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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2381
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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81.  華岡青洲の妻 《ネタバレ》 
傍目には良好な関係を築いていたように見えた於継と加恵が、映画が始まって30分近くなってようやく青洲が登場した途端に息が詰まるようなバトルを始めるところがまた強烈。雷蔵・若尾文子・高峰秀子の壮絶な演技合戦は、もうこれは必見としか言いようがありません。高峰秀子がこんなに怖い女を演じてたなんて今まで知りませんでした、ほんと迂闊でした。華岡青洲という人は努力の天才でエゴイスト、そしてマッドサイエンティストだったんだなと言うことが良く判ります。 新藤兼人の脚本に冷徹な増村保造の演出なんだから、そりゃあ凡庸な映画になるわけがありません。麻酔が効き始めて悶え苦しむさまや二度の出産シーンなど、こういう題材でもきちんと若尾文子のエロティシズムを見せてくれるところは増村保造ならではです。そしてマンダラゲの畑の中に若尾がすうっと姿を消してゆくラストカットがまた素晴らしいんです。 昭和の女優の底力を堪能させてくれる一本です。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2014-10-24 22:29:22)
82.  ブラッド・シンプル ザ・スリラー 《ネタバレ》 
今まで色んな映画作家のデビュー作を観てきたけど、ここまで完成度の高いデビュー映画は後にも先にも本作だけです。もちろん再編集版『ザ・スリラー』で鑑賞したことは承知してますけど、DVD特典で観られたオリジナルとの相違点をチェックしてみても、あたりまえだけど基本的に同じ映画だと判ります。レイがマーティを埋めた畑から車で立ち去るロングショットなんか、デジタルリマスターの力であのほとんど黒に近いブルーの色調が見惚れるほど鮮やかになってますよ。このブルーを強調した映像や音楽の雰囲気そして大胆なカット割りなんかを観てると、そう、北野武の映画と空気がすごく似ているんです。例えると、凄く良く出来た脚本の北野映画という感じです。彼はこの映画を絶対に観て影響を受けてますよ。 冒頭でインチキ解説者を登場させて「この映画はフォーエヴァー・ヤングです」なんて言わせるところなんか、コーエン兄弟のすっとぼけたユーモアがわたしには大受けでした。
[DVD(字幕)] 9点(2014-08-29 23:35:08)
83.  ウルフ・オブ・ウォールストリート 《ネタバレ》 
奥さんから「お願いだから我が子と観れる映画を撮って」と苦言を呈されて製作した『ヒューゴの不思議な発明』の次がこれだから、スコセッシはひとかけらも改心してないなと安心しました(笑)。70歳を超えてこんな脂ぎったコテコテの映画を撮れる映画作家なんて、世界中捜してもやはりスコセッシしかいないんとちゃいますか。これはコンビを組んでるディカプリオの影響が大きいかもしれません。彼も全てのセリフに“Fuck”が付いてるんじゃないかと思う様なキャラを嬉々として演じてますからねえ。 さて、同時期に同じ業界に身を置いたことのある立場から言わせていただくと、株屋の世界はウォール街も兜町も本質は一緒なんだと感じます。もちろんドラッグなんて眼にしませんでしたが、場中に立って電話する営業マンの姿はまるっきり自分の経験と一緒です。金融の世界は本質的に体育会系と言うかブラックな体質がどうしてもつきまとう場所で、スコセッシには得意としてきたマフィアの世界から無理なく置き換えることが出来たんじゃないでしょうか。どっちの業界も感情移入がとうてい出来ない様な人間のクズの集まりだと言ってる様な気がします。 ラストのディカプリオの講演を観て、これはレッドフォードの『クイズショウ』のエンドタイトルへのオマージュだと感じました。そういやスコセッシ自身も『クイズショウ』に演技者として出演してましたし、映画監督のロブ・ライナーやスパイク・ジョーンズを俳優として使っているところも似てますしね。あとベルフォートの部下のアジア系の人、本人じゃないかと思うほど日本の白竜に似ていて驚きました(笑)。
