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1.  残菊物語(1939) 《ネタバレ》 
溝口健二監督という存在、「巨匠」とは呼ばれていても、どこか認知度が薄い気がする。代表作は「雨月物語」ということになっているけれども、それでいいんだろうか。そのあたりで、(決して「雨月物語」がダメというのではなく)認知度の低い原因にもなっているようにも感じる。‥‥溝口監督の作品には、どれもそれなりの欠点が内包されている、などと生意気なことをいいたくなってしまうところがあるのだけれども、十本ぐらいの監督の作品を観て、いちばんにバランスのとれた「傑作」は、この「残菊物語」ではないのかと思う。ストーリーは定型の旧社会の中での「メロドラマ」ではあるけれども、ヒロインはそれでも、いつも「前」を向いている。そこに「感動」のタネもある。みごとな長回し、ワンシーンワンカット、そして、ひんぱんに登場する「階段」の活かし方。ラストの簡潔な「対比」の効果。すばらしい。映画というものの演出の、ひとつの規範ではないのか。‥‥もちろん、西瓜のシーンとその反映は、あまりにすばらしいではないか。
[インターネット(字幕)] 10点(2013-12-13 17:26:40)
2.  アントニオ・ダス・モルテス 《ネタバレ》 
●「お祭り映画」の最高峰、である。このお祭りは「邪悪なドラゴンを退治する聖ジョルジュ」を祝うお祭りで、すばらしい音楽に導かれて、いろいろな祭りの出し物を楽しむことができる。そのなかに、神から見捨てられた男、アントニオ・ダス・モルテスの「火の道めぐり」、庶民を助けるカンガセイロの再生、邪悪なエロ女の魔力、などなどという出し物が織り込まれているわけである。●サンバの原形のような、みじかいリフレインの延々と繰り返される群集の唄、「気狂いピエロ」でのアンナ・カリーナとベルモンドのデュエットのようなシャンソン風音楽、ルチアノ・ベリオ風のヴォーカリーズ、呪われたアントニオ・ダス・モルテスを唄うテーマ曲、いちどは逃走する教授を覚醒へとみちびく現代的なポップ・ソング、そしてこれまたすばらしい、クライマックスのバックで「ランピオンの地獄行き」を唄ったバラッド風のギター弾き語り、アントニオとマタ・バカとの決闘のバックの合唱などなど、とにかくこの音楽を映像とともに体感できる喜び。●歌舞伎か能のような様式化された演出で繰り広げられる、ブラジル版マカロニ・ウェスタンのような祝祭劇は、それでも「おかげまいり」や「ええじゃないか」的気分の奥に「革命」への意志をかいまみせてくれて強烈、なのである。
[映画館(字幕)] 10点(2011-07-13 11:47:20)
3.  巴里の恋愛協奏曲(コンチェルト)
お茶会のテーブルの上のカップ類を真上からとらえるショットから始まり、カメラがさらに上昇して(引いて)、テーブルのまわりの女性コーラスの面々が上のカメラを向いて唄い出す。このカメラがつまりは観客の眼で、俳優たちはひんぱんにカメラに向かって、カメラ目線で内緒ごとを観客に語ったりする(これはミュージカル映画の特権だ)。広い舞台の中をカメラは自在に動き回り、その演出とともに名人芸を感じさせる。カメラはレナード・ベルタ。圧巻は第二幕の夜会の場で、タイトルになっている「唇にはダメ」という曲から、続けざまに四曲ほど連続するのだけれども、曲自体もどれも楽しいのだけれども、この畳み掛けるような、柱や鏡、階段、そして照明をものすごく効果的に使った演出から受け取る高揚感はただものではない。この場面があまりに楽し過ぎて、観ながらずっと涙を流していた(泣くような映画ぢゃないのに)。このあとのなにもかも廻るカメラ、そしてフィナーレも最高で、やっぱりこの作品はめちゃ楽しい。それがただのストーリーの楽しさ、歌曲の楽しさを越えて、映画的な楽しさ、つまりはアラン・レネの演出やレナード・ベルタのカメラを思い切り楽しめる作品になっているところが、わたしのお気に入り。自分でこのDVDを持って、繰り返し観たいと思える数少ない作品の一つ。今でもわたしの頭の中には、「マラケ河岸の23番地」がぐるぐるとまわっている。  そう、レネ映画の常連、サビーヌ・アゼマはやはり素晴らしいのだけれども、もうひとりの常連のアンドレ・デュソリエがこの作品には出ていない。でも、特典に収録されている、フランスでのこの作品の「特報」に、アンドレ・デュソリエもたっぷりと出演していた。やはりもう今となっては、アラン・レネといえば、サビーヌ・アゼマとアンドレ・デュソリエの二人の顔が浮かんでしまうのを止められない。 
