121. 希望の降る街
魅力的だった喧しくないケイリー・グラント、惹き込まれた気風の良いジーン・アーサー、惚れ惚れした生真面目なロナルド・コールマン。サスペンス、コメディ、ロマンスの塩梅が絶妙な脚本上で展開する三角関係を堪能し、とりわけ男同士の友情に胸熱に。本作のリプレイタイムはコールマンの右ストレートパンチ一閃シーンで背中に殴るオーラが滲んでおりました。他にも忘れ難い見事な演出シーンが満載の傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-11-17 23:58:12) |
122. 名探偵ホームズ/黒馬車の影
「暗闇にベルが鳴る」のスタッフが、切り裂きジャック、王室スキャンダル、フリーメイソン、政府の工作というダークな物語の雰囲気を盛り上げています。 その用意された舞台で躍動するジェームズ・メイソン、クリストファー・プラマーのお宝映像満載。 「ローマ帝国の滅亡」(1964)での共演(直接の絡みは無し)に大感激した身にとって、本作は大大大…感激。冒頭からエンディングまでこれでもかっ!という程のツーショットに夢見心地。ホームズへのとどめの一撃を間一髪で阻止して自らが刺され「犯人を追え」というワトソン。何という事はないシーンだけど、もうね・・・、子供の様に「あ~、○×△□◇・・・」興奮・悶絶状態。存在感たっぷりの70歳ジェームズ・メイソンを従えた50歳クリストファー・プラマーの喜怒哀楽豊かな表情(涙のシーンにホロリ)とキレのあるアクション、スカーフェイスの超絶オトコマエでの首相との対決、見目麗しい姿での熱演ぶりはベスト・オブ・クリストファー・プラマーと呼べるもの。 我を忘れて酔いしれた逸品。 [DVD(字幕)] 9点(2018-11-13 23:57:41) |
123. 毛皮のヴィーナス(2013)
ワンシチューエーションの役者二人のみの会話劇。92年の「赤い航路」が甦るエマニエル・セニエは年増のミミといったところ。対するマチュー・アマルリックの「もう、ここが何処だか・・」と言う芝居と現実の境目がなくなる攻守目まぐるしい展開で見せるM性、S性が絶品。「お許し下さい」「そうはさせない」が堪らない。口紅を塗られた姿はポランスキーの化身のようで、この時初めて彼は若きポランスキーに顔かたちが酷似していると気付く。 お互いへの信頼の上に成り立つSMプレイ。そこが抜け落ちている事への監督の警鐘なのか悔恨なのか。80歳にしてこのような作品を作り上げる監督の数奇な運命を背負って生き抜く強さを敬愛して止みません。 [DVD(字幕)] 9点(2018-10-15 10:31:42) |
124. 五本の指
《ネタバレ》 スパイ・サスペンス映画の最高傑作。殺害・格闘シーンは無く、金庫の国家機密書類をカメラで撮影する手口で至極アッサリしているにもかかわらず、実話ものというのも相まって、全編が痺れる緊張感に満ち満ちる。特筆すべきは主人公ディエロの人物像。欲望にしがみつく手(5本の指)というタイトルそのままの「これから絞首刑になる人間にロープの太さを教えたところで何になる?」が示すドイツへの愛でもイギリスへの憎しみでもない、貧しい出自の彼の憧れである紳士の地位と高嶺の花 Anna を買う金の為だけの売国行為。淀みのない話しぶりと落ち着きはらった物腰で窮地をすり抜ける姿に、「こんなはずでは」と思った矢先のどんでん返しにディエロ同様絶句する。poor Diello を体現するラストシーンはジェームズ・メイソン名場面集の暫定1位であり脳裏に焼き付く絶品演技に胸が締め付けられる。 [DVD(字幕)] 9点(2018-09-30 00:59:00) |
125. 拳銃王
《ネタバレ》 お目当てカール・マルデンは酒場の主人を彼らしい実直さで好演。モッサリした邦題からグレゴリー・ペックの大暴れを想像していましたが、真逆の静謐な人間ドラマでした。「お前だけ幸せに暮らせると思うなよ」声なき声が聞こえてくる最期が切なくて堪りません。傑作西部劇にして忘れじの逸品。 [DVD(字幕)] 9点(2018-09-07 17:33:06) |
126. 地底探険
童心に帰らせてくれた傑作。探険前、いざ探険。全てにハラハラドキドキさせられ一瞬も目が離せない。スタッフが用意した極上の舞台で一本気なリンデンブロック教授を演ずるジェームズ・メイソン。屈折していない彼(存在しないと思っていた)もまた格別で、ロマンに駆り立てられた冒険模様と晴れやかなラストシーンが脳裏に焼き付けられました。孫と一緒に観たい作品リスト入りで購入手続きを済ませました。 [DVD(字幕)] 9点(2018-08-20 13:59:36) |