[DVD(字幕)] 9点(2014-08-10 20:14:41)(笑:1票) (良:1票)
84.  真夜中のカーボーイ 《ネタバレ》 
アメリカン・ニューシネマを語るにあたって、この映画を外すわけにはいかないでしょう。主人公が最後に死ぬのがニューシネマの半ばお約束みたいなもんですが、この映画のダスティン・ホフマン=ラッツォぐらい惨めでやるせない死にざまは空前絶後なんじゃないですか。 「俺、ションベン漏らしちゃったよぉ(泣)」、もうこのシーンはジョン・ボイトになり変ってラッツォを抱きしめてやりたいくらいです。でもこの結末には確かに深い虚しさが漂っているけど、私にはそこはかとない希望の光を感じられるのです。ジョン・ボイトも自分のアイデンティティだったカウボーイ衣装をゴミ箱にほうり込み、陽光あふれるフロリダで地道に働き新しい人生を始める事が暗示されている様に思います。他のニューシネマ作品とは違ってアナーキーさは薄くて、弱者への優しい視点が感じ取れるのも好きです。二ルソンの名曲“Everybody's Talkin”の使い方も良いですしね。
[映画館(字幕)] 9点(2014-06-11 21:04:51)
85.  マルサの女 《ネタバレ》 
実はわたくし、若いころに“脱税容疑者の関係取引先”としてマルサの取り調べを受けたことが有りました。これはもう経験しなければ到底理解できない恐怖の体験でした。そして数年後、あの恐怖のマルサをヒーローに据えた映画が製作されそれが社会現象にまでなったのにはほんとびっくりでした。あの津川雅彦たちマルサの面々は役作りも深いし実にリアルでして、自分の体験のときも津川雅彦みたいなタイプの査察官がいたことをマジマジと思いだしたほどです。紹介される脱税の手口も良く調べられていて、ピカレスク・ムーヴィーとしても一級品だと思います。対する山崎勉ですが、実はあまりに魅力的なキャラなので悪役としての凄味が薄れてしまったのは皮肉です。あのラスト・シーンなんか、もう鳥肌が立つほど素晴らしかったです。そう、この映画にはピカレスクものなのに真の悪役と言えるキャラがいないんですよね。せこい売上除外に励む伊東四朗(ばれて一瞬で顔が朱に染まるシーン、これは凄い演技です)やおかず屋の老夫婦なんか庶民かそれに毛が生えた程度ですからね。 伊丹十三は“世の中の裏の仕組みをお見せします”映画というジャンルを開拓したのですが、やはり本作がそのジャンルの最高傑作でしょうね。本田俊之のシャープなサウンド・トラックも、80年代の邦画で随一の傑作だと思います。宮本信子の女マルサはもう伝説の当たり役と言えるのですが、後の伊丹映画に出演するとどの役でも板倉亮子に見えてしまうのは困ったもんです(笑)。
[映画館(邦画)] 9点(2014-05-03 14:03:36)
86.  ゴッドファーザー PART Ⅱ 《ネタバレ》 
公開当時は、「あんな完璧な映画に続編なんかあり得ない、冒涜だ」と頑なに観ることを拒んでいた自分が懐かしいです。PART.1で原作のほとんどの部分をなぞってしまったので、現代のマイケルの物語はコッポラで回想シーンは原作者のマリオ・プーゾと分担して脚本が書かれたそうですが、考えてみればやっぱり『ゴッドファーザー』はマイケルという人間のその後を描かなければならなかったということで、続編製作は正しかったんでしょうね。コッポラが担当した現代編はラッキー・ルチアーノやバグジー・シーゲルのエピソードをアレンジした実録ものの味わいで、古風なヴィトーが活躍する回顧編とはまるで違ったタッチなのですが、それが見事に融合してギリシャ悲劇の様な重厚なサーガにまで高められています。良くデ・ニーロの神がかり的演技が取り上げられるのでけど、私はアル・パチーノの凄味を通り越した鬼気迫る演技こそ称賛されてしかるべきだと思います。間違いなく彼の生涯最高のパフォーマンスで、こんな人が後年にはだみ声で演説する様な演技しか出来なくなるとは残念なことです。ケイに自分の子を堕胎されたと知った時のマイケル、自分はこんなに絶望する人間をスクリーンで観たことはありませんでした。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-03-01 21:16:13)(良:1票)
