921. 夜行列車
このサイトでいう「いろんな意味で警告したい映画」という表現が一番ピッタリきている。何せ、最後まで観賞するのが辛かった。よくこんな映画をテレビで放送したと思う。 恐らく監督の独りよがりなのだろう。 撮影前にどういう話なのか、スタッフは納得したのだろうか。 まず、主人公が誰かわからないし、ストーリーの主軸がない。 一時間くらいして、いきなり殺人犯人が表れ、停車した汽車から逃げた犯人を乗客全員で追いかける。なんなんだ? これ。 別のサイトでは「グランドホテル」に似た群像劇。秀作と書かれていたが、ミケランジェロ・アントニオーニや、ゴダールの後期の作品が好きな人は、絶賛するかもしれない。 全編流れるスキャットや主演のルチーナ・ウィンニッカの美しさは、1959年の日本人には特別なものを感じたかもしれない。 でも、ただそれだけの作品。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2009-12-17 00:51:15) |
922. 夜の終りに
《ネタバレ》 私が一番嫌いなタイプの映画。当時ポーランドではジャズは禁止で、たまたま検閲が緩くなった時期に上映することができたと監督は言っていたが、酒場で偶然知り合った男女が、映画の3分の2を二人だけで語り合う会話劇である。因みに野球拳みたいなゲームをするが、男には性欲が全くない。 しかし、翌朝いなくなった女を男は必死になって探す。 戻ってくると女はお茶を作って待っている。 お互い心を寄せ合う二人。(…?) 男は医者でジャズドラマー、そしてプレイボーイ。女の謎に包まれているが、どこが魅力的なのか全くわからない。 とにかく、二人のスリルの全くない会話には退屈極まりない。 裕次郎と北原三枝の映画のほうが、数段レベルが高い。 当時のポーランドの社会情勢を考えれば仕方ないのかな。 [CS・衛星(字幕)] 1点(2009-12-12 20:56:43) |
923. 灰とダイヤモンド
当時のポーランドの社会情勢と共産主義とは何か理解しておかないと納得ができないと思う。 先日、この監督作品の特集番組が放送されたようだが、恐らくそれを観た人の評価は高くなると思う。 私は観ていないので、細かい演出まで理解できなかった。 暗殺に成功した主人公と殺された人間が抱き合う事で「我々は同じポーランド人なんだ」なんて、何も予備知識なく観賞した人間がどうして理解できるというのだ? 点数が高い人は恐らく高齢者で「良」の評価が沢山ついているのも、これまたこの時代を知る高齢者だと思う。 最初のレビューの方で「理解出来ないからと言って点数を下げるな」なんてコメントを書いてあったが、とんでもない話しである。 映画とは、社会を理解出来ない人に送るメタファーを交えたメッセージなのだ! 理解出来ない隠喩に価値は見出せない。 とは言っても、私にとっては10年後には価値が変わりそうな映画にもなりかねない不思議な作品である。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2009-12-12 20:38:57)(良:1票) |
924. 約束の土地
《ネタバレ》 この映画を6点に止めておくのは惜しい。本当は9点だが、少しでも注目してもらいたいと思い、満点にした。 ヴィスコンティを観賞しているような気分になる映画だが、主人公を中心とした三人の友情(本当は友情とは呼べない)が、繊維工場建設の野望を企てていくお話し。 内容は、舞台は19世紀末、製作は70年代前半にも拘らず、皮肉にも現代の格差社会と全くと言っていいほど重なっている。 買収、ヘッドハンティング、インサイダー取引。正義も悪もない。登場する女性全てが人間として扱われていないのが特に悲惨だが、皮肉にも男たちは、その女性たちの影響で堕ちていくことになる。 今回、BS放送での観賞だが、DVD化されてないのが残念でたまらない。 全編に映される19世紀の舞台は既存のものを使ったので低予算だったらしい。 しかし、本作がアカデミー賞のノミネートを受けた時、ロサンゼルスに呼ばれた監督は、いったいどれだけの資金を使ったんだ?と頻繁に聞かれたと言う。 ヴィスコンティが観たか知らないが、もし観ていたら間違いなく絶賛していたと思う。 チャンスがあったら是非観てもらいたい作品だ。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2009-12-12 03:09:15) |
925. 大理石の男
