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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2381
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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321.  ライトスタッフ 《ネタバレ》 
孤高のパイロットで初の超音速飛行に成功したチャック・イェーガーと、彼とは対極の生真面目・堅物な海兵隊パイロットだったジョン・グレンらマーキュリー計画の七人の宇宙飛行士たちを対照的に描くストーリーテリングです。この映画のチャック・イェーガーこそが、そりゃ美化されている部分もあるでしょうけどまさに漢の中の漢と呼ぶに相応しいんじゃないでしょうか、とにかくカッコいいんだなこれが。実物の彼も第二次大戦ではドイツ占領下のフランスで撃墜されるが敵地を突破してスペインに逃れて復帰、その後P-51マスタングを駆って一日で5機のドイツ機撃墜を果たして 米軍初の"ace in a day"の称号を得るという伝説的な戦闘機乗り。超音速飛行に成功したⅩ‐1もこれまた凄い飛行機で、ロケットに翼をつけて(しかも後退翼じゃなく直線翼)水平飛行させたような代物。開幕から音速飛行に成功するまでの二十分は虚実を織り込みながらも劇的かつ感動的でここだけで一本の映画を観たような気分になります。パイロットとしての誇りに満ち溢れたイェーガーがモルモットのような存在だったマーキュリー計画の宇宙飛行士に志願するわけもなく、ここから政治に翻弄される宇宙飛行士たちと人生が分かれてゆくことになるわけです。 実際のイェーガーはベトナム戦争では作戦部隊を指揮して将軍になるぐらいですから決して破天荒なだけの人物ではなく、でも演じるサム・シェパードがあまりにカッコいいんでこれはこれでアリでしょう。マーキュリー計画のグダグダな進行ぶりはかなり揶揄した描き方で、とくにジョンソン副大統領はこれでもかと醜悪さが強調されていて面白かったです。マーキュリー・セブンの面々は政治に翻弄されたと見ることもできますが、忘れちゃいけないのはマーキュリー計画こそが政治そのものでジョンソンの道楽だったわけじゃありません。ロケットの開発はICBMを実戦化するためのソ連との軍拡競争そのもので、この辺りをまったくスルーしているのは違和感がありました。テキサスで七人がジョンソンの政治ショーで道化を演じさせられているシークエンスに、イェーガーが高度記録を破ろうと単独でNF-104を飛ばすシーンをカットバックする編集にこの映画が訴えたいことが濃縮されているんじゃないでしょうか。墜落寸前で彼が見た星空には、イェーガーこそが誰のサポートも受けずに単独操縦で宇宙に達した唯一の人間だったんだ、という訴えが込められているような気がします。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-30 22:27:21)(良:1票)
322.  アパートの鍵貸します 《ネタバレ》 
その昔、明石家さんまがトレンディドラマに出ていたころ、有名な“テニスラケットを使ったパスタ水切り”をそっくり再現というかパクっていました。名優ジャック・レモンの伝説的なパフォーマンスをパロっちゃうとは、さんまというか演出家はいい度胸してるなと感心した思い出があります。 初めて観たとき、「NYってラブホが無いのかよ?」というのが強烈な違和感だった記憶があります。いくら一等地にある部屋だといっても、知り合いが住んでいる部屋に女の子を連れ込みますかね、それも急にムラムラしてきたってわけじゃなく一週間以上前から予約しておくなんてねえ。まあそれを言っちゃあ話が進まないので深くは掘りませんけど、貸しているジャック・レモンも出世のための苦行だと割り切っている俗物キャラなのがイイですね。シャーリー・マクレーンの演じるフラン(ファミリーネームがキューブリックというのが凄い)に関しては、“純情そうに見えるけどヤルことはヤッテいる女”という感じがするし、ほとんど極悪非道といっていい人格の部長に離婚させて後釜に収まろうとするちょっと嫌な女。でも最後の最後で突然目覚めてレモンのもとに飛び込んでゆくラストは、それまでほとんど彼女に感情移入できなかっただけに鮮やかな脚本だと感心します。 言ってみればこのお話しは典型的なシチュエーションコメディなわけですが、そこに微妙なさじ加減でペーソスが味付けされている、まさにジーン・ワイルダーじゃなきゃ撮れないラブコメだと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-27 22:14:14)(良:1票)
323.  悪魔の沼 《ネタバレ》 
デビュー作が話題を呼んでハリウッドに招かれたトビー・フーパ―、でも『悪魔のいけにえ』がなんであんなに高評価なのかが理解不能な自分としては、この第二作は納得のクズ映画でした。ハリウッドとはいっても怪しげな独立プロデューサーの製作で全編安っぽいセット撮影でフーパーも単なるお雇い監督、フーパーが趣味をあまり主張できなかった分基本的な監督としての能力が発揮できるチャンスでもあったのに、出来はご覧の通りです。メル・ファーラーやスチュアート・ホイットマンといった微妙なビッグネームも出演していますが、オードリー・ヘップバーンが妻だった男が出るような作品じゃないでしょ、ファーラーさん。前作に続いてマリリン・バーンズも出演していますけど、彼女と娘役が終始がなる悲鳴のうるさいことといったら、とくに娘の方はもうほとんど超音波でした(笑)。ネビル・ブラントも終始支離滅裂なセリフを呟くだけ、もうこれは完全にキチ〇イというわけです。このキチ〇イ親父が終始カントリーミュージック放送をホテルに流すのはトビー・フーパ―印なんですが、物語は終始夜間で『いけにえ』が真っ昼間の出来事だったのとは対照的、明るい太陽のもとでの凶行とカントリーは妙に親和感があったけど夜間だと単にうるさいだけ。そう言えば後にフレディ・クルーガーで有名になるロバート・イングランドも出てましたが、“Name's Buck... and I'm rarin' to fuck.”という冒頭のセリフは、“キル・ビル”でタランティーノがオマージュし、看護士バックが全く同じセリフを発してましたね。保安官のスチュアート・ホイットマンもいてもいなくてもどうでもイイキャラで、そのくせラストになって全てが終わったところでまるでヒーローみたいな顔して突然に登場、主要な男性キャラはみんな喰われちまったんだからあんたもワニの餌になればよかったんだよ!
