1141. スパイナル・タップ
《ネタバレ》 大槻ケンヂ大絶賛のカルト・ムーヴィー。架空のロック・バンド『スパイナル・タップ』の全米公演を記録したこれまた架空のドキュメンタリーなのですが、このバンドのキャラがまた良く創り込まれていて実在のバンドとしか思えないリアルさ。実際クリストファー・ゲストらは演奏もできて、フレディー・マーキュリー追悼コンサートにスパイナル・タップとして出演したそうで、もはや『半架空』バンドと言えるのでは。ロック好きならすぐ判るネタが満載ですが、私のようにイマイチその方面に疎い者でも十分楽しめます。冷静に考えれば冗談だと判るネタでも、ドキュメンタリー風に描かれると違和感がないということに驚きました。また演奏される曲の歌詞が下ネタだらけで笑わせてくれます。ただ難点は字幕翻訳で、どう見てもおかしな訳ばかりで何とかしてほしいところです。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-11 15:34:32) |
1142. インテルビスタ
《ネタバレ》 国外の製作映画からは暴利をむさぼると悪評が高いチネチッタ(テリー・ギリアムの『バロン』事件は有名)が設立50周年記念で製作された映画。監督は生涯ほとんどチネチッタで自作を撮ったフェリーニですが、さすがフェリーニだけあって現実と過去と空想が織り交ざった作品になりました。『インテルビスタ』とはイタリア語で『インタビュー』という意味らしいのですが、日本から来たTVクルーの取材を受けて映画を製作する現代と、監督になる前の若き日のフェリーニが記者としてチネチッタで大女優を取材する過去が混然となって進行してゆきます。そして圧巻はアニタ・エグバーグとマストロヤンニが再会する彼女の自宅でのシークエンスで、エグバーグがすっかりフェリーニ好みの巨漢女になってしまったのには驚きました。でもこの二人がツー・ショットで画面に登場するともうそんなことはどうでもよくなり、思わず感涙してしまいました。エグバーグが感動のあまりキッチンで涙ぐむシーンがあるのですが、これは演技ではなく実感情なのではないかなと思います。フェリーニがいわば『ラス前』でこの映画を撮ったことには感慨深いものがあります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-01-10 11:26:40)(良:1票) |
1143. 歌え!ロレッタ 愛のために
《ネタバレ》 とにかく一度観てください、シシー・スペイセクの歌の上手いことにびっくりしますから。カントリーは日本では一番なじみがないジャンルですが、ロレッタ・リンは美空ひばり、カントリーは演歌だと思えば判りやすいかも。シシー・スペイセクは13歳のロレッタまで演じていますが、不思議と違和感がないんです。またトミー・リーがいい味出しているのですよ、髪の色が金髪っぽいので始めは彼とは気づきませんでしたが。お舅さんとの約束を簡単に破るところなぞキレまくるいつものトミー・リーかと思いきや、これが奥さんを深く愛してマネージャーに徹するいいキャラでした。 [DVD(字幕)] 7点(2010-01-09 20:49:57) |
1144. リオの男
《ネタバレ》 この映画、監督は狙っていたのでしょうが、はっきり言ってちょっと変です。連続した場面なのに夜がいきなり昼になったり(エド・ウッドか!)、千キロ距離があるリオとブラジリアをオンボロ車で一昼夜で走破したり、『そんなあほな!』と突っ込みたくなるシーンの連続ですが、そのいい加減さが妙にいい味出しているのも確かです。結構危険そうなシーンも軽々こなしている足が長いベルモンドを観ていると、そう、ルパン三世を思い出しますね。そして観たらご理解いただけますが、なんと本作は『レイダース』の元ネタだったのです。ラスト20分は『レイダース』で使われたネタのオンパレードです。ヒロインのフランソワーズ・ドルレアックがわがまま放題のまた変な娘で、笑わせてくれます。フレンチコメディ独特のあくの強い作風なので好き嫌いが別れそうですが、後のアニメやアクション映画に少なからぬ影響を与えた異色作として再評価されても良いのではと思います。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-12-27 13:09:01) |
1145. クラークス
《ネタバレ》 『間違いなく営業しています』、この張り紙には軽い脳震盪起こすぐらいのインパクトがありました。本来こういうグダグダした若い連中のお話は本能的に受け付けないのですが、本作に限っては不思議と引き込まれてしまいました。台詞も下ネタだらけの会話ばかりですが、アドリブではなさそうだし脚本書いたケヴィン・スミスの才能には脱帽です。 [DVD(字幕)] 7点(2009-12-20 01:37:12) |