127. 太陽は光り輝く
プリースト判事。冴えない見た目の飲んだくれが人を裁けるのか、やたらと陽気な音楽、ハズレだったかと思いました。しかし、「人間の尊厳は肌の色や職業に関係ない」譲れない思いは何があっても譲らない二つのシーンにひれ伏しました。とりわけ後のシーンの演出は鳥肌もので、将軍の胸中を想像すると泣けてきそうになりました。「怒りの葡萄」「わが谷は緑なりき」「周遊する蒸気船」に続く鑑賞となった本作も監督特有の骨太さに感じ入った傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2018-08-17 09:23:24) |
128. 灰色の男
《ネタバレ》 ジェームズ・メイソン初期作品は現代にも通じる見応え満点の傑作ドラマで彼の魅力も満載。 俳優キャリアに於いて屈折した貴族役の元祖とも言える「灰色の男」とロンドン社交界で忌み嫌われているロハン公爵。身に纏う衣装が実にノーブルで溜息が出まくり。 お家の体面第一で妻を子孫繁栄の道具にしか見ていない単に情の無い男であって変質狂には当てはまらず肩すかし感が強かった(-1点)のですが、最後の最後で残忍な気質を爆発させる「真っ黒な男」に恐怖で顔を覆った指の隙間から見る羽目に。また、初めて見るど突き合いファイト(お相手は宿敵?スチュワート・グレンジャー)はかなりの迫力で、恒例の replay time でウットリと。 男性二人が物語に深みを加えていましたが、主役はマーガレット・ロックウッドとフィリス・カルバートの女性二人であり、魔女と天使の出会いからそれぞれの最期まで名演も相俟って共に哀れを誘います。粋で余韻を残すラストがこれまたお見事。 [DVD(字幕)] 9点(2018-08-14 21:18:03) |
129. 生きるべきか死ぬべきか
「メル・ブルックスの大脱走」既見。筋立ては解っているので双方比べてみると、メル・ブルックス>ジャック・ベニー、チャールズ・ダーニング>シグ・ルーマン、キャロル・ロンバード>アン・バンクロフトといったところ。お笑い度・しんみりさせられ度はリメイク>オリジナル。ナチスドイツによってドイツ市民権を剥奪されたユダヤ系のルビッチ監督が1942年に作り上げた事を思うと、 生きるべきか死ぬべきか>メル・ブルックスの大脱走 の結論になりました。 ご贔屓アン・バンクロフトが見劣りしてしまったキャロル・ロンバードの魅力に驚いています。 [DVD(字幕)] 9点(2018-08-07 03:01:30) |
130. ブルー・マックス
《ネタバレ》 WW1に於けるドイツ空軍が描かれた物語。地べた這いずり回る歩兵のシュタッフェルが上空の戦闘機を眺める胸中に共感を。技量に出身は関係なくとも、勲章が欲しい、欲しい、欲しい! 飢えた姿に貴族と平民の育ちの違いがある事を実感。更に将軍の妻と火遊びに興じるのには「図に乗るな。このままで済むと思うな。罰が下るぞ」(これは欲求不満気味の妻にも言える)と眺めていました。騎士道精神を持つ隊長以外まともな人物がいない中での真打がクルーガーマン伯爵・将軍。保身>空軍の体面>甥の敵且つ間男への鉄槌を表現するジェームズ・メイソンをたっぷり堪能させてもらいました。終盤の元帥からの電話以降は彼の独断場であり、「うわ~そうきたか、頭いい~、しかし悪いやっちゃなぁ」と思った途端の Sit Down !!!!!!!!! に椅子から思わず立ち上ってしまいました。「えらいすんません」怒髪天を衝く鬼の形相での野太いベルベットボイスはジェームズ・メイソン名場面集の1つとなりました。やるせなさが募る異色の戦争映画。傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-07-30 16:19:39) |
131. カインド・ハート
