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1.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 
シン・ゴジラ後の実写ゴジラを作るのは大変だろうなあと言うのが前作を3回劇場で鑑賞してからの感想だったが、結果としてはシンに勝るとも劣らない出来映えになった。敗戦直後という時代設定、その時代を描くのに三丁目の夕日シリーズで「あの頃」の描写に於いて右に出る者がいない山崎貴監督の起用(三丁目第2作でゴジラは経験済みだし)、朝ドラ主演コンビの再登場(撮影はこっちが先だそうだけど)など、作品作りも話題もシンと同じ土俵で勝負しなかったことが良かった。シリーズものにありがちな「前作から○年後」「主役交代してもあらすじは似たようなもの」というハイハイそうですか的展開は一切無い。明るい映画ではないのでさすがに何回も通えはしないが、余韻にひたりながら劇場を出られる作品であることに疑いは無い。 昭和シリーズなら「東宝自衛隊」が超兵器を携えて出動するところだが、警察予備隊も自衛隊も無い終戦直後、まして旧軍も解体され国民を怪獣災害から守る組織がないから民間中心でゴジラに立ち向かわなければならないという状況こそがこの作品の白眉だ。東京湾のゴジラ掃討作戦の説明を聞いて「降りる」民間人を描いたのはある意味新鮮だった。コロナ禍を経て同調圧力の息苦しさを経験した観客は大義に殉じることが義務、美学、美徳とされることへの反発がある。吉岡秀隆演じる技術者が明日のための戦いだ、全員生きて帰ってくることが大事だ、と説く場面は散華することを美しいとする昭和の価値観との決別だった(それでいて舞台はまごうかたなく昭和なのだけれど)。一方で「(この間の戦争は決死だったけど)対ゴジラ作戦は生き残れる(勝ち目はある)んだよな!」と鼓舞する者、やってやろうぜと気勢を上げる者はお決まりで、こういう方々がいなければ話も進まない(笑)が、このような場で死にたくない、怖い、逃げたいという人も少なからずいることをはっきり描いた最初のゴジラ映画かもしれない、と感心した。 テレビの特撮ものは別として、ゴジラ映画はもうCG無しでは成立しないところまで水準が上がった。それはゴジラ映画が大人の鑑賞にも堪えられるテーマを内包するために欠かせない条件になったからだ。それを支えるのが佐々木蔵之介、青木崇高、安藤サクラなどの助演陣のリアルな演技だった。みんな「この間の戦争」で理不尽に家族を亡くし、やり場のない怒りを押し込めて生きていることが切々と伝わる。戦争に行かなかった若者:山田裕貴が軽率な軽口を叩いて神木:主人公敷島に胸ぐらを掴まれるシーンは象徴的対比だ。ゴジラは滅ぼされていない、という不吉なラストシーンで物語は幕を閉じるが、劇中の世界で生き延びた人たちが今度こそ希望を持って生きていってほしいと思った。
[映画館(邦画)] 9点(2023-11-04 11:23:56)(良:1票)
2.  インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 《ネタバレ》 
手元に当時のパンフがないので正確さに欠けるけれど、「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」のスタッフ(監督だったかプロデューサーだったか)がシリーズ完結の理由を聞かれて「そろそろマクフライ一族にプライベートを与えるべきだと思ったんだよ」と答えていて、なんてウィットに富んだ答えだろうと感動したのをよく覚えている。 シリーズ第5作目の今作を完結編としたのはハリソン・フォードの年齢を考えれば当然だが、作らなくても、というのが正直な気持ちだった。「クリスタル・スカルの王国」で登場したインディの息子マットにシリーズを引き継がせようという皮算用が映画会社にあったのは見え見えだったが諸般の事情でそれは叶わず(シャイア・ラブーフも公開後作品を批判してハリソンにたしなめられていたのは有名な話)、それでも懲りずにシリーズ続行を模索する映画会社に引導を渡すために完結編を作ったのではと邪推したくなるほどにインディが不憫だったからだ。