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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2383
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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681.  キャノンフィルムズ爆走風雲録 《ネタバレ》 
キャノンフィルムズといえば80年代にハリウッドと世界に旋風を巻き起こし、ジャン=クロード・ヴァン・ダムやチャック・ノリスを世に送り出したB級プログラム・ピクチャーの雄。その創業者であるメナハム・ゴ―ランと従兄弟のヨーラン・グローバス、人呼んで“ゴーゴー・ボーイズ”の波乱万丈の映画バカ人生を描くドキュメンタリー、とくとご堪能あれ! ゼロからイスラエルで映画製作を始めてイスラエルでは名の知れたヒットメーカーになっていたゴ―ランのもとに映画好きの従兄弟グローバスが転がり込んできたのが、キャノンフィルムズのそもそもの始まり。二人はさらなる飛躍を夢見てハリウッドに進出、でも当たり前ですがそう簡単に成功が掴めるはずはありません。『グローイングアップ』シリーズなどでヒットのコツが判ると、70年代後半から80年代にかけて低予算B級映画で市場を席捲してゆきます。二人は、根っからの映画監督で年に何十本も映画を平気で撮っちゃうゴ―ランに、資金集めの天才グローバスがプロデューサーと裏方担当と役割分担がきっちりしていますが、どちらも根っからの映画バカだというのは共通点。キャノンが編み出した画期的な資金調達法は、キャスト・スタッフはおろか脚本すら存在しないただの企画を華々しいポスターに何十本も仕立て、それをカンヌなどの映画祭で大量に売り捌くという詐欺スレスレの際どいもの。とうぜん少なからぬトラブルも発生しますがイケイケの80年代でしたから面白いように儲かって、最盛期はハリウッドの映画興収の20%はキャノンが稼ぎ出し、インタビューでも語っているように本気でハリウッド六番目のメジャーになるつもりだったみたいです。ヴァン・ダムやチャック・ノリスのB級アクションのイメージが強いキャノンですが、意外なことに『ゴダールのリア王』やジョン・カサヴェテスの『ラブ・ストリームス』などの文芸作にも出資しています。もっともゴダールは「ゴ―ランは映画を撮っていなければただのマフィアの親分だ」なんて、出資してもらったのに罰当たりなこと言っていますけどね(笑)。 知っての通りキャノンは二人の野望にもかかわらず消滅してしまったのですが、EMI買収の頓挫とやはり『スーパーマン4/最強の敵』の大失敗がきっかけだったとこの映画では分析しています。どんなにカネがかかろうともただ映画が撮りたいだけのゴ―ランとさすがに資金繰りがもう限界だと悟ったグローバスはついに喧嘩別れ、ゴ―ランはまた映画製作会社を立ち上げ、グローバスはパテ社にキャノンを買収してもらいそのパテがMGMを買収したので彼がMGMの社長に就任という巡りあわせに。この買収は後に大金融スキャンダルになってMGM社長は短期で降りる羽目になったのですが、これはまた別の話し。 その後はゴ―ランの会社は破綻してこの映画が製作された2014年にはもう映画なんか撮れない状況になっていましたが、グローバスはイスラエルで撮影スタジオを運営したりしてそれなりに活躍しているみたいです。しょうじきキャノンに関しては悪い話しとイメージしかなかったですが、こうやって丹念に二人の足跡を見せられると、映画製作に人生のすべてを注ぎ込んだ愛すべき映画バカに共感してしまうほどです。ラスト、20年間絶交状態だった二人が本作をきっかけに和解し、仲良くポップコーンを食べながらスクリーンに流れるイスラエル時代の作品を嬉々として観ている光景は、もう泣いてしまいます。ゴ―ランは本作製作と同年に亡くなったそうです、合掌。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-09-18 21:35:46)
682.  架空OL日記 《ネタバレ》 
バカリズムが制服を着てOL銀行員になっているとは一つ間違えばくだらないコントの映像化になってしまうところ、それが日記調でロー・テンションな語り口で通すことによってありふれたOLの日常を鮮やかに見せてくれます。セリフや仕事オフのときのカジュアルな私服からはもうバカリズムにしか見えないのですが、彼の意図があえて女装を意識させないところにあったので違和感はあまりなかったですね。同職の知り合い女性には「女性同士であんな人間関係がすっきりしてるわけないじゃん!」とダメ出しを喰らっていましたが、男性のバカリズムがここまで女性同士の機微をストーリーに落とし込めたのは、やはり彼の才能の賜物でしょう。彼はかつてアイドリング!!!という女性アイドルグループをプロデュースしたことがあったので、その経験が活かされているのかもしれません。考えてみると彼の演じるキャラはOLグループの中でも話題の中心となるよりは脇からツッコミを入れる空気っぽい存在で、それが夢オチ的なラストに上手く繋がっていると思います。それにしても、『天然コケッコー』のそよちゃんが10年後にこんな逞しいOLになっていたとは、おじさんは感無量です。あと韓国採用されたソヨンというキャラ、この物語に登場させる必然性があまり感じられないし、だいいちいくら日本語は上手だといっても窓口業務はさせないでしょ?
