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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2381
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1361.  東京オリンピック 《ネタバレ》 
馬鹿な大臣がいちゃもんつけたおかげで「記録か芸術か」と論争が起こったというのは有名なお話ですが、今の眼で見ればしごくまともでオーソドックスな印象さえ感じます。もっと前に『民族の祭典』をリーフェンシュタールが撮ってるのに、当時なぜそんな騒ぎになったのか不思議です。『民族の祭典』と比べれば平凡なもんですよ。それでも市川崑らしさを感じさせられるスタイリッシュなカットも随所に観られ、とくにあの女子80メートルハードルを正面から捉えたショットは、現在では当たり前の技法となっていますが当時は観客をびっくりさせたことでしょう。というわけで、映像に残された当時のオリンピック運営を観察したり日本人の反応を愉しめるのが本作の意義でしょう。■現在のオリンピックと比べると、思った以上に素朴な運営だったんだなとしみじみ思います。マラソンのとき、国立競技場の入口の柱に毛布が巻きつけてあるんです。なぜというと、選手が出入りするときにぶつかって怪我しない様にしてあるみたいです。開会式の晴天は有名ですが、イメージと違ってその後はけっこう雨が降った日が多かったみたいですね。雨天の走り幅跳びなんて、選手の足元は踏ん張ったら穴があくほどドロドロでした。そして見逃せないポイントは、「走る哲人」アベベ選手の力走が堪能できること。ストイックな風貌で、私はこれほど美しく走るマラソン・ランナーは観たことがありません。■実は手違いが怪我の功名になったというあの感動の閉会式の選手入場、今じゃこの「東京方式」がすっかりオリンピック閉会式のスタンダードとなっています。良く見ると選手たちがコスプレやパフォーマンスをしてて、ここだけもっとじっくり見せて欲しいぐらいです。昭和の日本人の精神に多大な影響を与えたもののひとつが、この閉会式が与えてくれた感動だったと思います。■64年のオリンピック招致が決まった時の首相は岸信介、56年後に再び東京オリンピックの招致が決まった時の首相が彼の孫というのは、不思議な因縁ですね(もっとも岸首相は招致には乗り気じゃなかったそうですが)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2013-11-09 01:28:23)
1362.  女獣 《ネタバレ》 
それにしても、いくら新東宝だからと言っても、このタイトルもう少し何とかならなかったんですかね。雰囲気だけでストーリーとは無関係で意味不明、まあそんなことで新東宝プログラムピクチャーに難癖付けてもしょうがないのは判ってますけど。 いきなり現金を輸送する銀行の車が襲撃されて銀行員たちは皆殺し、おまけに共犯の女まで始末されてしまう、そんな非現実的ながらもハードな幕開けです。この事件の捜査のために警視庁は婦人警官をズべ公に変装させて女子少年院に潜入させるのですが、こんな危険なこと婦警にやらせますかね? 作戦は上手くいって新宿の組織にまで潜り込めますが、どうもこの組織は麻薬取引の元締めでもあるらしいと判ってきます。ここで同じく潜入していた麻薬Gメンの菅原文太が登場です。実はこの映画が思ったより観られたのは、文太が一応ヒーローであるがなぜかほとんどストーリーに絡んでなかったからだと思います。とにかく新東宝時代の文太は、主演するとただでさえひどい出来の映画にとどめを差す必殺ぶりを如何なく発揮してましたからね。 この映画、麻薬中毒者の悲惨な禁断症状や新宿の風俗などが予想外の丁寧さで描かれています。ジャズ喫茶のバンド演奏なんか、音楽担当があの『11PM』の有名なテーマ音楽で知られる三保敬太郎なので、なかなかの迫力です。女優陣も左京路子や星輝美といった個性派を使っているところがグッドです。またところどころで遊園地のアトラクションを効果的に使ったショットがあったりして、撮り方が普通の新東宝映画とはちょっと違うなと思わせるところもあります。 でもやっぱり所詮は新東宝の映画、ユルユルな脚本ではどうしようもありません。文太をあまり活躍させなかったことには敬意を表して、ここはプラス一点とさせていただきます(苦笑)。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2013-11-08 23:20:34)
