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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2382
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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301.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
やっぱり日本映画界はできる子だったんですよ、でもこれだけグロかったら地上波放送は絶対に無理ですね。と思ってよくクレジットを眺めたら、この映画にはTV局が製作委員会に加わってないんですよ。日本映画界をここまでダメにしちゃったのは、製作委員会に大手TV局が名を連ねていることなんだなと、確信した次第です。 主人公とJKが山に迷い込むまでのこの世の終わり感は半端なくて、ここだけでもハリウッドのゾンビ映画と真っ向勝負ができるでしょう。「テレ東が通常放送をやめたら日本は終わり」というネットギャグを盛り込んでいるところなんか苦笑ですが、これも製作にTV局が絡んでないから可能な脚本だったのかも。半面、モールにたどり着いてからのモタモタ感は残念です。確かに立て籠もり軍団の構成には違和感があります。男女とも平均年齢が若すぎるし、とくに男は徳井優を除くとヤカラみたいなのがほとんど。その中でニートみたいな吉沢悠がリーダーとして采配を振るえたというのは、なんか説得力がないんですよね。大泉洋のヘタレぶりは観ていてイライラさせられるほど上手いです、銃刀法違反を極端に気にする訳の分からない小心さも笑えました。まあなんでこんな漫画アシスタントがクレー射撃用ライフルを持っているのかは謎ですけど(笑)。 これは原作ありきなんでしょうけど、有村架純の身に何が起こっていたのかは、すごく気になるところです。続編製作を希望です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-10-15 20:04:14)
302.  いのちの戦場 -アルジェリア1959- 《ネタバレ》 
アルジェリア戦争がテーマの映画と言えば、私は未見ですけど『アルジェの戦い』が有名です、いや言い直すとこれしかなかったというのが正解でしょう。アルジェリアが独立するためにフランスと8年間も戦争状態だったということですが、独立を目指す武装組織との戦闘ですからこれを“戦争”と呼ぶのはちょっと違う気がします、1996年までフランスが公式に戦争であったと認めてこなかったのは、国際法的には正しかったのかもしれません。韓国が東学党の乱のことを「甲午農民戦争」と呼べと最近しつこく主張していることと、どこか通じる理屈があるのかもしれません。どちらにしてもこの紛争は「両者とも常軌を逸した血なまぐさい殺し合い」だったことは確かです。 アルジェリアと言うと砂漠というイメージですが、この映画で見せられるアルジェリアは、ゴツゴツした岩場が続く山また山の風景の連続です。フランス兵たちは山頂にある砦みたいな基地から出撃し、武器装備も大したものも持っていない。まああんな山地では戦車も役に立たないし、歩兵に頼るしかないでしょうね。でも考えてみてください、1959年と言うとトリュフォーやゴダールがヌーヴェル・ヴァーグを撮り始めたころで、パリやフランス国内は当時の日本と比べても遥かに生活水準が高かったんですよ。そんな国を離れてアルジェリアくんだりで命のやり取りをしなければいけなかった若者たちは、ほんとに可哀想です。たぶんこの映画が『アルジェの戦い』と決定的に違うところは、アルジェリアの組織FNLがフランス軍に負けず劣らず残虐な殺しを繰り返していたことをきっちり描いているところですね。フランス軍の中にもFNLと敵対するアルジェリア人兵士がいたり、この戦争の救いようがない悲惨さを若い中尉と古参軍曹の視点から地味ながらもきっちりと描いていて好感が持てます。新米中尉が戦争の狂気に犯されてゆくところは定石ですけど、軍曹までだんだんおかしくなっちゃうのは怖いです。 地味な兵器ばかり登場していますが、考証はかなり正確だったと思います。ゲリラの使っていた機関銃はドイツ軍のMG42でしたが、この機関銃は発射速度が猛烈に速いことで有名です。森の中で火を噴くMG42、まるでチェンソーで刈られたみたいに飛び散る木枝がその威力をよく示していました。撃たれたフランス兵たちが古参兵までパニックになってしまうのは、無理もありません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-09-16 21:56:28)
