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プロフィール
コメント数 50
性別 男性
自己紹介 人生半世紀を超えた。たいていのことは許す。

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1.  TAKESHIS’ 《ネタバレ》 
 とても面白かった。初老期に達したエンタテイナーの厭世感が根っこにある。北野武という人は、ホントは木賃アパートに住んで、コンビニで店番して、レートの低い麻雀打って、センベイ布団でふて寝してたいんだろう。今さらそういう境遇に落ちるのは怖いけど、それが自分の青春だったんだから、そこへ戻りたくもある。っていうか、戻ってみんなを撃ち殺してやりたい。でも、そういう甘ったれを許さないのが岸本加世子。彼女は、要するにオカンですね。あらゆる場面に顔を出して、タケシのたくらみを必ずくじく。この映画は、全知全能のオカンに見守られて緩慢に死んでゆくタケシを、ホントはそうなってたかもしれない色々なシチュエーションで見せているわけだ。功成り名遂げた男の厭世感を、映画のキャラでなく現実の「ビートたけし」を使って表現した点が、欠陥と言えば欠陥だろう。だから「ビートたけし」という日本限定のポップ・ヒーローを知らないと、映画の意図が分からない。でも、そういうやり方で「ビートたけし」こと北野武が、ヨーロッパのTakeshi Kitanoファンを切り捨てた映画とも言える。すべての虚像を切り捨てたいという気持ちが根本にある。痛ましいくらい分かりやすい映画。
[映画館(字幕)] 8点(2005-11-11 19:11:29)(良:2票)
2.  パットン大戦車軍団 《ネタバレ》 
邦題からドンパチだけの安い戦争映画を予想していたが、違った。パットンの人となりを描く伝記映画だった。粗野だが情誼に厚い根っからの武人が、戦場では幾度も鮮やかな勝利を収めながら、政治的理由で冷遇されて去ってゆく。全体の流れは源義経や木曽義仲の伝承譚にそっくり。この筋書きには、古今東西、人々に訴える何かがあるらしい。だから、淡々とした撮り方で単純な物語をあっさり見せているのに、長さを感じさせない。これがアカデミー賞を取った1970年は、アメリカがベトナム戦争にはまりこんで進退きわまっていた頃。熱帯アジアの泥田で米兵が死んでゆくニュース映像がアメリカのテレビで流れていた時代だ。あるいは『イージーライダー』や『真夜中のカーボーイ』や『ソルジャー・ブルー』といったアメリカンニューシネマの時代。それを思うと、この古くさい映画がどんなニーズに応えたのか分かる。アメリカ大衆の無意識は、ヨーロッパの平原を苦難に耐えつつアメリカ機械化部隊が進撃してナチに占領された都市を解放する、っていう映像を切望していたに違いない。今観ると、古めかしい偉人伝の良さが無くもないが、戦争を扱った現代映画として完全に問題外。
[ビデオ(字幕)] 4点(2005-07-24 10:41:23)
3.  ヴァキューミング 《ネタバレ》 
 うまくやれば傑作になれたのに、何かが足りなくて、救えない失敗作になってしまった、といった感じの映画。DJ志望の気弱な男の子と、可愛いけれど怒りっぽくてビミョーに太りすぎのガールフレンドのエピソードはなかなか渋い。特にガールフレンドに逃げられた後の男の子の取り乱し方が痛ましい。古新聞を溜め込んで頓死する無表情な老女も悪くない。ティモシー・スポールのセールスマンも暑苦しさ抜群、異常性全開、汗臭さ満開で、映画の屋台骨を支える力は十分ある。それなのに、全体として「これは失敗作だな」と思わせるのはなぜか? わけの分からない人物が多数出てきて、行き当たりばったり、力の限りぶつかり合っている。これは悪くない仕掛けだけれど、この全体を見下ろして意味づける視点が映画の中で生み出されない。欠陥はこれだと思う。そんな視点なんか現代にはないのだ、というのも1つの立場だが、この映画はその立場を取っていないはず。ありきたりの不条理(『マルコヴィッチの穴』みたいな)に逃げないのはよいことだ。でもそれなら、例えばティモシー・スポールが海に掃除機を売りつけながら死んでゆく最後の場面は、どうにも中途半端だ。意味なんか無いのだと居直るには意味ありげだし、意味があると言い切るには話が見えない。秩序ある日常生活も、一皮めくれば異様な人々で溢れている、という基本の方向は間違ってないけれど、そんな人々が吸い込まれてゆくもう一つ奥の秩序が見えない。その秩序をかすかにでも感じさせてくれれば(つまり、海に掃除機売るとどうなるの?ってことだ)、凄い傑作になっていたかもしれない。