1363.  地下室のメロディー 《ネタバレ》 
フランスのノワールには“仁義”“掟”“男同士の友情”といった臭みが目立つ映画が多いが、この映画には不思議とそういう要素が見られません。ジャン・ギャバンが出所して家に帰りつくと通りの名前が変わっていたという冒頭シークエンスには、そこはかとないユーモアすら感じさせてくれます。でも人物造形やその背景設定には粗と言うかポカが目立ちますね。だいいち、10億フランもの大金を強奪する計画を立てる切実感や成功させようとする高揚感といったものがこの犯人たちから欠けている様に思えます。アラン・ドロンがダクトを這ってゆく様な細部描写にはとても拘りを見せているのにね。でもこのシーンを甦らせた『ダイハード』よりもずっと面白い撮り方でした(ダクトの中にエアコンの空流が吹き抜けるところなんか、もう最高です)。ドロンがちょっかいを出す踊り子やギャバンの女房が伏線の様な存在なのかと思えば全然発展しないキャラでした、ってのも自分としては不満なところです。 と言うわけで、観ての通りでラスト・シーンがすべてというジャンルの映画でした、まあこれはこれで粋な5分間であることは確かです(でもあのカバンが水に沈むかなー、『あやしい伝説』でぜひ検証して欲しいです)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-11-05 23:53:58)
1364.  電送人間 《ネタバレ》 
東宝特撮映画の中では、監督・福田純、脚本・関沢新一のコンビの作品はろくでもないという良い見本です。この電送人間というやつもなかなか難儀な存在です。なんせ、テレポーテイションするためには目的地に必ずバカでかい機械がないといけないんですから、トラックやら貨物列車で装置を先送りしとく必要がある。電送人間自体は普通の体質で殺人を犯した後は警官やら新聞記者から走って逃げ回らないといけない、彼も内心では「こりゃ、透明人間の方が良かったな」と後悔してたんじゃないでしょうか(笑)。 そしてこの映画を語るときに避けて通れないのが、あの伝説のキャバレー“大本営”です。悪役たちが本業の密輸をカモフラージュするために経営してるみたいですが、派手なネオン出してるうえけっこう繁盛してるから税務署あたりに眼をつけられたりして逆効果になりゃしませんかね。ボーイやホステス(このセーラー服姿はちょっとイケてました)の格好もすごいけど、なんと金粉ダンサーまで登場します(ダンス自体は致命的にダサいけど)。「ゴールド・フィンガーを臆面なくパクリやがって」苦い目で観てしまいましたが、よく考えたらこっちの方が4年も前の映画なんですよね、恐るべし東宝特撮映画! ラストは突然の浅間山の大噴火で閉めるという東宝特撮映画ではときどき観られる投げやりさですが、その噴火特撮までもが『日本誕生』の使い回しとくれば、もう監督の志しの低さを嘆くばかりです。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2013-11-02 20:16:59)
1365.  荒野の用心棒 《ネタバレ》 
セルジオ・レオーネの映画は長尺というイメージがあるが、この映画は例外的にふつうの尺に収まっています。もっとも本作以降の彼の作品で2時間未満の上映時間は皆無ですけど。 ほんと良くここまでと感心するぐらい黒澤の『用心棒』をパクってますねえ。もっとも私らの世代では、『用心棒』より先にTVで本作を観たという人の方が多いことでしょう。でも『用心棒』自体がウェスタンを意識したプロットだったから、見事にレオーネは換骨奪胎して見せたわけです。 とにかく若くて渋いイーストウッドを愛で、モリコーネの口笛のメロディーに酔いしれるのが正解でしょう。ラストの鉄板を腹に仕込んでのガンファイト(これはイーストウッドがアイデアを出したそうです)は今観ればなんかバカバカしくて、素朴に子供のころはなんで頭を撃たないんだろうと不思議でした。西部劇で頭や顔を撃っちゃいけないという規制があったことは後に知りましたが、マカロニ・ウェスタンも初期の頃はそんな不自然なルールを踏襲してたんでしょうかね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-11-01 00:36:14)
