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プロフィール
コメント数 2382
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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821.  007/ゴールドフィンガー 《ネタバレ》 
オープニング、なんとジェームズ・ボンドがアヒルのデコイを頭にくっつけて水中から登場。よくこんなこと監督はやらせたもんだよ、と呆れますが第三作からはいよいよ007も洒落っ気要素が強くなってきます。 007シリーズの突っ込みどころといえば何をやりたいのか意味不明な悪ボスたちの存在ですが、ゴールドフィンガー氏もかなりのもんです。ぶっちゃけ単なる金持ちのデブ親父というわけですが、カードやゴルフで真剣にインチキするなど、器の小ささが情けない。でもミニマムではセコい煩悩のかたまりのくせに、悪の本業ではフォートノックスの合衆国金保管所に核爆弾を仕掛けるんですから訳が判りません。この作戦、要は「世界最大の金保管庫が放射能に汚染されて実質的に無価値になれば、自分の持っている金が暴騰して大儲けができる」という、これまたしごく下世話な動機です。でもこれってよく考えなくても、突っ込みどころが満載なおバカ作戦なんですよね。だいたい、あんな頑丈な保管庫の中でたとえ超小型といえども核爆弾を破裂させれば、ほとんどの金が蒸発しちゃって放射能汚染どころの騒ぎではないでしょう。そして世界経済のシステムは破壊されて確実に大混乱になりますから、実業家であるゴールドフィンガー氏にはデメリットしかないでしょう。まあこれは原作に問題があるわけで、考えるとイアン・フレミングの007は結構なおバカ小説だと言えるでしょう。 そしてこの映画ではジェームズ・ボンドがびっくりするほど活躍しないんですよね。伏線なのかと思いきやボンドは最後までゴールドフィンガーに捕まったままだし、唯一の功績はオッドジョブを感電死させたことぐらいです。どうやってゴールドフィンガーの作戦をボンドは仲間に知らせたんだろうと不思議に思っていたら、なんとボンドに男に目覚めさせられたプッシー・ガロアが寝返って通報した(それも説明セリフだけで済ますという横着な撮り方です)という驚愕のオチでした。なるほど、大活躍していたのはボンドの下半身だったわけですね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-07-26 19:57:09)
822.  ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生 《ネタバレ》 
追悼ジョージ・A・ロメロ。天寿を全うしたのかもしれないけれど、もう少し長生きしても良かったのかな。ほんとにメジャーな映画賞とは無縁な人でしたが、あと10年ぐらい生きていればオスカー名誉賞ぐらいは貰えたかもしれなかったのに、ロジャー・コーマンですら与えられてるんですからね。星の数ほどいる映画人の中でも、彼のように若くして一つのジャンルが確立されるような映画を撮って、その後50年近くそのジャンルだけで飯を食ってきたという人は、他に見当たらないです。ゾンビもの以外のロメロ作品はほんと駄作ばっかりですけど。 さてその原点となったのがこの『リビング・デッド』というわけです。正直今の眼で観れば怖いという感じは全然しませんけど、その全編に漂う禍々しさと不条理感は半端じゃないです。登場人物たちはすぐにゾンビたちに囲まれてしまうんですけど、この登場人物たちがみなキャラがえぐいというか鬱陶しいやつばかりです。ヒロインと思った女性は冒頭でゾンビに襲われてからはショックでほとんど痴呆状態、正気に戻ったらあっという間にゾンビたちの餌食。カップルさんはうっかりミスでガソリンをこぼして車ごとまる焼けにされてしまいます。仲の悪い夫婦は、夫はその卑劣な性格がたたって黒人青年に射殺されゾンビ化した娘に妻とともに喰われてしまいます。この人たちが交わす会話は、身の上話や感情的なところはほとんどなく、ただお互いに「上に行け、下に行け」といったセリフばっかりなんですが、聞いているとほんとに鬱陶しい限りです。 本作がその後のゾンビ映画と決定的に違うところは、原因はともかくとしてもほぼ一晩でゾンビたちが制圧されてしまうところです。ゾンビの出現とそれに対する社会の対応は、ロメロにとっては当時の米国の社会問題や人種問題を暗喩する材料だったんですね。ラスト近くで鳥獣よりも簡単に銃で狩られてゆくゾンビたちなんかは、実に象徴的な映像です。風刺の道具だったゾンビが大うけしてジャンルというか記号の様な無敵の存在になるとは、さすがのロメロも予想すらできなかったでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-07-22 23:45:13)
