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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2381
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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501.  マタンゴ 《ネタバレ》 
東宝特撮にはいわゆる“変身人間シリーズ”というジャンルがありますが、本作はその作品とは明らかに違う独特なテイストを持つ異色作だと思います。これは星新一や福島正美が原案に係わっているところが大きいでしょう。「観客対象が大人なのか子供なのか判らん」という声も聴きますが、東宝特撮は『怪獣総進撃』あたりまでは(これでも)アダルトを想定して撮られているので、こういうダークなストーリーテリングは見受けられないことはない(変身人間シリーズも総じて暗いお話し)。この映画が他の東宝特撮とは決定的に異質なのは、「明るく楽しい」がモットーの東宝としては珍しく人間の闇というかドロドロの関係性を強調した脚本で、これは大映の初期ガメラにも相通じるところがあります。残念なのはやはりマタンゴ人間の造形センスで、誰が見てもキノコ雲のカリカチュアだと感じると思います。これはもともと製作側の意図するところでもあり、初期デザインはもっと露骨にキノコ雲に寄っていてこれでも修正されたものなんだそうです。 とは言っても久保明に始まり久保明で終わるストーリーテリングは、初見の時は凄まじい衝撃を受けましたよ。あの難破船の正体が最後まで謎のままで終わる不条理さがこの映画に深みを与えている感じがします。そして個人的にいちばんショックを受けたのは、あの小泉博がすました顔してヨットで単独逃亡しちゃったことですね。ふつう上手い俳優なら、表情なんかにこの艇長の人間的な弱さを伏線みたいに表現するでしょうが、役者としては不器用な小泉博なんでいつも通りの真面目キャラの演技で通し、それがかえってサプライズを強調させる効果があったのは皮肉です。そしてこの映画の最大の謎は、果たして久保明はマタンゴを食べたのか?ということになるでしょう。昔から自分なりの解釈は、彼は歯をくいしばって頑張ったのに島に君臨するスーパーナチュラルな作用で、結局マタンゴ人間化してしまったというところです。だからこそ、好きな女性と供にマタンゴ人間になって幸せに暮らすという人生の選択に失敗した結末が強調されるんじゃないでしょうか。 余談:こんなドロドロ人間関係の七人でしたが、水野久美がインタビューで語っているところによれば、ロケはキャンプ気分でみんなとても楽しかった思い出になっているとのことです。役に成りきらされるメソッド演技で撮影されなくて良かったですね(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-03-18 20:37:35)(良:1票)
502.  トレマーズ 《ネタバレ》 
映画は所詮ビジネスで関係者たちがそれで生計をたてていて、必ずしも歴史に残る傑作や大ヒット作を狙っているわけじゃないことは当然ですけど、本作ぐらい製作者が予想だにしない成功を収めた映画はそうあるもんじゃないですよ。見る価値があるかどうかは別にしても、なんせシリーズになって四本も続編が撮られたんですから。基本コンセプトは、ずばり“陸上版ジョーズ”です。そしてもう一つは、“荒野のロケだけで済ませて低予算で仕上げる”となるでしょう。CGや合成を使わず、全登場人物はたった17人ですからねえ。そしてその17人のうち半数ぐらいはグラボイドに喰われてしまうのに、ぜんぜん暗さを感じさせない明るいトーンで押し切っちゃう強引なストーリーテリング。ケヴィン・ベーコンとフレッド・ウォードのバディ感もいい味出しています。ヒロインの女子大生のジーンズを意味もなくなく脱がせてパンティ姿にするというサービスを忘れていないのもさすが、だいいちあの状況では絡まっている鉄条をふつう切るでしょう、ベーコンは斧持っているんだから(笑)。 気になったのはグラボイドの最期で、あれはひょっとして『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』のパクりなのかと思いますが、偉大なるスピルバーグからインスパイアを与えられたと好意的に解釈したいと思います(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-03-15 20:54:36)(良:1票)
503.  スカイライン-征服- 《ネタバレ》 
お気づきになられた方は他にもいらっしゃると思いますが、この映画のプロット(エイリアンの出現・人類を餌にするところ・一部メカのデザインや動作)はスピルバーグの『宇宙戦争』の再現というかパクりに他なりません。とはいえB級映画らしさを出して描写のエグさにおいては思いっきり監督のやりたいことを具現化したって感じでしょう。舞台もほぼ高級マンションの敷地内に限定させて登場キャラをミニマムに抑え、その分予算をCGに注ぎ込んだみたいです。『AVP2』の監督ザ・ストラウス・ブラザーズにしては、これは上々の出来と言えるんじゃないでしょうか。 閉幕10分前の主人公カップルがマシーンに吸い込まれてゆくところでは、「こういう『クローバー・フィールド』的な終わり方も最近流行っているし、これはこれでありかな」と思っていたら、その後の5分間が予想もしなかった驚愕の展開でちょっと驚きでした。これはもうジャロッドをダーク・ヒーローにした続編展開するつもりかと身構えましたが、現在に至るまで実現せずというのはちょっと悲しいところです。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2020-03-12 23:42:30)
504.  ヘンリィ五世(1944) 《ネタバレ》 
ノルマンディー上陸に成功してナチ・ドイツの敗北が見えてきたけどロンドンにはV2号が降りそそいでいる真っ最中に、オールカラー撮影でこれだけの規模の大作を制作しちゃうのが余裕というか大英帝国の底力なんでしょうね。製作者の中には戦意高揚の意図があったかもしれませんが、生粋のシェイクスピア俳優であるローレンス・オリヴィエは自らのキャリアとアイデアを賭ける意気込みで半端なプロパガンダ映画にすることはあり得なかったのだろうと思います。同時期にフランスで、占領下で自由がないなか仏映画人が『天井桟敷の人々』を長い時間をかけて完成させており、この両作にはなんか相通じるものがあるような気がします。映画というものが、文化だけじゃなく社会的にも強い影響力を持っていた時代のお話しです。 ロンドンのグローブ座で演じられる『ヘンリー五世』とアジンコートでの英仏決戦が空間を飛び越えて行き来するメタ・フィクショナルな構成は、ローレンス・オリヴィエの演劇人としての構想力には驚嘆させられました。こんなシェイクスピア劇はそれまで誰も考えたことなかったですからね。クライマックスのアジンコートの戦いも、広々とした草原というのは史実の戦場とはちとかけ離れているシチュエーションですが、騎馬が動き出しギャロップから突撃体制に移るまでの長回しなど迫力ある映像なので満足です。 シェイクスピア劇って本で読むと退屈で興味が湧かないのですが、映像になってみるとわくわくさせられて面白いことが多いです。やはり戯曲というものは、舞台や映像にならないと真価が理解できないというのが本質なんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-03-09 23:30:59)
505.  乱気流/タービュランス 《ネタバレ》 
10年ぶりぐらいで観直し鑑賞しましたが、この映画のヒロイン・スッチーはハル・ベリーだったと思い違いしていたことに気が付きました。ローレン・ホリーもショートカットですけど、ハル・ベリーがスッチーだったのは『エグゼクティブ・デシジョン』でしたね、でも彼女のヘア・スタイルは製作スタッフは確信犯だったと思いますよ(笑)。飛行中の旅客機がトラブルに見舞われてスチュワーデスが操縦するする羽目になるという展開は『エアポート75』のカレン・ブラックが始祖だと思いますが、90年代後半になって突然このプロットが復活したような印象があります。私の中では本作と『エグゼクティブ・デシジョン』『パニック・フライト』が三大スッチー操縦映画という位置づけでございます。この三作の悪役の中で文句なしに最悪なのはレイ・リオッタであることには、皆さまご異議はございませんでしょう。もう彼はこの時期から怪優というカテゴリーに分類される資格は十分で、現在に至るまでまともなキャラを演じたことがないんじゃないかという美味しい(?)ポジションをハリウッドでキープしているわけです。対してこの三本の中で最悪(あくまでキャラとしてね)スッチーは、やはりローレン・ホリーということになりましょう。もうこの女の客席乗務員としてのバカっぷりは、観ていてほんとイライラさせられっぱなしでした。まあリオッタがあれほど嫌悪感を催させるキャラでしたから、これぐらいおバカでお人よしの方が雰囲気が和むのかもしれませんけどね。 ストーリー自体はツッコミどころが満載、いちばんの疑問はリオッタから「他の人質はみんな殺した」と聞かされていたのに、なんで着陸したとたんに彼らを探そうとするところでしょうか、まるで生きて監禁されていることを知っていたかのようにです。ましてジャンボに残っているのが二人だけとという誤報はFBI捜査官にも伝わっているのだから、LA市街に到達する前に撃墜してますよ、アメリカなんだから。そして最大のツッコミどころは、「いくらクリスマス・イブとはいえジャンボ機で一般乗客が五人じゃ、このエアラインもう倒産ですよ!」。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2020-03-06 23:38:29)(良:1票)
506.  眠狂四郎 炎情剣 《ネタバレ》 
このシリーズは五本目の鑑賞だけど、今のところ本作がいちばん面白かったかと思います。西村晃にしても中村玉緒にしても狂四郎の敵なのか味方なのか判断しづらい揺れ動くようなキャラなのが秀逸です。とくに玉緒はちょっと凄みを感じさせてくれる悪女ぶりが、50年後にすっとぼけた婆さんになっていることを知っている身には、不思議である意味新鮮な感じがするぐらいです。西村晃も完全に肩の力が抜けたような飄々とした悪役ぶりに人間臭さが出ていました。実は雷蔵は足腰が弱かったので殺陣が苦手だったそうで、チャンバラ映画で定番のぐるっと囲んだ雑魚敵を斬りまくる立ち回りには難があったようです。クライマックスの藤堂家の刺客たちを斬りまくるシークエンスでは、寺院の回廊や階段を使って一人ずつしか斬りこんでこれないシチュエーソンにしてその弱点をカバーし、映像的にも見応えを創ることに成功しています。ニヒルかつ無頼という狂四郎のキャラは一段と凄みが増してきましたが、最後には人助けをする桃太郎侍的な展開になってしまうのはこのシリーズの弱点かもしれません。でも多少なりともそういう要素を織り込まないと、ヒーローものとして成り立たないのでしょうがないのかもしれません。今回は海賊の生き残りの少女がキリシタンだと知ったのが狂四郎の善行の動機でもあり、悪魔崇拝に走って棄教した神父が父親というアイデンティティーが影響していると解釈していいのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-03-03 22:41:27)
507.  ドッグヴィル 《ネタバレ》 
いろんな意味で、これはとんでもない映画であります。ストーリー展開や後味の悪さときたら、『ファニーゲーム』を凌駕しているんじゃないでしょうか。 床に線を引いただけでのドッグヴィルの集落は、演劇では昔から良く使われている表現でさほど驚きはしません。そして開幕から70分過ぎるあたりまではある意味イイ話で、何も知らずに観ている人はハートウォーミングな映画だと勘違いしてもおかしくはないでしょう。独立記念日の会食が過ぎたあたりから住民の本性が表出してきてお話しはだんだん身も蓋もない方向になって行きますが、住民の中でも最悪なキャラはやはりトムでしょうね。生まれ故郷のホワイトトラッシュの吹き溜まりで燻っているニートのくせに、自分は優秀だと勘違いして愚かな住民相手に牧師気取りで偉そうに説教までする、もう最悪です。こういうちょっと勉強ができるバカほど始末に負えない奴はいません。父親の金をくすねてグレースに罪を擦り付けてからのこいつの言動には反吐が出そうです。 物語が始まってからしばらくは登場キャラ全員に好感が持てたのに、終わってみればだれ一人として感情移入できなくなっている(もちろんグレースもね)ところがこの映画の脚本の凄いところです。また、ストーリーテリングの緩急の付け方は絶妙で、ラース・フォン・トリアーの脚本家としての技巧は大したものだと認めざるを得ません(腹立ちますがね)。グレースがドッグヴィルを抹殺する気になるところなんて、その数分前には想像もつかない展開じゃないですか。実の娘に銃をぶっ放すような危険な男ですけど、「住民への懲罰として犬を殺して壁に打ち付けておこう」なんて(グレースに比べれば)ぬるいこと言ううぐらいで、終わってみればジェームズ・カーンが唯一感情移入できるキャラだったのかも… この映画のテーマはやはり「傲慢」ということになるんでしょうか。母親の前で一人ずつ子供を射殺させるのはもちろんのこと、いくらクズの集まりとは言っても住人を全員抹殺させるグレースこそが傲慢の極致なのかもしれません。でもあの殺戮の場面で、嫌悪よりも快哉やカタルシスを感じてしまうこと(自分もです)に気づいて愕然とする人も多いでしょう。悔しいけどこれこそがラース・フォン・トリアーの意図するところで、闇の中から奴の笑い声が聞こえてきそうです。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2020-02-29 22:12:31)
508.  バカリズム THE MOVIE 《ネタバレ》 
バカリズムという人の芸は個人的には好みではないし正直興味はなかったので、暇つぶしというか自己拷問のつもりで鑑賞。五話のオムニバスですが各話冒頭のオフコースをBGMにしての升野英知の年代記というか自己語りが、洒落っ気もオチもなくてこういうところが嫌いなんだよなって再確認させられました。でもエンドロールに流れる音頭を聞いた途端、「なるほど、これがオチなのか!」と納得しました。「映画を撮ったら褒められる、監督やったら文化人」いやー、これは北〇武を強烈にディスってますね(笑)。「無理かな金獅子賞」「いつかはハリウッド」とかも映画監督としての北〇武がなんでこんなに評価(国内では)されるのか理解できない自分には、もうツボが付きまくられました。この人は映画学校出身らしいので、北〇武・内村光良・松本人志に続いてお笑い芸人出身の映画監督という道を選べたかもしれなかったのに、このぶっちゃけぶりを見るとけっこうクレバーなんだなと思います。 内容は語るほどではない下らなさですが、『監督ばんざい!』なんかよりよっぽど笑えます。一つだけ言っておきたいのは、第三話の『トップアイドルと交際することへの考察』です。この人昨年元でんぱ組.incの夢眠ねむと結婚してニュースになりましたが、「お前、このころ(2012年)から付き合ってたんじゃないんかい?」
[CS・衛星(邦画)] 5点(2020-02-27 16:52:08)
509.  新・平家物語 《ネタバレ》 
『新・平家物語』といいましても保元の乱以前の『ザ・レイズ・オブ・平家』とも言うべき清盛の青春時代が描かれていると言って間違いはない映画です。何故に?と申しますとこれは大映が平家物語三部作として企画した第一作で、溝口健二は他の二作には関わっていない、というか本作が溝口のラス前作で予定はあったのかもしれないがすでに彼はこの世にはいなかったというわけです。また、二本しかないカラー撮影作品の一本でもあります。 主演の雷蔵は映画デビューして二年目、世評では雷蔵は本作で演技開花したとされています。とはいっても、まず若人あきらかイモトアヤコかというぐらいの強烈なインパクトのある眉毛メイクに、眼が釘付けになっちゃいますよね。時代考証にうるさい溝口だけど、これにはなんか拘りがあるのかと訝しむばかりです。平清盛というと『平家物語』のせいでどうしても傲慢な悪役イメージがつきまといますが、考えてみれば公家政治を終わらせて武士の時代を切り拓いた人、織田信長の吉法師時代みたいな描き方もこれはアリでしょう。また自分の出自に悩み苦悩する清盛像も、ある意味現代的で斬新な感がありました。余談ですが、私の中では大河ドラマ版『新・平家物語』の仲代達也が、史上最高の平清盛だということになっています。 「女を撮らせたら溝口」というのが定番ですが、観れば納得できるように群衆や僧兵の大群などモブ・シーンの映像も素晴らしい迫力があります。それは名カメラマン宮川一夫の技量もありますが、これは長年コンビを組んで息が合った末に完成した名人芸でもあるでしょう。惜しむらくは保存状態のせいかフィルムの発色が劣化しているところで、貴重なカラー版溝口作品なのでぜひデジタルリマスターしていただきたい。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-02-23 22:17:31)
510.  ロシアン・ルーレット 《ネタバレ》 
いやはや、何と言いますか、これほど伏線を張らない脚本って久しぶりに観たって感じです。ミッキー・ロークは何故あんなに簡単に会場から出てゆくことができたの?警察はふつう釈放した主人公を尾行ぐらいするでしょ?ゴミ箱に隠したカネの詰まったバッグ、たぶん戻ってきたら消えているだろうなと誰でも思うだろうけど、ゴミ集積所で無傷で主人公が取り戻すなんて予想できますか?100ドルも出して譲らせた非売品の縫ぐるみ、これはさすがになんかあるよなと期待していたのに、単なる小道具だったなんて…書き出したらキリがありません。でも『カイジ』を彷彿させるというかパクった様な雰囲気は、緊迫感というか伏線がないので予想を裏切り続けてくれて、そんなに悪くないと思いますけどね。監督は昔で言うところのグルジア人で自作をリメイクしたそうですが、アメリカ国内が舞台設定だけど風景や登場人物のキャラがグルジアというか東欧っぽいのはそのせいですか。その登場キャラや大金を賭けるギャンブラーたちの素性、そもそも主催しているのはどういう組織なのかなど、観客に与える情報が最小限なのが私としては好みです。中でも登場シーンがほとんど同じセリフを繰り返し怒鳴っているだけだったマイケル・シャノンがツボでした。 最後に一言、「ジェイソン・ステイサム、ざまーみやがれ!」
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-02-20 23:43:12)
511.  ゴッドファーザー PART Ⅲ 《ネタバレ》 
失敗作とまで酷評する人までいるのは知っていますが、私が思うにそれは偉大なゴッドファーザー・サーガの最終作という宿命を負っているためで、90年代マフィア・ギャング映画の中では『グッドフェローズ』と双璧をなす作品だと思います。■PARTⅡと同じように、PARTⅢもパラマウントとコッポラの大人の事情(つまり切実にお金が欲しいということ)によって製作が決定されています。本来はトム・ヘイゲンの死というテーマの下で脚本が書かれましたが、ロバート・デュヴァルの降板というアクシデントでまず躓きました。アル・パチーノもギャラでゴネまくっていたのを宥めすかして出演させたそうです。だけどいざ撮影となるとコッポラの情念が詰まったような映画となりました。三部作はどれもパーティーのシークエンスで始まりますが、それぞれのパーティーには込められた意味が違っているというところが、コッポラの構想力の凄みなのかもしれません。そしてキャスティングが強烈で、コッポラの妹タリア・シャイアに続いてソフィア・コッポラをついにヒロインに抜擢しました。本作ではソニーの隠し子・マイケルの甥としてヴィンセントが登場しますが、こうなればこの配役にはコッポラの甥のニコラス・ケイジを起用して欲しかったところですね。でもソフィアとヴィンセントのラブシーンもあるし、実際の従兄妹同士に演じさせるのは不味いとコッポラが判断したのかもしれません。こうなってくるとマイケルはコッポラの分身みたいな感じになりますが、すでに功成り名遂げてハリウッドではまさにゴッドファーザー的な存在であったのでけっこうリアルなのかもしれません。