関係各位に打ち止めを納得させるためには戦後のインディの不遇(軍隊に入隊しおそらく戦死したマット、それが原因で別居状態まで冷え込んだマリオンとの関係、大学での講義を真面目に聞く学生は一人もおらず、定年退職当日の大袈裟なお祝いに精一杯の愛想で応えるも鬱屈を溜め込み続けるインディの苦悩)をこれでもかと描写することが一番だったろうが、インディのそんな姿は見ていてつらかった。 感傷と言われればそれまでだが、第1作「レイダース」のラストシーン近く、聖櫃を政府に取り上げられ「真価を知らん」と毒づくインディに「一杯奢るわ」と微笑むマリオン姐さんの格好良さを思い出すにつけ、インディにもプライベートは必要だったよなあ、とつくづく思った。思い出は思い出のまましまっておくのが良い、こともある。そう考えればスピルバーグが監督をマンゴールドに委ねたこともなんとなく腑に落ちる。マンゴールド作品は「ナイト&デイ」が楽しかったが、今回は無辜の市民が巻き添えのように次々殺されるのでどうにも後味が悪い。色んな葛藤を経て劇場に足を運んだのは、シリーズ掉尾の今作を「見届けに」行こうと思ったからだが、うーんうーんと思いながら劇場を出た。
[映画館(字幕)] 7点(2023-08-15 04:52:18)(良:2票)
3.  ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE 《ネタバレ》 
ミッション・インポッシブルシリーズはローグ・ネイションあたりから体張って頑張るトム・クルーズを愛でる映画に変容してきた。批判ではない。文句もない。今回もそれが観たくて公開初日に行くのだから。それよりも今作は女性キャラが我もわれもと八面六臂の大立ち回りを見せるのが見どころと言い切りたい。特に敵役のポム・クレメンティエフがおいしいところを全部かっさらっていく。ゴツい大型車(装甲車?)をゴリゴリぎゅわんぎゅわんとぶん回すように駆ってクルマもバイクも何十台と片っ端からなぎ倒し、テンション上がってハッハッハーと舌なめずり&大笑いしながらイーサンを追い詰めるシーンは本当にイカレている(褒めている)。ちなみに追われるイーサンが調達したクルマが「黄色のフィアット」、まさかカリオストロのカーチェイスを実写でやろうと監督が思ったか定かではないが。 ポム姐さんは格闘も強い強い、おまけに超々ドS。鉄パイプで壁をキィーキィーガリガリガリと耳障りな音立てて擦ってから振りかざし猛然と襲いかかるその凄さ。ポム姐さん観るのは初めてだけど、勝手に今回の最優秀助演女優賞を贈りたい。 と、なんで仇役をここまで褒めちぎるかと言えば、今回イーサンと不本意ながらバディを組まざるを得なかったグレースというキャラが、どうにもM:iー2のヒロイン、怪盗ナイア・ホールとキャラがかぶるのだ。そもそもグレースを演じたヘイリー・アトウェルより元英国情報部のイルサことレベッカ・ファーガソンが個人的圧倒的にひいきなのだからどうしようも無い。グレースとイーサンのカラミが多い分ベンジーとの漫才はぐっと少なくなった。まあ今度のミッションは現実に起きれば未来の世界線上にスカイネットが誕生しました、という話になりかねないほどの深刻な事件なので、わちゃわちゃやってる暇はないのだろう。だから米国俳優組合はストライキをさっさとやめてPART2を早く作りなさいと声を大にして言いたい。そうそう、潜水艦のシークエンスも「アビス」冒頭の米原潜を想起させる。要するにミッション・インポッシブルは好きなんだけど、今作はなんだかあちこちのシーンで既視感があってなんだか色々惜しい。面白いけど。
[映画館(吹替)] 8点(2023-07-22 01:52:44)(良:2票)
4.  ミニオンズ フィーバー 《ネタバレ》 
