ブタがいた教室 の BOWWOW さんのクチコミ・感想

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ブタがいた教室 の BOWWOW さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ブタがいた教室
製作国
上映時間109分
劇場公開日 2008-11-01
ジャンルドラマ,学園もの,動物もの,実話もの,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 例えば英語圏でPIGをPOAKと呼び換えるように、一頭の家畜が「肉」となり店先に並ぶまでの過程を、人は忌み嫌う。他の生命を奪い食べるという自然の摂理、その正当性と残酷を正しく認識する以前に人はそこから目をそらしてしまう。大人ですら真に理解しているとは言い難い(そしてそれゆえに避けて通ろうとする)この難題を子どもたちに語りあわせるコンセプトは素直にすばらしいと思う。しかしそれをきちんと描ききるだけの確固たる志が、残念ながらこの映画には無い。通り一遍の大風呂敷を広げ、あたかもタブーに挑むかのように見せながら、映画は肝心の核心に近づくたび安全地帯へと逃げ帰る。これが子ども向け映画で出来る限界であったと言われればそれまでだが、禁忌を語るに足る厳しさや中立性を一切欠いたその姿勢はあまりに生ぬるい。子どもたちが仔ブタを家畜ではなくペットとしてPちゃんと名付けてしまう発端の姑息な「誤算」からして、物語はさっそく肝心の食育から弱々しく目をそらし、語るべきテーマから大きく逸脱してしまっている。さらにはその生半可さが、ペットとして可愛がったブタを家畜として送り出すという、食育とはまるで別次元の(本来なら不必要な)辛い決断を子どもたちに迫るのだからなんともたちが悪い。トラックの荷台に乗せられたPちゃんを、まるで転校生を見送るように泣きながらセンチメンタルに追いかける子どもたち。だがPちゃんの行き先は、新しい学校などではなく、血腥い精肉工場なのだ。それでも映画は美しい別れの感傷にただひたるばかりだ。彼の行き先を自分たちで決定した(させられた)ということ、そのことの重い意味を子どもたちに最後まで理解させることなく。中途半端な食育の名の下に訳もわからぬまま決断を下させられた子どもたち、そんな彼らの胸に去来するのはおそらく学舎を共にしたクラスメイトとの単なる別れの悲しみでしかないだろう。例えば性教育を語るのに即物的なポルノ映像が必要ないように、精肉工場で屠殺され血を抜かれスライスされるブタを子どもたちに見せる必要は勿論無い。しかし食育を題材としながら終始核心から目をそらし続けるだけの無害きわまりないこの映画は、血の痕跡を丹念に洗われ清潔にパック詰めされたスーパーの豚肉と何ら変わりない、無難で欺瞞にみちたシロモノだ。私たちは今日もその安全な肉を買い、能天気においしいねと舌鼓を打つのだろう。
BOWWOWさん [DVD(邦画)] 0点(2010-01-24 02:30:59)(良:2票)
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投稿日付邦題コメント平均点
2019-02-25バーニング 劇場版10レビュー7.00点
2018-08-12リバーズ・エッジ8レビュー5.33点
2013-05-25青春神話10レビュー8.33点
2013-05-02エドワード・ヤンの恋愛時代10レビュー10.00点
2013-04-28恋恋風塵9レビュー7.00点
2013-03-09楽日10レビュー6.00点
2012-01-24海角七号/君想う、国境の南7レビュー5.23点
2011-04-02エターナル・サンシャイン9レビュー6.60点
2011-01-18ソーシャル・ネットワーク7レビュー6.53点
2011-01-02ファイト・クラブ9レビュー7.38点
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