303.  エルム街の悪夢(1984) 《ネタバレ》 
70~80年代には、レザーフェイス、ジェイソン、ブギーマン、という殺人ホラーのスター・キャラが続々とスクリーンに登場しましたが、やはりフレディ・クルーガーが最凶のキャラでしょう。他のキャラとは違って、初っ端の登場シーンからも判るように、明らかにこの世の存在じゃないと観る者に理解させます。ウェス・クレイヴンの頭の良いところは、映画製作者や観客には嫌われている夢オチというストーリーテリングを逆手にとって、観客までも夢と現実の境目が判らなくなるように誘導するところでしょう。後年『スクリーム』でホラー・ジャンルを徹底的に再構築したように、彼は伝統的なホラーとは一線を画する視点で撮る技巧をものにしている知性を持っていて、映画業界に入る前は大学の教員だっただけはあります。魔界の者のくせにフレディーはナンシーの攻撃にはダメージを受けて、火だるまにまでされてしまいます。けっこう弱いじゃないかと思わせておいて、悪夢の中の魔物らしく実は何の傷も負っていないところなどは、コミカルでさえあります。殺し方もエグくて、ジョニー・デップなんか若くて精力がみなぎってますから血しぶきも半端じゃなかったですね(笑)。ナンシーにあれだけ懇願されても肝心の時には眠りこけているし全編にわたっても何の活躍もしなかったし、まあ当然の最期だったんでしょうね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-09-06 22:10:35)
304.  ゴングなき戦い 《ネタバレ》 
日本では劇場未公開でDVD化もされていない、ジョン・ヒューストンの隠れた秀作ボクシング映画です。製作年は72年ですから、いわばジョン・ヒューストンが撮ったニューシネマと呼ぶにふさわしいかもしれません。 かつてはそこそこ名の知れたボクサーだったステイシー・キーチが、何気なく寄った体育館で若者ジェフ・ブリッジスと出会います。ちょっと打ち合っただけでその才能を見抜いたキーチは、ブリッジスにジムに通うことを勧めます。普通だったらこのブリッジスがボクサーとして才能を開花させてゆくというのが王道のストーリーテリングですけど、そこは巨匠ヒューストンの脚本ですから捻った展開になります。アマ戦にデビューするまでは順調だったけどあっさり敗退してしまうブリッジス、その後は今一つ伸び悩むうえにガールフレンドを妊娠させて二十歳前で所帯持ちになってしまいます。実はこの映画では冒頭の出会いからこの元ボクサーと若者は上映時間の三分の二を過ぎるまで再会せず、完全にアル中のスーザン・ティレルと同棲した元ボクサーが、この女と別れてプロとして再起を図る姿が並行して描かれます。 再デビューしても相変わらず展開はすっきりしません。初戦は勝つことができたけど、ファイトマネーのことでトレーナーとは喧嘩になるし、また彼も酒浸りの生活に戻ってしまいます。ブリッジスは所帯を持ちながらも地味にカムバックして次第に実績を重ねてゆきます。町で偶然に出会った二人、ブリッジスはこのたちの悪い先輩を避けようとします。「せめてコーヒーぐらい付き合えよ」と連れていかれたダイナーで、肩を並べて無言でコーヒーをすする二人の姿に強烈な印象が残るラストです。 『ロッキー』のテーマが鳴り響くような展開がまるでない、本作は観る人によっては耐え難いダウナー映画かもしれません。でもこの二人のボクサー、そして私にもあなたにも、まさに人生とは“ゴングなき戦い”に他ならないんだとしみじみ感じさせられました。原題とは全然かけ離れてはいますが、この邦題のセンスは素晴らしいと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-08-25 23:17:32)
305.  独立機関銃隊未だ射撃中 《ネタバレ》 