[ビデオ(字幕)] 4点(2005-07-24 10:36:18)
4.  プレッジ
これはなかなかの力作。世界は偶然の支配するところで、それはほとんど人間への悪意に似ている。こんな、エンタテインメントになりにくいアイロニーを、娯楽サスペンスの仕掛けできっちり描いて成功したのは立派。ふと『羅生門』を連想した。舞台となるネヴァダの山岳地帯は息をのむ美しさで、これがまた人間に対する自然の無関心を印象づけて効果的だった。ニコルソンはもちろん、ベニチオ・デル・トロもミッキー・ロークも短い出演ながらみごとな演技を見せる。
[ビデオ(字幕)] 8点(2005-05-04 23:06:04)
5.  バーバー 《ネタバレ》 
「そこにいなかった男」“The Man Who Wasn’t There”という原題がすべてを説明している。毎日実直に仕事をしているけれど、本当は「そこにいなかった男」の話。じゃあ、例の“虹を掴む男”ウォルター・ミティのように白昼夢の中にいるのかというと、夢想家の素質もなさそうだ。現実の生活でも夢想の生活でも「そこにいない」男。こういう男が行動を起こすと、世界は妙な方向に脱線してしまう。儲け話に気持ちが動いて恐喝を試みると、あっさりバレる。どころか、世界はもっとフツーにタガが外れる。この男、とにかく「そこにいない」方がいいわけだ。清楚な(?)娘の凡庸なピアノ演奏に入れ込むあたり、この男の隅におけない馬鹿さ加減をくっきり表して、かなり痛い。(おまえ、近所の女子高生の未来に勝手な夢を描くなよ。どこにもいないおまえの居場所がそこにはある、ってわけないだろうが。でもスカーレット・ヨハンソンが期待をハズしてくるところは、おおそう来たか、って大笑い。案外ああいうもんなんだよな。)ビリー・ボブ・ソーントンが分別ありげな渋い初老の男なので、痛さもひとしお。所詮は「そこにいない男」なんだから、世界に参加しないでいりゃいいのに、分際を守っていられない。これが凡人の本当のみじめさ。みんな「そこにいない」ヒトに過ぎないのに「何かしたい」ってあがく。死刑になるとき、自分の人生の断片が全部つながったと言っているから、ムチャした甲斐はあったということなのか。でも、どこか無理矢理な感じが残るのも事実。ということで、初老の男としては、おもしろ怖く観て、かなり身につまされたなあ。
[ビデオ(字幕)] 8点(2005-05-04 18:59:13)(良:1票)
6.  ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲
 いいですねえ。コトバが分からないので観てられる(聞いてられる)のかもしれないが。アメリカ人には聞くに堪えないキツイ台詞連発だろう。英語圏では最初から観客として普通の大人は予定してないと思われ。で、お馬鹿な二人組の道中ってのは一種の定番でしょうが、これはジェイとボブの二人に妙に自尊心が有るんで観てて気持ち良い。単に馬鹿なんじゃなくて、主義主張が積極的に馬鹿といういさぎよさというか。うぅ、わからん。いつもながらクリス・ロックの複雑にアブナイ切れっぷりが見モノ。ああいうセリフを黒人に言わせるのは案外勇気がいるんじゃないかな。日本のいろんなサベツに置き換えて想像すると、ビミョーな勇気の在処がよく分かる。結局、ケビン・スミスがいろんな面でしっかり腹くくってる人なんだろう。なにはともあれシャノン・エリザベスが可愛い。
8点(2004-12-04 22:32:23)
7.  アバウト・シュミット 《ネタバレ》 
アメリカ地方都市の一種独特の「貧しさ」を描いている。シュミットは中の中(ネブラスカ州オマハなら中の上かも)、ロバータ(キャシー・ベイツ)は中の下の暮らしぶりで、どちらもとりあえず衣食は足りている。でも、生活のどこにも洒落っ気というものが見あたらない。シュミットの家は整然と片づいてて、まあ十分な部屋数があるけれど、インテリアは無趣味で味気ない。ロバータの家は雑然と取り散らかってて、人間味はあるけれど、統一は欠けている。人間関係も、表面的には愛想良くてお互い踏み込まないよう用心しているけれど、そこを踏み越えると突然無意味に性的になる。シュミットはキャンピングカーに招かれて旦那がビール買いに行ってる間にそこの奥さんに抱きつくし、ロバータは突然シュミットに混浴をせまる。昔から伝えられてきた生活様式や美的洗練の模範が無い場所で、男も女も、老いも若きも、何をどうしたら自分の人生に意味が生まれるのか分からない。シュミットの娘はワルではないが取り柄もない男と結婚してしまう。空疎で、安っぽくて、でも楽しげな結婚式! シュミットは、結局アフリカの子供に送金することぐらいでしか、人生の意味を見つけられない。子供から絵を贈られて急に泣けてきても手遅れ。働いて、生きて、誰とも深い結びつきを持たずに、後はなし崩しに死ぬだけなのだ。人生の芯のところが荒廃している。ま、日本も同じなんだけどね。