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-09-15 23:20:04)
683.  ようこそ映画音響の世界へ
映画音響の歴史と役割を判りやすく解説してくれる貴重なドキュメンタリーです。「トーキー映画は音を芸術に変えた」、そう、忘れちゃいかんのは映画というものはそもそも音が無かった単なる映像だったということでしょう。トーキー映画が誕生してまず観客が喜んだのはスクリーンの役者たちの声が聞こえることで、それが映画音響のすべてだった。日陰者扱いだった音響効果でしたが、オーソン・ウェルズ、ヒッチコック、キューブリックといった天才たちが映画音響を革新してゆくことになります。本作には様々な音響技術者や映画監督が出演して語りますが、やはり“映画音響のゴッドファーザー”ウォルター・マーチの存在と業績が偉大だったんだなと改めて認識させられます。70年代以降はスピルバーグやルーカスといった面々の活躍で映画音響もデジタル化が飛躍的に進んでいまやすべての作業がミキシング・ルームのデジタル機器で済んでしまっているような印象を受けますが、効果音やフォーリー音の作成には昔ながらのアナログ音集めが健在なのも面白いところです。本作に登場する音響スタッフたちの活動を見ていると、本当にみな映画を愛する真の職人集団だなと感じます。いろいろと言われますけど、ハリウッドというところは各分野のプロフェッショナルが造り上げる職人文化が他国に追随を許さない強みを持っているんじゃないでしょうか。「職人気質は日本人の強み」と言われたりもしますが、情けないことに現在の日本映画界で消え失せてしまったのがこの職人気質だと思います。古い話しですが、東宝の円谷特撮なんかはその歴史だけでも一本の映画になる職人芸の極致です。たとえば現在の邦画界での映画音響のドキュメンタリーを撮ろうとしても、とうてい映画として成立しないでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-09-09 21:35:25)
684.  ロボコップ2 《ネタバレ》 
久しぶりに観直してみましたが、以前の悪印象はなんだったのかなと思うほど水準をクリアした続編だなと感じました。もっともこれは、当時続けて観た『3』があまりに酷かったので記憶が引きずられたのかもしれません(笑)。第一作の主要スタッフが抜けてしまったので脚本を書いたのが原作者のフランク・ミラー、この人はヴァーホーベンに負けず劣らずの悪趣味大魔王なのでなんかすごい映画になってしまった感もあります。第一作のグロ要素は傷を負ったりする場面の人体破壊がメインでしたが、本作ではケインのロボコップ化手術の見せ方など、なんか「この見せ方って必要?」と首を傾げたくなるシーンが多かった気がします。パロディCMの挿入などヴァーホーベンを意識した脚本にしたからかもしれませんが、これはいま話題の90年代鬼畜系カルチャーの反映だったのかな。 舞台となるデトロイトがオムニ社と合併を迫られる惨状は、製作後に現実のものとなり20年後には財政破綻に追い込まれる未来を予言している感があります。つまり、荒唐無稽なようでいてシャレにならないストーリーなわけです。ダン・オハーリヒーをはじめオムニ社の面々の悪逆非道ぶりがスケールアップしているのも注目したいところです。前作のラストでは瀕死の重傷だったナンシー・アレンが、すました顔して活躍するのには苦笑でした。ヴァーホーベンが引き続き監督していれば、たぶんナンシー・アレンもロボコップ化したストーリーになってたんじゃないかな。そしてピーター・ウェラーはロボコップの顔面(それも数少ないマスクを外したカット)だけの出演となり、これじゃあ嫌気がさして第三作に出演しなかったのは理解できますよ。 ハリウッド時代のヴァーホーベンの代表作のうち『トータル・リコール』以外の三作(『ロボコップ』『氷の微笑』『スターシップ・トゥルーパーズ』)は続編が製作されるかシリーズ化されましたが、いずれにも彼は参加していない(というかお呼びがかからなかった?)のは興味深いところです。そこはジェームズ・キャメロンやリドリー・スコットとは大違い、彼らと違ってヴァーホーベンが商売下手だったのは否定できないでしょう。その分、これらの代表作は一作一作がパワーに満ちているので、私は好きです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-08-12 21:43:13)
685.  サハラ戦車隊 《ネタバレ》 
舞台は北アフリカ戦線、「トブルクが陥落した」というセリフもあるので1942年半ばという時代設定みたいです。この映画の影の主役はやはりⅯ3リー戦車、製作された43年にはすでにⅯ4シャーマンが登場していますが、当時のバリバリの現役戦車です。米軍が師団単位で本格的に北アフリカ戦線に投入されたのは42年後半のアルジェリアからですが、Ⅿ3戦車は英軍にも供与されたので、そのトレーニーとして米軍の分遣隊が先駆けて戦場にいたという設定ならばさほど無理がないかなと思います。“ルル・ベル”というのが戦車につけられたニックネームですが、『1941』に登場するⅯ3戦車もニックネームが同じで、つまり本作へのオマージュだったわけです。 この戦車が英軍部隊に出会ってイタリア兵とドイツ・パイロットを捕虜にして井戸がある拠点を目指すロードムービー風の前半がとくに秀逸です。英軍兵も南アフリカ兵やフランス人志願兵やスーダン人植民地兵がいて多彩な顔ぶれで、それぞれのキャラも丁寧に撮っていて好感が持てます。イタリア兵捕虜がヒトラーとムッソリーニを比較したりしますが、まだ大戦の形が付いていない時期なのにムッソリーニを好意的に語らせているのはちょっと意外でした。とうぜん軍の検閲が入ったはずですが、こういう余裕がアメリカのアメリカたる所以なんでしょう。 