約1時間半の上映時間があっという間だった。「怪盗グルー」シリーズはこれまで地上波やレンタルで、しかも半ば迎合的に鑑賞してきたけれど、この作品は可能なら是非劇場の大画面で鑑賞することをお勧めする。スケールが(無駄に)大きく、映像は細部に至るまで凝り、馬鹿馬鹿しくてくだらなくてアホらしいけれどキレッキレのアクションは実写を軽く凌駕し、打ち上げ花火のように猛烈な勢いで次々炸裂する、そんな映画だ。子供は大笑いするし大人は頭の中を空っぽに出来る。 シリーズのスピンオフという位置づけだそうだが、ミニオンズはもうグルーのお株を奪うほどの人気者だ。その人気の源はなんと言っても大勢で押し寄せる迫力にある。一応ケビン、ボブ、スチュアートという主役トリオが居るが、その他大勢も騒々しく勝手気ままに振る舞い、イタズラを繰り返す。行く先々で起きるのは破壊と混乱ばかりだがどうにも憎めない。今作では4番手のミニオン「オットー」が登場するがコイツが肝心な所でご主人グルーの命令を忘れ、自分の「好きなこと」を優先させてしまうスカポンタン。歯列矯正中(つまり半人前の暗喩)の外見と相まって頭を抱える問題児だが、責任感はとても強く、単独行動(これもミニオンの行動パターンから外れている)の末にクライマックスでイイ感じの活躍をするものだから、ホロリとしてしまう。 敵役「ヴィシャス・シックス」もくせ者揃いで一人ひとりがとにかく強い。まあそのぐらいで無ければミニオンズに対抗出来ない。余談だが市川正親、尾野真千子の演技がピタリと合っていて何の違和感も無かった。渡辺直美のカンフーマスターは外見ですぐ分かったが、これも文句のつけようが無い。「話題作りで有名人や芸人に声優をさせるな、プロ声優に任せるべきだ」という意見は世間に未だ多いが、この作品はその批判を跳ね返す稀有な例になるのではないかと思う。田中真弓、大塚明夫、立木文彦といった豪華ベテラン声優を脇役に配しているところにも話題だけでは無いキャスティングをしっかり考えている日本語版制作陣の志を感じる。 序盤のヴィシャス・シックスによる中国奥地での秘宝盗掘は「完全に」レイダース/失われた聖櫃のパロディだし、そこからの怒濤の展開はテンポも快調で見事だ。70年代の風俗が次々登場する物語は、30代以下の観客層(特にティーンズ以下)には新鮮に写るし、それ以上の層はニヤリとさせられる。主人を助けるために旅客機を(結果的に)ハイジャックしてサンフランシスコに向かう時の騒動は、70年代に流行ったパニック映画「エアポート」シリーズを彷彿とさせる(あのシリーズもあちこちでパロディのネタにされることが多く、ギターの弾ける尼さんや重病の手術を受けにいく少女、親に結婚を反対されているカップルが搭乗しているという設定自体がおちょくりの対象にされていた)。特に主役トリオがカンフーマスターに弟子入りしてからのくだりはブルース・リー人気を知る人には爆笑必至だ。 ディズニーやピクサー作品では味わえない馬鹿馬鹿しさがこの作品の一番の魅力だ。あー面白かったと映画館を出られる映画のお手本として推したい。
[映画館(吹替)] 9点(2022-08-21 05:55:51)
5.  シン・ウルトラマン 《ネタバレ》 
「シン・ゴジラ」は公開中3回劇場に足を運んだ。では「シン・ウルトラマン」はどうか。「ブルーレイ発売されたら特典映像コミでゆっくり観よう」というのが鑑賞後の感想だった。どちらも庵野秀明がやりたかった特撮作品で、彼が創るとこうなのね、という感想はあるけれど、禍特対の存在自体が圧倒的にフィクションなのでウルトラマンが現実の日本に出現したら日本の政治や軍事はどう対応するのかという興味には至らない。国外の反応も政府中枢要人の発言でしか知ることも出来ないし、自衛隊も禍威獣が出たら禍特対に指揮権をあっさり渡す。異形の外星人と総理大臣がいきなり対面で会談するシーンは相当シュールだが、かつてモロボシダンとメトロン星人が夕日差しこむ日本間で対峙したのを憶えていれば驚くにはあたらない。 VFXの飛躍的進歩を得たウルトラマンの登場シーン、格闘シーンは素晴らしい。それでいてうーんと思うのは何でだろう。