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プロフィール
コメント数 2374
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  ウルフ 《ネタバレ》 
コッポラが『ドラキュラ』をリメイクしてそれに刺激されたようにデ・ニーロがフランケンシュタインを演じたと思ったらジャック・ニコルソンは狼男、90年代はモンスター界の三大スターのリメイクが揃ったわけです。ジャック・ニコルソン版狼男は意外と王道的なストーリーテリングです。でもよく考えると、この作品ではニコルソンの変身シーンが無いんですよね。せいぜい顔に毛が生えまくるぐらい、これはもう一人の敵役狼男であるジェームズ・スペイダーも同様です。そもそもニコルソンに狼男を演じさせること自体が反則技みたいなもので、あの顔と演技力からするとメイクなんかしないでも迫力の獣人ぶりでした。昼間のリストラに苦悩するくたびれた中年男から日が暮れてからの精力に満ち溢れた狼男ぶりを、多少のメイクだけの表情の演技だけで余裕でこなしちゃうところは、さすがニコルソンです。ミシェル・ファイファーもまだこの頃はギリで全盛期の美貌を保っていたので、見ごたえがありました。でもお話し自体は意外とミニマムな展開で、非情なオーナーのクリストファー・プラマーやお守りのペンダントをくれた老人との絡みが膨らんでいかないのは、イマイチな感がありました。ラストの展開には、どこか『キャットピープル』のオチを彷彿させるものも感じさせられましたが、出演俳優が豪華な割にはやっぱB級感は否めなかったですね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2023-08-21 22:39:11)
2.  浮き雲(1996) 《ネタバレ》 
バスター・キートンの無表情コメディを世紀末に蘇らせたアキ・カウリスマキの“敗者三部作”の代表作。主演はカウリスマキ御贔屓の“幸うす顔の女”カティ・オウティネン、知らない人からすれば「なんて無表情な演技なんだ」と思うかもしれないが、実は本作での彼女はそれまでのカウリスマキ作品の中では最も表情豊かだとファンからは驚かれたぐらいです。短いシークエンスを暗転でつないでゆく彼独特のストーリーテリングは、明らかに親交があるジム・ジャームッシュの影響でしょうね。 ソ連崩壊と世界的通貨危機に巻き込まれたフィンランド、ノキアですら経営危機に苦しむ経済不況の真っ只中でのささやかな庶民の暮らしを、独特のリズムで見せてくれます。カウリスマキの映画は小津安二郎の影響が有名ですけど、正直いって自分には構図も含めて小津色を感じることは少ない。だいいちセリフが極端に少ない作劇法は、小津とは正反対なんじゃないでしょうか。それでも“庶民のささやかな幸福”というある意味ミニマムなテーマは共通していると言えるでしょう。 この夫婦の悪戦苦闘は最後に妻の職場の前オーナーの善意で救われる結末ですが、給料未払いや銀行のゲス対応そしてカジノで夫が資金を溶かしてしまうなど、誰もがどれかは経験してそうな人生の躓きを淡々と見せてしまうところにはかえって思い切りの良さすら感じる脚本です。これは日本でよくいる私小説作家的な監督や脚本家ならドロドロで暗鬱なストーリーにする例が多く、ほんとに「カウリスマキの爪の垢でも煎じて飲め!」と説教したいところです。きっとラストに夫婦が見た空には、雲だけじゃなく綺麗な虹がかかっていたんだろうなと思います。でも原題も『浮き雲』なんだけど、『浮雲』は小津の映画じゃなく成瀬巳喜男の作品なんだけどな、まあ細かいことですけど。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-09 22:59:37)(良:1票)
3.  ウインドトーカーズ 《ネタバレ》 
まー、その、なんと言うか、ジョン・ウーに戦争映画を撮らしたのがそもそも間違いだったという事だけは判りました。ジョン・ウー印ともいうべき派手な爆発は嫌というぐらい見せられました、でもスローモーションは意外と控えめでしたね。そう言えばワンカットだけ彼の大好きな鳥のスローモーション飛翔もありましたね、もっともこれは定番の鳩じゃなくてカモメでしたが。戦闘シーンは意外と武器などの考証はしっかりしていた印象ですけど、日本軍が使っていた擲弾筒(米軍呼称ニー・モーター)の着弾・爆発シーンはいくら何でも派手すぎです、あれじゃまるで155ミリ榴弾ですよ。まるで虫けらのごくバッタバッタと殺されてゆく日本兵の姿は見るに堪えないものですが、まあ史実でもこんな感じだったみたいです。