ケス の ミスター・グレイ さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > ケ行
 > ケス
 > ミスター・グレイさんのレビュー
ケス の ミスター・グレイ さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ケス
製作国
上映時間112分
ジャンルドラマ,青春もの
レビュー情報
《ネタバレ》 本作は私にとって初のローチ作品であり一遍にローチの虜になってしまった記念すべき作品・・・
 逃げ場無し八方塞がりの閉塞感がじめじめとした画面から漂っています。ケスはそんな中で少年の唯一の生きる希望や自由、もしくは避難所として気高く描かれているように思えますが、厳しいローチはそのケスをボロ雑巾のようにしてしまうのだから泣けてくる。それでも少年が一心にケスを語るシーンに成長を思い、しっかりとケスを埋葬するシーンで締めくくったことに死の受容という強さを思いローチの温かさを感じます。舞台である60年代頃の英国ではイレブン・プラス(11歳で試験を受け進学コースと職業コースに振り分けられる)があったりと子どもの可能性など蹂躙され早々と将来を決られてしまう辛さがあります。ビリー少年のような境遇の子も何も格別に珍しいわけではないのでしょう。その悲劇的な状況を訴えるように描きながらも時にサッカーシーンのようなユーモアを交え、さらにはケスを失っても少年に前進させたところにローチの強いヒューマニズムが息衝いています。それも決してビリーに同情を誘うような作りになっていない甘さのない真のヒューマニズム。校長室に別の用件で来た子どもが、巻き添えで罰を受けるところなど震えるほどの辛辣さなのですから。
 また、本作はヴィットリオ・デ・シーカ監督の「靴みがき」という作品を想起させます。あの作品でも選択肢のない過酷な状況にある少年にケスと同じような存在として〝馬〟が出てくる。またケスは同じくデ・シーカ作の「自転車泥棒」の自転車であり、あるいは「ウンベルトD」の愛犬フライクにも似ています(それぞれの対象を見失った時のあの不安さと言ったらない!)。戦後イタリアの惨状を描いたこれらの作品と同じように厳しい社会背景に生きる弱者を鋭く冷静に見つめ、支えを存在させている共通点。素人俳優の起用といいローチは一連のイタリア・ネオレアリズモに少なからず影響を受けているのでしょうね。
ミスター・グレイさん [ビデオ(字幕)] 10点(2007-06-18 18:18:10)(良:1票)
ミスター・グレイ さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2012-06-30続・夕陽のガンマン/地獄の決斗9レビュー7.34点
2012-06-01夕陽のギャングたち8レビュー7.53点
2012-05-15トッツィー5レビュー7.06点
2012-04-27大列車強盗(1973)5レビュー5.15点
2012-04-17血煙高田の馬場(1937)10レビュー8.62点
2012-04-06吸血鬼(1931)8レビュー7.90点
2012-03-26プラトーン7レビュー7.47点
2012-03-09フレンジー7レビュー6.33点
2012-03-02狩人の夜8レビュー6.78点
2012-02-24ドラゴン・タトゥーの女7レビュー6.82点
ケスのレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS