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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1865
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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341.  SKIN 短編 《ネタバレ》 
過激な白人至上主義者である、とある一家族の日常とその崩壊を研ぎ澄まされた感性で見せる短編ドラマ。後にベラ・ファーミガ主演で長編映画化されたものの原型となった作品で、アカデミー短編映画賞を受賞している。先に長編の方を見てからこちらを鑑賞したのだが、こちらはこちらでよく出来ている。と言うか、物語としては正直こちらの方が面白い。黒人を人間とみなしていない差別主義者が、スーパーの駐車場で絡んできた黒人に制裁を加えたことがきっかけでさらわれ、そして全身にあるタトゥーを彫られてしまうというストーリー。まあ単純で荒唐無稽ではあるが、ちゃんと起承転結がしっかりと纏まっているし、オチの切れ味も鋭い。一言で言うなら、世にも奇妙な物語の社会派版といった感じか。なにより素晴らしいのは、この暗鬱な世界観よ。社会に蔓延る闇を冷徹に凝視しながら、それをエンタメへと昇華してしまえるこの監督の手腕は大したものだ。社会派に特化した長編もなかなかのものだったが、次はこの短編のようにエンタメに寄った作品も観てみたいものだ。
[DVD(字幕)] 7点(2021-06-11 22:39:20)
342.  SKIN/スキン 《ネタバレ》 
全身に禍々しいタトゥーを彫り込み、常に社会に対して鋭い目を向けるその男の名は、ブライオン。幼いころ親に捨てられ、たまたま白人至上主義団体の代表を務める夫婦に引き取られた彼は、以来ずっとアメリカの白人の権利を守るために生きてきた。黒人やユダヤ人、同性愛者をアメリカから追い出すために、彼は日々、暴力と犯罪に塗れた生活を送っていた。そんなある日、ブライオンは3人の子供たちを女手一つで育てる貧しいシングルマザーと出会う。彼女や子供たちと過ごすうちに彼は生まれて初めて心の安らぎを感じ始めるのだった。「彼女たちと一緒に平穏な暮らしを手に入れたい」――。そう決心したブライオンは、差別主義者たちの転向を手助けしている団体と連絡を取る。だが、人種差別の闇は簡単には彼を手放してくれず、さらには全身に彫られたタトゥーが彼をより一層苦しめるのだった……。実話を基に、全身に禍々しいタトゥーを彫り込んだ白人至上主義者たちの真実を描いた社会派ドラマ。全編に横溢する、この濃厚な空気にとにかく圧倒されてしまった。カギ十字や髑髏などのタトゥーを全身に纏った男たちが大声で喚き散らしながら酒やドラッグをきめ、そして黒人を次々と血祭りにあげてゆく。しかもそこには当然のように子供たちの姿も…。噂には聞いていたが、そんな狂った世界が実際にあることに戦慄せざるを得ない。いったい何が彼らをそんな悪意に満ちた行動へと駆り立てるのか?この作品が優れているのは、ドラマの焦点をそこに絞るのではなく、主人公のそこからの厚生まで描いているところ。入るのは簡単だが、そこから出て社会復帰することの難しさを冷徹に見つめている。要所要所に挿入される、いかにも苦しそうな入れ墨除去手術の映像など、この監督のシャープで研ぎ澄まされた感性はなかなかのものだった。特に、雪の積もった真っ白なスクラップ置き場で放火された車から黒煙がもうもうと立ち上ってゆくシーンは、なんとも言えない暗鬱な美しさに満ちている。と、映像や世界観は文句なしに素晴らしかったのだが、惜しいのはストーリー面。単純なお話である分、一編の物語として観客を引き込む力が若干弱い。もう少しストーリーの見せ方を工夫するか、それかもうちょっと短くするべきだったのでは。90分くらいでコンパクトに纏めてくれたら、もっと完成度は上がったはず。とは言え、全体として非常に見応えのある社会派ドラマの秀作であることは確か。この監督の次作を楽しみに待とうと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2021-06-11 22:02:40)
343.  ハミングバード・プロジェクト/0.001秒の男たち 《ネタバレ》 
0.001秒――。それは生き馬の目を抜くようなNYの厳しい金融取引の世界で、ライバルを蹴落とすために必要な時間。光ファイバーやAIを駆使し、ライバル企業よりもコンマ1秒の差で優良株を買いそれを高値で売り抜けることで巨額の利益を上げるエリート・サラリーマンたち。そんな特殊な世界に身を置き、日々神経を擦り減らしていた落ちこぼれ金融マンであるヴィンセントは、ある日とっておきの方法を思いつく。それは、データセンターのあるカンザス州からNY証券取引所のサーバーまで、直線で1600キロにも及ぶ地下にトンネルを掘り、光ファイバーケーブルを通そうというものだった。そこに山があろうが川があろうが、まして人が住む民家があろうが買収し、ひたすらまっすぐ掘り進む。完成すれば、ライバル企業よりも0.001秒早く商取引を成立させることが出来るのだ。もはや無謀とも言えるそんな彼の計画だったが、幸運にもそのプロジェクトに出資したいという投資会社が現れる。自分の人生に一発逆転を図るため、彼は従弟である天才肌のコンピューター専門家を誘い、意を決して辞表を提出するのだった。もはや後戻りはできない。ハミングバードが一回羽ばたくような一瞬の時間に人生をかけた彼の計画は、果たして成功するのか?