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民朗さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1317
性別 男性
ホームページ http://minrou.seesaa.net/
年齢 36歳
メールアドレス baker221b@live.jp
自己紹介 全体的に甘めの評価になりがちです。
当然映画のジャンルによって評価にバラつきがあります。以下参考までに……。

評価が高くなりやすいジャンル:ミュージカル、B級アクション、ロマコメ、バカコメディ
評価が低くなりやすいジャンル:ミステリー、サスペンス、ラブロマンス

基本的に過激な映画が好きです。暴力的な意味でも、性描写的にも、人間性の描き方でも
どれだけ感動的な映画であっても尖った所が無い映画より、過激な表現がある映画の方を評価しています。

13.4.27(追記)……TOHOシネマズが6月1日から高校生料金を1,000円にするとのこと。
今は若い方が映画館に少ない状態なので大変素晴らしいと思います。
(日本の料金はそもそも海外に比べて高すぎる。価格も一律で決められているから劇場間の競合も生まれにくい)
でももうちょっとシネコン自体が上映する映画のラインナップを改めた方が良いのでは。
客が集まる邦画をバンバンかけるのは経営としては正しいけれど、いつか必ずしっぺ返しが来るのは判り切っていることなのに。

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41.  地獄でなぜ悪い 《ネタバレ》 
園子温監督は自伝の中で、如何に現在の日本映画界で「泣ける」「感動できる」映画が持て囃されていて、観客に「泣かせること」を至上命令とするような映画が溢れていることに憤りを顕にしていました。そして黒澤明や深作欣二など日本を代表する名匠の映画には、唯々泣ける映画は殆ど無く、自分はそういう映画を作りたいと熱い思いを吐露していました。 そして完成した映画が『地獄でなぜ悪い』です。いや、園監督は実質的デビュー作『自転車吐息』から基本的に常に同じ路線で突っ走っていると思います。「どうしたら観客にショックを与えられるか?」「自分が作りたい映画とはどういうものなのか?」、という問を追求されてきた監督です。しかも下手をすると単なる自慰行為とも呼べる映画になる所を、園監督は観客を満足させるサービスも忘れずふんだんに盛り込んで映画を作り上げる。これは別の芸術家の言葉ですが、芸術作品は畢竟「混沌(コンフュージョン)」と「秩序(オーダー)」のバランスが大事なのだ。園監督はそのバランスの取り方が実に上手いと思います。 本作も正にそういう作りで、クライマックスではヤクザ同士の殺し合いが只管に続き、血が其処此処にビュービュー飛び出て、首がポンポンすっ飛び、銃声がガンガン鳴り響き、怒号が飛び交う。これは観客に向けたサービスと取るべきでしょう。オープニングから『仁義なき戦い』のテーマが流れる通り、この映画は深作欣二監督のタッチに非常に近いと思います。迫力のある残虐描写と気の抜けたギャグが連続する。正に深作欣二の世界。観客は地獄の乱痴気騒ぎに身を委ねるのみです。そこに園監督の映画への熱い思い、一生に一本の映画を取れるなら命なんて要らない!いい暮らしをして平凡な映画を作り続ける位なら死んだ方がマシ。そんな話が展開していく。 ある種の観客や映画の作り手にとってはこれ程のサービスは無いでしょう。そのサービスを全く有難がらない方がいらっしゃるのも当然です。私には最高のサービスでした。
[映画館(邦画)] 9点(2013-10-11 22:04:14)(良:1票)
42.  ゆきゆきて、神軍 《ネタバレ》 
アナーキストである山崎謙三を追ったドキュメンタリー。ぶっちゃけ山崎謙三その人は疑いようも無くアレな人である。"神軍"と大きく書かれている車を乗り回し、天意を受けていると思い込み、暴力を礼賛する。彼がまともであると主張する人は少ないでしょう。 しかしドキュメンタリーが事実を映すエンターテイメントとするならば、これほど観ていて面白い対象も中々無い。とにかく氏の行動が極端で次のアクションが読めないことがサスペンスとなっている。暴力をふるう前に画面が溜めのスローモーションとなるのも上手い演出だと思います。 またこれには人それぞれに許容できるラインがあると思いますが、個人的に"絶対に妥協はしない"氏の生き様には少し憧れを感じた。別に氏のように振る舞いたいという意味では無く、その姿勢や存在感に圧倒されたと言う意味で。『時計じかけのオレンジ』のアレックスや、『ダークナイト』のジョーカー、『ウォッチメン』のロールシャッハに魅力を感じてしまう感覚と同じ。 つまり彼は現実に存在しているにも関わらず、どこかフィクショナルな存在感を持つ稀有な人間であるのだと思います。またそういう人間が私たちの住む世界に実際にいると如何に困った存在であるかと言う事実も、この映画は克明に炙り出している。
[DVD(邦画)] 9点(2013-10-07 22:53:42)
43.  パシフィック・リム 《ネタバレ》 
男の子の夢炸裂!ここまで上映時間が只管に至福だった経験は久しぶりです。とにかくギレルモ・デル・トロ監督の怪獣映画への愛がふんだんに盛り込まれており、とりわけ終盤の香港市街を大破壊しつつ展開するカイジュウとジプシー・デンジャーとの大格闘は最高でした。大都市で怪獣が暴れまわるとどうなるか?という怪獣映画の永遠のテーマを見事に描写できており、個人的には怪獣映画の一つの到達点でありマスターピースとなることと思います。 ストーリーに関しては特に突出したものは無いものの、"男の意地"、"父子の絆"、"国家間のイデオロギーを超えた各国の共闘"がバランス良く配置されており、個人的には別段映像のみが凄いという印象はありません。それはもしかすると役者さんの力量による部分が大きいかも知れません。大俳優は出演していないですが、個々の役者さんの演技のアンサンブルが実に自然に写っており、特に個人的に心配していた菊地凛子さんの演技は『バベル』の時の役柄とは正反対のキャラクターでしたが大変良かったと思います。 しかし矢張り特筆したいのはカイジュウとイェーガーの戦闘シーンに尽きます。『パトレイバー』や『エヴァンゲリオン』に大きく影響を受けているであろう各イェーガーは個々のキャラが立っているし(どうでもいいけど私は無骨な感じのチェルノ・アルファが一番好き)、デル・トロ監督が好きなクトゥルフ神話の神々を思わせるヌメっとした異形のカイジュウの造形も素晴らしい。そんな魅力的な姿形の奴らが大都市でバーリ・トゥードのプロレスをしてくれるのだ!こんなに楽しいことは無い。 エンドロールの最後で日本怪獣映画界の名匠・本多猪四郎監督に献辞が捧げられていたのも感慨深かったです。日本人として大変嬉しく光栄に思いました。折角、海外のオタクが日本のロボット・怪獣文化に多大な影響を受けた映画を作ってくれたのだ。日本人なら四の五の言わずに観てくれ!
[映画館(字幕)] 9点(2013-08-09 18:17:47)(良:4票)
44.  野良犬(1949) 《ネタバレ》 
前半は単純に面白いサスペンスが続き、この刑事サスペンスの手際の良さからして驚愕の出来なのですが、後半に進むに従って「人間は何故悪に染まるのか?悪とはなにか?」という人間にとって根源的なテーマに突き進んでいく展開が素晴らしいです。そしてベテラン刑事、佐藤の家で呑んだ帰りがけ、「どんな人間でも悪に染まる恐れはある」と議論した後に映る、無垢な子どもたちの寝姿のカットの良さよ。数々のカットが物語のテーマを象徴し、観客に「君はどう思う?」と質問を突きつけて来る。実に映画的な魅力に溢れた作品だったと思います。 近年の映画は恐らく『ダークナイト』の影響でしょうが、絶対悪との戦いを通して善と悪を描いた作品が多くなっていますが(勿論、それも描くに値するテーマです)、本作の様に一義的な善悪の話に収まらない話も素晴らしいと思います。その象徴として段々と狂犬じみた相貌に変わっていく正義感・責任感溢れる村上刑事と、最後に子どもの歌を聞いて泣き崩れる遊佐の関係がある。最後の佐藤刑事の物語の締め方も実に良かった。 またホテルで佐藤刑事が遊佐に撃たれる場面ではバックにラジオから流麗な音楽が流れますが、こういうバイオレンス描写と美しいBGMを合わせるという手法も恐らくその後の映画に多大な影響を与えているんだと思います。私がパッと思い出すのは『時計じかけのオレンジ』『フェイス・オフ』『ドラゴンタトゥーの女』等ですが、そういう点でも大変映画史にとって重要な作品だと思います。
[DVD(邦画)] 9点(2013-07-27 11:10:08)
45.  きっと、うまくいく 《ネタバレ》 
すげえ!インドすげえ、超すげえ!私はインド映画では無理を通して道理を蹴っ飛ばすタイプ(つまりラジニカーント主演作)の作品しか観たことがないのですが、本作はそんな映画とは違う実にウェルメイドな万人に勧められる作品だったと思います。とにかく脚本が素晴らしく、散りばめられた伏線が過去と現在の両方で解決されていく様は最高!の一言です。しかも観客が楽しめるように、笑い・涙・ロマンス・アクション・ミステリー・サスペンスがギッチリと詰まっている。なのに破綻していない!もう一度言いますが、脚本が素晴らしいと思います。 しかしテーマは実に鋭く、また重い。私は数年前に個人旅行でインドに行きましたが、スローライフのメッカと言われている国を見て感じたことは、その一般的印象とは裏腹に、本当に勝ち組と負け組がハッキリと分かれており、弱者にとっては非常に生き辛い世界だということでした。そこら辺の道に死体が無造作に転がっている(適当に道端で火葬する)。一方で、同じ道に高級車を乗り回しているビジネスマンがいる。スラムの直ぐ傍に超高層ビルが乱立する。ラージューの家庭が正にそうですが、金持ちになりたければ勉強をするしかない、そうでないと直ぐ先には死か物乞生活が待っている。だから親は子どもを何としても収入の良い職業につかせようとする。子どもはその重圧に耐え切れず自殺する。 そんな社会の中で「自分が本当に好きなことをやればいいじゃないか!」というメッセージを持つ映画が生まれ、大ヒットしている。GDPの伸びに蔭りはあるものの、インドという国はまだまだ伸び代がある国だと強く感じました。私も観て実に勇気づけられました。Aal Izz Well!
