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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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121.  天国は待ってくれる(1943) 《ネタバレ》 
まず始めに出てしまうのが、「これが世界中で死が渦巻いていた第二次大戦中の映画なんだ…」というため息です。しかもカラー撮影!戦時中を意識させるのは、ラストに出る「勝利のために、あなたもこの劇場で戦時国債を買いましょう!」という政府宣伝だけなんですから。こりゃあ、日本もドイツもアメリカに勝てるわけないですよ。 ところで、私はある勘違いをしたままこの映画を観始めました。「なんかヘンだな?」と観進めるうちに違和感が…実はわたくし、本作が『天国から来たチャンピオン』の元ネタだと思っていたんですね。ウォーレン・ベイティの『天国から…』は41年の『幽霊紐育を歩く』のリメイクだったんですよ、だってどっちも“Heaven Can Wait”が原題なんだからややこしいです(笑)。ドン・アメチーがふけメイクをして地獄の受付係(閻魔大王?)の前に進み出ます。この人はこれから40年後の本当の爺さんになったところで『コクーン』でオスカー受賞するんですから、人の世は奇なるものです。彼は50年代から晩年になるまで映画出演が極端に減ったので日本では馴染みが薄い存在でしたが、若い頃の演技を見てもその芸達者ぶりが良く判る名優です。あの世の入り口で死者が審判を受けるというファンタジーは良く見かけますけど、本作ではファンタジー要素は冒頭とラストだけで、予想を裏切るハートウォーミングな愛情物語でした。監督がエルンスト・ルビッチですから安心して観れますし、幕が下りたらほんわかした気分に浸れます。まあ、アメチーの人生があわや地獄に落ちそうものだったとは到底思えないところが、難点と言えば難点ですかね(笑)。 しかし全世界で無意味な死が積み重なっていた時に、一人の人生とその終焉にここまで意味づけするアメリカ人の感性は、果たして単なる能天気なのか深い達観なのか、解釈に悩むところですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-24 22:59:21)
122.  マダム・フローレンス! 夢見るふたり 《ネタバレ》 
実在のフローレンス・フォスター・ジェンキンスは歌手活動する前はピアノ教師をしていたぐらいで、決して自分のような根っからの音痴というわけではなく普通人以上の音楽的な才能(?)はあったんじゃないかな。でも歌わせると凄まじい破壊力を発揮したということは、絶対音感を持ち日芸のピアノ科を出ているのに…というあの山口めろんが思い出されます、彼女こそ現代に転生したマダム・フローレンスなのかも(笑)。まあこういうのって、障害の一種なのかもしれないですね。 歌唱力には定評のあるメリル・ストリープが熱演していますが、この映画の最大の欠点は私のような音感が鈍い人間からすると、マダム・フローレンスの歌がさほど酷くない、かえって上手く聞こえてしまうという事なんでしょうね。それこそ山口めろんみたいな“本物”を起用すれば良かったかもしれないけど、さすがに人材豊富な英米映画界でも見当たらないでしょう。まるで重婚してるような謎の男ヒュー・グラントも、彼が今まで演じてきたキャラからすると絶対裏でなんか悪さしてると疑って観ていましたが、実は最後までイイ人だったというのは意外でした。全体的に観てこの映画に登場するキャラはイイ人ばっかりだった印象、そりゃあNYポストの記者が酷評記事を書いたのはジャーナリストとしては当然の務め、賄賂を受け取らない・忖度しないというのは褒められるべきことで、某芸能事務所に忖度しまくる我が国のマスコミ人士は恥を知った方がいいです。 要約すれば「素人で音痴の金持ちの有閑マダムが、カネとコネにモノを言わせてカーネギー・ホールで公演する」という身も蓋もないお話しになっちゃうんですけど、あまりコメディに寄らないベタな展開にも関わらずホロリとさせてくれるラストでした。やはりこれは、メリル・ストリープとヒュー・グラントという二大名優の成せる業なんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-21 21:46:36)