この映画の陰の主役と言えるのは、三橋達也たち五人の兵士が撃ちまくる九二式重機関銃です。使われているのはもちろん撮影用のレプリカでしょうが、金属を多用して製作されているので、質感がとてもリアルに感じます。機関銃発射までの手順も丁寧に描写しており、脇に控える兵士が保弾盤を使って弾薬補給するところなんて実感たっぷりです。“狙撃機関銃”の異名をとるだけのことはあって、スコープを使って射撃するシーンもあります。昭和三〇年代の映画ですから、実際にこの機関銃を撃った経験があるスタッフもいたんじゃないでしょうか。そういや軍隊経験のある親父も、「九二式重機は撃ちやすくて命中率が高い、陸軍で最良の兵器だった」と回想していました。 ほぼトーチカの中だけで物語が進行する密室劇の様な趣きもあって、日本版『Uボート』みたいなところもあります。敵の砲撃を雨あられと浴びるトーチカの中に籠る恐怖は、爆雷攻撃を受けるUボート乗員の絶望に通じるものがあるんじゃないでしょうか。三橋達也がまた自然でリアルな演技で、この軍曹についてゆけば生き残れるんじゃないか、と頼もしく感じてしまうぐらいです。でもそんな有能な下士官に率いられていても、所詮は多勢に無勢でソ連軍に叩かれて全滅してしまうわけです。その各人の死にざまもけっこうエグくて、佐藤允は火炎放射器に顔を焼かれてモンスターの様な顔貌になってしまうし、志願兵は爆破されたトーチカの中で文字通り肉片になってしまいます。明らかにラストは『西部戦線異状なし』の模倣ですけど、それなりに雰囲気はよく出ていました。 この時期に製作された日本の戦争映画には反戦を主張するイデオロギーの道具の様な代物が多かった印象がありますけど、本作は戦争というか戦闘を真正面から描いていて、なおかつ反戦メッセージとのバランスも良くとれています。ただ少し残念だったのは、九二式重機関銃にかけるような拘りを攻めてくるソ連軍の描写にも見せて欲しかったところです。戦車なんかはまるで国籍・年代不明な代物で、まるでおもちゃ屋で買ってきたブリキ戦車をそのまま撮影に使っているような感じです。どうせプロップやミニチュアを造るんなら、センスさえあればいくらでもソ連戦車に似せることができるんですけどね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2017-07-31 22:40:33)
306.  帰ってきたヒトラー
このヒトラー役のオリヴァー・マスッチという俳優は、わかる人にはわかるんだけど生前のヒトラーの所作をよく研究していると感心しました。『最期の12日間』のブルーノ・ガンツよりもはるかにリアルだと思います。でもこれほど可笑しいけどだんだん笑えなくなってくる風刺映画には久しぶりに出会った気がします。『博士の異常な愛情』を初めて観たとき以来の衝撃かもしれません。あの女性局長は、ゲッベルスとレニ・リーフェンシュタールを合体させたようなキャラですね。こういうわき役たちもけっこう面白いけど、実はこの映画で最もキャラが立っているのは、ドキュメンタリー風に画面に登場してくる現代ドイツの大衆たちなんですよ。ヒトラーの「私を選んだのはお前たちだ」というセリフがこの映画の究極のテーマを判りやすく説明しているんじゃないでしょうか。この史実こそがドイツ人には耳が痛く、そして都合よく忘れようとしてきたことなんです。そういう視点で観ると、ヒトラー後のドイツ人の偽善をこれほど赤裸々に揶揄した映画はなかったんじゃないでしょうか。そう考えると、冷戦があったとはいえ戦後のドイツは狡猾に国際社会で立ち回ってきたものだと思います。組織の末端だったとは言っても東独の共産党政府の一員だった女性が、今や宰相として君臨して欧州の女帝とまで言われているんですからねえ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-07-13 23:15:44)(良:2票)
307.  007/ロシアより愛をこめて 《ネタバレ》 
『ゴールドフィンガー』と初期007シリーズのトップ評価を競っていますが、個人的には本作がコネリー・007の最高傑作だと思っています。主題歌“ロシアより愛をこめて”も、シリーズ中もっとも有名な歌曲なんじゃないでしょうか。そういえばエンドクレジットに“次は『ゴールドフィンガー』でお会いしましょう”みたいな文言があるのに気が付きました。このころにはもう007シリーズの世界的なブレイクが確定していたんですね。 本作から007お得意のガジェットが登場してきますが、まだ仕掛けスーツケース程度で可愛いものです。それよりも男と男は肉体勝負、男と女は色気で勝負、のハード路線で撮られているのがポイントです。ダニエラ・ビアンキはこの映画の撮影時はまだ22歳(!)、その美貌は歴代ボンドガールの中でも文句なしのNO,1でしょう。