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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2374
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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21.  コックと泥棒、その妻と愛人 《ネタバレ》 
本作はグリナーウェイの最高傑作だと思います。 まるで舞台劇を見せている様な平行移動するカメラ、ボーイソプラノの歌声、腐る肉と悪臭、早くも本作にはグリナーウェイ的な要素がすべてぶち込まれています。実は全然予備知識を持たずにこの映画を観てしまったので、観終わってあまりの凄まじい映像体験に呆然とさせられました。「食欲」と「性欲」、「悪徳」と「無垢」、この世にあるものはシメントリーに分けて対比することがグリナーウェイの映像表現の基本みたいですが、この映画ぐらい悪趣味になると「美」を感じさせられます。そして特筆すべきはヘレン・ミレンの役作りで、あの熟れきった裸身はきっと本作のために逆シェイプアップ(?)したのでしょうね。腐った食肉が詰まったトラックの荷台に隠れるシーンは、豚の頭と一緒に撮られても違和感が全然ないところが恐ろしい。出来れば、ラストは「特別料理」を旦那と一緒に食して欲しかったところです。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2010-06-23 22:12:39)
22.  マルホランド・ドライブ 《ネタバレ》 
この映画、もとは『ツイン・ピークス』みたいなシリーズものとして制作されるはずだったのにボツになってしまったTV用パイロット版なんですね。R・フォスターなんか出番はあの冒頭の事故シーンだけですから、いかにもこれからストーリーに絡むぞって雰囲気だったのにね。シレンシオ劇場からあとの部分が追加で撮った部分らしいですが、どうりで訳のわからない伏線が意味ありげに散らばっているわけです。いろいろな解説が存在してますけど、そもそもリンチという監督は絵描きなので、映画も自分の頭に浮かぶイメージをフィルムに焼き込んで撮っているから、何か意図があると思っちゃだめですね(ヒッチコックじゃないんだから)。三回は観たと思いますが、正直言ってだんだんはまってきました。 もう謎解きなんか止めてリンチワールドに浸るしかないって!
[DVD(字幕)] 10点(2010-06-17 23:59:07)(良:2票)
23.  時計じかけのオレンジ
おそらく、映画史上もっとも社会的反響を呼び、もっともビジュアルやアートの世界に刺激を与え、そしてもっとも評価が分かれる映画でしょう。『メアリー女王葬送曲』が響き渡る画面にアレックスの表情がどアップで映し出された瞬間、映画の新しい地平が開けたのだと私は思う。「暴力」がテーマの映画だからと本作を嫌悪する人が多いが、他にも星の数ほど「暴力」を描いた映画がある中で、『時計じかけのオレンジ』は芸術の域に達するまで昇華した映像を見せてくれるからこそここまでブーイングを浴びるのでしょう。最近これに匹敵するのは、『ファニー・ゲーム』が頭に浮かびます。そして『暴力』と音楽の融合というメッセージをこれほど明確に与えてくれたのは、キューブリックが始めてでしょう。
[映画館(字幕)] 10点(2010-04-26 01:57:04)
24.  ゴッドファーザー
今は無き新宿プラザ劇場で封切時に観ましたが、その時受けた衝撃は未だに忘れなれない思い出です。40年近くたって観直しても、その悪魔の様な映像美にはただため息が出るばかりです。そして再確認させられたのは、アル・パチーノの緊張感に満ちた凄まじい演技です。私を映画の虜にしてくれた不朽の一本です。
[映画館(字幕)] 10点(2010-03-03 23:54:46)
25.  アンダーグラウンド(1995) 《ネタバレ》 
この映画の味付けはコテコテのどろソース風味ですが、奇想天外なプロットを重厚な悲喜劇として見せてくれて、やはりこの監督クストリツァは天才です。彼の映画に欠かせない祝宴シーンは三十分に一度の割合で出てきますが、ヨヴァンの結婚式で花嫁が空中浮遊する場面は素晴らしかった。そしてラストでひょうたん島のように河辺が流れだすシーンには、内戦の果てに消滅していったユーゴ・スラビアという国への惜別がひしひしと伝わってきます。本作は自分にとって『奇跡の映画』です。
[ビデオ(字幕)] 10点(2010-01-07 00:02:56)(良:2票)
26.  恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ 《ネタバレ》 
この映画も製作されてからはや20年経ってしまったのですね。10年ぶりぐらいに再見しましたが、全然色あせていません。ほんとこの作品は脚本が完璧!ジャックと階上の部屋から下りてくる少女とのふれあう場面が、彼のキャラに深みを与えています。そしてミッシェル・ファイファーが“メイキン・ウーピィー”をピアノの上で歌うシーンは、映画史に残る名シーンです。三人がそれぞれの道に分かれてゆくのがラストですが、15年デュオで演奏するのも人生なら、一人で生きてゆくのも人生なのです。こういう大人の雰囲気の映画は最近少なくなりました。文句なしの10点献上です。
[DVD(字幕)] 10点(2009-09-26 00:51:58)(良:1票)
27.  カプリコン・1 《ネタバレ》 
初めて観たとき、興奮してしばらく映画館の席を立てなかった記憶があります。この後、駄作・凡作を量産するピーター・ハイアムズですが、そんな彼にも本作では映画の神様が降臨して歴史に残る大傑作となりました。確かに、今DVDで見直してみると、ご都合主義が目立つ部分がありますが、そこをものともしないパワーを持っている映画です。本作のあまりにも有名なプロットは世界中の妄想おたくにパクられ、「アポロ11号は月に行かなかった」という都市伝説を誕生させましたし、そもそも「NASAの陰謀」というコンセプトはこの映画が世に送り出したものです。ヘリと複葉機のスカイチェイスは、現在のCG全盛の世の中では二度と造れない価値あるシーンですね。今でもジェリー・ゴールドスミスの書いたテーマを耳にすると、アドレナリン濃度があがります。
[映画館(字幕)] 10点(2009-06-03 20:26:29)(良:1票)
28.  ジャッカルの日 《ネタバレ》 
サスペンス映画の最高傑作です。よくこの物語はジャッカルとルベル警視の一騎打ちのように語られることがありますが、本質はOSSとフランス政府の死闘を描いているのであり、二人は組織の代表として対決します(もっとも圧倒的にジャッカルの方が自由裁量権は多いのですが)。フレッド・ジンネマンは、ルベル警視が司令塔となってフランス官僚機構がジャッカルを追い詰めてゆく過程を、ドキュメンタリーのような冷徹な映像で描写しています。ジャッカルの情事が無駄なシーンという意見もありますが、この行動が後にパリに侵入する際に警察を撹乱する伏線になっていると思います。最大の疑問は、こんな大傑作がアカデミー賞でどの部門にもノミネートすらされなかったことでしょう。
[映画館(字幕)] 10点(2009-02-20 01:41:54)
29.  ジョアンナ 《ネタバレ》 
監督のマイケル・サーンは、「ナバロンの要塞」などに出演した俳優(最近ではイースタン・プロミスに出演しているそうです)兼シンガーソングライター兼映画評論家ですが、長編第一作のこの作品は彼の才気が爆発しています。60年代スゥインギングロンドンの雰囲気がたまらなくカッコ良いのです。この映画は、駅の場面で始まり駅の場面で終わるのですが、オープニングのカッコ良さは鳥肌ものです。ラストはジョアンナが列車に乗って故郷に帰るのですが、なんと彼女は撮影中のスタッフにまでお別れのキスをして回り、列車が去ったあとカーテンコールよろしく全出演者がホームでダンスをするというしゃれた演出です。ジョアンナ役のジュヌビェーブ・ウェイトは下手な演技ですが不思議な雰囲気を持っています。アートスクールの学生という役柄、ジョアンナのカラフルなファッションは現代でも通じるセンスでした。制作40年記念してDVD化して欲しいものです。 【追伸】祝! 熱狂的なファンの夢がかなって『マイラ』と共についにDVD発売! 本作は大森一樹や大林宣彦など日本映画人にもファンが多く、また『スラムドッグ・ミリオネア』のエンディングなんか、パディントン駅でのカーテン・コールへのダニー・ボイルからのオマージュですよ。DVD発売を機会にもっと大勢にぜひ観て欲しい傑作です。『ジョアンナ』観ずしてスゥィンギング・ロンドンを語るなかれ!
[地上波(字幕)] 10点(2008-12-24 23:04:39)
30.  まぼろしの市街戦
昔はTVで吹き替えで見れたのに、「言葉狩り」が厳しくなるにつれて放映されなくなり、すっかり「まぼろしの大傑作」になってしまいました。一部には熱狂的な支持者がいる(かく言う私もそのひとり)カルトムービーの名作です。3年前にDVDが発売されていることを知り狂喜しました。この映画について書きだしたらきりがないのですが、一人でも多くの人に見てもらいたいですね。私のオールタイム・フェバリットワン・ムービーです。
[DVD(字幕)] 10点(2008-12-19 23:45:30)
31.  バッド・ジーニアス 危険な天才たち 《ネタバレ》 
貴方は学生時代にカンニングをしたことがありますか?私はあります。でも、カンニングをビジネス化して大金を稼ぐなんて発想は思いつくわけもなく、現代はITテクノロジーがそれを可能にしてしまったわけだけど、どんなことでも金儲けの手段になるなら躊躇しないという世界になってしまったという事なんでしょう。まあこの映画のタイの高校生が使う手段はスマホなんだけど、あくまで情報伝達ツールであるわけで解答をデータに落とし込む手口はまさに悪知恵の極致と言えるもので、こうやって考えるといくらAIが発達しても人間の悪知恵の方が一枚上を行くんじゃないでしょうか。 タイの映画を観たのはたぶんこれが初なんだけど、いやはやいきなり凄い傑作にぶち当たりました。“バンコクの蒼井優”みたいな感じの舌を噛みそうでとても音読みできそうもない名前の主演女優、劇中で喜怒哀楽をほとんど見せない強烈な演技を見せてくれますが、実はファッションモデルで演技経験はゼロというのは驚き。彼女とペアでSTICに挑むバンク君が母子家庭、父子家庭の主人公とは左右対称みたいな環境で、二人を利用して試験突破を図るカップルはブルジョア家庭というところはちょっとありきたりな設定と言えなくもないけど、このバカップルをけっこうコミカルな存在としているのは良かったです。とにかく後半のSTIC試験のシークエンスでのサスペンスとハラハラドキドキは半端ない、まさに手に汗握るとはこういうことですな。たかがカンニングがここまでスリリングなストーリーになるとは、予想外でした。生真面目なキャラと思っていたバンク君が、ラストではふてぶてしいカネの亡者みたいになってしまうのは、自分にはまったく思いもよらない展開でした。邦画なら絶対に二人を恋仲にするラブコメみたいになるのが必定、こういうシビアな幕の閉め方を少しは見習ったらいいのにねえ。でもいちばんいい味出してたのは、リンのお父さんであったことは間違いなしでしょう。名前が出てこないけど、この人とそっくりな俳優が日本にいますよね、誰だったかな?
[CS・衛星(字幕)] 9点(2024-01-22 22:06:59)(良:1票)
32.  清作の妻(1965) 《ネタバレ》 
模範兵として兵役を終えて帰郷した清作(田村高廣)が持ち帰った鐘の音は、因習が渦巻きドロドロした人間関係の村人たちには怠惰な生活に浸っていた自らを顧みる機会を与えたようにも感じられる。しかしただ一人その鐘の音にも無反応だった隣家の妾崩れのお兼(若尾文子)の境遇に、清作は惹かれて愛情を抱くようになってゆく… やはりこの映画は、数多い増村保造&若尾文子コンビの中でも、最高傑作として評価されるべきなんじゃないかな。それぐらい本作の若尾の演技には打ちのめされてしまいます、彼女自身が「自分が出た中でいちばん好きな映画」と言うのも納得です。彼女が演じるお兼は、お妾ながらも精一杯愛情を注ぐ隠居の爺さん(殿山泰司)にも冷たく、それこそ村人たちの陰口通りのすれっからしの女でしかない。不幸な家庭環境だったのは間違いないけど、観ている方としては全然感情移入できない。それが清作に出会ってからはどんどん変わってゆき凄まじい情念が迸る女になってゆく、これは若尾文子でなきゃ出来ない凄い演技です。彼女が清作を愛するあまりにとった極端な行動は、あの阿部定を彷彿させるところがあります。また二人を取り巻く家族や村人たちの俗悪というか民度が低いこと、これは20世紀初頭の日本人の平均的な姿なのかもしれません。盲人となった清作が鐘を打ち捨てるところは、「実は自分もつまらない俗物だった」と覚った内心の顕われになっていて、劇中でも重要なシーンです。 徴兵されて戦死する庶民の悲哀もテーマの一つになっていて、恋愛映画だけど反戦映画でもあるわけです。本作は同一原作で戦前に製作された映画のリメイクになるそうです。戦前にこれほど赤裸々な反戦的なテーマの映画が撮られていたとは到底思えないので、これこそ新藤兼人脚本の真骨頂があるのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2023-10-30 22:28:25)
33.  チャイナ・シンドローム 《ネタバレ》 
“大企業は悪、マスコミは善”という幻想が蔓延っていた(今じゃマスコミも大悪であるのはバレてしまってますけど)いかにも70年代のアメリカらしい作風だけど、本作はその衝撃性では歴代企業告発もの映画ではトップに位置するんじゃないでしょうか。なんせ劇場公開12日後にあのスリーマイル島原発事故が起こり、しかもその原因が劇中と同様の人為的なミスだったわけだから、まさに映画史上屈指の予言映画だと思います。劇中でもスリーマイル島事故でも結局破滅的な結果にはならなかったけど、わずか7年後にソ連でも人為的エラーでチェルノブイリ原発事故が起こり壊滅的な被害が発生してしまったわけで、単純に“大企業が悪”とは言えなくなったわけです。 ジャック・レモンはコメディが持ち味の俳優というイメージが強いけど、実はシリアスな役柄においてこそ本領を発揮するタイプなんだと思います。と改めて力説したくなるほど、本作での彼の演技には圧倒されます。とくにラストにかけての三十分間の緊迫感は、彼の演技無くしては成立しなかったでしょう。ジェーン・フォンダはいかにも彼女らしい適役でしたが、やはり特筆すべきはマイケル・ダグラスの功績だと思います。大俳優の息子とはいえ弱冠30代の彼がプロデュースしなければこの映画は誕生しなかったわけでなんですから。彼は俳優としても非凡ですけど、プロデューサーとしても引けを取らない実績を残してきた人なんですね。 結局チャイナシンドロームが起こらなかった結末は今風では物足りない感はあるでしょうが、かえって現実世界に向かって警告を与えるような社会性を持たせたと感じました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2023-10-09 22:33:35)
34.  悪魔のような女(1955) 《ネタバレ》 
有名な作品だけどほとんど題名だけしか知らず予備知識なしで観ましたが、これがなんと驚愕レベルの大傑作であることに気づかされました。 小規模なブルジョワ家庭の男児だけを預かる全寮制の私立学校(小学校か)。教師は四人しかいなくて女性教師は二人、そのうち一人(ヴェラ・クルーゾー)は実質学校のオーナーで、そのいけ好かない夫が校長だが彼は実業家タイプで教師ではない。もう一人の有能な女教師(シモーヌ・シニョレ)はなんと校長の愛人、つまり妻妾同居というわけです。生徒はともかく他の男性教師や使用人はその関係を知っているという、実に不思議な空間というか学校なんです。横暴極まりない校長は二人の女性を日常的に虐待していて、二人は共謀して校長殺害を計画して実行する。首尾よく彼を溺死させて水死を装うべく学校のプールに沈めますが、自然に発見されるはずの死体はプールの底から消えてしまった… 心臓病を患っていて終始弱気なヴェラ・クルーゾーと、颯爽とした金髪ボブカットで沈着冷静なシモーヌ・シニョレのキャラ造形の対比が見事です。この映画は死体が消えてしまった後半からの展開は、まさに息も尽かさぬという表現がドンピシャリなんです。「これはサスペンス映画のはずだ」と判っているはずなのに、クリーニング屋や集合写真の背景の窓に映る影の件などが続くと「まさかオカルトもの?」と劇中のヴェラ・クルーゾーと同様に観てるこっちまで疑心が湧いてきてしまいます。このストーリーテリングの特徴は、絶対にこれは伏線だと思うようなシークエンスを散りばめているのに、それがみな観客を惑わす地雷になっているところでしょう。こうなると、騙すテクニックに関してはヒッチコックをクルーゾーが凌駕していると考えざるを得ません。 ラストのどんでん返しの展開も、近頃の映画で観られるしつこい説明過多が無くて余韻が強烈です。それにしてもヴェラ・クルーゾーの死にざまは、実際に自分は見たことはないけど、心臓麻痺で死ぬ人はこんな感じなんだろうな、というリアルさでした。そしてラストシーンの子供の言葉、これはホントにゾッとしますね。このテイストはやっぱヒッチコックには無いものなんだよなあ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2023-04-19 22:44:53)
35.  市民ケーン 《ネタバレ》 
古い映画だと侮って長年じっくり観たことがなかったけど、今更ながら観直してみるとトンデモない映画だと改めて気づかされました。これが弱冠25歳の演劇青年の初監督作だとは、恐るべしオーソン・ウェルズ! 狂言回し役の新聞記者がチャールズ・フォスター・ケーンの関係者たちを回って彼が発した最期の言葉「ローズバッド…」の意味を探ってゆくというストーリーテリングは、37年のフランス映画『舞踏会の手帖』とよく似ているというか参考にしたに違いないと思います。たしかに舞台演出家だったウェルズらしくセリフには拘っている感はありますが、根本的に本作はあくまで映像でストーリーを繋ぐ映画です。その映像がまた凄いの一語に尽きるのです。ローアングル・パンフォーカス・長回しと目くるめく映像テクニックの玉手箱状態、撮影監督グレッグ・トーランドの力量もあるでしょうが実現させたウェルズのイマジネーションの成せる技であるのは間違いないです。またウェルズやジョセフ・コットンおよびエヴェレット・スローンなどの老け演技がまた見事で、メイクアップ賞をあげたいぐらい(そのころのアカデミー賞にはメイクアップ賞はなかったけど)。チャールズ・フォスター・ケーンは映画史に残る複雑なキャラ、でもこれが数奇な映画人生を歩むことになるオーソン・ウェルズの未来を予言しているような感すらあります。とにもかくにも、一生に一度は観て損はない映画だと思います。 モデルとされた新聞王ランドルフ・ハーストが激怒して潰しにかかったというのは有名なお話し。でも“ローズバッド(バラのつぼみ)”が愛人のマリオン・デイヴィスのアレにハーストがつけた愛称だったとは、そりゃハーストも怒りますよね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2023-02-16 22:33:00)(良:1票)