アクション系作品に出演しようものなら即公安と揶揄される西島秀俊が本作ではつくづく公務員で、拘束軟禁されても実力突破しないこと。長澤まさみ扮する分析官の立ち居振る舞いがだんだん「ムシコナーズ」CMに出てくる姉ちゃん(但し大阪弁抜き)に見えてくること。メフィラス山本耕史が「私の好きな言葉です」を繰り返すこと。有岡大貴がとても学者に見えず、やたら頭は良いけど打たれ弱いオタクなこと。禍威獣がなぜこの日本にしか出現しないのかということがやっぱり良くわからないこと(そうそう、シン・ゴジラで鎌倉にゴジラが上陸した時「どうしてまたこっちへ来るんだ!」と怒声を上げた閣僚に、いやごもっとも、と心底思った)。一方で(ウルトラマンと融合した)斎藤工が人とのコミュニケーションを学習していく過程のやや頓珍漢な言動はユーモラスだし、早見あかりの生物学者は色々動じないタイプで肚も据わっていてこの種の映画では異色だ。予告編からして「霞が関の独立愚連隊へようこそ~」と長澤まさみへ声を掛ける距離の詰め方はさすが元ももクロ(笑)。へこたれないこの人がこの作品では一番好きだ。
[映画館(邦画)] 7点(2022-05-22 11:28:17)
6.  7番房の奇跡 《ネタバレ》 
一言でいえば刑務所版アイ・アム・サム。子役は達者な演技だし、同房の囚人たちも根っから悪人ではないという定石通りの筋書きだけれど、これをコメディというには救いが無くモヤモヤする。濡れ衣着せた相手はお咎め無しですか?
[DVD(吹替)] 6点(2020-07-27 13:27:00)
7.  ステップ 《ネタバレ》 
予告CMが散々TVで流されていれば、そりゃあ観たくなる。「宣言解除」のあと劇場にいくには勇気が要って、それでもどうしても観たい映画だった。この親子がどう暮らしていくのかを観たかった。妻に先立たれた男の子育て話は正直目新しいものではない。でも、仕事と家事に忙殺され「駄目かもしれない」と弱音を漏らす予告篇の山田孝之に普段の不敵なイメージはみじんもなく、あれ?と思ったのが劇場で観たいと思った一番の理由かもしれない。10年間の子育て物語だから3人が次々に娘を演じていくのだけど、2人目から3人目に変わったところで風貌が「こういう変わり方する?」と正直思ってしまった(意見には個人差があります)。演技の巧拙ではなくて雰囲気が変わったというべきか。 だいぶ前に松山ケンイチと芦田愛菜の「うさぎドロップ」を観た。あれは「にわか親子」だが、今にして思えば結構なファンタジーだった。本作は思春期に差し掛かる娘の微妙な時期までを描くので地に足がついていて、妄想に逃げていない。主人公が「自分は親に恵まれた」と独白するが、この親とは本編に登場しない主人公の実の両親ではなく國村準と余貴美子演じる義父母だ。ずっと孫と義理の息子を気遣い、損得やエゴなしで支えてきた。それは義兄夫婦(東京03角田晃広と片岡礼子が実にいい)も同じだ。二人は主人公からベビーカーを譲り受けたものの結局後年不妊治療をあきらめた、という主人公のナレーションが実にやるせないが、そんなことはおくびにも見せない。かつての上司(岩松了)も昼飯にかこつけて主人公を励ます(なぜか中川大志がうろちょろしているが)。周囲が理解ある優しい人々なのがファンタジーと言えなくもないが、そんな中で小学校の担任は「お母さんは死んだけど、うちにいる」という娘の言葉の真意を判らず(気づかず、ではないと思う)「嘘はいけません」と決めつける。面談の場である喫茶店にも駆け込んできていきなり用件を切り出し、さして親の意見も聞かず用事が済めばさっさと立ち去る。父子家庭の子どもを受け持つことは彼女にとって厄介事でしかなく、関心があるのは学級運営だけではないのかと思ってしまう。浅慮の割に何にでも噛み付く人が必ずいる今の世の中の荒みようを感じさせて思わずため息が出る。 だから尚更、保育園のケロ先生(伊藤沙莉)や亡妻の面影を宿す行きつけ喫茶店のお姉さん(川栄李奈)、そして後に再婚することになる職場の同僚:奈々恵(広末涼子)と親子の交流は編中の清涼剤だ。特に終盤、初めて娘からお母さんと呼ばれ、義父から「孫と息子を頼む」と託され滂沱と涙する奈々恵とそれを見守る主人公の姿には涙腺が緩んで本当に困った。年なのかも知れない。 お涙頂戴という媚を含んだ厭らしい言葉があるが、この映画はその言葉からずっと離れたところにある。今この時期に観られてよかったと思っている。