彼女はこの後ロクに映画に出演せず60年代終わりには引退しちゃったんですから、実にもったいないことでした。ボンドに対するロバート・ショウがこれまた“記憶に残る悪役ベスト・ランキング”の上位にランク・インすることは必定です。ボンドとの列車内での格闘はまさにヘビー級戦で、迫力満点です。アクション・シーン全般もVFXをほとんど使わない肉弾戦が中心なので、引き込まれてしまいます。当時としては濃厚だったと思われるお色気路線もふんだんで、これぞ“大人のアクション映画”と呼ぶにふさわしいと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-06-28 22:16:40)(良:1票)
308.  ビバリーヒルズ・コップ 《ネタバレ》 
エディー・マーフィーと言えばアクセル・フォーリー刑事、ハリウッド俳優の中でもこれほど自身の個性にピッタリの当たり役を得た人は他にいないんじゃないでしょうか。あまりにインパクトが強すぎて、彼はその後のキャリアで苦労することになるんですけど、それはまた別のお話し。なんでこのお話がこんなにウケたのかって考えると、デトロイトとビバリーヒルズという同じアメリカの大都会でありながらも天と地ほども違う国内格差を巧みに盛り込んだ脚本プロットに、そのカギがあったように思います。特に80年代は、凋落が始まったデトロイトとバブル景気に沸くLAを対比するという視点が、新鮮だったと思います。でも製作者たちも、まさかデトロイトが現在の様な悲惨な状況にまで追い込まれるとは予想以上だったでしょう。 とにかくこのシリーズは、マーフィーのマシンガントークを愉しむのが正解で、英語のヒアリングができなくてもその可笑しさが伝わるんですから大したものです。マーフィーを囲む面々もみんな生き生きとキャラが立っていて、悪役キャラが多いロニ―・コックスも上司と現場の板挟みで苦労する真面目な中間管理職を好演してます。ちなみにデトロイトのフォーリーの上司トッド警部を演じている人は、実は現職のデトロイトの警察官でロケハンでスカウトされたんだそうです。 そしてなんといっても素晴らしいのは音楽センスで、イーグルスのグレン・フライが参加しているという贅沢さ!“フォーリーのテーマ”なんかは耳にしたことがない人は珍しいぐらいで、私は“エディ・マーフィのテーマ”とひそかに名付けています。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-31 23:09:42)
309.  羊たちの沈黙 《ネタバレ》 
ヒッチコックの『サイコ』を完全に無視したハリウッドが遂に降参してオスカーを与えた、サイコ・キラー映画の完成形。このジャンルでは無数のフォロワーが挑戦を重ねているけど、いまだに本作を凌駕する作品は現れていません。またこのお話はクラリスとレクター博士の異常なラブストーリーで、上司のクロフォードを交えた三角関係の物語でもあります。 ジョディ・フォスターにとってもこの映画に出演してレクター博士と向き合うことは過酷な体験だったそうで、続編の『ハンニバル』には降板してしまいました。そうなると、映画史上もっとも印象に残るサイコ・キラーを演じながら、続編でも脳みそを嬉々として喰っちゃうアンソニー・ホプキンスの方が役者としての器が大きいのか、はたまたそういう素質を持っている人なんでしょうか。と言いたくなるくらい、レクター博士はまさに“人間エイリアン・モンスター”と呼ぶにふさわしい存在でした。なんせ自分に関わったり通り道にいただけみたいな人でも、クラリス以外は足元にいるアリを踏み潰すみたいに殺しまくるんですから。確かにこれでは本筋のサイコ・キラーのバッファロー・ビルの影が薄くなってしまいます、そしてここがこの映画の微妙なところなんですね。まあビルは単なる狂言回しだと思うしかないです。 監督のジョナサン・デミは言うまでもなくなくロジャー・コーマン一派ですが、この映画では奇をてらわずオーソドックスな撮り方でなかなかの手腕を見せてくれます。そりゃ主役ふたりがあれだけの演技を見せてくれれば、傑作になるってもんですよ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-26 21:15:01)(良:2票)
310.  お葬式 《ネタバレ》 