123.  最後の決闘裁判 《ネタバレ》 
このストーリーはまさに中世フランス版#MeTooという感じでしたね。人妻が夫以外の男を「あの人はイケメンね」と言っただけで裁判で糾弾されるとは、なんともはやです。この頃は全世界でこんな感じだったんでしょうけど、さすがに「強姦では妊娠しない」という説には唖然とさせられました。こんなトンデモを聖職者が大真面目に言うんですから、凄いですよね。ということは、マルグリットがレイプされた直後の妊娠は、当時は夫であるジャンの子種ということになっていたんでしょうね。DNA鑑定はおろか血液型すら認識されていなかった時代ですから調べ様もないですけど、ル・グリの子である可能性だってあり得たんじゃないでしょうか。そういうことも考えられたので、マルグリットが被害を訴えたときに「ル・グリをお前の最後の男にはしない」とジャンが反応したんでしょうね、きっと。 誰が観たって『羅生門』をモチーフにした脚本であることは明白ですけど、三人のストーリーには基本的な事実には齟齬がないところが『羅生門』とは決定的に違うところでしょう。つまり誰も嘘を言っていない(ル・グリがマルグリットは自分を受け入れたと勝手に思い込んでいるとして)ということになってちっとも『藪の中』ではない、こうなってくると『羅生門』スタイルのストーリーテリングにした意味がない様な気がしました。ただ一つ違和感があったのは、ジャンの言いつけを無視して義母がマルグリットを一人にして外出した日に都合よくル・グリが彼女を襲いに来るところで、普通はウラがあるというのが定石ですよね、なんか肩透かしを喰らった気分です。 演じるマット・デイモンとアダム・ドライバーにしても、どっちも違う面で傲慢なキャラで、とても感情移入できないところが返って良かったと思います。室内での撮影はろうそくの灯だけが照明のような感じでちょっと観にくいのが難点ですが、屋外もすべて曇天下で撮影していて陽光が皆無、でもかえって中世的な雰囲気は出ていたかと思います。 そういやリドリー・スコットはデビュー作でも決闘がテーマだったし拘りというか原点に戻った感じですけど、調べるとフランス本土での最後の決闘裁判が行われたのは、この映画の史実のなんと150年後の1549年だったそうです。この映画のタイトル、まさに「看板に偽りあり」でした(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-06-18 22:42:10)
124.  プロミシング・ヤング・ウーマン 《ネタバレ》 
私はフェミニズムにも#MeTooにも正直言って関心は薄いけど、あのバカ医学生たちがやらかしたことは普通に弁解の余地がない立派な犯罪でしょ。その事件で親友ニーナが自殺してしまったキャリー・マリガンの復讐譚を見せられるわけですけど、彼女自身もやっぱおかしいんじゃないでしょうか。事件から7年たって、飲み屋で泥酔したふりをしてヤルことを目当てに声をかけてきた男たちを懲らしめるのが唯一の趣味みたいになっている、これじゃセルフ美人局ですよ(笑)。そんな彼女が医学部の同級生だったライアンと偶然再会してから親友が自殺に追い込まれた顛末がフラッシュバックの様に蘇ってきて亡きニーナに成り代わったように復讐に邁進し始める、でもニーナの母親が言った「前へ進んで、お願い、みんなのために…」という歎願がほんとは正論なのかもしれない。最初は学生時代の女友達や教授には嫌がらせみたいなレベルだったけど、この女も相当性格が悪い(笑)。それがライアンの秘密を知ってからはどんどんエスカレートしてゆき、自分にはちょっと衝撃的だったラストの展開になってゆくのです。 この映画で感情移入出来るキャラには巡り合わなかった気がするし、みんなクソみたいな連中で復讐は成就したと言ってもカタルシスはなくて正直言って後味はすごく悪い。でも後半の脚本の構成力はとくに秀逸、怒涛の展開は息を飲まされました。だいいちキャリー・マリガンが演じるヒロインの名前が“カサンドラ”というところからして意味深、性被害を訴えても男性優位の社会では信じてもらえない・相手にされなかったという悲劇を、ゼウスに呪いをかけられたギリシャ神話のカサンドラに重ねているような気がします。 どうしても意味が理解できなかったのは、途中からチャプター建ての様にシーン転換のカットにⅠ・Ⅲ・||||(何故かⅣではない)というローマ数字があるところで、最後にはその||||に斜線が入るんです。どなたかこの意図するところをご教授いただけませんかね?