実話を基に、そんな無謀とも言えるプロジェクトに心血を注ぐ男たちの奮闘を描いた社会派ドラマ。野心に燃える主人公を演じるのは、まさに嵌まり役と言ってもいいジェシー・アイゼンバーグ(そう言えば、彼は過去にもフェイスブックの創始者マーク・ザッカーバーグの役をやってましたね)。監督は、独自の目線で社会問題を見つめるカナダの俊英、キム・グエン。最初こそ、「ここまでするか」と驚くほどの執念でもって長大なトンネルを掘ろうとする主人公たちの情熱に圧倒されながら観ていたのですが、彼らが相次ぐトラブルによりどんどんと追い詰められてゆくのを見ていると、なんだか呆れて笑えてきちゃいますね。だって、彼らが人生を懸けてやってることって他人より0.001秒早く株を売り抜けるってだけの話。それだけで巨額の利益を上げられるってのがそもそもおかしな話で、そんなことに人生を懸けて挑む彼らって一周廻ってこの人たちって実はバカなんじゃないかと思っちゃいますね。でも、それに世界の経済が振り回されているのかと思うともはや笑えない。相変わらずこの監督の目線は鋭い。途中に出てくるレモン農場の例えなんて見事に本質を突いている。物語の最後の顛末はまさに自業自得としか言いようがなく、そんな無駄なことに時間を使う彼らに比べたら、地道に働いてるレモン農場の農家の方が圧倒的に偉いって一庶民の自分なんかは思っちゃいますわ。行き過ぎた資本主義の矛盾をシニカルに見つめた、社会派ドラマの秀作と言っていいんじゃないでしょうか。お薦めです。
[DVD(字幕)] 7点(2021-05-31 23:30:29)
344.  レディ・マクベス 《ネタバレ》 
19世紀、イギリス。海沿いのとある地方都市に住む大富豪マクベス家へと嫁いできた、まだうら若き17歳の少女キャサリン。それまでの貧しい生活から一転、彼女は何人もの使用人を抱えた何不自由ない生活を手に入れたのだった。だが、当主である年の離れた夫は横柄な性格で、妻であるキャサリンをまるで使用人の一人としか見てくれない。しかも潔癖症なのか特殊な性癖の持ち主なのか、キャサリンに指一本触れてこないばかりか、夜な夜な彼女を裸にしてそれを眺めながら自分で処理するという毎日。次第に欲求を抑えられなくなったキャサリンは、ある日、野性味あふれる馬の世話係の男と一線を越えてしまうのだった。夫は数日前から所有する炭鉱のトラブル処理のために旅立ったきり、帰ってくるめども立っていない。若い欲望を持て余したキャサリンは、どんどんとその男と愛欲の海へと溺れてゆくのだった。当然、閉塞的な田舎町で彼女の不倫は瞬く間に人々の噂の的となり、それは遠く離れた地に居る夫の耳にも届いてしまう……。イギリスの寂れた田舎町を舞台に、若くして地主の妻となったそんな〝マクベス夫人〟の禁断の愛を濃厚に描いた愛憎劇。『ミッドサマー』で強烈なインパクトを残してくれた若手女優フローレンス・ピューの長編デビュー作となった本作を今回鑑賞してみました。全編まったくBGMもなく、ただひたすら淡々と起こった出来事を綴ってゆくという本作のスタイルに最初こそ眠気を誘われたものの、この主人公が人目も厭わずに若い男と情欲の海に溺れ始める辺りから次第に惹き込まれて観ている自分がいました。とにかく画が非常に美しいんです。シンメトリーを意識したであろうカットはどこを切り取っても、まるで中世の絵画のような気品ある美しさに満ちています。特に真っ青なドレスを身に纏った主人公が大きなソファに座ってこちらを見つめるシーンは、そのまま切り取って部屋に飾っておきたくなるほど。そんな美しい〝画〟の力が、正直このありきたりな不倫話を濃厚な愛憎劇へと昇華させることに成功しています。そして何より、大胆なラブシーンにも挑戦したフローレンス・ピューの存在感よ!勝ち気でツンとすました彼女のその凛とした表情には、何か吸い込まれそうな魅力がありますね。稀代の悪女誕生という最後のオチも説得力抜群で、素晴らしいとしか言いようがない。いやー、やはり成功する人ってデビュー作から放っているオーラ違うんですね。なかなか見応えのある愛憎劇の秀作でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2021-05-12 03:01:11)
345.  ルース・エドガー 《ネタバレ》 
彼の名は、ルース・エドガー。アメリカの進学校に通う、クラスや先生たちからも一目置かれるような17歳のティーンエイジャーだ。成績もトップクラスでスポーツも万能、その物怖じしない性格からクラスの誰からも好かれる、まさに絵に描いたような優等生。それだけではなく、彼はアフリカの最貧国に生まれたものの幼くして今の白人夫婦に養子として引き取られ、暴力のトラウマに苦しみながらなんとか立ち直ったという誰もが称賛する美談まであった。まさに非の打ち所のない好青年のルースだったが、ある日、そんな彼の人間性に密かな疑問を抱いた人物がいた。それは歴史教師のウィルソン女史。課題として出したレポートでルースは、急進的なアフリカの革命家をテーマに取り上げ、暴力肯定ともとれるような論を展開したのだ。さらに彼のロッカーを密かに探ってみたところ死人が出てもおかしくないような違法な花火が発見される。明らかに危険な兆候を感じ取ったウィルソン。相談を受けたルースの両親は、半信半疑ながらも彼に問いただしてみるのだった。そしてそれは彼の誰もが認めるような優等生としての一面を揺らがせてゆく――。文武両道の優等生である青年ルース・エドガー、彼に隠された真実を彼の両親やクラスメートたち、そして微かな疑問を抱いた教師の目線から描いたサスペンス・スリラー。