821. 真珠の耳飾りの少女
下働き顔のS・ヨハンソンが役に最強にはまっていて、色白の顔が窓からの光線により、それこそ絵画そのままに浮かび上がる映像が全編にわたって美しい。フェルメールと彼女の間に表立っての恋愛的行為は起こらない。起こらないけれども、アーティストと、そのアートを理解する者との心の絡みが、それはそれは激しく展開しているのです。この二人の近くにいたら、必ず当てられます。お話の淡々とした按配と、17世紀オランダの古く情緒ある風景がぴったりとマッチして中世を旅してきた気持ちになりました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-02-18 00:55:51) |
822. ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
《ネタバレ》 まず出てきた率直な感想はといえば、「スウェーデン、変態多すぎ・・」。生理的嫌悪感を起こさせる露骨なシーンがけっこう多いし。北欧の雪景色の清冽さの浄化効果で作品が安っぽいグロに堕ちるのを防いでいるけど。ひとつひとつ謎を検証してゆくプロセスが、丁寧で観ていて分かりやすい。足で追うアナログパターンは昔の探偵物のわくわく感あり。スウェーデンにもナチの影響がこんなにあったんだ、などと北欧についての浅学さを思い知りながら真相にたどり着いてみれば出るわ出るわ変態犯罪者の山。いやはやスウェーデンで女が生きるのってなんかすんごい大変なことのように感じたりして。気のせいだといいんだけど。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-02-05 01:05:14)(良:1票) |
823. ソーシャル・ネットワーク
《ネタバレ》 友だち作りのためのツールを構築した本人が、そのために友人を失ってる。なんたる皮肉。だってねー、マーク駄目だもんこの人。劣等感が強くてでも頭の良いプライドばかり高くてそりゃー彼女にもふられるわ。裁判沙汰にまでなっちゃう、その原告側の二人がこれまたマークの劣等感をびしびし突いてきたであろうイケメンのクラブ会員でおまけに元彼女が憧れてたボート部だ。ああ言えばこう言う式にへらず口をたたいていたマークだけど、素直に言ってしまえば「こいつら大嫌い」ってことでしょ、マーク?話題ばかりがワールドクラス、時代の寵児なれどメンタリティーがサークル活動のノリで一昔前の"経営の神様”的な精神とはずいぶん遠いのだなあ。ザッカーバーグ本人が観てどう思ったやら。 [DVD(字幕)] 7点(2013-02-03 18:17:23) |
824. ラブ・アクチュアリー
《ネタバレ》 クリスマスに向けて愛を叶える人あり、叶わぬ人もあり。ずいぶん沢山のパートで構成されてるけど、それぞれのお話がどれもちゃんと厚みをもって着地してるのが凄い。全体を通して、人を見守る視線の温かさがこの映画を成功させてるんだと思うな。辛いことばかりだと人生耐え難いですもんね。病気の家族が恋愛の障害になっちゃう彼女には家族の繋がりを、友人の嫁に惚れた彼には新しく歩む第一歩を、この映画はちゃんと与えてる。優しいです。関係ないですがA・リックマンが話すたびにスネイプ先生が頭をよぎってしまう。特徴ある声も良し悪しですな。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-02-03 17:50:58)(良:2票) |
825. 都会のアリス
《ネタバレ》 よく並べられて語られる“ペーパームーン”と“アリス”だけど、“ペーパー”が大人の男と少女が並列なのに比べて、"アリス”は男の、少女への依存度ぐっと高いのですよね。警察からアリスが逃げてきたときの嬉しそうな顔。"この子に選ばれた”、自らの内面を放浪していた彼にとってこのことがもう決定的な指針となったはず。そんな微妙な心の内を「どういうことっ?」と怒るお巡りさんに説明するのは難しい。最初から最後までテンション高く突っ走る"ペーパー”と違い、こちらは徐々に人間関係が熟成されてゆく感じ。どちらも好きです。 [ビデオ(字幕)] 7点(2013-01-26 16:39:41)(良:1票) |
826. ヒトラーの贋札
《ネタバレ》 ナチの作戦に加担することを潔しとしない人間と、信条は棚上げしても生き延びようとする人間。両者の確執が描かれていて、ユダヤ人収容所を舞台とした話としては目新しかった。収容所の過酷な環境下にあって、ナチスに一矢報いてやろうとする彼の怨念めいた気力に驚く。尊敬はするけど一緒のグループにはなりたくない。生きるのが先でしょ、どう考えても。贋札作戦が成功しようが失敗しようが戦況がどう動くかなんて一個の人間には計り知れないことだし。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-01-18 00:28:38) |
