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プロフィール
コメント数 2381
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  サンセット大通り 《ネタバレ》 
70年前の映画とは思えない、現代の眼で観てもまったく古さを感じない鬼のような傑作。海外の映画サイトやキネ旬のオールタイム・ランキングには当然ランクインしていますが、面白いことに近年になってどんどん順位がアップしています。 死者のモノローグは『深夜の告白』でも使ったワイルダーお得意のストーリーテリングですね。この映画の凄いところは、ウィリアム・ホールデン周辺の仲間たち以外、つまりグロリア・スワンソン=ノーマ・デズモンドや登場する実在の映画関係者たちが、みんなセルフ・パロディとして登場することです。ノーマとブリッジをするメンバーは三人とも実在のサイレント時代のスターですが、この人たちを“蝋人形”だとモノローグで言わせちゃう脚本がエグい、その中の一人はバスター・キートンなんですからね。グロリア・スワンソンにしてもよくこの役を請けたなと感心します、グレタ・ガルボやメイ・ウェストには当然のごとく拒否されてますからねえ。『何がジェーンに起こったか?』のベティ・デイビスとジョーン・クロフォードの先駆けだったと言えるでしょう。ノーマのセリフにもあるようにサイレント時代の女優は顔というか表情で勝負、スワンソン自身もまるで歌舞伎の大見栄を切るような大芝居の連続で、ここは彼女のサイレント女優としての本領が発揮できたんじゃないでしょうか。そんな中でセシル・B・デミルだけはノーマに優しいいい人キャラ、さすがパラマウント映画の大御所・大監督だけあってワイルダーも忖度してしまったのかな(笑)。ノーマとマックス=エリッヒ・フォン・シュトロハイムの関係なんかも始めは不気味に感じるけどだんだん感情移入してきて、ラストの映画監督に戻って指示を出すところなんかは心に染みます。 この映画はフィルム・ノワールの傑作と分類されていますけど、私はビリー・ワイルダーが生涯撮った唯一のホラーじゃないかと思います。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-01-13 22:06:54)
2.  猿の惑星 《ネタバレ》 
間違いなく史上もっともネタばれしている映画です。「人類滅亡後の猿が支配する地球に帰りついた宇宙飛行士」なんて映画紹介を書くジャーナリストまでいるぐらいで、おそらく20歳以上でこの結末を知らない人はいないでしょう。でも公開間もない頃に何も知らずにこの映画を観てしまった時の衝撃ときたら、自分の中では未だに三大トラウマ映画のひとつに君臨しています。 昨今の邦画と違っていろいろなプロット上の謎を放置したまま物語は終わってしまいます。宇宙船は何を目的としていたのか、人間はなぜ言葉どころか声さえ出すことが出来ないのか、などけっこうあるんです。でもこういうあまり細かいところを追求しないストーリー・テリングも観る者の想像力をかき立てる効果がありますね。脚本上どうしてもクリアできなかったおバカな部分は多々あります。だいたい猿が使っているのが英語だという時点で、テイラーはここは地球じゃないかと気づかねばなりません。そりゃ広大な宇宙では生命体が存在する地球に酷似した天体があるでしょうけど、使われている言語まで一緒だなんてさすがにあり得ないです。洞窟の中で人形や眼鏡まで発見しているのに「これは地球の文明に良く似ている」なんて講釈たれるところなぞ、もうコントみたいな感じですよね。まあそこら辺はいきなり人間と猿が逆転している世界にほうり込まれたら、普通の人なら混乱して冷静な思考が出来なくなるだろうからということで、大目に見ておきましょう。 原作者ピエール・ブールの日本軍による捕虜体験(どうもこれはウソみたいです)をカリカチュアしたストーリーだと解釈する向きがありますが、猿の文明における進化論が出てくるところなど観ても、私には製作当時のアメリカ社会に対する風刺が色濃い脚本じゃないかと思います。あまりによく出来たプロットなので、色んな時代や社会の暗喩として捉えることができるのは、まさにこの映画の偉大なところでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-05-02 15:11:48)