でも海兵隊もけっこう討取られているのでそこは耐えねばなりません。私はサイパンに渡航したことはないので推測ですが、あの島はガダルカナル島のような密林ジャングルの植生ではなく戦前から日本が統治していてけっこう開発されていたので、地勢的にはあんなもんじゃないですかね(ロケ地はハワイだったみたいです)。あとこの映画でほんとに鬱陶しかったのはニコジーの陰鬱な演技で、冒頭で部下を全滅させた負い目ずっと引きずっているで、途中からは完全に死亡フラグが立ちっぱなしでした。でもその負傷で聴力半減して平衡感覚までおかしくなっているのに、普通に動き回ってガンガン撃ちまくっているのはどういうもんでしょうかね。 この映画のプロットは考えてみれば『プライベート・ライアン』とは真逆なんですね。トム・ハンクスは自身や部下を犠牲にしてでもライアン一等兵を生還させるのが任務だったのに、ニコジーは敵に利用されそうになったらコードトーカーを殺すことが使命なんですから。でもこれは史実通りだったらしくて、米国という国家の有色人種に対する非情さには慄然とさせられます。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2023-04-07 23:20:08)
4.  雨月物語 《ネタバレ》 
『雨月物語』は上田秋成の九編からなる怪異譚集だが、その中の二編をピックアップして再構築した脚本、モーパッサンの短編からもインスピレーションを受けているそうです。幽霊屋敷で男が女幽霊に好かれて憑りつかれるという原作『蛇性の婬』がメインプロットとなっていますが、これは『耳なし芳一』などの古くからある怪談のパターンで王道と言えば王道です。森雅之が体に梵字を書いてもらって危機を脱するところなどは、まさに『耳なし芳一』の影響を感じます。『雨月物語』は昔読んだ記憶ではもっと無常観というか辛口の語り口だったけど、全体的に教訓めいたお話しに落とし込んだ感が強いですね。これは溝口健二は人間の本性のダークな面を強調する脚本にしたかったけど、会社というか社長の永田雄一の要望でマイルドな方向になったらしい。その代わりというか撮影にはいっさいの妥協なしで、構図と言いカメラアングルも名手・宮川一夫のキャリアでも最高の仕事と言っても過言じゃない。田中絹代が落ち武者に槍で突き殺されるシーン、こと切れる田中の遠景の下方の田んぼでは落ち武者たちが奪ったおにぎりを喰らっているのがはっきり映っているのは驚愕のショットでした。はっきり言って日本人にはあまりインパクトは感じない題材ですけど、欧米人には絶賛され高評価を得ているのはなんか判る気がします。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-09-18 22:34:38)
5.  ウエスタン 《ネタバレ》 
“スパゲッティ・ウエスタン(アメリカではマカロニウエスタンがこう呼ばれていた)”の巨匠として名が知られるようになったセルジオ・レオーネが、ハリウッドに招かれ潤沢な予算とスター俳優を得て腕を振るった大作。でも本当にやりたかった企画は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』で、その資金稼ぎのために渋々引き受けた西部劇だそうです。元祖“三すくみ映画”監督だけあって、冗舌と言えるほどのストーリーテリングで三人の男の生きざまと死にざまを暑苦しく見せてくれます。 まず何と言ってもヘンリー・フォンダ、彼のフィルモグラフィ中唯一(たぶん)の悪役を堂々とした演技で見せてくれて、さすが名優です。その悪役演技に感動したジェーン・フォンダが、一ファンとして父親にファンレターを捧げたそうで、複雑だった親子関係だけに感慨深いエピソードです。70年代以降のフォンダは遺作の『黄昏』まで駄作での手抜き演技で晩節を汚してますから、実質的に本作で名優のキャリアを終えたと言えるんじゃないでしょうか。でも私が最も注目すべきだと思うのはチャールズ・ブロンソンです。レオーネ映画はクローズ・アップの多用が特徴ですけど、全盛期ブロンソンの魅力に改めて気づかされました。ブロンソンの顔(とくに鼻下から眉毛のあたりまで)どアップをこれだけ見せられるフィルムは他にないでしょう、最低限の表情変化でこれだけ哀愁を表現できるとは見直しました。この演技でオスカー受賞できなかったのはなんたることか!おっと、そういやノミネートすらされてませんでした(笑)。ジェイソン・ロバーズも良かったんだけど、あまりに髭面がむさ苦しかったところと、演じるシャイアンという無法者キャラが判りにくい存在だったのは難点です。