1.《ネタバレ》 「長谷川・ロッパの家光と彦左」。フィルムセンターで鑑賞。
古川碌波と長谷川一夫の共演。この二人は「婦系圖(婦系図)」でも共演していたね。
いきなり将軍?を抱えて歩く彦左、時は戦国時代、爆発の中を人馬が駆け抜ける文字通りのスタートダッシュの素晴らしさ!
打ち捨てられた旗、ところ変わって江戸の城。
元気に遊ぶ子供たち、天高く舞う鞠、転んで泣いた友を励ます姿を見て「これが将軍争いをするのか」とでも思ったか哀しげな表情を見せる母親。
将軍争いの議論中の場にドカドカと現れ堅苦しさをブッ壊すように座る彦左。
目の前で切腹をしようと着物を脱ぎ始める。皮肉たっぷりの会話が面白い。振り返って遺言、命がけの進言、さっきまで生きるか死ぬだったのにすぐに馬になって遊びに付き合う切り替えの早さ!
時は流れて成長した家光。
田園風景の穏やかさと正反対な室内の暗さと重苦しさ、まさかの伊達正宗、かっぷくの良い正宗さんですこと。
彦左が現れると共に急に明るくなる室内。まるで灯でも灯したように。乱世の暴れ者は太平時の骨董品。上様も名君すぎて何か味気ない。
しばらくはこの静寂が続く。骨董品として静かに余生を過ごそうとしていた彦左のように。
本多忠勝をはじめ、平和になった時代に静かに亡くなっていった猛将も多かった。彦左もまたその一人に過ぎないのだろう。
仕事中の若を見守り「自分は邪魔かな」とでも言うように静かに去っていく孤独さが背中から滲み出る。
まるで孫の祖父と孫の母親のように茶を愉しみ話し合う。
30分を過ぎた辺りから物語は再び加速していく。ダダをこねた子供のように若に迫る爺や、それに「馬鹿!バカ!ばか!」と死んで欲しくないからこその「ばか」呼ばわり。爺やと若殿様のやり取りに和む。
そして爺やを元気にするための「茶番劇」のはじまりはじまり。
大広場の壇上で華麗な舞踊を披露する余興、身分なぞ知らんという具合に一緒に踊るのが良い。
ひょっとこお面を付けて踊り明かす、爺やも呆れながら踊りに巻き込まれ元気になっていく。お茶目な殿様は舌をだしながら「文武の道に励むであろう(嘘乙)」
襖の話を立ち聞きして彦左も段々と乗り気に。抜刀して手打ちという場面で「御随意に」の一言で本気じゃない事が解る表情をする。
斬られそうになる人涙目。コイツらゲラゲラ笑いやがってwwwwww
日光にお参りからは結構シリアスに。
闇夜に燃える提灯、嬉しくて嬉しくてしょうがない爺や。
そこに反旗をうかがう男たちの将軍争いは続く。彼らの「馬鹿」は家光たちの「ばか」とはちょっと違う、灯りでかろうじて照らせるような途方もない闇。それが広がる空間が素晴らしい。
地獄へお供いたします、闇の中に見えてくる希望の光。
行列に狙いをつけるように聳える城、日光での舞踊、合図と共に閉まってしまう重厚な扉、光も遮断する密室に変わる。もう本当に完全な暗闇で何が起きているのか解らない恐怖、かろうじて照らし出す強調する蝋燭の閃光。
これも「例のアレ」だと思ってしまう彦左。命がけの強硬手段も「良い芝居するなあ」くらいにしか思ってないんだろうな・・・w
本当にヤバイと思っている人と本気で芝居だと思っている人の温度差。武者姿の舞はブラフ、ギシギシと音を立てる屋根の不気味さ、蝋燭切ったら大爆破! 国を裏切れないが主君も裏切れない苦しみ。
思い出す戦国の修羅場、冒頭とは打って変わって今度は爺やの手を引いて歩く将軍。立派な真の名君へとなっていた。
「許しも待たず死ぬでないぞ」、田園に消えていく行列。