戦場のメリークリスマスのシネマレビュー、評価、クチコミ、感想です。

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戦場のメリークリスマス

[センジョウノメリークリスマス]
Merry Christmas, Mr. Lawrence
1983年ニュージーランド上映時間:123分
平均点:6.32 / 10(Review 157人) (点数分布表示)
公開開始日(1983-05-28)
ドラマ戦争もの同性愛もの小説の映画化クリスマスもの
新規登録(不明)【シネマレビュー管理人】さん
タイトル情報更新(2024-03-01)【イニシャルK】さん
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監督大島渚
助監督リー・タマホリ(第1助監督)
キャストデヴィッド・ボウイ(男優)ジャック・セリアズ
坂本龍一(男優)ヨノイ大尉
トム・コンティ(男優)ジョン・ローレンス
ビートたけし(男優)ハラ軍曹
ジャック・トンプソン(男優)ヒックスリー
ジョニー大倉(男優)カネモト
室田日出男(男優)ゴンドウ大尉(新収容所所長)
内藤剛志(男優)イワタ法務中尉(軍律会議審判官)
金田龍之介(男優)フジムラ中佐(軍律会議審判長)
戸浦六宏(男優)軍律会議通訳
内田裕也(男優)拘禁所長
三上寛(男優)イトウ憲兵中尉
本間優二(男優)ヤジマ一等兵
三上博史(男優)日本兵
飯島大介(男優)ウエキ伍長
池田勝ジョン・ローレンス(日本語吹き替え版【テレビ朝日】)
脚本大島渚
音楽坂本龍一
撮影杉村博章
成島東一郎(撮影監督)
製作ジェレミー・トーマス〔製作〕
テレビ朝日
プロデューサー原正人(エクゼクティブ・プロデューサー)
配給松竹
松竹富士
日本ヘラルド
美術戸田重昌(美術監督)
編集大島ともよ
字幕翻訳戸田奈津子
その他東京現像所(現像)
ネタバレは禁止していませんので
未見の方は注意願います!
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【クチコミ・感想】

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157.《ネタバレ》 太平洋戦争時のジャワ島の捕虜収容所を舞台にした作品。
登場人物みな軍人・軍属でありながら、戦闘シーンはまったく無い不思議な作品です。

太平洋戦争、捕虜収容所、と来ると、反戦映画かぁと連想してしまいますが、直接的な反戦のメッセージはありません。
ただ、戦闘による殺し合いは無くとも、戦争という極限状態での人間の葛藤が何重にも描かれており、やはりこれは反戦映画なんだろうなとも思います。

ビートたけし演じるハラ軍曹は、捕虜たちを折檻する残虐な軍人である一方で、欧米の文化に憧れを持つ素朴な顔を見せたり、処分覚悟で軍規を破り捕虜を助ける心優しい面を持つ人物として描かれています。
坂本龍一演じる収容所長ヨノイ大尉は、自らを厳しく律する青年将校で、聡明で寛容な人物として描かれているのにも関わらず、終盤では捕虜たちにエキセントリックな振る舞いを見せ、抵抗を見せた捕虜長を殺害しようとします。

ハラ軍曹は、恐らく元々はシャイで心優しい人柄の人物だったのでしょうが、戦争という極限状態のなか、軍人として生き抜いていくためには粗暴な人物にならざるを得なかったのではないかと感じさせます。またヨノイ大尉は、聡明で寛容な人物であるのに、大日本帝国陸軍という異常な組織の中で、また敗色濃厚となった情勢に鑑みて、自らの知性や理性をかなぐり捨てて、残虐な収容所長にならざるを得なかったのではないかと推察されます。
戦争という極限状態のなか、本来の自分を封殺して生きざるを得なかった2人の悲しい姿が印象的でした。

大島渚という一筋縄ではいかない怪人物が作ったこの作品、決してわかりやすい作品ではないので、私の考察も間違っているのかもしれません。いや、恐らく一面的な解釈ができる作品ではなく、解釈は観客に委ねられた作品なんでしょうね。
デヴィッド・ボウイ演じる捕虜セリアズのキスシーンや、ラストのハラ軍曹の「メリークリスマス」は、いくつもの解釈が可能なシーンであり、正解は恐らく無いんだろうなとも思います。