1146. エド・ウッド
《ネタバレ》 エド・ウッドとヴェラ・ルゴシの交友を見ていると、ティム・バートンとヴィンセント・プライスの関係をどうしても思い起こさせられます。エドとティムには、リスペクトを持つ憧れの大先輩俳優がいたという共通点があったのですね。監督としての才能がなかったのに、ヴァンパレラを始めエドのもとにスタッフ・キャストが集まったというのは、彼にはきっと何か魅力があったのでしょうね。でも『プラン9・フロム・アウタースペース』や『グレンとグレンダ』は観たことがありますが、映画へのあふれる愛情があるのに大の大人がどうしてこんな映画を撮っちゃったのかは、正直頭をひねるところですが。 [DVD(字幕)] 7点(2009-12-20 01:14:10) |
1147. 赤い風車
《ネタバレ》 残念だったのは鑑賞したTV放映版が異様に劣化した映像だったことで、本作の名を高めている鮮やかなカラー映像が台無しになってしまいました。そういう事情ではありますが、この映画の『赤』を使った映像の素晴らしさは伝わってきます。画家志望でもあった監督ジョン・ヒューストンにはロートレックの無頼の生涯は映画化したかった題材だったに違いないでしょう。ホセ・ファラーの演技は素晴らしいのですが、自分のイメージからはちょっと上品すぎてロートレックの持つ猥雑感が薄いかなという印象です。足に障害があったロートレックの姿を膝を曲げた姿勢でトリックなしで演じてくれますが、後年『ムーラン・ルージュ!』でジョン・レグイザモが同じ手法を使ってロートレックを演じています(そう言えば、『カジノ・ロワイヤル』でピーター・セラーズもロートレックのコスプレを見せていますね)。面白いのがホセ・ファラーはロートレックと父親の二役を演じていて二人が同じシーンに登場もしますが、さすが元祖カメレオン役者と言われるだけあって全然違和感がないのが凄いです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-12-17 23:17:59) |
1148. タンク・ガール
《ネタバレ》 コミックが原作なだけあって、『キルビル vol.1』を先取りしたようなパンクなアニメが公開当時としては斬新だったと思います。内容は他愛ないのですが、懐かしのMTVを彷彿させるポップ感あふれるブリティッシュ系のロックが全編に流れてファンにはたまらんでしょう(なんとビョークが歌っている曲もあります)。自分としては初々しいナオミ・ワッツの眼鏡っ娘すがたにクラッと来ました。ほんと、かわいいですよ! [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-12-17 00:27:47) |
1149. ショーシャンクの空に
《ネタバレ》 刑務所で30年以上も生きるなんて想像もつきませんが、娑婆の世界とは完全に縁が切れてしまうのだなということは本作を見て実感できました。無実の罪だからアンディが逃げたくてしょうがないのは良く判りますが、刑務所から出たくないのに出所させられて死んでゆくブルックスのエピソードに胸が締め付けられました。自分はもともと脱獄テーマの映画とはあまり相性が良くないので、本作でもみなさんの様な感動とまではいきませんでした。だいたい、20年も同じ部屋に収容されるなんてあり得るのでしょか?まあそうじゃないとファンタジーが成り立ちませんよね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-12-12 22:08:08) |
1150. マンハッタン
《ネタバレ》 いくらなんでも17歳の少女といたすのは、ちょっと正視できませんね。アレン・アレルギーの人は観てはいけません。本作は全アレン映画中で最もアレンのモテ男演技が炸裂しているかも。でもそれを補って余りあるのがモノクロで撮られたNY風景の息をのむほどの素晴らしさです。そしてラストのトレーシーが放つ一言、アレンはきっとこれがやりたくてこの映画を撮ったのではと思わせるほどインパクトがありました。 [DVD(字幕)] 7点(2009-12-12 13:13:45) |
1151. ストリート・オブ・ファイヤー
《ネタバレ》 お話の展開はまるっきり西部劇なんですけど、不思議と引き込まれてしまう迫力があります。特に冒頭15分は映画史に残るカッコよさで、ダイアン・レインのパフォーマンスは今観ても鳥肌ものです。リック・モラニスがあの顔で気障な台詞を連発するのには笑っちゃいます。 [DVD(字幕)] 7点(2009-12-06 18:01:59) |
1152. ビクター/ビクトリア