[CS・衛星(字幕)] 3点(2021-08-25 11:19:34)
324.  ミッドウェイ(2019) 《ネタバレ》 
ローランド・エメリッヒが監督なので最低線の期待しかしていませんでしたが、ギリギリの線で予想通りというのが感想です。ぶっちゃけて言えば、『パールハーバー』と『ミッドウェイ(76)』を足して二で割ったような映画ってとこでしょうか。 前半はお約束通り真珠湾攻撃から始まってB-25による東京初空襲までを流す、ここら辺はまるで『パールハーバー』のダイジェスト版リメイクを見せられている感じ。いちおう日本側には豊川悦司・浅野忠信・國村隼といった第一線俳優を使っているけど、あとは無名の日系俳優ばかり、それでも日本語だけはちゃんとしていたのは褒めておきましょう。でも、山本五十六が真珠湾奇襲に成功したことを知るシーン、京都の先斗町みたいなところに居て和服姿でしかも芸妓とくつろいでいるというのは、「そんなバカな!」と叫びたくなりました。三船敏郎なら絶対に撮らせなかったでしょうね。海戦に至る経緯はアメリカ側からの視点が主なんだけど、有名な暗号解読の経緯などはかなり飛ばし気味のあっさり風味、76年版もそうだったけどこの部分を上手く織り込んだ脚本じゃないとミッドウェイ海戦の本質が伝わらないと思います。アメリカじゃ「日本海軍の暗号を解いて待ち伏せして勝った」ということは、ちょっときまりが悪いところもあるのかな? 戦闘シーンはCG全盛時代ですから良くできていて当たり前、そうなると考証やディティールにどれだけ拘っているかが勝負なるでしょうが、ここはレベルがかなり低い。日米ともに艦船の再現度は高いといえますが、海戦シークエンスになるとツッコミどころ満載です。SBDドーントレスの爆撃シーンは臨場感あふれているけど爆弾をリリースする高度があまりに低すぎ、当たり前ですけど高度が高いほど爆弾の位置エネルギーが増すわけで、飛龍に着弾するシーンではいくら甲板が非装甲の日本空母でも甲板が貫けるわけがない、もし専門アドヴァイザーがいたら絶句すること間違いなしの珍シーンです。南雲機動部隊の艦隊陣形もあまりに各艦の距離が近すぎ、だいいちあんな近くに戦艦(金剛型?)がいるわけがない。などなど突っ込みだしたらキリがないんですけど、要は監督以下製作陣がミッドウェイ海戦というものを真剣に調査していないってことなんでしょう。まあ監督がエメリッヒでチャイナ・マネーがたっぷり注ぎ込まれた時点で、もう何を期待してもムダだってことです。 劇中で海戦当日にミッドウェイ島で記録映画を撮影していたジョン・フォードのエピソードが一瞬だけ挿入されていましたね。もし日本が海戦を制してミッドウェイ島を占領したら、戦死していなければフォードが捕虜になっていたかもしれないって、不謹慎かもしれませんがなんか面白くないですか?
[CS・衛星(字幕)] 3点(2021-08-18 23:17:22)(良:1票)
325.  戒厳令(1972) 《ネタバレ》 
コスタ・ガヴラスのいわゆる三部作の一作、南米ウルグアイで起きた事件をもとにしているが、政治的映画というよりもまさに政治映画そのものといった方が相応しいでしょう。“架空の国での出来事”とした『Z』の設定とは対照的に、登場人物たちは仮名になっているみたいだがはっきりウルグアイの出来事として撮っています。全編ロケですがさすがにウルグアイでは撮影できず、街並みはチリで撮られたものだそうです。つまり時おり映り込む海は、ウルグアイが面している大西洋じゃなくて太平洋ということです。 全編がドキュメンタリー調というか淡々としたタッチのストーリーテリングなので、緊迫感には満ちているがまったく盛り上がるところがないお話しです。冒頭が誘拐されたモンタンの葬儀でいわゆる倒置法(『刑事コロンボ』方式ともいう)なのもその一因かもしれません。製作者や監督自身がいわゆる主義者なので狙っているのは確かですけど、娯楽色はいっさいありません。誘拐をする組織は実在の南米最強と呼ばれたツパマロスなんですが、なんせ監督が主義者なので徹底的に善玉という位置づけで描かれています。冒頭や各所で挿入されるドキュメンタリー調の政府側の検問や街頭での取り調べシーンは緊迫感満点で、この種の映画のお手本といって良いでしょう。ウルグアイ政府に弾圧のコーチをする本来悪役であるはずのCIA(?)の工作員みたいなモンタンですけど、堂々とした覚悟のある人物として描かれており“自分の処刑がツパマロスの終わりの始まりなんだ”と腹をくくって死に臨む姿はカッコよくさえあります。撮影時は判らなかったことですが、この映画の公開翌年にはツパマロスは軍事政権によって壊滅させられます、なんか近未来を予言していたみたいです。 ガヴラス三部作の中で他の二作の舞台とされたギリシャ・チェコスロヴァキアと並べると、いちおう議会は開かれているし記者は割と自由に活動している風にも見えますし、ウルグアイは割と生ぬるい感すらあります。さすが昔は“南米のスイス”と呼ばれたこともあった国、80年代には国民投票で軍事政権から民政にスムーズに移管したぐらいですからね、つまりツパマロスが目指した暴力革命は間違っていたってことではないでしょうか。“世界一貧しい大統領”と近年マスコミに持ち上げられたホセ・ムヒカはツパマロスの指導者だったそうで、こういう立場の人が殺されずに政治活動をして大統領になるなんてウルグアイは面白い国なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-08-15 22:13:31)
