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tottokoさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2000
性別 女性
自己紹介 周りに映画好きな人があまりいない環境で、先日はメリル・ストリープって誰?と聞かれてしまったりなのでこのサイトはとても楽しいです。
映画の中身を深く読み解いている方のレビューには感嘆しています。ワタシのは単なる感想です。稚拙な文にはどうかご容赦を。  

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81.  ニュールンベルグ裁判 《ネタバレ》 
一寸の隙も無く全編を貫く緊張感、法廷劇として完璧と思います。私は「戦勝国が敗戦国を裁く」ことに異議を覚えるのですが、そんな個人的な歴史観を差し引いても、論戦の火花散る展開は見ごたえがありました。 なにしろ、判事、検察、弁護人それぞれの放つ論旨がみな言葉に重みがあって圧がすごいのです。おまけに被告とされる側までが元判事という、論戦の迷宮のような高度なやり取りが繰り広げられる。口角泡飛ばして絶叫調のマクシミリアン弁護士が、異様なまでに熱を帯びてます。元判事を裁くとは即ち、ドイツ国民全員を裁くのか。かつてヒトラーを称賛してみせたチャーチルに非は無いのか。証人への個人攻撃ともとれる激しさを増す弁護士を制するように、ついに口を開くランカスター演じる元判事の訥々とした告白はさらに深かった。この裁判そのものを否定していたヤニング元判事、彼は自らを有罪と認めます。ユダヤ人に対するナチスの行為を知らなかったとするのは無理がある。我々には目も耳も無いのか、と。法に則り、職務を遂行した徳の高い元判事の苦しげな目、バート・ランカスターも見事なら、アメリカ人判事のS・トレイシーもまた激渋。ナチ高官の妻、マレーネ・ディートリッヒは妖しく危うい存在感を放つし、J・ガーランドの必死の抗弁は痛々しい。名優らの重厚な演技にすっかり圧倒されて、くらくらしました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2018-06-04 00:13:46)(良:1票)
82.  普通の人々 《ネタバレ》 
主人公の家族が皆、傷ついて血を流していて観ていて心が痛かった。懐深いレッドフォード監督をもってしても、瓦解してゆく家族の再生は叶わなかったのだね・・。 人はそれぞれ、持って生まれた「愛」の総量が多い人と少ない人がいる。この母親は少ない人で、だから長男の死で激しく傷ついた自分自身を手当てするのになけなしの愛を使い果たしてしまって、次男や夫にまで振り分ける分が残っていないのだ。セラピストが正しくも指摘したように、彼女は彼女なりに次男のことを愛してはいたと思う。だけど、そもそも備わっている愛情量が少量なので、リストカットするほどに追いつめられている息子の心を汲んでやることまではとうていできない人だったのだ。おそらく何故非難されるのか自分では理解できないだろう。 この映画の、とりわけ優れているのは各人物の描写力である。母親の冷たさはフレンチトーストの件や、息子の部屋の灯りをスルーする無関心ぶり、上面の息子との会話等で痛いほどこちらに響く。T・ハットン演じる次男は「良い子」をやってきたことが言葉遣いや父親への気遣いからわかる。セラピストの前で心が均衡を崩すシーンは、身体をゆする仕草や八つ当たりな態度がとても苦しそうだ。苦悩しっぱなしの父親は長いこと妻に「違うだろ」と言えない。だけどセラピーを受け、自分の心を見つめなおして改めて気付くのだ。息子の葬儀だというのに、この女はシャツや靴のことを気にする人格なのだ、と。 人間に対する洞察力、その細やかなこと。驚くべき観察力。これが監督一作目というレッドフォードの明晰なことには畏れ入った。胸が痛いほどの名作。