[映画館(邦画)] 9点(2020-07-18 20:14:11)(良:2票)
8.  幕が上がる 《ネタバレ》 
我ながら鈍いと言うか話題に周回遅れしてるというか、そもそもこの作品が公開してたことすら知らなかった。ところが昨年ネット上でチラホラこの作品の評価が関連ニュースとして目にとまるようになり、そのきっかけが主演したももいろクローバーZの一人が年明けに卒業したことに端を発しその才を惜しむかのように取り上げられていたことが門外漢の自分にさえ分かったのが観てみようと思った動機。踊る大捜査線第1作で青島が重傷を負ってからのくだりに未だに泣けてしまうほどの単純な人間なので、同じ本広監督の作品ならまあハズレではないだろうというその程度だった。 だから、まさかこんなにハマるとは思わなかったのだ。某ウィキで「この作品が一番刺さるのは高校演劇にもももクロにも興味関心が無い人だろう」という大意の文化人コメントがあったが、自分がそのど真ん中だったことを思い知らされた。 大した実績もない地方高校の演劇部。のっけから地区大会敗退でモチベーション下がりまくる中主人公のさおりは部長を押し付けられ不満でイライラしている。新入生勧誘の舞台も学芸会以下のレベルとなりゃ、そりゃあ生徒会もアクビ噛み殺すよなあ、という八方塞がり状態の中新任の美術教諭が実は学生演劇の女王と謳われた凄い人と判り頼み込んで教えを請う。最初こそ稽古場見学とか言いながら徐々に熱血指導になり部員たちはそれまで考えたことすらなかった全国大会出場へと覚醒していく。細かいアラも気にならないほどにその過程が判りやすく描かれ、俄然彼女達の表情もいきいきしてくる。演劇強豪校からの転校生も加わり結束していく様子は微笑ましく、終盤起きる事件をも乗り越えて行くことが想像できてしまう。でもネタ割れの興醒め感ではなく、乗り越えてほしいという観る側の願い通りになることがこの作品の良いところ。 一方でこの作品は不公平の映画でもある。ももクロのファン、所謂モノノフの方々なら常識であろう目配せが幾つかあり、知らなくても楽しめるのだけれど中には置いてかれるものもある。中西さんがメロンソーダというのは序の口(演じる有安杏果のカラーが緑)で、劇伴にももクロ曲をワンフレーズピアノで入れたり、果ては何で松崎しげるや鶴瓶が出てくるのか一般には判らない(自分も最近分かった)。それこそこの映画がアイドル映画と言われる理由なのだけれど、アイドル映画を差別するつもりは毛頭ない。むしろ平田オリザの原作が現実のももクロにオーバーラップする(原作者にその意図は全く無い)と感じた本広監督の慧眼がこの映画を多層的にしている。「踊る」シリーズではカエル急便とかスタトレネタとか意図的なマーキングが随所に張り巡らされていたが、どこか仲間内でニヤニヤしているような一見(いちげん)さんお断りの印象すら与えていたように今は思う。だがこの作品では現実世界のももクロが経てきた道のりが、それを知っているファンにはいちいち被るように感じたのではないか、例えば吉岡先生の退職は早見あかりの脱退を想起させたように。もっとも後からこれを観た自分は有安杏果の卒業を知ってからの観賞なので、ファンではないけれどちょっと切ない気持ちにはなった。以前海街diaryを劇場で観なかったことを後悔した映画の筆頭に挙げた。この映画をモノノフでごった返したであろう劇場に足を運ばなくてさすがに正解だと思っている。でも海街と共通するのは、どちらもその時しか撮れない彼女たちを描いている、その貴重さだと思う。それにしても「べっぴんさん」で百田夏菜子、「女子的生活」で玉井詩織を観ていたのに何で今更四年前の映画で盛り上がるのか我ながら呆れている。
