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《ネタバレ》 ヒューマニズムの塊のようなとにかく人間の生きるべき本当の姿はこうあるべきだと言わんばかりの映画である。赤ひげと呼ばれる三船敏郎演じる医者にとって医者はただ人の命を助けさえすれば良いというものではない。人の命も大切だけど心をケアしてこそ本当の医者の務めであるというその態度、例えば二木てるみ演じるおとよを療養所へ、保本へ預けるという場面でそれを邪魔する大勢の男達を一人一人とやっつけていく時の姿、ここでの三船敏郎の放つ台詞は思わず笑ってしまうぐらいだけど、医者であると共に一人の人間としての真の姿を大いに見せてくれる。この映画、特に後半の保本(加山雄三)とおとよ(二木てるみ)とのやりとり、介護するものとされる者との立場における二人の姿は感動的でもあり、また一人の小僧(長次)とおとよとのやりとりも泣けてくる。貧乏人同士でなければ解らない。金持ちなどには絶対に解らないであろうこの二人の会話、特に長次が盗んだ飴を一旦受け取ると見せて再び長次に渡すおとよの優しさ、こういう素晴らしい描写などは如何にも山本周五郎原作らしくそれをとても解り易く描く黒澤明監督の人間的素晴らしさ、色んな意味で人間が本来持つべき優しさを見せてくれている。こういう映画こそ金持ちの人間、特に自分達のことしか考えない政治家達に見せてやりたいし、観るべきである。最後に全編重苦しくて張り詰めた空気の中であの憎たらしい婆を演じている杉村春子に対して追っ払おうと大根で頭を叩く場面を見て、大根斬りとは正にこれだと思わず笑ってしまう。こういうちょっしたユーモアをも描くことで飽きることなく見せてくれる映画でもあるし、黒澤映画に笠智衆という珍しい場面などとにかく見所たっぷりの人間ドラマの傑作!黒澤映画は個人的にはこの「赤ひげ」までだと思ってます。この映画を見て黒澤映画は絶対に白黒に尽きるとそう感じる映画でもある。
【青観】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-07-02 18:29:05)
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