[DVD(字幕)] 10点(2010-05-12 22:11:26)
4.  フランケンシュタイン(1931)
製作から80年経過した今となっても、「映画」という表現、そのヴィジュアルの、ひとつのアイコンであることを止めない。おそらくは永遠に、「映画」なるものの代名詞であり続けるだろう。
[DVD(字幕)] 10点(2010-03-24 16:59:37)
5.  シャイニング(1980) 《ネタバレ》 
ホラーだというのに画面はいっつもピーカン照りというか、暗い照明のシーンなんて皆無。それで、その明るさでもって恐怖感をかもし出させるような演出であり、やっぱりただ事ではない作品なのだと思う。   あらためて、伝説になっているジャック・ニコルソンの怪演などよりも、恐怖におののくシェリー・デュヴァルの演技の恐ろしさに釘付けになってしまい、全部観終わったあとにその部分だけ(ジャックの原稿を読んでしまい、ジャックに追いつめられて階段を後ろ向きに上って行くシーン、それからジャックがドアを斧でぶち割る背後で恐怖に叫ぶシーン)二度見してしまった。すっごい!
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-11-22 12:35:01)
6.  第三の男 《ネタバレ》 
 第二次世界大戦後のウィーンの街、その地政学的な状況がひとつの大きな背景であり、そしてもうひとつ、アントン・カラスのツィターの音楽もまた、決定的な背景を形成している。   さいしょにオーソン・ウェルズがその顔を見せる場面は、「シャイニング」のジャック・ニコルソンぐらいの、あるいはそれ以上のインパクトがあるかなあ。映画史の中の名シーン。地下水道の追跡(ここは短いカットの積み重ね)、そしてあのラストシーン(長回しだ)などもすっばらしいんだけれども、わたしはアンナ役のアリダ・ヴァリが、警察に連行されてのシーンの演出が好き。「おお、映画やなあ」と、うならされる。   前半の叙述が今の映画とはずいぶんと異なる感じで、そういうところでは現在の映画文法でリメイクされたものを観てみたい気もする。監督は、そりゃあデヴィッド・フィンチャーに決まってる。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-11-22 12:30:52)
7.  チャイナタウン 《ネタバレ》 
 観終わっての印象はやっぱり、この「脚本」のすばらしさに圧倒されるところがあるのだけれども、場面によっては、その脚本が絵をリードしすぎているように感じるケースもある。でもわたしはラストのシーンでの三人の男、警官のひとりが去って行くフェイ・ダナウェイの車に発砲しようとして、それを脇にいたジャック・ニコルソンがまずは止める。するとその脇の警官がニコルソンのとなりに出て来て、そこから車に発砲する、このシーンの演出が大好きである。どこか、「歌舞伎」の世界の所為を思わせられたりもする。‥‥そう思うと、この作品でのジョン・ヒューストンという強烈な存在がまた、まるで舞台空間のなかの世界を思わせてくれる気がした。みごとな映画である。   フェイ・ダナウェイが保護していた女性が彼女の「娘」であり「妹」なのだという告白のあたりで涙がこぼれ(ここのニコルソンの反応がいいんだ~ただひっぱたくだけだけれども~)、その、例のラストのセリフ、「忘れろ、ここはチャイナタウンだ」でまた泣いてしまった。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-07-05 10:57:29)(良:1票)
8.  回転 《ネタバレ》 