[DVD(字幕)] 9点(2018-05-09 17:34:02)(良:1票)
83.  別離(2011)
イラン映画は、そう、以前から人間の心理描写が巧かった。今作は、介護、教育、離婚といった洋の東西を問わない問題を抱える銀行マン一家が舞台。観ていると遠い中東の国のこととは思えない近しさを感じる。 誰の立場に最も肩入れできるかで、鑑賞者の感想はそれぞれ違ってくるだろう。登場人物一人一人の考えは、その立場に立ってみると各々ごもっともで、さらに少しずつ嘘も混じるので正悪の判断はにわかにはつけ難い。見せる脚本である。ただ、大人に振り回される中一の長女だけは一貫して可哀想だった。とてもしっかりしているので尚更。こんな年若い子に、親の選択を迫るんだねえ。厳しいなあ。決して楽しい話ではないけれど、イランの人たちの感性や日常がこんなにも我々と近いのだ、と改めて思った。日本のみんなに観てもらいたい。ついでに米国大統領にも。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2017-11-25 00:54:08)
84.  ジャージー・ボーイズ 《ネタバレ》 
アメリカ本国では評価が今ひとつだったらしい本作。トミー賞を取った舞台に比べると、盛り上がる場面に使われた楽曲がBGM扱いになっている等、手触りの違いが不興だったのだとか。 私は舞台版は知らないけれど、イーストウッド監督は舞台劇を映画の文法に上手く書き直していると思った。情感溢れる描写の数々で、人間ドラマのひだが役者の表情や台詞にきめ細かく反映されていますもん。 物語は一世を風靡したバンドの、立ち上げから絶頂期そして離散へ至るまで、とまあよくある話ではある。にも関わらずジャージー・ボーイズらのこの生き生きした造形はどうだろう。ニュージャージーでの悪ガキだった時代から、ギターとマイクを手に音楽業界を席巻し、トラブルを重ねて年を経る彼らの人生とすっかり同化してしまった。 リアルで活きた台詞と、舞台でも同役を務めた俳優らの演技を超えたリアリティはメンバー本人のよう。J.L.ヤングのファルセット・ボイスには度肝を抜かれる。脇を固めるウォーケンやプロデューサー役のM.ドイルらも、とても良い味を出している。 役者陣が魅力的な上、さらに卑怯なことに(?)音楽の力の凄いこと。正直フォー・シーズンズをきちんと聴いたことは無かったのだけど、現代風にアレンジし直した楽曲群がどれも素敵。わあー良いじゃん、フォー・シーズンズ。さすがにタイトルや歌詞は時代ズレの感があるけれど、シンプルで心地よいメロディは気付くと口ずさんでいたりする。 娘に子守唄に歌った“My Eyes Adored You”が葬儀の場面で流れ、ここらですすり上げてたワタシ、引き続き“Can't Take My Eyes Off You”のイントロが流れた瞬間、目の幅の涙が滝のように流れ出たのでした。 傷つけあってバラけてしまったジャージー・ボーイズ。年月を経て彼らを再びロックの殿堂で結集させて了した、イーストウッドの感性も好きだ。笑って泣いて胸が熱くなる、イケメンはいないけどこの映画がとても好きです。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2017-10-25 17:53:06)
85.  キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