1366.  からみ合い 《ネタバレ》 
ガンを患って余命幾ばくもない大企業のオーナー社長が、遺産を与えるかどうか判断するために三人の認知してない隠し子を部下や弁護士に捜して連れて来いと命令を下す、まるで戦国武将の跡目争いか『リア王』みたいなとても現代劇とは思えないプロットです。社長以下登場人物がみな腹黒くていわば“全員悪人”といった風情で遺産をめぐった暗闘を展開するわけですが、どう考えても社長役の山村聡がミスキャストだと思います。手当たり次第に女に手をつけて子種をまき散らす、おまけに胃を三分の二も切除して療養中なのに秘書の岸恵子を手篭めにする、と言う風に肉欲の化け物みたいな絶倫男が山村聡だなんてちょっと無理があります。ここはもっと下品で脂ぎった演技が出来る役者を使うべきだったでしょう(新東宝なら適役と言える俳優がゴロゴロいますが)。 結局三人の隠し子のうち本物だったのは一人だけだったのですが、この隠し子たちが意外なほどストーリーに絡まないところがこの映画の弱いところです。芳村真理のエピソードなぞは殺人事件に繋がってゆくんですが、これってそもそも仲代達矢の弁護士が人違いをしてしまったのが発端じゃないですか。でもその辺を上手く観客に伝えられないストーリー・テリングの拙さは観ていてもどかしくなるぐらいでした。 いかにも小林正樹らしい重厚な撮り方なんですけど、なんか物足りなさが残ってしまうんですよね。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2013-10-30 17:27:37)
1367.  どぶ鼠作戦 《ネタバレ》 
岡本喜八の愚連隊三部作シリーズの中でももっとも切れた脚本と言ってよいでしょう、この映画は。この三部作はそれぞれのプロットはバラバラですが、共通する登場人物はもちろん佐藤允で、とくに本作で彼は最高のキレ味を見せてくれます。彼と藤田進や加山雄三のやり取りは、粋で軽妙の極みで聞き惚れてしまいました。惜しむらくは、サミュエル・L・ジャクソンの決め台詞“Mother Fucker !”と並ぶインパクトがある「ちっきっしょー」が、前二作ほど聞けなかったことでしょう。 藤田進がまたいい味出してるんですよね。坊さんが召集されて中国戦線に派遣されてきたという、いかにもと言うキャラを大らかに演じております。婚礼シーンの火踊りを観ても判る通り、この映画は『隠し砦の三悪人』のパロディみたいなところが有り、その中で彼が嬉々としてセルフ・パロディに興じるとは微笑ましい限りです。ラストなんか、有名な「裏切り御免!」へのオマージュになってますからね。 加山雄三も結局意外な役どころだったわけですが、この人はヒーローよりも脇に絡む役の方が上手いんじゃないでしょうか。もっとも砂塚秀夫の抱腹絶倒ぶりには大負けしますが(パントマイムで見張りを翻弄するシーンはもう最高です)。 あと今さら言ってもしょうがないことですけど、中国人とはちゃんと中国語(たぶん)で話すのは善いんですが、昼のシーンなんかは白文字を使っているので字幕が全然読み取れないことです。これは当時の東宝映画に共通する欠点なんです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2013-10-27 19:51:22)
1368.  ドラム 《ネタバレ》 
あの怪作『マンディンゴ』と同じ原作者の小説を映画化。『マンディンゴ』の姉妹編と呼ばれていますが、あえて言えば『マンディンゴ』のパラレル・ワールドみたいなプロットであります。 ドラムとは主人公である奴隷の名前で、演じるのはケン・ノートンだが役柄は『マンディンゴ』で演じたのとは全然関係はなし。アフリカの高貴な血筋を引いているというのは似ているけど、こっちでは母親が地主の愛人だった白人女と言うところがちょっと捻っています。 ややこしいのがドラムのご主人さまになる奴隷商人で、『マンディンゴ』で最後はたしか死んだはずの長男と同じハモンド・マックスウェルという名前なんです。彼の乳母兼女中頭もルクレチアと同じ名前で、同じ女優が演じているとなると『マンディンゴ』を観た人には頭の中に?がいっぱい湧いてきます。そこら辺はパラレル・ワールドなんだと割り切るのが無難でしょう。 登場人物はみな一段とグロテスクな奴ばかりになっていて、エロ度もアップしております。見どころはウォーレン・オーツとイゼラ・ヴェガという『ガルシアの首』のゴールデン・カップルの再登場で、ヴェガも豪快な脱ぎっぷりでした。最後は奴隷の反乱でウォーレン・オーツとケン・ノートン以外はほぼ皆殺しという結末ですが、反乱奴隷が襲ってくるシーンはまるでゾンビ映画みたいでした。 冒頭の手抜きのナレーションから始まって雑な部分が目立つ映画で、はっきりいって『マンディンゴ』の方がずっとマシでした。