水を求めて攻撃してくるドイツ軍との戦いが繰り広げられる後半ははっきり言ってマンガみたいなお話しですけど、ドイツ軍を騙すための策略や拠点の陣地化する作業などは丁寧に描かれていて好感が持てます。とはいえ大隊規模の部隊が、いくら砂漠での戦闘であるとしても燃料・弾薬じゃなくて水不足で戦闘力を半ば失うなんてことは、現実ではあり得ないでしょう。旧帝国陸軍じゃないんだからそんな補給のヘマはしませんよ、ドイツ軍をバカにし過ぎです(笑)。 9人対500人というおとぎ話みたいな戦闘ですが、ボギーの側もけっきょく二人しか生き残れなかったというのはそれなりにシビアな結末だったのかもしてません。 ハリウッド映画とは言っても戦時中でしかも戦争ものなのでプロパガンダ的な製作意図はとうぜんあったでしょうが、そんな偏見を超えた普遍的な面白さを持ったエンタティメントだと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-07-27 23:22:45)
686.  ジーザス・クライスト・スーパースター 《ネタバレ》 
舞台版が極端に演出を現代に寄せているのと較べて、イスラエルの遺跡や荒れ地で撮影されているので、意外と違和感は少ないです。全編でセリフがすべてロック・スコアのミュージカルですが、ラストでユダの二言三言の語りだけが普通のセリフだったというのが印象的です。やはりこの劇の主人公はユダで、イエスは狂言回しだったという結論に落ち着きましょうか。でも本作のイエスの人物像は驚くほど人間的で、自分の影響力があまりに大きくなりすぎて苦しむ心の弱さが感じられて、自分が今まで観たイエスを描いた映画の中でもっともしっくりうるイエス・キリストでした。たぶん実際のイエスも、始めは当時では70年代のヒッピーと大して変わらないような存在だったんじゃないでしょうか。それがここまで世界宗教化できたのは、使徒たちの力が大きかったからには違いないでしょう。他の二つの世界宗教の創始者である釈迦とマホメットとイエスが違うところは、彼らが一応天寿を全うしたのにイエスは処刑されたってことです。たしかにテッド・二―リーが演じるイエスは70年代のヒッピー文化の申し子としか見えない単なる“愛の人”という感じで、この映画が教会から猛反発されたのもむべなるかなって思います。 アンドリュー・ロイド・ウエバーのミュージカル人生はまさにここから始まったというわけです。各スコアは名曲揃いですが、やはりユダ役のカール・アンダーソンの歌唱がいちばんの迫力です。監督がノーマン・ジュイソンだけに演出に特有の臭さやダサさがありますが、彼の熱唱がやっぱり良かったので、プラス一点ということで。
[映画館(字幕)] 7点(2021-07-06 23:23:55)
687.  レジェンド 狂気の美学 《ネタバレ》 
“英国のアル・カポネ”とも言うべき60年代ロンドンを牛耳ったギャングスター・クレイ兄弟の物語です。彼らはモンティ・パイソンのギャグにまでなっている英国じゃ知らぬ者がいない有名人です。この双子をトム・ハーディが見事に演じ切っています。ビジネスの才覚を持つがキレたら怖いレジ―と、始終ボソボソと喋りホモであることを隠そうともしないうえに精神的におかしくて安定剤が切れたら何をしでかすか予測不可能なロニー、この演じ分けをこなしてしまうトム・ハーディの演技力には改めて感嘆しました。凶暴なロンの方がいつも眼鏡をかけているという判りやすい外見ですけど、二人が取っ組み合いの大乱闘を繰り広げ、ロンの眼鏡が吹っ飛んで終いには見分けがつかなくなるシーンもありました。「これはCGを使ってるんだろうけど、えらく上手に撮ってるな」と感心してましたら、なんと二人が同時にスクリーンに収まるショットではトム・ハーディのそっくりさんが片方を演じていたそうです。これまたえらいアナログな撮り方ですが、観直してもまったく気づかないですよ。物語はレジーの妻であるフランシスが語り手として展開しますが、名脚本家であるブライアン・ヘルゲランドが脚色してメガホンをとっているだけに、実録ものが陥りがちな単調さとは無縁なグイグイ引っ張るストーリーテリングが見事です。完全に狂気の人だと感じさせるロンが時おり見せる人間的な言動には、ハッとさせられます。とくにフランシスがレジーと別れる時のロンがかける言葉にはグッとくるものがありました。 やっぱトム・ハーディはイイですねー、彼こそがスティーブ・マックイーンの後継者なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-06-09 23:21:08)
688.  ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 《ネタバレ》 
このハリウッド・ゴジラは、キングコングも含めて連作として先のストーリー展開も含めて構想されているところがいいよね。今作は『三大怪獣 地上最大の決戦』のリメイクときましたか。悪の組織としてX星人ならぬシー・シェパードまがいの軍団が登場させていますが、この組織がコネリー007時代のスペクターなみに何がやりたいのか判らないところがストーリー展開での最大の難でしょう。いつも思うんだけど、こういう環境問題というテーマには偽善がプンプンするところが堪らなく嫌です。多細胞生物が地球に誕生してから、全生物の90%以上が消えた大量絶滅が何回発生したのか判ってんのかと言っておきたい。地球という天体の寿命は一説にはあと40億年ぐらいだそうで、いま地球に生存する生物の大半は一億年以内に必ず絶滅しますよ、人類も含めてね。でもそこから新しい形の生命が生まれてくるだろうし、そもそも地表の出来事なんて地球そのものには大したことじゃない。だからこの組織やマッドサイ・エンティストと化したヴェラ・ファーミガの思想(らしきもの)には何の共感もないし、神が創造した人間が存在しない地球はあり得ないというキリスト教的な傲慢さが鼻につくんです。