ビートたけし、坂本龍一、デヴィッド・ボウイ、内田裕也、ジョニー大倉といった、役者が本業ではなく演技上手ではない人たちがキャスティングされたことで、独特の雰囲気を持った作品でもあります。
なかでもビートたけしと坂本龍一の演技は、セオリーから言えばとてつもなく酷い演技なのだろうなぁと思いますが、ハラ軍曹やヨノイ大尉の人物像には不思議と合っていて、大島渚の天才ぶりを感じます。
りょうちさん [インターネット(邦画)] 8点(2021-02-03 01:08:59)(良:2票)
156.《ネタバレ》 奇妙な味わいの映画だ。捕虜体験者で原作者の分身たるロレンスよりも、セリアズの心理描写に重きが置かれている。彼は障害者の弟を学校のいじめから守ってやれずに見棄てたという罪悪感に苦しんでいた。美しい声を持つ弟は歌を唄わなくなってしまった。それで結婚もせず、戦争が始まると志願し、積極的に危険な任務に身を投じてきた。一方、所長の与野井も同志と誓った226事件の蹶起に参加できず、仲間を裏切ったという負い目に苛まれていた。主義も主張も立場も文化も違うが、共に心の暗渠を持ち、死に場所を求めていた二人が戦場で邂逅した時、やがて惹かれあうのは当然のことだった。魅かれあうのにもう一つ男色という要素もある。共に美青年なのだ。映画冒頭に発生する朝鮮人軍属の男色騒動がそれを示唆している。
俘虜が与野井に殺されそうになったとき、セリアズは彼に接吻して錯乱させ、結果的に俘虜を救った。セリアズは弟は救えなかったが、俘虜を救えたことに満悦し、夢の中で弟の歌を聞きつつ、矜持のうちに死んでいった。与野井はセリアズへの愛憐に堪えず、密かに形見として髪を持ち帰る。そんな与野井も戦後、処刑場の露と消える運命だった。
原軍曹は蒙昧で粗暴な男だが、諧謔を解し、どこか憎めないところがある。自らをサンタクロースになぞらえ、窮地のロレンスとセリアズを救ったことがあった。戦後、戦犯となり、明日処刑という日、ロレンスが訪ねて来た。「あなたは犠牲者だ」と慰めるロレンスに原は、「あのクリスマスのことを覚えているか?」と尋ね、「メリークリスマス、ミスター・ロレンス」と笑顔で言った。彼は訴追に対する弁解は一切せず、苛酷な運命を受忍した。ロレンスは原の死を超越した、凛とした人間性に感動を覚える。軍人としての皮を剥けば、人間味あふれる人物なのだ。戦争がなければ良き友人であったものを。
戦場で憎しみ合う敵同士でありながら、原とローレンスの間に芽生えた友情こそが奇跡なのだ。セリアズと与野井の敵同士で交した接吻こそが奇跡なのだ。それが人間の本来の美しい姿なのだ。神様のくれた奇跡、それが戦場のメリークリスマスだ。戦闘場面を一切描かずに、戦争の愚かさと人間の尊厳と愛と死を審美的に謳いあげた小粋な作品である。演技に難があるのが残念。
よしのぶさん [映画館(邦画)] 7点(2015-01-30 03:46:40)(良:2票)
155.《ネタバレ》 まだ16歳だった私は本作初見時に意味などまるで理解出来ず、狐につままれた様な思いで映画館を後にした。
30年の年月を経て自分もそれなりに人生経験を重ね、ようやく本作の訴えたい事が少しは理解出来る様になったのかな?と思い始めている。
異なる文化・思想を持つ人達が戦争という特殊な環境の中で邂逅し、ぶつかり合う様はどこか滑稽で、悲しい。
それにしても、本作に出演した坂本龍一、ビートたけしは今や「世界のサカモト」「世界のキタノ」と呼ばれるまでの存在になった。各種文献によると二人が世界を目指すきっかけになったのが本作への出演だったそうだ。
そう思うと、また違った視点で本作を観直す事が出来る。
また、ローレンス役のトム・コンティは本作以降はほとんどお目に掛かる事がなかったが、何と「ダークナイト ライジング」で洞窟牢でクリスチャン・ベールを介抱する役を演じていた事を知り、思わず同作をブルーレイで観直してしまった。
年は召されていたものの、どこか寂しげな表情はそのままだった。