[映画館(字幕)] 9点(2013-07-18 23:44:41)(良:4票)
46.  こわれゆく女 《ネタバレ》 
ジョン・カサヴェテスはインプロヴィゼーション(即興演技)の監督として知られていますが、この映画ではその演出が実に上手く機能している様に感じられます。伝説と化しているジーナ・ローランズの鬼気迫る"こわれゆく"演技は勿論、夫を演じたピーター・フォークやその他の端役の人物まで、あるがままの瞬間をカメラに収めたとしか考えられず、この物語が只の一夫婦の話ということを強烈に印象付けられます。その演出に効果的に使われているのが超クローズアップの多用ですが、このクローズアップが登場人物の目のゆらぎ・僅かな顔の揺れや震えを以て感情を鮮やかに映し出す。こういう機微は役者の顔をカメラに収める映画という媒体でしか成し得ず、「ああ、俺は今映画を観ている」と強く感じました。こういうのが本当の映画なんだと思う。 ストーリーに関しては、個人的な思い入れがあるため、ここでは述べられませんが、簡単に言うならば"夫婦"のあり方を大変鋭く無慈悲に愛を込めて提示した作品であると思います。
[DVD(字幕)] 9点(2013-07-16 00:52:42)
47.  ザ・マスター 《ネタバレ》 
どこかの批評で「PTAは映画に愛されてる」「映画を撮るために生まれてきたような監督」という論を読みましたが、正にその通りだと思います。とにかく各シーンが強烈なインパクトを有していて上映後も何度も反芻してしまう。この辺りの感覚はキューブリックの映画に近いと個人的には思っていて、全体的にシンメトリックな画作りに拘っている点が両者に共通しているのも面白い。 本作では特に前半部の長回しが強烈で、フレディの働く写真屋(ブティック?)をコートを纏った女が歩き回る場面や、"マスター"ことトッドがフレディに催眠(あえてそう呼びます)をかけフレディが過去を吐露する場面は、計算され尽くされた画と役者の卓越した演技力に目を釘付けにされます。 前作の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』と同様に役者の狂ったような暴れっぷりも本作の魅力の一つで、特にホアキン・フェニックスのリビドーが溢れ出した様な演技は圧倒されつつもついつい笑ってしまう名演だったと思います。 ストーリーは獣の様に生きていた男、フレディを新興宗教の教祖であるトッドが治療しようとするという話で、そのお話自体もフレディが最終的に宗教と決別する展開などは実に良いのですが、この映画のストーリーはある種現代社会の縮図として作られていると思います。何時も猿のようにセックスのことしか頭にないフレディは大衆(愚衆)の象徴で、それを自らの道に導こうとするトッドは所謂近代的国家の象徴。だから彼は説法で「人はこう生きるべきだ」と明確に人の価値観を定義する。そこにトッドの奥さんが絡んでくる。トッドの奥さんは鏡の前で彼のアレを処理する場面で分かる通り彼の手綱を握っている。トッドと奥さんは二人で一つの国家を象徴しており、自分の宗教に難癖をつけてくる男に「誰もがそれぞれの考え方を尊重すれば良い」と言うトッドは所謂ハト派、「難癖をつける奴は戦って叩きのめせば良い」と言う奥さんは所謂タカ派。だから奥さんが次第に大衆を象徴しているフレディを得体の知れない理解不能な存在として疎み追放しようとトッドに進言する点も合点がいく。 映画の最後でトッドはフレディに「君は誰にも支配されずに生きる初めての人間になる」と言い彼を送り出しますが、大衆を象徴するフレディの成長(アル中の時と顔つきが全く違う)を"支配から逃れ自由に生きること"としているのも素晴らしいと思います。
[映画館(字幕)] 9点(2013-06-09 16:19:34)(良:1票)
48.  リンカーン 《ネタバレ》 
大変素晴らしい映画でした。巨匠になってなお、これだけ尖った主張の映画を作り続けるスピルバーグは本当に凄いとしか言えない。 基本的に派手なアクションは無く全編に渡って政治家達の舌戦が繰り広げられますが、まずこの会話劇が滅茶苦茶面白い!伏線も上手く貼っていて、ハイライトとなる修正第13条の決議当日とそれに至るまでの攻防はドキドキあり、驚きあり、笑いありで最高でした。黒人たちが当日に議事堂に入ってくる時にはホーキンス議員の顔芸のせいもあって思わずガッツポーズしちゃいました。そしてスティーヴンスが可決された修正第13条の原紙を手渡す相手がまた泣ける... リンカーンは奴隷解放を実現するために下院で修正第13条を可決させようとしますが、南軍が疲弊し南北戦争が思いの外に早く終わってしまう危険性が浮上する。使節団が和平を求めているとなると、修正第13条を可決する意味が民主党側には薄れてしまう。何とか可決に導こうとする為に主人公はありとあらゆる工作を張り巡らせる。でもそうなるとある葛藤が生じてくる。いくら平等を勝ち取るためとは言え、政治に工作が行われても良いのか?ということです。スピルバーグはそんな彼を主人公として、ヒーローとして描きました。何故なら平等という名のもとには全てが優先されるから。 ある人はラディカルな政治運動による統治は絶対に為させるべきでは無いと思うでしょうし、その考え自体も間違いでは無いです。というか答えなんて絶対に出ない。それでも"人種差別の根絶は全てに優先する"という考えを私は支持したい。最近、ヘイトスピーチが公然と行われ言論の自由を盾に逮捕すらされない日本という国に住んでいる自分にとって主人公は紛れもないヒーローでした。