36.  切腹 《ネタバレ》 
井伊家上屋敷に突然現れた浪人・津雲半四郎、「当家の玄関先で切腹させてください」と申し出る。食い詰めた浪人者が大名屋敷に押しかけて腹を斬らせろとごねて金品を恵んでもらうというゆすり・たかりまがいの手口が多発していた昨今、「どうせ腹をさばく覚悟もないたかりだろ」とタカをくくった家老・斎藤勘解由は津雲を追い返すべく面談する。それは日本時代劇史上まれにみる陰惨かつグロテスクなストーリーの幕開けであった。 いやぁもう、凄い映画としか言いようがありません。数ある橋本忍の脚本の中でもトップクラス、ひょっとしたらベスト・ワンなのかもしれません。津雲半四郎=仲代達也と斎藤勘解由=三國連太郎の緊迫したやり取りから始まる序盤から、謎の浪人・津雲は何の意図があってやって来たのかが判らないまるでミステリー現代劇のような展開、もうぐいぐいと引き込まれてしまいます。幕藩体制が固まってきた寛永年間、各藩は多くの従業員を抱える法人組織みたいな存在になっています。井伊家は言ってみれば名門大企業、芸州福島家はちょっと大きめの中小企業みたいな位置付けでしょう。幕府の引き締め政策が猛威をふるって地方企業がバタバタ潰れても、財閥企業である井伊家はびくともしないわけです。そして大企業らしい官僚制のうえ建前でガチガチに固まった組織、これは現代のメガ企業のオマージュじゃないかと思うほど60年代とは思えない鋭い視点です。斎藤勘解由や沢潟彦九郎=丹波哲郎が振り回す“武士の面目”はたしかに武家社会のど正論なんですが、裏を返せば体面を保つための手段に過ぎなかったという事が劇中で見事に喝破されます。騒動が終息して記される覚書にも、まるで「西部戦線異状なし」という感じで隠蔽される幕の閉じ方、もう無常観が半端ないです。 まるで舞台劇のような展開でしたが、ラストニ十分の斬り合いがまたリアルです。さすがに眠狂四郎でも勝てるかどうかというぐらいの井伊家の手勢の人数、満身創痍になりながら息が上がってくる仲代達也の立ち回りが壮絶です。そして沢潟彦九郎=丹波哲郎との決闘、なんとこのシーンは両者とも真剣を使っていたんだと。私は剣道には知識はないですけど仲代達也の構えは戦国時代の実戦的なものなんだそうです。それにしてもこの映画での丹波哲郎は、立ち振る舞いからして迫力があってほんと強そうです、この人は剣豪役をやらせたらピカイチですね。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2022-05-30 22:08:51)(良:2票)
37.  チャイナタウン 《ネタバレ》 
ロマン・ポランスキーに典型的なハードボイルド=フィルム・ノワールを撮らせるというプロデューサー=ロバート・エヴァンズの目利き力は賞賛すべきです。ロバート・タウンの“優れた脚本の教科書”と呼ばれる脚本と、ノワール的な雰囲気をこれでもかと盛り上げるジェリー・ゴールドスミスのスコア(彼の手掛けた映画音楽のベスト・スコアでしょう)も忘れてはならんでしょう。ジャック・ニコルソンに探偵役がこれほどしっくり演じることが出来るというのはそれまで彼が演じてきたキャラを考えると意外かもしれませんが、歴代ハードボイルド映画に登場する私立探偵の中でベスト・スリーにランクインするのは間違いないでしょう。このジェイクはかつてチャイナタウンを管轄地としていた刑事、その地で女性絡みの事件がきっかけで警察をリタイアした過去があるみたいですが、それを匂わせながらも最後まで詳細を観客に教えない脚本が上手いですね。イヴリンは“何をしでかすか判らん女”というのがキャラ設定だったそうですが、まさにフェイ・ダナウェイにはピッタシの役です。出番は少なかったですけど悪の黒幕であるジョン・ヒューストンもなんか凄い存在感でした。劇中彼がニコルソンと対話している中で「うちの娘と寝てるか?」