87.  ソーシャル・ネットワーク 《ネタバレ》 
若き天才起業家のサクセス・ストーリーだと思いきや、初っ端から最後までドロドロした人間関係のもつれと裁判沙汰に終始する映画だったとは意外でした。マーク・ザッカ―バーグ、オタクの中でもとても友達にはなり得ないタイプで、ここまで嫌らしく描かれてご本人も良くOKを出したものですね。この映画の製作に当たってはザッカ―バーグや訴訟相手の弁護士たちが入念にチェックしたそうですから、まあ納得はしてるんでしょうね。フェイスブックというコンテンツは革新的な技術というよりもWEBをパーソナルなコミュニケーションに結び付けた着眼点の勝利だったと私は思うので、友達が2~3人しかいなさそうなザッカ―バーグの様な人間が生みだしたと言うのは神さまの悪戯でしょうか。東部のアイヴィー・リーグの学生たちで盛り上がったフェイスブックが、魑魅魍魎の跋扈するシリコン・ヴァレーで変質してゆく過程はなかなか興味深かったです。ずっと猛烈な早口で通すジェシー・アイゼンバーグの鬼気迫る演技も良かったです。ラストに流れるビートルズの"Baby, You're A Rich Man"がけっこうきつい皮肉になっていました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-02-24 22:59:49)(良:1票)
88.  十二人の怒れる男(1957) 《ネタバレ》 
白人男性ばっかりで女性はいない陪審員の構成を見ていると時代を感じます。こんな制度なら黒人の被告にとってはもう悪夢ですよね。それが現在では女性や有色人種をどれだけ陪審員に入れるかで検察と弁護側が争い、それが裁判の行方に影響を与えているそうですから皮肉なことです。 さてこの映画を観るたびに感じることなんですが、原作者や監督シドニー・ルメットは陪審員制度について肯定しているんでしょうか? 日本でも裁判員制度が行われていますが、この映画を観たら陪審制みたいなかたちで裁判されるのは勘弁して欲しいと誰もが思うんじゃないでしょうか(日本では多数決で評決が決まることがあるというから恐ろしい)。早く切り上げて遊びに行きたくてしょうがない陪審員がいたりして、さすがシドニー・ルメット、各人の人間性を浮き彫りにする描写は見事です。この物語は誰が犯人であるかを決めて裁きを下すのではなく、被告が何をした(もしくはしなかった)のかだけが重要だと言いたいんじゃないでしょうか。陪審員8番の言葉を借りると「これが民主主義の良いところだ」というわけなんですね、欠点もありますが。 暑苦しい一室で普通の人たちが繰り広げる白熱の議論をリアルタイムで描いた、密室劇ムービーの最高峰です。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-02-10 21:21:15)
89.  ジャンゴ 繋がれざる者 《ネタバレ》 
ジャンゴとDr.シュルツがキャンディ・ランドに着いてストーリーの本筋が始まるまで1時間超、でも全然尺の長さが気にならないというのはたいしたものです。実際のところ自分が今までに観たことのある上映時間3時間前後の映画で、これほど一瞬たりとも退屈させられることがなかったのは初めてです。緊張感のない会話で笑いを獲ろうとするタランティーノの得意技もビッグ・ダディ一味が覆面のことでウダウダするシーンだけで、全篇堂々たる撮りっぷりでもはや巨匠の貫禄すら感じられます。 クリストフ・ヴァルツのために書かれた脚本の様なものなので、もうこのおっさんのダンディズムと言うかカッコよさには痺れちゃいまいした。タランティーノは前作でナチスというかドイツ人をさんざんコケにして痛ぶったので、Dr.シュルツでヴァルツにはその罪滅ぼしをしてあげたのかな。何と言っても異様な迫力があったのはサミュエル・L・ジャクソンで、あの目つきでガンつけられたら間違いなくちびっちゃいます。“Mother Fucker !”なんて卑語が19世紀に有ったとは思えないけど、やっぱ“Mother Fucker !”と叫ばないサミュエルなんてクリープのないコーヒーみたい(古くてすみません)であり得ません。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-19 21:59:41)