最後に、大島渚監督のご冥福をお祈り申し上げます。合掌。
たくわんさん [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-01-23 15:04:41)(良:2票)
154.《ネタバレ》 “Merry Christmas, Mr. Lawrence”『ローレンスさん、あなたに祝福を。』
…思いっきり意訳ですが、今回改めて観て、こんなニュアンスじゃないかな?と感じました。
何だか不思議な映画ですよね。いろんな解釈ができそうで、名作なんだか駄作なんだか判断に迷います。ただ私は好きですこの映画。
そして音楽が良いですね。メインテーマはもちろん神曲ですが、“The Seed and the Sower”(1:30~)も負けじと名曲です。この映画が好きな理由に、神がかってるシーンが幾つかあって、そのシーンには必ず上の2曲が入ってます。

クリスマスとは縁遠そうな早朝のジャワ。ヤシの木の下を歩く軍服の男2人・ハラとローレンス。ここにメインテーマを被せる。このチョイスが素晴らしい。
脱走するセリアズの前にヨノイが現れ軍刀を抜く。『セリアズを斬りたくない』って表情に出てるのがもうたまらない。“The Seed~”の入り具合が完璧です。
酔ったハラ軍曹「ローレンスさん、ファーザルクリースマス。ご存知かな?」この時のハラさんの『合ってるのかな、意味通じてるかな』って表情が最高。俘虜なのに“さん付け”で呼ぶのが、平時のハラの人柄を感じさせて良い。「今夜!ワタシ!ファーザルクリースマス!」拙い英語に気持ちが感じられます。
ヨノイにキスするセリアズ。奇跡のスローモーション。あれ偶然撮れたそうで、そんな奇跡もあるものですね。そしてセリアズの髪を斬り敬礼するヨノイ。共に“The Seed~”が掛かります。
最後のハラのアップ「メリークリスマス!メリークリスマス!Mr.ローレンス」。
想像ですが、ハラとローレンスのシーンで掛かる“Merry Christmas~”は西洋(イギリス)の神を、セリアズとヨノイのシーンで掛かる“The Seed~”は東洋(日本)の神をイメージした曲じゃないでしょうか?
私はこの映画を、セリアズの中に神を見たヨノイ。ハラの中に神を見たローレンスという2つの話と解釈しました。

ヨノイは収容所の長。あの狭い世界では王のような存在です。2・26事件に参加できず、死に場所を失って今に至ります。神になり損ねたんですね。当時から話題のメイクは、ヨノイが『バッチリ化粧をした軍人さんだった。』という意味ではなく、美しい神でありたい、ヨノイの心の内側を視覚的に表現したのが、あのメイクだったんでしょう。なのできっと『メイクはオカシイ』なんて悪評が出るのも、大島監督は織り込み済みだったと考えます。
そんな収容所にセリアズが現れます。彼は処刑を恐れ、過去の弟との関係を後悔して生きる、普通の人間です。だけどヨノイから見て、(心に)メイクなどしなくても美しく、常に毅然とした態度のセリアズは、西洋の神そのものでした。
カネモトとデ・ヨンが死に、ヨノイは全ての俘虜に行(ギョウ)を強要。一方セリアズは花と盗んだまんじゅうを与えます。東西の文化の違いであり、神が民に与えるものの違いでもあります。
セリアズたちの脱走の際、ヨノイは遂に死に場所を見つけました。死んで軍神となりたい。そんなヨノイを見透かすように、セリアズはナイフを捨てます。ヨノイはここでも死ぬことが出来ませんでした。
遂にヨノイは俘虜全員を集合させ、重病人を死なせ、命令を聞かない俘虜長を斬り殺そうとします。セリアズっは身を挺して俘虜長を守り、ヨノイに博愛のキスをしました。ここでヨノイはセリアズの中に本物の神を見て、自分は神にはなれないのだと思い知らされました。