[映画館(字幕)] 9点(2013-04-28 22:16:26)(良:1票)
49.  ジャンゴ 繋がれざる者 《ネタバレ》 
純然なブラックスプロイテーションだったと思います。近年は暴力的でありながら、真剣に「暴力や復讐は何も生まないんだ、云々~」と説く映画が多いですが、「そんなもん知るか!悪い奴らはブッ殺せ!」という、ある種陽気な暴力シーンは見ていてスカッとします。これぞブラックスプロイテーション。 しかし終盤まで主人公のジャンゴとシュルツは法に背いた殺しはしません。シュルツはいつも自分は法の下に賞金稼ぎとして人を殺めていることを強調し、ジャンゴは子どもを持つ賞金首を殺すことにためらいを感じたりもしています。 だがシュルツは極悪人キャンディを射殺してしまいます。キャンディは法的には別に犯罪者では無いにも関わらず。ではなぜあれほど法を重んじていたシュルツはキャンディを殺したか。 シュルツはキャンディの義姉(もちろんレイシスト)がベートーベンの『エリーゼのために』をハープで弾くのを聞いて、「ベートーベンはやめてくれ!」といつも冷静な彼とは思えない程に狼狽します。それはドイツ人の彼が自国の最高の作曲家を差別主義者に演奏されるのが耐えられなかったのだと思います。その後、キャンディの書斎で大デュマの『三銃士』を見つけるところも同様。大デュマは「正義」を常に作品に込めた作家でしたから、「なんでこいつはデュマの作品が好きなのにこんな非道いことができるんだ?」と愕然としたのでしょう。私も全く同感で、「もうこいつらブチ殺すしかねーよ!」とフラストレーションが極まった所で、大銃撃戦となり、白人どもを皆殺しにしてくれるので爽快感は半端じゃなかったです。この戦闘シーンに至るまでの会話劇は本当に素晴らしかった。アカデミー脚本賞も納得の出来だったと思います。 それからタランティーノの映画にはいつも言えることですが、画面がカッコいい!広漠な大地とそこに佇むガンマン・ジャンゴというだけで本当にサマになる。往年のマカロニ・ウエスタンの何よりもカッコよさを優先する画作りにはシビれました。「助けに来たぜ、ベイビー」なんてついつい笑っちゃいますけど、超カッコよかった。
[映画館(字幕)] 9点(2013-03-23 09:31:15)(良:2票)
50.  ゼロ・ダーク・サーティ 《ネタバレ》 
2001年から2011年までの10年間、アメリカはイラク戦争と対テロ戦争によって疲弊していった。キャスリン・ビグロー監督は前作『ハート・ロッカー』でイラク戦争によりアメリカが正義を喪失していく様を描いたが、最後にはどん底の中の希望を見せて終わった。しかしこの映画はそんな一縷の希望すら与えていなかった様に感じます。 主人公のマヤは序盤ではCIA内で行われる拷問に目を背けていましたが、徐々に徐々にテロとの戦争に疲弊し神経をすり減らし、最終的にはビン・ラディンを殺すことを第一優先とするようになる。これは10年間に同じく消耗していったアメリカを象徴しているのでしょう。そして最後に大きな輸送機にひとりポツンと座り一筋の涙を流すマヤは、9.11の報復というには余りにも大きな犠牲を払ってしまったアメリカそのものの様に見えました。そんな国を体現するかのような難しい役柄を演じたジェシカ・チャスティンは素晴らしい演技だったと思います。 ビン・ラディンの暗殺は対テロ戦争において一応の節目となった。それでも今なおテロは世界各所で続いている。クライマックスの途轍もない臨場感で描かれる突入作戦で、両親を目の前で殺された子どもたちが描かれますが、彼らが新たなテロの芽となっているのかも知れません。 2005年から2008年にかけてはアルカイダのテロ活動が特に活発になった年だったと強く記憶しています。イギリスのダブルデッカーが粉々に爆破され、欧米人が滞在するホテルは片っ端から自爆テロの標的にされた。新聞の国際面には毎日の様にアルカイダによるテロの記事が載り、無関係の命まで容赦なく奪うテロという行為に暗澹たる気持ちになった。その時の恐怖を本当にリアルに思い出さされた作品でした。正直観ていて自爆テロのシーンは神経に応えまくったし、もう二度と観たいとは思えませんが観るべき作品だったとは強く感じます。
[映画館(字幕)] 9点(2013-03-11 23:21:42)