823.  裏切りのサーカス 《ネタバレ》 
ゲイリー・オールドマンがまさかジョージ・スマイリー役に抜擢されるとは夢にも思っていなっかったんですけど、これが実際に演らせてみると実に素晴らしい演技です。ル‣カレのいわゆる“スマイリー五部作”で本格的に映画化されたのは本作が初めてで、そう言えば『寒い国から帰ってきたスパイ』にはチラッとスマイリーが登場していた記憶があります。TV版のアレック・ギネスが今まで最高評価だったみたいですけど、これは残念ながら観たことがありません。 確かに難解とまでは言わなくても非常に判りづらいストーリーであることは確かです。でもこれがル‣カレの原作が持つ雰囲気を見事に再現しているんじゃないでしょうか。彼のスパイ小説は、英国情報部のメンバーたちのバックボーンであるオックス・ブリッジとパブリック・スクールの狭い世界を理解していないと、読み通すのはしんどい作業になります。また派手なアクションはほぼ皆無と言って良く、スマイリーたちも拳銃を手にするシーンはありますが、発砲するわけでもない。ソ連側のスパイ・マスターであるカーラも最後まで画面に姿を見せることもなく、下手にラスボスみたいに暴れさせる安易なストーリーじゃないことにしびれますね。また70年代が時代設定とは言っても、まるで倉庫の中にオフィスがあるようなサーカス(英国情報部)の質素ぶりが英国の落ちぶれぶりが感じられていい雰囲気です。そして観てて判ってくるのがサーカスというか英国エスタブリッシュメント層のホモ率の高さじゃないでしょうか。さすがにスマイリーにはそういう趣味がないみたいな描き方ですけど、彼以外のメンバーはみんな“お友達”なんじゃないかと疑いたくなります。本作では真逆な性癖みたいなキャラになっていますけど、べネディクト・カンバーバッチが演じるピーター・ギラムも原作ではゲイだったと思います。 とても万人にはお薦めできませんが、ル‣カレのファンには必見の映画だと思います。そして世界はゲイリー・オールドマンの価値に気づいていなさ過ぎる!
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-07-22 01:34:35)
824.  選挙の勝ち方教えます 《ネタバレ》 
古人曰く“選挙は水物(みずもの)”、これは曲がりなりにも民主主義政体の国ではどこでも通用する至言です。 この映画はボリビアの大統領選挙で起こった出来事をテーマにした2002年製作のドキュメンタリー映画を、劇映画として再構築して撮られています。舞台は実際にボリビアで、大統領候補はみな架空の人物みたいです。この大統領選挙では革新系の候補が優勢で、かつて大統領を務めて返り咲きを狙う保守候補は劣勢です。南米ではよくあることなんでしょうか、両陣営とも米国の選挙コンサルタントを雇っています。保守系候補の米国人選挙参謀は巻き返しを図り、かつては凄腕コンサルタントとして名をはせたサンドラ・ブロックを無理やりスカウトして連れてきます。対する革新候補にはビリー・ボブ・ソーントンが付いていて、お約束通りこの二人はかつてはライバルで敵対関係というわけです。 この映画の面白いところはこの二人を単純な善玉と悪玉に別けていないところです。ビリー・ボブが愛人暴露で攻撃してくれば、サンドラはすかさずネガ・キャンで反撃するといった具合で、肝心の候補者がビビるぐらいです。この選挙戦での丁々発止はコメディ・テイストです。保守系の候補者もいかにもブルジョワ代表の傲慢そうな男ですが、時おり見せる内面やカリスマ性はなかなか魅力的に感じます。 選挙自体はサンドラがフェイク・ニュースを流したり、ビリー・ボブを引っ掛けて候補者に討論会で失言させたりの手を使って、保守系候補が滑り込み勝利を飾ります。ここで気づく方も多いでしょうが、昨年のトランプ勝利の大統領選挙とそっくりの展開なんです。そうなんです、実はトランプ大統領の誕生を前年にこの映画は予言していたんですよ。 映画の選挙後の展開は一気にシリアスになりました。新大統領はさっそく公約を無視してボリビアのIMFへの加盟と援助を要請し、反対派を警察力で弾圧し始めます。調べるとこの大統領は、ゴンサロ・サンチェス・デ・ロサダという2002年に大統領に就任した人物がモデルなのが判ります、この人は2003年には暴動によって辞任に追い込まれて米国に亡命したそうです。 ラストでサンドラが執る行動とその後は賛否が分かれるんじゃないでしょうか。私はこの終わり方は、きれいごと過ぎて好きじゃないですね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-07-20 01:34:21)
825.  家(1976) 《ネタバレ》 
オリヴァー・リードとカレン・ブラックが夫婦でベティ・デイビスが同居の叔母というとてつもなく濃いキャスト、もうこれだけで充分に怖いです(笑)。そこにただニヤついているだけなのにトラウマになるほど不気味な謎のグラサン運転手が登場となると、心底震えます。でもこの謎の男は画面に映るのは全編で3か所だけ、それでこれだけ強烈なインパクトを残しているとは、例の『悪魔のワルツ』の人面犬といい勝負しています。よく観ると低予算を逆手に取ったアイデア勝負じわじわ系のホラーで、感覚的には日本の怪談話に通じる怖がらせ方かと思います。 言ってしまえば『ハウス/HOUSE』を正攻法でホラーにしましたって感じですけど、製作年は『家』の方が先だし大林宣彦は本作をパロッたみたいですね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-07-17 20:31:30)
826.  スティーヴン・キング/痩せゆく男 《ネタバレ》 
よくある“ジプシーの呪い”もので、やはりどうしてもサム・ライミの『スペル』を思い出してしまいますけど、『スペル』のようなぶっ飛んだところがない分だけ微妙な感じがします。呪いをかける方もかけられる方も“みんな悪人”状態ですけど、お話しが進むにつれてどうしてもジョー・マンテーニャが演じるマフィアの親分に感情移入しちゃいますね。だってこの親分、義理を大事にするしほんとムダにカッコよいじゃないですか。この人以外の登場人物たちは、良くも悪くもキャラがブレブレ気味だから余計に目立っちゃいます。ジプシーの106歳の頭目にしたって最後の方になるとだんだん心持がぶれてきて、悪徳弁護士の呪いを解いてやるし「死ぬときは心を清くしておけ」なんて宗教家みたいなことまで宣います。特殊メイクにはけっこう力が入っていて、各人の死にざまはけっこうグロいですね。どんどん痩せてゆく主人公も映画の中盤の80キロ前後の体型がこの俳優の本来の姿なんでしょうけど、同じ映画の中で超デブからほとんど骨と皮だけまで特殊メイクを使って演じるってのは、けっこう珍しいんじゃないでしょう。どうせならトコトン痩せて死ぬまで観せてくれた方が面白かったかも。 観終わってとにかく「?」だったのはあのイチゴのパイで、なんで娘は食べても何ともなかったんでしょうか?
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-07-16 12:54:58)
827.  第27囚人戦車隊 《ネタバレ》 
デンマークの資本でハリウッド俳優とユーゴスラビア人俳優を使いユーゴで撮影されたという典型的なB級戦争映画。70~80年代のユーゴでは『戦略大作戦』や『戦争のはらわた』といったハリウッド戦争アクションが撮影されていますが、ユーゴでロケするメリットはもちろん西側と比べて物価が安いことと、第二次大戦の両陣営の兵器がけっこう残って使えたことに尽きます。 本作はドイツ兵を主人公にしたプロットが珍しいと言えます。囚人兵を集めた懲罰戦車部隊がソ連軍を相手に特殊作戦を展開するという、内容自体はよくあるパターンです。前半は戦車が動き回るのが見どころという風情ですけど、出てくる戦車は大戦中の実物ですけど全部ソ連戦車ばっかり。それに鉄十字マークを付けてドイツ戦車ですと言われても、少しも似せようとしてないので実感がないことは夥しいです。ドイツ戦車兵の軍服もなんかおかしなレプリカなのでこれまた雰囲気が出ません。おまけに肝心のソ連軍後方に潜入しての特殊作戦が、戦車を捨てて徒歩で実行とくればなんか騙された気分です。また脚本がヘロヘロで何を訴えたいのか良く判らんというのも致命的。世間に名が少しは知れていると言える出演者はデヴィッド・キャラダインとオリヴァー・リードぐらいです。そのオリヴァー・リードの出演シーンはラストの五分にも満たない超短時間ですから、もう開いた口が塞がりません。この二人が出演している80年代の映画はそれぞれ駄作ばっかりというのが定説ですけど、その二人が曲がりなりにも共演してしまったというわけで、その破壊力は想像通りでございました。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2017-07-14 11:07:17)(良:1票)