ハラはこの小さな世界では生殺与奪を与えられています。朝鮮人のカネモトを処刑しようとし、無線ラジオの件ではヨノイの判断を仰がず、独断で真犯人のチョウ?(と聞こえる)を処刑し、ローレンスたちを釈放しています。そんな勝手な事をして自室謹慎だけで済まされてます。そのためセリアズがヨノイにキスする場面は観ていません。
首から数珠を下げ、お経を唱える熱心な仏教徒のハラが、酒に酔って「ファーザークリスマス(イギリスのサンタの呼び方)」と、異教徒の神を名乗っておどけてみせます。立場は違えど友情を感じているローレンスへの好奇心から、彼らの信じる神がどんな存在か調べたのかもしれません。
処刑の前日、面会に来たローレンスに、ハラは流暢な英語で話します。好奇心の強いハラは、イギリスの文化と言葉を勉強していました。
そして別れ際、ローレンスの「Goodbyeハラさん、God bless you(あなたに神のご加護を)」に対し、ハラは「ローレンス!」と呼び止めます。『ローレンスさん、あなたに祝福を。祝福を。』ハラが思う最上級の贈る言葉。この時ローレンスはハラの中に本物の神を見ます。
…こんな解釈で、どうでしょう?
K&Kさん [地上波(字幕)] 7点(2024-02-21 01:17:58)(良:1票)
153.《ネタバレ》 これは邦画になるんだろうか?(笑)
デヴィッド・ボウイの二枚目ぶりが際立っていました。というのが第一印象と、有名なテーマ曲を聴くことができて満足。
戦争映画であるけれど、戦闘シーンは皆無。旧日本軍の捕虜に対する待遇やイギリスでの階級主義、障害者の蔑視などが容赦なく描かれていてその点は強烈でした。
そして、国が違うことによる死生観、倫理観の違い、しかし少しだけ「クリスマス」という特別な日にわかりあうことができた。ラストで、メリークリスマス、というのは中盤と一緒。しかそ名前に敬称をつけるところ。誰が良くて悪いのか、ではなく、互いの信念のもとに一部の者が争い、それに巻き込まれた哀れな登場人物たちの哀れさ、そしていくばくかの救いを感じられるセリフだった。
クリムゾン・キングさん [映画館(字幕)] 7点(2021-08-01 20:52:00)(良:1票)
152.《ネタバレ》   
子供のころ観て、Dボウイ展の影響で再見。

あの頃は、あまり良くわからず
ボウイのファンだったから見にいって
それなりに印象には残っていたが、まぁ、そこそこ。

でも、あれからいろいろなことがあって大人になり、
ああ、こういう映画だったんだと。
決して同性愛だけの映画ではない。
こんなの、子供には分かるはずもないよ。

大人になった今、再見して良かったと思います。



追記(2021.11)

先日、「戦メリは名曲なのに、ホモ映画に使われたのが惜しい」という意見を言う人と同席しました。
それはその方の意見なので特に否定もしませんでしたが。


この映画は同性愛を描いた映画ではない。
価値観が異なる人たちがゴッタになる収容所という場所。

日本と欧米。
生死感。

捕囚長のイギリス将校は頑なに日本人を見下し、
ヨノイ大尉は帝国軍人としての誇りを第一にして振舞おうとする。
ただ、忌避すべきはずの同性への恋慕の感情に取り乱しながら。
そしてセイアズの抱擁とキスを受けて、ヨノイ大尉の全てが崩壊した。
軍人であるべしとした自分の価値観や誇りに隠れていた自分自身を知ってしまったから。
自分自身の誇りと愛をこめて遺髪を取り、去っていく。


ハラ軍曹は粗暴で雑なようで、誰にも何も語らず自分自身を見ている。
ローレンスに感じる友情のような感情が自分にあることも、
帝国軍事としてなすべきことをしている非道な自分も。


酔っ払いながら、俺はクリスマスファーザーだと、ローレンスを独断で釈放したハラ軍曹は
帝国軍事として恥ずべき行為であっても、規律違反であっても、
友人でありたいと思っていたローレンスを死なせたくないという自分がしたいことをした。
自死することになったとしても、自分がしたいことを。
酒のせいで思ったのか、そう思いきるために酒の力を借りたのか。
個人的には後者と思いたい。


その結果、ローレンスは生き残り、敗軍の将として明日の処刑を待つハラ軍曹の下を訪れる。
何も出来ない無力感のまま席を立つローレンスに、
強く厳しい、収容所の時のようにハラ軍曹はローレンスを呼びつけ、
キラキラした笑顔で、メリークリスマス、ミスターローレンス、と声をかける。