ここに全盛期のクラウディナ・カルディナーレが絡むんですから、まさに“ヴィスコンティが撮った西部劇”みたいだという批評にも納得できます。願わくは、CCには脱ぎを見せて欲しかったな(おいおい)。 脚本には若きダリオ・アルジェントとベルナルド・ベルトルッチが参加しているというのも豪華です。冒頭の三人組殺し屋が駅でブロンソンを待つシークエンス、ジャック・イーラムの顔にたかる蠅を延々と追いかけるシーンは、ぜったい昆虫フリークのアルジェントが出したアイデアだと思うな。このオープニングでブロンソンに返り討ちされる殺し屋たち、実はイーストウッド、リー・バン・クリーフ、イーライ・ウォーラックの『続・夕陽のガンマン』トリオをカメオ出演させる構想があったそうです。もし実現していたら、『グラン・トリノ』の40年前にイーストウッドはスクリーン上で死を迎えていたわけです。 昨今では尺が長い映画は評価が低くなるという風潮があるのは、自分としては納得がいきません。やっぱ中身が大事なんですよ、いちばん。本作はその映像表現が冗長だという批評が目立ちますが、これだけエモいウエスタンを撮れた映画作家はレオーネしかいなかったんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-08-22 01:29:19)(良:1票)
6.  ウィリーズ・ワンダーランド 《ネタバレ》 
ヤバい、ヤバい、ヤバい、ニコラス・ケイジがとにかくヤバいんです。なんせ彼の映画人生でもたぶん初だと思うけど全編で一言もセリフなし、数か所で唸り声を漏らすだけ。『ドライブ・アングリー』や『ゴースト・ライダー』のときのような風貌のキャラで黒づくめのグラサン・髭面・革ジャン姿できめているのに、サイコキラーの霊が支配する廃テーマパークに閉じ込められるとキャラクター・デザインのTシャツに着替えて真面目に清掃に励む。タイマーが鳴ると悪霊と対峙していても必ず冷蔵庫の缶ドリンクを一本飲み干してなぜかピンボール・マシーンで遊ぶ。悪霊が憑依したイタチやカメやワニのキャラクター・ロボットと死闘を繰り広げるわけですが、こいつらがみなほぼ秒殺、というかニコジーが異様に強すぎです。その倒し方もほぼ“惨殺”というレベルで、返り血ならぬ返りオイルを浴びてドロドロになるニコジー、でもそのあとはきちんとTシャツを着替えるところがなんか可笑しい。最後までこの男の素性は不明のまま映画は幕を閉じるのですが、こういう不条理極まりないストーリーは好きです。なかなか有能な清掃員でした。この呪われたテーマパークと因縁があるヒロインがニコジーと絡むわけですが、彼女が連れてきた若造たちがあまりに死亡フラグを立てすぎでもう笑うしかない。中には怖い目に遭ってる最中にエッチし始めるカップルまでいるんですけど、あまりにホラー映画の定番通りでなんか微笑ましい。 ここ10年に借金返済のため山のような数のB級作品出まくっていた彼のフィルモグラフィ中でも、出色の出来なんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-08-10 21:41:06)(良:1票)
7.  ウエスト・サイド物語(1961) 《ネタバレ》 
ビリー・ワイルダーとならんで幅広いジャンルの映画を撮ってきたロバート・ワイズ、彼に二度のオスカーをもたらしたのが本作と『サウンド・オブ・ミュージック』というどっちもミュージカルだったというのは、ちょっと不思議。だって彼が本当にこだわっていたのはSFだったのにね。それまで音楽映画にすら縁がなかった彼がチョイスしたのがブロードウェイでヒットした『ウェスト・サイド・ストーリー』、オリジナルの演出家のジェローム・ロビンスを引っ張ってきて共同監督したけど、ロビンスは途中で解雇という後味悪い結末。この二人、言ってみれば東宝特撮における本多猪四郎と円谷英二みたいな位置づけなんでしょうね。 本作と『サウンド・オブ・ミュージック』および『マイ・フェア・レディ』が60年代三大ミュージカル映画という評価には誰も異存がないでしょうが、個人的には昔から本作がいちばん苦手なんですね。シェークスピアの悲劇を現代NYのチンピラ・チームの抗争に置き換えるという発想はたしかに斬新だったんでしょうけど、古いのかもしれないけど“明るく楽しい”という要素がないのは生理的に合わないんですよ。60年代に入ってMGMミュージカルのような作風が死滅してゆくのを象徴するような作品でもあるわけです、まあこれが行き着いた先が『ダンサー・イン・ザ・ダーク』なんでしょうね。また当時はまだ世間に知られていなかったけど、主要キャストの歌唱がほとんど吹き替えだというところも引っかかるんですよ。