90.  その場所に女ありて 《ネタバレ》 
最近『悪の階段』を観るまでは恥ずかしながら鈴木英夫監督のことを全然知らなかったのですが、昭和30年代にこんなにハードボイルドでしかも女性が主人公のサラリーマン映画を撮っていたなんて、本作を観てさらにぶっ飛びました。昼は会議室や応接室、夜は酒席でビジネスが進む、営業系サラリーマンの仕事ぶりが実にリアルに描かれています。 そして司葉子のカッコいいことと言ったら、さすが昭和を代表する美人女優のひとりです。現在はすっかりふっくらしたおばあちゃん(失礼)ですが、この映画で見せるショートヘアのいかにも出来そうな営業ウーマン姿にはもうほれぼれとしてしまいます。それまでお嬢さん女優だった彼女にこういうシャープなキャラを演じさせるとは、『悪の階段』で団玲子に悪女を演らせた鈴木英夫ならではの手腕にもう脱帽です。 ライバル社の広告デザインをこっそり手掛けて報酬をもらう主任デザイナー(完全な背任です)、社内で金貸しをやって月三分の利子を取る女子社員(超高金利!)、こういったまだ生きてゆくのに精いっぱいだった時代のホワイトカラーの生態には考えさせられるものがあります。最近『ALWAYS 三丁目の夕日』なんかで昭和30年代が過剰に美化される風潮がありますが、高度経済成長前期までの日本はまだまだ喰うのに精いっぱいだったのです。司葉子が査問に懸けられてクビになりそうになるシーンでも、「私が生活し生きてゆくにはこの会社が必要なんです」と毅然とした態度で訴えます。現代で重要視される「やりがい」とか「自分らしさ」なんて御託を並べる余裕は誰にもなかったんです。 社長シリーズや無責任男シリーズを量産していた陰で、こんなリアルでカッコいいサラリーマン映画が東宝で撮られていたとはほんと驚きでした。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-12-02 23:44:44)
91.  雨に唄えば
これぞまさしく“ザッツ・エンターテイメント”、やっぱ本作が史上最高のミュージカル映画と言うことになるんでしょうかね(個人的には『キャバレー』がトップなんですが)。“Singin’in the Rain”という曲は、『ザッツ・エンターテイメント』のオープニングを観ればMGMのミュージカルで何度も使われてきたことが判ります。でももちろんジーン・ケリーの躍動感あふれるダンスに勝るものはないし、本作以降のミュージカル映画でも彼のパフォーマンスは越え難い壁となって挑戦を跳ね返している気がします。コメディとしても秀逸ですし、「ミュージカル映画は苦手だ」とおっしゃるあなたも一度は観ておくべきですよ。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-12-01 21:44:22)
92.  第七の封印 《ネタバレ》 
世評高いこの映画を恥ずかしながらこの歳になって初めて観ましたが、何と言っても衝撃を受けたのが冒頭の死神の登場シーンでした。黒ずくめの装束に能面のように白い異相、そして空には雲が渦巻き背景は海で波が打ち寄せている。これほど完璧に硬質なショットは滅多に拝めるものじゃありません、もう身震いしちゃいました。観るまではこの映画は死神と騎士がチェスをしながら神学論争をするお話しだと勝手に想像してましたが、予想外にも2・3手指すたびにチェスは中断してしまい、その間は騎士と従者が旅芸人たちと居城を目指すロード・ムービーのような展開で有ります。この旅芸人夫婦たちのエピソードがけっこう面白くて、中でも座長はウディ・アレンに演じさせたらピッタリだろうなという可笑しさでした。そう言えばアレンは、『愛と死』で本作のラストの“死の舞踏”をきっちりパロって再現していますが、オリジナルの方だってシュールではあるがなんか笑いを誘うところもあり、改めてアレンのベルイマン解釈の深さに感心しました。 難解で暗い映画だという評判もありますが、私には思った以上にユーモアと生への希望が感じられました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-10-22 21:18:54)(良:1票)