まあハリウッド大作の脚本にそこまでケチつけてもしょうがないですけどね(笑)。 今回のメイン・ゲストはやはりキング・ギドラであることは間違いなく、東宝特撮では他の怪獣たちとはかけ離れた出自からイマイチ暴れ方が地味だったのに、生物的な特徴を強調したスタイルには拍手を送りたい。だいたい、ギドラの首がもげるなんて期待をはるかに超えています、“モンスター・ゼロ” なんて呼ばれるところなんかも、東宝特撮へのリスペクトが感じられます(東宝特撮時代の全米公開版では、キング・ギドラじゃなくてこう呼んでいた)。昭和の時代ではただ飛んで羽ばたくだけといった印象だったラドンが、まさに火の鳥と化して存在感を主張しているところも嬉しいところです。半面、モスラが昆虫的な要素が強調されてなんか気色悪い造形なのは、何とかして欲しかったな。そして渡辺謙が、先代芹沢博士と同じようにゴジラに命を捧げる展開こそ、監督の東宝特撮への最大のリスペクトだったんじゃないでしょうか。でも、オキシダント・デストロイヤーの役立たずぶりには、愕然とさせられましたけど(笑)。 ラストで、ゴジラのもとに集まってきた怪獣たちがひれ伏すかのような動作を見せるところは、まさに“キング・オブ・モンスター”の誕生でした。でもコングが黙ってそれを許すわけないし、ゴジラのチャンピオン・ベルトを奪取するべく挑むビッグ・マッチが次回作ってことですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-05-25 23:32:07)
689.  赤×ピンク 《ネタバレ》 
ただの百合エロ映画と軽い気持ちで観始めましたが、原作がラノベとは言っても桜庭一樹なので観終わってみれば引き込まれてしまいました。主演の芳賀優里亜と多田あさみはそっち系の女優じゃないのに潔いと言えるほどの脱ぎっぷりとAV並みのエロ絡みは見事です。この映画はR15+指定ですがDC版のR18+指定バージョンもあるそうで、もっとエロいのかと思うとちょっと観てみたい気がします。ガールズ・ブラッドの女闘美ファイターたちのキャラも立ちまくっていて観てて愉しい、モモミーちゃんが私の推しです(笑)。とうぜんスタントも使っているでしょうけど、彼女たちのファイトは素人目には迫力満点で、満足できました。ただ気になるところは、彼女たちが女闘美ファイターになったきっかけが家庭や学校で負ったトラウマだったという設定があまりに定型すぎて、どうなのかなと思います。ガールズ・ファイトの社長とDV空手家が本作での唯一目立つ男性キャラでしたが、これまたキャラが立っていて良かったですね(とくに社長)。でも存亡がかかったラスト・マッチ、空手軍団は負けても実質ダメージがゼロのような気がするけど、ほんとにあれで良かったの?社長(笑)。観ていてふと気づいたのですが、観客エキストラのなかに南海キャンディーズの山里亮太にそっくりの人がいたんです。トレーナー鮫島役で品川祐も出ているし、ひょっとしてなのかもしれません。 桜庭一樹にはまだまだ映画化したら面白そうな作品が多いので、これからも期待しています。とくに『赤朽葉家の伝説』はぜひとも映像化して欲しいな。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-05-22 22:42:23)
690.  赤い闇 スターリンの冷たい大地で 《ネタバレ》 
時は1930年代前半、英国元首相ロイド・ジョージの外交顧問であったジャーナリストのガレス・ジョーンズは、ドイツでついに政権を握ったナチ・ドイツに対抗するために第一次五か年計画が成功して飛躍的に国力が増大したと喧伝されているソ連と同盟してヒトラーに対抗するべきだと主張します。しかしソ連の発表した数値に矛盾を見つけたジョーンズは、実態を調査してスターリンにインタビューしたいと熱望して単身ソ連に入国します。「この国はなんかおかしい…」と疑問を感じながらヨーロッパ随一の穀倉地帯であるウクライナに潜入した彼は、そこで恐るべき真実に気づいてしまうのでした。 ソ連74年の歴史でボリシェヴィキ=共産党が犯したもっとも犯罪的な政策であるホロドモール=ウクライナ大飢饉を真正面から描いています。これは簡単に言うと、スターリンがウクライナで収穫される穀物・家畜を五か年計画達成に必要な外貨を稼ぐためにすべて輸出に回し、その結果一説には1000万人以上のウクライナ人が餓死したという史実です。 ウクライナと並んでスターリンにはひどい目に遭わされたポーランド人の監督ですから、その告発の視点には鋭いところがあります。主人公のジョーンズを演じるのは、次期ジェームズ・ボンド候補とも噂されるジェームズ・ノートン。彼がウクライナに潜入して見る地獄絵図が本作のテーマのはずなんですが、そのシークエンスの尺が意外と短いのがちょっと解せないところです。実はベルリン国際映画祭で上映されたバージョンはランタイムが20分以上長く、カットされたところはウクライナでのストーリーが多かったんじゃないかと推測いたします。それでも迷い込んだ農家で振舞われたのが実は人肉だったエピソードには、もう戦慄するしかありません。この映画の演出で興味深いところは、登場人物がものを食べるシーンで咀嚼する音が強調されるところで、まさにASMR効果を狙っている感じです。 ソ連側の登場人物は下っ端ばかりでスターリンはおろか外務大臣リトヴィノフぐらいしか大物は登場しませんが、スターリンに媚びへつらう英米の著名人たちの醜悪な姿はこれでもかと見せつけてくれます。中でもピーター・サースガード演じるウォルター・デュランティの邪悪さは強烈です。彼は五か年計画を礼賛したNYタイムズの記事でピュリッツアー賞を獲得しましたが、本質はフェイク・ニュースなので受賞取り消し運動が21世紀になるまで続いたそうです。