君が生きている。
メリークリスマス、ミスターローレンス。
俺はクリスマスファーザー。
君の未来を贈ることが出来たから、俺に何の悔もないよ。
メリークリスマス。
と、ハラ軍曹はキラキラした瞳でローレンスを見つめる。


大戦時の日欧の情勢も、愛する者の性別も、個に生きるか組織に従うかも。
価値観はそれぞれに異なる。
ただ、その異なった価値観を越えて、誰かを想ったり与えたりすることはできないのか。
立場を越え、憎しみや痛みを越えた先にひとりひとりが想いあうことができれば。。。
こっちゃんさん [DVD(邦画)] 9点(2017-03-18 20:40:50)(良:1票)
151.《ネタバレ》 ■本来「俳優」が賄うべきポジションを、音楽家と芸人それぞれの若手トップスターが務めてしまったという、ある種の「倒錯」的なキャスティングは、本作の重要なコンセプトの一つだろう。つまり、折しも80年代の前半、これからいよいよバブルに突入するという狂熱の時代を担った「あの」二人が、本来の「俳優」を差し置いてこの映画に集わされたということは、まともな「俳優」が配されている英軍将校陣営とのシンメトリーではないだろうか、と思うのだ(デヴィッド・ボウイは生来の演者だから、アンビバレントなポジションにいる)。結果として、そのことがその後の日本の芸能史に大きな意味をもたらしてしまったという、誠に凄まじい映画である。
■もう三十年来何度も見てるが、子供のころは、音楽はもちろんだが、帝国軍人の美意識や凄惨さとか、そんなところばかりに夢中になっていたが、今日十数年ぶりに鑑賞した結果、これは、コミュニケーションの不通と、日本人の西洋コンプレックスを描いた映画だということに、やっと気づいた。コンプレックス故の、一方的な「倒錯」した表現とその哀しさ。それを解消しようと、クリスマスという西洋のイベントの意味を知ったハラは、これをブレイクスルーとして活用した。ここにかろうじて成立したはかなく拙い、しかし切実なコミュニケーションが、エンディングへと結ぶ。ヨノイのセリアズに対する邂逅とて同様であって、こちらの方がより不器用で、倒錯の度合いが深いというだけである。
■冒頭、ローレンスは、捕虜の身でありながら、ハラに対して「救いたい」と言うのだが、つまりはその哀しさを見抜いているということである(ハラは「日本人は敵に助けられたりしない」と返すが、どこか拙く響く)。それは確かにマッカーサーが「日本人の精神年齢は12歳」といったのに通底する「哀れみ」であって、大島渚という一人の「戦後文化人」が抱えざるを得ないコンプレックスであるのだが、失われた10年やら9.11やら大震災やらを経て、いいかげん「もはや戦後ではない」現在ですら、そのコンプレックスがほとんど解消されていないことに思い至って、ハッとさせられる。
■吉本隆明が「音楽は素晴らしいが映画自体はダメ」みたいなことを言ってたけど、却って本人の興味の強さを感じたのを覚えている。たけし自身も同じこと言っていて、いや、だからこそ今の北野武がある、ということがよく分かる。
麦酒男爵さん [レーザーディスク(邦画)] 9点(2014-12-13 02:09:17)(良:1票)
150.《ネタバレ》 上映当時、誰かがホモの映画だと言ったものだから、その先入観に捉われて、それしか残らない。
中盤、たけしが「ファーザークリスマス」と笑うところへテーマ曲が流れるシーンと、やはり、たけしがローレンスに向かって言う最後の一言だけが印象に残った。でも、それしか残らない。
何が言いたかったのか全然メッセージが伝わってこないのが残念。
当時、カンヌでは賞をもらえなかったのに、日本の若者の観客動員を運んだのは、大スター、デビッド・ボウイ、YMОの坂本龍一、ビートたけしだったからに他ならない。
これが、ロバート・レッドフォード、高倉健、緒方拳で、テーマ曲も違っていたら、間違いなくヒットしなかったと思う。
私は脚本を重視して映画を観る人間ですが、この映画の脚本から得るものは全くなかった。
クロエさん [地上波(邦画)] 4点(2013-02-01 06:09:28)(良:1票)
149.《ネタバレ》 最初は戦争における、当時の日本人の異常さを客観的に描こうとしているのかと思いましたが、
結局は同性愛を描きたかったのでしょうか?女性がとうとう一人も出てきませんでしたね。
印象に残るシーンはいくつかありますが、メインテーマがぼやけています。
坂本龍一、ボウイにキスされて腰抜かすって、思春期の中学生かと思いました!
ただ、画面から伝わる重厚感や演出は今の日本映画には出せないものを感じます。
(今の日本映画は、演出も、役者の演技も、ひたすら軽い!見る気になりません)
カタログさん [CS・衛星(邦画)] 6点(2006-09-05 23:06:05)(良:1票)