326.  ロボコップ2 《ネタバレ》 
久しぶりに観直してみましたが、以前の悪印象はなんだったのかなと思うほど水準をクリアした続編だなと感じました。もっともこれは、当時続けて観た『3』があまりに酷かったので記憶が引きずられたのかもしれません(笑)。第一作の主要スタッフが抜けてしまったので脚本を書いたのが原作者のフランク・ミラー、この人はヴァーホーベンに負けず劣らずの悪趣味大魔王なのでなんかすごい映画になってしまった感もあります。第一作のグロ要素は傷を負ったりする場面の人体破壊がメインでしたが、本作ではケインのロボコップ化手術の見せ方など、なんか「この見せ方って必要?」と首を傾げたくなるシーンが多かった気がします。パロディCMの挿入などヴァーホーベンを意識した脚本にしたからかもしれませんが、これはいま話題の90年代鬼畜系カルチャーの反映だったのかな。 舞台となるデトロイトがオムニ社と合併を迫られる惨状は、製作後に現実のものとなり20年後には財政破綻に追い込まれる未来を予言している感があります。つまり、荒唐無稽なようでいてシャレにならないストーリーなわけです。ダン・オハーリヒーをはじめオムニ社の面々の悪逆非道ぶりがスケールアップしているのも注目したいところです。前作のラストでは瀕死の重傷だったナンシー・アレンが、すました顔して活躍するのには苦笑でした。ヴァーホーベンが引き続き監督していれば、たぶんナンシー・アレンもロボコップ化したストーリーになってたんじゃないかな。そしてピーター・ウェラーはロボコップの顔面(それも数少ないマスクを外したカット)だけの出演となり、これじゃあ嫌気がさして第三作に出演しなかったのは理解できますよ。 ハリウッド時代のヴァーホーベンの代表作のうち『トータル・リコール』以外の三作(『ロボコップ』『氷の微笑』『スターシップ・トゥルーパーズ』)は続編が製作されるかシリーズ化されましたが、いずれにも彼は参加していない(というかお呼びがかからなかった?)のは興味深いところです。そこはジェームズ・キャメロンやリドリー・スコットとは大違い、彼らと違ってヴァーホーベンが商売下手だったのは否定できないでしょう。その分、これらの代表作は一作一作がパワーに満ちているので、私は好きです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-08-12 21:49:27)
327.  ファミリービジネス 《ネタバレ》 
大して年齢は変わらないし風貌も似ている要素は皆無だけど、さすが二大名優、こうやって丁寧に演技されるとちゃんと血が繋がっているように見えるんですよね、ショーン・コネリーとダスティン・ホフマンは。祖父がスコットランド人でシチリア系と結婚し、その息子がユダヤ系と結婚して妻の両親と過ぎ越しの祭りを祝うという風景は、NYではいかにもありそうな感じがしていいですね。葬儀ではアイルランド系が集まって“ダニーボーイ”を合唱するし、人種の坩堝と呼ばれる街ならではの風景です。でも肝心のストーリー展開が盛り上がらないんじゃ、どうしようもないかなと思いました。監督したのは名匠シドニー・ルメットなんですけど、彼に期待を寄せた人には肩透かしを喰らった感が強かったでしょうね。彼が撮ったクライム系の作品は、すべて犯罪は失敗して報いを受けるという結末なのが特徴。そういう意味ではモラリストだったんでしょうけど、そんなルメットにクライム・コメディ調の作品を撮らせたってのは、やはり失敗だったかなと思います。肝心の盗みのシークエンスが、隠されていた裏事情を含めて奇妙なほどに盛り上がらない。いくら親子三代の絆がメインテーマだよと言われても、“盗み”でワクワクさせてくれなきゃあかんですよ。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-08-09 22:44:41)
328.  ターミネーター:ニュー・フェイト 《ネタバレ》 
てっきり『新起動/ジェネシス』の続編だと思っていたら、なんとキャメロン御大曰く『2』の正式な続編という位置づけとは、迂闊でした(笑)。それにしても28年たって「続編撮りましたって」言われてもこっちとしてはどう反応を返したらいいのか、『3』以降の一応繋がっていたような世界観は全部チャラにしてしまったわけで、まさにパラレル・ワールドです(笑)。 観始めてからは個人的には衝撃の連続、まさかのジョン・コナー殺害にT-800が成功するとは…それも『2』の結末の後のお話しなのに、なんでT-800がうろうろしてジョンを探していたんだろう?それも最新型T-1000じゃないというところは軽く突っ込んでおきましょう(T-800じゃないとシュワちゃんを出せないのは判ってますけどね)。スカイネットが存在しないはずの未来から強化人間グレースが送られてくる言い訳が、AI リージョンなるものがスカイネットと同じ事して人類を滅亡させようとしているとなるのですが、なんかすごく雑な設定じゃないですか。もっと驚くのはジョンを殺したT-800=カールおじさんが良心を持つようになってほとんど人間化していること!プログラムにインプットされたことに忠実に動くターミネーターという大前提はどこへ行っちゃったのかねえ、血迷ったかキャメロン。そのシュワちゃんに妻子がいるというのも、息子とは義理の関係と判りましたが『ブレードランナー2049』のレプリカントみたいにターミネーターにも生殖機能があったのかとドキッとしました(笑)。