NYタイムズというメディアは、友好関係にある我が国の某新聞とよく似た体質があるみたいですね。実はこの映画で最初に登場するのはジョージ・オーウェルで、『動物農場』を執筆する姿が所々に挿入されて狂言回し的な役割を果たします。でも彼はソ連に渡航したことはないし、劇中でジョーンズと出会うシーンもありますがこれはフィクションでしょうし、オーウェルをこの映画に登場させる意義はイマイチ理解できませんでした。ジョーンズのデュランティへの反論記事を掲載させたのが、唯一ランドルフ・ハースト系の新聞だったというのは面白いところ、『市民ケーン』じゃないけど映画では怪物的人物で悪役が定番の人ですからねえ。ハーストにとってピュリッツアーはかつての商売敵、彼が創設した賞の受賞者を叩くことに血が騒いだのかもしれません。 観終わっても気分が上がるような要素は一つもないことはご警告させて頂きます。でもこれが史実なんだということは重く受け止めるべき、そして「大義のために人命が犠牲になるのはやむを得ない」というテーゼの恐ろしさを今一度考えてみるべきでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-05-07 22:17:16)(良:3票)
691.  そうして私たちはプールに金魚を、 《ネタバレ》 
ハイ、『ウィーアーリトルゾンビーズ』に続いて見事にわたくしも嵌りました。 ファースト・カットを観て、懐かしの『バタアシ金魚』の高岡早紀を思い出してしまいました。閉塞感にさいなまされる青春がテーマの映画としては、埼玉の狭山という町ほどぴったんこな場所はないんじゃないの、自分は行ったことないけどね。四人という主人公の数、ちょっとブレイクするけどすぐに消えてしまったアイドル、ゾンビ、モノローグ、等々まさに『リトルゾンビーズ』の原型と言えるスタイルでしょう。“学校のプールに400匹の金魚が放流された”って実話らしいけどどこがニュースになるような事件なのかは?なんですが、それを含めても何も起きないストーリーだったかと思います。冒頭とラストで『17歳』をカラオケで狂ったようにシャウトする少女たちを観ていると、『台風クラブ』のあの名シーンが浮かんできたのは私だけでしょうか? この長久允という人は二作ともサンダンスで賞を獲得するという俊英なのに、なんで日本映画界はもっと彼に映画製作させるチャンスを与えられないのだろうか?まあ私が言うまでもなく理由は明白ですけど、これじゃ韓国映画界の後塵を拝する状態が続くことは間違いないでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-04-30 20:43:59)
692.  ブラック・クランズマン 《ネタバレ》 
黒人刑事が主人公という共通点から『インサイド・マン』の様なポップでコメディ的な要素がある物語だろうと思って観始めたら、冒頭の活動家がアジ演説するシーンの撮り方や、終盤でハリー・べラフォンテの昔語りトークをKKK首領の演説とカットバックさせて見せるなど、これはちょっと自分が期待していたストーリーテリングじゃないなと嫌でも気づかされました。合衆国の人種対立を扇動的とすら捉え兼ねない作風で撮っていた昔のスパイク・リーに戻った感すらあります。それだけトランプ大統領という存在に怒りと危機感を持っていたってことでしょう。小中学生でもなければ大抵の人はKKK首領のデュークがトランプのカリカチュアの役目を果たしていることは理解できるでしょうが、ラストの実写フィルムでトランプ本人を出しちゃったらあまりにイデオロギー色が強くなりすぎて逆効果だった気がします。 潜入刑事ものとしては、お約束のドキドキ・サスペンスは効果的に織り込まれています。でも、アダム・ドライヴァーがポリグラフにかけられそうになるところやKKKの構成員が黒人刑事の自宅を訪ねてくるところなんかは、あれで切り抜けちゃうなんてちょっと雑な脚本構成だと思わざるを得ません。また、白人は概していわゆるホワイト・トラッシュの低レベルなキャラで、対する黒人登場人物たちは大学生などのインテリや善良なキャラばかりというのも、ちょっと型にはまり過ぎている感があります。人種差別問題を“ブラック・パワーvsホワイト・パワー”という視点に持ってゆきたいという意図も感じましたが、なんか単純すぎるように感じました。 ラストはハッピーエンドとはほど遠いカタルシスのない幕の閉じ方でしたが、これはスパイク・リー映画の持ち味でもあるので我慢しましょう。最後の実写フィルムを見せられると、50年以上経っているのにアメリカ社会は全然進歩していないことに愕然とさせられます。先般の大統領選挙の結果を見ますと、トランプは敗れたといえ国民の半数近くが隠れKKKメンバーになってしまったような感じがします。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-04-18 23:47:36)
693.  アトミック・ブロンド 《ネタバレ》 