いやあ、すっごいですよね! この映画! みんな、「シャイニング」のジャック・ニコルソンとかを「すごい!」っていうけれども、こっちの、デボラ・カーの、すさまじさといったら! いやあ、もう、あきれかえりました。眼を見開くとこの人、黒目のまわりが上下左右ぜんぶ、白目になるんですね。そういうこと誰でも出来るのかどうか、知らないけれども、もうこの映画でのその効果は抜群! このスクリーンのなかで、デボラ・カーが眼をむいただけで、観ているこちらは恐怖感に感染してしまう。   ‥‥ナチュラル言語の英語があんまり聴き取れないなかでの感想だけど、この家庭教師のデボラ・カーって、ひょっとしたら「処女」なんだよね。少なくとも、充実した恋愛体験は持っていない。それで、この屋敷の「古譚」に惹き込まれてしまうし、少年の「おやすみのキッス」にも反応してしまう(もう、この場面の、デボラ・カーの演技の、その凄さといったら!)。   いちおう、むかしにこのヘンリー・ジェームズの原作の「ねじの回転」は読んでるんだけれども、こういうヒロインの「屈折」というのは書かれていたかしらね? まあ、脚本がすべてトルーマン・カポーティだけでものしたわけでもないだろうけれども、トルーマン・カポーティも楽しんだだろうし、監督のジャック・クレイトンもまた、ここで入れ込んだわけだろう。「シャイニング」が「すごい!」なんていってるんだったら、「いやいや、もっとすごいものが!」と、このきょうれつな作品を観ていただきたいものである。大傑作。
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 9点(2013-10-24 14:27:04)
9.  ソーシャル・ネットワーク
冒頭のパブでの、主人公のマークとガールフレンドのエリカさまとの対話からしてすごい。ふたりとも間髪置かずにものすごい早口でしゃべりまくりつづけ、これを執拗なカメラのきりかえしでみせるのだけれども、このふたりの対話と、バックに流れている(おそらくは店内のBGM)テクノ調の音楽とが、だんだんにシンクロしてくる。というか、さいしょっからシンクロしているのかもしれないけれど、観ていてだんだんに気がついてくるわけだ。この、それなりに尺のある長い対話の終盤なんか、まるでふたりでラップやっているみたいで、観ていてもちょっとした高揚感を味わってしまう。わたしなどは字幕を読むのに神経を集中してしまったので(とにかく早口だから字幕の情報量もはんぱではない)、純粋に音と映像だけを楽しむことができなかったのが残念。このシーンはまた、何をしゃべっているのかとか気にしないで観てみたい。こういう演出のシーンはこの作品のなかでもう一ヶ所、マークの協力者になったショーンがクラブのなかで話をするシーンでくり返され、もういちど楽しむことができる。すばらしい! おそらくは音楽に合わせてセリフのタイミングを演出しているわけだろうけれど、とにかく堪能した。これに、撮影を「セブン」や「ゲーム」でもフィンチャー監督を助けたジェフ・クローネンウェスが担当していて、また被写界深度の浅い撮影でワンカットのなかでひんぱんにピント位置を移動させたりもしているわけで、このあたりの演出力には感服させられる(カメラの被写界深度の浅さには、ちょっと疑問もあるけれども)。 マークをめぐるふたつの訴訟を軸に、過去にさかのぼりながらも時系列にそった展開になるけれど、あいだに審判シーンをうまくはさむことで、スピード感にあふれる展開になっている。ストーリー的には、若くして富豪になったけれど、その原点には「得られない愛」があって、それをラスト(現在)まで引きづっているのだよ、というわけで、これは現代版「市民ケーン」なのだね、という感じである。ラストに主人公がノートパソコンを開くときにBeatles の「Baby, You're a Richman」の印象的なイントロが流れてきて、「ああ、やはりこの曲で来たか」とは思うベタな選曲なんだけれども、このイントロが流れてくるしゅんかんにはゾワッとしてしまった。ベタだけれども、あまりにはまりすぎであった。
[映画館(字幕)] 9点(2011-01-30 11:09:10)
10.  ブレイキング・ニュース