こうなってくるとサラ・コナーがこの映画に登場する意義が判らなくなってきますけど、歳相応の風貌ではあるけど相変わらず筋肉モリモリのリンダ・ハミルトンの存在感はさすがで、シュワちゃんが完全に喰われちゃった感がありました。 敵役のRev-9に関しては“分身の術”みたいな技があるぐらいで、設定に関してはもう完全にネタ切れ感が濃厚でしたね。『2』以降はこの敵役に起用する俳優にバリエーションを追及するのはお約束で、白人・女性・東洋系に続いて今回はメキシコ系(演じている俳優は米国人ですけど)ときましたか。でもこのメキシコ系ターミネーター、ラストの対決で「なんで人間を助ける?」なんて問いかけをシュワちゃんにぶつけるのですが、記憶では敵役ターミネーターがシュワちゃんに話しかけたのは初めてだったんじゃないかな、でも私には違和感しかなかったです。 キャメロンはこの路線で三部作を撮るつもりみたいですが、本作自体が『2』の焼き直し感が強くてネタ切れなんじゃないかと思います。「おカネが欲しい」という切実な欲求は理解しますが、本作の不評もあるし三部作は実現しないんじゃないかな。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-08-06 22:28:38)
329.  デッド・ドント・ダイ 《ネタバレ》 
ハリウッドのゾンビ・ブームは留まるところを知らず、ついにジム・ジャームッシュまでもが参戦してくる事態に。もっともこれはR.I.P.ジョージ・A・ロメロという意識もあったのかもしれません。彼のことだからオフ・ビートでユルユルなゾンビ・ムーヴィーなんだろうなと予想しましたけど、思った通りのユルユルさではありましたがゴアなところはきっちり描いていてそういう意味では正統的なゾンビ・ムーヴィーだったかもしれません。出演者も初期組のトム・ウェイツ、中期組のビル・マーレイ、最近の常連であるアダム・ドライバーとジャームッシュ組が勢ぞろいといった趣きでしたが、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の懐かしのエスター・バリントまでもが顔を見せるとなるともう感涙です。 見るところ不評を買いまくっているみたいな独特の訳のわからなさですけど、ジャームッシュ調オフ・ビートが大好物な私としましては期待通りかなって感じです。アダム・ドライバーの「結末が…」と何度も聞かされる呟きがまさかの台本の話しだったというオチは、私にはツボでした。でもこういうある意味笑えないお遊びは、やはり万人受けはするはずもないでしょうね。この映画はコメディに分類されているみたいですが、結末を含めて笑える要素はほとんどないシリアスなストーリーだったと思います。それでもティルダ・スウィントンのキャラと少年院から脱出する三人のエピソードには、さすがに首を傾げるしかなかったです。マジでスウィントンはこの映画で最恐のキャラで、かなりのレベルの怪演だったと思いますけどね。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-08-03 22:25:59)(良:1票)
330.  城取り 《ネタバレ》 
時は戦国、関ヶ原合戦に向けて徳川家康が策動を始めたころ。上杉征伐の軍勢が会津に迫ってきたのに呼応して北隣の伊達政宗は上杉家領内に多聞山城という出城を構築して会津征服を狙ってきた。憂慮を深める直江山城守兼続にたまたま侍大将・俵左内を訪ねてきていた名うての兵法者・車藤三は左内と五百両の軍資金があれば自分が城を落としてみせると豪語した。しかし多聞山城の城代は切れ者で知られた赤座刑部、果たして藤三の作戦は首尾よく事が運ぶのだろうか? 司馬遼太郎の『城をとる話』の映画化ですが、この日経新聞で連載された小説自体が主演である石原裕次郎に依頼されたもので、完結を待って石原プロが製作した映画です。裕次郎の相棒・左内には千秋実、これまた百戦錬磨の戦上手だけど銭を貯めることが生きがいというキャラが面白い。堺の白粉行商人役で芦屋雁之助と伊賀の抜け忍として若き日の石立鉄男が城取りチームに加わりますが、口八丁の雁之助が傑作なキャラでした。作戦としては城の建造現場に潜り込んで銭を使って使役されている村人たちを決起させるという割とオーソドックスなものですが、ストーリー展開はどこか『七人の侍』を意識している感が強かったですね。『七人の侍』とは大きく相違するところは悪役で、赤座刑部=近衛十四郎がこれでもかという存在感とキャラ立ちで、完全に裕次郎を喰っていました。裕次郎と十四郎のチャンバラ対決は当然のごとくラストで用意されていますが、互いに長太刀を使って太刀がぶつかり合う瞬間に激しく火花が散る夜間を活かした演出が印象的でした。ちょっと気になったのは裕次郎のセリフ回しで、彼だけはほとんどのセリフが現代調なんです。藤三が村人を集めて作戦説明するシークエンスでは、「こんばんは、皆さん」って裕次郎が挨拶するのにはズッコケました(笑)。 城取りチームの四人は誰も死ななかったけど、ヒロインの中村玉緒など死者が村人衆だけというところが『七人の侍』と大きく違ったところですかね。テンポも良く個々の役者もいい芝居してるんだけど、なんか物足りない、要は裕次郎のチャンバラを見せるための映画だったということかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-07-30 23:12:26)