828.  帰ってきたヒトラー
このヒトラー役のオリヴァー・マスッチという俳優は、わかる人にはわかるんだけど生前のヒトラーの所作をよく研究していると感心しました。『最期の12日間』のブルーノ・ガンツよりもはるかにリアルだと思います。でもこれほど可笑しいけどだんだん笑えなくなってくる風刺映画には久しぶりに出会った気がします。『博士の異常な愛情』を初めて観たとき以来の衝撃かもしれません。あの女性局長は、ゲッベルスとレニ・リーフェンシュタールを合体させたようなキャラですね。こういうわき役たちもけっこう面白いけど、実はこの映画で最もキャラが立っているのは、ドキュメンタリー風に画面に登場してくる現代ドイツの大衆たちなんですよ。ヒトラーの「私を選んだのはお前たちだ」というセリフがこの映画の究極のテーマを判りやすく説明しているんじゃないでしょうか。この史実こそがドイツ人には耳が痛く、そして都合よく忘れようとしてきたことなんです。そういう視点で観ると、ヒトラー後のドイツ人の偽善をこれほど赤裸々に揶揄した映画はなかったんじゃないでしょうか。そう考えると、冷戦があったとはいえ戦後のドイツは狡猾に国際社会で立ち回ってきたものだと思います。組織の末端だったとは言っても東独の共産党政府の一員だった女性が、今や宰相として君臨して欧州の女帝とまで言われているんですからねえ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-07-13 23:15:44)(良:2票)
829.  ランブルフィッシュ 《ネタバレ》 
出演俳優の面々を観ると当時はやっていたいわゆるブラットパックものの亜流かと思いきや、コッポラだけあってその手の安直映画とは明らかに一線を画す出来です。夜はなぜかいたるところで煙がたなびき、昼はやたらと窓に映る雲が流れるカットが多用されるなど、コッポラは映像派だったんだなと再認識させられた次第です。モノクロで撮った理由のひとつに、色覚異常という設定であるミッキー・ロークが見ている世界を表現していることは間違いないでしょう。その中でランブルフィッシュだけが鮮やかな色を放っているという描写は、さすが名脚本家コッポラ!と拍手を送りたいです。音響スタッフに「もっとはっきり喋ってくれ!」とミッキー・ロークは何度も文句を言われたそうですが、この終始ボソボソとセリフを呟く演技は結構よかったですよ。若き日のニコラス・ケイジもシュッとしていて、ニコジーを観て初めて“カッコよい”と思ってしまいました。 コッポラがゾエトロープがガタガタになって苦労していたころの、彼の原点に帰ったような佳作です。映画作家は小品を観るとその人の才能が判るという良い見本です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-07-09 15:32:38)(良:1票)
830.  誘惑(1957) 《ネタバレ》 
かつて売れない画家だった銀座の洋品店の店主(千田是也)は、店の二階を客寄せのためにギャラリーに改装する工事を始めています。数年前に妻を亡くした彼には娘(左幸子)がいて、親の血を引いたのか彼女もオブジェを造ったりするグループに所属して芸術活動に余念がありません。恋人が所属する売れない画家グループのために彼女はギャラリーのこけら落としに彼らの展覧会を開こうと提案しますが、そこはお金が絡むことでもありことが上手く進みません。 登場人物たちの心の声をモノローグで聞かせる撮り方は、単純な手法だけどなかなか面白かったです。ふつう男女が相手を異性として見れば、なにかの感情が頭の中で湧いてくるのは動物の本能みたいなものですからね。銀座のシークエンスはセットで撮影されていますが、雰囲気はルネ・クレールなんかの戦前のフランス映画みたいな感じがします。