3.  座頭市物語 《ネタバレ》 
寅さんシリーズには負けるけど、日本映画史上屈指の長寿シリーズの記念すべき第一作です。いい歳して座頭市ものをじっくり観るのは初めての自分、市がヤクザだという事すら認識していませんでした。タイトルロールを観て伊福部昭が音楽担当と知ってちょっとびっくり、でも確認すると全作とは言わずとも座頭市シリーズではかなりの作品に参加していたんですね。時代劇での伊福部昭サウンドは、東宝特撮とはまた違った重厚さがあります。 26作も製作されたので後期のまるで超能力者みたいな市のイメージしかなかったんですけど、本作での勝新太郎はもう惚れ惚れするぐらい深みのある人物像で、その演技には圧倒されます。盲者である市が周囲の事物を感知できるのは鋭い聴覚と嗅覚が成せる業という描写にもけっこう説得力があり、現代的に言ううと市は絶対音感の持ち主というわけですね。意外と居合の技を見せるシーンは少なく、初めて抜くのは開幕三十分は過ぎてから。そして“座頭市と言えば仕込み杖”というイメージがあるけど、本作ではドスを杖代わりにしていて、終いにはそのドスも「平手御酒の供養に埋めてくれ」と言って小坊主に渡して捨ててしまう。こういうところはラストでバッジを投げ捨てる『ダーティハリー』と一緒で、まさかこれが大ヒットしてシリーズ化されるとは予想してない撮り方みたいな感じがします。平手御酒=天知茂の哀愁が込められた演技もまた素晴らしく、自分が今までに観た時代劇での天知茂のベストアクトです。 26本も製作されているのでとても生きているうちに全作観れる気がしませんが、機会がありましたら他の作品も観てみたいと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-09-14 22:23:08)(良:1票)
4.  裁かるゝジャンヌ 《ネタバレ》 
知って驚くしかないのは、この歴史的傑作のオリジナル・バージョンが80年代まで観ることが出来なかったということでしょう。28年製作のフランス映画ですけど試写の段階でカトリック教会の検閲で大幅にカットされ、劇場公開され世界に配給されたのはこの改変版だったわけです。サイレント映画ではよくある事例ですけどその改変版のフィルムも30年代には火事で焼失、80年代にオリジナル版のフィルムが奇跡的に発見されるまで、海賊版バージョンしか観ることが出来なかったんだそうです。 この映画の感想はもう“衝撃の映像体験”の一言ですね。ジャンヌが火刑されるまでの審問裁判のシークエンスでは、バストショットすら皆無のもう俳優たちの顔のどアップの連続、ジャンヌを含めてノーメイクの俳優たちが繰り広げる演技というか顔芸には圧倒されっぱなしです。デジタルの力もありますけど、サイレント映画とは思えないシャープな映像は圧巻です。ドライヤーは本来トーキー映画として製作したかったそうで、サイレントながら俳優たちにすべて脚本通りに演技させたそうですから、現代の眼でも違和感がない。ジャンヌ・ダルクを救国の英雄として描くのではなく、ルーズ・ルネ・ファルコネッティが演じるのはとても19歳には見えないくたびれた田舎の娘としか見えないのもリアル過ぎでしょ。後にはイングリッド・バーグマンやミラ・ジョヴォヴィッチまでもが演じるキャラですが、ファルコネッティは歴代ジャンヌの中ではもっともアレな女優だったんじゃないでしょうか。 ラストの火刑はほんと観ていて辛くなる、まさにトラウマものです、なんせジャンヌが焼けぼっくりになるまで見せるんですから。また刑場となるルーアン城の遠近法を無視したようなセットがまた印象に残ります。美術は『カリガリ博士』のヘルマン・ヴァルムの仕事ですから、納得です。でもこの美術構成は、ケン・ラッセルの『肉体の悪魔』でそっくり再現されており、美術担当デレク・ジャーマンの拘りが感じられます。