148.大島渚はあんまり好きじゃないんだけど、あの曲がどんなふうに使われているのか見たくて見ました。音楽は意外にわざとらしくて、というか映画全体があまりにキッチュで、ちょっとついていけませんでした。日本人はこんなはずじゃないとわかっていて、それをあえてこんなふうにファナティックに描くのは、そもそもファナティックな世界をつくりたくて、その道具に使ったというだけなんでしょうね。「欧米人はどうせ日本人をこんなように見ているんだろうから」それを利用してやれ、みたいな。そういう意味では、「ラストサムライ」なんかより確信犯で潔いようには思うけど、やっぱりこの美学にはついていけない。坂本龍一とかビートたけしは、こういうの好きそうですね。楽しく演じたんだろうな。
小原一馬さん [ビデオ(字幕)] 3点(2005-10-07 21:56:15)(良:1票)
147.《ネタバレ》 デヴィッド・ボウイが坂本隆一の頬にキスをして、坂本が失神するシーン。もうこれが全て。あたしまで失神するかと思ったよ…。あー!!ボウイかっこい!!vvもうこのシーンだけ何度巻き戻して見たことか…。このシーンに6点献上っ!!ん?内容ですか?何か難しかったけどデヴィッド・ボウイが坂本隆一の頬にキスをして、坂本が失神するシーンは大好きですvv………眠くなってきたからもう寝ます…。
Ronnyさん 6点(2004-10-18 01:49:33)(笑:1票)
146.坂本龍一のCDを買ったね。いい曲だよなあ。メリークリスマス・ミスターローレンスだっけか?名曲だよ。歌声が入ってないあたりもまたいいね。感動もんだよ。何?映画?ああ、うん。そうだな。タイトルがいいじゃない。【戦場のメリークリスマス】ってのは期待しちゃうタイトルだね。何?内容?ああ、うん。うん。
ブンさん 4点(2003-11-21 18:34:05)(笑:1票)
145.《ネタバレ》 とても美しい日本映画だと思う。また実に映画音楽らしい音楽を邦画で初めて意識できた作品だった。初見は18歳の頃だった。思い出の一本。世界中が狂気の最中、さらに捕虜収容所という特殊な環境下で出会った人々たち。戦争が終り立場も変わる。ハラが処刑されるまでの間、彼がしたことは英語の習得だった。処刑前夜、訪ねてきたローレンスと彼の母国語で語るハラ。涙が止まらなくなった。そしてラストシーン。この上ない笑顔は一瞬の輝き。このラストシーンでこの映画のすべてがひっくり返った。
カズユキさん 9点(2003-09-15 08:02:13)(良:1票)
144.この有名なラストシーンにはは、『夜の大捜査線』や『パピヨン』と非常に似たものを感じます。苦楽をともにしたはずの二人の男が、わかりあえることは決してできないのだということをお互いわかりあって、別れとなる。いずれも泣けました。
新加坡指令さん 9点(2002-12-13 23:09:00)(良:1票)
143.《ネタバレ》 公開当時、劇場には見に行かなかったのですが、姉貴所有の坂本龍一による同名のサウンドトラックおよびピアノヴァージョンの「CODA」が録音されたカセットテープを聴きまくりました。インストゥルメンタルをじっくり聴くということに目覚めたきっかけでもあり、音楽作品として相当な思い入れがあります。また、何故か写真付きのシナリオ本も家に置いてあったりして、音楽と台本と静止画からイメージを膨らませていました。テレビ放映で部分的に見たことはあると思いますが、公開から30年以上たって初めて通して鑑賞することに。内容としてはジャワ島の日本軍外国人俘虜施設での日本軍兵士と外国人兵士の交流を描いているのですが、とにかく理解しづらいの一言に尽きます。ローレンスとたけし、デヴィッド・ボウイと坂本龍一の2つの関係が軸になっているのはわかるのですが・・・ある程度背景や事情がわかるはずの日本人が見ても、作家の意図を酌むことが難しいので(少なくとも私にはできなかった)、いわんや外国人をやです。多くの外国人を含む演じ手達が、作家の意図がわからず、迷いながら演じていたのではないかと邪推してしまいます。前作「愛のコリーダ」でも感じたのですが、この作家は、印象的な構図の絵をつくるのには長けていると思うのですが(首に敬礼のシーンや、最後の顔アップとか)つなぎや流れがいまひとつで、狙ってる感が出てしまうんですよね。と言うのが、英語が聞き取れない日本人が、日本語字幕の無い北米版blu-rayで見た感想です。また、音楽は大好きなのですが、BGMとしては音楽が勝ちすぎていると思いました。赤道直下、熱帯の中の熱帯と言っていいのですが、その割には映像がおとなしく、絡みつくような蒸し暑さなどが感じられないのです。饒舌な音楽がその現実感の無さに拍車を掛けているような気がします。
camusonさん [ブルーレイ(字幕)] 5点(2023-10-12 19:09:41)
142.【4K修復版で鑑賞。】
チネチッタは最近…メェ――ッチャ好みだ。
観たかった映画が。これでもかとリバイバルされてる。
2001年宇宙の旅も、七人の侍も全部面白かったなー。