827. ハート・ロッカー
《ネタバレ》 「こんなところ大嫌いだ」とブラボー中尉が言う。まったくだ。地獄だ。不条理だ。もはや現代の戦争は愛国心の発露の場ではなく(過去にもそんなのあったのかどうかは疑わしいけど)“生活の糧”を得るための仕事になっている・・らしい。愕然とするけれどその“大嫌い”な場所に戻らないと自分を取り戻せない症例がある・・んだそうだ。麻薬のような中毒作用で。これは現在進行形の話だしあんまりな現状に立ちすくむばかりではいかんとは思うのだけど・・、感想がうまく抱けず点々の多い文になってしまった。ああ、何よりも印象に残ったのはスーパーマーケットにて夥しいシリアルの前で立ちすくむ主人公の姿。平板で素っ気の無い平和に順応できていない彼が痛々しかった。 [DVD(字幕)] 7点(2013-01-13 00:27:36) |
828. リトル・ミス・サンシャイン
《ネタバレ》 いやこの家族クセありすぎ。各人つっこみ所ありすぎて呆気にとられてるうちにあれよれよと数々のトラブル踏み越えて怒涛のラスト。じーちゃんやってくれたなあ。家族の誰もチェックしなかったの?振り付けを。出入り禁止になっちゃったけど、別にいいもんねミスコンなんて。じいちゃん死んじゃったし、兄貴はまずパイロット無理だし父ちゃんの本は出ないしゲイの叔父さんも展望は開けていないけど、各々がラストで発散し切ってなんとなくタフさを感じるこのお話。みんながんばれ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-01-13 00:06:05) |
829. トレーニング デイ
《ネタバレ》 この展開には驚きました。倫理なんて現場によって変わるものだし、てっきりE・ホークもデンゼル側に感化されてゆく話かと思った。そこは新米のルーキー君、自らの正義感を選び取り、踏ん張りました。悪人とも善人とも判断の難しい清濁併せ持った、自己中キャラをデンゼルが張り切って演じてます。こんな役もできるんだぞー、と力入ってて微笑ましい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-01-11 11:51:13) |
830. エリザベス
エリザベス一世、この方の治世ならもっとたくさんドラマがあるのになあと彼女の前半生のお話で終わったのが個人的には残念。あ、続編があるのですか。楽しみ。肖像画そっくりのケイトが熱演していて、真紅のドレスを堂々と着こなす女王っぷりが冷たい顔立ちに映えます。J・ラッシュが今昔問わず英国王室に絡んでおります・・出た~ 今回悪そうだったなー。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-01-11 11:38:41) |
831. リオ・ブラボー
娯楽の王道、とも呼ぶべきファミリーでも安心西部劇。悪漢共との対決のスリルに、アル中から立ち直る男の人生に、ほどほどのロマンスとのびのび繰り広げられる銃撃戦。アメリカ人のメンタリティの根幹のよう。美女が理由なく情熱的に迫ってくるっていうのも、殿方にはこたえられないんでしょうな。アンジーが惚れるにはJ・ウェインちょっと年いきすぎでは・・と思うけど。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-12-19 18:00:21) |
832. ミニミニ大作戦(1969)
《ネタバレ》 人物をきちんと描けているのはリメイク版かなあ。オリジナルは仲間がいっぱい。でも数が多いだけでなんかひな壇芸人のごとき扱い。仲間に限らずマフィアも描き方はおざなり、コメディー色強し。でもミニクーパーが疾走する後半のカーチェイスの爽快感はオリジナルもなかなかのもの。建築中オペラハウス型?の屋根に上がって三方に散ってまた降りてくるって意味の無い観客サービスな演出も楽しい。撮影年を考えるとこちらの方が立派かも。ラストまさかのやじろべえバス・・いやいや。この投げ出した感じ、イギリス映画っぽい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-12-10 00:51:20) |
833. マーティ
《ネタバレ》 素朴でほのぼの。良いですなあ。この映画の一体どこにケチをつけようか。あー、そうだ。一人息子をとられてなんか不機嫌になる母親の気持ちはわからんでもないけど、「ぬけがけじゃん」的につんつんしてる男友達って。心の狭い奴らだなー。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-12-10 00:25:35) |
834. 許されざる者(1992)