自分が喪主を務めた経験から閃いて一週間で書いた脚本なんだそうですが、その着想と切り口はさすがというしかなく、この一作によって伊丹十三自身も映画作家としての道を切り拓けたわけです。伊丹映画というと作りこまれたキャラの登場人物が特徴ですけど本作は逆に主人公夫婦が俳優というほかは出演者がみな平凡な一般人という設定です。山崎努もお得意の脂ぎったアクの強いキャラではなく、私生活の雑事からは逃げるタイプの優柔不断な男であるってのが新鮮です。この映画の凄いところは、“お葬式”という自身が葬られることも含めてどんな人間でも一度は体験する儀式を、その平凡な進行の中に潜む“可笑しさ”をまるで神の眼で見ているかのように客観的に描いているところなんです。こういう知的なアプローチのコメディはそれまでの日本映画にはほとんど皆無だったことを考えると、伊丹の才能は驚嘆すべきものがあります。さすがに長い俳優生活を経て映画を知り尽くしていただけあって、随所に見られる映画技巧はこれが初監督作とは信じられないですね。その後はどんどんその技巧に溺れるような作風になってしまったのは残念ですけど。 そして見るたびに感じるんですけど、メンヘラ愛人の高瀬春奈のキャラは果たしてこの映画に必要だったのかな、ということです。確かにあの爆尻と腋毛を見せつけるシーンはもう強烈で、現在ならあのシーンのおかげでR15指定ぐらいにされるのは必定でしょう。でもそこでカットバックを使って宮本信子がブランコで揺れるところを見せるのがまた強烈な印象で、あの横移動する木柱は夫の不倫に気づいている彼女の葛藤を表しているんですけど、それと同時に山崎努が高瀬春奈に行っている行為の暗喩にもなっているんです。伊丹の作品にはたいがい1箇所はエロシーンが入るのが恒例ですけど、どの映画でもハッとさせてくれます。彼自身もそういうのが好きなんでしょうけど、それにしてもこの山崎努と高瀬春奈のシーンは、伊丹の全フィルモグラフィ中でも最高峰のエロなんじゃないでしょうか。
[映画館(邦画)] 8点(2017-05-23 23:26:43)
311.  猿人ジョー・ヤング 《ネタバレ》 
恥ずかしながら、今までこの映画は怪獣・モンスター映画だとばかり思っていました。てっきりメリアン・C・クーパーが二匹目のドジョウを狙ったキングコングの二番煎じだとね。ところが本作のジョー・ヤング君はただのでかいゴリラそのものでしかなく、もちろん猿人であるわけがありません。ちょっとがっかりしましたが、これがどうして、けっこう面白いんです。レイ・ハリーハウゼンのストップモーション・アニメはキングコング当時よりも格段の進歩を見せており、ジョーとライオンの格闘なんか見事なシーンとなっています。でかいと言ってもしょせんはゴリラなんで街中に出て行ったら警察や軍隊にあっという間に仕留められちゃいますが、そこはナイトクラブの店内という閉ざされた空間で暴れさせるというところは脚本の妙味です。このナイトクラブでの破壊シーンはストップモーション・アニメと実写の合成が見事に決まっていますし、セット自体も大掛かりで迫力満点です。人間ドラマも良く撮れていて、悪役かと思っていた興行主オハラがジョー脱出に大活躍するようになるところなぞ傑作で、製作のジョン・フォードが助監督まで務めている効果が出ている感じがします。 ちょっとジョー君の顔つきがゴリラらしくないところが難点ですが、ラストのアフリカからのムーヴィー・レターのくだりは、なんかほっこりさせられました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-04-30 21:39:17)(良:1票)
312.  悪魔のいけにえ
『エクソシスト』のトラウマが残っていた時期なので同時代では観ていないけど、たぶん観なかったのは正解だったと思います。確かに低予算のなせる業で思ったよりスプラッター的な描写は少ないんですけど、映像とBGMと効果音がこれほど狂気にシンクロした映画は滅多に観れるもんじゃございません。たぶん公開時に観た人達は、これは実験映画なんだろうな、と思ったに違いありません。こんな凄い映画を撮ったトビーフーパーという人は天才かと当時は思われたかもしれませんが、その後のフィルモグラフィを観れば本作がいろんな要素が重なり合った幸運な偶然だったということが判ります(笑)。撮影直後に権利を買いたたかれて、可哀想にもフーパ―自身はこの歴史に残る金字塔からほとんど利益をもらっていないそうです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-03-29 22:50:00)
313.  スティック・イット! 《ネタバレ》 