つー事で、今回は古い映画に。
何でも4K修復されてるとの事で気分がグングンと入ってくる。

――戦場のメリークリスマス(1983年)

この映画は、既に何度か観ているんだが…痛感した事。
それは、観ている映画でも「(一定以上の)時間を経過」させると印象がガラリと変わる。
別に自分の事を偉く言うつもりは無いが、きっと「観なかった期間の、人間的な成長」がそれを感じさせるのだろう。

今まで、それを強く感じたのは映画版の「機動戦士ガンダム」だ。

最初は赤い彗星シャア・アズナブルのカッコ良さに惹かれ、凄く好きになる。
けど、大人になって「下の者を引っ張る立場」になれば、ランバ・ラルの責任感と、実直かつ老獪な仕事への取組みに惹かれ…
そして、「さり気なく難関な仕事を熟す」マ・クベに対して(嫉妬も半分含め)素晴らしい男だなー、なんて考える。

何より、結婚したり、子供が出来ると余計に胸に来るシーンは、ブライトとアムロの母のシーンだ。
息子であるアムロを預かり、彼の母に対して「息子さんをお預かりします!」と凛々しい言葉を残すのが、20歳を超えてない青年ってのが、否が応でも「戦争の悲惨さと非情さ」を表現している。

さて、その――「戦争の悲惨さと非情さ」だ。

本作、戦場のメリークリスマスは相当に訴えていた。
設定の秀逸さも素晴らしいが、戦争映画とセットになりがちな流血沙汰はあまりなく、それよりも「精神的に追い込まれてゆく様」の描写が凄まじい。

では、追い込まれてるのは誰なのか?
それは「捕虜」たちだけではなく「日本軍の者も」だ。
人間的な好き・嫌いはあるだろうが…観た人、観る機会がある人は考えて欲しい。

作品の日本兵は誰もが軍務に忠実なのだ。

俺の持論ではあるが、「自由とはサボる権利を有してる事」と思っている。
この映画では、誰もサボる事なく任務に就き…それ故に悲惨な状況が次々に発生する。
そんな中で、常に現場的に対処して苦悩するが故に、日本兵が悲惨さを引き起こすトリガーと成ってしまう。
この体系を作った上の人間は、この悲惨さを知っているのだろうか?