331.  サハラ戦車隊 《ネタバレ》 
舞台は北アフリカ戦線、「トブルクが陥落した」というセリフもあるので1942年半ばという時代設定みたいです。この映画の影の主役はやはりⅯ3リー戦車、製作された43年にはすでにⅯ4シャーマンが登場していますが、当時のバリバリの現役戦車です。米軍が師団単位で本格的に北アフリカ戦線に投入されたのは42年後半のアルジェリアからですが、Ⅿ3戦車は英軍にも供与されたので、そのトレーニーとして米軍の分遣隊が先駆けて戦場にいたという設定ならばさほど無理がないかなと思います。“ルル・ベル”というのが戦車につけられたニックネームですが、『1941』に登場するⅯ3戦車もニックネームが同じで、つまり本作へのオマージュだったわけです。 この戦車が英軍部隊に出会ってイタリア兵とドイツ・パイロットを捕虜にして井戸がある拠点を目指すロードムービー風の前半がとくに秀逸です。英軍兵も南アフリカ兵やフランス人志願兵やスーダン人植民地兵がいて多彩な顔ぶれで、それぞれのキャラも丁寧に撮っていて好感が持てます。イタリア兵捕虜がヒトラーとムッソリーニを比較したりしますが、まだ大戦の形が付いていない時期なのにムッソリーニを好意的に語らせているのはちょっと意外でした。とうぜん軍の検閲が入ったはずですが、こういう余裕がアメリカのアメリカたる所以なんでしょう。 水を求めて攻撃してくるドイツ軍との戦いが繰り広げられる後半ははっきり言ってマンガみたいなお話しですけど、ドイツ軍を騙すための策略や拠点の陣地化する作業などは丁寧に描かれていて好感が持てます。とはいえ大隊規模の部隊が、いくら砂漠での戦闘であるとしても燃料・弾薬じゃなくて水不足で戦闘力を半ば失うなんてことは、現実ではあり得ないでしょう。旧帝国陸軍じゃないんだからそんな補給のヘマはしませんよ、ドイツ軍をバカにし過ぎです(笑)。 9人対500人というおとぎ話みたいな戦闘ですが、ボギーの側もけっきょく二人しか生き残れなかったというのはそれなりにシビアな結末だったのかもしてません。 ハリウッド映画とは言っても戦時中でしかも戦争ものなのでプロパガンダ的な製作意図はとうぜんあったでしょうが、そんな偏見を超えた普遍的な面白さを持ったエンタティメントだと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-07-27 23:22:45)
332.  マルコヴィッチの穴 《ネタバレ》 
自分が今まで観た中で、あまりの奇天烈なストーリーにぶっ飛ばされた三本の映画の一つです。脚本を書いたチャーリー・カウフマンはこの後もヘンなテイストのホンを書き続けてオスカー受賞まで果たしちゃうけど、やはり本作を凌駕するようなストーリーは産み出していないのも事実。 まずフューチャーされたのがジョン・マルコヴィッチというのが絶妙すぎます。ここはトム・クルーズやブラピはムリにしても、ヘンテコな映画に喜んで出演しそうということで『ニコラス・ケイジの穴』とか『ゲイリー・オールドマンの穴』なんてのは十分アリだと思いますが、その変なキャラと大物ぶりからしてマルコヴィッチを選択したのは絶妙すぎます。というよりも、よくマルコヴィッチもOK出しましたよね、やっぱ本人も相当変わった人なんでしょうか。マルコヴィッチが自らマルコヴィッチの穴に入って見てしまうあの「俺が悪かった、もう止めて~」と思わず叫びたくなる「もし全人類が男も女もマルコヴィッチの顔だったら」ワールドは、もう悪夢のような映像としか言いようがなかったです。だいたい、マルコヴィッチの頭の中に入り込んだ時点で普通は出落ちみたいなもんですが、それだけで留まらない奥行きがあるストーリーなのがこの映画の特徴でもあります。ジョン・キューザックが完全にマルコヴィッチの肉体を乗っ取って人形使いとしての名声を得るという展開は、世間はパフォーマンスの良し悪しなんて演者の知名度頼りで判断しているだけじゃん、という辛辣な皮肉にもなっています。キャメロン・ディアスが実は隠れレズで、マルコヴィッチに入り込んでキャスリーン・キーナーと疑似SEXをするというのは、LGBT全盛の現代を20年先取りしていた感じがするぐらいです。もっともキーナーが「マルコヴィッチの肉体に15分だけ入り込める穴がある」というキューザックの荒唐無稽としか言いようがない話しを、ほとんど疑問を持たずに信じてすぐビジネスにつなげる展開だけは、ちょっと雑な感があります。そう言えば、彼女だけは一度も穴に入ってゆかなかったですね。そのキーナーがマルコヴィッチの肉体を使って身籠るという展開は、それは心情的にはディアスの子なのかキューザックのタネなのかというややこしい展開でになりますが、しょうじきここまで来るとどうでも良くなります。キューザックは最後には産まれてきたエミリーの中に封じ込められてしまったみたいですが、実はこの映画のテーマは輪廻転生だったのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-07-24 22:53:09)
333.  残酷・異常・虐待物語 元禄女系図 《ネタバレ》 