8点(2004-09-01 02:39:21)(良:1票)
8.  ドグマ 《ネタバレ》 
陰でコソコソ悪さをするヤツは殺してやる! オレたちだって見捨てられたらツラいんだ! あんまり不公平な仕打ちにはキレてやる! あらまあ、天使は人の似姿なんだ。カトリックは土俗的で人間くさい宗派ですね。ドタバタとしてまずまず切れがいいし、クリス・ロックのしゃべりも快調、アラニス・モリセットの丸ごとプッツンの雰囲気も得難い。神は自分の創った世界にあんまり関心持ってなくて、人は見捨てられてるようなもんだけれど、文句付けてもしょうがないんじゃないの、やりたいことをやりたいようにやって、後は野となれ山となれだぁな!という破れかぶれの心情を映像にした、という印象。キリスト教に浸って育てられたけれど、今では信仰を失ってしまった欧米のインテリが、複雑に爆笑する喜劇でしょう。
7点(2004-08-22 11:26:40)
9.  ブルース・オールマイティ 《ネタバレ》 
面白かった。ジム・キャリーのテンション高すぎの演技がもともと大好きなんで。神様でも人間の自由意志は操れないってところと、最後の最後でブルースがあなたの意志に従いますって叫んで神の前にひざまずくところが、キリスト教のキモですね。ヘタにひざまずいたんで、まんまトラックに轢かれちゃいますが。巨大クッキーを焼いた婆ちゃんが強烈な移民アクセントでテレビではマズイ話をぶちまけたり、ナイアガラ瀑布の遊覧船で失意のブルースが辛辣なコメント連発して自爆したり、いつもナイスでいるのを強いられる良い子のアメリカ人のぶちまけ願望が炸裂するところがヒジョーに面白い。今思いついたけれど、ジム・キャリーは少し品良くしたジョン・ベルーシなのかもしれない。その線で頑張って欲しいんだが。
7点(2004-08-20 13:52:48)
10.  HANA-BI 《ネタバレ》 
この映画はホントの意味でのマザー・コンプレックスが作らせた映画ですね。ラストで「ありがとう、ごめんね」と言ってるのは、妻ではなくて母です。男を残して先に逝く女は、本質的に母なんです。職場の人間関係は狭いし、職場の外とは最初から切れてるし、コトバなんか無くても分かりあえるごく狭小な世界で、お母さんに「ありがとう、ごめんね」と言ってもらうためだけに男は生きる。映像はとても美しくて、日本の美景を自信を持って撮っている。桜、富士、白砂青松、雪、そして薄暮のレインボーブリッジ(?)まで。海外賞ねらいとは少し違う。この美景にオレは照れない、という覚悟を監督が打ち出してる感じ。それなら、文句をつけたいのはただ一点だけ。「これがオレたちの愛の劇なんだ、これが美しいんだ!」って照れずに言い切るのは立派だが、「これがそれだっ!」てこと自体が寸足らずの喜劇だぞ。優しいお母さんと、美しい自然と、殴り合うダチと。これってちょっと世界が狭すぎないか? お前は十代の不良なのか? たしかに今の日本のクリエイターが到達できる限界まで行ってる優れた映画だと思うけれど、これが優れた映画だっていうこと自体が「オレたち」の限界を示してる。
8点(2004-08-13 10:48:36)
11.  12人の優しい日本人 《ネタバレ》 
映画としては、元ネタがあるとはいえ、とっても出来がよい。面白かった。「フィーリングかなあ」の時間差2発には笑い転げた。ありがとう三谷幸喜。でも、良い子はこれが日本のオトナの現実の会議をえぐった風刺だ、なんて思ってはダメですよ。風刺じゃないんです、これは、まぎれもなく〈理想〉なんです。この陪審員協議みたいに意見のある人ばっかり集まった会議なんて……、うっそぉ! 私の半世紀を超える日本人生を振り返るとですね、この陪審員たちの協議は、まったく有り得ないほど理想的に充実した会議なのです。だって、全員とりあえず何か中身のある――有罪か無罪かどっちかの――意見を持ってて、それを表明するんだもんね。んなことあるかって。みんなくっきりキャラ立ってて魅力的じゃん。会議でキャラ出す勇気あるヤツなんて例外だよーん。それから、相手の意見に正面から反論してるでしょ。つまり、議論が立派にかみ合ってるってわけだ。それで、最後はみんなが納得する結論が出る、と。ありえない!ありえない!! あ り え な い!!! ま、取り乱してしまったが。ペーソス皆無で成功したセリフ喜劇。珍しいと思う。