[DVD(字幕)] 8点(2022-06-06 22:08:33)(良:1票)
5.  座頭市(2003) 《ネタバレ》 
21世紀にもなって、これほど「め〇ら」というセリフが多用される日本映画が観れるとは、もう嬉しくなっちゃいます(笑)。「北野武が座頭市を撮る」と聞いてびっくりしたもんですが、観てみれば勝新太郎の『座頭市』とは似ても似つかず、“リブート”というよりも“リコンストラクション”と呼ぶのが相応しいぶっ飛びぶりでした。その強さはもう超能力者レベル、だいいち座頭市が金髪というところからしてどうかしています。自分は本作の特徴は“リズム”をとことん重視した撮り方じゃないかと思います。タップのリズムで野良仕事する百姓など時には意味不明なところもありますが、シーンが切り替わるタイミングなんかも含めて快調なリズム感はなかなか心地よい感じすらありました。まるでポリウッド・ムーヴィーみたいなラストはちょっとやり過ぎ感すらあり賛否が分かれていますが、自分は好みです。初めて観たときはまだ『踊るマハラジャ』などのポリウッド・ムーヴィーを知らなかったので、そりゃびっくりしましたよ。このセンスならダンス・ミュージカル映画を撮らせたら面白いんじゃないかな。思うにこの映画での座頭市は狂言回しみたいな役柄で、浅野忠信の浪人夫婦や盗賊一味を追う姉弟のエピソードがメインなのかなとすら思ってしまいます。だとすると、このサブストーリーの描き方(とくに浅野忠信パート)が弱いのは気になるわけで、ここが本作の最大の弱点なのかと感じます。またラストで座頭市の座頭市たる所以を否定する驚愕(?)のオチが用意されているわけですが、これなんかも勝新版『座頭市』のファンから嫌われる理由なのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2022-03-19 22:26:02)
6.  サザン・コンフォート/ブラボー小隊 恐怖の脱出 《ネタバレ》 
州兵と言っても、集められた面々の顔触れや勤務態度はまるで町の消防団みたいな感じです。軍務経験があるのはピーター・コヨーテの軍曹だけで、ほぼ素人集団である九人の分隊(邦題では小隊としているが明らかに間違い)が湿地帯の森に踏み込んでゆく。経験者と言ってもちょっと頼りなさそうだった軍曹が真っ先に射殺され、完全に烏合の衆と化した八人が地図も磁石も持たずに彷徨する羽目に陥ります。いちおう伍長階級の先任者が指揮を執るけど誰も彼の能力を信頼せず、八人は団結せずにいがみ合い勝手な行動に走ります。そして頭がおかしくなった一人はケイジャンの小屋を爆破するといういちばんやってはいけないことをしでかし、ケイジャンたちから一人一人となぶり殺しされてゆく。軍曹が殺されてからの展開は、もう緊張感が半端ないです。捕虜となった一人以外はケイジャンたちの姿をほとんど映さないという演出がまた怖い。 閉幕十五分前にして生き残った二人はトラックに遭遇してケイジャンたちがお祭りをしている集落に連れてゆかれます。実はこの残り十五分のシークエンスがこの映画でもっとも恐ろしいところで、これは私が選ぶ歴代サスペンス映画の恐怖シークエンスでベスト3に入れたいと思います。豚を銃で屠殺したり絞首刑用のロープが持ち込まれたり、恐怖を煽る伏線が見事に張り巡らされています。私にとってはあの結末はちょっと意表を突かれましたが、10年前のニューシネマ全盛時代だったら絶対違う終わり方だったと思いました。 この悲惨極まりない行軍はヴェトナム戦争の戦闘を暗喩しているのでしょう。でも、実は国内にもヴェトナムが在るのだ、というところがこの映画のテーマなんです。日本では未公開だったそうですが、これは観ておいて絶対損はないと思いますよ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-10-04 20:08:39)