ナタリー・ウッドなんて自分の歌がマーニ・ニクソンに吹き替えられていたのを完成するまで知らなくて激怒したってのは有名な話ですが、こりゃあ日本の口パクアイドル・グループよりひどいですよね、だっていちおう本人たちの歌唱が流されるんですから。たしかに『トゥナイト』や『アメリカ』は歴史に残る名曲ですけど、この映画の見どころはダイナミックなダンス・シークエンスの数々じゃないかと思います。ボブ・フォッシーやはたまたマイケル・ジャクソンまでその影響を受けたアーティストは数知れず、本作の最大の功績なんだと思います。 スピルバーグが本作をリメイクしたそうですが、彼がミュージカルを撮るなんて想像すらしなかったですよ。彼もSFがホーム・グラウンドのような人ですから、手掛けてきたジャンルを考えるとある意味で21世紀のロバート・ワイズなのかもしれません。でもなんか観るのが怖い様な(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-20 15:23:36)(良:1票)
8.  ウィッカーマン(2006) 《ネタバレ》 
実はオリジナル版より先にこっちを観てしまったので、当初の印象はさほど悪くはなかった感じです。その後に73年製作のオリジナルもDVD購入できて、両者の比較ができました。比べてみると、オリジナルにある強烈なカルト色が薄められてしまっていると結論付けできますが、良くも悪くもハリウッド映画という感じでしょうか。その大きな相違点は、ニコラス・ケイジが島に来る理由が失踪した元婚約者からの突然の手紙だというところで、このハリウッド映画にありがちな設定がけっきょく本作の酷評の原因だったと思えます。オリジナルのハウイー巡査部長が持っていた厳格な信仰という要素はニコジーには皆無で、失踪した娘を探すサスペンス劇としての演出に重点を置きすぎたというのも失敗だったのかも。オリジナルのハウイーは“童貞かつ賢く愚か”という要素を持った人物として愚者パンチの扮装をするわけですが、そう言った裏の意味を削り取った本作でニコジーがクマの着ぐるみをかぶるというのは笑うしかないです。まあぶっちゃけてしまえばオリジナル版が現代の感覚からしてもぶっ飛びすぎで、現代劇として再構築すればこんな感じになるのは当たり前だったかもしれないし、ここまで世界中でダメ出しされているのはちょっと可哀そうかな。それだけオリジナル版が偉大だということかもしれませんが、なんせ永い間ソフトもリリースされなかったカルトなので、観たことある人は少ないと思いますよ。 ニコジーが出演・プロデュースした作品中で、本作がおそらくもっとも酷評されている映画じゃないかと思いますが、そろそろ勘弁してあげてもいいんじゃないかな。まあ好きが高じて『ウィッカーマン』をリメイクするという暴挙(?)をやってのけた彼の行動力だけには、敬意を払ってあげようじゃないですか。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-05-17 19:26:26)
9.  動く標的
フィリップ・マーロウ、サム・スペードと並んでロス・マクドナルドが産み出したリュー・アーチャーはアメリカ・ハードボイルドにおける三大私立探偵の一人といって過言はないでしょう。実はスペードは、ハンフリー・ボガードが『三つ数えろ』で演じた以外はスクリーンに登場していないのですが、何故かハーパーと改名されちゃってるけどアーチャーもポール・ニューマンが演じただけなんです。でもこのニューマン演じるリュー・ハーパー(アーチャー)は、彼の全盛期の出演だけあって渋さとカッコよさではオールタイム・探偵映画の中でもベスト1なんじゃないでしょう。 名手ウィリアム・ゴールドマンの最初期の脚本であるわけですが、ロスマク特有の複雑なプロットと心理描写を上手く脚色できなかったのは痛いですね。どこかストーリーを追うだけで必死という脚本で、いくらニューマンのハーパーが魅力的といっても映画としては高い評価はできないですね。せっかく“ハードボイルド女優といえばこの人”となるローレン・バコールも出演してるんだから、もうちょっと彼女の見せ場を作って欲しかったところです。シェリー・ウィンタースも勿体なさを感じる使い方でした。 ハーパーが目覚ましに起こされて出がらしでコーヒーを淹れるまでのタイトルバックを観てなんかデジャヴ感がありました。そう、あの有名な『傷だらけの天使』のオープニングが、ショーケンの飲んだのが牛乳という違いはあるけど進行が同じなんです。きっとこの映画が元ネタだったんですね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-05-04 22:24:41)