8点(2004-08-09 23:46:02)(笑:1票)
12.  リービング・ラスベガス 《ネタバレ》 
アメリカ枯れススキ。または、ラスベガス心中。女は死なないけど。自ら意志して酒を飲み続けてダメになっていく、っていうポジティブなダウンビート志向は、思想として興味深い。恨みとまったく無縁の破滅型っていうのは、有りそうで無いから。でも、映画としては、さほど面白くならなかった。俺はホントにこれでいいんだから、って消えていく人は、あっそう、つって送り出すしかないじゃない。本当は背後にあったかもしれない葛藤が、この世のストーリーにならなかった。合掌。
6点(2004-08-04 10:18:24)
13.  シュレック2
素直に面白かったんだな、これが。ストーリーは単純明快、キャラクターの造形も分かりやすく、CG技術は素晴らしいの一語に尽きる。凝りすぎないパロディも楽しいオマケ。たぶん、見る人が見れば、CGの技術水準はもの凄い高さなんだろうけれど、高度な技術もインフラに過ぎないと見極めている感じ。全体を貫くのは、自分自身であることがいちばん素晴らしい!という現代アメリカのポピュラー思想。これに文句をつける難解なインテリ思想はエンタテインメントにはお呼びでない。でもね、ストーリー上のかたき役だって自分自身ではあるわけなんだが、そいつらは素晴らしくないわけかね、と皮肉屋は言ったりするかも。そしてハリウッド・エンタテインメントは皮肉をまったく受け付けない!! というわけで、とってもアメリカンな傑作です。
8点(2004-08-04 10:07:12)
14.  マッチスティック・メン 《ネタバレ》 
ニコラス・ケイジが例によってうまい。片目だけのまばたき、あれどうやってやるんだろう。ウィンクにならないのがスゴイ。ニセ娘は、変にからみつきながら泣いたりわめいたり被害者ぶってヤだね、と思ってたら案の定。けっこう最後まで健全に騙されて観た。コンゲームものは、詐欺ってもの自体が意識の表層で他人を操る作業だから、恋愛ものみたいに無意識に食い込む深い話にはなりにくい。騙したつもりが騙されるというどんでん返しと父娘関係への誤解をからめることで、確かに意外性(深さに似たモノ)は出せたけれど、少しコンゲーム映画のキモとは別物という感じがした。意外な人情ばなしということで納得しておくことに。
7点(2004-07-12 00:50:08)
15.  ドニー・ダーコ 《ネタバレ》 
なんかの勘違いからできた映画じゃないか。理屈を言いますが。現実の世界では、タイムトラベルもパラレルワールドもありえない。でも映画なら何でもできる。バック・トゥ・ザ・フューチャーでも戦国自衛隊でも(←古い!)何でもあり。飛行機のエンジン落下で事故死した少年が生きるパラレルワールドだって、映画なら、そのままあっさり表現できる。化け物ウサギだって、ぜーんぜんオッケー。映画はそもそもそういう有り得ない架空の出来事を現実みたいに映像化して見せる仕掛けなのだ。だから、この映画で制作側が不思議現象として見せようとしている事柄は、すべて、《現実にはありえないけれど映画なら容易に表現できること》なのですね。映画ならフツーにやれるじゃん、というレベルの事柄を、ことさらに、現実世界でなら不思議なんだからという理由でもったい付けて見せようとしたために、変に混乱してしまった、という印象。
3点(2004-07-04 15:19:13)
16.  ストレンジャー・ザン・パラダイス 《ネタバレ》 
これは映画館で観るべき映画。フィルムの使用残り断片を使って撮ったため、シークェンスが切れ切れになり、随所にブラックアウト画面が挿入されることになった、と封切り時の紹介にあった。フィルム断片の長さがほんとにまちまちなので、この辺でブラックアウトするな、という予測がまったく成り立たない。映像のつながりが不意に途切れ、映画の意味を見失う瞬間が心地よい。それには映画館の暗闇が必要。自宅リビングで消えたテレビ画面を睨んでてもダメでしょう。映画の中のシチュエーションもストーリーもありがちのものだけれど、映画の中と映画の外(ブラックアウト)を予測不能の間隔で往復させられる体験は、この映画に固有の効果。世界のつじつまが外れて行く、というのはジャームッシュのこだわりだけれど、この映画は、ブラックアウト画面を観させられるときに、一瞬、観客自身もつじつまの外れた世界に入り込むような錯覚が生じる。
