲドン等、ジェリー・ブラッカイマーはプロの集団が寄せ集めや素人にしてやられる映画をよく製作しますが、こういうのも敵がバカっぽく見えるのであまり感心しません。機転を利かせて逃げるウィル・スミスよりも、あれほどのハイテク機器を駆使しながら標的を追い込みきれないNSAの間抜けぶりの方が目立っていました。そう思うと、本作と同じ巻き込まれ型映画であっても視点を主人公に絞り、追跡する側をほとんど描かなかったヒッチコックはやはり偉大だったなと思います。事情も知らない素人相手にミスを重ねる間抜けな姿をさらさないことで、恐怖を十分に維持できていましたから。ジョン・ボイド、バリー・ペッパー、ガブリエル・バーン、ジャック・ブラックと悪役にやたら豪華なキャスティングをしても、見せ方を間違えると役は引き立たないということがよくわかります。
[DVD(字幕)] 5点(2007-04-03 20:59:45)
1077.  デジャヴ(2006) 《ネタバレ》 
【予備知識一切なしで見るべき映画なので、未見の方がレビューを読まれる際にはご注意を】ブラッカイマー&トニー・スコット&デンゼル・ワシントンとくれば「いつもの無難なアクション大作だろ」と思いきや、史上空前のとんでもない仕掛けがぶち込まれた異様な映画となっていました。タイムスリップを題材としたSF映画は数あれど、アクション映画のメインアイテムとして大真面目にタイムマシンを登場させる大胆不敵さには驚きました。誰も思いつかなかったこの一発芸は、実に巧みな脚本と卓越した演出センスによって、映画として十分成立するレベルにまで到達しています。多くのヒット作の脚本を手がけてきたテリー・ロッシオは、このすさまじい題材がどうすれば観客に受け入れられるかを見事に計算してきます。いきなり「これはタイムマシンです」と言うのではなく、デンゼル・ワシントンが謎のマシンの正体を暴くという展開を入れることで説得力をぐっと増しているのです。また、トニー・スコットのハイテク描写の巧みさにも舌を巻きます。「好きな場所に入り込んで過去を覗き見ることができるが、膨大な情報処理には4日を要するため常に4日前の映像しか見ることができず、しかも一度に見られるのは一つのアングルだけで巻き戻しはできない」という煩雑な基本設定を観客に受け入れさせるというウルトラCに挑み、言葉と視覚を交えることで見事それに成功しているのです。装置がタイムマシンであることが暴かれる一連の描写も、脚本レベルの驚きのみに留まらず映像的な面白みも十分。右目で現在を、左目で過去を見ながらのカーチェイスという荒唐無稽な見せ場では、知的な面白さと映像的な興奮でテンション上がりっぱなし。ここまで煩雑な設定を映像で饒舌に語れる監督は他にいないでしょう。確かに細かいアラはいくつか目に入ります。タイムパラドックスの処理に矛盾があったり(爆発した救急車や血のタオルのくだりは時系列上明らかに矛盾が…)、犯人の扱いがやたら適当だったり(目的が最後まで不明、人物像も適当、爆弾魔なのになんでマシンガン持ってんだ…)、ヒロインがデンゼルを受け入れる過程の葛藤が単純だったり。こうした細部の甘さにより傑作となる詰めを外しているような気もしますが、このとんでもないアイデアを実行し、成功させたこと自体を評価しようではありませんか。
[映画館(字幕)] 8点(2007-04-03 12:49:42)(良:1票)
1078.  トム・ヤム・クン!
さらわれた象を探して悪党を倒すという狂った話でありながら、これが実に当たり前のことのようにマジメに描かれている辺り、タイのみなさんの象への愛情と愛着が感じられました。象をいじめるやつは死ねばいいんだというネイチャーへの熱い思いが日本人の私にも十分伝わり、野生動物を食材としか思わない中国人を倒しまくる場面には大興奮。敵に対する容赦のなさではスティーブン・セガールを超えているトニー・ジャーの魅力がよく出ていました。こういった単刀直入な展開とカンフー(この映画ではムエタイですが)の相性は抜群にいいですね。Xスポーツ軍団にはじまり、カンフー、カポエイラ、剣術、プロレス、オカマというマンガのような異種格闘技バトルはもう最高。トニー・ジャーの圧倒的な身体能力に頼りきった「マッハ!」よりさらに進化し、夢のような対戦カードを準備。それぞれの敵が十分にキャラ立ちしているのがうまいところで、また各自の特性を活かしたアクション演出にも目を見張ります。スタントだけでなく撮影や編集も相当に高度でセンスがあり、格闘バトルをここまでうまく撮るのはハリウッドでもちょっと難しいレベル。絶賛された「007/カジノロワイヤル」冒頭の肉体アクションよりも、こちらの対Xスポーツ戦の方が良くできていたと思います。とまぁカンフー映画としては大満足なのですが、マッハで成功した監督が色気を出そうとしたために映画のバランスが悪くなっているのが残念。前述したようにカンフー映画はシンプルであればあるほど面白いのですが、本作では警察の汚職やマフィアの権力争いなどの不要な展開が盛り込まれてしまっています。またそれが面白ければいいのですが、あまりにもシナリオが下手くそすぎて意味がよくわからないのが致命的。タイ人警官やタイ人コールガールが味方として登場するものの(良い人はたいていタイ人)、結局何の役にも立たないのではいない方がマシ。特にコールガールなどは登場の仕方はいかにも重要なヒロインという感じだったのに、その後何の役割も果たさず、トニー・ジャーを含む主要登場人物との絡みもなく、画面にもほとんど登場しないという素敵な状態。あの女優さんに撮影の途中で何かあったのかなと、こちらが心配してしまうほどでした。