確かにこれは判りにくいストーリーだ。単純に言えば、西側スパイのリストを取り戻すために女スパイがベルリンに潜入するというまあスパイものではありふれたプロットなんですね。このリストの内容を暗記している東独シュタージの職員も亡命させなければいけなくなって、お話しがややこしくなってくるわけです。でも、西側の諜報員たちも誰が善玉か悪玉かが判らなくなってくるストーリーテリングは、けっこう凝った脚本ですよね、そしてシャリーズ・セロンまでもが… この映画のプロデューサーも兼ねているシャリーズに力が入りまくっているんです。かつてのモニカ・ベルッチと競う“脱ぎたがり屋”の彼女だけに、四十も半ばというお歳なのにきっちり脱ぎは欠かしません。最近はジェニファー・ローレンスというピチピチした若手の脱ぎ女王が幅を利かせているので、「まだまだ私は負けないよ!」という女優魂が伝わってきます。そして彼女のファーストカットの背中の筋肉の盛り上がり方具合の凄いことと言ったら!監督が『ジョン・ウィック』の人だからアクションのキレ味もハイレベルです。たしかに格闘シーンで動き出す前にわずかに間があく感じはありましたが、四十代の女優がここまで動ければ褒めてあげなきゃね。そして『ジョン・ウィック』のキアヌ・リーヴス以上にズタボロになってゆく肉体、痛みがこっちまで伝わってきます。使われている音楽は八十年代のブリティッシュ・パンクとネーナの“ロック・バルーンは99”、オリジナル楽曲は使われてないような感じすらしました。特に私はタイトルバックに流れるデヴィッド・ボウイの“キャット・ピープルのテーマ”には持っていかれました。 ジョン・グッドマンが演じたCIAエージェント役には実はデヴィッド・ボウイが予定されていたけど叶わなかったとのこと。これは惜しいことしました、あのラスト・シーンでボウイのバックに“Under Pressure”が流れるなんて、想像しただけで鳥肌ものですよ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-04-12 23:03:12)(良:1票)
694.  OK牧場の決斗 《ネタバレ》 
“OK牧場の決闘”といえばジョン・フォードの『荒野の決闘』はじめ数々の映画の題材となった、言ってみればアメリカの“忠臣蔵”みたいなもんでしょう。そして本作は50年代を代表する二大ハリウッド・スター、バート・ランカスターとカーク・ダグラスの生涯で二本しかなかった共演作の一つでもあります。現代で言えばジョージ・クルーニーとブラッド・ピットの共演、いやこの例えはちょっと微妙ですね、ニューシネマ時代のポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの共演に匹敵すると言った方が適切でしょう。もっと共演作があった様なイメージがありますけど、二人とも独立プロを主宰する身の上で協力しあうのはなかなか難しかったのかもしれません。 フランキー・レインが唄う主題歌は全西部劇で一二を争うぐらい有名で、よく聞くと歌詞がナレーションの役目も持っているところが面白い。ジョン・スタージェスの演出はケレン味たっぷりでテンポも良いのですが、ドク・ホリディとケイトの関係以外はけっこう人間関係の描写は飛ばし気味で、ワイアット・アープと結婚寸前までゆくローラなんか前半に登場する女賭博師とは思えない、全然別人かと思っちゃいますよ。まあOK牧場の決闘と言ってもヤクザ同士の果し合いみたいなものなんですけど、決闘の朝に決戦の場に向かう四人の姿が惚れ惚れするほどカッコイイのは事実。このシーンは、よく考えると『ワイルドバンチ』のあのシーンの元ネタなんですね。 そしてランカスターを完全に喰ってしまったダグラスのドク・ホリディの哀愁に満ちたカッコよさ、これこそカーク・ダグラス生涯最高の当たり役だったと言えるでしょう。
[映画館(字幕)] 7点(2021-04-09 22:23:57)(良:1票)
695.  仁義なき戦い 完結篇 《ネタバレ》 
すったもんだあったけど、四作目で終わるはずが「完結編」五作目が撮られてこれにて“広島弁のシェイクスピア劇”は無事完結したわけです。皮肉にもこの五作目がシリーズ最大のヒットとなり、脚本・笠原和夫の美学に岡田茂社長の商魂が勝利を納めたってことでしょうか。前作以上に菅原文太の出番が少なく、完全に小林旭と北王子欣也が主軸となってストーリーが進行します。シリーズ中盤から登場した旭ですがどんどん存在感を増してきて、本作では押しも押されもせぬ重量感でその貫禄には惚れ惚れしてしまいます。前作からの傾向でエピソード羅列といった感じのストーリーテリングでしたが、シリーズ通して登場してきたキャラたちにも引導を渡す意図も感じました。突然に再登場してきた大友勝利でしたが、やはりここは千葉真一に演じて欲しかったところです。宍戸錠は多分に千葉の演じたキャラ像に寄せたつもりだった感じですが、ちょっとオーバーアクトで違和感すらありました。 奇しくも昨日は田中邦衛の訃報が流れました。本シリーズで、彼が演じた槇原政吉ほどシェイクスピア的なキャラはいないんじゃないでしょうか。東宝映画の人と言ったイメージが強かったですけど、東映に乗り込んで彼が演じたのは『若大将』シリーズの当たり役青大将がそのまま極道世界に迷い込んできたようなキャラ、第一作で鉄砲玉仕事を泣き落としで回避するところなんかは今までのヤクザ映画では見られなかったリアルさで、ちょっと衝撃的でした。槇原はいろいろと小ズルい動きをしていかにも卑怯者という印象が強いけど、通して見ると意外と山守義雄=金子信雄には忠実で裏切ることは最後までありませんでした。そんな槇原も歳を重ねてちょっと風格が出てきたところでついに非業の最期、この死が武田明=小林旭に引退を決意させたわけで、それなりの人物だったと言えるでしょう。RIP,田中邦衛=槇原政吉。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-04-03 22:18:49)
696.  恋愛ズバリ講座 《ネタバレ》 