10.  ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 《ネタバレ》 
あのゲイリー・オールドマンがウィンストン・チャーチルに扮してオスカーを受賞するなんて、まさに“この世界は捨てたもんじゃない”ですな。だって『レオン』の『シド・アンド・ナンシー』の『二ル・バイ・マウス』のオールドマンですよ、それが歴史上の偉人とはいえ体制側のチャーチルを演じるなんて、「お前、転向したのか!」とツッコミを入れておきます。まあ辻一弘の腕前ならば白人の男優なら(女優でも?)誰でもチャーチルのそっくりさんを造り上げることができそうですが、キレ芸が持ち味のオールドマンが少々エキセントリックなところがあるチャーチルを演じるのに適役だったとは、このキャスティングを思いついた人、GJです。 お話しはチャーチルが首相に就任した1940年5月10日からの一カ月あまりの出来事、まさに彼が体験した“もっとも陰鬱だったとき(原題Darkest Hour)”というわけです。劇中たびたび描かれていますがチャーチルはそれまで政界では嫌われ者の問題児、なんとジョージ六世にまで嫌われていたんですね。失敗したけど初の敵前強襲上陸作戦であるガリポリ戦を立案したり、戦車の開発で中心的な存在だったり、戦略的なアイデアを発案するのが得意でもありまさに戦争指導するために生を受けた人と言えるでしょう。それだけに大戦終了直後に総選挙で敗北して退陣したのは象徴的だったと言えるでしょう。余談ですが退陣はポツダム会談の最中で、「なんで選挙介入しなかったんだ?」と出席していたスターリンが驚いたそうです。そりゃ、ソ連と一緒にされてもねえ(笑)。 「ぜったいに降伏しない」「死ぬまで戦う」という英国庶民の反応を見ていると、太平洋戦争末期の日本とどこが違うんだろうと、なんか複雑な気分になります。まあ結果的に勝ったから美談になると言っちゃうと、身も蓋もないんですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-12-27 22:00:38)
11.  丑三つの村 《ネタバレ》 
ビデオリリースされた当初に観た記憶では、出てくる女優がみんな脱いでいた感じでしたが、観直してみると五月みどり・池波志乃・田中美佐子の三人だけだったんです。三人の中でボリュームが不足している田中がいちばん脱ぎっぷりがイイ、彼女わかい頃は頑張ってたんですね。でもヒロイン扱いの田中はもちろん惨劇の前に村から出て行った五月もけっきょく殺されず、ひとり池波だけが壮烈な殺され方をされ、これって女優としては悲惨な扱いなのか美味しい役どころだったのか微妙です。異端児プロデューサーとして名をはせる前の燻っていた時期だったので、古尾谷雅人のキャラには自分の心境が重ねられている、と奥山和由は語っています。その古尾谷が演じる継男には精一杯感情移入できるように撮ってはいますが、古尾谷の狂気をはらんだような演技はそれを許してくれません。劇中二か所の「皆さま方…」とカメラ目線で古尾谷が語り掛ける場面にはメタ構成の意図があったのかもしれませんけど、継男の狂気が最大限で伝わってきます。とくに最後の「皆さま方よ、サヨナラでございますよ」は、古尾谷雅人の悲しい最期を予言しているみたいでなんかゾッとします。彼の代表作は、やはり本作だったと言わざるを得ないでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-12-06 00:44:14)(良:1票)
12.  宇宙大征服 《ネタバレ》 
本作は巨匠ロバート・アルトマンの商業映画の実質初監督作となりますが、あのアルトマンの処女作がハードSFだったとは驚きです。 60年代米ソの宇宙開発競争がたけなわの時分、人類初の有人月面着陸がソ連に先越されそうな情勢になってきました。アメリカはアポロ計画が始まったばかりで月・地球を往復できる機材が完成にはほど遠い状態。そこでアメリカはトンデモない計画でソ連を出し抜こうとします。それはジェミニ計画の有人カプセルで月面に着陸し、直前に送り込んだシェルターにアポロ計画が進行して迎えに行けるまで宇宙飛行士を籠らせるという特攻隊みたいな無茶なプランです。実際にはその機材が完成するまで半年なのか一年以上かかるのかは未知数で、それまで定期的に酸素や食料といったサバイバルの必須物資をロケットで送り込んでシェルター内の飛行士に耐えてもらうという寸法。