121. さくらん
一番痛いのは土屋アンナのセリフまわしだけれど、太夫に登りつめるまでの前半と、それ以降の後半に物語の連続性が感じられないのもつらかった。後半については音楽もとってつけたようだし、展開も時代背景からしてリアリティがなさすぎ。現代的な価値観を無理やりねじこんでも、薄っぺらな話にしかならない。セリフがいちいち浮いているのも、ある程度は脚本の問題なのだろう。土屋のセリフが浮いているのも、全体を一つの調子にまとめあげようという意思が演出の中にそもそもないところに問題があるように思われる。まるで別々に録った音声を合成しているかのようにテンポがかみあっていない。映像的には、ラストの自然光のシーンを印象づけるためというのもあるだろうが、色調の強調されたシーンがえんえんと続くのもかえってめりはりがなく、退屈させる。 とはいえ、とにかく最後までちゃんと見続けさせるだけのものもあったのは事実だし、土屋アンナも表情の演技などは素晴らしかった。彼女のセリフを最小限にすれば良い映画になったかもしれない。 [地上波(邦画)] 5点(2008-05-25 00:23:48) |
122. 郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942)
ビスコンティはいつもそうだが、リアルすぎて重苦しい(じゃあ見なけりゃいいのに、と言われそう)。邦題は原作小説から直接とられており、その解説によると「アメリカでは郵便配達はいつも玄関のベルを二度鳴らすしきたりになっている」ことから発想を得ており、「郵便配達」ではなく「二度」ということがストーリーのなかで象徴的な意味を持っている。この映画の原題は英語にするとObsession。「とりつかれる」という意味で、良くも悪くもわかりやすい。「二度」というテーマもよく探せば残っている。 [地上波(字幕)] 5点(2007-07-16 21:52:22)(良:1票) |
123. シン・シティ
三つのエピソードをただ並べるっていうのはあまりに芸がない。この世界にはじっくりひたらせてもらったし、女性陣はやたらセクシーだったけど、ストーリーがねぇ。ミッキー・ロークには驚かされた。大男って役もできちゃうんだねぇ。 [地上波(字幕)] 5点(2007-07-15 21:45:26) |
124. コーラス
歌はきれいだけど、ストーリーに説得力があるわけではないですね。ふつうに楽しめるけれどそれだけ。似たようなノリなら断然スクール・オブ・ロックだなぁ。 [DVD(字幕)] 5点(2007-07-14 01:54:26) |
125. ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版
この同じ映画が、編集をしていくことで全然違う話に変わってしまい、しかもそれが素晴らしいというのは何とも驚くべきことです。うさぎ=あひる絵みたいに、全体が変わると部分の意味がすっかり変わってしまう。例えば、アルフレートが トトをローマに送り出し、「ぜったい故郷には戻ってくるな」というセリフ。劇場公開版を見てから、完全版での意味を知らされると騙されたような気持ちになります。それにしても、編集の作業の大切さを思い知らされますね。他の作品も完全版っていろいろ見ましたが、どれも編集後のほうが良かったです。自分の思い入れよりも、他の人に見てもらうことが大切ってことですね。 [地上波(字幕)] 5点(2006-11-21 23:59:11)(良:1票) |
126. Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス?(2004)
テレビでオリジナルをやっていた後に見たので、どこをどう料理したのかというのが鮮明に見られた。オリジナル版の笑いの基底が、「日本人が、欧米人みたいにダンスをする」ということの距離感にあるので、そうした構造を取り払った後で、表面的に類似するエピソードをどのように位置づけているかが、リメイク版の最大の見所になるはずだった。しかしピーター・チェルソムは、その点で大きな冒険をしていない。同じエピソードががらっと意味を変えるというようなシーンはひとつも見られなかった。その代わり、日本とアメリカの文化の共通点を引っ張り出して、その共通点を基底にして、同じような意味を引き出せる部分を利用する、という作り方をしている。 オリジナルで渡辺えり子が演じたキャラのハリウッド版は、彼女の笑いを研究しつくしており、そっくりさんを見るのと同じような面白さがある。竹中直人の笑いの換骨奪胎ぶりもなかなかに楽しい。