この映画は大手の映画会社としては日本映画史上でも前代未聞の作品です、60年前の製作ですけどその後も同種の映画は撮られていません。というのも、実はこの映画のスタッフ・キャストは全員ノーギャラ、つまりボランティアで撮られたってわけです。 時は昭和36年、新東宝の名物ワンマン社長である大倉貢は大騒動の挙句に社長の座を投げ出して経営から身を引きました。さて新体制となりましたが、資金繰りも行き詰まっていたので配給できる映画が無い!そこでスタッフや所属俳優の有志が集まってとりあえず封切館にかけられる映画を一本急いで撮ろうとなったわけです。会社の金庫は空っぽなので全員ノーギャラとなりましたが、当時の新東宝の主演クラスからわき役までほとんどが参加しています。それでも丹波哲郎や三ツ矢歌子など見えない顔触れもいます、まあ彼らの中でも温度差があったみたいですね。エログロで売っていた新東宝ですから「生まれ変わった新東宝映画を観てください!」というスローガン的な意味合いもあったかもしれませんが、出来上がったのが大蔵体制とは大差ない艶笑コメディだとは苦笑いするしかないです。 そんな経緯で完成したわけですけど、わずか七日で撮影終了したとは思えない出来なのはさすが新東宝と呼ばせていただきます。三話構成のオムニバスになっていますが、どのエピソードも『恋愛ズバリ』とは縁がないお話しなのもミソです。中でも第一話『吝嗇(けちんぼ)』がもっともぶっ飛んでいて、新東宝でもこんなシュールでシャレたコメディが撮れるんだと唸ってしまいました。だいたい、天知茂がコメディするなんて想像を超えています。彼が演じるドケチ社長が大倉貢のカリカチュアであることは明白、ここまでコケにするとはスタッフの恨みというかルサンチマン恐るべし、です。星輝美以外の出演者は全員無表情で超早口でセリフは棒読み。しかもバストショットは全部正面向いてカメラ目線、こき使われる周囲の人間たちの「ケチンボ、ケチンボ、ケチンボ…」という心の叫びを聞かせるところなんか笑っちゃいます。まるで市川崑が撮った様なアヴァンギャルドなコメディですが、天知茂の俳優人生唯一(多分)のコメディ演技をご堪能あれ。 第二話『弱気』は観ればすぐ判りますが、ゴーゴリの『検察官』の翻案というかパロディなんです。三話中では本話だけがブラック風味が希薄で、田舎が舞台というだけでほんわか風味なんですが、捻りもオチもない幕の閉め方はちょっとどうかな?って感じです、もっと薬味が必要ですよ。菅原文太の髪を七三分けにした黒縁メガネのサラリーマン姿というのは新鮮でしたが、相変わらず大根演技でした。 第三話『好色』は三話の中でいちばんブラックです。お相手を殺して次の獲物を探す結婚詐欺師の夫婦、今度の獲物は東北弁丸出しの幼稚園の保母である三原葉子だったが・・・というお話し。やはり見どころは、酔っぱらった三原が酒場でストリップ、下着姿になって腋毛丸出しで踊り狂うところでしょう。石井輝男らしくサービス精神あふれていますが、彼の盟友である吉田輝雄が本人として顔を出しているのもなんか可笑しい。ラストには意外なオチが用意されていますが、ちょっと『笑うセールスマン』に通じるブラックさがありました。三原のズーズー弁も可愛かったな(彼女は岩手県出身)、コメディエンヌとしての才能も垣間見れました。 とまあ珍品であることは否定できませんが、これだけの作品を七日で製作しちゃう新東宝の底力は認めねば可哀そうでしょう。もっともその後半年足らずで倒産しちゃいましたけどね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-03-30 00:00:43)
697.  大怪獣出現 《ネタバレ》 
本作に登場するモンスターはその独特な姿形で古くからファンには知られている存在ですが、設定は古代に生存した巨大軟体動物=カタツムリが蘇ったとしています。でもあの巨大な両眼はガチャピンにしか見えないのは自分だけかしら? 主人公が軍人将校でモンスターと戦う以外はヒロイン役のナンパに励むという50年代ハリウッド製SF・モンスター映画の定石はきちんと踏まえています。今までこのモンスターは海から出てきたんだと思っていましたが、舞台設定はソルトン湖という琵琶湖の1.3倍というカルフォルニアの塩水湖でした。この湖は20世紀初頭に低地に洪水が流れ込んで形成されたそうですが、現在では環境破壊と塩分濃度の上昇で消えゆく湖となり“北米大陸のアラル海”“絶対に行かないほうが良いリゾート”“カルフォルニア州の最貧地帯”などと呼ばれる悲惨な状態になっているそうです。50年代まだリゾートとして賑わっていたころの貴重な風景であるわけですが、岸辺なんかどう観てもどっかの海岸で撮影したろ!という映像があるのはまあご愛敬ってことで。保安官が湖の周囲の宿に遊泳禁止を告げて回るところなんか、『JAWS』の原型を観たような気がしました。 ところがこの映画期待に反して(?)意外ときっちり撮られているんです。主演のティム・ホルトは『駅馬車』や『黄金』などの名作に出演していた名脇役ですし、ヒロインのオードリー・ダルトンも『旅路』なんかにも出ていたしっかりしたキャリアの女優です。二人の恋愛噺は必要最小限に抑えて、発見された怪物が塩水湖から運河を通って拡散してゆくのを防ぐ闘いがシステマティックに展開されるのを、テンポよく見せてくれます。運河の水門に怪物の殻が挟まれて割れてゆくところなんか、他人事(?)ながら生理的にゾワッとくるものがありました。オールドミスの電話交換手が映るたんびに実家の母親に電話しているなど、50年代のこの手の映画にしては珍しくギャグっぽいところもあります。とはいえ所詮は巨大なカタツムリで、爆薬で吹き飛ばされ銃で殺され蒸気を吹きかけられて退散、要はちっとも強くないんです。『大怪獣』なんてのは誇大広告もいいところで、そこがこの映画の最大の弱点です。原題なんて直訳すると『世界に挑戦したモンスター』ですからね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-03-12 20:57:09)(良:1票)
698.  仁義なき戦い 頂上作戦 《ネタバレ》 