すごい実話があったもんだ。詐欺の手口が斬新(と言っていいのか)で、こんなにうまくいくのかなあと呆気に取られつつも、へええ、という感心の方が大きく、感心は快感に変わり、つまりとても楽しかったのでした。 ディカプリオはティーンの役も違和感無くこなす驚異の芸達者ぶり。すっかりシリアスドラマの仕事が多くなったT・ハンクスはそういえば”BIG”の役者さんでした。コメディセンスは健在で、イライラとレオを追っかけるFBIのオジサンは情に厚くて嘘は言わない(終盤に一つだけ)ナイスなキャラクターで,トムにぴったりハマっておりました。 逃げる方と追う方の間に、いつの間にやら友情ぽい繋がりが生じる様も繊細に描かれるあたりは脚本、心憎いばかり。ドラマの筋に第一のヤマ、第二のヤマと盛り上がりも用意してアクセントを多数つけた展開は見飽きないですし、画もキレイ。 矯正ブリッジをつけたA・アダムスのおばかさんな笑顔や、なつかしのM・シーンを見つけたりとか、印象的な画もちょくちょく挟まります。観て楽しい、この一言。コメディの見本のような良作と思います。
[DVD(字幕)] 9点(2017-07-25 00:41:31)
86.  用心棒
いやあ素敵です。面白いし、もう。キャラ造形の深いこと、巧みなこと。主人公三船の存在の圧巻なことはもとより、世話焼き(+説教)役の東郷のじいちゃんは安定の脇支えだし、悪役の面々も惚れ惚れするほどの面構えだ。そう、間抜けな役どころ(あの眉毛!反則だ)を一人置いて肩の力を抜かしてくれるのも良い。 宿場町のあっちとこっちでいがみ合う二件の賭場を、余裕と風格で行ったり来たりの三船は大きい鯨のよう。三船によってくるくる展開する運びは程よくビビるし、仲代の登場のタイミングも絶妙。 流れるようなカメラワーク、じいさんの飯屋の中から外をうかがういくつもの場面や、殺陣での継ぎ目の無いなめらかさは観てて心地よい。 なんといっても鳥肌もののクライマックス。強すぎるほどのつむじ風を背負って登場の三船侍、なんというかっちょ良さでありましょうか。外国人がお侍に憧れるがごとく、ワタシの頬は紅潮し心臓は高鳴り、三船にもこの映画にも恋したものでありました。
[DVD(邦画)] 9点(2017-06-04 23:59:20)(良:1票)
87.  この世界の片隅に(2016) 《ネタバレ》 
淡い色彩、素朴な人物画、正確に緻密に描き込まれた戦前の広島の街並。大変美しいアニメである。柔らかく耳に響く広島弁も心地良かった。 最も美しいのは、すずや周囲の普通の人たち。朝には出勤し、かまどで炊飯し、洗濯をして畑の世話をする。生活のための仕事を当然のようにせっせとこなす普通の営みが、戦時下においてはとても輝かしく尊く感じられる。 細やかにユーモアを交えて描かれる人間関係。スパイを疑われるすず、このご時世であるから緊迫の北條家かと思いきや「憲兵さんは何もわかってないのよ」と皆でネタにして大笑い。つられて笑った。生活感のリアリティは気温まで伝えてくる。冬には手がかじかみ、夏はうだるような暑さ。「今日も暑いわねえ」20年の8月、あの日も暑かった。 この美しい人たちを破壊した戦争という「暴力」を憎まない人間がいるとは思えない。エンドロールが流れる中、席を立てずにただ鎮魂を祈っていたのは私一人では決してないだろう。声高に叫ばないが、強く強く心に反戦を訴える力のある映画だ。  私は声優という職業はプロの領域だと思っているので、役者であってもあまり歓迎しないのだが、本作のヒロインの声を担ったのんはすずに魂を吹き込む見事な演技をした。ぴったりだった。
[映画館(邦画)] 9点(2017-02-09 00:51:55)(良:1票)
88.  パイレーツ・ロック 《ネタバレ》 
ユルくてお馬鹿で、でも人生にはロック、という信念が一本強固に通ってて大好きな映画です。出てる英国俳優がいかにもイギリス映画っぽい多彩な「顔」博覧会で唸る。ホフマンは米国人だけど。見てるだけで面白い。 舞台が船内に限られているにも関わらず、話の一つ一つがとても楽しい。ほぼセックス事ばかりなのはご愛嬌。狂言回しも兼ねるトム・スターリッジ君、あからさまな童貞顔で役にぴったりだ。極めて不道徳な檻に放り込まれた彼、かなり気の毒な目にあったりしながらも成長(?)してゆくのだった。多分。 戻ってきた往年のキングVSホフマン演じる伯爵の対立が一触即発の事態になったりするのかな、と思いきやこれが思いもかけぬ流れでもってお互い手打ちで締める展開へ。