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-15 23:15:05)
125.  我輩はカモである
ここまで徹底的に政治と戦争をコケにした映画はちょっと珍しいぐらいです。製作されたのは1933年で、ドイツでヒトラー率いるナチスが政権をゲットした年ではあるけど、まだ大統領ヒンデンブルクが存命でその地位は首相、いわば国際政治にもデビューしたてで売り出し中といったころ。したがってナチス体制を意識した脚本というのはちょっと的外れなんですが、自分の独裁体制に対する毒を感じとって上映禁止にしたムッソリーニはさすがです。マルクス兄弟の映画はこれしか観たことはないですが、この映画がその後のコメディに与えた多大な影響はひしひしと感じます。亡き志村けんのひげダンスは、グルーチョ・マルクスのパロディだったんだと改めて気づかされた次第です。というか、映画史上もっともカオスに満ち溢れた1時間余りなのかもしれません。そしてまさにギャグの百科事典と呼ぶにふさわしく、現在のコメディのパターンはほぼ網羅されているんじゃないかな。一言もセリフがなくて動き回っていたハーポには、狂気さえ感じたほどでした。「祖国は戦争に入れり」のミュージカル・シークエンスなんかも圧巻でした。ただ英語のダジャレのセリフは字幕では上手くニュアンスが伝わらないのは残念、自分の英語力のなさが悔やまれる次第です。やはりこういうギャグ映画は、原語が理解できないと半減とまではいかなくとも三分の一は面白さが減じてしまいますね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-06-10 11:28:59)
126.  炎の少女チャーリー(1984) 《ネタバレ》 
この時のドリュー・バリモアはなんと9歳!10歳にもならない子役がこれほどの演技を見せるとはまさに驚異です。彼女はこの後に酒とドラッグに溺れるローティーン時代に突入するので、まだギリで無垢なころだったのかな。10歳未満で主演した代表作がある女優というと彼女かテータム・オニールぐらいのもんですが、その後の芸歴からするとやはりドリューがチャンピオンでしょう。 プロット自体は同じスティーヴン・キング原作の『キャリー』と通じるところがありますけど、ちょっとジュブナイル寄りかなと感じます。ラストの火炎玉大攻撃ではきちんとカタルシスを観客に与えてくれますが、このド派手な爆発炎上シーンのおかげで、マーク・L・レスターは『コブラ』の監督に起用されたんじゃないかな。タンジェリン・ドリームの音楽もなかなかいい雰囲気を出しています。意外と豪華な出演者の中でも、異彩を放っていたのはやはりジョージ・C・スコットでしょう。この人はB級クラスの作品でも手抜きなしの演技を見せてくれるから好きです。なにを考えているのかさっぱり判らん不気味な男、でもあの演技なら幼いチャーリーが騙されて慕ってしまうのはムリもないという説得力でした。気になったのはスコット演じるレインバードが途中からアイパッチを着けるところ、これはチャーリーに親近感を持たせるためのキャラづくりなのかと思ったが、子供はかえって怖がるんじゃないでしょうか。なんとこれはスコットが撮影前半にコンタクトが合わなかったので左眼が炎症を起こしたための苦肉の策だったそうですけど、その割には左につけてたのが後半では右につけたりでわけ判らん。こういう雑なところは、やはりこの映画はB級テイストなんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-10 11:24:21)
127.  浮き雲(1996) 《ネタバレ》 
バスター・キートンの無表情コメディを世紀末に蘇らせたアキ・カウリスマキの“敗者三部作”の代表作。主演はカウリスマキ御贔屓の“幸うす顔の女”カティ・オウティネン、知らない人からすれば「なんて無表情な演技なんだ」と思うかもしれないが、実は本作での彼女はそれまでのカウリスマキ作品の中では最も表情豊かだとファンからは驚かれたぐらいです。短いシークエンスを暗転でつないでゆく彼独特のストーリーテリングは、明らかに親交があるジム・ジャームッシュの影響でしょうね。 ソ連崩壊と世界的通貨危機に巻き込まれたフィンランド、ノキアですら経営危機に苦しむ経済不況の真っ只中でのささやかな庶民の暮らしを、独特のリズムで見せてくれます。カウリスマキの映画は小津安二郎の影響が有名ですけど、正直いって自分には構図も含めて小津色を感じることは少ない。だいいちセリフが極端に少ない作劇法は、小津とは正反対なんじゃないでしょうか。それでも“庶民のささやかな幸福”というある意味ミニマムなテーマは共通していると言えるでしょう。 この夫婦の悪戦苦闘は最後に妻の職場の前オーナーの善意で救われる結末ですが、給料未払いや銀行のゲス対応そしてカジノで夫が資金を溶かしてしまうなど、誰もがどれかは経験してそうな人生の躓きを淡々と見せてしまうところにはかえって思い切りの良さすら感じる脚本です。これは日本でよくいる私小説作家的な監督や脚本家ならドロドロで暗鬱なストーリーにする例が多く、ほんとに「カウリスマキの爪の垢でも煎じて飲め!」と説教したいところです。きっとラストに夫婦が見た空には、雲だけじゃなく綺麗な虹がかかっていたんだろうなと思います。でも原題も『浮き雲』なんだけど、『浮雲』は小津の映画じゃなく成瀬巳喜男の作品なんだけどな、まあ細かいことですけど。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-09 22:59:37)(良:1票)