《ネタバレ》 ダスコイン公爵一族八人を皆殺しにしたルイ・マッツィーニは個性際立つキャラクター。慎ましやかな物腰と優雅な立ち居振る舞いと慎重な行動は、失意の内に亡くなった母の敵討ちという動機においては応援してしまうものの、幼馴染シベラとの不倫や殺した男の未亡人イディスを我が物にしようとして二股かける姿に底知れぬ闇を見て引いてしまう。見た目の品性は違うものの人間性は一緒のルイとシベラのキスシーンは異様なオーラが漂っており演じたデニス・プライスとジョーン・グリーンウッドに惹き込まれる。一族八人が似たような顔に見えたのがアレック・ギネスの一人八役なのにビックリ。ただ、アガサ夫人以外はインパクトの無いキャラで黙々と淡々と殺されるだけなのが物足りない。復讐が完結するのか手に汗握った結末に「あぁ~」と思わず声が出て、「これは一本取られたました(死語?)」と思った次第で+1点。 [DVD(字幕)] 9点(2018-07-15 22:58:07) |
132. スワンプ・ウォーター
ジャン・ルノワール監督が描く湿地帯を舞台にした異色西部劇。逃亡犯と猟師の関係、二組の三角関係、二組の親子関係、それぞれが感慨深く、支流が大河になるのを見るような起承転結の展開が見事。ダナ・アンドリュースとアン・バクスターの瑞々しさ、ウォルター・ブレナンとウォルター・ヒューストンの優しさが垣間見える無骨な男くささ、それぞれに見惚れ、ラストのダンスシーンが素直に胸に沁みる。フランス人でありながらこのような作品を亡命先のアメリカで作り上げる監督の巨匠ぶりを感じさせられる傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-07-09 00:43:46) |
133. 大地震(1974)
《ネタバレ》 登場人物それぞれのドラマが交通整理された脚本による起承転結に無慈悲に襲い掛かる天災(アカデミー視覚効果賞受賞も納得の都市崩壊模様は息を呑む恐ろしさ)が入り混じるパニックものの傑作。気骨ある男達(社長、ルー、スチュアート)はロブソン監督作キャストに相応しい。濁流に落ちたエヴァ・ガードナーと上にいるジョヌヴィエーヴ・ビュジョルドとの間で数秒間逡巡するチャールトン・ヘストンの姿が堪らなく(この表情にプラス1点)予感通りの彼の選択と二人の結末は監督ならではのもので、見殺しにしてする後悔に耐えられなかったのだろうと思うと切なさがこみ上がってきます。 似てるなぁと思ったのが本人だったウォルター・マッソーの役柄について詳細を知りたいものです。 [DVD(字幕)] 9点(2018-07-04 16:03:35) |
134. ボヴァリー夫人(1949)
《ネタバレ》 原作未読。ジェームズ・メイソンいきなりの登場に本作ではどんな姿を魅せてくれるのか膨らんだ期待はぺしゃんこに(寂) しかしながら、ジェニファー・ジョーンズとヴァン・ヘフリンの名演でもって単なる不倫話が格調高いものとなっており物語に釘付けに。再登場での右斜め上を見上げる彼の決めポーズでのラストショットに「あっ、そうだった」出演していたのを思い出す次第。 マイケル・チミノが影響を受けたのだろうかと思った舞踏会シーンは圧巻で絵的な美しさとエマの心情が溢れ出る演出が実に見事。 最後まで身勝手を通した最期のエマにかける神父さんの台詞と立ち尽くすシャルルに感極まってしまった。 「普通が一番」という事は傷つけて傷つけられて初めて判るものであるのを実感させられる。 時に華麗で時に哀感溢れる音楽と共に記憶に留まる傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-07-01 02:02:01) |
135. 真説フランケンシュタイン/北極に消えた怪奇人間!<TVM>
《ネタバレ》 2部構成3時間。1部終了時点で泣く泣く就寝。続きが観たくて堪らず仕事帰りの自転車を漕ぐ足に力が入ってしまった。苦手なホラーものでありながらジェームズ・メイソンが引き合わせてくれた本作の素晴らしさに感嘆しきり。この歳になるまでフランケンシュタインがつぎはぎだらけの怪物と思っていましたが、怪物を作り上げた医者だったのにビックリ。生み出されるまで、生まれてからヒトとしての知性を授けられ成長してゆき、ジワジワと醜くなり両者の間に溝が出来て、悲惨な結末まで。実に丹念に描かれており、おどろおどろしさとドラマの塩梅良く、レナード・ホワイティング、マイケル・サラザン、デビット・マッカラム、ジェーン・シーモア(妖美に目が眩む)、アグネス・ムーアヘッド、ラルフ・リチャードソン、ジョン・ギールグッドという超豪華俳優陣と凝ったセットと映像美はTV作品とは思えない出来栄え。いの一番に登場したジェームズ・メイソンは分別あり気で怪しげで実は権力欲の塊のポリドリ博士(実在人物に脚色を加えている)役で要所要所に顔を出し物語に深みを加えている。生首に縋り付いて泣く姿や、天罰を受けてのあまりと言えばあまりの最期は夢に出てきそうな強烈さ。購入した甲斐のある傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-25 15:41:27) |