一本気ながら妥協点を知る、みたいな適度なしょーも無さ。このエピソードが一番好き。 敵役の政府側は完全にコメディ。強敵なようなそうでもないような。感じはモーレツに悪いが。 遭難ラストの緊迫感はかなりのものです。電波に乗って流れてくるラジオからのSOS、なすすべなく呆然となるリスナー。海の底へ沈むレコード。泣きたいのをこらえて見守りまして、ついに伯爵が浮いてきたときの喜びったら。ああよかったなあ。だってロックは悲愴なものじゃない。生きるための音楽だからね。制作は正しい判断をしました。 全編通して耳に心地よい音楽はもちろんパーフェクト。でも時代はちょっと違うのね。レビュワーの皆さん、勉強になりました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2016-11-19 17:28:40)
89.  バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3
キャラクターは愛おしく、映像は美しく、そしてなによりタイムパラドックスという複雑な理論をベースにしながら、こんなに鮮やかな着地を決めてみせた脚本、まさに20世紀最強の娯楽映画でありましょう。 映画を観るのが何故楽しいのか。大好きな登場人物らと、先の読めない物語を旅するときめき。公開された当時にスクリーンに釘付けになっていた私の、その子供が同じくこの映画を楽しんでいる。当時はただただ楽しかった。今は感動すら覚えます。 先日、車会社のCMで”現在”のドクとマーティが話をしていました。お二方とも、ファンを安心させてくれるような元気な姿で嬉しかった。彼らに幸多かれ、と願わずにいられない。手の届かないスターだけれど。それほどの名作であります。
[映画館(字幕)] 9点(2016-02-24 00:22:05)
90.  暗殺の森 《ネタバレ》 
”人として当然持ち合わせるべき情操”の無い映画だ。それはつまり主人公のファシストの男の性質そのままである。この男のたどる半生をこちらは見守るわけだが、13才の時の決定的な事件により彼は情感を喪失したらしい。元娼婦の女に恋情を抱く部分はちょっと人間ぽいと思ったけれど、それすら驚愕の展開を迎えるわけで。なぜ彼女を見殺したのだろう。この男の冷たさは分かっていたつもりだったが、この暗黒場面には心底 冷えた。 感情は無いながら、映像は凄まじく雄弁で、ひとつひとつの場面の端麗さ、幽玄なこと。「青を意識した」とは監督の言葉。でも私個人的には強烈なのは「赤」だった。新婚旅行での列車の個室を照らす夕陽。森で絶命する女の、金髪・白いコートにそこだけ鮮血で真っ赤な顔。 私は芸術という分野には疎いけれど、この作品の織り成す映像美は”キレイな”他作品とは格が違うような気がする。青い森、白い精神病院、迷宮のような貴族の男の居城。 映像アート系の映画はえてして監督の独りよがりも多く、話がちんぷんかんぷんというのにも出会うけど今作品は男の半生と時代との整合性もきちんとあって物語として理解が難しくない。冷たさと色彩に圧倒される巨匠の傑作。
[ビデオ(字幕)] 9点(2016-01-05 00:29:03)(良:1票)
91.  スター・ウォーズ/フォースの覚醒 《ネタバレ》 
ワタシのようなロートルのファンを涙せしめるような懐かしい面子を勢ぞろいさせつつ、しかしこれは新世代の立派なスター・ウォーズの新作と思います。 見た事ある、と思ったらミレニアム・ファルコンだ、わああハン・ソロだチューバッカだっ、と血中糖度が上がるような興奮。畳み掛けるようにC-3POやレイア姫と時の流れを感じさせるような再会だ。相変わらず空気が読めないC-3PO、しわを隠さない立派なハン・ソロとレイアのご両人。お二方はどうやら子育てに失敗したらしく、一枚かんだルークは自棄になって(?)失踪中、R2-D2は失意の中でスリープモード、と山あり谷ありのその後の人生を皆さん送ってきたのだねえ。