128.  殺し屋たちの挽歌 《ネタバレ》 
まるでチョウ・ユンファ主演の香港ノワールのごとき邦題には騙されますけど、純然たる英国ノワールでユニークな視点のロードムービーでした。監督はスティーヴン・フリアーズで、『マイ・ビューティフル・ランドレット』で注目される前年に撮った彼の長編第二作目であります。タイトルバックに流れるギターソロがえらく渋いなと感心したら、なんとエリック・クラプトンの演奏でした。 強盗仲間を裏切って証言をして司法取引でスペインで隠遁生活をしていたテレンス・スタンプ、10年経って出所した仲間に居場所をかぎつけられて拉致されてしまう。このテレンス・スタンプが演じるのが実に不思議なキャラで、捕まるときこそ抵抗したけどボスが待つパリにまで護送される間は悟りきったように穏やかで、派遣されてきた殺し屋には協力的。この殺し屋二人組がジョン・ハートとティム・ロスで、途中で行きがかりで女を一人誘拐することになり、ほとんどこの四人で進行するスペインからパリを目指す奇妙なロードムービーとなるわけです。このジョン・ハートが演じる寡黙な殺し屋は印象深いキャラで、有能なのかはともかくとして非常に冷酷な男で、警察に通報しそうに思える目撃者を躊躇なく殺してゆくのです。コンビを組む若造がティム・ロスですが、当然ですけど若々しくて金髪なので始めは彼とは気づきませんでした。面白いのは処刑台へ歩かされている死刑囚のような立場のスタンプが、逃げるチャンスは何度もあるのにまるでガイドの様にハートたちを導く理解しがたい言動で、それに二人が翻弄されてゆくところでしょう。若いロスの方は女に情が移り気味でスタンプの影響が顕著になりますが、けっきょくハートには通じずに悲劇が訪れます。 「お前は運が良い」と女だけは殺さなかったハートが、その為についに国境を越えられなかったラストは予想通りの展開ですけど、まだ駆け出しの頃のスティーヴン・フリアーズの才気は十分に堪能できました。この映画のジョン・ハートを観ていると、『ジャッカルの日』でジャッカル役でも良かったんじゃないかと思うほどでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-08 10:46:26)
129.  兵隊やくざ 俺にまかせろ 《ネタバレ》 
前作とは全く繋がらないで物語は開幕。またもや大宮と有田が紛れ込んだ部隊は敵襲を受けて全滅、お約束通りに二人だけ生き残る。この二人を抱え込んだ部隊は必ず全滅するのが定石、まるで死神みたいな二人です(笑)。拾われた部隊を指揮する参謀=渡辺文雄は、三作目で登場した中谷一郎と同じように今回は有田の小学校の同級生という設定、どんだけ世間が狭いんだよ(笑)。演じるのが渡辺文雄ですから当然のごとくに悪役、シリーズ中で最悪のキャラかもしれません。大宮と言えばビンタを喰らってもびくともせずにやった方がダメージを喰らうという石頭が得意技(?)だったのに、本作の格闘シーンでは鋼鉄の肉体の大宮の方がけっこうダメージを喰らっている、キャラ変したんかい?この回はシリーズ屈指の戦闘シークエンスがあるんだけど、ドンパチは単調で大宮と有田が撃つ弾は百発百中で敵の弾丸は決して二人に中らないスーパーマン状態。全般に本作は脚本の方向性が定まっていない感じで、自分にはシリーズ中でもっとも印象が悪かったです。 中盤以降のこのシリーズの弱点は、第四作目でソ連が参戦して来ているのに大宮たちが所属する部隊にあまりに緊迫感が無いという事、まるで平時のような隊内生活だというところでしょう。史実の関東軍は、ごく一部の部隊を除いて逃げるのに大忙しという体たらくだったのにねえ…
[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-06-03 22:53:02)
130.  ディボース・ショウ 《ネタバレ》 
日本でも大竹しのぶで『後妻業の女』なんてストーリーがあったけど、本家ともいえるコーエン兄弟作品ではセレブの世界のお話しとは言っても潔いまでカネがすべてでカラッとしています。ゼタ=ジョーンズの亭主も殺されたり病死するわけでもなく別れるわけですが、考えてみれば夫側弁護士のジョージ・クルーニーおかげで一銭も得られず、この映画の中ではそのあくどい戦略は成功したとは言い難かったんじゃないかな。まるで下手なラブコメみたいな終わり方といい、けっきょく彼女は悪女というキャラではなかったという事ですね。ゼタ=ジョーンズはこの頃はその美というか魅力が頂点に達していたので、こういう役作りは正解だったんじゃないでしょうか、コメディですからね。これをマジで撮ったら、『ゴーン・ガール』のロザムンド・パイクになっちゃいますよ(笑)。 まあこの映画は、ジョージ・クルーニーの顔芸を愉しめるかが評価の分かれ目と言えるかもしれません。