めっさ面白かった。とにかくまずは冒頭の、オーソン・ウェルズもロバート・アルトマンもまっ青の長回し。いったいどういう風にカメラをあやつっているのか、単にトリッキーというのでなく、ものすご力を感じる。 全体に、リアリズムなんて屁とも思っていないような独自の映画世界が繰り拡げられるのだけれども、そこを絶妙にリアルな描写が支える。まさに映画ならではの面白さを満喫出来た。追われる複数の男たち、逮捕劇全体をマスコミにショーアップして報道させ、警察の威信を回復させようとするデスクの女性警察官、それを無視して執念で犯罪者を追う捜査課の男、人質の家族などが入り乱れて、おそらくはコンピューター処理などいっさいしていないだろう実写の迫力も生々しく、説明的描写を排してスピーディーに展開していく。感情を排して無表情に指令を出していく女性警察官、熱く燃える現場の警官、それらに情と頭脳で対抗する犯罪者たちの対比がいい。インターネット中継を通じて犯人と女性捜査官が対話するときにだけ、その女性捜査官の表情が生き生きとするし、犯人の二人が短い会話を交わしながら台所で調理する場面がいい。全体にクールなタッチで貫かれる中で、こういうちょっとしたウェットな部分が、とてもうまく活かされている。 冒頭のシーンもそうだけれども、撮影がとにかく秀逸で、鳥瞰撮影などうまくまじえた香港市街の道路の描写もいいけれども、多くの場面を占める、犯人の立てこもるマンションの、狭い通路の撮影がすばらしかった。
[DVD(字幕)] 9点(2010-05-21 09:40:52)
11.  アルゴ 《ネタバレ》 
 冒頭から、ニュース映像みたいなドキュメンタリー・タッチで「事件」の経過を追って行くわけだけれども、「これは訪イラン中の<映画>のロケハン部隊、ということにしよう」という<荒唐無稽>とも思えるアイディアが提出され、コレが採用される。ここで、実在のハリウッドのメイクアップ・アーティストのジョン・チェンバースが登場する。この役をジョン・グッドマンが演じているわけで、それまでの「あまり見たことのない人たち」の「リアル」な映像から、まさに、この作品自体もが「映画」へとシフトしてくれる。つまり「映画俳優」ジョン・グッドマン(大好きな俳優さん)の登場によって、ダブルミーニングで「これは<映画>なのだ!」ということになる。見事だと思った。   こういう「仕掛け」もあって、後半のケレン味たっぷりの演出にしても、「許せる」というのか、「映画なんだから」みたいな気分で楽しめた。さいごに作戦がみごとに(映画らしくもギリギリのところで)成功したそのあと、そのジョン・グッドマンが、「<アルゴ>? ポシャったよ!」というところまで、すっかり楽しませていただいた。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-01-03 10:37:36)
12.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 
日本でも、京都とかで、ああいう「ニセ観光ガイド」がいたりしたら面白れえなあ。
[DVD(字幕)] 8点(2013-11-24 09:15:07)
13.  武器人間 《ネタバレ》 
予告を観ていなければスルーしていただろう。期待はしていたが、期待以上の面白さだった。フランケンシュタインの末裔と、ナチスと、ソヴィエト軍との絡み。どいつが生き残ってもろくなことになりゃあしないというあたりの設定がいいし、結末には軽く笑わされた。監督はポール・バーホーベンの映画や「ホビット」などにも関わられているらしいが、これが監督第一作。CGをいっさい使用しない「手づくり感」がすばらしい。死体と武器とを縫合、結合させて、「シザーハンズ」で「ロボコップ」な、「鉄男」しているゾンビ軍団が、いっぱいいっぱい登場する。監督は「鉄男」の大ファンでもあるらしい。エイリアンのスペース・ジョッキーとしか思えない造形も一瞬登場する。堪能した。
[映画館(字幕)] 8点(2013-11-17 18:46:26)(良:1票)
14.  ゲロッパ! 《ネタバレ》 
 いいんです、トータルな映画作品としてどうであろうとも。ただ、千疋屋のメロンで泣き崩れるタクシー運転手の寺島しのぶ、そして西田敏行のイグアナ射殺でビビりまくり、柱に頭をぶつけながら逃げ出す塩見三省、このふたりの、あまりに楽しい、楽しすぎる演技を観ることができるだけで「うれしい」映画、ではありました。
[DVD(邦画)] 8点(2013-09-20 13:17:53)
15.  リアル 完全なる首長竜の日 《ネタバレ》 