そして反軍風潮が強い世情を考慮して、一人しか乗れないカプセルには訓練された軍人ではなく民間人を乗せるとなり、選ばれたのが退役軍人で今は民間人のチームの一員ジェームズ・カーンでした。 実はこのトンデモ計画はアポロ計画が躓いたときのいわば“プランB”の一つとして検討されたものだそうで、もちろん具体化しませんでした。“もしこのプランが実行されたら…”というifを映像化したわけで、これはなかなかユニークな視点のSFだと思います。前半は選ばれたジェームズ・カーンの訓練が主体、本来予定されていたロバート・デュバルがサポに回されてカーンを徹底的に虐めます。なんで民間人にこだわるのかのロジックはイマイチ理解不明でしたがね。打ち上げなどは実際のジェミニ計画の映像が使われ、宇宙空間ではカプセル内のカーンの視点だけで表現、低予算ながらいろいろ工夫がされています。音楽担当がレナード・ローゼンマンで、妙にどっかで聞いたことある劇伴だと思ったら、この人『コンバット』の音楽担当でアルトマンもこの映画を撮るまで『コンバット』のディレクターをしていたという繋がりがあったわけです。 実は打ち上げの六時間前にソ連が月着陸船を打ちあげてており、アメリカが先を越されてしまった可能性が出てきて、そのプレッシャーが月面着陸でのカーンの判断ミスを誘います。そこに至るまでもトラブル続きで、シェルターを見つけられないカーンの酸素残量が尽きようとするし地球との通信も途切れてしまいます。そして月面を彷徨う彼が見つけたものとは… ラストも感動的に持ってゆくのを避けた、いかにもアルトマンらしい幕の閉め方でした。緊迫感に満ちたハードなストーリーテリングで初監督作としては上出来だと思いますけど、例によってアルトマンは本作をなかったことにして欲しかったみたいです。実は編集段階でアルトマンはワーナーから出禁状態にされ、ラストはアルトマンを排除して撮り直されたものなんだそうです。オリジナルは、もっと悲劇的なんだそうです。町山智浩氏いわく“巨匠の黒歴史シリーズ”の一編でした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-12-02 23:51:27)
13.  ヴィランズ 《ネタバレ》 
鳩のマスクをつけた男とユニコーンのマスクをした女がグダグダの手際でコンビニ強盗、ところが逃走中にガス欠して車を盗もうと忍び込んだ一軒家の住人はトンデモない夫婦だった。開幕から二十分ぐらいは快調にとばします。このバカップル強盗はビル・スカルスガルドとマイカ・モンロー。両者とも『ITイット』シリーズや『イット・フォローズ』で最近顔を売ってる若手ですが、スカルスガルドは父親が北欧系のステラン・スカルスガルドとは思えないラテンな風貌、まるでスティーヴ・ブシェミの弟って感じです。サイコ夫婦の方でも気持ち悪いおばさんを演じたキラ・セジウィックの怪演が際立ちます。バカップルは地下室で監禁されている少女を発見して一緒に逃げようとしますが、そこから二人は悪党“Villains”から善人にキャラ変してゆきます。 ぶっちゃけ、この映画は少女の扱いで失敗していますね。そしてコメディの方へ行くのかと思えば尻つぼみになり、ホラーになるのかと思えば肩透かし、バカップルの脱出劇じたいはありふれた展開なので要はどの方面に向けても中途半端な脚本だったというしかありません。終わってみれば、実はバカップルの純愛物語だったというわけですが、うーん、この映画にそんなことを期待した観客はいますかね?
[CS・衛星(字幕)] 4点(2020-10-25 09:43:28)
14.  ヴァンパイア/最期の聖戦 《ネタバレ》 
ジャーン、出ましたB級映画マエストロ・カーペンター親父の快作です。この映画のヴァンパイアは魔鬼と呼ばれる大物ヴァンパイアの手下みたいな存在で、ヴァンパイアも血を吸うというよりも肉を喰い破って血をすするという感じで、カーペンター流ヴァンパイアは豪快です。特に親玉魔鬼は長い爪が凶器で、その爪で人体縦斬りを披露するは一撃で首チョンパするはで、この映画は『ゴースト・オブ・マーズ』を凌駕する首チョンパ祭りでした。日光を浴びると消滅するというのはヴァンパイア映画のお約束ですが、まるでねずみ花火の着火直後みたいな勢いで炎を噴き上げるヴァンパイアの死にざまがまた豪快です。また吸血=性行為というフロイト的解釈もきっちり取り入れています。基調は西部劇ですが、ヴァンパイアというか悪魔崇拝とカトリック信仰を結びつけちゃうところなんか、いかにもカーペンターっていう感じでした。まあ、マクシミリアン・シェルの枢機卿が出てくれば、オチはたいがい判ってしまいますがね。 それにしても、ボールドウィン・ブラザーズってみんなあんな体型なんでしょうかね?