《ネタバレ》 実は期待しないで観たのですが、結構面白かったですよ。細かいギャグが連発されますが、この監督にしては上品な展開で、粋なコメディとなっています。それにしてもジュリー・アンドリュースの芸達者なこと!そして、ロバート・プレストンがまた可笑しくて、完全にジェームス・ガーナーは喰われていました。ラストシーンは抱腹絶倒です。 [DVD(字幕)] 7点(2009-11-24 23:17:40) |
1153. 遠すぎた橋
《ネタバレ》 この作品は、戦史の知識がないと物語が良く判らないという欠点はありますが、ひとつの作戦をテーマとした戦争映画としては良作だと思います。兵器類の考証の正確さは、最高の部類に数えて良いでしょう(特に陸戦兵器は。航空機はちょっと不満ですが。)。戦争映画や時代物映画はやはり時代考証が大事ですね、『神は細部に宿る』という金言もありますし。各エピソードはC・ライアンの原作に登場する史実がほとんどですが、そのために却って連合軍の負け戦なのに映像から実感が得にくくなってしまいました。特筆すべきは戦闘シーンの映像表現で、手持ちカメラを使った落下傘降下シーンの臨場感や、ドイツ兵の視点で砲撃がだんだん近づいてくるところを描く緊迫感あふれるシーンなど、それまでの戦争映画になかった斬新なものです。そして連合軍(特に英軍)の作戦立案過程がいかに愚劣で、組織が官僚的だったかを赤裸々に描いたことも意義が大でしょう。英国では長らく『マーケット・ガーデン作戦』をメディアが取り上げることはタブーだったのですから。 [映画館(字幕)] 7点(2009-11-21 01:19:09) |
1154. サロメ(1987)
《ネタバレ》 ちょっとこれは一度観たらクセになります。劇中劇としてオスカー・ワイルドの『サロメ』が上演され、これがどれだけ原作戯曲に近いのか判りませんが、ヴィクトリア朝時代では上演禁止になるのも納得するなまめかしさ。中でもサロメ役のイモジェーン・ミライス・スコットという女優は、「こいつは一体何者だ?」と言いたくなるほど不思議なキャラです。クライマックスのサロメのダンスも、思わず『あっ』と声が出るような仕掛けがありびっくりしました。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-11-19 23:39:14) |
1155. プライベート・ライアン
《ネタバレ》 スピルバーグの軍事マニア魂が全開で、おそらく本作を超える戦場描写はしばらく出てこないのではないでしょうか。とにかくこの映画は「音」に対するこだわりが半端じゃなく、銃の発砲音はもちろん、兵士が被弾するときの音まで実際に肉塊へ銃弾を撃ち込んで採録していて、ここまでやるとはスピルバーグの「狂気」さえ感じます。ドラマ自体は兵士各人のキャラが丁寧に描かれているので、ちょっとあり得なさそうなストーリーですが説得力はあるかなと思います。何度観てもいらいらさせられるのはアパム伍長の戦闘時の行動で、「なんでそこで撃たないんだ!」と叫びたくなりますよ。最後はちゃっかり生き残ってるし。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-11-15 22:00:36) |
1156. リストマニア
《ネタバレ》 大作曲家フランツ・リストが主人公のスラプスティック・ロック・ミュージカルです。ザ・フーのロジャー・ダルトリーがリストを演じるのですが、そこは鬼才ケン・ラッセル、時代を先取りしていますが実に悪趣味な映画になっています。まずこの映画の凄いところは、時代考証無視の登場人物の衣装で、ピアノリサイタルのときのリストの衣装などギンギラギンのロック・スターみたいな代物で頭がくらくらさせられます。このリサイタル・シーンは、観客がみんなアルプスの少女ハイジみたいな衣装を着たギャルで、リストのピアノに熱狂するところなどロック・コンサートそのものです。史実でもリストのリサイタルは当時の若い女性たちには大人気で、会場では失神する娘もいたそうです。この映画ではリストの楽曲にロジャー・ダルトリーが歌詞をつけ、ロック調にアレンジされて使われています。リストはカサノヴァ顔負けのプレイボーイで、映画冒頭から伯爵夫人とやりまくり、終いにはロシアの人妻王女ともいい仲になるという節操のなさ。ほんと、観ていただければご理解いただけますが、このロシア王女とのシーンは、画面がモザイクだらけになってほとんどポルノ映画状態になります。確かに悪乗りし過ぎではありますが、この煩悩にまみれたリストは「アマデウス」のモーツァルトを先取りしていることは間違いありません。娘のコジマは夫を捨てリヒャルト・ワグナーと結婚し、夫婦でナチスの様な秘密結社を作り、ユダヤ人を迫害するは人造人間の製造に乗りだすわと大暴れ状態。法王(配役はリンゴ・スター!)より命を受け、リストはワグナーと死闘をくり広げる…。はっきり言って、ラストのくだらなさはにはぶっ飛びますよ。恐るべし、ケン・ラセッル。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-11-04 00:12:03) |