[ビデオ(字幕)] 4点(2013-10-25 21:13:32)
1369.  スリーパーズ 《ネタバレ》 
少年が性的虐待を受けてその出来事が運命を変えると言うと『ミスティック・リバー』をどうしても思いだしてしまいますが、この映画も負けず劣らずの後味悪い結末でした。だいたい神父が偽証することを肯定する様なストーリーはちょっとどうなんでしょうか。デ・ニーロが演じるこの神父は、もともとさんざん悪事を働いた不良だったみたいで主人公たちがマフィアの下働きをしてもあまり本気で怒らない。いわば破壊坊主みたいな本性を持った人物なのに、デ・ニーロの演技からはあまりそれが伝わってこないんです。ストーリー上は13年の時の隔たりがあるのにデ・ニーロの風貌が全然変わっていないというところもあり、デ・ニーロめこの映画に関しては手を抜きやがったな、と思わざるを得ませんでした。でもあんなに衆人環視の中で殺人を犯しておいて、いくら店の主人や客が裁判に協力しなかったと言ってもふつう無罪になりますかね、まあ証人が聖職者でそいつが偽証するんだからどうしようもないか。 この映画こそムダに豪華な配役と言うに相応しく、とくにあの弁護士役にダスティン・ホフマンが必要だったとは到底思えませんでした。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2013-10-24 23:10:13)
1370.  第七の封印 《ネタバレ》 
世評高いこの映画を恥ずかしながらこの歳になって初めて観ましたが、何と言っても衝撃を受けたのが冒頭の死神の登場シーンでした。黒ずくめの装束に能面のように白い異相、そして空には雲が渦巻き背景は海で波が打ち寄せている。これほど完璧に硬質なショットは滅多に拝めるものじゃありません、もう身震いしちゃいました。観るまではこの映画は死神と騎士がチェスをしながら神学論争をするお話しだと勝手に想像してましたが、予想外にも2・3手指すたびにチェスは中断してしまい、その間は騎士と従者が旅芸人たちと居城を目指すロード・ムービーのような展開で有ります。この旅芸人夫婦たちのエピソードがけっこう面白くて、中でも座長はウディ・アレンに演じさせたらピッタリだろうなという可笑しさでした。そう言えばアレンは、『愛と死』で本作のラストの“死の舞踏”をきっちりパロって再現していますが、オリジナルの方だってシュールではあるがなんか笑いを誘うところもあり、改めてアレンのベルイマン解釈の深さに感心しました。 難解で暗い映画だという評判もありますが、私には思った以上にユーモアと生への希望が感じられました。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2013-10-23 01:36:10)(良:1票)
1371.  悪の階段 《ネタバレ》 
大金を強奪した5人の男女が仲間割れというありふれたプロットなのに、不思議なほど引き込まれる魅力を持った作品です。キャスティングだけでこの映画の評価の8割は決まったとも言えます。山崎勉は『天国と地獄』の竹内銀次郎からさらに人間的感情を削ぎ落してもっと冷酷にした様なはまりキャラです。西村晃がこういう役をするのは別に珍しくはないけど、きっちり期待以上の演技を見せてくれます。一味の中に加藤大介を入れるというのがまた絶妙で、彼としては珍しい犯罪者役ですがやっぱこの人は上手いわ。そしてあの東宝きってのお嬢様女優である団令子が崩れた悪女だというのが驚きです。こういう役は、彼女のフィルモグラフィ中でも唯一ではないでしょうか。 不動産屋の中にほぼ画面が限定される後半は、二階と地下に昇り降りする階段を意識した画面造りには拘りを感じさせます。でもあの水筒のシークエンスはちょっと不自然で、だいいちあんな水筒、お店で売ってないでしょう(苦笑)。それまで山崎勉があまりに怜悧だったから、このシーンにももっと裏があるんじゃないかと勘ぐってしまって拍子抜けしちゃいました。でもこの映画の持つ独特の雰囲気はフレンチ・ノワールを東宝映画調に昇華させることに成功しており、まさに隠れた傑作と呼んで過言は無いでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-10-20 20:05:30)