石井輝男・東映時代ポルノシリーズの一作ですけど、前作が悪名高き『徳川女刑罰史』なのでなんか大人しく感じてしまうのはヘンな感覚です。オムニバス三話構成で狂言回し的な役割で吉田輝雄が各話に登場しますが、まあぶっちゃけてしまえばあまり必要性がないキャラでした。 第一話の『おいとの巻』はありふれた感じの吉原を舞台にした廓悲劇といった感じで、『残酷・異常・虐待』の中で『虐待』パートという位置づけですかね。第二話の豪商の変態娘がヒロインの『おちせの巻』は『異常』パートになるんでしょうが、ストーリー自体は江戸川乱歩チックな趣きがあり、ラストの長吉がおちせを背負ってすすきの原っぱを彷徨うカットは、アンリ・ジョルジョ・クルーゾーの『情婦マノン』パクリというかオマージュでしたね。でもやはり強烈だったのは第三話『残酷』パートの『おみつの巻』でしょうね。まず小池朝雄の狂った殿様は怪演としか言いようがないです。側室の賀川雪絵はなんの脈絡も必然性もなく金粉塗り・ゴールドフィンガー状態にされちゃうところは、もうわけ判らん(笑)。そして『屋敷女』を四十年先駆ける妊婦腹裂き・胎児取り出しシーン、60年代の日本映画とは信じ難い映像です。とは言ってもよく観ればチャチな撮影ですけど、特殊メイクの妊婦の腹を刀で斬り開くところを正面から撮ってるのはちょっと酷い(血は全然出ません)。まあ取り出した胎児が大きめのキューピー人形みたいだったのは失笑ものでしたけどね。 当時の東映のラインナップを振り返ると任侠・実録ものとこういうポルノ路線でほとんどが占められていて、これじゃあ佐久間良子とかの大物女優が逃げ出したのは無理ないかなと思います。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2021-07-21 23:46:27)
334.  アリス・スウィート・アリス 《ネタバレ》 
シングルマザーに育てられているアリスとカレンの姉妹、母親は熱心なカトリック教徒で聖体拝領のミサに姉妹を連れてゆきます。姉のアリスは12歳ですが可愛いという感じからはほど遠いヒステリックな娘で、大人にちょっと卑猥な表情を見せたりするませガキです。妹のカレンは真逆の可憐な美少女ですが、嫉妬するアリスから日常的に虐められています。聖体拝領の列に並んでいたはずのアリスが行方不明になっているときに、黄色いレインコートを着てプラスチック・マスクをした謎の女(?)にカレンは絞殺され死体が燃やされてしまいます。警察や神父から“子供だけど危ない奴”と容疑者にされたアリスは精神科の児童施設にいれられてしまいます。果たしてカレンを殺めたのはアリスなんだろうか? 端的に言ってしまうと、マーヴィン・ルロイの『悪い種子』とニコラス・ローグの『赤い影』を足してスラッシャー映画に仕立てましたって感じです。公開当時話題にもならなかったけど、カレンを演じたのがブレイク寸前のブルック・シールズだったということでカルト的な評価に繋がったようです。開幕十分ぐらいで殺されちゃうから出番はとうぜんわずかだけど、確かに美少女ぶりは輝いていました。でも知って「えっ」と驚愕したのが、12歳のアリスを演じていたポーラ・シェパードが撮影時はなんと19歳だったってことです。たしかにませた表情をする子役だと思いましたが背格好には何の違和感もなく、恐るべきロリコン女優だったみたいです。母親役のリンダ・ミラーは、東宝の『キングコングの逆襲』でヒロインのスーザンを演じ、ほかにも東映の『ガンマ―第3号 宇宙大作戦』にも出演している日本の特撮映画と縁が深かった人です。 中盤で連続殺人の犯人はあっさり種明かししちゃうのでミステリー要素は薄いし、スラッシャー描写も70年代としても大したことはない(しかし刃物恐怖症の気がある人にはつらいかも)。でもこの映画で妙なインパクトがあるのは、主要キャラ以外のわき役たちの持つ変なテイストを強調した撮り方をしているところです。とくにほとんどベッドから出てこれない超メタボ大家、なんでこんなキャラ設定にしたのか意図不明です。たしかにここら辺には、『バニー・レークは行方不明』の影響も感じられます。そして聖体拝領のパンを口に入れてもらうために瞑目して舌を出している信者たちを映したカット、なんかグロテスクでエロティックな表情がならんでいて不謹慎極まりない。事件はすべて教会の周辺で起こっているし、教会というかカトリックに対する監督の悪意を感じてしまいます。 しょうじき犯人の動機はさっぱり理解できませんし、ストーリーテリングにもキレはない典型的なB級スラッシャーとしか言いようがありません。でもラストでアリスが見せる表情には、『オーメン』のダミアンを思い出してしまいました。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-07-19 01:14:55)(良:1票)
335.  ジョーンの秘密 《ネタバレ》 