93.  悪の階段 《ネタバレ》 
大金を強奪した5人の男女が仲間割れというありふれたプロットなのに、不思議なほど引き込まれる魅力を持った作品です。キャスティングだけでこの映画の評価の8割は決まったとも言えます。山崎勉は『天国と地獄』の竹内銀次郎からさらに人間的感情を削ぎ落してもっと冷酷にした様なはまりキャラです。西村晃がこういう役をするのは別に珍しくはないけど、きっちり期待以上の演技を見せてくれます。一味の中に加藤大介を入れるというのがまた絶妙で、彼としては珍しい犯罪者役ですがやっぱこの人は上手いわ。そしてあの東宝きってのお嬢様女優である団令子が崩れた悪女だというのが驚きです。こういう役は、彼女のフィルモグラフィ中でも唯一ではないでしょうか。 不動産屋の中にほぼ画面が限定される後半は、二階と地下に昇り降りする階段を意識した画面造りには拘りを感じさせます。でもあの水筒のシークエンスはちょっと不自然で、だいいちあんな水筒、お店で売ってないでしょう(苦笑)。それまで山崎勉があまりに怜悧だったから、このシーンにももっと裏があるんじゃないかと勘ぐってしまって拍子抜けしちゃいました。でもこの映画の持つ独特の雰囲気はフレンチ・ノワールを東宝映画調に昇華させることに成功しており、まさに隠れた傑作と呼んで過言は無いでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-10-20 20:05:30)
94.  大脱走 《ネタバレ》 
120年を数える映画の歴史でもっとも有名なバイク・アクションを見せてくれるスティーブ・マックイーン、そして彼の短かった映画人生でも最高のヒーローはこのヒルツであることは間違いないでしょう。今まで映画の中で色んなヒーローを見てきたけど、本作のマックイーンを超えるカッコいい男にはいまだ出会えず、です。 荒唐無稽な大冒険スペクタルの様に見えますけど、これが実話をベースにしているというところがまた凄い(もっともマックイーンのキャラはフィクションですが)。収容されている捕虜たちの国籍もバラエティに富んでいて、米・英・豪・ポーランドと言うわけですが、各国の軍服の微妙な違いにもきちんと考証が行き届いているところは高得点です。それはドイツ側にも及んでいて、所長ルーガー大佐が首に下げている勲章がプール・ル・メリットであることに注目。これは帝政時代の最高勲章で、部屋に飾られた写真からも彼が第一次大戦で活躍した戦闘機パイロットであったことが判ります。ナチス政権では廃止されたこの勲章をいまだに佩用している設定からも、この人物がナチス信奉者ではないことをさりげなく暗示していますね(ロンメル将軍も生涯この勲章を佩用していました)。こういう細部に対するこだわりの積み重ねが、戦争や歴史もの映画の出来を左右するものなのです。 「脱走は捕虜となった兵士の義務である」と言う欧米の文化(?)はなかなか日本人には理解しがたいところがあります。私なら戦争が終わるまでのんびり収容所生活を楽しみますがね(笑)。
[映画館(字幕)] 9点(2013-09-11 22:02:28)(笑:1票)
95.  蜜の味 《ネタバレ》 
この映画のプロットは、反抗的な少女が背伸びをした恋をして思わぬ妊娠をしてしまうというところが、ベルイマンの『不良少女モニカ』を思い出させてくれます。でもリアリズムと暗い雰囲気の映画だった『モニカ』とは違い、家庭環境に恵まれない少女の転落物語という見方を吹き飛ばすような詩情と明るさに満ちてるんですよね。 英国映画史上に名を残すファニー・フェイス、R・トゥシンハムの瑞々しい演技がまたいいんです。彼女の表情を追うだけでもホント見飽きないです。またあのお母さんの恋する熟女ぶりも、やってることはけっこう滅茶苦茶だけどなんか憎めないんです。観てる方がびっくりするほどあっさり娘を見捨てて男に走るくせに、最後はお腹が大きくなったジョーのもとに帰ってくるところは、やっぱ親子なんですよ。 『長距離ランナーの孤独』とともに、最近とうとう本作がDVD化されたというのは喜ばしい限りです(遅いんだよ!時代はもうブルー・レイだぜ!)。これを機会に、T・リチャードソンの再評価の機運が高まってくれるといいんだが…