7.  最前線物語 《ネタバレ》 
この映画は、戦争映画としては低予算だけどサミュエル・フラーが手掛けた作品ではもっともバジェットがかけられているみたいです。これもプロデューサーであるロジャー・コーマンの弟ジーンの手腕の成せるわざでしょう。ほとんど全編がイスラエルでロケされていてイスラエルが魔改造したスーパーシャーマン戦車をイスラエル軍から調達してドイツ戦車として登場させています。もちろんそれらしい雰囲気は皆無ですけど、この戦車は近くで見るととても元がシャーマン戦車とは思えない重厚さ、映画で使われるのは珍しいので貴重です。 この映画は、じっさいに第一歩兵師団にカメラマンとして従軍したサミュエル・フラーの経験をもとにしたオリジナル脚本の映画化で(中盤では従軍カメラマン役でフラー本人がカメオ出演しています)、たとえとしてはヘンかもしれないけど言わば戦争映画版ロードムービーという感じです。この師団にアメリカ参戦時に所属して終戦まで生き残れば北アフリカとヨーロッパを巡る旅を経験したことになるわけです。主役はもちろんザ・軍曹とも言うべきリー・マーヴィンなわけですが、相方みたいな位置づけでドイツ軍にもシュレーダーというナチスに凝り固まった下士官がいて、つねに同じ戦場で相まみえていたというのが面白い。まあ思想的なことや国籍は違うけど、マーヴィン軍曹もシュレーダーみたいに殺しはしないけど部下には必要あらばかなり非情になれる男ではあります。前大戦でのトラウマをシュレーダーの命を救うことで克服するラストは、ここにこそフラー脚本の妙が凝縮されていると思います。 戦車の中での出産や精神病院でのエピソードそして強制収容所での哀しい別れなど、随所にフラーらしさが見られるストーリーテリングでした。血なまぐさいシーンもあるけれど、不思議な詩情に満ちた戦争映画だったと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-10-12 23:49:24)
8.  殺人の追憶 《ネタバレ》 
「あのファソン連続殺人事件の犯人がDNA鑑定によって特定された!」というビッグ・ニュースが飛び込んで来て、この事件を元ネタにした本作を思い出して鑑賞。 正直前半はもうイライラさせられっぱなし(実はむかし観たときは、それに耐えられず五分でギブアップさせられました)、でもウルトラマンに出ていたころの若き日の毒蝮三太夫みたいなソン・ガンホ刑事のアホ捜査ぶりにはだんだん笑うしかなくなってきたのが不思議です。この刑事たちの愚行よりある意味凄いのは警察組織自体のオンボロさで、いくら田舎警察と言っても死体発見現場の現状保存ぐらいふつうするでしょ?もうすぐソウルでオリンピックが開かれる頃のお話しなのにねえ。この映画の愚行の中でいちばん笑える祈祷師にお伺いをたてるエピソードも、実話に基づいているというのもサプライズです。その警察の動きにチョン・ドファン政権時代の社会情勢を絡ませる描き方はちょっと言い訳じみているけど素直に上手いなと感じました。列車やトンネルの使い方も巧みだし、俳優たちの熱演を上手に引き出せたストーリーテリングだったと思います。 この映画は実話ものというよりも実話をもとにした独自の情念劇と観るのが正解でしょう、でもその問題提起するパワーはかなりのレベルだと思います。いちばんの皮肉は、この映画が世に出たころには真犯人とされる人物はとっくに刑務所の中だったということでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-10-07 21:26:40)
9.  サロゲート 《ネタバレ》 