冒頭から不穏な空気を濃厚に漂わせるそんな本作、ナオミ・ワッツやティム・ロスといった実力派の役者陣共演に惹かれ今回鑑賞してみました。もうとにかく、非常に真面目な優等生であるこのルース・エドガーという青年の何処か不気味で何考えてるか分からないところに物凄く引き込まれました。本当に単なる友達想いの好青年なのか、それとも内に暗い情念を隠し持ったサイコパスにしてテロリスト予備軍なのか、最後までどちらか明示せずに進めてゆくところが非常に巧みで素晴らしい。彼に疑念を抱く、生徒を自分の枠に嵌まった固定観念でしか捉えようとしない女性教師の人物造形もリアルで大変グッド。最初は彼女に嫌悪感を抱かせといて、後半、それを見事にひっくり返す脚本も完成度は高い。特に、精神疾患を抱えた彼女の妹が学校の生徒の前で全裸になって大暴れするシーンは、生々しい緊張感が漲っていてなんとも言えない後味の悪さを残してくれます。そして、このルース・エドガーという青年の考えが明らかになるクライマックス。もしかしたらこれは『隣人は静かに笑う』以来の胸糞映画の傑作となるのではないかと、僕はずっとドキドキしながら観ていました。惜しいのはこのクライマックス。息切れしちゃったのか、このラストがなんとも消化不良でいまいち納得感が得られず、僕はちょっと残念でした。とは言え、人間を人当たりや印象だけで決めつけてしまうことの恐ろしさを再認識させられる、なかなかの力作だったと言っていいんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 7点(2021-05-10 01:43:05)
346.  ソング・オブ・ザ・シー 海のうた 《ネタバレ》 
母親が謎の失踪を遂げ、以来父と幼い妹とともに小さな島で暮らす少年、ベン。家族以外誰も住んでいない辺境の地で古い灯台を管理しながら質素に暮らしていた彼だったが、都会に住むお婆ちゃんの強引な助言もあり、生まれて初めて都会で暮らすことに。母親の失踪の影響か、生まれて以来ずっと口を利いたことのない妹シアーシャと二人で、ベンはお婆ちゃんの家へと越してくるのだった。だが、新生活を始めたものの、偏屈な性格から何かというと嫌みを言うお婆ちゃんにベンの気持ちは沈み込んでゆくばかり。我が儘放題のシアーシャも彼の不満をますます増幅させるだけ。「もう嫌だ。元の家へと帰りたい!」――。そんな思いを強くしたベンは、ある日、お婆ちゃんの家を飛び出すのだった。ところが知らぬ間に妹のシアーシャも彼の後を付いてきていた。戸惑う彼を不思議な現象が襲う。なんと老人の顔をした小さな妖精たちが、妹をさらってしまったのだ。果たして妹は何者なのか?妖精たちの真の目的とは?そして、海へと帰っていった母親が彼らに遺した歌に込めた想いとは?アイルランドの伝承を基に、妖精にさらわれた妹を求めて異世界を彷徨う兄をファンタジックに描いた幻想譚。昔懐かしのアニメ「日本昔話」ならぬ「アイルランド昔話」とも呼ぶべき本作、特徴的なのはやはりその独特の画のタッチでしょう。まるで絵本の世界をそのまま映画にしたような独自の雰囲気に最初は戸惑ったものの、それもすぐに慣れ、最後はどっぷりと浸っている自分がいました。いや、なかなか良かったですよ、これ。可愛さとグロテスクさの絶妙の間を突くこの監督のセンスは自分には完全にツボでした。特にあのお爺さんの顔をした妖精たちのキモ可愛いフォルムとかナイス!すべての記憶が髪の毛に刻み込まれた妖精なんてなんともユーモラスで最高でした。悪役となるフクロウ魔女もけっこうキャラが立ってましたし。まあお話としては至極単純ですけど、それもこれくらいの尺ならぎりぎり大丈夫。主役となるお兄ちゃんが妹に見せる屈折した愛憎も僕には魅力的に感じました。まるで絵本のような独自の世界観を持つアニメーション、うん、なかなか面白かったです。7点!
[DVD(字幕)] 7点(2021-05-03 18:00:12)
347.  嘆きのピエタ 《ネタバレ》 
血も涙もない冷酷非道な闇金の取り立て人、ガンド。利子が元金の10倍にもなるような違法な借金を返せなくなった債務者を無理やり障碍者に仕立て上げ、その保険金を返済に充てていた。片手や両足を使い物にならなくされた者、自らビルの屋上から飛び降りさせた者、一生車椅子生活を余儀なくされた者……。その顔を見ただけで債務者が震え上がるほど恐れられた彼は、その生い立ちもまた壮絶なものだった。産まれてすぐ母親に捨てられ、以来天涯孤独の身となった彼の心に愛というものは存在しない。だがある日、彼の目の前にとある女性が現れる。「ごめんなさい、あなたを捨ててしまって。私はあなたの母親なの」――。藪から棒にそう告白する女性。戸惑いながらもガンドは、その女性の悲痛な叫びに圧倒され共同生活を始めるのだった。当初は乱暴な扱いを続けていた彼も献身的に自分に尽くしてくれるその〝母親〟に、次第に心を許してゆく。だが、その〝母親〟も心にある闇を隠し持っていたのだった……。韓国の鬼才として有名なキム・ギドク監督が放つ、そんな破滅的な母子愛を濃密に描いたノワール作品。幾つもの賞に輝いたという本作を今回鑑賞してみました。確かに非常に完成度の高い作品で、最後まで衰えないその熱量の高さには素直に圧倒されました。ぎりぎりまで無駄を削ぎ落したシンプルなお話に切れ味の鋭いバイオレンス描写、時にやり過ぎなくらいの暴力をこれでもかと見せつけるかと思えば親子の普遍的な愛という極めて道徳的なものを織り交ぜてくる独特の世界観、そして最後はそれらを全てひっくり返す計算されつくした脚本。監督の才能は確かなものだと思います。人の温かみなど微塵も感じさせない町工場の乾いた雰囲気などもとても印象的でした。最後、自分のために編んでくれたと思っていたセーターが実は……となるのもなんとも言いようのない後味の悪さを残してくれますね。あとから思えばこの母親の「計画」が成し遂げられそうになる瞬間が何度もあったのに、それをさせなかったのはあくまで彼女が自らの方法に拘ったからなのか、それとも愛情が芽生えてしまったのか――。なかなか見応えのある、そんな暗黒の親子愛物語。あまりにもどぎつ過ぎて自分の好みにはそこまで合致しなかったですが、良い映画体験をさせていただきました。