《ネタバレ》 1976年に卒業課題の映画製作を作る女学生(これが30歳くらいにみえる)。その彼女がテーマにしたものが、1962年に政府のプロバガンダに利用され、虚像の英雄にされたビクルート。この行方の知れぬビクルートを追いかける3時間の上映時間は決して長く感じなかった。訴えたいテーマは痛いほど伝わってくる。 しかし、監督は映画の勉強は独学だったのではないだろうか? BGMのセンスのなさに加えて、あまりにも下手くそすぎるシナリオ。検閲で12年かかったなら、もっともっと書きなおしをして、2時間以内に納めなさいよと言いたい。 ポーランドの時代背景をドキュメンタリータッチで観ることができたので、意外に長く感じなかったが、キャラクターの心境など分からないことが多すぎる。 DVD化、ビデオ化にならない理由も十分納得させられる。 どんな二流の監督も長生きすれば「巨匠」と呼ばれるのだからバカバカしく思えてしまう。 情熱だけで作った作品なので、それだけの理由で4点。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2009-12-11 03:58:27) |
926. フィッシュストーリー
「アヒルと鴨のコインロッカー」が面白かったので期待したのだけど、構成がここまでくると、内田ひろし作品も含めて「また、このパターンか…」という印象を受ける。 時代背景が違う群像劇が続くが、それが一つにまとまるラストは観客に想像力を全く与えない。全てを説明だけで片づけてしまうので「ああ、そうだったの」で終わってしまう。 映画というのは描写があって「ああ、そういうことだったのか」と頷かせることに感動があると思う。 本作は個人(原作者?)が勝手に想像しただけのもの。一本くらいなら許せるけど、こんな作品が氾濫したら、また邦画は氷河期に突入すると思う。 パンクレコードの製作に、「人生に無駄はない」というメッセージだけは伝わってきた。 タイトルのセンス、セリフのやりとりも面白かったけど無駄なシーンも多すぎ。 数年後には記憶から抹消されていると思う。 [DVD(邦画)] 4点(2009-12-07 18:21:18) |
927. リリィ、はちみつ色の秘密
《ネタバレ》 1時間45分、全ての登場人物に壮絶なドラマが描かれているのは素晴らしいが、それだけに散漫なものにしか感じられないのが残念。 一番重要なのは、リリィと父親の関係ではないだろうか? 父親は一見暴力的だが、妙なところで娘想いのセリフを口に出すから、本当に愛しているのかイマイチわからない。 父親は娘を愛していたのか、それとも、去って行った妻の代わりを娘におしつけていたのだろうか? 黒人公民権、白人娘と黒人女たちの共同生活という環境だけで、観賞中、私にはたとえ幸福なシーンがあっても絶望的な予感しか浮かばずにいた。 養蜂場での仕事が、映画にどんな影響をもたらしているのか私にはピンとこなかったことも挙げられる。 この映画って、5夜連続テレビドラマにでもしないと、上手く描くことができないと思う。 タイトル(邦題)のセンスは最低だと思う。 [DVD(吹替)] 6点(2009-12-07 02:57:24)(良:1票) |
928. マイケル・ジャクソン/THIS IS IT
とても楽しみにしていたので、敢えて、このサイトは覗かずに観賞しました。 亡くなるのを知らないのに、よくここまで映像を残しておいたなぁと思いました。 過去のライブのリハーサルも全て残しているのではないでしょうか 新宿の映画館はデジタルだったので最高の音響で観賞することができ、2時間はあっという間に終わってしまいました。 フルコーラスがほとんどないのが、ちょっと残念です。 正直今度はいつ来日するのだろうと思うくらい、終始「死」のカラーを感じさせませんでした。 某テレビ局で放送された娘さんのメッセージがなかったのも理由の一つだと思います。 製作は完璧です。 しかし、今後発売されるDVDは、きっと特典として「劇場未公開映像」をおまけとして高額な商品を発売することでしょう。初回限定版が出ればどうしても欲しい作品です。 [映画館(字幕)] 8点(2009-11-26 10:26:04) |
929. 極楽特急
このサイトで高評価だったので期待して観たのですが、正直「残念」という一言しかありません。 セリフのやりとりも、ストレートすぎて引き込まれることがありませせん。 ジャンルとしては、コメディタッチのサスペンスといったところでしょうか。 しかし、この手のテクニックで勝負の映画は、後にそれ以上の映画が作られていくので、若い人には陳腐なものしか感じられないと思います。 老人がノスタルジーに浸る映画でしかないと思います。 ルビッチ監督の映画はサイレントにつきます。 [ビデオ(字幕)] 3点(2009-11-24 06:46:10) |
930. 燃えよドラゴン