51.  キャビン 《ネタバレ》 
これは本っ当に観客を選ぶ作品ですね。もっと言うと鑑賞条件を選ぶといっても良いかもしれません。劇場の周りにホラー(特にスプラッタ・ホラー)好きがいるのがベスト。私は運良くそういう人達しか集まらない様な会場で鑑賞できましたので、劇場内は爆笑の連続という大変楽しい映画体験でした。 今までもホラーの定形を崩した作品ってのは『スクリーム』『ブレアウィッチ・プロジェクト』『パラノーマル・アクティビティ』など何度も作られていますが、大体の作品がまず定形を崩すことで本来ホラーに最も必要な怖さが減退していることが多いと思います。しかし、この映画は終盤まで「ホラー映画って作るの大変なんだぜ?お色気シーン入れるのにも一苦労」というネタで爆笑させておいて、最後にはキッチリとモンスターが暴れまわり観客のテンションはクライマックスに達する。しかも暴れるモンスター達は過去のホラー映画の謂わばチャンピオン級ばかりなのだから盛り上がらない訳がありません。 そして最後の最後にシガニー・ウィーバーが現れたシーンで大爆笑。最近オチ担当みたいな女優さんになってますね。アンタもうちょっと役選べ!
[試写会(字幕)] 9点(2013-03-11 22:47:55)(良:1票)
52.  アパートの鍵貸します 《ネタバレ》 
私は結構テーマ主義な部分があって、良くも悪くも作品が持つテーマを意識して観ることが多いです。大体の映画というものは一つのテーマに沿っているもので、多くても二つまでが殆ど。しかし驚くべきことにこの映画にはテーマがいくつも混在している様に思えます。 まず恋愛が一つ。この映画を通して強く感じるのはシンプルな「恋は半端にするんじゃなく、本気でやれ」ということ。主人公の周りの上司達は火遊びとして女の子と遊んでいますが、主人公のバドは全く違います。だからフランについて茶化された時はムッとしましたし、フランもずっと一人一人の男を真剣に愛してきた。上司達と主人公(バドとフラン)を見るとどちらがメンチュ(立派な大人)かは明らかでしょう。上司達は社会的地位はあるかもれませんが子どもです。 次に自己犠牲が一つ。恋愛と少し被りますが、本当に愛してるってどういうことなのか?上司のシェルドレイクは家族を失うのは嫌だけれど若い女を取っ替え引っ替えしたいという自分の身を出来るだけ削らない人間でした。バドは惚れたフランを庇うために彼女の義兄に殴られますが、彼は彼女の役に立てて嬉しそうでした。つまり愛するということは相手のために自分を犠牲にするということです。そうじゃないと愛してるとは言えない。 その次に仕事が一つ。主人公は自分のアパートの一室を上司に貸し出すことで易々と出世しますが、彼の能力によってではありません(逢引の場を工面する要領の良さを私は能力の一つと思いたくない)。上司におべっか使うことが出世としての正しい道なのか?そうじゃないだろうということでしょう。その証拠に部長補佐に落ち着いたバドは空虚な人間としてカメラに映されています。 以上の様に、「愛・仕事・人生」と生きる上で重要なヒントが山程込められている大変に素晴らしい作品でした。
[DVD(字幕)] 9点(2013-02-24 23:37:46)
53.  恋人たちの予感 《ネタバレ》 
元々ノーラ・エフロン脚本のロマコメは好きな方ですが、この映画が個人的に思う彼女のベストです。なんでこんなに面白い男女間のダイアローグを考えられるかと不思議で仕方がありません。特にセックスのことまで赤裸々にぶっちゃけるトークは笑いが止まらず、特に見せ場(?)であるメグ・ライアンの喘ぎ演技は抱腹絶倒間違い無しです。 友達同士でいる時のある種楽な関係から一歩踏み出すことが出来ず、やっと踏み出して肉体関係を持っても「やっちゃった~」って感じでまた逃げる二人は、観ていて微笑ましいというか何というか……、男女間の関係はどの時代でも難しいもんですな。 個人的には男女間の友情は成り立たないと思っているので、最後のハリーの告白には思わずガッツポーズでした。「大晦日なんて関係なくお前が好きだ!最後の日まで一緒に過ごすんなら少しでも早い方がいいだろう!」って超カッチョえーなー。 何度か挿入されるジャズのスタンダード・ナンバーも映画の内容にピッタシで良かったです。紅葉の並木道で流れる「Autumn In New York」、エンドロールで流れる「But Not For Me」もいいけれど、やっぱりサッチモとエラ・フィッツジェラルドが歌ってる「Let's Call Whole Thing Off」が最高ですねぇ。「♪ 君が好きなのはこれやそれ、僕が好きなのはこれやあれ。君はイーザー僕はアィザー、君はニーザー僕はナィザー。ああ、こんなこともう止めにしようよ。」本当にハリーとサリーそのものです。
[DVD(字幕)] 9点(2013-01-14 23:49:02)
54.  レ・ミゼラブル(2012) 《ネタバレ》 
『レ・ミゼラブル』は小説では私の人生のベスト、ミュージカルも非常に好きな作品でありますので、とてもとても客観的な視点での評価ができないことをお許し下さい。 まず私は『レ・ミゼラブル』だけは映画化できないと思っていました。なぜなら昔からミュージカル映画とは歌と踊りがセットになっているものです。それに対して『レ・ミゼラブル』は殆どの会話が歌のみで進み、正直画的なダイナミズムは無いと言わざるを得ません。会話が歌で進むというのは全編が歌ばかりになってしまい印象が平板になってしまう恐れすらあります。しかし今回の映画化はミュージカルファンに大変人気の高い「夢やぶれて」「星よ」「民衆の歌」「オン・マイ・オウン」等で最大限に盛り上げ、場面のつなぎのような曲は演出も控えめになっています。監督がこの長大なミュージカルに思い入れがある(もしくは勉強している)ことが本当に良く分かります。 多分作品に思い入れがあるんだろうなと思うところは、原作小説の有名な挿絵とそっくりな画にしている場面がたくさんあることです(日本版では岩波文庫で見れます)。普通ならこんなところまで気を回さないはず。ファンとしては最高の映画化と言わざるを得ません。 各場面の演出はトム・フーパー監督らしく丁寧かつオーソドックスという感じで、ジャベールが「星よ」を歌い上げるシーンでは力と正義の象徴である鷹の石像が映り込んでおり、その後ジャベールの最期では同じ状況にも関わらずもう鷹の石像はおらず空も曇天に包まれていることで彼の絶望を表している。オーソドックスで面白みがないという人も沢山いそうですが、私はだからこそ観客の心にも響く演出だったと感じました。 歌唱力ではアン・ハサウェイ、ラッセル・クロウ、サマンサ・バークスの三人がとにかく素晴らしかったです。彼らの苦悩を絞り出すような声の表現力は流石というしかありません。劇中最高のクソ野郎テナルディエ夫妻を演じたサシャ・バロン・コーエンとヘレナ・ボナム・カーターも観ていて非常に楽しかった。 最後に、この『レ・ミゼラブル』がこの混迷の時代に映画化されたことには大変意味があると思います。このストーリーの核は至極単純、「他人を慈しみ、清く正しく生きろ」ということ。不誠実がまかり通っている現代に誠実の風が吹くことを心から願います。それこそが原作者ヴィクトル・ユゴーが一番民衆に望んだことなのですから。
[映画館(字幕)] 9点(2012-12-30 12:01:25)(良:2票)
55.  Kids Return キッズ・リターン 《ネタバレ》 
北野映画の中では最も分かりやすくストレートな作品。それだけに心に響くというか心をグサグサ突いてくる。主人公2人はこの社会の中で無頼として生きたがっているように見えます。だから彼らは社会の中の上下関係というものに非常に嫌悪感を抱いているように思いますし、カメラの捉え方にもそれは顕著に現れる。それを特に強く感じたのはヤクザ同士の抗争を手打ちにしようとした時に、マサルが激昂する場面。マサルは会長室を飛び出しますが、会長たちはゴルフのハンディについてなんか喋ってる。つまりヤクザもんの世界ですら彼ら無頼に生きる場所は無い。それでも「まだ始まっちゃいない」と主人公たちを突き放さないところに北野監督の無頼への愛情を感じました(まあ監督が自伝なんか読むと分かる通り無頼のヒトですからね)。それからこの映画が特に優れているのは真面目一貫で生きているヒロシの人生も寂しく描かれるところだと思います。ヒロシは高校を出て営業マンとして真面目に働くもどうしても上手くいかない。タクシーの運ちゃんになっても変わらない。真面目な人間でも人生は余りに辛い。当たり前のことですが只のヤンキーの人生だけに絞ってない所が素晴らしかったと思います。
[DVD(邦画)] 9点(2012-11-11 20:06:01)(良:2票)
56.  アシュラ(2012) 《ネタバレ》 
人間の残忍さと尊厳を同時に描いた傑作。上映後に暫く席を立てなかった映画は久しぶりです。それほど深い感動を覚えた気が致します。 『生まれてこないほうがよかったのに』― この台詞は原作漫画で度々繰り返される主題です。アシュラは自分がなぜ生まれたのか、自分の人生に生きる意味はあるのかと自問し続けます。確かに観客もそう共感してしまうほどにアシュラの人生は畜生道に塗れているといっていい。実の母親に焼かれ喰われそうになり、母の愛を村娘に求めるも"人でなし"と蔑まれ、生きるために人肉を喰らい、その結果殺戮を繰り返す。 それでも乞食法師はアシュラに人の道を示す。助け合って生きるのが人間と。誰しも獣(ケダモノ)を己の中に抱えているが、それと戦ってこそ人間であると。人を憎まず、己の中の獣を憎めと。 これ以上拙文を書き連ねるよりも、ラストの法師の言葉を以ってレビューを締めたいと思います。 『私はお前(アシュラ)に教えられた。それはあらゆる命を奪い生きているという人の性(サガ)だ。それでも命ある限り足掻き生きていく。だからこそ、この世は美しい』 最高の人間賛歌。