[DVD(字幕)] 7点(2007-03-31 17:41:53)(笑:1票) (良:2票)
1079.  カラー・オブ・ハート 《ネタバレ》 
98年という年には「トゥルーマン・ショー」「ダークシティ」そして本作と、偽りの現実を変えてゆくという作品が3つも制作されましたが、その中でも本作のアイデアや切り口は際立っていたと思います。脚本も映像も非常によく作りこまれており、特に似たようなテイストだった「トゥルーマン・ショー」と比較してもこちらの方が断然優秀な作品だと思います(ダークシティは個人的に好みの映画なので別格)。プレザントビルの奇妙な日常が描かれる前半には大いに笑い、その予定調和が崩されていく中盤にはホ~っと感心し、保守と革新の対立が描かれるシリアスな後半からは人生の教訓をいただくという、3つの味わいのできるなかなか貴重な映画です。前半から中盤にかけては本当に文句なし。トンチが効いていて本当に面白い。そこから一気にシリアスモードに突入する後半部分こそが監督の主張したかった部分だと思うのですが、ここにくると前半にあったような見事なトンチが失われ、かなり露骨な展開となっていきます。ジェニファーのもたらした性とデビッドのもたらした暴力によって街は変貌するものの、変化を望まない者による弾圧がはじまるという内容ですが、全体主義・焚書・赤狩りときて、色付いた革新層を"Colored(有色人)"と呼び、保守層が「区別が必要だ」と主張しはじめるという直球勝負ぶり。人類の野蛮な歴史、とりわけアメリカの現代史を徹底的にデフォルメした含蓄のある展開であり、能天気な前半部分との対比でより衝撃度が増している辺りもよく計算されています。ただしラストの裁判シーンはあまりにも主張が強く出すぎているように感じました。被告となるColoredにはロクに弁護士もつけられず、また傍聴席においてもColoredは二階にしか座れないというのはかつての黒人裁判そのもの。そこでデビッドは多様性を認めることの重要性とともに、差別への言及もはじめます。それは色への差別とともに、女性に自立されては困るという発想は身勝手じゃないかとフェミニズムもチラリ。ん~、こんな立派な演説をする必要があったのだろうか?もしこれを口にするのならプレザントビルの住民からの方がよかったのではないだろうか?そこが唯一引っかかった点です。着地点があまりに露骨で単純すぎやしなかったかと。とはいえ、見終わった後にはそういったことも問題に感じないほどよくできたおもしろい映画なんですけどね。
[DVD(吹替)] 8点(2007-03-29 00:33:24)(良:3票)
1080.  マグノリア
一言で表現するには難しい(=観る者の咀嚼が必要となる)映画で、しかも3時間という長丁場。監督の演出スタイルが生理的に馴染むかどうかが大きいと思います。結局のところはポール・ハギスの「クラッシュ」と同じ話で、さまざなしがらみに苦しむ者たちの懺悔と救済。ある者にとっては許されざる罪を行った人物も、巡り巡って十字架を背負っているのだという「罪を憎んで人を憎まず」がテーマだと言えます。そうした因果を描くにはやはり群像劇がふさわしく、またそれぞれのエピソードを濃密に描く必要性を考えれば3時間という長丁場にも納得がいきます。どのエピソードも甲乙つけがたいほどよく出来ていたし、それぞれに身につまされるような人生の教訓が詰まっていました。撮影当時29歳だった監督が、ここまで成熟したドラマを作ってみせたことは驚異です。しかもただ説教をたれるだけでなく、遊びまで入れてくるというのがまた見事。登場人物はみな滑稽なのですが、それにより悲哀や人間臭さがよく出てくるという演出の絶妙さ。また編集の遊びも斬新で、あるエピソードが盛り上がってきたところでカットがぶつっと切れ、まったく違うエピソードに飛んでいってしまいます。話がおもしろくなってきた、その絶好調のところでいきなり切ってしまうだなんて!この監督、ぶっきらぼうに作っているようで、実は観客の心理を徹底的に計算しているのだと思います。せっかくおもしろくなってきたところで切るなんて怖いことができるのも、その計算に絶対の自信があるからなのでしょう。実際、このじらしによって特に前半は怒涛のおもしろさとなっており、また膨大な情報量を見る側に詰めこむことにも成功しているのです。一転してペースが落ち着く後半部分とのコントラストの役割も果たしており、まさに完璧な計算だったと言えます。そしてあのとんでもないクライマックス。バカバカしくもありますが、登場人物達のわだかまりを吹き飛ばす起爆剤という役割は立派に果たしており、突飛ではあっても作品の流れの中では非常に理にかなったオチだったと言えます。あの衝撃で皆吹っ切れ、清々しい朝を迎えていたではありませんか。前述した「クラッシュ」は終始シリアスで比較的テーマが伝わりやすいアプローチだったのに対し、本作はより高度な遊びをした結果一部の観客を切り捨てるという結果にはなっていますが、映画としての完成度は非常に高いと思います。
[DVD(吹替)] 9点(2007-03-27 23:27:08)(良:2票)
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