コーエン兄弟はその後に『バーン・アフター・リーディング』や『ヘイル、シーザー!』などでクルーニーの顔芸コメディをエスカレートさせるわけですが、本作のような初期のころはまだバランスがとれていたような感じですね。やたらと歯並びを気にするところがまた傑作で、やはり彼はこういう気取ったセレブのような役柄が似合っているみたいです。所々にヘンテコなキャラが登場するのはいかにもコーエン兄弟らしいのですけど、驚いたのは冒頭でサイモン&ガーファンクルの『ボクサー』を口ずさみながら爽やかに(?)登場するジェフリー・ラッシュの使い方で、いやはや、なんと豪華なムダ遣いでしょうか。まあ所々でチクチク刺さるものがありましたが、コーエン兄弟らしくないラブコメだったというのが感想です。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2023-05-31 21:50:15)
131.  ガメラ対宇宙怪獣バイラス 《ネタバレ》 
製作時は大映の終焉カウントダウンが完全に始まっていた68年で、バジェットも前作の三分の一まで削られちゃあ、そりゃスタッフもテンションが下がりますよね。それにしても、まるで子供が書いたのをそのまま採用したんじゃないかと思えるほどの酷い脚本には呆れます。東宝もゴジラにシェーをさせたぐらいに日和っていた怪獣映画業界でしたが、ここまでお子様路線に舵を切った大映のヤケクソぶりはなんか痛々しい。怪獣映画界隈の長男が円谷特撮だとすると、後発で変な縛りやしがらみのないガメラシリーズは、やんちゃな次男坊ということなのかな。そうは言ってもあまりにツッコミどころが多くて、この歳で観返してみるとかえって愉しくなっちゃうぐらいです。ボウリングの球を四つくっつけたような宇宙船、テレパシーで操作できるというのにいちいち言葉にして命令しなくちゃいけないって、どうなってるの?どう見てもイカが元ネタのバイラスに腹からブスッと串刺しにされたガメラ、いくら何でもふつう死ぬでしょ。正夫たちが宇宙船の中を移動するシーンで「でもこの円盤の中、何もないなあ」というセリフがあるけど、これは低予算でまともなセットが組めなかったことへの自虐が込められてるんじゃないかな。でもいちばん唖然としたのは、80分の上映時間のうち15分以上が過去作の特撮シーンの引用というところでしょう。最初はバイラス星人がガメラを研究するためにガメラの記憶を再現するというのは上手いへ理屈を考えついたなと思いましたが(それでも過去三作のシーンを10分ぐらいただ流すだけ)、バイラスに操られたガメラがダムや東京を破壊するという見せ場ですら過去作を流用している。つまり本作で組まれたセットは、海辺のただ砂浜があるだけのものだったみたいです、嗚呼、低予算の悲しさよ… 実は渥美マリはこの作品がデビュー作、翌年にはオッパイ丸出し路線に猛進することになろうとは、本人も予想してなかったでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2023-05-28 23:10:56)
132.  アス 《ネタバレ》 
『ゲット・アウト』は自分としては愉しめたし「おっ、これは新しい俊才が登場したか」とジョーダン・ピールの活躍を期待していたのに、「こいつは実はM・ナイト・シャマランの再来なのかも…」というのが観終わった感想です(笑)。しょうじき、これほど訳が判らないホラーには久しぶりに出会った気がします。だいたいからして全編の三分の二は夜間か照明のない場所の上に主人公の四人家族が黒…(ポリティカルコレクトネスに抵触しそうなので、以下自粛)なので余計に何が起こっているのか判りにくい。たしかに家族のドッペルゲンガーが庭に現れるところは稀に見る不気味なシチュエーションなんですが、その後はキ〇ガイ殺人鬼とのタイマン勝負を延々と見せられただけだった気がします。私は説明のつかない不条理とかはホラーには需要なファクターだと思っているんですけど、せっかく映像的には理解しがたい絵面を所々に挟んでいるのに、ネタばらし(というほどには筋が通っていない)みたいなことを最後に持ってくるから余計に印象が悪くなったんですよ。母親と息子が見つめ合うラストカットには、「オチはそれかい!」と思わず突っ込んでしまいました。 こういう方向に進むのなら、最新作の『NOPE/ノープ』もあまり期待出来ないなぁ…
[CS・衛星(字幕)] 4点(2023-05-25 21:55:29)
133.  オフィサー・アンド・スパイ 《ネタバレ》 