しんみりしてしまうけれども、こうはっきりと時の移りを突きつけられるとS・Wの世界も次の世代へ譲り渡そう、と古いファンも潔い気分になるものです。良くできた脚本です。 そして次世代のジェダイを担う若きヒロイン レイが若鹿のような清清しさと賢さ、好奇心を備えていて、デイジー・リドリーの抜擢はこの作品の成功に欠かせない。決定打です。さらに新ドロイドBB-8も大変愛くるしくR2-D2の不在を補うに充分すぎるほど。 華麗な空中戦、メカ群の洗練されたフォルム、奇妙な造型の生物等、スターウォーズならではの楽しさはそのままに、連れてゆかれる世界が砂の星から緑濃い惑星、雪山から大海原とさまざまな体験ができる。ほんとに楽しく面白い130分、素晴らしいです。 エピソード4が封切られた当時の興奮を知らない世代へ贈る、(それも胸を張って)これこそが娯楽大作。よくぞ作ってくれました。
[映画館(字幕)] 9点(2015-12-25 23:48:45)(良:2票)
92.  ウォルト・ディズニーの約束 《ネタバレ》 
ああ そうなのか。P・L・トラヴァースという作家の人となりを知って、原作メリー・ポピンズの世界がやっと理解できたような気がする。本当に長年のつかえが取れた思い。 メリーは甘くない。「スプーン一杯のお砂糖」なんかでごまかさず、子供に現実を直視させ乗り越えさせる。(E・ワトソンの台詞)この厳しさは父性の強い英国の子育ての伝統なのかと思っていた。しかしトラヴァース女史は意外やオーストラリア育ちなのだった。そしてそこで幼い頃に敬愛する父の苦しむ姿を経験していた。 メリーポピンズの背景である女史の幼少期がしばしば挿入され、おとぎ話の骨格がよりわかりやすく肉付けされてゆく展開は見ごたえがある。そして、それ以上に私の胸を衝いたのはウォルトの、愛の少なかった子供時代の告白だった。「もう疲れた。辛く悲しい風に過去を思うのは。」 ディズニー映画の、幸福や希望への強迫観念めいた迷いの無さがどこから来ているのか判った。 スプーン一杯のお砂糖が人生に必要なこともある。 方向性に違いはあっても、子供たちの良き成長を願う二人が歩み寄った時、もう泣けて仕方なかった。 そして巨大なディズニーワールドを支える、たくさんのトップレベルの才能にも感銘を受けた。作曲、脚本、作画etc。皆全力を尽くして作品に貢献している。バンクス夫人の造型については作者本人よりも深く考察していたほどだ。 偏屈女史をなだめすかしながら、ストレス過重の仕事を完遂したスタッフにも、敢闘賞を差し上げたい。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-07-22 00:05:41)(良:1票)
93.  ビッグ
誰も腹の立たないキュートなファンタジー。画が明るいし、人物みんなのキャラも立っている。 何をおいてもこの作品のキュート度を上げているのはトム・ハンクスがもー、すんごい仕事をしているからだ。童顔が手伝っているとはいえ、この演技は凄い。13才より幼く見えなくも無いけど、いい年をした大人が子供の演技をするというのはとても難しいと思うんだ。外見が大人のままで子供じみた真似をするだけでは単なる奇行と見られかねない。ところがトムは顔つきまでが小学生なんですな。治安の悪い安モーテルで心細さのあまり半べそをかく、あるいは女性に「私のことどう思ってるの」とオトナの質問をされて困惑ののち照れてごまかす。その表情はティーンエイジャーになりたてのそれそのもので、この時トムは32才だとは信じ難いくらいの繊細な思春期顔になってて感嘆した。 安定した仕事をずっと続けている俳優さんだけど、役者としての並ならぬ力量を印象づけたのはやっぱりこの映画だと思う。
[映画館(字幕)] 9点(2015-05-29 00:11:57)(良:1票)
94.  キング・コング(1933) 《ネタバレ》 