[ブルーレイ(邦画)] 9点(2019-01-05 06:42:27)(良:1票)
9.  海街diary 《ネタバレ》 
劇場で鑑賞しなかったことを後悔した映画ベスト10の第一位に入るのがこの映画。誰かが「美人4姉妹を愛でる映画」と書いていたが同感。レンタルでDVD借りたのが初見だったけど7泊8日すり減るほど観てからDVD買って、いつでも観たくなってGoogleでダウンロードしてスマホで観まくった揚げ句Blu-rayで買い直すほどの馬鹿をやったけど、お陰で鎌倉の風景もまた堂々のメインキャストであると気付けたことが新たな収穫。四季を通じて美しい景色が広がり癒されることこの上ない。もし「すずちゃん、新宿に来ない?」とか「田園調布に来ない?」だったら魅力半減どころか映画にすらならなかったに違いない。 先日「万引き家族」観て、いや良い映画には違いなくてさすがはカンヌ、なんだけど考えさせられてしまう終わり方にうーんと重くなり、テレビで「そして、父になる」観てさらに重い気持ちになってしまったものだから、キャスティングのピタリと決まったこの映画が尚更心地よくて出て行きたくない。脇役一人ひとりまで大好きで、サッカークラブのキーパーの女の子も海猫食堂の従業員のおばちゃんも婦長さんさえも、出番が少なくても強く印象に残る。天然の誉れ高い綾瀬はるかはCMやテレビドラマでのコメディエンヌぶりが話題になるが本作ではしっかり者の長女が実に違和感無い。長澤まさみはズボラで惚れっぽくてガサツだけど心の暖かい性格で、初対面のすずに父を看取ってくれた礼を言った時や勤め先の信金の仕事で訪問した融資先の工場で苦労している経営者夫婦に注ぐ慈しむ眼差しが実に良い。夏帆はガメラ映画の頃はフツーの美少女の域を出なかったがここではマイペースだけど争い事を嫌う三女を演じ他には無い存在感を見せてくれる。そして広瀬すずは撮影時の年齢とヒロイン:すずの年頃が絶妙にマッチしていて、徐々に腹違いの姉達と打ち解けていくのが観ていてほほえましい。物語終盤でずうっと心の奥底に抱えてきた想いを叫んで長女に抱擁され「ここに居たい、ずっと」と涙ぐむシーンは桜トンネルを2人乗り自転車で駆け抜ける場面と一、二を争う名場面と信じて疑わない。 感情の発露は年齢によって表出の仕方が変わるので、あの時あのキャストで撮ったからこその奇跡がこの映画になったと思っている。父親の葬儀、祖母の法事、昔馴染みの食堂のおばさんの葬儀と、人の死によって物語が動き出すこの映画は人によっては退屈かもしれない。でもラストシーンで波打ち際をじゃれあいながら遠ざかって行く四姉妹を見送る時に、スクリーンに映らないこれからの暮らし、これからの人生が、彼女達には確かにあるんだと観る度に思う。
[ブルーレイ(邦画)] 10点(2018-07-08 22:22:28)
10.  孤狼の血 《ネタバレ》 
原作を読んでから観ました。設定の違いは作者も納得してお任せしているようですが、プロローグとエピローグの仕掛けは原作に軍配ありと見ました。でも原作未見でも問題無しです。主役は刑事なので警察視点ですがこれは絶対ヤクザ映画です。とにかく粗暴で過激(褒めている)。この映画、色んな役者さんが振り切ってると言うか、今までのイメージをかなぐり捨ててるのが凄い。例えば日岡役の松坂桃李、空手経験者なのに最初はヘタレで何かっつーと役所広司演じるダーティーな先輩刑事・大上に駄目ですよとかこんなこと許されませんとか一々文句言ってたのがだんだん感化されていく過程。クライマックス近く、養豚場で容疑者をフルボッコにする時にはもう顔つきも変わって、馬乗りで2分近く(計ってない、そのぐらいの感覚)殴り続けるものだから、あっこいつ犯人殺しちゃうかもと思ったもの。もうここで観てるこっちも振り切れました。それと中村倫也演じる尾谷組のヤクザ・永川のキレっぷりが凄まじい。この中村氏がダイワハウスのCMで上野樹里演じる男勝りな奥さんに比べてビビりで頼りない夫と同一人と知った時にはさすがに驚いた。