《ネタバレ》 深夜放送を録画しておいたものを発見して久しぶりに観ました。 今観ても面白いですが、当時観た人たちは、それ以上に感動したでしょうね。 仮にブルース・リーが生きていたとしても、本作を超える作品は出来ただろうかと思ってしまいます。何しろ当時は本作の全てが新しかったのですから。 今のカンフー映画の全てが本作の存在なしに作られることはなかったのですから。 因みに、CMカットで編集してみたらピッタリ70分でしたが、不思議なことに全く違和感がありません。カットされた残りの30分はどこへ行ったのか。もう一度オリジナルを観賞したいと思いました。 [地上波(吹替)] 8点(2009-11-05 16:45:09) |
931. 生きるべきか死ぬべきか
「結婚哲学」に感激し、ルビッチ監督を追いかけてみたのですが、眠い目擦って観たせいか、面白さが全く伝わってきませんでした。 登場人物が皆同じ顔に見えてしまい、本物なのか、ナチスを演じているのか全く理解できません。 きっと、これギャグなんだろうなと思うシーンも笑っていいのか判断できず……。 主人公は女性だと思いますが、構成がメチャクチャなのでストーリーについていけませんでした。 私は喜劇ファンですが決して必見ではないと思います。「あらすじ」にそんなこと書かないで下さい。 [ビデオ(字幕)] 3点(2009-11-04 05:33:08) |
932. 処女の泉
《ネタバレ》 どうしても現代社会に通ずるものと重ね合わせてしまう。 数年前に闇サイトで知り合った見知らぬ三人が夜道を帰宅していたOLを殺した事件を思い出してしまった。 しかし、製作された当時に実際に名古屋で起こった殺人事件を想像できる人たちがいただろうか? 私個人は復讐のために犯人を殺してしまった償いを教会を建てることで懺悔することなんて到底できない。 レイプされ殺された少女が倒れた場所から泉が湧くなんてバカバカしすぎるも程がある。嘘。嘘。嘘の作り話し。本作は紛れもない宗教啓発映画である。 私にとって、このラストは怒りすら覚える。 レイプシーンをリアリティに表現したら、あんなものでは済まない。 しかし、その残虐なシーンを抑えることで、本作は観る者に強烈な印象を与えるのも事実。 犯罪を犯した三人の羊飼いに少年を混ぜたのもミソ。ここに少年を入れたことで私も含め観客の反応は大いに変わってくる。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-11-04 03:18:21) |
933. 桃色(ピンク)の店
《ネタバレ》 本作のリメイクの企画を作ったのは、パソコン普及とピッタリあった時で、ある意味運命かもしれませんね。 ただ、パソコンだと、出会い系サイトという、少し後ろめたいイメージと違い、文通やアマチュア無線で友達を得た時代は純粋さがあったと思います。 観客は途中から待ち合わせを約束した文通相手が誰なのか分かった男性と同じ立場になり、最後の最後までわからない女性にもどかしさを感じたりもします。 ですが、時間も100分とコンパクトに収められ、台詞のやりとり、サブキャラも全て個性があって、A級のロマンティックストーリーであると断言できます。 「C」として挙げれば、この邦題タイトルからは観賞意欲が全く湧きません。 いっその事「ユー・ガッタ・メール(オリジナルバージョン)」にしちゃえば? [DVD(字幕)] 7点(2009-11-04 01:07:21) |
934. きれいなおかあさん
《ネタバレ》 タイトルから想像出来る、ありふれてるけどいい話です。 生活苦の母と聴力障害者の息子。悪く言えば、それだけの話です。 日本を含むアジアでは、障害者、若しくは余命何カ月のお涙頂戴的映画が氾濫していますが、本作は、大好きなコン・リーが出ている理由だけで個人的に7点つけちゃいます。 おかあさんがきれいじゃなかったら点数はもっと低いです。 コン・リー、この時36歳でちょっと太め。その6年後「ハンニバル・ライジング」で本作より綺麗で若くなっているから驚きです。 今の姿を是非見てみたいです。 エンドロール含めて90分で終わります。得るものはあります。 [DVD(吹替)] 7点(2009-11-03 19:23:33) |
935. 天国は待ってくれる(1943)
《ネタバレ》 冒頭「素晴らしき哉人生」のような死後の世界から始まるシーンで私には受け付けないものを感じました。 主人公が人生を回想していく展開は散漫すぎて、プレイボーイだっただけの自分を地獄へ落としてくれなんて考え方は、現代の価値観では考えられないレベル。 時代が変わるごとに年老いていく人物に対して、背景はニューヨークのワンシーンだけでほとんど変わらないから「人生」を感じません。 「ルビッチ」というネームバリューだけで私は絶対に評価を高くしません。 若い方は歴史的資料として受け止めた方がいいですが、映像テクニックに注目するところもありません。会話のやりとりも「昼メロ」レベルです。 [DVD(字幕)] 4点(2009-11-03 19:21:06) |