わあー、凄いなこれ、とただそう思いました。制作に携わったスタッフへの、リスペクトに近い思いです。 映像技術の拙さはもちろん隠しようもない。80年も前の作品だもの。だけどそんなことはちっぽけに感じる。画質の粗さはむしろコングやセットの作り物感を払拭し、21世紀の今となっては発掘された昔の謎フィルムでも観ているような楽しさがあります。いつの間にか観てるこちらも秘境の島でコングvs大蛇の闘いをどきどきと覗き見ている気分になっていました。 すごいものを作ろう、びっくりさせよう、という制作魂の熱き思いが全編を貫いており、その熱量の高さに圧倒されるばかりの100分です。 後のリメイク版での、美女と心通わせるコングという設定を耳にしていたので、この初版のコングの凶暴ぶりには正直驚きました。ためらいなく人間を踏み潰し、投げ飛ばし、ケダモノそのもの。ワタシはもちろん33年版のモンスターのリアル性を支持します。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-05-05 00:50:46)(良:2票)
95.  奇跡の人(1962) 《ネタバレ》 
演じる、ということ その真髄に圧倒されるばかりの100分。役者魂がごうごうと焔立っているかのよう。ここにいるのはアン・バンクラフトとパティ・デュークではなくアニー・サリバンとヘレン・ケラーそのもの。演者同士がその魂をぶつけ合う食堂のシーンは息をするのも忘れる。ああこれはリアル「ガラスの仮面」だ。10代の頃、紙面を息を詰めて見守ったあの緊張が画面を観ながら甦った。オーディションの逸話まで残っているP・デュークは天才の仕事をしている。“見えている”のに目の前の足台に突っ込んでいって頭から転倒するなど、並みの役者にできることではないだろうなあ。 ヘレンの物語については断片的に知っていたけど、ケラー家が南部の名家ということや(父親が典型的な権威主義者に描かれているのも興味深い)、サリバン先生が幼少時に劣悪な施設で育ったということ等は初めて知った。まだ社会福祉の考えが育つ前のアメリカ、ヘレンが生きたのはそういう時代だったのですね。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2015-04-07 23:38:54)(良:1票)
96.  いつか晴れた日に 《ネタバレ》 
ジェーン・オースティンって基本 少女マンガだと思うんだけど、ベタなラブストーリーをこうも格調高く美しく撮り上げたアン・リーの手腕は大したものです。彼の作品では感情の発露がいつでも節度をわきまえていて慎ましい。そこんとこがこの原作の時代性にはまったのでしょうか。 三姉妹の配役がベストです。マーガレットは愛らしく、ウィンスレットは若く瑞々しく、とても綺麗。そして演技が巧み過ぎてたまに鼻につくE・トンプソンですが、今作の“耐え忍ぶ長女”役は学級委員長的な彼女のキャラにぴったりでした。 翻って男性陣は時代劇の衣装がなかなかキビシイ。着こなせてないのはH・グラントだけではないような。でも各人、演技力でそこはカバーしてます。クサい台詞も浮いてません。 オースティンの話を聞くたび、社会保障も相続権も無い時代の女たちの生きる厳しさを思います。玉の輿に乗るしか生活が保障されないのだから、そりゃ必死にもなりますわな。そして恋バナのお節介ばかり焼く中年のオバサンたちも健在。息せき切って仕入れたゴシップの披露に及ぶ、その逞しさ、正直さには苦笑い。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2014-12-03 00:18:01)
97.  太陽がいっぱい 《ネタバレ》 
海の青、痛いほどのA・ドロンの美貌、名曲の誉れ高き音楽、そしてこれ以上ないラストシーン、何もかもが鮮烈で、半世紀経った今の映画には薄れてしまったロマンというべき耽美さに溢れています。 野犬のようなドロンの、暗い危険な瞳。マルジュを追い込みにかかる場面、彼の瞳にどんどん寄ってゆくカメラ。マルジュならずとも陥落するってもんです。 眼底にちかちかと残って離れない陽光と、その眩しさの中で行われる殺人という後ろ暗き行為。アンバランスで危うくてドロンの存在そのもののようで、今でも各場面が鮮やかに思い出せる名作です。