時は1894年、日本では日清戦争が勃発した明治27年、フランス参謀本部はドイツへの機密情報漏洩を捜査し、ユダヤ系将校アルフレッド・ドレフュス大尉を逮捕する。普仏戦争後の第三共和政のフランスでは “ドイツ憎し”の国民感情が強く、政治情勢も反動的な勢力が台頭して反ユダヤ主義も声高に叫ばれる時代だった。大した証拠もないままに軍法会議はドレフュスを有罪と断罪し、あのパピヨンで有名な南米の孤島・悪魔島での終身刑を宣告した。しかし諜報部のピカール中佐はドレフュスが無実である決定的な証拠をつかんで上層部に訴えかけるが、軍の威信に拘る首脳は黙殺してピカールを逮捕する始末。だがこのスキャンダルは世間に漏れて文豪エミール・ゾラや後の首相クレマンソーが立ち上がって糾弾し、フランス世論を二分する大事件になってゆく。 世界史の教科書には必ず載っているドレフュス事件を、定期的にユダヤ人迫害がテーマの作品を撮るロマン・ポランスキーが監督しています。冒頭で有名なドレフュスの軍位剥奪の儀式が描かれますが、本作はあくまでピカール中佐=ジャン・デュジャルダンが中心のストーリーテリングで進みます。彼は根っこには反ユダヤ感情を持ち友人の妻と不倫関係を続ける(でも独身なのに結婚指輪をつけている!相当な遊び人であることが暗示されている)ある意味俗っぽい男でもある。こんな彼が事件の真相に気づいてゆく前半は、とくに良質なミステリーのようで面白い。映像も重厚で、奥行きに拘った構図が絵画的で美しさが感じられます。登場人物は将校軍人が圧倒的に多いのですが、彼らのコスチュームの赤いズボン=パンタロン・ルージュは印象的ですね。第一次世界大戦までこんな派手な色使いのままでしたから、そりゃあ機関銃の良い的になりますよ。後半にはゾラも登場してクレマンソーの新聞に掲載された「私は弾劾する!(J'accuse本作の原題)」のエピソードもありますが、総じて冷静で淡々とした語り口なのもポランスキーらしいです。 物語はドレフュスの再審が行われるけど判決は覆らず減刑にとどまり、恩赦を受けるところまでで終わります。字幕で1906年にやっと判決が取り消されて軍に復帰したことが記されます。そして陸軍大臣に出世したピカールのもとにドレフュスが訪ねてくるところで幕を閉じますが、そこで彼はピカールに自分の昇進が不公平だと不満をぶつけるんです。特別扱いは政治情勢からも出来ないと拒否するのですが、ここでは決してただの善人ではなくてプライドと野心を持った狷介な人物としてのドレフュスと、言葉には出さないけど根っこにある反ユダヤ感情が湧きだしてくるピカールが観られて、なんか虚無感すらある良いラストだったなと思いました。同じ法廷劇でも、ハリウッド映画とはえらい違いだなと感服する次第です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-05-20 15:27:11)
134.  ロックンロール・ハイスクール 《ネタバレ》 
ロジャー・コーマン製作総指揮、ノン・クレジットながらジョー・ダンテも演出に参加した、あの伝説のNYパンクの雄ラモーンズが唯一出演した劇場映画、もっともラモーンズの面々は演技するんじゃなくて演奏しているだけなんだけどね。まあストーリーはよくある学園モノといっちゃあ観も蓋もないけど、ラモーンズが登場してからはノリまくったパーティ・ムーヴィー状態。ラストは高校生たちが校舎を爆破してしまうという超アナーキーな展開。生徒たちを管理して締め上げようとする女校長が悪役だけど、彼女の側近というかしもべのような二人組(ヘンゼルとグレーテル!と呼ばれているが、男です)の変態ぶりが強烈でしたね。あと唯一の生徒たちの理解者である音楽教師を、やはりコーマン一家のポール・バーテル(『デスレース2000年』の監督)が演じています。校内で妖しい企業を運営している男をロン・ハワードの実弟クリント・ハワードが怪演していますが、この兄弟って恐ろしく似てないですね。まあラモーンズ好きなんて今はけっこうなお歳の方々が多いんでしょうが、ファンにはたまらない一編であることは確かでしょう。しかし現在はオリジナルメンバー四人(つまりこの映画に出ている四人)は皆他界してしまっているとは、残念なことです。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-05-16 22:50:47)
135.  ブレット・トレイン 《ネタバレ》 
恐るべきパラレル・ワールド、ニッポン!ここでは超豪華シンカンセン・ゆかりが東海道をリニア新幹線の様にぶとっばしている!でも東京駅を夜に出発して京都駅に着くころには夜が明けているけどね(笑)。ここは海外のサブカルマニアが妄想しているニッポンそのものって感じです。主演が日本カルチャー大好きなブラピを起用しているのは、さすが製作者たちは判ってらっしゃる、なんせ『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』のことをインタビューで熱く語る人ですからねえ(笑)。 伊坂幸太郎の小説が原作らしいけど、私は未読。でもこの列車に乗り込んでくる魑魅魍魎たちの関係が恐ろしいまでにややこしい。とくにホワイト・デス(マイケル・シャノン)長老(真田広之)殺し屋ウルフの三人もがかつて妻が殺されて復讐を企んでいてその回想シーンが挿入されてくるので、余計にストーリーを把握するのに苦労させられました。まあこの映画全編が伏線だらけみたいなものですから、最後に(けっこう強引だけど)綺麗に回収してくれたのは快感でしたけどね。京都についてからのブラピたちとホワイト・デス一味の対決が始まるともうほんとに何でもあり状態、新幹線同士がなぜか正面衝突までするという滅多に見れない光景まで拝めるんですからね。そんなカオスの中でも、狭い車内で見せる真田広之の刀裁きはさすがに見事でした。ラストでチラッと登場するサンドラ・ブロック、『ザ・ロストシティ』に続いてのブラピとの共演、でも『ザ・ロストシティ』とは逆で彼女の方がカメオ出演みたいな感じだったのが面白い。そしてなぜかノン・クレジット出演のチャニング・テイタム、あれはもう彼のパブリック・イメージを逆手にとったセルフ・パロディって感じですかね、そういやこの人も『ザ・ロストシティ』に出演していたなあ… 余談ですが、Bulletをブレットと表記するのはいかがなもんですかね、発音はどう聞いてもバレットなんですけど。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-05-13 23:44:35)