スポ根ものもついに女子体操まで題材にするとはいよいよネタ切れかと思いきや、これがなかなか面白い掘り出し物だったんです。まずカメラと編集のキレがイイです。体操演技する女優たちをバスビー・バークレー風に捉えるショットにはミュージカル・ファンはニヤリとさせられるのは必定です。鉄棒や平均台などのガチな種目ではスタントダブルを使っているのは当然としても、女優たちとのつなぎが巧妙なので違和感は少ないです。もっとも、そのために体操演技のクライマックスになると引きの映像になってしまうのは致し方ないでしょう。何よりも体操やフィギュアスケートのような採点競技に対するアンチテーゼを前面に押し出した脚本は、かなり目新しいんじゃないでしょうか。コーチや審判員にガチガチに型にはめ込まれる選手たちを観ていると、旧共産圏のような全体主義国家が体操に強かったのは納得させられます。ジェフ・ブリッジスも、この手の映画ではお約束のダメコーチを単純に演じるのではなく、口八丁の商魂たくましい男を彼らしい巧みさで演じています。 ラストの選手たちのはっちゃけぶりを観ていると、「これは『スラップショット』の体操ヴァージョンなんだな」と気が付きました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-03-06 21:45:36)
314.  ヘイトフル・エイト 《ネタバレ》 
なんで“エイト”なの?はっきり言っちゃうと、登場人物は全部で10人じゃないですか。御者のО.Bはあまりにも無関係なので“ヘイトフル”に含めてないのかもしれないけど、後の一人はねえ… まあそんなことはどうでも良くて、タランティーノ版の密室サスペンスを愛でてみようじゃないですか。前半のストーリーテリングは何というかタランティーノ版人狼ゲームという感じでちょっとゾクゾクさせてくれます。というよりも、これはサミュエル・L・ジャクソンの独壇場という感じでしょうね。あの目玉をギョロギョロさせてめぐらす推理の冴えは、黒いシャーロック・ホームズと呼びたいぐらいです。サミュエルと言えばこれ、と有名な決め台詞“マザー・ファッカー!”がまったく無かった(たぶん)のは珍事です。そしてサミュエルがタマをぶち抜かれてからの後半は血しぶき吹き上げる阿鼻叫喚、やっぱりタラは我慢しきれなかったって感じですかね。ちょっと不満だったのはチャニング・テイタムで、あれは普通に凍死しちゃってますよ。凄かったのはジェニファー・ジェイソン・リーの死にっぷりで、もうここまでくるとほとんどホラーです。そしてタラ映画にしては珍しく余韻を残す終わり方、きっとサミュエルとウォルトン・ゴギンズの二人は死んじゃうんだろうな、と思ってしまいます。そこで気が付きました、この映画は『遊星からの物体X』を西部劇に再構築してたんですね。カート・ラッセルも出てるし(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-02-22 23:12:24)
315.  バリー・リンドン 《ネタバレ》 
蓮實重彦教授はたしか「劇中で正確に37回大笑いさせていただきました」と映画芸術のベスト10選出で本作を評価(?)していた記憶がありますが、再見するにあたってそれはどのシーンなのか確認を試みてみました。一つ目はたぶんバリーが水浴びをしながら愛を語り合うホモ将校の制服と親書を盗んで脱走するところ、二つ目はバリーがシュバリエの変装をしてプロイセンから逃げ出すところ(これは確かに笑わせてくれます)じゃないかと推測できましたが、三つめ以降はどうしても判りませんでした。もし蓮實教授にお会いする機会があればぜひ聞いてみたいです(そんな機会あるわけがない)。 キューブリックはナポレオン映画を撮りたかったそうですけど、彼のフィルモグラフィ中唯一のコスプレものである本作は、きっとその予行演習かナポレオンものを撮る夢が破れてその腹いせとして撮ったんじゃないでしょうか。この映画で蝋燭の灯りで撮影するテクノロジーが確立したことは有名ですが、キューブリックもその技術を試すための実験映画のつもりだったのかもしれません。なんせ主演がライアン・オニールとマリサ・ベレンソンというハリウッドきっての大根役者で、俳優に百回テイクを要求したという鬼とは思えず、もう端から演技を見せようという気がないのは見え見えです。またお話しの方も前半はともかく後半は悲惨で、登場人物が全員不幸になって終わってしまうという究極の悲劇でもあります。でもキューブリックらしい凍り付いたような目線で全登場キャラを舐めまわしてくれるし、全編に流れるマイケル・ホーダーンの冷徹なナレーションが琴線を揺さぶるし、三時間なんてあっという間と感じてしまいました。また自然描写が美しいのも、キューブリック映画にしては珍しいです。ヘンデルの『サラバンド』を有名にした功績も大ですね。