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-10-17 00:33:43)
15.  ウィーアーリトルゾンビーズ 《ネタバレ》 
これはちょっと衝撃を受けましたね。サンダンス映画祭で認められたってのも納得です。初期のファミコンRPGみたいな直上から撮るカメラアングルは和製というか黒いウェス・アンダーソンみたいなストーリー・テリング。四人のゾンビーズたちの会話が短文ショートメールのやり取りをそのまま発声してるみたいな感じだけど、これはかえってリアルです。リトル・ゾンビーズが結成されるのは開幕して一時間過ぎてからですけど、自分はこの前半がとくにツボでした。この映画はリトル・ゾンビーズのサクセスストーリーなのかと思っていたら、結成後はそこから30分であえなく解散。キッズ・パンクという感じの曲は演出なのかはたまたこれが実力なのか判断に迷いますが、まああんまり上手いバンドとは言えない。でもこの曲のMVが公開されてから一年半も経たずに200万を超える再生回数になっているのはびっくりです。やっぱ個人的に刺さったのは、“タコの知能は三歳児”の方ですかね(笑)。そしてバンド解散してからラストまでの三十分は実にシュールな展開ですが、最後に夢オチ的に人生リセットなんて展開にならず明るい展望を感じさせてくれるのは良かったです。四人の親や親せきたちのキャスティングはけっこう豪華な顔ぶれ、でも何気に凄いのはサブカル界隈からのカメオ出演の多さでしょうな。いとうせいこうも出演しているそうですが、どこに出ていたのか皆目見当がつきません、ホームレスのモブ・ミュージカルのところかな?あとゾンビーズのプロデューサー役の佐野史郎の役名が加茂慶一郎と言うのは、アイドルプロデュースも手掛ける有名音楽プロデューサーである加茂啓太郎のパロディですね、こういう判る人には判る小ネタは嬉しいです。 この映画はこれからカルトとして評価が高まってゆくのは間違いないでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-08-04 22:36:03)
16.  ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷 《ネタバレ》 
監督が『プリデスティネーション』のスピエリッグ兄弟で、同作で強烈な印象を残してくれたサラ・スヌークも出演とくれば、どうしても期待しちゃいます。 題材は有名なウィンチェスター・ハウスで、30年以上も屋敷を増築させた未亡人サラをヘレン・ミレンが演じるとなれば、けっこう怖いんじゃないかと身を正して観始めました。ヘレン・ミレンが初めて姿を現すシーンは期待通りの不気味さでしたが、ストーリーが進むにつれてどんどん良心の呵責に苦しむ普通のおばあちゃんになって行くのにはちょっと期待はずれでした。彼女が魔女的な怪演を観せてくれるのかと思いましたが、デイム・ヘレンを引っ張り出してきてそんな三流ホラーみたいなことは、さすがに出来なかったんでしょうね。サラ・スヌークもごく普通の母親で、これなら別の女優でも良かったんじゃないでしょうか。後半の亡霊が正体を現すきっかけは明らかに1906年のサンフランシスコ大地震で、こういう史実やサラ・ウィンチェスターの実際のエピソードが上手く取り入れられた脚本だと思います。後半は単なる亡霊バトルのアクションですが、前半の心霊ホラー・パートもよく考えたら突然デカい音で脅かす例のパターンが多かったのはちょっと残念です。 サラが増築を続けた理由は実際もこの映画の通りだったみたいです。でもそんなこと言ってたら、最近鬼籍に入ったAK47を開発したミハイル・カラシニコフとその一族はどうなっちゃうんでしょうかね。旧ソ連の大戦後における最良の工業製品はカラシニコフAK47であると、現在のロシアでも賞賛されているぐらいですから、何をかいわんやです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-11-19 22:15:19)
17.  ウィンター・ウォー/厳寒の攻防戦 《ネタバレ》 
上映時間三時間超の全長版で鑑賞。今までの公開バージョンよりきっちり一時間長いわけですが、はっきり言って冗長というのが偽らざる感想になります。対ソ情勢が悪化してゆき戦闘が始まるまでに一時間近く費やします。その間は記録映像など一切使わず、招集されてゆく兵士たちの目線だけのストーリーテリングですから、フィンランド人ではなく予備知識を持ってない者には戦争にいたるまでの経緯が判りにくいでしょうね。戦闘場面では陣地を守るフィンランド軍に戦車を随伴させたソ連歩兵が攻めてきて撃退される、延々とその繰り返しを見せられたような気がします。フィンランド軍は激しい砲撃を浴びせられるのですが、これが意外と損害を与えません。至近距離で砲弾がさく裂してたしかに泥や土塊を浴びますが意外と無傷、中には狭いタコつぼ陣地の中で砲弾が着弾しても平気というシーンまであり、さすがに?でした。最前線でもサウナだけはきちんと作って休養する、さすがフィンランド人と納得させられるシーンもあります。あとこの冬戦争期間中はとてつもない寒波が続きソ連軍なんかは森の中で連隊全員が凍死していたなんて史実がありますが、暖冬だったのかさすがに厳冬期では野外ロケは無理だったのか、映像からはその冬らしさがあまり伝わってこなかったと感じました。 史実ではフィンランド軍の十倍近い圧倒的な兵力差のソ連軍が大損害を被り、半年近く攻めてからくも休戦に持ち込んだというところです。それでも領土の一割近くをソ連に割譲させられたので、フィンランドには苦い結末だったことは否めません。ソ連は開戦早々にお得意の傀儡政権まで準備して完全にフィンランドを併合するつもりでしたから、独立を維持できただけでも大勝利と言えるんじゃないでしょうか。ソ連・ロシアと地続きの国境で接するということは、昔も今も大層厄介なことであることは変わらないということです。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2018-06-14 22:53:07)