[DVD(字幕)] 7点(2021-03-19 01:21:20)
348.  ライフ・イットセルフ 未来に続く物語 《ネタバレ》 
ニューヨークのとある交差点である日、わき見運転の路線バスによって一人の妊婦が死亡する事故が起こる。何処にでもあるような平凡な交通事故。幸いお腹の女の子だけは無事に生まれたものの、遺された夫は自暴自棄に陥り、酒に溺れた挙句自らその命を絶つのだった。祖父に引き取られた女の子は孤独を感じながらも無事に成長し、やがて歌手を夢見てニューヨークの小さなライブステージへと立つことに――。一方、スペインの片田舎では貧しいながらも妻とともに平穏に生きていたある農夫のもとに一人の男の子が誕生する。厳しい父の元、すくすくと成長した男の子はある日、家族旅行でニューヨークへとやってくるのだった――。全く接点のなかったそんな二組の夫婦とその子供たち、だが運命の悪戯か、小さな交通事故によって彼らの人生は大きく変わってしまう……。ボブ・ディランの名曲に乗せて、そんな平凡に生きていた人々に訪れた奇跡をドラマティックに描いたヒューマン・ドラマ。全く予備知識のないまま、アントニオ・バンデラスやオスカー・アイザック、アネット・ベニングという実力派の役者陣共演に惹かれ、今回鑑賞してみました。冒頭から、主人公カップルを襲う悲劇の連続――夫の目の前で妊娠中の妻が事故死し、しかもその妻は幼いころに両親を亡くし、その後引き取ってくれた叔父から性的虐待を受けていた――に気分が重たくなります。挙句、遺された夫がピストル自殺するんですから、どれだけ悲劇なんだとウンザリしそうになりますが、本作は語り口が非常にポップなのでそこまで暗くならずに観られるのですから、これぞ映画のマジックというものですね。物語はその後、遺された娘へとクローズアップしながらも、何故かスペインの片田舎へと舞台を移し、そこで全く無関係のある農夫の家族を延々追ってゆくことに。いったいどういうことだろうと思ったら、後半で納得。なるほど全てはあの交通事故へと繋がってゆくのですね。人間万事塞翁が馬ではありませんが、人と人が出会い時に悲劇を招きながらも、それでも恋に落ちカップルとなって一緒に生きてゆくことの奇跡が非常にナチュラルに描かれていて、観ているうちにじわじわと心が暖かくなっている自分が居ました。そう、人生は悲劇の連続かも知れないけれど、それでもいつかはきっと幸せが訪れる。そう思わせてくれる佳品と言っていいでしょう。
[DVD(字幕)] 7点(2021-01-31 01:04:50)
349.  マ・レイニーのブラックボトム 《ネタバレ》 
1927年、その日、シカゴの小さな録音スタジオは緊張に包まれていた。何故ならブルースの母と呼ばれる気難し屋で有名な人気歌手、マ・レイニーが自らのバンドを引き連れ収録へと臨んでいたからだ。レコードとして発売されたら大ヒット間違いなし、彼女を口説き落とした白人の音楽プロデューサーは、人生を懸けて入念なリハーサルを重ねていた。だが、長年白人から虐げられた生活を余儀なくされていた彼女は最初から無理難題を要求し、スタジオは瞬く間にひりひりするような空気に包まれる。そこに野心に燃える若手トランぺッターも加わったことで、緊張は一気に頂点へと昇り詰めるのだった。果たして、彼女の最大の名曲とされる「ブラックボトム」は無事に録音できるのか?何度もテイクを重ね何枚も原版を無駄にしながらも時間だけはどんどんと過ぎてゆく……。まだ黒人が著しく虐げられていたこの時代、自らの音楽だけを魂の拠り所に生きたブルース・バンドの意地とプライドのぶつかり合いを描いたヒューマン・ドラマ。長年人種差別問題に高い関心を寄せていた俳優チャドウィック・ボーズマンの遺作となった本作、制作に名を連ねているのが名優デンゼル・ワシントンということもあり今回鑑賞してみました。偏屈で気難し屋で白人たちを目の敵にする人気ブルース歌手マ・レイニーを演じるのは、実力派のヴィオラ・デイヴィス。そんな実在した歌手をモデルにしてはいるのですが、本作はまるっきり創作だそうで。と言うか、舞台はほぼこの狭い録音スタジオの一室のみ、そこで様々な事情と思惑を抱えた登場人物たちの激しい応酬がメインとなるその内容に、「なんだか舞台劇のようだなぁ」と思ったら、実際にそうらしいですね。実力派の役者陣が織りなす、まさに魂の咆哮とも呼ぶべき密度の濃い演技合戦は見応え充分でした。特に、普段は軽佻浮薄な言動を繰り返す若手トランぺッターを演じたチャドウィック・ボーズマンが、子供のころの壮絶な思い出を語るときの鬼気迫るような表情には圧倒されました。素晴らしいとしか言いようがなく、つくづくその急逝が惜しまれます。どうやらレズビアンでもあったらしいマ・レイニーを貫禄たっぷりに演じたヴィオラ・デイヴィスも負けず劣らずの存在感。そして、肝心の彼女の楽曲「ブラックボトム」も、気怠いようなジャジーな雰囲気がなんとも耳に心地良かったです。年老いた黒人バンドメンバーが語る、「白人からしたら、俺たち黒人は残飯なんだ」という言葉が重い。うん、充実した映画体験をさせていただきました。7点!