1372.  メイトワン-1920 《ネタバレ》 
アメリカ西バージニア州の炭鉱町メイトワンで1920年に起こった炭鉱労働争議をテーマにした作品。ここに登場する炭鉱会社は現在の眼で見ればもうブラック企業そのもので、低賃金なだけでなく給料をクーポン券みたいなものらしい社票で支払いし、買い物は会社が運営する商店でしか認めず(もちろん社票しか使えない)、違反したら罰金をとる。労働者たちは組合を創ってストに突入するが、会社も対抗して新規に集めた黒人やイタリア移民の労働者をスト破りに投入してくる。そんなところへ組合の全米組織からひとりのオルグが派遣されてくるが、会社側も武装したゴロツキどもを代理人として呼び寄せた。 この映画の巧みなところは、この抗争をウェスタンとして見せてくれるところで、社会派的なテーマを風刺と娯楽性を盛り込んで料理するジョン・セイルズ脚本の真骨頂です。組合の指導者役のクリス・クーパーはこれが映画デビューです。カリスマ性を持ったリーダー役として評価できる演技ですが、ラストでは警察署長役のデヴィッド・ストラザーンが思わぬ展開でヒーロー役を奪っちゃう、と言うか実はこの署長がヒーローだったというオチは実に上手いシナリオでした。 クライマックスの対決はもう西部劇の決闘そのもので、我慢を重ねて最後に怒りを爆発させる展開も東映任侠映画みたいなカタルシスが味わえます。オスカーにノミネートされたハスケル・ウェクスラーの撮影なんですが、残念ながら古いビデオでの鑑賞だったんで、イマイチその繊細さが判りませんでした。デジタル・ソフトでのリリースが待ち望まれます。
[ビデオ(字幕)] 8点(2013-10-16 23:10:20)
1373.  セコーカス・セブン 《ネタバレ》 
ロジャー・コーマン門下生の中で、社会派NO.1と言えるジョン・セイルズの監督デビュー作です。10年ぶりに故郷の町に集まる七人の男女たちの週末2日間を描いており、インディーズらしく無名の俳優ばかりだけど、マギー・レンジとゴードン・クラップ、そしてデヴィッド・ストラザーンといったジョン・セイルズ作品の常連となる顔ぶれもすでに登場しています。実はこの映画は、ローレンス・カスダンの『再会の時』などいわゆる“リ・ユニオン”ジャンルの先駆けとなった作品なのです。 ベビー・ブーマー、日本で言うところの団塊の世代が30代になろうとするころが時代背景で、この映画に登場する男女も学生運動で警察の御厄介になった想い出を共有する仲でもあります。この七人がまた元カレ・元カノ同士で(まあ田舎町ですから、若い連中のヤルことはアレと言うわけです)、けっこう複雑な人間関係みたいですが、セイルズの脚本はあまりそのことが気にならない巧緻さがあります。バスケで遊んでいるところや川に男たちがフルチンで飛び込みをするところを延々と撮っていたりして、独特の間があるところは好きです。 特に事件も起こらずに別れてゆく七人ですが、なんか青春が終わった瞬間を見せられた様な余韻がありました。
[ビデオ(字幕)] 7点(2013-10-15 19:26:38)
1374.  女優フランシス 《ネタバレ》 
“ハリウッドに翻弄された悲劇の女優の生涯”という感じのお話しかと思いきや、実は母娘の確執がどちらかと言うとメインのドラマでした。映画の半分ぐらいでフランシス・ファーマーが精神病院にぶち込まれてしまうので、後はもう『カッコーの巣の上で』状態。退院してからの母親との壮絶なバトルはなかなかの見ものです。ジェシカ・ラングの『キング・コング』の呪縛を晴らすかの様な熱演は、彼女が当時に置かれていた状況を知っているこちらとしてはちょっと暑苦しくなるぐらいです。 でもジェシカやキム・スタンレーの演技に監督と脚本家の能力が全然追いついていないので、けっきょく印象が散漫ななにが言いたいのか判らない映画となってしまいました。サム・シェパードなんか、モノローグまでしているのに、この人物が何を生業にしているのかさえ観ただけでは判らないというのも変な話で、ここら辺にこの映画の脚本のヘタさが表れていると思います。フランシス・ファーマーと言う人は、別に精神病院で朽ち果てたわけではなく退院後は芸能界に復帰して1970年まで生きたそうですが、ロボトミー手術を施されたということについては真偽が不明で、これは“都市伝説”だと主張している人もいるんだそうです。