■そして三部作でマイケルとともにサーガを創り上げたコニーが怖いんです。本作では完全にファミリーを陰で支える姐御的な存在になり、その武闘派ぶりがマイケルを苦しめます。そんなコニーですらフレドーの死が事故だったと信じているシーンは、ちょっと衝撃でした。さすがのゴッドファーザー・マイケルも隠し通すしかないんでしょうが、これではマイケルの苦悩が深まるのは必然でしょう。■実際のヴァチカンのスキャンダルと法王の死を巧みに盛り込んだ脚本は、さすがコッポラと感嘆しました。ヴァチカン聖職者をここまで悪役として憎々しく描けるとは、同じイタリア系とは言ってもスコセッシには到底できないことでしょう。それだけ両者にはカトリックに対する思い入れが違うということです。その悪役陣の中でもイーライ・ウォラックの大狸ぶりは光っていました、あれにはマイケルと言えども騙されるのはしょうがないでしょう。■物語はマイケルが父を守ったように、ヴィンセントがマイケルを守る、いわば第一作がタイムスリップしたような展開になっています。でもマイケルは父ヴィトのようにはなれず、愛されることを切望しても憎まれてしまう人生となってしまいました。そして再びシチリアで最愛の女性を失い、やがて父と同じように屋外で大往生するのですが、それはあまりに対照的な寂しい最期です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-02-18 22:29:26)(良:2票)
512.  黒い罠 《ネタバレ》 
冒頭の長回しはあまりにも有名ですが、これってタイトル・ロール部分だけで時間にして三分半ぐらいと意外と短い。でもこの映画の撮影で特筆すべきなのは、この長回し部分も含めてアクション・シークエンス部分での画面手前や奥から動くいわば縦のカメラ・ワークの切れ味で、50年代でこれほど躍動感に満ちた映像を見せてくる映画は珍しいと思います。変なところもオーソン・ウェルズが監督ですから当然のごとくありまして、まずメキシコ人という設定のチャールトン・ヘストンがミンストレル・ショーまがいに顔を黒メイクしているところは違和感が半端ない。まあどうやったってヘストンはメキシコ人っぽくならないのですが、これはやり過ぎです。対するウェルズ演じる悪徳警部クインランですが、これはもうウェルズの怪演に眼が釘付けにされます。このストーリーはいわば元祖バッド・ルーテナントと呼ぶのがふさわしく、この警部の悪徳ぶりはかなりのレベルに達していました。マレーネ・ディートリッヒはいわばチョイ役出演という感じでしたが、画面に登場したときの存在感がこれまた半端ない。やはりチョイ役でザ・ザ・ガボールも顔出しているし、考えるとけっこう豪華なキャスティングじゃないでしょうか。冒頭の建設業者爆殺事件と本題のメキシコ・ギャングがどう関わるのか最後まで気にかかりましたが、ラストのオチは意表をつくまさにサプライズでございました。 フィルム・ノワールの傑作という評価が一般的ですが、ノワールといっても決してB級ではないってことは声を大にしておきたいです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-02-14 23:32:22)
513.  バイス 《ネタバレ》 
最近は特殊メイク技術の進歩で演技力がある俳優ならばどんな有名人に化けることもできそうですが、クリスチャン・ベイルはデ・ニーロの流れを組む肉体改造型キャラ創りの最後の雄、メイクも凄いですけど20キロ近く体重を増やしてディック・チェイニーを演じ切りました(さすがにこれは辛いらしくて、今後は肉体改造を止めると宣言したそうです)。彼に限らずブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官などそっくりさん大集合といった観もある作品ですけど、みな対象の仕草や喋り方を演技で見事に再現しているところが感心します。 原題の“Vice”には副大統領の“副”という意味のほかに“悪徳”という意味もあり、これはなかなか意味深です。また本来“副”には“正”のような権限はないけど責任も負わないという立場なので、考えてみればこの立場を悪用すれば陰に隠れてけっこうヤバいことができるという絶妙なポジションでもあります。この映画の描いていることがどこまで真実に近いのかは判るはずもありませんが、観る限りではチェイニーはとんでもない悪徳政治屋と解釈されるかもしれません。でも、猛妻の尻に敷かれていたりとても家族思いな面があったり、クリスチャン・ベイルの演技もあって好感までは持てないにしても人間として理解はできるんじゃないでしょうか。観るまでは野心家妻に陰で操られる人という印象はありましたが、どうしてどうして、ワシントンでのチェイニーの活動は完全に彼個人の野心が暴走してゆく過程であると思いました(だいいち、副大統領になることには奥さんは反対してましたからね)。サム・ロックウェルの演じるブッシュ大統領がまた絶妙で、たぶん実物も実像はこんな感じだったんだろうなと思わせる説得力がありました。この映画の脚本は秀逸で、狂言回し的に前半から登場するブルーカラー労働者風のおっさんを「こいつは何者だろう?」と訝しんでいたら、まさかそんな人だったとはと心底驚かされました。編集も実にコミカルで雰囲気を出しているのですが、題材が題材だけに後半に行くに連れてどんどんシリアスになってゆくのは止むを得ないところかと思います。 考えてみると、このブッシュ政権は正・副両大統領とも伝記が映画化されたわけになります、これはある意味で快挙なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-02-12 21:59:11)(良:1票)
514.  ナイト&デイ
トム・クルーズとキャメロン・ディアス、『バニラ・スカイ』以来の共演。『バニラ・スカイ』はシリアスな映画だったので、キャメロンお得意の能天気ラブコメ風味路線でのトムとの共演は、やはり豪華です。そのトムが冒頭からドラッグのやり過ぎイカレてしまったような変なエージェント、でもジェイソン・ボーンばりに超無敵です。とにかく、危険なシーン大好きなトムの願いを叶えましょうという感じで、旅客機内の激闘・不時着から始まり過剰なアクションの大盤振る舞い、もちろんCGやVFXは駆使していますが彼はこれでは欲求が満たされなかったのか『M:I』シリーズではスタントなしで飛行機にしがみついたりする始末、この人はほとんどビョーキです。ちっとも役作りしないのでイーサン・ハントと見分けがつかないけど、どうせ脚本も遊びまくってほとんどおバカ映画領域に踏み込んでいるので気にしないことです。トムはこの怪演を突き通すのかと思ったら、だんだんまともなキャラになってしまうのは残念でした。所々でキャメロンをクスリで眠らせて強引にショートカットするストーリーテリングも、ほんと笑わせてくれます。こういうなにも思い悩むことなく没頭できる映画ってほんとイイですよね、『チャーリーズ・エンジェル』シリーズにも通じるところがあります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-02-08 23:35:12)
515.  エイリアン4 《ネタバレ》 
原題のどこにも“4”という数字はないし“RESURRECTION”と銘打っているぐらいだから完全にリブートか番外編的な方が、シリーズの位置づけとしては正解なのかも。前作では煮えたぎる溶鉱炉に落ちてエイリアンともども消滅したはずのリプリーなのにクローンに必要な組織をどうやって入手するんだよと突っ込みますが、宇宙船に残っていたリプリーの血痕を使いましたとすました顔で説明されてはもう、何でもあり状態だから「はい、そうですか」としか返しようがないですね。リプリーのクローンを造ったら体内のエイリアンまで再生するというのはいくら何でも理屈に合わないと思いますけど、もう誰も気にしてないみたいです(笑)。でもそりゃ三作目よりは遥かに観れる映画に仕上がっているんだから、まあいいんじゃないですか。 監督にジャン・ピエール・ジュネを起用していますから、エイリアン造形のグロ度合いと変態性はシリーズ中屈指かもしれません。中でも妙に人類に寄った容姿のエイリアン・ベビーの気持ち悪さはさすがで、それでもリプリーを見つめる眼はグッとくるほどに悲しげで、こういうところがジュネらしいなと感じました。ロン・パールマンやドミニク・ピノンといったジュネ作品の常連も妙にストーリーにはまったキャラで良かったですね。いちばん不満なのはやはり無敵の怪物と化したリプリーで、エイリアンは母なるリプリーには決して手を出さないとなったら、映画自体のスリルが半減です。意外とこの物語に嵌っていたのはウィノナ・ライダーでして、このころの彼女は美しかったなと再認識させられました、でもなんでアンドロイドの彼女が宇宙の果てまで来てエイリアンの地球侵入を阻止しようとするのかは観てて全然理解できませんけどね。 後半の脱出シークエンスは、途中で水没地帯を通過するあたりはもろ『ポセイドン・アドベンチャー』のパクりというかオマージュ、アイデアの枯渇というかネタ切れ感はひしひしと伝わってきましたね。ベビー・エイリアンの最期も第一作でも使われているのと同じですけど、いちおうこれでループの完結というつもりなのかもしれません。 200年(?)かかってリプリーのオデッセイはついに地球にたどり着いたわけですが、核戦争後みたいな荒れ果てた地と化していて、この世界観にはなんの説明もないのでこのあたりを語るもうひとストーリーを観てみたい気もします。リプリーが高台から見下ろすのはかつてパリだった廃墟、これは『アメリ』にもあった様なカットで、いかにもジュネらしい閉め方でした。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-02-06 23:38:24)(良:1票)
516.  眠狂四郎 女妖剣 《ネタバレ》 