劇中でデヴィッド・ボウイの幼少時代が描かれている。
子供の頃から、歌う事が好きな弟を護って来た彼なのに…弟が自分の通う高校に入って来た時に新人歓迎の”イビり”に遭遇する。
服を脱がされ、無理に歌わされ…弟はそれ以降、歌う事が無くなった。
勿論、それ以上の悲惨な光景はなかったが、それ以降は弟ととの距離が出来てしまい苦悩する。
助ける事が出来なかった…いや、助けなかった彼は、ずっと自分の行為を悔いている。
今は捕虜にされてる戦場だというのに。

人はそれぞれ、そんな悔いと共に生きているはず。
それは敵対するイギリス兵だけじゃなく、日本兵もみんな同じだろう。
そして、それが「戦争という括りの中」で、平等に与えられる人間の所業だ。
誰もが苦悩し、苦しむ…なのに、それを引き起こすのも人間。

たけしが演じる「ハラ軍曹」が見せるラスト。

「メリークリスマス!Mrローレンス!」

明日、処刑されるのに笑顔のハラ軍曹。
狂気なのか?後悔なのか?
それは、まだ…今の俺には分からない…未熟だ、俺は…。
けど、祝うべきクリスマスを創ったのも戦争を起こす人間なのは解る。

戦争を起こすのは人間。
終戦後、強引に敗戦国を裁くのも人間。
忠実に軍務に励もうが…関係ない。
反論させない為には命を奪って処刑するしかない。

だが、デヴィッド・ボウイが見せた坂本龍一へのキス。
憎しみと醜悪の戦場の中、愛のキスを彼に示した事…。
それこそが、あの映画のテーマなのかも知れない。

そして――あの映画音楽。

この美しい調べの中に…うん。
人間が向かうべき場所が示されているのかも知れない。

また、何年かした後…
俺は、その場所をこの作品で探したい。

見つかると信じて。

     *

     *

Blue Jean(Official Video)を聴きながら。
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映画の奴隷さん [映画館(字幕)] 8点(2023-01-18 23:23:32)
141.《ネタバレ》 巨匠と言われると、誰しもが文明論映画に挑戦したくなる。
かくして、異才大島渚の放った文明論が、本作である。
「戦場にかける橋」のアレックギネスをデビッドボウイに仕立てた快作と思った。

なるほど、外国賞狙いだったか、欧米の兵士の方が人間的で共感できる。
日本兵の方が狂気的に描かれてる。

が、ここで、ちらりと日本らしさを出したのが、
クリスマスの夜、たけし演じるハラ軍曹が、酔って、今夜は
俺がサンタクロース、お前らは特赦だ、と英国兵に告げる場面である。
そこがラスト、効いてくる。

ロレンスがハラの処刑される前日、神のご加護を、と告げると、
ハラのどアップで「メリークリスマス」と言って、映画は閉じる。
どういう解釈か?は人によって違うだろうが、
僕は、日本人は、みんなが神なのだ、ということで、最後のどアップに
繋がるのだろうと、そう思った。

今夜はクリスマスイブ。
メリークリスマス♪
トントさん [ビデオ(邦画)] 7点(2022-12-24 21:26:44)
140.評判の割には面白くないが、坂本龍一の音楽が印象的な作品でした。ところで、セリアズの弟のエピソード、必要か?
クロさん [地上波(邦画)] 3点(2021-12-31 19:58:42)
139.《ネタバレ》 坂本龍一さんの音楽大好きです!
特に戦場のメリークリスマス ピアノは最高です。
これが弾きたいがために電子ピアノを買って練習したほどです。

こんな素晴らしい音楽の映画も見ておかなければと思って観てしまいました。
記憶から消すことにします。
音楽だけはいいのですが、びっくりするほどにミスマッチです。
肝心の戦場のメリークリスマスでさえもピアノだけなら素敵なのですが、映画でかかっている音楽は
イマイチでした。
メメント66さん [インターネット(字幕)] 3点(2020-11-08 23:27:15)
138.《ネタバレ》 大島渚監督の名作だけど、ちょっとした同姓愛描写が興ざめなんだよね。若きタケシくんは鬼軍曹を熱演。単調なヤクザ演技はこの頃から「アウトレイジ」そのまんまやな。荘厳なオンガクはグッドだ。
獅子-平常心さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-09-23 21:31:52)
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【点数情報】

Review人数 157人
平均点数 6.32点
010.64%
131.91%
242.55%
3106.37%
4138.28%
51912.10%
63119.75%
73119.75%
81610.19%
91710.83%
10127.64%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 8.08点 Review12人
2 ストーリー評価 6.29点 Review17人
3 鑑賞後の後味 7.64点 Review17人
4 音楽評価 8.65点 Review20人
5 感泣評価 7.16点 Review12人
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