竹中の演じた会社の内と外のギャップを、「ユダヤ的orドイツ的生真面目さ VS. ラテン的情熱」の対照に上手に置き換えているのは見事。 ただし同じエピソードに同じような意味づけができそうなものをわざわざ変えている部分には納得のいかない部分もいくつかあった。その一番の点はジェニファー・ロペスの役づくり。第一に、彼女がはじめひたすら主人公に冷たくふるまうということは、後の展開のために絶対必要な線だったはず。また場末のダンススタジオで仕事をしている自分に対する納得のいかなさも、リチャード・ギア演じる主人公のダンスへの情熱から力をもらう、という後の展開のためにやはりなくてはならなかった。もしかしたら監督は、ジェニファーに、「表面的な普通さの下の葛藤」を表現させるという二重の演技を期待していたのかもしれないが、僕にはそれは見てとることができなかった。 またハリウッド版<渡辺えり子>についても、シングルマザーでダンス道楽のために全人生をかけているという人物像は、アメリカでもそれなりに説得力があるだろうに、彼女のサブストーリーは、メインとなるストーリーの陰で無視されている感があった。 そういう意味では、周防監督の<脇役の一人一人までの物語を同時に語りつつ、全体を構成していく>というポリフォニックなストーリー展開の妙をあらためて感じさせられた。 [映画館(字幕)] 5点(2005-05-09 14:25:33)(良:2票) |
127. 僕のスウィング
《ネタバレ》 最近バルトークへの関心からハンガリーの民族音楽にはまってたんだけど、スペインのジプシー音楽も良いなあとあらためて感じさせられた。この映画、少なくとも音楽だけはまさにその場にいる感じが楽しめる。しかしあのラストは、いったい何だったの。「あの」音楽を通じての心の交流は所詮うたかたのもの、というメッセージになっちゃいそうだけど。 最近再見した「フランスの夏休み」と比べたとき、この後味の悪さは何ともいえないものがあった。 5点(2003-11-15 16:56:42) |
128. きみに読む物語
夫も子どももわからなくなるというくらいまで進んだ認知症の人が、このようなお話をふつうに理解し、さらにはたった五分でも記憶を取り戻すなどということはないんじゃないだろうか。また身分違いの恋が、こんなふうな展開になることもまずないんじゃないだろうか。そういう違和感が最初から最後までどうしてもぬぐえず、あまり楽しめなかった。ただ雨でずぶぬれになることで、上品な世界に身を置いていた自分を忘れる、という展開はリアルだった。 [地上波(字幕)] 4点(2012-03-15 02:37:55) |
129. ダーティ・ダンシング
60年代という設定の80年代の映画のはずなんですが、そうした時代設定は何だかめちゃくちゃで、ダンスのシーンで流れる音楽も60年代の懐メロも80年代のものも同じように出てきます。ストーリーはどうにもご都合主義で、肝心のダンスもパッとしない。80年代に思い入れがある人でないと見られないと思います。 [地上波(字幕)] 4点(2011-03-09 09:23:57) |
130. 泥棒成金
いちおう最後までは見られたけれど、ミステリーとして筋は破綻しているし(自分が犯人でないことを証明したいなら、他にやるべきことはいくらでもあるだろう)、面白いところを探すのに苦労するような映画だった。 [地上波(字幕)] 4点(2011-01-29 23:14:17) |
131. 機動戦士ZガンダムIII 星の鼓動は愛
Zの一作目があまりにひどかったので2と3は今まで見ていなかったのですが、今回NHKのガンダム特番で一挙にTV放映されていたので見てみました。詰め込まれたエピソード猛スピードで駆け抜けることに慣れたのか、登場人物がみな自分勝手に戦っている戦争状態に慣れたのか、はたまた単にこの映画への期待レベルが十分に冷え込んでいたのが良かったのかわかりませんが、結果的にはそこそこ楽しんで見られました。TVシリーズは未見のため、頭脳をフルパワーで回転させながら人間関係を想像しながら見たのですが、当時見ていた妻によれば、長大なTV版は長すぎて逆に、誰が何のために戦っているのかわからなくなっていたそうですから、圧縮したことに意味もあったのかもしれません。 Zの一作目を見たときの一番の抵抗感は、「みんなが自分勝手に動きすぎる」「こんなんで戦争ができるはずはない」というものだったのですが、考え直してみれば、この話が描いているものは、いわゆる「戦争」ではないわけです。