眠狂四郎シリーズも第四作目にしていよいよエロ要素が強めになってきました。悪役も今後のシリーズで宿敵となるらしい備前屋徳右衛門が登場、ラストの狂四郎に斬られもしない中途半端な退場は生かしておいて次作以降で使う魂胆だったわけですね。宿敵と言えば若山富三郎の懐かしの陳孫も再登場、狂四郎と再び対決いたしますがまたも決着つかずにフェードアウト、これじゃあ『キングコング対ゴジラ』のラストシーンと同じです。悪役といえば、今回はキリスト教そのものがその役目を担っている感じもします。狂四郎の父親が実は棄教して黒ミサを信奉する外人だったという衝撃の事実、でもキリスト教に対する憎悪としか言いようがない冷淡さをそれまで見せられてきたから、自身は薄々勘づいていたように見ることもできます。醜い容貌の菊姫も美しい聖女びるぜん志摩も、どちらも魔性の女でしたという結末は強烈でしたが、現代では下手したら男尊女卑だと炎上しかねませんね。狂四郎に斬られる敵に強いのが一人もいなかったのは、ちと心残りでした。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-02-01 23:37:38)
517.  地獄の英雄(1951) 《ネタバレ》 
ビリー・ワイルダーと言えばどうしてもコメディが有名ですけど、実は人間のエゴや赤裸々な行動を描かせても天下一品なんです、要は何でも出来ちゃうということです。まだスターリンが生きてて朝鮮戦争の真っただ中という時代に、ここまで商業ジャーナリズムの偽善性とそれに扇動される大衆の愚かさをあからさまに描くとは大したものです。邦画では長い間「新聞記者と弁護士は正義の味方」というステロタイプが蔓延っていたことを思うと、日本映画の問題意識の欠如を嘆かずにはいられません。もっともハリウッドでは、フランク・キャプラの『群衆(41)』という本作と同様の視点で撮られた映画もありまして、キャプラもワイルダーと同じくコメディ畑の監督なのが面白いところです。主人公の野心ギラギラの新聞記者がカーク・ダグラスだというところで、もうこの映画が傑作になる運命だったんでしょう。脚本もワイルダーらしい巧緻な構成が光りまくっています。冒頭で押し掛けた田舎新聞社の編集長を「ズボンを履くのにサスペンダーとベルトの両方を使う男は騙せない」と評したダグラスが、一年後には同じスタイルになっているのは脚本の芸が細かくて笑わせてくれます。最初のころは半分は善意を持って集まってきた民衆が、だんだんイベント目当ての野次馬に過ぎなくなり、特別列車まで仕立てて押し掛けるエスカレートぶりの異様さ、もうここにはワイルダーの大衆に対する嫌悪すら感じます。ちょっと不満だったのは、最初は冷酷・無慈悲な人間だったダグラスが途中から生き埋めになったレオに同情するようになるところがいささか唐突なような感じを受けるところです。ラストになると完全に良心に目覚めて勧善懲悪っぽい幕の閉じ方で、これは例のヘイズ・コードや大スターであるカーク・ダグラスへの忖度があったのかもしれません。そこら辺は、時代が違えどもメディア報道をテーマにした、ジェイク・ギレンホールの『ナイトクローラー』とは偉い違いです。まあ『ナイトクローラー』はリアルではあるけどあまりにやり過ぎ、とんでもないお話しですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-01-31 22:24:24)(良:1票)
518.  クィーン 《ネタバレ》 
英国王室を揺るがした世紀の大騒動を赤裸々に映画化ってとこでしょうか、いずれにしても日本では皇室をテーマにした映画自体が想像すらできないのは確かです。 改めて観ての感想は、英国王室は「家」としての要素があまりに濃厚だということです。そこは憲法で「象徴」と定義されて国家システムの一部という感もある天皇家と対比すると、興味深いところです。歴史的に英国は王家の血筋が切れると、薄い血縁関係がある欧州大陸の親戚が家ごと王位を継ぐというシステムでやってきたわけで、ここら辺は複雑な婚姻関係でつながっている欧州王族の強みですね。この映画で描かれるダイアナと英王室の関係も、婚家と嫁の不仲という下々の家庭でも当たり前のように見られることと本質は一緒です。離婚した妻が死んだら葬儀は元妻の実家が取り仕切り、元夫は個人としてはともかくとして婚家が関わらないというのは当然のこと、でもそれでは通らない立場だってことに考えが及ばなかったのがこの時の女王の失敗だったんでしょうね。 ヘレン・ミレンの素晴らしい女王演技もさることながら、感心するのは脚本の出来の良さです。チャールズ皇太子を始めとする王室メンバーの言動は、ここまで赤裸々に描いちゃって大丈夫なの?と心配になるぐらいです。とくに皇太后エリザベスの毒舌にはもう笑うしかないです。チャールズ皇太子も自分に世間の非難が向かないようにすることだけに汲々なずるい感じが良く出ていて、本人からクレームがつけられなかったのかな。中でも、「ダイアナは生きてても死んでも面倒を起こす」というマーガレット王女の言葉はあまりにも辛辣でした。鹿狩りに夢中な自分以外の王族に内心は辟易としている女王の心理はとても共感できますし、あの鹿はダイアナの暗喩に違いないと私には感じます。女王と鹿が出会うシーンはこの映画のクライマックスだと思いますし、「早く逃げなさい」とはまるで死の直前のダイアナに語り掛けているような感じです。けっきょく鹿は隣の民間人住人の客に仕留められてしまうのですが、これはパパラッチに追いかけられて事故死した経緯を戯画化していると思います。これが女王の心境の変化を促すきっかけとなったわけですが、他の王族と較べてあまりに女王のことを良く描きすぎというきらいもあるけど、ヘレン・ミレンの名演に免じて許しましょう。 そう言えば最近ヘンリー王子が揉め事を起こしてまたまた英国王室が揉めていますが、やはりダイアナの血筋は争えないということでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-01-30 22:38:19)