[映画館(字幕)] 8点(2017-02-04 23:27:35)
316.  ふるえて眠れ 《ネタバレ》 
『何がジェーンに起こったか?』に続くロバート・アルドリッチ&ベティ・デイビス黄金コンビ第二弾。前作と比べるとかなりクライム・サスペンスの要素が強くなっており、スリラーとしても愉しめるようになっています。 デイビスとの往年の不仲が爆発してジョーン・クロフォードが途中降板しオリヴィア・デ・ハヴィランドが起用されたという裏話はけっこう有名ですが、何かで読んだ話では『不意打ち』も本来クロフォードが出演するはずだったけど「もう屋敷に閉じ込められる話は懲り懲りした(これは『血だらけの惨劇』に出演したことを指しているみたいです)」と出演拒否した後がまだったそうです。ジョーン・クロフォードの落ち穂拾いをするのがオリヴィア・デ・ハヴィランドというパターンが当時のハリウッドにはあったみたいです(笑)。でもどっちも美味しい役で、デ・ハヴィランドはなかなか聡明な女優だったんじゃないでしょうか。 というわけで、本作では頑張ってはいますがデイビスは完全にデ・ハヴィランドに喰われてしまったしか言いようがないですね。ネタバレが過ぎちゃうんであんまり書けないんですけど、残り40分の彼女のド迫力演技は一見の価値ありです。クール・ビューティというイメージだったアグネス・ムーアヘッドの怪演も見どころで、ほんと最初は彼女だと気づかないぐらいの変身ぶりです。 まあ考えてみればアルドリッチがオカルトものを撮るはずもなく、「本当に怖いのは人間だ」という彼のメッセージを素直に受け止めようではありませんか。
[DVD(字幕)] 8点(2017-01-26 22:25:34)
317.  110番街交差点 《ネタバレ》 
なんてたって、タランティーノが『ジャッキー・ブラウン』で使ったボビー・ウーマックが歌う主題歌がメチャカッコよい。もっとも流れたのはタイトル・ロールだけで、タラの方が使い方としてはるかにセンスが良いのは認めざるを得ないでしょう。 この全編にみなぎる緊迫感はただもんじゃありません。マフィアとハーレムを仕切る黒人ギャングそして警察がマフィアのカネを強奪した三人組を追っての三つもどえを繰り広げるスピーディなストーリー。冒頭とラストのシークエンスを除いたほとんどのシーンが夜間撮影なのも雰囲気が出ています。もっとも当時の感度の低いフィルムで野外ロケ撮影ですから、画面が暗すぎて観にくいというのは難点ですけど。老刑事と大学出の若い黒人刑事という警察側の図式はもろ『夜の大捜査線』ですけど、アンソニー・クインの老刑事がハーレム・ギャングから賄賂をもらっていたり、ヤフェット・コット―のエリート刑事に黒人ギャングのボスが賄賂で餌付けを仕掛けたりと、はるかに人間模様がリアルです。アンソニー・フランシオサのイカレたマフィア幹部も味がありましたね。ラストの締め方の感じでは、エリート黒人刑事がこれからハーレム・ギャングとズブズブな関係になってゆくことを暗示しているみたいです。 ブラックスプロイテーション映画というとおバカ映画のイメージがありますけど、本作はそんなジャンルを飛び越した隠れた傑作と呼ぶにふさわしいと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-01-06 23:34:22)
318.  ペーパー・チェイス 《ネタバレ》 
中坊のときこの映画を観て、「大学生ってこんなに勉強しなけりゃいけないんだ」と恐れおののいたものですが、実際に入ってみるとあまりの緩さにびっくりしたもんです。まあ日米の大学教育の質はだいぶ違いますし、同じ学部とはいえ自分が入った某私大とハーヴァードを比べるなんてそりゃおこがましい限りですし、日本だってハードに勉強している大学生は存在していることはもちろん承知しております。でも邦画にはこういう勉強をテーマにして大学生活を描いた映画が皆無(とくに文系)という事実は、ある意味恐るべきことかもしれません。 小説の映像化だそうですが、よく出来た脚本です。ティモシー・ボトムズは決して上手い俳優じゃないですけど、この最後まで名前を教授に覚えてもらえなかったハート君は大好演でした。