[インターネット(字幕)] 7点(2021-01-15 23:31:25)(良:1票)
350.  ザ・プロム 《ネタバレ》 
多感なティーンエイジャーたちの年に一度のお楽しみ。それは、学校主導で行われる華やかな祭典、ザ・プロム。だが、そんなお祭りが開催直前になって中止の危機に追い込まれる。原因は、あるLGBTQの女子生徒が恋人である女の子と出席すると公言したからだ。法的な問題からその生徒だけを出席禁止にすることも出来ず、保守的な学校側はプロム自体の中止を宣言。賛成派・反対派を巻き込んで一大議論を巻き起こす――。そのことを偶然テレビで知った、落ち目のブロードウェーのミュージカル・スターたち。評判のよくない新作公演の宣伝のために、彼らはとっておきの方法を思いつくのだった。それは現地へと趣き、彼女たちを全面的に支援すること。当初は売名目的だったブロードウェーのスターたちだったが、女子生徒の切実な想いを知ってその心境に徐々に変化が訪れる……。という、内容自体は昔からよくある超王道の青春学園ミュージカルなのですが、本作のミソはそこに昨今流行りのLGBTQ問題を絡めたこと。まあ正直それだけのもんなんですけど、やはりそこは本場のハリウッド。全編を彩る楽曲やダンスシーンのクオリティの高さはなかなかのものでした。ニコール・キッドマンやメリル・ストリープといったベテラン女優たちの熱演もあって、もう最後までゴージャスで煌びやかで観ているだけでわくわくしちゃいますね。ベタですけど、僕はぼちぼち楽しんで観ることが出来ました。ただ、途中にキリスト教批判のような楽曲が出てきたときはびっくりしましたけど。まあ内容的にごりごりのキリスト教保守派ははなから観ないであろうとの判断なのでしょうけど、なかなか踏み込んだその歌詞にスタッフたちの覚悟を感じました。ミュージカル好きな方、社会問題に関心のある方、メリル・ストリープやニコール・キッドマンのファンの方は見て損はないと思います。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-01-14 05:02:38)
351.  ハスラーズ 《ネタバレ》 
彼女の名は、デスティニー。何処にでも居るような平凡な女の子だ。大して特技があるわけでもなく、容姿も学歴もそれなり、人に自慢できるような経歴もない。そんな彼女が生活のために見出した職業。それは文字通り裸一貫で出来る、ストリッパーだった。夜の街で繰り広げられる男たちの喧騒を乗りこなし、徐々に頭角を露わにしてゆくデスティニー。そんな彼女はある夜、お店のトップに君臨するベテラン・ダンサー、ラモーナと出会う。彼女とコンビを組み、お店の主な顧客であるウォール街の金融マンたちを相手に荒稼ぎしてゆく二人。高級住宅や車、豪華な食事に飲み切れないほどの高級ワイン、そして煌びやかな宝飾品の数々……。こんな生活が永遠に続くと信じていた。そう、あの日を迎えるまでは――。2008年、突如として巻き起こった世界的な金融危機によって、彼女たちは一夜にして全ての顧客を失ってしまうのだった。折悪く子供も生まれ、すぐさま生活に困窮するデスティニー。そんな彼女たちが、生活を立て直すために取った方法とは?実話を基に、追い詰められ犯罪に手を染めるストリッパーたちを描いたクライム・ドラマ。主人公とタッグを組む先輩ストリッパーを演じるのはベテラン女優ジェニファー・ロペスなのですが、とにかく今年で50歳になるとは到底思えない、彼女の圧倒的な存在感に尽きると思います。年齢を全く感じさせないパーフェクトなボディに、ステージを縦横無尽に駆け回る驚異の身体能力、そして何よりむちゃくちゃエロい(笑)。彼女が超セクシーなコスチュームを着て、客が投げる札束の海で踊りまくる冒頭のシーンには思わず痺れちゃいましたわ。僕はかねてより、ある種の水着は裸よりもエロいと思っていたのですが、それを改めて実感させられるようなほぼ線でしかないコスチューム姿の彼女、ナイスですね~。ただ、肝心のお話の方は正直ありきたり。追い詰められたストリッパーが、かつての顧客である金融マンを相手に金を騙し取る内容だと聞いて、もっと緻密に計画された知的犯行だと思ったら、まさかの単なる昏睡強盗。色仕掛けで客を泥酔させて近くのお店に引っ張り込んではカードの暗証番号を聞き出すという、なんだかミナミの帝王あたりに出てきそうなみみっちいお話でした。でもまぁ追い詰められた女たちの開き直りっぷりはなんとも潔く、そんな彼女たちがスケベな男どもを次々とターゲットにしてゆくとこはけっこう爽快だったかな。まさにゴージャス&セクシー。パワフルでエネルギッシュで猥雑で、目の保養にもなったし、まあぼちぼち面白かったですかね。教訓。夜の酒場で近寄ってくるエロい女には充分注意しましょう。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-01-12 01:33:12)
352.  デビル(2010) 《ネタバレ》 
それは、何処にでもあるような日常のとある一コマだった――。大都会の一等地に聳え立つ超高層ビル。上層階へと向かうエレベーターの一室に、偶然乗り合わせた五人の男女。年代も人種も職業も違い、まったく共通点のない彼らはただ偶然そこに居合わせただけだった。だが、その狭い筐体は動き出した直後、原因不明の不具合を起こし、すぐに動かなくなってしまう。どのボタンを押してもうんともすんとも言わず、唯一のドアはどれだけ力を加えても一向に開かない。警備員室へと繋がるマイクにいくら訴えても、向こうはただ落ち着いてくださいと繰り返すばかり。室内には不穏な空気が流れ始め、徐々に混乱してゆく彼ら。一瞬の停電のあと、とうとう第一の犠牲者が出てしまうのだった。果たして犯人は誰なのか?やがて彼らは気づくことになる。この事態の裏側には、超自然的な力が動いていることを……。とあるエレベーターの一室に閉じ込められた、何の関連性もなさそうな人々の駆け引きを描いたシチュエーション・スリラー。明らかに低予算で作られたであろう、いかにもB級なそんな本作、制作を務めるがとにかくアイデア一発勝負で映画を撮り続けるM・ナイト・シャマランということで、さして期待せずに今回鑑賞してみました。ところがどうして、これがなかなか見応えのあるスリリングな密室劇に仕上がっていて、僕の先入観はいい意味で裏切られましたね。とにかく緊迫感の煽り方が抜群に巧い!!こーゆー映画にありがちな、舞台はこの密室の中だけ、ストーリーを登場人物のやり取りのみで強引に押し進めたりせず、ちゃんと外部の視点も取り入れているのが大変グッド。おかげで物語にメリハリがつき、最後まで飽きさせません。がっつりオカルト要素を取り入れているのも最初はどうかなと思ったんですが、それも自然であまり違和感を感じませんでした。物語の焦点となる、密室内に閉じ込められたこの五人のうちの誰が悪魔なのかというミステリーの見せ方も巧い。ビル内に徐々に混乱が拡がってゆくとこなんて、なんだかパニック映画のような趣さえありました。この五人のキャラもそれぞれ個性的でちゃんとキャラ立ちしているところも良かったですね。あのおばちゃんが急に立ち上がってきたときは、「どひゃあ~」と思わずのけぞっちゃったし。最後のオチは若干強引で力技で押し切られた感はありましたが、総じて満足度は高い。うん、なかなか面白かった。7点!