細かいことを言うと粗が目立つけど、この映画が見せてくれる世界観はなかなか興味深く考えさせられることが意外と多いと思います。まず世界の98%がサロゲートを使用しているってことは、ほとんど全人類がニートになってしまったというわけで、それを想像するだけでもなんか楽しい。経済的な合理性やセキュリティ面からのありえなさはともかくとしても、これは変身願望を持つ人には堪らない魅力がある商品ですね。冒頭に出てくるクラブのボディコン姉ちゃんのオペレーターが実はメタボの中年おばはんだったというエピソードなんかドンピシャです。ブルース・ウィリスのサロゲートが妙に若々しくて、『シックス・センス』のころみたいな顔つきなのも笑ってしまいます。これはメイクの偉業かと思いますが、まさかCG?ロザムンド・パイクは『ゴーン・ガール』の先入観がどうしてもあるのでまたなんか悪さをするんじゃないかとドキドキしましたが、この人の無表情は究極のサロゲート顔というかサイボーグ顔です。 このお話は変身願望という視点やサロゲート文明に対する抵抗組織が登場するところなどから、シュワちゃん版の『トータル・リコール』と通じるところがあるようにも思えます。そして重要なメッセージとして依存症への警鐘があり、これは現在問題になっているスマホ依存症を予言していると感じました。そういった深いメッセージを軽快なアクションにまとめた良作だったと思います。 ネタバレですけど、このストーリーはスティーヴ・ジョブスが全世界のiPhoneを破壊しようとするみたいなものでしたね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-09-08 23:42:05)
10.  サイド・エフェクト 《ネタバレ》 
導入部からストーリーにぐいぐい引き込まれてゆく感じで、さすがソダーバーグ、熟練の技が冴えわたってます。ストーリーはちょうど中ほどから急展開を見せることになるのですが、そこはもうソダーバーグ版『ゴーン・ガール』という感じです(すいません、ネタばれが過ぎました)。ジュード・ロウの精神科医もなんかちっとも感情移入できない様な嫌らしさのあるキャラですが、後半で反撃に出てくるところの巧みな心理戦はなかなか爽快でした。最近はソダーバーグさんもインディペンデント系映画ばかり撮っているんですけど、これだけの才能を持っているんだからまたハリウッドのメジャーで映画を撮ってほしいものですね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-12-22 19:39:39)
11.  ザ・パシフィック<TVM> 《ネタバレ》 
スピルバーグとトム・ハンクスが製作総指揮をとったいわば『バンド・オブ・ブラザーズ』の太平洋戦争・海兵隊版と呼べるTVミニ・シリーズです。“ミニ”と言いましても全篇通してみれば8時間半あまりもあり、製作費も200億円(!)かけているぐらいですから凄いもんです。原作はドラマにも登場するユージン・スレッジとロバート・レッキーがそれぞれ書いた従軍回想記で、それに海兵隊の伝説的な英雄ジョン・バジロンの物語を加味した脚本構成となっていますが、この脚本は『バンド・オブ・ブラザーズ』よりも優れているんじゃないかと思います。この三人は所属する連隊も実戦参加時期も違っていて物語の中では絡むところはないのですが、観終わってみるとこの三人が同じ中隊で肩を並べて戦っていた様な錯覚に陥るほど秀逸なストーリーテリングでした。 ●ガダルカナル まず彼ら第一海兵師団はガダルカナル島に投入されるのですが(スレッジはまだ入隊していない)、米軍側から見たガダルカナル戦がまた興味深いところです。夜に海上で砲火が瞬き砲声が聞こえてくるのを見物して「海軍が日本艦隊を追っ払ってくれてるな」と歓声をあげてるんですが、実は米艦隊が惨敗した第一次ソロモン海戦を陸から見ていたわけで、夜が明ければ艦隊も輸送船もいなくなっていて孤立無援になっていることに気がついて愕然としまう。これはもう『遠すぎた橋』の英空挺部隊と同じ様な状況で、この状態から日本軍を撃退したんですから決して楽な闘いじゃなかったことが判ります。この戦いでバジロンは名誉勲章を授与されて本国帰還し戦時公債ツアーのスターになります。●ペリュリュー 三話も使って繰り広げられるのがぺリュリュー島の死闘で、ここから実戦経験したスレッジの視点で描かれます。さきに両陛下が訪れたことで少し知名度は上がりましたけど、あまり現代日本人には馴染みがないこの島で海兵隊がいかに苦戦したかが判ります。