9点(2004-07-03 15:12:18)
17.  グリーンマイル 《ネタバレ》 
キングの原作をとても忠実に映画化してますね。長いけれど、意外に飽きない。驚くような展開を期待すると、外される。アメリカ先住民の死刑囚が、「死ぬと自分がいちばん楽しかった頃に戻れると聞く、自分は18歳で結婚して妻と一緒に毎日暮らすのがとても楽しかった、あのころに戻れるなら良い」というようなセリフを言います。これはなかなかいいセリフだな、と思ったことです。コフィーの超能力はキング+ハリウッドにふさわしいケレンなんだけれど、本筋は生きること、年をとることについての地味な人生の劇だと思う。トム・ハンクスは、尿道炎を熱演。すっごくうまい。時間がたっぷりあるときに、しみじみ観る映画。
7点(2004-07-02 01:24:42)
18.  ゴースト・オブ・ミシシッピー 《ネタバレ》 
ジェイムズ・ウッズの怪演がみもの。一種の異常性格の表現なんだろうけれど、ガキみたいに落ち着きのない法廷での振る舞いなんか、本当にゾッとするような異様な雰囲気がよく出てた。ストーリーとして、たしかに一応これでスカッとする。でも、この事件は氷山の一角で、他に埋もれている事件が多数有るはずだ、と気づくから、むしろ暗澹としてもくる。アメリカだけじゃなく、意見のある個人を排除する社会的な仕掛けとしての暴力は、表現形態は違っても、日本にもいくらでもあるわけだし。ヒト社会が備えている本当に不快な特徴に気づかされる映画と言えるかも。
7点(2004-07-02 01:21:59)
19.  キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン 《ネタバレ》 
クリストファー・ウォーケンがわりと普通の人の役で意外だったなあ。ま、すこーし変わった人だったけれど。話の根っこは、父(ウォーケン)と子(デカプリオ)の関わり。どんどん落ちぶれていくお父さんが可哀想で、励ましたり勇気づけたりする子供、というなかなか面白い設定になっていた。細部まで筋立てがうまく作ってあるので楽しく観られる。こういう映画をテンポよくあっさり作るあたり、やはりハリウッドの職人藝は侮れないですね。って侮るヤツはいないか。
6点(2004-07-02 00:45:39)
20.  デッドマン・ウォーキング 《ネタバレ》 
キリスト教の最も本質的な教えを取り上げた珍しい映画。ハリウッド左翼のティム・ロビンスも、やはり根っこはここなのかな。で、その教えとは、最悪の罪人の中にもなお神を求める魂の力(=神への愛)が潜んでいて、彼らが自らの罪を本当に見据えたとき、彼らの魂の中に神に向かう意志(=愛)が現れる、という教え。イエスもローマに反逆して死刑になった罪人だった。現世の罪人が本当は神の子だった、という大逆転がキリスト教の出発点に仕込んである。迫害され虐げられたものの中にこそ、神は宿る。イエスはさておき、普通、大逆転は罪を本当に悔いること(「どうやって?どのくらい?」まあまあ落ち着いて。)から生まれる。社会の下層を這いずって生きてきたマシューは、このパターンをなぞっている。顎の細いショーン・ペンの顔は、屑白人(white trash)そのもので(ゴ、ゴメン!)、まさに適役。最後近い場面、マシューは死刑の薬物注射のために十字架状の台に固定されて、観客に正対する。キリストのいた場所に彼はいる。死刑は不当だが、同時に、こうして十字架上で死ぬことによってのみ神の許へ行くことができる。この二重の意味が、あのシーンに込められている。神の許へ行けば、彼が強姦して殺した女性ともすでに和解している。って、やっぱり浮かばれないだろ被害者は、と思うヒトは、御霊と祟りの信仰の中にいて、それはそれで別の宗教世界だからなあ。感動できない、釈然としない、というご意見は、重々ごもっともとしか言いようがない。
8点(2004-06-29 15:07:56)(良:2票)
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