洋品店と向かい側の喫茶店だけのセットですけど、それぞれの店の一階と二階から見える道路を挟んだ向かい側の光景が印象的に使われていました。さすが才人・中平康だけあってこの若さでフランス映画のエスプリを完璧にマスターしていたと言えます。登場人物たちが多くて群像劇みたいなところがあるストーリーですけど、その中でもヒロインといえる左幸子の個性は光っていました、この人はやはり天才女優です。そして岡本太郎や東郷青児といった有名画家が本人役で出ているのも楽しい、岡本太郎なんてまさに“岡本太郎そのもの”といった存在感でした。 でもそのフランスではヌーヴェル・ヴァーグが始まろうとしていて、同年代のトリュフォーやゴダールが頭角を現しだしていたことを考えると、ここが中平康の限界なのかなとも感じます。小津や溝口といった大家ではなく若手監督が撮った映画ですからねえ、こういうところにその後の60年代の興業面だけではない日本映画界が衰退した根っこがあるんじゃないでしょうか。ヌーヴェル・ヴァーグやニュー・シネマの様なムーヴメントがおきなかったのは、映画先進国の中では日本だけだったということは一度分析されてもいいんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-07-05 19:42:29)
831.  1000日のアン 《ネタバレ》 
堂々たる大作ですけど、イングランドのチューダー朝時代のドロドロ劇は観ていて本当に疲れますね。アン・ブーリン役のジュヌヴィエーヴ・ビジョルド(それにしても日本人には発音しにくい名前です)はこれこそ一世一代の熱演でございます。この欧州史を大きく変えてしまった世紀のツンデレぶりをとくとご覧あれ、ですよ。彼女がごねなかったらヘンリー八世がバチカンから破門されることはなかったでしょうし、イングランドがプロテスタント国家にならなかったかもしれません。 アン・ブーリンと言えば『ブーリン家の姉妹』のナタリー・ポートマンが印象に残りますが、ビジョルドとポートマンは雰囲気が似ていますね。この役はやはり演技力だけでなく生来の強気を持った女優じゃないと務まらないじゃないかな。リチャード・バートンはヘンリー八世にしてはこれでもちょっと上品すぎる感じがしてしょうがなく、もしリメイクするならラッセル・クロウが自分のイメージにはピッタリなんです。実はこの作品にはノン・クレジットですけどエリザベス・テイラーがエキストラみたいな役で一瞬だけ登場します。仮面舞踏会の客なんですけど、仮面の隙間からチラッと見える横顔と豊満な乳はまさしくリズでした。 ちょっと冗長な感じもしましたが、この映画を観たら続けてケイト・ブランシェットの『エリザベス』を観ると良いでしょう。いや、その前に『クイーン・メリー/愛と悲しみの生涯』も観ないといけませんね。そういえばこれも監督がチャールズ・ジャレットでした、でも未だソフト化されていないレア作ですからムリです。TSUTAYAの発掘良品に期待するしかないですね…
[DVD(字幕)] 7点(2017-07-01 22:05:45)(良:1票)
832.  007/ロシアより愛をこめて 《ネタバレ》 
『ゴールドフィンガー』と初期007シリーズのトップ評価を競っていますが、個人的には本作がコネリー・007の最高傑作だと思っています。主題歌“ロシアより愛をこめて”も、シリーズ中もっとも有名な歌曲なんじゃないでしょうか。そういえばエンドクレジットに“次は『ゴールドフィンガー』でお会いしましょう”みたいな文言があるのに気が付きました。このころにはもう007シリーズの世界的なブレイクが確定していたんですね。 本作から007お得意のガジェットが登場してきますが、まだ仕掛けスーツケース程度で可愛いものです。それよりも男と男は肉体勝負、男と女は色気で勝負、のハード路線で撮られているのがポイントです。ダニエラ・ビアンキはこの映画の撮影時はまだ22歳(!)、その美貌は歴代ボンドガールの中でも文句なしのNO,1でしょう。彼女はこの後ロクに映画に出演せず60年代終わりには引退しちゃったんですから、実にもったいないことでした。ボンドに対するロバート・ショウがこれまた“記憶に残る悪役ベスト・ランキング”の上位にランク・インすることは必定です。ボンドとの列車内での格闘はまさにヘビー級戦で、迫力満点です。アクション・シーン全般もVFXをほとんど使わない肉弾戦が中心なので、引き込まれてしまいます。当時としては濃厚だったと思われるお色気路線もふんだんで、これぞ“大人のアクション映画”と呼ぶにふさわしいと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-06-28 22:16:40)(良:1票)