松坂桃李も中村倫也も朝ドラではまるっきり正反対の役を演じているのだから、その意味ではこの映画は色んな役者さんのギャップに驚きに行く作品と言えるかも。一方で石橋蓮司さんの組長は予想通りのこれでもかと言わんばかりのワルぶり、その末路もご本人、冥利と思ったのではないでしょうか。阿部純子さんは昨年NHKで放送されてた「4号警備」から気になってた女優さんで、今回は映画オリジナルの役で日岡と親しくなる薬剤師を演じてるのだけれど、ラストで大上との関わりが明らかになり、挙げ句猥語三文字を言ってのけるものだから「うわぁっ嘘だ嘘だ嘘だぁ!」と身悶えしてしまいました。絶対地上波では放送しないなと確信しましたよ。原作者も製作者も続編に前向きのようだけど、これだけでもいいんじゃないですか。シン・ゴジラじゃないけど相当ハードル上げてしまったから下手な第2作ではVシネマ並みと揶揄されてしまいそうです。
[映画館(邦画)] 8点(2018-05-19 22:23:03)(良:1票)
11.  メッセージ 《ネタバレ》 
日本語吹替で上映している所がないか探し、無いと判って仕方なく最寄の映画館に入ったのだけど、エイリアンとのコンタクトがテーマだから、まず原語で観てほしいということかと今になって理解した。 波乱万丈ハラハラドキドキ要素がほとんど無いので「ID4」や「SW」「ST」が好きという人には多分向かない。「未知との遭遇」「コンタクト」「インターステラー」よりもっと地味。正直自分も上映中何回か眠くなった。寝不足という言い訳はしない。だがファーストコンタクトテーマを扱った作品としてはとても誠実だと思う。世界の反応、たとえば暴動に走る市民とか、カルト教団が集団自殺するとかニュース映像として間接的に見せることで世界はひとつなんて簡単に言っちゃいけないことを思い知らされる。最近ハリウッドには中華資本が入ってきてキャストにも反映されているのが何かゴリ押しぽくてイヤなのだけど、この物語に登場する中国の将軍にはそういう匂いがしなかった。話の流れから、大国が世界規模の事件に無関係でいられるはずが無いし、むしろ何でもアメリカだけで解決してきたような今までのハリウッド映画が不自然だった。 主人公ルイーズの娘:ハンナの出生時や幼少期、ティーンエイジャー期、そして最期の時とあちこちに時間が飛ぶ(実は思い出ではない)一方で、エイリアンの来訪目的を知る交渉も世界的緊迫の中猶予が無くなってくるさまが変わるがわる描かれる。最後に来訪者がもたらした力が何か判った時、ルイーズがこの先つらいこと、悲しいことが待っていることを承知でその人生を選ぶ切なさにため息をついた。 エイミー・アダムスは「魔法にかけられて」、ジェレミー・レナーは「ゴースト・プロトコル」で初めて観たものだから、抑制の効いた演技が個人的に新鮮だった。原作未読だが、多分原作ファンを裏切ってはいない、と思う。こんなSF映画もあっていい。というか、結構好き。 但し、ちゃんと眠ってから観ることをお勧めする。
[映画館(字幕)] 8点(2017-06-12 17:43:55)
12.  オデッセイ(2015)
リドリー・スコット作品のエンディングでこれだけ夢とか希望とか未来を感じさせる作品はなかった。 なにしろエイリアンでブレードランナーでプロメテウスの監督だからどうなるかと思っていたけど、 監督、いい具合に枯れたなーと。 原作に無かった「その後」というのは2時間ドラマの最後でテロップが流れる後ろでおまけ的に映っている、 場合によっては大きなお世話なのだけど、ここではサワヤカで清々しい。だからマル。 劇場でも観たけれど、ブルーレイのおまけ映像も「フィクションのドキュメンタリー番組」として マジメに作ってるのがウケました。  蛇足。自分がリバイバル専門映画館の館主ならキャストつながりで 「コンタクト」「インターステラー」「オデッセイ」の3本立てをやりますね。
[ブルーレイ(吹替)] 9点(2016-12-07 07:10:11)
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