80歳を超えた老婆ジョーン・スタンリーはある日スパイ容疑でMI5に逮捕される。容疑が信じられない息子で弁護士のニックが取り調べに立ち会うが、そこで母親の驚くべき過去と向き合うことになった。 これは1999年に起きた“メリタ・ノーウッド原爆情報スパイ事件”に着想を得た小説の映画化です。ソ連は1949年にアメリカに次いで原爆開発に成功しましたが、ソ連の原爆開発は米英の原爆開発プロジェクト内に潜むスパイからの情報が無ければこれほど早期に成功しなかっただろうというのが定説で、英国の原爆開発情報を漏洩していたノーウッドもその一人だったというわけです。 この映画と言うか原作小説はこの事件をモチーフにしているに過ぎず、主人公の名前から登場人物および事件の経過はほぼフィクションです。あとこの映画はジュディ・デンチが主演となっていますが、どう観てもデンチとソフィー・クックソンのダブル主演で、過去のジョーンを演じたクックソンの方が圧倒的に出番と存在感がありました。 海外の作品評では「魅力的な実話を当惑するほど退屈な形でドラマ化した」「ジュディ・デンチの圧倒的な才能を無駄にしている」などと酷評されていますが、私もそこまで言っちゃうと可哀そうかなと思いますが当たらずとも遠からずかなと思います。ジョーンをスパイにリクルートしようとするケンブリッジ大学の研究者や外務省の若手官僚などのいかにも胡散臭いキャラたちも登場しますが、どうもこの連中がストーリーから浮いてしまっていたんじゃないかと思います。どうせフィクションならもっとサスペンスを盛り上げるストーリーテリングにした方が良かったと思います。途中からジョーンの夫・ニックの父親が登場しないのが気になっていましたが、ラスト近くでそれが明かされたのが本作で唯一の感銘を受けたところでした。結局はスパイ・ミステリーというよりも、ジョーンの純愛物語だったと言えるでしょう。そして出番は少なかったけど、ジュディ・デンチの存在感はさすがでした。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-07-15 22:29:35)
336.  家族ゲーム 《ネタバレ》 
観直して何となく感じたところですが、ディティールがどこか川島雄三の『しとやかな獣』に似ている感じがするんです。団地の一室が主な舞台だし、戸外の生活音が強調されて観客の耳に入るような音響設計、そしてラストのヘリコプターの轟音を訝しんで窓を開けて外をうかがう由紀さおり、ここは『しとやかな獣』ではパトカーか救急車のサイレンでしたね。沼田一家が住む団地も渡し船で訪問しなければならないベイ・エリアで、この立地条件も『しとやかな獣』と一緒。森田芳光は後年に『椿三十郎』を全く同じ進行でリメイクしたりしてるから、昭和の邦画に思い入りが深かったのかもしれません。 食卓のシーンやラストのカオスに陥る会食のシークエンスはあまりに有名ですが、この映画は「おっ、日本のルイス・ブニュエルが登場か」と当時思わされたぐらいのシュールさです。もちろん原作小説があるのですが細かいところはかなり改変されており、まさに森田芳光ワールド全開といった感じです。他にもいろいろ気になるディティールが満載で、松田優作がいつも持っている子供むけ図鑑(?)のようなものはなんなんだろう?沼田家では在宅中は玄関をロックしないので外部の人間がスーッと家に上がり込んでくる、昭和三十・四十年代じゃあるまいしこの規模の集合住宅でそんな不用心あるかい!等々。いっさい音楽が効果音としても使われない演出、慎一が母親に聞かせる『マイ・フェア・レディ』のサントラ(多分曲は『I Could Have Danced All Night』)も無音(もっともこれは著作権の権利金が発生するからかも)、松田優作と阿木燿子がいちゃついているシーンで電話に出る阿木燿子のセリフも無音(意図不明)と徹底しています。 家族やコミュニティーに異分子の人間が入り込んで人間関係をグチャグチャにするというプロットの映画は珍しくはないですけど、本作では松田優作の大暴れで切れかかっていた一家の絆が逆に修復したハッピーエンドとして捉えるべきなのでしょう。キッチンで割れたお皿や散らばった料理を片付ける四人の姿がそれを象徴していましたね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-07-13 00:22:14)
337.  レオン(1994) 《ネタバレ》 
リュック・ベッソン&ジャン・レノの黄金コンビが映画史に残した最高傑作です。たぶんベッソンはこの先何本映画を撮っても本作を超えることはできないんじゃないかな、まさに映画の神が降臨してきたって感じです。ベッソンはともかくとして本作でハリウッド・デビューを果たしたレノも、その後はここ三十年で最もハリウッド映画に出演した仏男優として活躍していますが、やはりジャン・レノ=レオンのイメージが変わらないのはいかがなものでしょうか。 世間には“ロリコン映画”としても有名ですけど、それはやはりその要素を意図的に強調した“完全版”の印象があるからで、このオリジナル=劇場版では“そこはかとないロリコン要素”という薄め具合が程よくて、まさに公開時の宣伝コピーである“凶暴な純愛”がピッタリはまっています。ナタリー・ポートマンはこの時十三歳ですが、見た目はさらに二・三歳下に見えるルックスが彼女の絶妙な演技を引き立ています。ちょっと知能発達に欠陥があるレオン、このおっさんとませたローティーンの組み合わせは考えてみれば危ない要素が満載ですが、そこをギリのラインで純愛ものに昇華させ得たのがこの劇場版だと言えるでしょう。でもポリコレがたいへん五月蠅くなった現代では、もはや製作が許されない物語なのかもしれません。そして、やはり本作で世間に知られるようになった“キレ芸ならこの人”ゲイリー・オールドマンの怪演も忘れてはいかんでしょう。まさかこの人がウィンストン・チャーチルに化けてオスカー受賞するとは、俳優の人生って判らないもんですね。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-07-09 23:12:21)
338.  ジーザス・クライスト・スーパースター 《ネタバレ》 