[映画館(邦画)] 9点(2012-10-12 23:47:48)(良:1票)
57.  ディクテーター 身元不明でニューヨーク 《ネタバレ》 
毎度ブッ飛んだキャラクターで笑わせてくれるサシャ・バロン・コーエンですが、彼の作品の中では今のところ一番面白いと感じた作品でした。過去作の「ボラット」や「ブルーノ」は有名人や一般人にドッキリを仕掛けていく半ドキュメンタリー的な内容なのですが、今回の「ディクテーター」は完全に劇映画としてストーリーがキッチリとある為、単純に面白い。ではどこが面白かったかと言うとそれは前述の通り「独裁者アラジーン」のキャラクターに尽きます。生まれた時から独裁者の地位を約束され、民主主義・資本主義大反対、処刑大好き、ついでにバイセクシャルでセックスも大好きという完全に悪役としか言いようもない男がなんと主人公。側近の裏切りによって祖国ワディヤ共和国が独裁政治を止め民主国家に生まれ変わることを目撃し、悲壮なBGMをバックに放水車に向かって「独裁万歳!」と叫ぶ場面なんて最高。もの凄く主人公が可哀そうに見えるように演出されていますが、どう考えても主人公の主張に賛同できないから笑うしかありません。最後の主張も実に良い。結局ワディヤ共和国の民主化は世界中の石油業者が金儲けをするために過ぎず、ワディヤ国民のことなんてちっとも考えられていなかった。そこでアラジーンは演説で「独裁は最高だ!なんせ国民の金を1%の人間に集めることだって簡単だからな」と言う。コレはつまり「お前ら資本主義だって金持ち1%に富を集中しているじゃねーか、お前らがやってることも独裁だ!」ってコトですね。これは世界中のデモに発展した"ウォール街を占拠せよ運動"そのものです。最後に痛烈に資本主義の暴走を揶揄している点が素晴らしいなと思います。そしてアラジーンはオッパイも無いし体臭もキツイ男の子みたいな(アンナ・ファリスごめんね)女と結婚する。民主主義は一部の民衆が金を荒稼ぎするシステムを作るものじゃない。好きな物がどれだけ他人から見て無価値でもそれを好きと言えるシステムが真の民主主義。だから相手が好きだったらオッパイなくても、体臭キツくても、ユダヤ人でも別に良いぜ!と独裁者であるアラジーンが最も民主主義的だったのには不覚にも感動を覚えてしまいました。エンドロールで流れる曲は「Aladeen Motherfuckers」。Motherfuckerには最低と最高という意味がある。アラジーンは最低だけど最高なキャラクターだ。「ラララララ~、アラジーン・マザファッカ~♪」
[映画館(字幕)] 9点(2012-09-21 00:37:52)(良:1票)
58.  ダークナイト ライジング 《ネタバレ》 
前作の「ダークナイト」は暗闇の中で生きる正義を描いた傑作だった。ゴッサムの人々は暗黒の中にデントという一筋の希望を見出し、その代わりにバットマンは悪の象徴として生きることとなった。全ての悪を背負ったバットマンの姿は尊いものだろう。しかしちょっと考えてみる、それってゴッサムの人々に真実を語らず欺いていることになるのではないか?真実を知っているのはバットマン本人と警察のゴードン本部長とその息子だけ、つまり権力者側だ。「それっておかしいんじゃないの?市民には全てを知る権利があるんじゃないの?」という権力への怒りを描いたのが本作「ダークナイト ライジング」だったと感じた。本作は明らかに昨年から世界各地で起こった「Occupy Wall Street運動」を下敷きにしていると思われる。何故かと言うと前作は監督も言っている通りシカゴがゴッサムのモデルだったらしいが、本作はブルックリンの様な下町が出てくるし、沿岸部にある街という設定になっているし、証券取引所を襲撃するシーンまである。これらの描写は嫌でも(ウォール街のある)ニューヨークを彷彿とさせる。そしてヴィランのべインはゴッサムを取り戻せと人々に呼びかけるし、べインの手下は普段肉体労働を強いられているブルーカラーの人達だ。富裕層による富の独占、国家の政治への不信は世界中で起こっている現象だ。それでも真実を隠し街を守るバットマンが正義と言えるのかと観客に訴える。そんな問いに対してラストは実に上手く話しを纏めていたと思う。最早バットマンが正義の象徴として永遠の存在になるしかその解決法は無かっただろうから。他に特に素晴らしかったのはべインを演じたトム・ハーディー、圧倒的質量でバットマンでも歯が立たない相手であることを実感させる好演だったと思う。それだけに退場にはもう少し見せ場があっても良かったと思うが。脇のマリオン・コティヤールもいい味を出しているが最近彼女がスクリーンに映ると悪女にしか見えないのがやや難点。アン・ハサウェイのキャットウーマンも妖艶で美しいがリアル路線の本シリーズにおいて女怪盗という存在にやや違和感を感じてしまった。ラストのロビンのくだりはファンサービスとしては面白かったが出来ればロビンを主役としたスピンオフは作らないでほしいと思う。近年のアメコミ映画としては珍しく実に綺麗に終わったシリーズであると思うから。