136.  Back Street Girls -ゴクドルズ- 《ネタバレ》 
私は原作コミックもTV放映アニメも未見で、「ヤクザ三人組が下手打って指ならぬアソコをつめて地下アイドルデビュー!」なんて超バカバカしいプロットなんで期待せずに観ましたが、けっこう真面目に撮っていて面白かったです。女性化した三人はなかなか魅力的で、だいいち彼女らの披露する楽曲が極道ネタを巧みに取り入れた歌詞で、しかもちゃんとアイドルソングとして成立しているのが凄い。聞けば三人はゴクドルズとして劇中楽曲をフューチャーしてアルバムリリースまでしているそうで、この楽曲の出来具合ならアイドルファンも納得できるんじゃないかな。挿入されているライブ映像も実に楽しそうで、コロナ流行以前のアイドルライブの盛り上がりがなんかすごく懐かしい感じがします。終盤のアイドルフェスに出演している他の架空アイドルのパフォーマンスも手抜きなくそれらしくて、良く創りこまれていると思います。女性化した三人のかつての荒ぶる男性としての内面との葛藤を男優との掛け合いとして見せる演出も秀逸、でもそれが彼女らが便所で便座に腰かけているときに扉ごしというのは、どういうもんですかね(笑)。岩城滉一の何を考えているのか理解不能な親分も、彼の貫禄で振りきったという感じですかね。そう言えば友情出演でちょっとだけ顔を見せた大杉漣は、これが遺作というか最後の映画出演だったと思うと感慨深いです。 ラストにはまさかの多幸感まであって掘り出し物でした、これなら続編製作もありなんじゃない?
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-05-10 23:03:30)
137.  大怪獣のあとしまつ 《ネタバレ》 
ぶっちゃけますと、私は怪獣映画もおバカ映画も大好物です。でも近年まれにみる罵倒と酷評にまみれてしまった本作、まあ覚悟を決めて観ましたよ。 “死んでしまった怪獣の死骸はどう処理をするのが正解なのか?”という視点は、古今東西のモンスター映画にはついぞなかったもので、このアイデアを基に映画を一本撮ったということはそれはそれで快挙だと言えるでしょう。とくに前半は『シン・ゴジラ』を彷彿させるような真面目にリアリティを追及しているようにも感じます。怪獣の出現自体がリアルな世界での新型コロナの暗喩なのかとか、怪獣の腐敗ガスが爆発的に噴出する絵面は福島原発事故の水素爆発を想起させようとしているのかとか勘ぐりましたが、どうもそれは買いかぶりすぎだったようです。それは内閣の対応ぶりと西田敏行総理を始めとする大臣たちのキャラが、観ていて寒くなるほどの低レベルなギャグを繰り広げてくれるのが決定的でした。つまり山田涼介や土屋太鳳が見せるシリアスな芝居と、ムダに豪華なキャスティングの内閣の面々が見せてくれるギャグ芝居との乖離があまりに大きいわけです。たしかに『シン・ゴジラ』でも緊張感を緩める息抜きのような芝居もありましたが、庵野秀明にこの監督ののセンスは足元にも及ばないんですからどうしようもない。いっそのことこの小劇場的なセンスのギャグで全体を統一しちゃえば良かったのかというと、「それならこんなに予算をかけて劇場映画にする必要なくね?」ということになるんでしょうね。 とは言ってもそこそこに愉しんで観ていた私ですけど、あのまったく意味が判らないラストにはさすがに呆れました。もし劇場で観ていたらそれこそ「金返せ!」と暴れたかもしれません。「せっかく良い食材が手に入ったのに、なんちゅう料理をしてくれたんじゃ!」というのが私の感想でございます。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-05-07 22:45:02)(良:1票)
138.  兵隊やくざ 大脱走 《ネタバレ》 
本作まで常に部隊からの脱走を繰り返してきた有田と大宮なんですが、ソ連軍が満洲に侵攻してきたご時世となり身の安全を図るために自ら部隊に紛れ込むようになったのが面白い。まあその部隊はソ連軍に急襲されて全滅、生き残った彼らが今度は将校コスプレして通りすがりの部隊に潜り込むという展開。つまりサブタイトルに『大脱走』と銘打っているけど、本作では彼らはお得意の部隊脱走はやらかさないという新パターンで、『大脱走』とはクライマックスの保護した避難民を連れての脱出劇のことなのかと思います。 ソ連侵攻が始まっているとはいえ平常時と変わらない兵営生活を送っているところは「そんなのあり?」と違和感がありましたが、玉砕前提の捨て駒兵力として残置されているのでみな達観していると受け取ることもできるでしょう。