と言うセリフ、彼のアドリブだったのかもしれませんが脚本上のセリフだとしたら傑作な楽屋オチです。ニコルソンとジョンの娘アンジェリカ・ヒューストンが当時同棲していたのは周知でしたからね、この時ニコルソンが微妙な表情で返すのも傑作です。 ハードボイルド映画のストーリーが判りにくいのは一種の伝統芸みたいなものですが、その中でもこの脚本はましな方じゃないですかね。それでも“誰がダイアン・ラッド(アイーダ:偽イヴリン)を殺したのか?”なんて、気にしたら夜も眠れなくなっちゃいます(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-05-21 23:19:22)(良:1票)
38.  マリア・ブラウンの結婚 《ネタバレ》 
とにかくこの映画は、主演ハンナ・シグラ=マリア・ブラウンの惚れ惚れとするような逞しい生きざまとその美貌を堪能するのが正解です。敗戦間際にドイツ軍将校と結婚したマリア、夫は激戦の中で行方不明に。駅でプラカードを背負って夫の消息を求めるマリアですが、親友の夫からは「彼は死んだ」と聞かされます。このようなプロットはソフィア・ローレンの『ひまわり』が思い出されますが、そりゃあ監督がファスビンダーですからヴィットリオ・デ・シーカのようなメロドラマになるはずがありません。マリアは黒人米兵の愛人となって身籠りますが、そこに死んだはずの夫が捕虜収容所から帰還して黒人兵と鉢合わせになります。二人がもみ合いになるとマリアは黒人兵をビール瓶で撲殺、裁判では夫が身代わりになって有罪判決を受けて収監されます。まず驚いたのはマリアがあっさり子供を堕胎してしまうところで、あまりのサバサバぶりには「ドイツ女って怖い…」と引いてしまいます。就職した中小企業ではベッドの中で覚えた英語を武器にしてビジネス・ウーマンとしての才覚を発揮してのし上がってゆくマリア、当然の様に社長とは愛人関係になりますが、それを服役中の夫にいちいち報告するのが堪りません。とにかくこの映画では女が強い、その反面に男がみんな腑抜けや甲斐性なし、良くて紳士的で大人しいというのが特徴です。戦後ドイツおよび西独の世情がカリカチュアされていますが、それを暗喩しているのが背景音として流れるラジオ放送の内容です。戦後直後は行方不明者の尋ね人放送、やがてニュースでは西独首相アデナウアーの政策が流されついには54年のワールドカップ決勝“ドイツの奇跡”の実況にまでなります。マリアが親友のベティやその夫ヴィリーと良く訪れる学校の廃墟だけはいつまでたっても復興されず、そこだけはマリアが成人するまで育った戦前のドイツが残っているようで、その場所ではいつもとげとげしいマリアの言動も心なしか落ち着いた感じになります。西独が再軍備を開始してワールドカップを制覇した54年、マリアと夫はマリアが建てた邸宅で彼女の故意に起こしたガス爆発で吹っ飛んでしまいます。この結末にこそ、ファスビンダーの西独政治への辛辣な批評と思想性が込められているんじゃないでしょうか。 今まで観たドイツ映画に登場した女優でハンナ・シグラ=マリア・ブラウンほどその美貌が凄みすら感じさせるキャラは観たことがありません。若死にしたファスビンダーが残した“ニュー・ジャーマン・シネマ”を代表する傑作です。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-01-28 22:12:09)
39.  サンセット大通り 《ネタバレ》 