[ビデオ(字幕)] 9点(2014-09-24 00:21:13)
98.  最強のふたり 《ネタバレ》 
ドリスが素敵だ。天性の爛漫さ、心根の良さ。試用期間をクリアできた訳、それはフィリップの機嫌がしごく良好に保たれたから。フィリップがドリスを気に入った訳、それはドリスが彼を憐れまないから。そして介護疲れを知らない強靭な若い肉体だったからでもありましょう。ホントに頼りがいのある見事な筋肉だ。ユーモアのセンスも合う二人、障害者ネタのジョークは観ていて冷や冷やするものもあるんだけど、二人して大きな口を開けて笑ってくれるのでほっとする。そうだ、そもそもフィリップはこういう“遠慮”を嫌っていたんだった。 教養が無くとも、ドリスの率直な感性は結構ツボを突いていて、オペラの席ではフィリップまでつられ笑いする。幸せな笑いの共有。互いの欲するものを持ち合わせて、与え合うことのできる二人はまさに最強な組み合わせ。 卵や、文通相手や家族の問題などたくさん散りばめたエピソードを綺麗に回収して、鳥目線の空撮とともになだれ込むラストシーンは美しく、胸がぎゅっとなります。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-18 00:06:29)(良:3票)
99.  フラガール 《ネタバレ》 
ベタであっても良いものは良い、と思わされた。泣いた泣いた。女の子達が頑張って、苦労を乗り越えてプロダンサーになる、外枠だけ聞けば凡庸なスポ根みたいだけれど、丹念に描かれた背景の生活の厳しさ、貧しさが彼女らの立場を切実なものにする。日本は、貧しかった。家屋の狭さ、古さ。学校に行ける子、行けない子。紀美子は制服なのに、親友の早苗は家庭の事情で通学できる余裕が無い。昭和40年代の炭鉱街の女の子にとって、華やかさがどれほどの憧れであったか想像に難くない。夢を諦めざるを得なかった早苗が街を去るシーンは、嗚咽しすぎて気分が悪くなってしまった。 どの役者もしっかり見せてくれるけど、富司、松雪、蒼井の女三代が凄く良い。華やかな夢など見ることも望めず、仕事に誇りを持つしかなかった富司の世代、夢の世界に裏切られて、現実を知る松雪、そしてひたむきに新しい世界を目指す若い世代の蒼井。三者が絡み合い、互いの理解を得ながら大団円へと進む。いやあ、ベタだけど号泣した。いい話だ。
[DVD(邦画)] 9点(2013-11-22 00:35:49)(良:1票)
100.  ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生 《ネタバレ》 
恐怖をシンプルに、直球で投げ込んでくる傑作ホラー。序盤からイキナリ廃人(実はゾンビ、メイクがまだ稚拙なのでよく分からない)に襲われるという訳の分からないキョーフで掴みはOK、中盤の家屋内での諍いでは人間のエゴむき出しで気分を悪くさせ、怒涛の終盤ではショックに次ぐショック、その上身もふたも無い幕切れ。日常が突如理不尽に破壊され、一人目の彼女は精神崩壊気味でしたが、わかりますその気持ち。 居合わせた人物たちの造形を手短に紹介する手腕も見事。性格や生活背景がわかることによって、彼らはただのモブシーンの犠牲者ではなくなる。死に様の印象が強烈になる。ああ~怖いよ~。ゾンビ映画かと侮ってだらだら観始めたけど、クライマックスあたりでは膝抱えてはんぱ無い緊張感と闘うハメになりました。怖い怖いでも傑作。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-11-15 00:04:50)
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