519.  女王陛下のお気に入り 《ネタバレ》 
テューダー朝とは比べ物にならないけど、スチュアート朝もけっこう宮廷内はグチャグチャでなかなかのものです。登場人物はまずアン女王、英国の歴代女王としてはもっとも影が薄く、実際にも明敏な知性や決断力を持ち合わせてはいなかったみたいですが、治世中にはグレートブリテン王国(スコットランド王国との正式な合邦)が発足したりしてそれなりに国勢は伸長しています。そして彼女の幼馴染でもある筆頭女官のサラ、彼女の夫はマールバラ公ジョン・チャーチル、そう英国史上最良の軍司令官にしてウィンストン・チャーチルやダイアナ皇太子妃のご先祖様です。アビゲイルはサラの従妹で、彼女を頼って宮廷に仕官してきました。この女王とサラの関係がなんとも生々しいんです。即位する前から苦楽を共にしてきた親友みたいな感じで、女王に対するツンデレな態度がもう堪りませんし、さすがにこれはフィクションでしょうが二人はレズ関係なんです。いかにも策士といったレイチェル・ワイズと、ただのおばさんにしか見えないオリヴィア・コールマンの対比が面白い。オリヴィア・コールマンは普通のおばさんみたいなのに突然女王らしい威厳を見せるところなど巧みな演技、ヘレン・ミレンに続くクイーン女優の誕生ですか。ルックスからするとヴィクトリア女王役にも最適じゃないでしょうか。カメラ・ワークも独特で、魚眼レンズを使ったカットが頻繁に使用されているところが不思議な感覚です。全編を八章に分けたストーリーテリングなんかはどことなく『バリー・リンドン』を彷彿させられます、時代設定もほぼ同時期ですしね。でもアン女王には配偶者(王配)がいたのになぜか登場も言及もなく、まるで独身みたいなのが不思議。まあこの撮り方の方が、女王の孤独が強調されているとも言えますが。 面白いのは当時の宮廷政治の状況で、このあたりが現在まで続く英国議会政治の始祖と言えるのでしょう。一応トーリー党とホイッグ党という二大政党の体制ですが、議会が開催されていない時は宮殿であひるの賭けレースに興じたり、なぜか素っ裸になった大臣にみんなでトマトをぶつけて遊んだり(なんかの罰ゲーム?)、まるでガキの集団みたいです。議員といっても全員貴族、当時の上流階級の退廃ぶりが窺えます。この宮廷政治や外交政策の決定に、サラやアビゲイルの助言が影響力を持っていたとは史実とはいえ恐ろしくなります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-01-27 21:01:14)
520.  エリザベス 《ネタバレ》 
ドロドロ・コテコテの宮廷劇といえばもうイングランドのチューダー朝がピカイチ、この暗さと複雑な人間関係がたまりません。その集大成と言えるのがエリザベス一世治世ですが、この映画はその前半部分でスコットランドのメアリー・スチュアートとの関係や外交をばっさり切って、暗殺がらみの陰謀とロバート・ダドリーとの愛憎に絞ったストーリー展開となっています。 エリザベス女王はもちろんケイト・ブランシェットの当たり役にして出世作、ルックスはもちろん話し方や訛りまで変幻自在なカメレオン女優ケイトの面目躍如です。この映画はまだ若いころの出演ですが、改めて観てケイトはティルダ・スウィントンと瓜二つというかキャラ被りしてたんだなと、つくづく感じました。特にラストの白塗り顔になると区別がつきません、こんなことに喜んでいるのは私だけですね(笑)。だけどストーリーテリングは、ロバート・ダドリーとのメロドラマに軸足を置き過ぎた感じは否めませんでしたね。ここら辺を観ていると、知ってはいましたがよくもぬけぬけと“ヴァージン・クィーン”なんて言わせたものだ、さすがヘンリー八世の娘だと感心します。そこにエリザベスの秘密警察長官であるウォルシンガムが絡むわけですが、このジェフリー・ラッシュはなかなかいい味だした演技です。メアリー・オブ・ギーズの死の件やロバート・ダドリーの謀反とその処遇なんかは初耳でどう考えてもフィクションですが、まあエンタティメントですから五月蠅いことは言いますまい。だけどあまりに重苦しいストーリーテリングで、ちょっとは息が抜けるところがあっても良かったんじゃないかな。そういやヴァンサン・カッセルのアンジュ―公が女装趣味の持ち主だったとエリザベスにばれるシークエンスがありましたね、この映画で唯一笑えるシーンでした。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-01-23 23:51:01)
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