[インターネット(字幕)] 7点(2021-01-05 01:04:29)(良:1票)
353.  アバウト・シュミット 《ネタバレ》 
彼の名は、ウォーレン・シュミット。長年勤めてきた大手保険会社で無事に定年を迎え、この度円満退職したばかりの平凡な男だ。長年連れ添った妻との仲も、いろいろと不満はあるがそれなりに良好。今は離れて暮らす一人娘のジーニーも結婚が決まり、現在式の準備に余念がない。たくさんの友人に囲まれ、平凡ながらも充実した人生を送ってきたと自分でも信じていた。だが、これから妻とともに穏やかな第二の人生を謳歌しようとしていた矢先、彼は急な悲劇に見舞われる。妻が病に倒れ、呆気なくこの世を去ってしまったのだ――。これまで家のことは何でも妻に任せきり、一人娘ともろくに腹を割って話したこともない、とにかく仕事第一だった彼の生活はその日を境に一変することになる。瞬く間に家の中は荒れ放題、身なりも乱れ、酒や食事にもだらしなくなり、娘との関係も次第にギクシャク。唯一の慰めは、アフリカの慈善団体を通して文通している会ったこともない6歳の少年との交流だけ。にっちもさっちもいかなくなった彼は、とにかく娘の結婚式に参列するため、大きなキャンピングカーで一人旅に出ることを決意する。果たして彼は無事に生活を立て直すことが出来るのか?定年退職を迎えたある一人の男の人生の危機を、ほろ苦いユーモアを交えて描いたヒューマン・ドラマ。監督は、この手のしがない中年男のトホホな日常を描くことにかけては定評のあるアレクサンダー・ペイン。彼の代表作として有名な本作を今更ながら今回鑑賞してみました。いやー、相変わらず抜群の安定感でなかなか面白かったですね、これ。よく考えたらけっこう深刻なお話なのに、そこまで重たくならずに描くこの監督のバランス感覚は大したもの。でっかいキャンピングカーで全米各地を巡る彼の珍道中はなんともトホホ感満載で、見ていて思わず苦笑い。特にヒッピー崩れの夫婦の妻に酔っ払って思わずキスしちゃうシーン、女にブチ切れされて慌てて逃げ出すとこは笑っちゃいましたわ。そして、娘の結婚相手の未だ性欲旺盛な母親に裸で迫られるシーンには爆笑。誰得ヌードを大胆に披露してくれた?キャシー・ベイツには拍手喝采ですね。唯一不満だったのは、主人公を演じたジャック・ニコルソンが強面過ぎて若干役に合ってなかったとこくらい。そして最後、主人公が会ったこともないアフリカの子供の絵を見て泣いてしまうシーンは、自身の置かれた境遇を改めて認識した末の絶望の涙だと思うとなかなか深い。人生のやるせなさを暖かな目で見つめたペーソス溢れる佳品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2020-11-29 05:16:28)
354.  ディストピア パンドラの少女 《ネタバレ》 
そこでは最後に残された唯一の希望さえ、今にも消え去ろうとしていた――。謎の伝染病が蔓延し人類の大半が狂暴な化け物〝ハングリーズ〟と化した近未来。人々は強固なフェンスを張り巡らせその中で何とか身の安全を確保していた。軍部が管理する完全に外部と隔離されたその施設内で暮らす11歳の少女メラニーもまた、深い絶望の中に生きていた。彼女をはじめとする十数人の子供たちは常に独房に監禁され、外へと出る際は完全拘束された状態でしか許されなかった。何故なら彼女たちもまた謎の病原菌に汚染されているから。そう、彼女たちは〝ハングリーズ〟でありながらも思考能力を残している新種なのだ。彼らこそワクチン開発の決め手となるかも知れない唯一の希望だった。だが、優秀な科学者のもともう少しで人類の未来を取り戻せそうになっていた矢先、とうとうハングリーズたちによってフェンスが破られてしまう……。滅亡の危機に瀕したそんな未来社会で、明日の光を求めて彷徨う人々を描いたサバイバル・スリラー。といういかにもベタな設定の典型的なB級ゾンビものだと思って観始めたら、意外や意外、なかなかしっかりとした内容でけっこう面白かったです。特にこの人々がゾンビ化する謎のウィルスの発生源がある種のキノコというのは良いアイデアですね~。最後、このゾンビたちを栄養源としていた菌が発芽し、巨大なキノコとなって今にも胞子を撒き散らそうとしているというシーンは絶望感マックスで大変グッド。それに、大量のゾンビたちが徘徊する世界でのアクションもちゃんとツボを押さえていてなかなか楽しい。主人公であるメラニーも保菌者なので、いつゾンビ化してもおかしくないというのも緊迫感があって良かったです。ただ惜しいのは、ここまで徹底的に考えられた設定で始まったお話なのに、後半から徐々にその設定に綻びが出ちゃうところ。まず、日中立ったまま寝ている彼らの近くで間違って音を出しちゃったのに、それに気づくゾンビと気づかないゾンビがいるというのはおかしい。後半、普通に思考能力が残った子供ゾンビが急に出てくるのですが、彼らの存在に一切説明がなかったのも残念。ここら辺の脚本上の詰めの甘さをもう少し何とかしてほしかったかな。とは言え、最後のパンドラの箱の暗喩もばっちり決まってたし、絶望的な世界観もしっかり作り込まれていたし、主人公もけっこう魅力的だったしで、まずまず満足の内容でありました。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-11-19 23:37:41)
355.  荒野の誓い 《ネタバレ》 