[ビデオ(字幕)] 5点(2013-10-12 21:42:25)
1375.  人生はビギナーズ 《ネタバレ》 
クリストファー・プラマーを想定して書かれたとしか思えないカミングアウトお父さんのキャラでした。突然親父さんが“実は俺はゲイなんだ”と息子に告白する、これは典型的なシチュエーション・コメディのプロットになるぐらいですが、そこをあえてゆる~く撮って息子の“喪失と再生”へとつなげてゆく映画の構成はなんか癒されました。そう、この映画はプラマーじゃなくて、あくまでユアン・マクレガーが主役なんですね。でもそう考えると、ユアンのキャラはどうも曖昧で薄い印象はぬぐいきれません。メラニー・ロランにユダヤ人だと告白されて(と言ってもそんな大げさなものではなく、彼女が自分の身の上を語った際についでに出た様な印象)たいそう驚いているが、今日アメリカの都会でユダヤ人であることがそんなに意識されるとは思えない。これには彼が心の中に隠している傷、自らのアイデンティティの喪失感を表現しているのだろうが、そんなウジウジした心象は好き嫌いが分かれるところでしょう。 でもユアン・マクレガーもメラニー・ロランもとってもいい演技で、プラマーの好演と合わさって素晴らしい演技三重奏でした。現在と過去をシームレスに繋ぐ編集も良かったと思います。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-10-10 21:47:22)
1376.  モスキート・コースト 《ネタバレ》 
やればできるじゃないか、ハリソン・フォード!(失礼)。彼にこれほどテンションが高い演技が出来るとは、もうびっくりです。『刑事ジョン・ブック』での実績もあるし、監督のピーター・ウィアーはまさに“ハリソン・フォード遣い”の名人ですね(笑)。 この主人公の人物造形がまたうまく、良くいる自然回帰派のナチュラリストかと思ったら実は自分の王国を造ってそこに創造神として君臨したいだけ、つまり『地獄の黙示録』のカーツ大佐と本質的に同じ人間なわけです。バベルの塔の様な彼が発明した製氷機が爆発・炎上するシーンは、『地獄の黙示録』のカーツ王国の崩壊のシーンとそっくりです。彼に翻弄されるヘレン・ミレンやリバー・フェニックスの家族たちが家族崩壊の寸前まで追い詰められながらも、最後はハリソン・フォードの死を看取ってあげるラストは良かった。劇中ハリソンは妻であるヘレンを名前じゃなくて“Mother”と呼び続けるのがとても奇妙に思えたのですが、これはきっとヘレンがハリソンの聖母だったことを表しているんだと最後には判りました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-10-07 21:45:42)
1377.  ユージュアル・サスペクツ 《ネタバレ》 
このお話は、小説にするにはとても高度な筆力が必要だと思います。フィクションの世界で良く言われる“信頼できない語り手”の独白でストーリーが展開されるので、当然映像にはその語り手が観たことや聞いたことだけが映されるわけです。だから観客を騙すのは映画の方が文章で表現する小説よりも容易なんだなと改めて気づかされるわけですが、これ以上言うのはネタばれになり過ぎるので止めておきます。でもホント、この映画を観て騙されなかった人はいるのか疑問です。でも鍵というかアラはありまして、ファースト・シーンの船上でのやり取り、これは余計というか映画を台無しにしかねない失敗だと思います。 しかしラスト5分のたたみ掛ける様な迫力は超一級で、あの弁護士の名前がなんでコバヤシなのかが判る場面は背筋がゾッとしましたよ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-10-05 18:31:11)
1378.  アマデウス 《ネタバレ》 