[ビデオ(字幕)] 9点(2013-08-28 23:15:00)
96.  恋人たちの曲/悲愴 《ネタバレ》 
この映画、「チャイコフスキーをホモ扱いした」と彼のファンからは忌み嫌われているそうです。日本のクラシック・ファンにはどうも音楽家を聖人君子視したがる傾向があるみたいですが、別にゲイでもいいじゃないですかね(その真偽は私には判りませんが)。 さて、音楽家の伝記になると異常にテンションが高くなるK・ラッセルですが、このチャイコフスキーと妻の愛と死を強烈なインパクトで見せてくれるこの作品、間違いなくケンちゃんの最高傑作だと断言しちゃいます。冒頭でチャイコフスキーがピアノ協奏曲第一番を初上演するシーンがありますがこれが凄い迫力で、同時にチャイコフスキーの幻想を見せる巧みな演出もあって唸らされました。R・チェンバレン、まるで本当に彼がピアノを弾いているみたいで熱演です。 彼の妻がG・ジャクソンで、これがもうほとんど色情狂と言っても構わないんじゃないでしょうか。列車の中でチャイコフスキーを誘惑して悶えまくるシーンなんか、ちっとも魅力的じゃないヌードに思わず引いてしまいます。ケンちゃんの醜女好きは有名ですが、そう言えばこの映画には普通の感覚で言うところの美女はひとりも出ていませんでした。 ラストは完全に狂ったG・ジャクソンが精神病院に幽閉されてしまうのですが、そこにいたるまでの彼女の狂おしい熱演は必見です。でもそこまで思う存分芝居をさせて、それでいて完全に映画をコントロールしているケンちゃんの手腕も大したものです。 「ホモでマザコンの男が色情狂の女と結婚するお話し」とケンちゃんは映画会社にこの映画のプロットを説明したそうですが、いやいやどうして、巨匠音楽家たちの生涯を鋭く抉ってきたケンちゃんでなきゃ撮れないチャイコフスキー像でした。
[ビデオ(字幕)] 9点(2013-08-26 21:08:38)
97.  ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ 《ネタバレ》 
この映画を初めて観たときは、「俺さまこそが、英国のタランティーノじゃ!」というG・リッチーの雄叫びを聞かされたような気がしました。たしかに音楽の使い方のセンスなんかは、その当時のタランティーノを超えているんじゃないかな(もっともタランティーノの方はその後も進化を続けてG・リッチーを遥か彼方に置いてけぼりにしてしまいましたが)。 出てくる連中がどいつもこいつもろくでもないおバカさんなので、物語が動き出す前でも退屈させられません。派手な銃撃戦がある割には死ぬのは悪党だけなのでまあ後味すっきりと言うところでしょうか。 まあこの映画は、ビッグ・クリスことV・ジョーンズが最後はおいしいところを持っていってしまいましたが、あの“車のドア、バタバタ殺法”がちゃんと“スナッチ”でのV・ジョーンズ登場シーンに繋がっているところがにくいです。
[DVD(字幕)] 9点(2013-07-16 21:16:54)
98.  ダイ・ハード 《ネタバレ》 
こけおどしのアクション映画が量産されていた80年代に、突如出現した“頭のいい脚本”で初めて撮られたコップアクション・ジャンルの金字塔です。 派手な画も多いのでカネかかっている様に見えますが、基本はこの映画良い意味でB級テイストなんです。B・ウィリスのランニングシャツが、シーンが替わった途端に下地がまったく見えないこげ茶色にまで汚れちゃうなんて、ふつう超大作映画ではあり得ないけど、そんなこともちろん誰も気にしない。今でこそ中年アクションスターの座を守り続けているB・ウィリスですが、そもそもこの作品に抜擢されるまではコメディ・ジャンルの人だったこともお忘れなく。つまりキャスティングには全然おカネをかけていないわけですが、その“安い”俳優たちがウソみたいにその演じるキャラにはまりまくっているのはもう奇跡としか言いようがありません。 中でもA・リックマンのH・グル―バーは、その悪役ぶりがあまりにリアルだったので、その後の映画に登場するテロリストのキャラに多大な影響を与えています。私もこの人はてっきりドイツ人だと永いこと誤解してました。実は素のリアクションだったというH・グル―バーの最期の表情も、“悪役の死にざまベスト10”というランキングがあれば上位に入るのは間違いないでしょう。