1892年、いまだインディアンの脅威が去らぬアメリカ南部の田舎町。退役を間近に控えた、かつての戦争の英雄ブロッカー大尉に、恐らく最後となるであろう任務が下される。それは、過去に仲間を惨殺したアパッチ族の首長イエロー・ホークを故郷まで連れ帰るというものだった――。末期の癌を患い、長年囚われの身だった彼を人道的な見地から故郷に帰そうというのだ。殺された仲間のことを思い、当初は断ったものの、軍人としての義務と年金のために仕方なく任務を引き受けるブロッカー大尉。信頼する仲間たちを集め、首長とその家族を連れ荒野へと旅立つのだった。ところが初日、彼は荒野で悲嘆に暮れるある一人の婦人と出会う。話を聴いてみると、彼女はなんと凶悪なコマンチ族に幼い三人の子供たちと愛する夫を目の前で殺されたらしい。絶望の淵に立たされた彼女をそのままほっておくことも出来ず、大尉は彼女を連れて旅を続けることに。だが、目の前に拡がる広大な荒野は彼らに何処までも無慈悲だった……。雄大な大自然を背景に、そんな恩讐の中に生きる人々を冷徹に見つめた西部劇。監督は、『クレイジー・ハート』でアカデミー賞の栄誉に輝くスコット・クーパー。この監督らしい細部にまで拘った丁寧な演出は本作でも健在で、一つ一つのエピソードの見せ方などは相当巧い。特に、家族を殺され天涯孤独となってしまった未亡人が自らの手で家族を埋葬するための穴を掘るシーンなど、その絶望感がひしひしと伝わってきて僕は思わず涙してしまいました。彼女を演じたロザムンド・パイクの素晴らしい熱演は特筆に値します。彼女を助ける寡黙な軍人役のクリスチャン・ベールも渋さ爆発で大変グッド。彼らが大自然の中を旅するシーンは全てが美しく、まるで優れた絵画を観ているようで非常に良かったですね。ただ、残念だったのは後半の展開。てっきりこの凶悪なコマンチ族を彼らが復讐のために追い詰めるのかと思いきや、呆気なくこいつらは第三者に殺されてしまいます。そこから物語としての強度が明らかに弱まってしまったのが惜しい。この家族を殺したコマンチ族との対決をクライマックスに持ってこないとやはりカタルシスが得られませんって!それに、入植者である白人たちとアメリカ先住民族の和解のドラマもかなり唐突でいまいち説得力が感じられない。前半の展開がすこぶる良かっただけに、なんとも勿体ない作品でございました。
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-29 00:20:42)(良:2票)
356.  ヘルボーイ(2019) 《ネタバレ》 
あの地獄のスーパーダークヒーロー、ヘルボーイが帰ってきた!!ギレルモ版前2作の大ファンの自分としては、こりゃ観ないわけにはいきますまい。監督は、その拘り抜いた独自の世界観は素晴らしかったもののお話の方がかなり残念だった『ドゥームズデイ』のニール・マーシャル。いやー、この人の細部にまで徹底的に拘ったであろう唯一無二の世界観は今回も大変素晴らしかったですねぇ~~。何処までもダークでグロテスクなのに、何処かコミカルなこの感じ、めっちゃツボでした。冒頭、悪役の魔女がアーサー王にバラバラにされ、箱に入れられて各地に埋められるシーンからもう摑みはばっちり。特に中盤に出てくる、ヘルボーイを捕える魔女バーバ・ヤーガのあの超絶気持ち悪いフォルムは出色の完成度!!こいつとヘルボーイがキスするとこなんて、数ある映画のキスシーンの中でも屈指の気持ち悪さを誇ってました(笑)。地獄から復活した魔物どもが無茶苦茶するクライマックスもグロさマックスでサイコーでしたし。まあストーリーの方は相変わらずしっちゃかめっちゃかでもう訳分かんなかったですけど。でも、このヘルボーイ君が出てくるとそんなに気にならずに観ていられるから不思議です。それだけこのヘルボーイ君のキャラが立ってるってことですね。うん、面白かった!7点!!
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-14 15:55:38)
357.  プライベート・ウォー 《ネタバレ》 
2012年、内戦が激化していた当時のシリアに潜入し、戦場のリアルな実態を報道し続けた記者メリー・コルヴィンが亡くなった。近くで爆発した砲弾に巻き込まれ、彼女はその決して長くはない人生を終えることになった。若き日に報道記者となり、スリランカの内戦取材中には銃撃を受け片目を失うという悲劇に見舞われながらも何故、彼女は戦場に行くことを止めなかったのか――。本作は、そんな彼女の波乱に満ちた生涯を冷徹に見つめた伝記映画だ。戦場の生々しい実態に心を蝕まれ、後にアルコール依存症とまでなった彼女を演じるのは、『ゴーン・ガール』での悪女役が記憶に新しいロザムンド・パイク。このメリー・コルヴィンという人をほとんど知らないまま今回鑑賞してみたのだが、これがなかなか丁寧な演出の力が光る秀作に仕上がっていた。世界の紛争地へと突撃取材を続ける彼女とその合間に都会へと帰ってきて束の間の休息をとる彼女の姿を交互に描くという本作の構成、これが巧く効いている。戦場で明日の命もままならないような生活を余儀なくされている子供たちと向き合っていた自分が、自宅へ帰ってくると裕福な友達に囲まれ何不自由ないセレブ生活を送る。いったいこの不条理の原因とは何なのか。そして自分はそんな子供たちを金儲けの道具にしているだけなのではないのか。そんな残酷な問いを突き付けられた彼女が、徐々にアルコールへと溺れてゆくのも当然だろう。彼女の人生を迫真の演技で再現したロザムンド・パイクもいい仕事をしている。この人、こういった何処か偏屈な人間を演じるのが相当巧い。最後、彼女は自らの身を顧みずに戦場へと残り、そしてその短い生涯を閉じる。何故なら、この現実から決して目を背けてはならないという確固とした信念があったから。観終わって、僕は同じくシリアで命を落とした日本人ジャーナリスト、山本美香さんのドキュメンタリーを見て非常に感銘を受けたことを思い出してしまった。時に批判されることもあるだろうが、それでも彼女たちのような職業も社会にとって絶対に必要なのだ。何故ならその地に行かなければ決して分からない真実がそこにあるのだから。メリー・コルヴィンという人の生涯を再現することに注力するあまり、若干テーマに対する踏み込みが甘くなったような気もするが、それでも充分見応えのある伝記ドラマの秀作であった。
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-09 05:39:42)
358.  ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 《ネタバレ》 
夢の怪獣大戦争!!!!「どうせ子供向けなんじゃろ~」とまったく期待せずに観たら、意外や意外、なかなか面白いじゃないですか、これ。別にゴジラにもキングギドラにもそこまで思い入れない自分ですけども、ここまで過去作にリスペクトしてくれたら同じ日本人としてはやはり胸が熱くなりますね~~。ブルーを基調とした映像もスタイリッシュかつ迫力満点で、けっこうセンスを感じました。キングギドラと覚醒ゴジラが最後に一騎打ちするシーンなんて、もはや理屈抜きにカッコいい。ま、ストーリーなんてこの際どうでもいいでしょ(笑)。うん、なかなか面白かった!!7点!!