833.  007/ドクター・ノオ 《ネタバレ》 
ジェームズ・ボンド、記念すべき初登場作。余談ですけど自分が子供のころにはたしか“ゼロ・ゼロ・セヴン”だったはずですけど、いつごろから“ダブル・オー・セヴン”に変わったんですかね? 前半はけっこうサスペンスを意識した撮り方をしてたんだな、と今の眼で観ても感じます。当然ですがシリーズ中盤以降のなんでもありのボンドではなく、マネーペニー女史といちゃついたりところどころでブラックな皮肉を吐くところなどジェームズ・ボンドのキャラを確立させる布石を打つだけで終わったという感じも否めません。それでも部屋に入るときの用心振りなどエージェントとして当然身に付けているはずの描写はきっちり押さえているところは好感が持てます。 やはりこの映画が趣をガラリと変えるのは、ドクター・ノオの島で例のドラゴンが登場してからでしょうね。ドクター・ノオというキャラはシリーズ中でも屈指の不気味クンだと自分は感じるんですけど、スペクター加入してまで彼が何をしたかったのかがいまいち不明なんですよ。秘密基地の中にわざわざメイドまで用意してボンドたちを迎えたり、独房に閉じ込めたボンドには通気口を破られていとも簡単に逃げられたリ、なんかわきが甘いんです。最近のアクション映画のラスボスの最期と較べると、信じられないぐらいあっさり退治されちゃうのは逆に新鮮に感じるぐらいです。この映画の後半パートに関しては、尺が30分ぐらい足りなかったのかな。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-06-26 23:42:24)
834.  ゾンゲリア 《ネタバレ》 
実はわたくしもその邦題のおかげで、「どうせB級グロゾンビだろ」とこの歳になるまで敬遠していました。なんせ一時期まで『サンゲリア』と混同していたくらいですからね。ところが観てみてもうビックリ、なかなか上質のホラーじゃないですか。確かにゾンビはたくさん登場しますが、こいつらは由緒正しいブードゥー系ゾンビなのであります。なんでもブードゥー系は生前の記憶がまったくない生きた死者なのだそうで、記憶がないということがラストのオチに綺麗につながってゆくわけです。ネタバレが過ぎてしまうのであんまり詳しくは書けませんが、これはわたくしが大好きな『恐怖の足跡』系列だったというわけです。怖がらせ方もグロだけでなく心理的な見せ方も駆使していて、暗闇を進む人物の懐中電灯を持った腕だけが映ります。その腕は画面右方から伸びているので光は左側だけ放射されています。その腕の奥の暗闇から人影の様なものがぼんやりとしか判らないけど近づいてきますが、主人公は全然気が付きません。このカットには心底ゾッとさせられました。 無名の安い俳優ばかりの中で(ロバート・イングランドやリサ・マリーといったのちに世に知られる人も出ています)、やはりオスカー俳優ジャック・アルバートソンの存在は光っていました。実は9年前の『ポセイドン・アドベンチャー』から本作まで、彼は劇場映画にはまったく出演してなかったんです。そして本作公開の半年後に亡くなってますので、どうやらこれが劇場映画としては遺作みたいです。クレジットに彼担当のダイアローグ・コーチの名前があるくらいですから、撮影当時はもうかなり老化していたんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-06-25 20:16:54)
835.  怨霊佐倉大騒動 《ネタバレ》 
狂言歌舞伎の題目になっていて有名な佐倉惣五郎の直訴事件をストレート勝負で映像化、かつて活動弁士だった社長の大蔵貢がいかにも好みそうなお話しでもあります。監督は渡辺邦男で佐倉惣五郎役には嵐寛寿郎という、『明治天皇と日露大戦争』で天下をとった新東宝いちの黄金コンビでございます。 お話しは舞台化された佐倉惣五郎もので使われたエピソードというかネタを総動員したって感じで、謂わば集大成と言えます。堀田家のバカ殿様をはじめ家老連中のあくまで憎々しくて、王道のストーリーテリングで安心して観れます。もちろんアラカンも期待通りの重厚な演技、名主とは言え農民なのに役人とのいざこざで見せる立ち振る舞いはまるっきり剣豪のそれなのは、まあご愛敬です。惣五郎一家が処刑されてからのラスト10分は、怨霊となった惣五郎一家が悪役たちに憑りついて大暴れします。アラカンが「そこまでせんでも…これでは映画の余韻が台無しに…」と渋い顔したという話も伝わっていますが、やっぱ新東宝ですからこのお化け屋敷テイストは必須ですよね。 というわけで、深く考えなければ退屈せずに時間がつぶせる一編です。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2017-06-24 21:06:21)