ファーストガンダムでは、曲がりなりにも成立していたような「戦争」はもうここにはなくて、みながそれぞれの思惑で武器をとって殺し合いを行い、その時々の有利不利だけで敵味方の組み合わせが自由自在に変化するという、一種のバトルロイヤル状態になっているわけです。 現代の日本人がもし、自分の利益のために戦うということが起こるとすれば、それはきっとこういうものになるのかもしれません。 そう思うと、太平洋戦争のようなこれまでの戦争において、人々がただ単にある場所に生まれたというだけで、その集団のために命を投げ出していたことの不思議さがかえって浮き彫りになってくるのです。 そんなふうに歴史を見返させてくれただけでも、この映画を見た価値がありました。 ファーストガンダムのファンとしては、ラストにホワイトベースの旧クルーを出してくれたファンサービスもうれしかったです。 [地上波(邦画)] 4点(2009-09-12 00:57:45) |
132. 用心棒
もっといろいろなものを見る前だったら面白かったのかもしれないけれど、やっぱり弱い者の見方というストレートなキャラクターのお話にはもう共感できない。椿三十郎がだめな人にはこっちもだめだろうなぁ。「七人の侍」や「生きる」は大好きだけれど。 [地上波(邦画)] 4点(2009-02-15 22:19:16) |
133. パプリカ(2006)
原作における夢と現実の交錯の表現は、現実に軸足をはっきりおいた上での「安全なエンターテイメント」であり、今敏が本作や『妄想代理人』などで取り組んだ「リアリティの危うさ」というテーマとの齟齬を感じる。そのため、原作の面白さも取り込めず、今敏らしいテーマの追求も不十分で、中途半端な作品になってしまった。さらにいえば、ヴァーチャル・リアリティーの映像表現で、夢と現実の境を突破するというような発想自体にすでに今日性を感じなくなってしまっている。 [DVD(字幕)] 4点(2008-09-16 00:52:41) |
134. 娘・妻・母
オールスターキャストで焦点がぼけたという印象。かなりがっかり。 [地上波(邦画)] 4点(2008-05-25 00:33:31) |
135. 椿三十郎(1962)
先の読めるいかにもな展開ときめぜりふの連続で、良くも悪くも「評価の定まった大衆娯楽作品」といったところか。現在再評価するだけのことがあるようには思えない。 [地上波(邦画)] 4点(2008-05-25 00:29:50) |
136. クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦
これを「オトナ帝国」と同列に並べるのはいただけない。ひどくはないけれど、ありがちなラブストーリーでしかなかった。 4点(2003-11-15 17:13:42) |
137. 愛のむきだし
満島ひかりが演技に開眼した作品というので見たけど、B級映画にしては長すぎる。満島ひかりが、演技の幅を広げたのは間違いないが、安野さくらはちょっとひどすぎる。どこで開花したんだろう。今は素晴らしいのに。 [DVD(邦画)] 3点(2017-03-17 10:23:36) |
138. ポーラー・エクスプレス
今のCGを見慣れてしまうと、気味の悪い人形のように見えてしまう。トム・ハンクスの声優ぶりも鼻につくし、ストーリーもはじめから最後まですきなくアップダウンをつめこんでそれでよしとしているように見える。 [地上波(字幕)] 3点(2012-04-10 20:55:23) |
139. プリンセス トヨトミ
原作の良さのかけらも残っていないのは、やっぱり大阪の大阪らしさが描けていないからだろう。原作のメインテーマは父子の絆で、それはまちがっていないのだけれど、裏テーマは確実に大阪と東京のカルチャーギャップだったはず。このお話の映像的な一番の見どころは「大阪全停止」の場面だったはずだけれど、制作費の少なさに起因するちゃちっぽさを我慢するにしても、それに参加する大阪人ひとりひとりの姿がとても大阪人に見えない時点で、終わっている。もう一つ言うなら、守るべきプリンセスが少しも魅力的でないのもどうにかならなかったのか。様々な事情で演技力のかけらもないものにこうした大役を任せてしまう日本映画の風潮は、自滅を招いているとしか言いようがない。 [DVD(邦画)] 3点(2012-01-07 23:03:40) |
140. しゃべれども しゃべれども
役者たちがプロの咄家に見えないのはどうにもこうにも。伊東四朗の演技もうわすべりしている。間も悪いし、ここでの好評価が僕にはよくわからなかった。 [ビデオ(邦画)] 3点(2010-01-05 00:09:08) |