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-06 01:34:33)
359.  ゴールデン・リバー 《ネタバレ》 
1851年、ゴールドラッシュに沸く西部開拓時代のオレゴン。各地を旅しながら刹那的に生きるシスターズ兄弟は、その類稀なる銃の腕で人々から恐れられた殺し屋コンビだ。冷静沈着で常に先を見据えた行動を取る兄イーライと自分の直感だけを頼りに時に暴走も辞さない弟チャーリーは、雇い主である地域の大物「提督」の命を受け、南へと旅を続けていた。目的は、ボスを裏切った男を見つけだし殺すこと――。先に出発し男を捜して旅を続ける偵察係モリスと合流するため、彼らは馬を走らせていた。だが、彼らがどんなに馬を急がせてもモリスに追いつくことは出来なかった。何故ならモリスはボスを裏切り、追っていた男とともに金脈を見つけ一山当てようともくろんだからだ。相次ぐトラブルに見舞われながらも、執念の追跡でモリスを見つけ出したシスターズ兄弟だったが……。西部開拓時代のアメリカ南部を舞台に、金脈に目がくらんだ男どものひりひりするような駆け引きを濃密に描いたクライム・サスペンス。冷酷無比な殺し屋兄弟を演じるのは、今ノリにのっている実力派のホアキン・フェニックスとジョン・C・ライリー。彼らに追われる裏切り者役には、こちらも人気者のジェイク・ギレンホール。何の予備知識もないまま、そんな豪華な共演陣に惹かれ今回鑑賞してみたのですが、これがなかなかよく出来た犯罪ドラマの良品で、西部劇がもともと得意ではない僕でも充分楽しんで観ることが出来ました。とにかくこの三人の主要キャラクターの人物像がよく描けている。酒と女に目がなく何度もそれで失敗しながらも懲りない弟、対照的に女には奥手で唯一思い出?のスカーフにフェティッシュな愛情を注ぐ無骨な兄貴、自分の人生に疑問を抱き理想のために逃亡を続ける密偵、それぞれの思いを抱えた彼らの追跡劇は丁寧な演出の力もあり最後まで惹き込まれます。物語の中盤、ひょんなことから手を組んだ彼らが文字通り〝黄金の河〟を求めて荒野を分け入ってゆくところから、物語はより一層悲愴感を増していく。ここら辺の各々の心理描写も鋭く、完成度は高い。苦難の旅の末、とうとう目的地に辿り着いた彼らは、欲に目がくらんだ弟の愚かな行動により破滅への道を辿ることに。人間の愚かさを冷徹に見つめたそのアイロニカルな視点は鋭い。金に翻弄された男どもの狂気に満ちた犯罪劇、なかなか見応えのある秀作でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2020-09-28 02:50:30)
360.  荒野にて 《ネタバレ》 
女癖の悪い父親とともに暮らす15歳の少年、チャーリー。何かとトラブルの絶えない父に愛想を尽かせた母親は、彼が赤ん坊の時に家を出たまま消息不明だった。学校にも通えないほど貧しい生活だったが、それでもチャーリーはそんな父との生活に満足していた。そんなある日、彼は地方競馬の競走馬を専門にする調教師デルと出会う。少しでも生活の足しにしようと、彼の元で働き始めたチャーリーは、デルの今の稼ぎ頭である若い馬ピートの世話を担当することに。そんな折、チャーリーの父親の浮気がばれ、激高した愛人の夫になんと父親が殺されてしまうのだった。天涯孤独となってしまったチャーリーは、馬のピートに深い愛情を注ぐようになる。だが、ピートは長いスランプから次第にレースで思うような結果を残せなくなってしまう。するとデルは、ピートをメキシコへと売り飛ばすと言い出すのだった。「ピートは僕の友達だ、それだけは絶対ダメだ!」――。そんな彼の意見などデルは到底聞こうとしない。どうしようもなくなったチャーリーは、ピートを連れ密かに荒野へと旅立つのだった……。家族をなくし孤独の中に生きていた少年とピークを過ぎた一頭の馬との逃避行を雄大な荒野の景色の中に描き出すロード・ムービー。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、これが丁寧な演出の力が光る佳品に仕上がっておりました。少年と馬との友情物語という、これをディズニー辺りが撮れば心温まる安定のファミリー・ドラマになりそうなものだけど、本作は全く違います。ここで描かれるのは、圧倒的な貧困の現実。主人公がどれだけ不幸な境遇にいようが、誰も助けてくれたりなんかしません。せいぜい働き口を紹介する程度で、時には主人公のなけなしの金を毟り取る輩さえ出てくる始末。それは馬も同じで、「競争馬はペットじゃない。勝てなくなった馬は処分する」という厳しさが徹底しているのです。だから、主人公は行く先々で窃盗や無銭飲食を繰り返すしかありません。それでも希望を捨てず、一人と一頭とで荒野をゆく彼らの姿がとても切ない。風呂にも入れずどんどんと汚れてゆく主人公と対照的に雄大な大自然の映像はますます美しさを増してゆく。この監督の無常観に満ちた、その詩的センスの良さには唸らされます。ただ、惜しいのはピートが途中で呆気なく物語から退場してしまうこと。たとえどんな最期を迎えるにしても、ピートにはこの少年の旅路を終わりまで見届けて欲しかった。とはいえ、この少年がどん底に堕ちるぎりぎりのところでほんの少しの希望へと辿り着くラストには思わず涙してしまいました。いつまでも余韻に浸っていたいと思わせる青春ドラマの良品と言っていいでしょう。
[DVD(字幕)] 7点(2020-09-19 00:11:41)
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