●冒頭のマンションのなかを俯瞰する映像の、室内の光がどこか異様である。いったいどこから光がさしているのか不明な映像が続く。そして佐藤健が車を運転する車内の映像で、車外の景色はあきらかに別撮りになっている。なにか意図があるのだろうかと思って観ていたが、つまりはこの映画、その中盤で「あなたの夢に入っていくわたし」から、「わたしの夢に入ってきたあなた」(あれ?逆かな?)へと、まさに劇的な転換が行なれれてしまう作品であることがわかる。そうすると、そこまでの展開はすべて、実は佐藤健の「夢」のなかなのだ、ということになる。つまりは観客も知らずに佐藤健にセンシングしているわけで、「リアル」にものごとが展開しはじめるのは、綾瀬はるかこそが覚醒しているとわかってからあと。わたしはまだこの作品はいちどしか観ていないけれども、あとでこのことに気がつき、もういちどさいしょっから観なおしたくなってしまった。きっと、まるでちがうものがみえてくることだろう。また評価は変わるかもしれないけれども、とりあえずは8点ということに。 ●めずらしく上野の科学博物館でのロケ・シーンがあり、ここでその「首長竜」の化石標本へと近づいて行くカメラ、首長竜の頭部を見上げるカメラは、ほんとうにすばらしい。それに、黒沢清監督らしいみごとなロケハンの成果も、たっぷりと楽しめる作品である。
[映画館(邦画)] 8点(2013-06-19 11:47:26)
16.  愛、アムール 《ネタバレ》 
 けっこうおそろしい話を、ぜったいにエキセントリックにならない落ち着いた演出でみせられ、やはりハネケだなあと感心した。  映画の終盤に部屋のなかにハトが窓から迷いこんできて、それをだんなさんのジャン=ルイ・トランティニアンがつかまえる。‥‥いままでのハネケの作品では、こういう鳥だとか動物はたいてい殺される。たとえば「隠された記憶」でのニワトリだとか、「白いリボン」でのインコだとかをおもいうかべてしまうから、「ああ、また殺しちゃうんだな」なんて不遜なことをおもってしまう。でもそういう展開にはならず、ジャン=ルイ・トランティニアンは、おそらくは彼の遺書になるのであろう手紙のなかで、「ハトが部屋に迷いこんできたのをつかまえて逃がしてやった」と書く。映画ではそういう逃がしてやるシーンはないので、「ほんとうはあのハトは殺しちゃってるんじゃないのか」なんて、またもや不遜なことをおもってしまうわたし。‥‥しかし、そのハトを捕らえるとき、ジャン=ルイ・トランティニアンは、布をハトにかぶせて捕らえる。かんがえてみれば、この「布をかぶせる」という行為が、この映画での別の重要な行為を想起させられることになるわけで、そうすると、ここで彼はそのハトを殺したりするわけがないのである。それで、たいていの演出ではここで彼が窓からハトを逃がしてやるショットを入れるのだろうけれども、ハネケはそういうことはやらない。なんか、ここにこそ、この作品の「キモ」があるんじゃないかとおもった。「かんじんのことはみせない」というハネケ監督の演出術が、ここでも生きているんだなあという感想をもった。
[映画館(字幕)] 8点(2013-04-29 16:18:47)(良:3票)
17.  ウィンターズ・ボーン 《ネタバレ》 
 原作というのか脚本というのかが秀逸で、これってつまりはむかしのギャングものの「フィルム・ノワール」なストーリー展開なんだけれども、これをうまいことげんざいのアメリカ南部(ミズーリ州)の白人貧困層のもんだいに移植している、という印象。「ファミリー」はもろそのまんま「ファミリー」だし、「おきて」も「おきて」。みょうに芝居っけたっぷりな連中がいっぱいでてくるけれども、そういうなかではやはりヒロインのジェニファー・ローレンスというコの存在感は大きい。あとはティアドロップという人物を演じているジョン・ホークスという俳優さん、かつてのサム・シェパードだとか、デニス・ホッパーみたいな存在感がある、なんていうとあまりにほめすぎになってしまうか。でもよかった。  それと音楽。南部の伝承歌をさりげなくライヴ感覚で取り入れているところは、それだけで涙がでそうになる。ついつい、ここで唄っていたMarideth Cisco という人の名まえをメモして、ネットで検索してしまった。‥‥どうやら、この映画だけでフィーチャーされた方らしい。そういうこともまた、映画製作のあり方として賛同してしまった。バンジョーの取りいれ方に拍手したい。いい映画だとおもった。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-04-02 18:23:26)
18.  ガーゴイル(2001) 《ネタバレ》 