ガダルカナルでは輸送船から縄梯子を伝って上陸用舟艇に乗りこんでいたのに、この作戦では水陸両用戦車を使う様になってきて、海兵隊の戦術の進歩がよく判ります。日本軍も九五式戦車(もちろんレプリカですけど良く出来ています)を繰り出して反撃するけどあっけなくやられちゃいます。このシリーズでは武器考証はハイレベルですが、全篇を通じても代表的な分隊火器であるブローニング自動小銃が使われていないのは解せないところでした。●沖縄 それまでは民間人のほとんどいない孤島が戦場でしたが、沖縄戦になってくると日本人としては観るのが辛くなってきます。米軍にも苛酷な自然環境は平等ですし、ずぶぬれの泥だらけで野宿しなければいけないというのは、歩兵のつらいところです。育ちの良いスレッジまでもが日本兵の死体から金歯を集める様になってきて、戦争が人間性を狂わせる恐怖をひしひしと感じました。 このシリーズでは一話をまるまる使ってスレッジとレッキーが復員する姿を描いているのが、物語に深みを与えてくれたと思います。狩りに行ったけど「もう死ぬまで銃を撃ちたくない」と父親の胸で泣くスレッジの姿で物語は終わります。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-04-29 20:52:55)
12.  最後のマイ・ウェイ 《ネタバレ》 
この映画を観るまではクロード・フランソワという人の事は正直知りませんでした。60年代から70年代にかけてフランスで大人気だったアイドル歌手で、いわばフランスの郷ひろみか西条秀樹という感じでしょうか。またあの名曲『マイ・ウェイ』も実はこの人が歌ったシャンソンがオリジナルだというけっこう凄い人だったんです。 あまりにダサい邦題のせいもあり世間によくある歌謡もの映画と思っていたら、これがどうしてグイグイと引きつけられるパワーを持った作品で、最後にはホロリとさせられてしまいました。物語はスエズ運河会社の偉いさんの息子として生まれたフランソワが、歌手として成功してゆきこれから全米に進出だというところで信じられない様な事故で他界するまでを追ってゆきます。主演のジェレミー・レニエはメイクもあるでしょうが実際のクロード・フランソワにそっくりで、歌も上手いなと感心したけど良く調べると実際のフランソワの音源を使っているみたいです。この映画の巧みなところは、フランソワに決して感情移入させない様な距離を置いた撮り方をしていることでしょう。たしかにかなり自分勝手な男だし、若いころから整形して顔をいじっても平気だし、落ち目のときには仮病を使ってステージで倒れて同情を買うなんてことまでやってのけます。女性関係も男の眼からも勝手邦題で、フランス・ギャルとのエピソードでは“なんなんだ、こいつは!”って観てて腹が立つこと請け合いです。でもこれもジェレミー・レニエの名演のなせる業なのは間違いないでしょう。母親もまたろくでもなく、ギャンブル狂で借金の山を築くんだから困ったもんです。 成功した中盤以降はこの種の映画ではふつうだれるもんですが、変幻自在な映像を駆使してそのパターンに陥らないように工夫されていてそれが成功しています。朝起きてからファンが群がる自宅を出て始まるある日のフランソワを、長回しを多用して見せてくれたのにはこの監督の才気が良く出ていました。各所で見せてくれるフランソワのド派手なステージ・パフォーマンスも観ていて愉しかったですね。 スターと言うのは頂点に立った瞬間から落ち目になって忘れられてゆく恐怖が始まるものなんですね、そういうスターの強迫観念がとても切実に伝わってくる映画です。ちょっと長尺でしたが、時間を感じさせない濃い一篇でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-04-27 00:27:05)
13.  ザ・レイド 《ネタバレ》 