第四作目にしていよいよ本題の広島戦争に突入、さすがの警察も世論の非難もありいわゆる頂上作戦を展開してきて、結論から言うと組織自体の真正面からのぶつかり合いとはならず手打ちに落ち着き、各組織の若い輩どもが自分らの鬱憤を晴らすために暴れて死者を増やしたってのが正直な感想です。まあこれは実話ですからしょうがないですけどね。広能昌三=菅原文太は本編半ばであえなく刑務所入りしてまたもやフェイドアウト、ここからは前作から引き続いて武田明=小林旭が存在感を増して主役のような展開で、やはり日活の大スターでしたから東映も気を使ってた感があります。ラストで文太と旭を刑務所で再会させ、本シリーズを象徴するような会話をさせますが、当時では文太より旭の方がはるかに格上だったということです。笠原和夫は本作で四部作終了とするつもりで脚本を書いたというのは有名な話しですが、たしかにここで話を終わりにするために作品全体のテンションを下げていったのかもしれません。とくに本作の後半はいろいろな人物のエピソードが盛り込まれており、群集劇としての要素がシリーズ中でもっとも強くなっています。なかでも志賀勝が小池朝雄を射殺して「あんたら見とった通りじゃ」と捨て台詞を吐くところは、彼の風貌も相まって日本映画史に残る殺人シーンだとおもいます。 しかし、岡田社長の鶴の一声でさらに五作目が撮られることになり、さすがに笠原和夫も脚本から降りることになりました。“泣く子と岡田茂には勝てない”という東映の体質ではしょうがなかったのかもしれませんが、当時の東映って暴力団も顔負けするような強面だったようです。こういうポリシーがないがめつい根性が、日本映画界のダメなところなんですよ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-03-03 21:42:02)
699.  トップ・シークレット 《ネタバレ》 
むかし観た映画雑誌で、TVみたいな箱からオマー・シャリフが顔だけ出している画像がこの映画の紹介として使われていてずっと「アレはなんなんだろう?」と気になっていましたが、まさか圧縮された自動車に閉じ込められていたなんて・・・ ジム・エイブラムズ&ザッカ―兄弟の小ネタ集みたいなお得意の構成ですが、彼らの初期の仕事にしては脇を固める俳優陣がなんというかまさにムダに豪華な典型って感じです。オマー・シャリフから始まってジェレミー・ケンプ、ピーター・カッシング、マイケル・ガフ、彼らみたいな渋い俳優がこんなおバカ映画に出ているのを観れるのはすごく得した気分です。『裸の銃(ガン)』シリーズと違って既存映画のパロディがほとんどなく、純粋な(?)小ネタギャグをこれだけ連発してくれているので、自分は『裸の銃(ガン)』シリーズよりこっちが好みです。アホっぽいヴァル・キルマーが彼らしい大根演技でアホなことをやっているって一周回ってなんかシュールですが、エンドロールを信用すると劇中の唄は全部本人がパフォーマンスしているみたいで、ヴァル・キルマー恐るべしです。プレスリー風のロックが流行っているところからすると60年代が設定みたいですけど、東独軍人たちの制服はナチ・ドイツとほぼ一緒。レジスタンスの面々も名前も風貌もフランス人で、これも大戦中のお話しみたい。もちろんこういうグチャグチャはザッカ―兄弟たちの狙ったところですけどね。 そういやNATOの潜水艦を一網打尽にする陰謀はどうなったんだ?なんてツッコミは野暮ってもんで、投げやり・尻すぼみな展開もザッカ―兄弟なら許されるってもんでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-02-28 23:00:49)(良:1票)
700.  めまい(1958) 《ネタバレ》 
子供のころTV放映で観ていて、ジェームズ・スチュワートが幻覚でうなされるシーンで怖さのあまりそこで観るのを止めた強烈な記憶があります。この歳で見返して観ても、怖さはともかくそのシュールさはなかなかのものです。 ストーリー展開は『レベッカ』を彷彿させるホラーというかオカルチックで、やっぱゾクゾクさせてくれます。マデリンが転落死してからのジェームズ・スチュワートはもう廃人状態、予備知識なしで観ていたらこの「お話しはどこへ行ってしまうんだろう?」と不安になるでしょう。ところがここからが原作のせいか大味な推理小説の謎ときみたいな感じになってしまうのが残念なところです。ヒッチコック自身がこの作品の出来には満足していないのは、意中の女優ではなくキム・ノヴァクを起用せざるをえなかったということだけではないでしょう。だいたいからして、マデリンの身代わりを首尾よくこなしたジュディが犯行後もスチュワートの行動範囲でウロチョロしているってのは、あまりにご都合主義が過ぎるって。主人公を助けるために登場させているキャラとしか思えないミッジが、中盤以降姿を見せないってのもどうなんでしょうか。そしていちばん納得がいかないのは、スチュワートが出会って恋したのはマデリンのふりをしたジュディであって、マデリンとは一面識もないはずだってことです。ジュディ=マデリンと思い込んでいた彼がジュディの正体を知ったあと、ジュディと会ったこともないマデリンの区別がつかなくなってしまったと解釈するしかないですね。ここで彼の精神は完全に崩壊してしまっており、もしエンドマーク後も物語が続くとしたら、今度は本当に廃人になって病院送りというお話しになるんじゃないかと妄想してしまいました。そう考えると、この映画の幕の閉じ方にはけっこう怖い意味があるような気がしてなりません。 私が鑑賞したのは修復されたレストア版でしたが、復元されたカラー映像の美しさには驚嘆しました。とくに原色のカラー設計が秀逸で、前半で金髪のキム・ノヴァクの背景には深紅を配するところなんかが素晴らしい。金髪に赤は映えるんだってことは、さすが金髪フェチのヒッチコックは判ってらっしゃったみたいです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-02-15 20:17:17)
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