《ネタバレ》 さて、一体正義とは何でしょうと宿題を出されました イーストウッドに。「許されざる者」とは一体誰なのか。娼婦に暴行して反省の無い牧童か 連中に賞金をかけて私刑を望む女たちか 権力を笠に着た悪徳保安官か 道徳心の無い賞金稼ぎどもか はたまた友人の復讐のために人殺しを躊躇しないかつてのおたずね者か。各々に理屈なり各人の正義はあるのだろうけど、どれも今ひとつ首肯しがたい連中ばかり。ヒーローのいない西部劇・・、でもラストなんだかんだでイーストウッドがカッコイイとこ持ってっちゃいましたね。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-12-03 17:21:25)(良:1票) |
835. 秋刀魚の味(1962)
笠智衆がそこにいるだけで、もうなんだか安心している自分がいる。剛でなく柔の迫力、「ふぅん」という相槌のまろやかさ。「良かったじゃないか。戦争に負けて」とこの人ににこにこと言われると、そ、そうですねと涙ぐみそうになる。棒読み台詞にも慣れた。笠しかり、岩下志麻しかり、美しい日本人がここにいる。ひょうたん先生をあんまり苛めないでほしかったなあ。 [ビデオ(邦画)] 7点(2012-11-27 16:24:29) |
836. インサイド・マン
《ネタバレ》 ラストまで、だれずに畳み掛けるこのスピード感、スパイク・リーっぽい。話の心棒に銀行強盗を据えながら、周辺の人間描写が細かくてこれまたスパイク・リーの真骨頂。子供のゲームの内容が嘆かわしい、と銀行強盗犯がぼやき、犯人出題のクイズをめぐって捜査員たちが細かくモメる。こういう描写センスにちょっと惹かれる。指輪のみ残して戦争犯罪人を糾弾してTHE END、ここはちょっとかっこつけすぎかしら。正義ヅラするには一般人に恐怖を与えすぎでしょうに。でもまあモデルガンとインチキ処刑に免じて許してあげよう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-11-19 00:47:45) |
837. ギルバート・グレイプ
重いテーマを、淡々と描くなあ 相変わらずこの監督は。裏返すと束縛にもなる家族愛、放り出したくてもできないしんどさ。おまけに人間関係の狭い田舎ときては苦しい苦しい。にも関わらず、この映画ミントキャンディーみたいな後味なのは、ひとえに役者さんの力なのかなあ。誠実に人生と向き合うJ・デップが淡々と日常をこなし、弟のディカプリオは痛々しいというよりは、そこはかとなく可笑しみのある存在感を放つ。そして芯の強い可憐な野の花のようなJ・ルイス。三者の透明感と、音楽の力でこの作品はしみじみとした叙情を獲得した・・んだと思う。あまり得意じゃない監督さんなのだけど、ハッカ味が爽やかだ。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-11-05 23:46:00) |
838. ロビン・フッド(2010)
リドリー・スコット監督とラッセル・クロウの組み合わせってこりゃもうアナザー・グラディエイター。クロウ版ロビン・フッドはいかついうえ、一国の将軍みたいでローマの剣闘士と見分けつかないし。おんなじキャラだし。でもこの監督が撮るとやっぱり画面が広く見えるなあ。のびのびと雄大、戦闘シーンの迫力も手馴れたもんです。結局のとこは面白かったです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-10-25 00:40:34) |
839. エリン・ブロコビッチ
巨大企業に丸腰で挑むエリンの気風の良さと腹のくくり具合を表現するのに、ジュリアの大作りで派手な顔がぴったりマッチして大成功。子供はそろってよい子たちで手がかからず隣人はイケメンの上に善人で(しかも戻ってきてくれる!)、とサイドに関しては甘すぎね?とも思うけどお話全体に勢いがあってスカッとするのでまあいいか。 [映画館(字幕)] 7点(2012-10-22 00:55:37) |
840. パンズ・ラビリンス
《ネタバレ》 外は苛烈で陰惨な戦争だけれど、迷宮の中に入ってごらん。王宮までたどり着いたら、その眩いまでに壮麗なこと。そこは少女の頭の中の世界でもあるのだけど、なにしろ狂気の軍人たちや酷薄な義父らに囲まれて正気を保つためには想像力が無いと生き抜けるものではないですもん。大人から見れば奇行の数々も、この子にとっては命綱の精神世界。観てる間中、オフィーリアとともに迷宮をさまよい、弟のために祈り、大尉を憎悪しメルセデスさんに快哉を叫び、と忙しかったけれどオフィーリアついに向こう側に行ってしまった。やっぱり現世に生かしてほしかった。とても悲しい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-10-22 00:25:04) |