70年前の映画とは思えない、現代の眼で観てもまったく古さを感じない鬼のような傑作。海外の映画サイトやキネ旬のオールタイム・ランキングには当然ランクインしていますが、面白いことに近年になってどんどん順位がアップしています。 死者のモノローグは『深夜の告白』でも使ったワイルダーお得意のストーリーテリングですね。この映画の凄いところは、ウィリアム・ホールデン周辺の仲間たち以外、つまりグロリア・スワンソン=ノーマ・デズモンドや登場する実在の映画関係者たちが、みんなセルフ・パロディとして登場することです。ノーマとブリッジをするメンバーは三人とも実在のサイレント時代のスターですが、この人たちを“蝋人形”だとモノローグで言わせちゃう脚本がエグい、その中の一人はバスター・キートンなんですからね。グロリア・スワンソンにしてもよくこの役を請けたなと感心します、グレタ・ガルボやメイ・ウェストには当然のごとく拒否されてますからねえ。『何がジェーンに起こったか?』のベティ・デイビスとジョーン・クロフォードの先駆けだったと言えるでしょう。ノーマのセリフにもあるようにサイレント時代の女優は顔というか表情で勝負、スワンソン自身もまるで歌舞伎の大見栄を切るような大芝居の連続で、ここは彼女のサイレント女優としての本領が発揮できたんじゃないでしょうか。そんな中でセシル・B・デミルだけはノーマに優しいいい人キャラ、さすがパラマウント映画の大御所・大監督だけあってワイルダーも忖度してしまったのかな(笑)。ノーマとマックス=エリッヒ・フォン・シュトロハイムの関係なんかも始めは不気味に感じるけどだんだん感情移入してきて、ラストの映画監督に戻って指示を出すところなんかは心に染みます。 この映画はフィルム・ノワールの傑作と分類されていますけど、私はビリー・ワイルダーが生涯撮った唯一のホラーじゃないかと思います。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-01-13 22:06:54)
40.  メトロポリス(1926) 《ネタバレ》 
本作は、アヴェル・ガンスの『ナポレオン』エリッヒ・フォン・シュトロハイムの『グリード』と並んで20年代を代表する三大超大作と称されているそうですが、もちろん有名なのはこの『メトロポリス』でしょう。これぞまさに、『2001年宇宙の旅』に匹敵するSF映画史上に残るオーパーツ的な存在です。でもオリジナルでは三時間近かった上映時間のうち25%のフィルムが散逸してしまったというのは残念なことです。 サイレント映画はさほど観てきたわけではないけど、修復版の鮮やかな映像を観るとその映像の造りこみ方は感嘆するほかないですね。とくにアナログな手法ながらもその合成技術は凄いの一言です。またメトロポリスの都市デザインがとても20年代の発想とは思えないレベル、中でもチラッと映る屋上に五角形のヘリポート(?)がある高層ビルは、『ブレードランナー』に登場するポスターにも使われているビルと映されるアングルまでそっくり、これは明らかにオマージュですね。サイレント映画ですから当然セリフはなし、でも字幕は必要最小限しか使われてなく当たり前ですが映像と俳優の動きだけで十分に伝わるその情報量、一から十までセリフで説明しようとする最近の日本映画界は爪の垢でも煎じて飲みなさい。あの有名なロボット・マリアの登場シーン自体はわずかですけど、ブリギッテ・ヘルムのコピーされた邪悪なマリアの演技が鬼気迫ってます。彼女はスタントでも良いのにラングの指令でロボット・マリアのスーツ・アクターまでさせられおまけに火刑のシーンでは実際に目前で火がつけられ、「二度とラングとは仕事をしたくない」とインタビューに答えたそうです。メトロポリスの歓楽街がヨシワラと呼ばれているのは笑ってしまいますけどね。マリアというかこの映画の根底にはキリスト教的な思想が色濃く感じますけど、フリッツ・ラングと違ってナチスに心棒してドイツに残ったテア・フォン・ハルボウの脚本とは思えない、人って不思議なものですね。 ロボット・マリアはもちろんのこと、うなだれてゾンビの様に隊列を組む労働者やメトロポリスの都市デザインなど、この映画が後世に与えた影響は計り知れないものがあります。やっぱ死ぬまでに観ておくべき映画のひとつでしょうね。
[DVD(字幕)] 9点(2021-12-24 23:31:32)
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