18.  ウォリアーズ(1979) 《ネタバレ》 
中二病丸出しのプロットが強烈ですよね。コニーアイランドがシマのウォリアーズが地下鉄に乗って(ギャングのくせにちゃんとカネを払って乗るのがカワイイ)ブロンクスでのストリートギャングの訳のわからない大会に出張って、騒動に巻き込まれて這う這うの体でまた地下鉄に乗ってコニーアイランドに逃げ帰ってくる、要はそういうお話しです。ウォリアーズをつけ狙うギャングたちは組ごとにキャラ付けされているのが笑えますが、如何せんどの組も弱すぎです。意味のない臭みが強烈なセリフの連続はギャグなのかなと首を傾げさせられますが、ストリートギャングなんてこんな薄っぺらな連中なんだよと訴えたかった、いやそんなわけないですよね(笑)。 でも全編を貫く不穏な空気には抗しがたい魅力があります。NYが舞台とは言ってもまるでマッドマックスの文明崩壊後の世界みたいです。この世界感にプラス1点進呈いたします。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2018-03-23 22:00:52)
19.  ウエストワールド 《ネタバレ》 
ジェームズ・キャメロンは「ターミネーターは自分が観た悪夢がアイデアの元だった」と語っていますが、どうしてどうして、実は昔観たこの映画がほんとはネタ元だったんじゃないの(笑)。と誰もが突っ込みたくなるほど、ひたすら追いかけてくるユル・ブリンナーの姿はターミネーターそのものでした。まあマイケル・クライトンも、自身の原作をパワーアップさせて『ジュラシック・パーク』を書いたようなものだから、どっちもどっちです。 そのアイデアはともかくとして、この映画の凄いところは人間的なドラマが皆無ということでしょう。序盤で二人の男は友人で、一人はこのテーマパークのリピーター、もう一人は最近妻の不貞が原因で離婚した傷心の弁護士という、もう最低限の情報だけ提示されますがあとはこの二人と他の客たちがロボット相手にやりたい放題するのを見せるだけ。並行してなぜかロボットたちの調子が悪いのに苦慮している運営側の描写がありますが、このパークの内情やなぜロボットたちが狂い始めたのかの説明や謎解きはいっさいなしです。よく考えると、クライトンの前作『アンドロメダ・・・』に似たストーリーテリングだと言えますが、本作の方が徹底している気がします。クライトンにとっても初監督作ですから手腕が未熟だったわけで、それがこの映画をまるで実験映画みたいな奇妙な味わいを持たせることになったのかと思います。珍作と呼んでもイイかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-01-13 23:22:52)(良:2票)
20.  宇宙戦争(1953) 《ネタバレ》 
H・G・ウェルズがこの原作を書いたのは1898年、それから55年後に映画化されても十分に通用するストーリーとプロットだということは驚くべきことですね。もちろん、さらに52年後にスピルバーグがさらに進化した映像を見せてくれましたが、その時には誕生から107年たっていたわけです。 冒頭に火星人が侵略先を太陽系の惑星から探して地球に決めるまでが説明されますが、まるで太陽系だけが全宇宙みたいな見方はいかにも19世紀的かとも思います。でもこの感覚は、この映画の製作当時も大して変わってなかったんじゃないでしょうか。スピルバーグ版ではきっちり再現されていましたが、本作では火星人の乗り物(というか兵器)であるトライポッドが角の生えた円盤に変わっています。でもこれが異様にカッコよいデザインで、その後のSF映画に多大なる影響を与えています。トライポッドこそ登場しませんでしたが火星人はなぜか“3”に拘る性質があるのが面白いです。3機一組で必ず行動する円盤、三角形描くような攻撃パターン、そして肉体的にも瞳孔が3つある、これは原作通りなのか製作者の意図なのか興味が湧くところです。 製作者は平和主義者だったウェルズの死後ということもあって、火星人を明らかにソ連のメタファーとして当時の冷戦状況を煽るような撮り方だなと感じます。原作が持っていたウェルズの思想的な考察はハリウッド映画人たちには理解すべくもなく、格好の好戦プロパガンダにされてしまったわけです。もっとも映画人たちは政府から命令されたり援助を受けて撮っているわけではなく、あくまでこういう単純な扇動が大衆に受けるからSF侵略ものを題材としてチョイスしていただけなのです。50年代のこういうハリウッドの風潮が、SF映画というジャンルの発展に多大なる悪影響を与えていたのは、残念なことです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-11-20 11:42:06)
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