本作では有田=田村高廣の存在感が高くなっているストーリーテリングのような気がして、偽中尉・有田の堂々たる指揮ぶりは惚れ惚れさせられました。でも “有田と大宮=勝新太郎の同性愛的な関係”というこのシリーズの裏テーマは健在で、慰問団の娘=安田道代と一夜を共にして帰ってきた大宮に嫉妬ともとれる視線を注ぐ有田の姿に象徴されていました。 そしてシリーズ前半の最大の悪役である青柳=成田三樹夫が再登場するわけですが、なんと脱走目的で憲兵から歩兵の上等兵に化けているというサプライズ。「お前らはバカか、脱走するには兵士が最適なのにわざわざ士官に化けるなんて」と嘲笑する青柳の言葉は、なるほど真理を突いていますね(笑)。この偽兵士・将校の三人組が今度はどんなバトルを見せてくれるのかと思えば意外にも最後にはすっかり善人と化してしまった青柳、拍子抜けさせられました。 本作は前半と後半ではストーリーの繋がりが悪い感じがするのが難点。どうせ成田三樹夫を再登場させるなら、もっと絡ませる脚本にしたら良かったのにねえ。
[試写会(邦画)] 5点(2023-05-04 20:15:31)
139.  マトリックス 《ネタバレ》 
作品は観たことなくても“マトリックス”という言葉は知っている人が多いという、二十世紀を閉めるに相応しい『2001年宇宙の旅』なみにSF映画を変革させた金字塔じゃないですかね。その世界観はサイバーパンクの思想が色濃く反映されていて、ウィリアム・ギブソンの『ニューロマンサー』の影響がやはり大だと思います。そこにジャン・ボードリヤールの哲学と東洋哲学およびメシア思想をぶっこんだって感じですけど、続編からアドバイザーを打診されたボードリヤールからは「君たちの私の哲学理解は浅い」と断られちゃったそうです。この東洋哲学思想も色濃い世界線にキアヌ・リーヴスを抜擢したのは大正解で、彼の表情表現力の低い当時の演技力(まあ大根役者ってことです)が返って謎めいた雰囲気があっていいんですよね。ストーリーに組み込まれている世界線や表現は確かにアニメや過去作からの引用が感じられますけど、あのバレットタイムの創りだす映像の凄まじさには初見の当時の観客が度肝を抜かれて熱狂したことはムリもないです。 この第一作ではネオが目覚めるというか神の領域に踏み込んだところ終わるわけですけど、シリーズ始めのキャラ紹介的な位置づけとしては手堅いかなと思います。そして『2001年…』と並んで多大な影響を及ぼしたのは、「この世界は闇の勢力やディープステートに操られているんだ」と唱える陰謀論者に対してじゃないでしょうか。出来の良い映画の影響力は、恐ろしいものがあります。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-04-29 23:12:20)
140.  悪魔のような女(1996) 《ネタバレ》 
アンリ=ジョルジョ・クルーゾーの傑作が、40年の時を挟んで無謀にもリメイクされたわけです。シモーヌ・シニョレをシャロン・ストーンにヴェラ・クルーゾーをイザベル・アジャーニというキャスティングは、とくに“悪女=エロ”という路線を疾走していた90年代のシャロンにはドンピシャといえるし、アジャーニだって気弱でメンヘラ気味な元修道女という役柄には適役かと思います。オリジナルの尺を約15%カットしているのでチャズ・パルミンテリが浴槽に沈められるまではサクサクとストーリーが進行しますが、ここから先がストーリーが徐々にオリジナルから乖離してゆき、思わず絶句してしまう最悪のラスト改変になってしまうのです。 クルーゾー版と決定的に違うのは、オリジナルのオカルト的な要素を残したまま“誰かが二人を脅迫しようとしているのでは?”というサスペンス要素を強めてしまった脚本のヘボさにあるでしょう。二人を探る探偵がキャシー・ベイツとなるわけで、オリジナルと違ってこの探偵が活躍するのが余計にサスペンス要素が強く感じてしまうのかな。またシャロンがオリジナルと違って大した悪女ではなかったというオチになり、誰が“悪魔のような”なんだよ誇大広告じゃ!と暴れたくなります(笑)。これはオリジナルから引き継がれているこのストーリーの弱点みたいなものですが、ネタバレが過ぎちゃうんであまり詳しくは言及しませんけど、実は最後になるまで犯罪が成立していないんですよね。どちらもラストで犯罪が成立してそこを探偵が見届けるわけですが、「見てないでお前が止めろよ!」と突っ込みたくなるところが弱点でもあります。まあこのリメイクでは傍観していた探偵に正当防衛という逃げ道を与えているとも言えますが、なんかもうグダグダ感しか残らなかったです。 これはもう、オリジナルを観てなくて予備知識を持たずに鑑賞したとしても、高評価を得るのは難しいでしょう。若き日のまだペーペーだったころのJ・J・エイブラムスが、ビデオカメラマンとして出演しているのは興味深いかな。あとイザベル・アジャーニの惜しげもない脱ぎ(冒頭だけですが)には一点献上いたします、脱ぎおしみしやがったシャロン・ストーンよ、少しは見習え!
[CS・衛星(字幕)] 3点(2023-04-23 11:10:29)
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