●ちょっとばかし、主演のヴィンセント・ギャロとベアトリス・ダルの強烈なキャラクターに依存している演出という気がしないでもないけれど、わたしはこれはヴァンパイア映画の系譜を引く作品として、斬新な解釈の鮮烈な映画だと思う。 ●説明的な描写もほとんどなく、セリフも少なく、娯楽的な要素はあまりない。それでもひとつひとつのショットにきらめく美意識は鮮烈で、とりわけ血の「赤」の美しさはこころに残る。まあいってみれば「血塗られた映像詩」というところである。壁一面に塗りたくられた赤い血のまえを、ベアトリス・ダルがゆっくりと歩んでくるシーンなど、どんなホラー映画にもなかった美しさに満ちている。 ●Tindersticksというバンドによる、ストリングスをまじえた退廃的な音も印象に残る。  
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-04-11 08:42:56)
19.  キラー・インサイド・ミー 《ネタバレ》 
●原作のように主人公のモノローグを入れての進行なのだけれども、じつは核心のところでその主人公がなにを考えているのか、ということはモノローグからはみごとにオミットされている。これがこの作品ではうまくいっていて、モノローグのぶぶんは主人公のノーマルさを浮き立たせ、ところが映像では主人公ではそのノーマルさを裏切る非道さを際立たせることになる。だから主人公のなかにごくふつうの常識人と、そこからは想像できない人非人ぶりとが同居しているということが、原作以上にはっきりと示されることになると思う。「愛してる。すぐ終わる」と語りながら唐突に女性を殴り殺そうとする主人公が観るものに与えるショックは、そのケイシー・アフレックのなにげない顔とあわさって、尋常のものではない。ウィンターボトムの演出も、原作のストーリーを追うように見えながら、おそらくはストーリーなんて重視していないというか、この異常な主人公の造型をきっちりと組み立てることにのみ専念しているようではある。 ●わたしはもうほとんど原作をおぼえてなどいないのだけれども、おそらくたしかにこのようなストーリーだったとは思う。しかし、あきらかにある一点から先はこれは主人公の妄想というか、まちがいなく非現実として演出されている。お膳立てはとにかく現実と見まがうようにストーリーは続くのだけれども、もうここからあとはほとんどデイヴィッド・リンチの世界というか、現実とも非現実ともつかない、主人公にとっては甘美なことであろう破滅の世界がくりひろげられる。 ●医師の息子として教養ある環境に育った主人公は、書斎にすわってマーラーを聴く。書棚には膨大な量の書物が並んでいる。いっぽうで舞台となったアメリカ西部の荒んだ環境はBGMのカントリー・ミュージックなどでもあらわされ、とくにラストのSpade Cooley & His Western Band による「Shame On You」の、その一見陽気な曲調と辛らつな歌詞との対比は強烈である。ぜんたいにそういうカントリー・ソングの連なりでストーリーを引っぱって行く演出はみごとなもので、ここはさすがに音楽の取り入れ方のうまいマイケル・ウィンターボトムであると、うならされてしまうのである。  
[映画館(字幕)] 8点(2011-06-01 14:28:43)(良:1票)
20.  ミリオンダラー・ベイビー 《ネタバレ》 
どうして、モーガン・フリーマンの語りで進行していくのだろうという問いへの答えは、いちばんさいごまで明かされない。そして、この作品の魅力は、そのモーガン・フリーマンの語りで進行する部分と、客観的に描かれるストーリーとの「あいだめ」にこそあることが、やはりラストで納得させられる。ラスト・ショットは、過去にクリント・イーストウッドがヒラリー・スワンクといっしょにレモンパイを食べたレストランの、ドアの外からのショットなのだけれども、そのレストランのなかにはイーストウッドの姿は(おそらく)見えない。この、ラスト・ショットの「不在」の強烈さには、おののきさえおぼえる。いや、「不在」と断定することもできない、ということが強烈なのかもしれない。とにかくそこには「気配」は存在する。映画のラスト・シーンとしてはもっとも印象に残るショット、だと思う。
[地上波(字幕)] 8点(2011-04-15 11:40:51)
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