936. 接吻 (2006)
《ネタバレ》 以前、小学生8人が犠牲になった死刑囚と獄中結婚した女性の心境がずっと頭から離れなかった。その女性は恐らくクリスチャンかスピリチュアルなものに洗脳された人間だとしか思えなかった。 それに加えて本作のテーマは、秋葉原殺人犯に対する世間からの同情の声も断片にあると思う。 ヒロインはテレビに映った犯人を自分と重ね合わせ、白馬の王子を発見した。 ところが、白馬の王子は自分の考えた通りには動いてくれない。 自分に相談せず弁護士と控訴を決めたことを「裏切り」と判断したヒロインは、愛しの王子に制裁を下す。 仕切りのない部屋のハイライトは突然現実味に欠けてしまったようにもみえるが、台詞、構成、役者も完璧である。 小池栄子はバラエティーなんか辞めて女優業に専念すべき。両刀は絶対駄目。 なぜ弁護士の鞄の中身をチェックしなかったか?なんて考えてはいけない。 本当に完璧な映画なんて存在しないのだから。 でも、弁護士に渡したプレゼントの中身が何だったのか、ほとんどの観客が、ヒロインが鞄から出した時点で分かったと思う。 本作の女性に類似した映画で、ヴィスコンティの「夏の嵐」がある。女性を裏切ると本当に怖い。 [DVD(邦画)] 8点(2009-11-02 06:25:25) |
937. 時をかける少女(2006)
大林監督のバージョンは観たことないのですが、観賞前から偏見が入り、きっとロリコン映画に違いないと思って観たら、それを見事に裏切ってくれました。 少女の人物設定に力を入れたようで、ホントの現代風で親近感が湧きます。 逆に男友達二人は古臭く見えました。なんか「ビーバップ」を感じます。 タイムトラベル映画は何をやっても面白いです。似たような映画で「サマータイムマシンブルース」なんてのもありました。 因みに、シナリオコンクールの応募作品は圧倒的にタイムトラベルものが多いとの事です。 全ての登場人物が主人公のためだけに生きているみたいで納得いかないところもありましたが、不明瞭な点は、きっと「観客の想像におまかせ」ということでしょう。 90分で終わるので楽しく観賞できました。 [DVD(邦画)] 8点(2009-11-02 02:42:40) |
938. 結婚哲学
《ネタバレ》 サイレント映画でこれほど観客に訴えてくるシナリオを、私はほとんどお目にかかったことがない。 登場人物がおどけて見せたり、パントマイムで人を笑わせるのは簡単なのかもしれない。 本作はコメディタッチも含まれているが、本筋は「愛」の表現であり、小道具や人物のさりげない行動から誰が観賞しても理解できるベルにある。 サイレントという現代の若者には抵抗があるかもしれないが、同じような顔でも髭を生やしたり、髪の色、髭を蓄えたりと、子供が観てもわかるように仕上げている。 映画製作の勉強をしている人は必見! [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2009-10-27 10:17:03) |
939. 紅いコーリャン
映像美は「黄色い大地」にかなり影響されているように思います。 でも、脚本、構成は足元にも及ばず、もうメチャクチャ。 オシッコ入った酒が銘酒になるなんて……毒入り餃子が出回る理由が何となくわかる気がします。中国産のお酒はもう飲めません。 でも、この監督が後にコン・リーと共にハリウッドまで進出するなんて、当時じゃ誰も予測できなかったでしょう。 チャン・イーモウ作品を追いかけている人にとっては最後に観る作品です。 因みにレンタルする時、絶対にジャケットを見ないで下さい。これは反則です。ジャケットがネタバレになっています。 [DVD(字幕)] 5点(2009-10-27 01:14:22) |
940. 娘道成寺 蛇炎の恋
《ネタバレ》 歌舞伎演目「娘道成寺」に命を掛けた男に恋をしてしまった女性の普遍的な恋物語です。 それ故、牧瀬さんが中村福助さんより踊りのシーンが少なかったのは仕方がないこと。 村上の死を知り、蓮の花の上で、村上に抱かれる遥香のシーンで、個人的には「詩織はホッタラカシかよ」とつっこみを入れたくなりましたが、「私と詩織は一緒」という冒頭の台詞で方付けてしまうところは、どうしても納得がいかない。 …ですが、ラストの牧瀬さんの満面の笑顔は、それだけで何を物語っているのか分かる最高のショットです。 一応、歌舞伎を知らない人でも理解できるように作っています。 でも、特典映像の大雨の道成寺を舞台に踊る中村福助さんは映画以上の迫力を感じました。 [DVD(邦画)] 6点(2009-10-26 19:04:27) |