836.  穴(1957) 《ネタバレ》 
以前のレビュアーの方もおっしゃてるように、私も市川崑は”日本のビリー・ワイルダー“だったんだなと再認識させられました。コメディと言っても、邦画界でこれだけセリフ過剰な映画を上手くコントロールできる監督は稀有な存在でしょう。そしてあの京マチ子がこんなに早口なセリフのオンパレードでコメデイ演技を易々とこなせるとは全く想像を超えていました。彼女を観ていると、『ワン・ツー・スリー/ラブハント作戦』のジェームズ・キャグニ―を思い出してしまいました、そういえばこれも監督はビリー・ワイルダーでしたね。 ミステリーと言ってもこういう緩いお話しなので重箱の隅をほじくるような観方をしてもしょうがないです、でもミステリーとしても良く考え込まれた脚本だと思います。ラストの船越英二の飛び込みはちょっとシュールさすら感じる唐突ぶりですけど、そのために窓に空いた大穴の周りで、死ななかった登場人物たち全員がカーテンコール宜しく勝手なことを言い合っているところなんぞ、市川崑らしいブラックな幕切れだと感じました。 でもいちばん訳が判らなかったのは、石原慎太郎の無意味としか言いようがない出演でしょうね。もう調子に乗ってど下手な歌まで披露しちゃうんだから…
[CS・衛星(邦画)] 7点(2017-06-16 23:23:15)
837.  ときめきサイエンス
いやはや、こんな中坊の妄想そのものみたいなお話しを大の大人が真面目に映画にしちゃうなんて、ジョン・ヒューズはやはり天才だったんでしょうかね?これはフランケンシュタインのパロディと言うよりも、セクシー姐ちゃんバージョンのドラえもんと呼んだ方がしっくりくるんじゃないでしょうか。 徹頭徹尾バカバカしいストーリーですけど、サウンドトラックだけはムダに豪華なんです。冒頭の暴走し始めるPCの画面には、なぜかデヴィッド・リー・ロスがチラリと登場します。そしてショッピング・モールのシークエンスで流れる“プリティ・ウーマン”は、なんとヴァン・ヘイレンのカヴァーなんです。おまけにこの映画のテーマソングは、ミュージシャン時代のダニー・エルフマンが組んでたバンドがパフォーマンスをしてるんです。 やはりジョン・ヒューズのティーン・ムーヴィーには、アンソニー・マイケル・ホールが欠かせませんね(もちろん女優ではモリ―・リングウォルドも)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-06-13 22:54:43)
838.  人類創世 《ネタバレ》 
その発想は、ちょっと他に類を見ないような珍作、「こういう映画を撮ってみたい」と妄想した映画作家は多々いたかもしれませんが、それを実現させるのはある意味で偉業です。 登場する原人は、まるっきり猿人風からネアンデルタール人的な風貌、そしてどう見てもアマゾンの原住民にしか見えないのまで、多種多様です。IMDBで調べると、実はこの映画に登場する原人たちにはみんな名前があり、種族名までちゃんとついていることを知って驚きました。ちょっと首を傾げたくなるところですけど、演出上はやはりそういう配慮が必要だったんでしょうかね。現在の研究では、ホモ・サピエンス以外の人類も同時期に地球上には存在していたことが判明しています。そういうことを考えると、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人が共存している世界は自然なのかもしれません。そして容姿から考えると、ロン・パールマンたちが演じているがネアンデルタール人で、アマゾン原住民風の種族がホモ・サピエンスだと解釈するのが妥当な気がします。ということは、この映画は実はネアンデルタール人を主人公にした稀有な作品なわけです。 当たり前ですけど、誰も見たことがないし証拠もないのでこの映画の世界がリアルなのかは判りませんが、説得力がある映像なのは確かです。そしてホモ・サピエンス風の種族の進化の度合いは、他の種族に較べるとSF映画の高度な文明を持ったエイリアンと地球人ぐらいの差があります。 ラストにはこの異なる種族が交接して互いに夜空に輝くお月様を眺めるわけですが、そこにはやがて滅亡してしまう運命のネアンデルタール人の悲哀が感じられたりします。現在の人類の核遺伝子には、ネアンデルタール人特有の遺伝子が4%前後混入しているそうです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-06-09 22:28:32)