136. 殴られる男
《ネタバレ》 真相を知ったトロが吐き出したマウスピースを口に戻そうとして力尽きる姿にジーンときました。目の当たりにしたエディは金に転んだ自身を恥じたのだろうか、何を思ったのだろうか。ニックの寄生虫ぶりに上がり続けた不快指数がマックスに達した時にエディも袂を分かつ。そこからエンディングまでエディとトロの無事を握り拳で祈り続けました。ラストショットのタイプの文面の日本語訳に「えっ? 何で?」観直して誤訳を確認しました。特筆ものの失態です。遺作に相応しいボギーの持ち味溢れる姿に見惚れ、神経を逆なでされ続けたロッド・スタイガーの熱演に釘づけになった逸品。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-23 22:13:41) |
137. バグダッドの盗賊(1940)
1940年製作のイギリス映画での映像美は、映画の旧称が活動写真と言われたのを思い起こさせる動く写真の魔力をまざまざと見せつけられるもので心底惚れ惚れしました。孫が小学生になったら是非とも一緒に観たい、それまで自分が元気でいなければ、その為にすべき事をし、してはならない事をしないようにしなければと痛感させられた作品。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-17 20:40:09)(良:1票) |
138. 脱走特急
《ネタバレ》 一瞬も目が離せないスリル満点の物語でフランク・シナトラ、トレヴァー・ハワード、ウォルフガング・プライス、オリアリ大尉、コンスタンゾ大尉それぞれ味わい深いキャラクー達が輝いていました。とある所でライアン大佐が死ぬ事を知ってしまった上での鑑賞が何とも残念ですが、最後の一歩が踏めなかった全力疾走に鳥肌が立ち、ラストの台詞に涙が止まりませんでした。脚本・演出・撮影共に一級品で「大列車作戦」と並び称される傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-16 23:01:31) |
139. 天国から来たチャンピオン
苦手なウォーレン・ベイティ故にスルーしてきた本作。ジェームズ・メイソン目当てに鑑賞。役柄としてのみならず、俳優としてもキャストの演技を見守っている感のあるジェームズ・メイソンの極々静かな佇まいの中にある圧倒的な存在感に只々見惚れるばかり。自然と皆も入魂の演技を見せるのか、爽快で(ウォーレン・ベイティ)、クスッとさせられ(ダイアン・キャノン&チャールズ・グローディン)、ほろ苦く(ジャック・ウォーデン)て切なく(ジュリー・クリスティ)もあるお伽噺が胸に沁み入る珠玉の逸品。 [DVD(字幕)] 9点(2018-06-10 00:07:03) |
140. ゼンダ城の虜(1952)
《ネタバレ》 ルリタニア王国ルドルフ国王が戴冠式間近に、王位と王妃との結婚を狙う異母兄マイケルの陰謀で毒酒を飲まされ倒れる。英国から休暇に訪れた国王と瓜二つのルドルフ・ラッセンディルが身代わりで戴冠式に臨む。王妃は優しさ溢れるラッセンディルに惚れる。マイケルの腹心ヘンツォ伯爵によってゼンダ城に囚われた国王救出に向かうラッセンディル。という物語。 ジェームズ・メイソン演ずるヘンツォ伯爵は鑑賞史上最高の悪役で、まさに「華麗なる悪」のバイブルと呼べる存在。 ハンス・グルーバー(アラン・リックマン) フランツ・フォン・ヴァルトハイム大佐(ポール・スコフィールド) エミール・ビュイッソン(ジャン・ルイ・トランティニャン) 永遠に変わる事がないと思われた順位が一つずつ繰り下がる事になりました。 超絶オトコマエのルックス、紫の軍服の完璧な着こなしと身のこなし、ベルベット・ボイスで放たれる一言一句のクレバーさと腹黒さとふてぶてしさ、マイケルの愛人を口説きにかかる色気、主人マイケルを一突きで瞬殺する残忍さ。堪りません。 ノックアウト状態なのに更に繰り広げられたラッセンディルとの5分弱にも亘る剣での一騎打ちに完全にとどめを刺されました。 ヘンツォ伯爵判定勝ちの決着が-0.001点 ルリタニアン・ロマンスの語源となった傑作であり、現時点での best of James Mason に酔いしれた絶品。 [DVD(字幕)] 9点(2018-05-15 02:31:54) |