1157. ムーラン・ルージュ(2001)
《ネタバレ》 ムーラン・ルージュのドンチャン騒ぎがとても楽しそう。まるでジュリアナみたいでした。しかし、前半のハイテンションが後半まで持たなかった印象があります。いくら単純なお話と言っても、あそこまでベタなラストにしなくても良かったのではと思います。使われている楽曲は自分たちの世代ではストライクな選曲ですが、そう言えば映像が昔良く観たMTⅤのビデオクリップをスケール・アップしたように感じてきます。MTⅤを観て育った世代が創る21世紀のミュージカルは、ハリウッド黄金時代に製作されたミュージカルとは全く別物であると言えますね。本作のように舞台ミュージカルの映画化ではないオリジナルの場合は、特に斬新な手法が使われる傾向があって私は好きです。この映画で驚かされたのは、名優ジム・ブロードベントの芸達者ぶりです。もっとも、メイクがあまりに濃すぎて始めは誰だか判りませんでしたが。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-29 01:08:42) |
1158. リプリーズ・ゲーム
《ネタバレ》 この映画はパトリシア・ハイスミスの「アメリカの友人」が原作、ということはヴィム・ヴェンダースの撮った「アメリカの友人」と同じ話というわけです(ヴェンダース作品は未見ですが、この映画とは全然雰囲気が違うそうです)。トム・リプリーとくれば「太陽がいっぱい」のアラン・ドロンがやったキャラだとは知っていましたが、殺人が発覚して捕まったはずのリプリーになんで後日談があるのだと不思議だったのですが、原作ではリプリーは完全犯罪を達成してシリーズ化されたと知り納得。アラン・ドロンやマット・ディモンが演じた役を本作ではなんとジョン・マルコビッチが4代目トム・リプリーを演じていますが、意外にマルコビッチがいい味出していますね。舞台はイタリアやドイツで、ロシア人やウクライナ人マフィアが登場していかにもヨーロッパ風味のサスペンスに仕上がっています。リプリーをパーティの席上で侮辱した一人の小市民が、リプリーの策略にはまって思わぬ事件に巻き込まれて人生を狂わされてしまうのですが、マルコビッチがマルコビッチらしさを爆発させて悪魔のような怪しい魅力を見せてくれます。この映画は全体的にリプリーの背景説明が不足しているので、普通に観るとリプリーの行動が理解できないのですが、マルコビッチの迫力で妙に納得させられてしまいます。リプリーも巻き込まれるジョナサンもそれぞれ妻がいるのですが、だんだん二人の間にホモセクシャル的な雰囲気が感じられるようになるのは原作の精神に忠実なのでしょう。そうじゃないとあのラストは理解できないでしょう。リリアーナ・カヴァーニってかなりの高齢だと思いますが、エネルギーはまだまだ衰えていないみたいです。第二のリーフェンシュタールとなるのかな。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-24 23:45:15) |
1159. トレインスポッティング
救いようのない登場人物たちのどうしようもないストーリーなのですが、不思議と引き込まれてしまいます。レントン以下のダメ人間たちのキャラが丁寧に描かれているからでしょう。それにしても、「明るい絶望」って何なのだろうか。続編を観てみたい。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-23 23:27:38) |
1160. スターシップ・トゥルーパーズ
この映画、予算がないからと製作時に報道されていましたが、P・ヴァーホーヴェンはスプラッターがやりたくてわざと機動歩兵にパワードスーツを着せなかったのだと私は確信しています。リコの出身地をアルゼンチンと設定したり、この映画の中にはアメリカ合衆国が全然出てきませんが、ヴァーホーヴェンは米国の歴史と政策をシニカルにこきおろしていると感じました。全編に漂う安っぽい正義感は観る者の神経を逆なでしますが、この嫌悪感こそ伝えたかったものでしょう。彼はこの後オランダに帰るわけですが、本作を観ればいかにハリウッドと米国に嫌気がさしていたか判る気がします。ただあまりにスプラッター描写が凄いので、賛否が分かれてしまいますが。でもこれが彼の本当にやりたかったことなので、きっと本人は本望ですよ。 [DVD(字幕)] 7点(2009-10-18 22:22:23)(良:1票) |