舞台版が極端に演出を現代に寄せているのと較べて、イスラエルの遺跡や荒れ地で撮影されているので、意外と違和感は少ないです。全編でセリフがすべてロック・スコアのミュージカルですが、ラストでユダの二言三言の語りだけが普通のセリフだったというのが印象的です。やはりこの劇の主人公はユダで、イエスは狂言回しだったという結論に落ち着きましょうか。でも本作のイエスの人物像は驚くほど人間的で、自分の影響力があまりに大きくなりすぎて苦しむ心の弱さが感じられて、自分が今まで観たイエスを描いた映画の中でもっともしっくりうるイエス・キリストでした。たぶん実際のイエスも、始めは当時では70年代のヒッピーと大して変わらないような存在だったんじゃないでしょうか。それがここまで世界宗教化できたのは、使徒たちの力が大きかったからには違いないでしょう。他の二つの世界宗教の創始者である釈迦とマホメットとイエスが違うところは、彼らが一応天寿を全うしたのにイエスは処刑されたってことです。たしかにテッド・二―リーが演じるイエスは70年代のヒッピー文化の申し子としか見えない単なる“愛の人”という感じで、この映画が教会から猛反発されたのもむべなるかなって思います。 アンドリュー・ロイド・ウエバーのミュージカル人生はまさにここから始まったというわけです。各スコアは名曲揃いですが、やはりユダ役のカール・アンダーソンの歌唱がいちばんの迫力です。監督がノーマン・ジュイソンだけに演出に特有の臭さやダサさがありますが、彼の熱唱がやっぱり良かったので、プラス一点ということで。
[映画館(字幕)] 7点(2021-07-06 23:23:55)
339.  ディファイアンス 《ネタバレ》 
監督のエドワード・ズウィックはこういう実話をもとに膨らませて脚色した映画を撮るのが上手くて、彼が以前に撮った『グローリー』とよく似た雰囲気の作品です。知る人ぞ知る1,200人が生きのびた“ビエルスキ・パルチザン”の実話を映画化したわけですが、トランプ前大統領の娘イヴァンカの婿でトランプ政権では補佐官を務めたジャレッド・クシュナーは、祖父母がこのパルチザンの生き残りだったそうです。 ビエルスキ三兄弟の長兄を演じるダニエル・クレイグは、リーダーシップがそこそこ有るのに困難な局面では内面の弱さをさらけ出す人物像を巧みに演じていたと思います。彼の弱い部分を補うような存在になるのがゴリラのような弟・リーヴ・シュライバーで、終わってみれば美味しいところはみんな彼が持って行ってしまった感はありますね。末弟で青春キャラを受け持ったようなジェイミー・ベルも良い味出していて、三兄弟のキャラが上手く出ている脚本だと思います。この物語ではドイツ軍はもちろんのこと、ユダヤ人狩りに協力したベラルーシの住人、赤軍の指揮下にあるパルチザン、そして住人から食料を略奪するユダヤ人たちと全面的に正義の立場にいるという勢力がいないというストーリーテリングになっています。とくにユダヤ人たちは、その小集団の中でも格差による反目や食料を巡る諍いなどがきっちり描かれており、綺麗ごとで済ませずにリアルな人間集団が必然的に抱えることになる問題から逃げていないのは好感が持てます。でも聖書のモーゼの故事をモチーフにした沼地を突破するシークエンスや、ラストのご都合主義丸出しのいかにもハリウッド映画らしい戦闘展開は、ちょっとやり過ぎの感がありました。詳しい史実は存じませんけど、1,200人もの集団が約三年も森の中で生き延びたってことは、多分派手な戦闘などは極力避けていたんじゃないかなと思います。スツーカに爆撃されて戦車を従えた部隊に攻撃されたら、普通に全滅しますよ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-07-03 23:08:54)(良:1票)
340.  現金に手を出すな 《ネタバレ》 
古いモノクロ映画と敬遠するなかれ、ギャング映画好きなら絶対見逃してはならない一本です。わたし、恥ずかしながら “グリスピ”というのはジャン・ギャバン=マックスのファミリーネームだとずっと思っていましたが、実は“カネ・あぶく銭”みたいな意味の仏語スラングなんだそうです。これを“現ナマ”とルビ付きで邦題にした配給会社の担当者のセンスはたいしたもので、水野晴郎とは偉い違いです。貫禄を擬人化したようなジャン・ギャバンは渋いだけじゃなく女性に対する洒脱さがまた魅力的で、これでモテないはずがないじゃないですか。弟分リトンを隠れ家に招き入れてラスクを肴にワインを飲んで、二人ともお行儀よくパジャマに着替えて歯を磨いて寝るところまで丁寧に見せるリアリズムは、さすが名匠ジャック・ベッケルです。一部の隙もなく抜け目ない暗黒街の大物なのに相棒のヘマで窮地に陥るというのは、この後のジャン・ギャバンの演じるキャラの一つのパターンとして定着した感があります。こういうエスプリが効いたキャラは、ハリウッドのギャング映画や日本の任侠ものではまずお目にかかれない、フランス映画ならではのお楽しみなのかもしれません。リノ・ヴァンチュラは本作がデビュー作だし、ジャンヌ・モローも日本ではスクリーン初登場、そういう歴史的意義もある一編です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-07-01 10:25:52)
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