[DVD(字幕)] 9点(2013-06-01 00:34:07)(良:1票)
99.  デュエリスト/決闘者 《ネタバレ》 
R・スコットの監督デビュー作にして、映画の神が降臨した傑作。観るたびにため息をつかされる荘厳なラスト・シーン、そしてデュベールがアデルに求婚するシーンで二人の馬までがまるでキスするかの様に頬をすりよせるカット、これらが偶然に撮れたなんてもう神のなせる業だったとしか言いようがないです。剣を使う闘いにはR・スコットのこだわりがよく出ています。特に馬小屋の中でサーベルを使って決闘するシーン、騎兵のサーベルがあんなに重たいものとは知りませんでした。まるでマチェーテか青龍刀を振り回している様な感じでド迫力です。 決闘が罪であるというのは近代市民社会を律する秩序の原点の一つであり、ナポレオン帝政のフランス社会がこの原則を受け入れてゆくのが二人の軍人の立身出世と没落を通して不思議な静謐感を持って描かれています。フェローはもともと決闘マニアだったので、デュベールと決闘を始めたころは大した理由づけは無かったのだが、最後の方では彼との決闘が皇帝ナポレオンとともに没落してゆく自身のレーゾン・デートルとなってしまう。そして王党派として新時代にも席が与えられるデュベールとは対照的に、骨の髄までボナパルティストだったフェローは生ける屍となってしまうのが痛々しい。三角帽をかぶって呆然と立ちすくむフェローの後姿は、過去の人となった廃帝ナポレオンそのものです。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-05-14 21:04:48)
100.  灰とダイヤモンド 《ネタバレ》 
第二次世界大戦での連合国戦勝日である1945年5月8日の出来事。NYやロンドンでは大群衆が繰り出してのお祭り騒ぎだったのに、このポーランドでの異様なまでの冷静さと静けさはいったい何なんだろう。まだ正式に共産主義政権が成立したわけではないが、人々が自分たちの国の運命になんの希望も持てなくなっているのが痛々しい。 刹那的に生きてきたマチェクが、恋に落ちて未来を考えようとした途端に悲惨な死を迎えることになるのはなんという皮肉なことか。廃墟の教会でマチェクとクリスチナが教会で話すシーン、カメラの前景にアンチ・クライストの象徴でもある逆さまになった十字架のキリスト像を映すことで、もうポーランドには神はいないんだというA・ワイダの叫びが聞こえる様な気がします。 厳しい検閲制度があった当時ですから、いろいろと意味深なメタファーが散りばめられているけど、そこには詩的なセンスを感じさせられるシーンが多々あります。夜が明けて朝日が室内に差し込んできますが、そのあまりに白っぽい光線は屋外の風景をまったく見えなくしています。ラスト・ダンスを終えてその光の中に入ってゆくカップルたちの虚ろな表情、これぞ戦後のポーランドがたどった歴史のカリカチュアです。 Z・チブルスキー、若死にしちゃったけれど素晴らしい俳優でまさにポーランドのJ・ディーンです。それにしても、J・ディーンをはじめJ・P・ベルモンドや石原裕次郎などこの当時各国にチブルスキーと同じ様なタイプのスターがいたというのは面白いですね。ベルモンド以外はみんな早死にしちゃいましたけど。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-05-04 22:23:37)
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535614.95%
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761325.75%
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