839.  動物と子供たちの詩 《ネタバレ》 
まず語っておきたいのは、オスカー歌曲賞にノミネートされたカーペンターズが歌う主題歌です。意外にもカーペンターズの歌曲がテーマソングに使われたのは、この映画だけなんです。『ふたりの誓い』もあるんじゃね?って思う人もいるかもしれませんが、あの有名な曲は確かにオスカー受賞してますけど、カーペンターズは映画公開後にカヴァーして大ヒットを飛ばしたんですね。本作で歌われた『動物と子供たちの詩』は、シンプルなメロディーラインなんですけどカレンの澄み切った歌声とのコラボレーションが絶妙で、カーペンターズの隠れた名曲だと言えます。 この映画はアメリカ特有の “サマーキャンプもの”に属しますけど、名匠スタンリー・クレイマーが撮るようなジャンルでもなかろう思いましたが、単純なジュブナイル映画とは一線を画す佳作だと思います。このサマーキャンプがまるで戸塚ヨットスクールの米国版みたいなところで、そこの最劣等班の六人の少年が主人公です。少年たちの親は裕福だけど家庭環境や育ちに難がある問題児たちで、牧場のバッファローがハンターたちに娯楽で射殺される光景を観てバッファローを逃がすためにキャンプを脱走します。ここで考えさせられるのは、この映画のプロットは一貫して少年たちの視点で展開するところです。日本でもニホンカモシカが増えすぎて個体調整のために駆除されることがたまにありますよね、ひょっとしたらこの映画でのバッファロー狩りも、そういう意図があるのかもしれません。でも少年たちはバッファローに不遇な自分たちを重ね合わせてしまい、悲劇的な結末まで暴走してしまうんです。大人たちの理屈も「バッファローは役に立たないから殺しても構わない」というかなり乱暴ですけど、この理屈を裏返すと「クジラやイルカは可愛いし知能が高そうだから、狩ってはいけない、食べてはいけない」という欧米人の身勝手な論理になるわけです。 プロット的には『スタンド・バイ・ミ―』が似ているとも言えますが、感傷的な演出を極力排して冷徹な視線で子供の世界を描いている分、本作の方が格段うえだなと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-06-08 22:55:43)
840.  ミニー&モスコウィッツ 《ネタバレ》 
メンヘラ気味の中年女と、ニーチェみたいな髭を蓄えているくせにがさつで向上心のない男が出会って4日で結婚式を挙げるというお話しですけど、これほど暑苦しいボーイ・ミーツ・ガール映画があったとは、まったくもう… 監督しているのがあのジョン・カサヴェテスですから、たぶん本作も彼お得意の即興演出で撮ったんじゃないかと思います。彼の即興演出は観ててほんと疲れるんですよ、そこに来てこんな重いんだか軽いんだか判別としないストーリーとなるとくたくたにされます。ジーナ・ローランズに絡むシーモア・カッセルがまたウザいことと言ったらもう、レストランではもっと静かに喋れよ、って怒鳴りつけたくなります。彼が運転する愛車のボロトラックが、なぜか普通の道路で必ずUターンするのが観ていて鬱陶しい。でもラスト近くのミニーとモスコウィッツがそれぞれの母親を呼んで会食するところだけは可笑しかった。モスコウィッツの母ちゃんがまた声がでかくがさつなんですよね、これは完全に息子に遺伝してます。そして息子もミニーの母親に「将来の生活設計はどうなってるの?」と訊かれて「もちろん大会社に勤めます、大企業の駐車場係りの方が安定してますから」、こりゃどうしようないわ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-06-03 23:08:56)(良:1票)
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