噂には聞いていましたけどこれは本当に凄い、私にとっては『燃えよドラゴン』を観たとき以来の衝撃でした。『死亡遊戯』へのオマージュなんでしょうけど、15階建てのボロマンション内に舞台を限定させているのはグッド・アイデアです。その中で、SWATとギャングたちがひたすら銃撃戦・剣闘戦と超ハイレベルな肉弾戦を繰り広げるこの単純明快さ! 格闘技の世界には疎い自分ですが、人間の脚というのは恐ろしい武器になるんだということが良く判りました。またギャングたちがそろって悪そうな面構えなんですよね、プロの俳優じゃなくて本業の人たちを使ってるんじゃないかと思うぐらいです。その中でもちょっと笑わせてくれるのが中ボス(?)“マッド・ドッグ”さんで、わざわざ銃を捨ててたり拘束を解いてやったりしてまで肉弾戦に拘るんですから、この人はもう“肉体戦依存症患者”と呼んであげたい。 カメラワークに関してももう無茶苦茶で、斧を何度も振り下ろすカットで上下する斧の動きにカメラを連動させるところなんかは、この監督何を考えてるんだ!と思わず叫びたくなりました。ラストのオチもカッコ良いし、これは10年に一作の掘り出し物だと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-11-10 21:34:26)(良:1票)
14.  サンキュー・スモーキング 《ネタバレ》 
才人ジェイソン・ライトマンの監督デビュー作、映画監督の処女作にはその人の個性がすべて詰まっていると言われますが、まさにその通りと言うべき一編です。私はこの人のストーリー・テリングのリズムが好きなんですよね。オープニングから中盤にかけての展開はもうすこぶる快調です。ハリウッドの中堅として活躍しているアーロン・エッカートの数少ない主演作ですが、もうこのニック・ネイラーはこの人しか考えられないという当たり役だったんじゃないでしょうか。マイケル・ダグラスみたいな頑丈そうな顎をしていて、ウソ臭い笑顔を浮かべながらペラペラと詭弁をまくしたてるところは最高に愉快です。いろいろと痛い目に遭いながらも、ラストでは例の笑顔を浮かべながらしゃべくりを活かした別の職業についている彼、それでも人間的な成長はあったんだという視点で閉めてくるところが良かったです。この監督は色んな刺激的なプロットを詰め込みながらも話を大きく広げない脚本を書くのが得意なので、ちょっと物足りないと感じる人も多いかもしれませんが、小品映画を撮るには正しい方法論だと思います。 そう言えばタバコをテーマにした映画なのに、登場人物が喫煙しているシーンが劇中で皆無なんですよね。まあ言われなくても理由は判りますが、ちょっと不思議な感じがしました。そして上院議員が過去の映画からタバコを画像処理して消してしまえと主張するところ、日本でも最近『風立ちぬ』の喫煙シーンの多さを一部のアホが非難していたことを思い出させてくれて、ちょっとゾッとしました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-03-09 21:15:32)(良:1票)
15.  ザ・タウン 《ネタバレ》 
街の雰囲気が『ディパーテッド』に似ていると思ったら、そりゃそうですよね同じボストンでした。銀行強盗と現金輸送車襲撃の発生率が全米一だなんて、NYやロスよりも物騒なところなんでしょうか、ちょっと意外でした。 B・アフレックの『アルゴ』の一本前の監督作ですが、もう『アルゴ』の成功が約束された様なお見事な演出です。ラストの展開には賛否があるでしょうが、わたしはこういうのは好きです。氷が張られて子供たちがプレーしているスケートリンクを見せるラスト・シーンも、『トラフィック』と似ていますがなんか心がホンワカして良い後味が残りました。『ヒート』を強く意識していることは判りますけど、緩急をつけたストーリー・テリングは『ヒート』を超えているんじゃないでしょうか。もっとも花屋のボスを仕留めるところはさすがにご都合主義が目立つのは事実で、その直前のJ・レナーが射殺されるシーンが実に良かっただけに残念でした。 それにしても、レッドソックスのホーム・ゲームでの売り上げが一試合で350万ドルもあるなんて、凄くないですか?