[映画館(字幕)] 9点(2012-08-04 10:42:16)(良:3票)
59.  生きるべきか死ぬべきか 《ネタバレ》 
ドタバタコメディの傑作。とにかくコメディとしてのテンポが良く観客を飽きさせない。またコメディでありつつも完全にカリカチュアされた話でもありより深い映画となっている。やや不謹慎なギャグが多い気もするが、この位強烈な方が観客の記憶に残り易いだろう。またそんな強烈な風刺を42年当時にしたということがまた凄い。ナチズムを痛烈に皮肉った映画としてはチャップリンの『独裁者』が金字塔であることに異論は無い。また本作では『独裁者』の様にナチスを糾弾する演説や声を大にした主張はしない。しかしナチスのバカさ加減を笑い飛ばしている度合いは本作の方が上だろう。何せ主人公はナチスから祖国を救うよりも嫁さんとイケメンパイロットの浮気の真相の方が終始気になっているのだ!ナチスからしたら逆説的にこれ程バカにされた話は無いだろう。今考えるとタランティーノの『イングロリアス・バスターズ』は本作に非常に影響を受けているのだろう。そういう部分でも素晴らしい映画だ。最後に枕流さんも仰っていますが許せなかったのが日本語字幕だ。誰が付けているのかはデータがないので分からないが、いくらなんでも酷すぎる。誤字脱字は当たり前、場面によっては男性の台詞が女言葉になっている(恐らく字幕をプリントした後のチェックを怠っているのだろう)、早口の掛け合いでは丸々一つの台詞のやり取りをすっ飛ばしている箇所すらある。とてもじゃないがプロの水準の仕事とは思えない出来だった。本作の字幕担当者は一つの傑作を自身の適当な仕事によって台無しにしていることに早く気付いた方が良いだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2012-07-27 00:46:05)
60.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
誰もが知る「007シリーズ」、第二次世界大戦時に実際にスパイ活動を行っていたイアン・フレミングが自分の体験を基にした小説の映画は市井の人々の人気を集めました。男性的なシンボルとも取れる完璧超人ジェームズ・ボンドが最新の秘密兵器を駆使して悪の組織を壊滅させていくシンプルな構造が人々の心を掴んだのでしょう。本作「裏切りのサーカス」の原作者ジョン・ル・カレもかつてイギリス諜報部に籍を置いており、本物のスパイでした。この点ではイアン・フレミングと同じです。しかしこの原作・映画で描かれるスパイの姿はジェームズ・ボンドとはかけ離れているといっていいでしょう。基本的なストーリーは、数々の権謀術数が交差する英国情報局"サーカス"の中に潜む二重スパイを見つけ出すことのみ。派手なスパイ物に良くある世界征服を企む組織やトンデモ秘密兵器なんて無いし、カクテルが似合うお洒落な登場人物なんて一人もいない。それでもこの映画は非常に面白い。この映画は先述している「007シリーズ」の様な華やかに見えるスパイ映画の世界を(恐らく意図的に)茶化している。近年では「ジェイソン・ボーンシリーズ」がリアルに拘ったスパイ映画として挙げられることが多いですが、本当に徹底的にスパイの世界をリアルに描いたらこの映画の様になるのでしょう。しかしアクションが無い、派手な見場が無い、だから面白くないかというと全くそんなことはありません。3人の二重スパイの容疑者は全員がある種の切れ者で誰の言うことも観客は信用できない。信用できるのは主人公スマイリーの視点とある種神の視点から撮られた過去のパーティーでの場面のみ。観客にどれだけの情報を与えて、どれだけを隠しておけばいいのかという脚本の出来が、ミステリ作品で重要な点ですが、この映画に関してはその部分が素晴らしく、ミステリーとしても非常に上手くできていると思います。というか話は一見難解そうに見えますが、全くそんなことは無い。最初から最後まで怪しかった奴が犯人だし、それまでの伏線も実に分かりやすく張っている。トーマス・アルフレッドソン監督お得意の静状を使った演出も緊張感が張り詰めるスパイの世界に非常に相性が良く、本当にスパイの世界を体験した気分でした。勿論、英国役者の種々様々な孤独を内包した演技も素晴らしく、脚本・演出・演技の三つが見事に融合した作品だったと思いました。
[映画館(字幕)] 9点(2012-05-06 00:00:29)
050.38%
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2362.73%
3584.40%
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