原作の戯曲および脚本を書いたのがピーター・シェーファー、どうりでミステリー色が濃厚なわけです。またこの脚本が、もう一部の隙もないという表現がぴったりな代物で、あまりに理論的でかっちりしたストーリーなところがかえってこの映画の弱みじゃないかと思えてきます。そこは「音ひとつでも欠けたら台無しになってしまう」というモーツァルトの音楽にも繋がるところがあるやと思いますし、ディレクターズ・カット版などはなんの意味があったのか理解できません。 恥ずかしながら、この映画を観るまでモーツァルトの天才ぶりや俗人としか言いようがないキャラについては、知識を持っていませんでした。楽聖モーツァルトにあのけたたましい笑い声をたてさせるなんて凄いアイデアです。でもトム・ハルスのモーツァルトはF・マーリー・エイブラムスのサリエリの演技には到底かなわなかったというのが正直なところです。このサリエリぐらい説得力のある演技は、滅多に拝めるもんじゃありません。まさに彼こそ、“凡人の神”だったというわけです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-10-01 18:19:09)
1379.  第七の予言 《ネタバレ》 
黙示録や“さまよえるユダヤ人”の伝説などをモチーフにしているショボい滅亡オカルトなんですが、これはもうデミ・ムーアのマタニティ・ヌードを見せたいがための企画としか言いようがないです。ていうか、同時期に雑誌でもヌードになっているし、デミ・ムーア自身がよっぽど見せたかったんでしょうね(露出狂かよ)。でもこんなお腹が大きいときに、良くこんな胎教にも母体の精神上にも悪影響を与えそうな役を演じられるもんだと感心しちゃいます。この時生まれたブルース・ウィリスとの子供は、今はどういう風に育ったんでしょうかね。 この映画で堪らなく不快だったところがあります。デミの旦那がマイケル・ビーンで弁護士としてある死刑囚(実は予言では救世主になるはずの人物)の処刑を中止させようと奮闘するのです。彼が何をしたかというと、近親結婚をした自分の両親を“神の掟に背いた”と殺害したのです。ふつうの感覚では死刑になってもしょうがない狂信者だと思いますが、この映画ではなんか無垢な精神を持った清らかな人みたいに描いているんです。しかもそれを演じているのが障害を持った俳優(ダウン症みたいでした)で、つまり彼は“神の子”だということみたいです、監督の意図は。もうシャレにもなってませんよ、まったく!
[ビデオ(字幕)] 3点(2013-09-29 22:34:25)
1380.  鷲は舞いおりた 《ネタバレ》 
映画はずいぶん前に観てて、ぜひ原作を読んでみたいと思ったのに30年は経っているのにいまだに読んでいません。 この映画、良く考えたらジョン・スタージェス監督の遺作になるんですよね。原作のファンからは酷評されていることも判りますが、マイケル・ケインのシュタイナー大佐は観直してみるとそう悪くはない気がしてきました。世の中を達観した様なシニカルなキャラが、彼ら特殊部隊員たちの持っているゲルマン的な滅びの美学に良くマッチしているなと思います。 私の様なマニアはどうしても目が向いてしまうのですが、この映画は軍装や兵器の考証への拘りには目を見張るものがあります。シュタイナーがユダヤ人女性を助けようとするシーンでは、博物館にしかない様な実物の突撃砲まで登場するのには驚かされました(チラッとですけど)。でも?なのはポーランド軍の軍服の下に着ているのが降下猟兵のコスチュームではなく空軍のパイロットの制服であることで、原作もそうなんでしょうかね。 考証はこの様に満足できるものですが、肝心の脚本はけっこう粗い部分が目立ちます。撮影の都合があったんでしょうけど、いくら英軍の輸送機を使っていると言っても白昼に落下傘降下はふつうやらないでしょう。リーアム・デブリンのキャラも、人間味が溢れるというよりもこれじゃあ単なるバカみたいです。バカと言えばラリー・ハグマンたち米軍の描き方で、どうなんでしょうね、これは作品の緊張感を削ぐ悪効果しかないと感じますけど。ラストの改変もあるし、あまり原作の凄さを活かしきれていないという印象が強いです。
[映画館(字幕)] 6点(2013-09-26 21:24:21)
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