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-05-26 01:45:44)(良:1票)
16.  ザ・コミットメンツ 《ネタバレ》 
面白かったのでロディー・ドイルの原作『おれたち、ザ・コミットメンツ』(なんとサザンの関口和之が邦訳!)も読んでみました。結論から言うと、これは映画の方がはるかにいいですね。映画化に当たってはドイル自身もシナリオに参加していますし、原作小説をグッとふくらましたという感じがします。 これもあのメンバーを揃えられたキャスティングのおかげで、あの“デコ”なるヴォーカルなんて、もう奇跡のキャスティングとしか言いようがありません。ギターの“アウトスパン”役のG・ハンサードなんかはその後『ONCE ダブリンの街角で』でオスカー主題歌賞を獲っちゃうぐらいで、メンバーみんなもレベルが高いパフォーマンスです。原作ではザ・コミットメンツの十八番は『ミッドナイト・トレイン』ということになっているのですが、映画では使われなかったのが残念です。 あっけなく解散しちゃうラストも、ベタベタしてなくいかにもアイルランドらしくて好きです。バンド経験者は必見の秀作です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-09-21 18:25:09)
17.  ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー 《ネタバレ》 
「作家性が強い映画監督のデビュー作にハズレ無し」の私の持論を見事に証明してくれる傑作。まるで地下鉄工事現場の様なもの凄い騒音をたてるオープニングの金庫破りシーンからもうぐいぐい引き込まれます。ジェームズ・カーンの不器用だが金庫破りのプロとしての矜持を保つ漢っぷりはまさにハリウッドの高倉健と呼ぶにふさわしく、彼のフィルモグラフィ中最高の演技でしょう。タンジェリン・ドリームの起用も大正解で、マイケル・マンのセンスの良さを見せつけています。面白いのはジェリー・ブラッカイマーがプロデューサーに名を連ねていることで、こいつも若いころは真面目に映画に取り組んでいたんだなと見直しました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-01-18 01:37:16)
18.  ザ・プレイヤー 《ネタバレ》 
今まで観た映画の中で一番豪華なカメオ出演ですね。もう途中から“目が点”状態でした。ハリウッド業界というか、その中に巣くう魑魅魍魎への皮肉がとってもイタくて、自虐ネタもけっこう入っているのでは? 劇中T・ロビンスはオスカー受賞しているという設定になっててオフィスにふたつもオスカー像が置いてあるのですが、これを観てとうとう最期までオスカーに縁がなかったR・アルトマンの本音が見えた様な気がします。 本当はオスカー欲しかったのじゃないかなアルトマン、ハリウッドは嫌いだったけど…
[DVD(字幕)] 8点(2010-08-04 01:10:29)
19.  サイダーハウス・ルール 《ネタバレ》 
『ルール(法律)を守る』ということは、実生活では簡単なことでもあるし、また難しいときもある。実は『ルールを造る』ことの方が人生では重要で本質的なのではないか。非合法な堕胎を施すことで不幸な女性を救うM・ケインを観ていると、人間の『ルール』について考えさせられます。十戒もあるように、キリスト教文化では神から与えられた『ルール』が大きな意味を持っていますが、行きすぎた『ルール』が人を苦しめていることも現実なのです。中絶がその当時非合法だったのはもちろん、避妊ですら『神の教えに背く』ということで禁止されていたそうですから。この物語は単純な感動ストーリーではなく、もっと奥の深いテーマがあるのが素晴らしい。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2010-02-14 01:03:02)
20.  殺人狂時代(1967) 《ネタバレ》 
不思議な魅力にあふれた喜八ワールド全開の快作。冒頭、S・フラーの『ショック集団』を思わせるシュールな精神病院のシーンですが、白を基調にした超現実的な院内の美術は『ショック集団』を超えています。それとか、中盤に登場するバーもセットだけでなく客の会話がとってもシュールで好きです。そして、仲代達也がこんなとぼけた演技ができるとは本当にびっくりしました。怪優天本英世に引けをとらない仲代達也の怪演をとくとご覧あれ!
[CS・衛星(邦画)] 8点(2010-01-25 22:48:18)
030.13%
1110.46%
2351.47%
31265.29%
42038.53%
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