この映画は言うまでもなく『セッション』とプロットが似ています。『セッション』は教師と教え子の生きるか死ぬかの死闘という感じでしたが、こっちはあくまで人間関係の戦いに終始していますのでよりあり得るお話でリアルと言えます。この鬼教授役がジョン・ハウスマンなのですが、たしかにすごい演技だと思いますけど、劇中これだけ無表情で通してオスカー演技賞をゲットしたというのはある意味で偉業だと思います。残念なのは教授の娘役のキャラに魅力がないことで、最後まで感情移入できない女だと思いました、ハートがこの女に惹かれるのがちっとも理解できないんですから。 自分は初見のときハート君と娘の関係をキングスフィールド教授は気づいていたんじゃないかと思ってましたが、最後の最後になってもハートの名前を認識してなかったことでその回答は得られました。でもそういう疑問を観る者に抱かせるということは、この脚本と演出の巧みなところなんでしょうね。「son of a bitch!」とハート君に罵られて、「君はかなり知的なことを言った」と返す教授は、やはり大人物です(笑)。
[映画館(字幕)] 8点(2017-01-02 23:56:53)(良:1票)
319.  赤い天使 《ネタバレ》 
なんでも増村・若尾コンビは全部で20本ああるそうですが、たぶん本作がその最高傑作というか極北に位置することは間違いないでしょう(全部観てるわけでもないのに偉そうですが)。だってほんと凄いんだもの、現役の映画作家ではその描写のエグさ・凄まじさはとうてい真似できないと思います。そりゃエグいスプラッターは日本でも撮られていますが、両腕を切断された兵士の性処理をナースがしてあげる描写なんて、当たり障りのない題材にしか手を出さないを製作委員会方式が幅を利かせている現状では絶対にありえません。まるで魚を捌くように手足を切り落としてゆく野戦病院、そして「俺は人命を救っているんじゃなくて〇〇〇を量産しているようなもんだ」と自嘲する軍医、ここら辺は『ジョニーは戦場に行った』に通じる不条理があって究極の反戦映画とも言えそうです。若尾文子もいい思いをさせてもらった男はみんな黄泉の国へ引っ張って行っちゃう、これじゃまるで“死の天使”ではございませんか。芦田伸介と二人で兵隊コスプレで始まるどう見たっての変態プレイはちょっと異様ですけど必見です。 増村作品の若尾文子はブレるところはあっても一途な女性というパターンが多いけど、それは本作の西さくらが完成形でしょう。ここは好みが分かれるところかもしれませんが、自分は川島雄三作品の若尾文子も捨てがたい魅力があると思ってます。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2016-11-14 23:29:10)
320.  回転 《ネタバレ》 
子供のころTV放映で観たときはスッゲー怖かった記憶がありますが、改めて見直してみますと違った意味でこれは怖い映画だなとしみじみと感じました。とにかくデボラ・カーの恐怖に取りつかれてゆく演技が凄すぎ、『シャイニング』のジャック・ニコルソンに匹敵するという意見には全面的に賛成です。後半、自分だけに見えている霊と対決するうちにエクソシストと化してゆく過程は迫力あります。この演技が、オスカー演技賞にノミネートすらされなかったというのはちょっと信じがたいです。またマイルスとフローラの二人の子供が全然かわいらしくないところもよく練られています。フローラ役のパメラ・フランクリンなんて後年の面影(ちょっと変な表現かな)が微塵も見られず、女子ってホントに変わってゆくものなんですね。屋敷にまた独特な雰囲気があって、だいたいあの庭は石像がありすぎでしょう、それだけで怖いです。 英文学の歴史では心理小説の金字塔である『ねじの回転』ですが、それに真っ向から取り組んだトルーマン・カポーティの脚本とジャック・クレイトンの演出は評価されるべきでしょうね。ラストのデボラ・カーとマイルスとの対決で、二人の顔に汗がだんだん滲んできます。これは温室の中でのシーンだというわけですが、緊張感が高まる効果的な演出です。ラストがハッピー・エンドかと思わせておいての絶望感、これは渋い終わり方だと思います。 最近はグロい・イタいホラーが全盛ですがこういう渋い心理ホラーもいいもんです。
[DVD(字幕)] 8点(2016-11-04 23:54:21)(良:2票)
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