1421. ジャンゴ 繋がれざる者
165分、この長丁場の間ワタシの心臓はばくばくしっ放し。常日頃の1.5倍速で血流が体内を巡っていたと思われるわけで、身体にいいんだか悪いんだか。でも面白かった。凄く面白かった。長いのに中ダレしないのは、やはり脚本の力か。掴みの5分でこの話の虜になるし、全パートにわたってぴりぴりと緊張感がある。どの場面も、ストーリーに絡む“意味”がある。タランティーノ一流の無駄話シーンも健在。kkkの前身のような荘園の一味が目出し袋をめぐって阿呆を炸裂させる場面は個人的にこの映画の必見場面ベスト3に入る。そして、クリストフ・ヴァルツ。オスカー受賞おめでとうございます。遅咲きの名優、かのランダ大佐。大好き。この人は役を完全に自分のものにする。口から出る言葉が、完璧にこの人の思考に基づいて発せられている。“会話”が大きなポイントになるタランティーノの作品にあって、台詞を滑らかに筋に乗せることができるC.ヴァルツはまさに適任。Dr.シュルツが生き生きしてたパートまでなら10点あげたい。 [DVD(字幕)] 8点(2013-09-15 01:01:17)(良:1票) |
1422. グロリア(1980)
《ネタバレ》 友人の子とはいえ、わが子でもない坊主を身体を張ってギャングから守り抜くグロリア姉さん。片手で拳銃をぶっ放し、もう片手にはでかいトランクを提げながら走る足元はハイヒール。この胆の据わりよう、粋ないでたち。逃げやすいようにジーンズにスニーカーなんてチョイスしがちな私のような小物にはとても真似できません。世の酸いも甘いもがっつり経験値にあるであろう姉さん。けど、グロリアは、ところどころ台詞にあるものを拾うに、“母親”になりたかったのですよ。カタギに憧れてた面も心のどこかにずっとあったのだね。だから多少小憎らしくても、あの子供への愛情の量の方が勝ったのですね。子供の手を決して振り払ったりしないグロリア。母であり姉であり友人のようなグロリアが死んでしまったと思って子供が向かうのは墓地。こんなとこが伏線になっていたなんて。思わず唸り、そしてラストでノックアウトされた。見事だあ。 [映画館(字幕)] 8点(2013-09-14 00:21:09)(良:1票) |
1423. 永遠のマリア・カラス
カラス役はファニー・アルダン。なんかこう大きくて、ざくざくっと男っぽいんだけども、そのぶんフェロモンも奥ゆかしさ無く全開で迫ってくるものがある。好きです。劇中劇のカルメン、赤と黒の衣装が強烈に似合って、まさに“スター”といった風格。すごい存在感だ。カラスなのかアルダンなのかどっちに魅かれてるのか分かんなくなったりする。どこまで実話に沿ってるのかは分からない。アーティストである以上、カラスが偽りの興行に同意するとは思えないけども、自らを静かに見切ったラストのアルダンの表情は哀しいけど美しかった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-09-13 23:57:06) |
1424. ボーン・アイデンティティー
マット・デイモンがアクション映画に、って一体何をどう思っての承諾なのやらと思ったのは私だけではないと思うんだ。でもこれが意外と見せるんで「おお?」と意外性に引っ張られて最後まで観た。この人の真面目さ、律儀さがリアリティ度を増してるんだろうか。窓から壁を伝って、よじよじと慎重にビル壁面を降りてくる場面、このスーパーマン過ぎないさじ加減の上手さに感心。情報を手に入れるくだりで、マリーにあっさり綿密な計画をスルーされたりと、ちょっと笑わしてくれる演出もおしゃれ。トム・リプリーだった時の卑屈な目元を見事に消し去り、堂々たるエージェントぶり、新しいアクション俳優の誕生ですね。 [CS・衛星(吹替)] 7点(2013-09-13 00:08:24)(良:1票) |
1425. エクソシスト
《ネタバレ》 この後量産されたスプラッターやサイコやもろもろのホラー作品とはやはり一線を画す、別格のパイオニアであると思います。メリル神父、カラス神父、そしてリーガンの母、描かれる各々の苦悩が話の心棒になっていて、その深刻さたるや単なるこけおどしとは違う。医療現場の冷酷さ、街並みのくすんだ色合い、吐息の白さ。映画全体に流れる体感温度の低さ。身体が痺れるようなチューブラー・ベルズ。グロテスクながらこの厳然とした美しさ。M・フォン・シドーの名演、この老いっぷりからしてメリル神父が命を賭して悪魔と闘うのだな、ともう予測がつくわけで、あのオソロシイ儀式の最中には「神父ガンバレー」との思いで観てるこちらの身体は力が入ってがちがち。公開時はほんの子供だった私をウチの母は何故映画館へ連れていったのやら。大音量で響きわたる今思えば悪魔のダミ声に耳を塞ぎ、必死で目を閉じていた思い出がありますよ。子供は夢あふれるアニメへ連れていきましょう。 [DVD(字幕)] 9点(2013-09-12 01:06:08)(良:1票) |
1426. ゲーム(1997)
ラストにはびっくり。わ、笑えないよー。そんなばかなー。車ごと海に転落したんだよ?ターゲット死んじゃうでしょうがあ。それに家財道具返してほしい。荒唐無稽にもほどがあるんだけど、役者陣が上手いのと、そこはフィンチャー、なめらかで深みのある映像でなんとか商品価値を保った作品ではあります。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-09-11 00:15:00) |
1427. サスペクト・ゼロ
みんな言ってるけど、セブンぽいけどセブンじゃない類似作。画質の湿度がずっと低いし、美しさも劣る。“苦悩する超能力者”ベン・キングスレーが重く熱演してるけれども、A・エッカートの固いお芝居が足を引っ張る。ベンの悩みはわかるがアーロン君は何をそんなに仏頂面なの?という気がしてくる。徐々に真実が顕れてくる話の展開は面白かったんですが、ちらちらと挟まるESP映像?のせいもあって二度観して整理する必要があったり。いまいちかな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-11 00:02:51) |
1428. ベルヴィル・ランデブー
音楽が素敵。活躍するのがお婆ちゃんと犬、というのがまた粋。引きこもり気味の孫を立派な自転車選手にするべく奮闘する物語かと思いきや、話は予想もつかない展開へ。ちょっと呆然とする。ストーリーの引力、摩訶不思議な三つ子婆ちゃんの生活風景、電車が通る度に吠える犬。なんというか、アニメを観る上で初めての経験。・・しかし、とにかく絵である。静物はすごく好き。風景も建物も、情感漂う佇まい。でも生き物はキツかった。汚物までリアルに描きつけなきゃならないもんなのか。とても“妖精”には見えなかったし・・。ダメだったなあ・・なじめなかったなあ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-09-05 01:16:17) |
1429. スピード(1994)
《ネタバレ》 バス遠隔乗っ取りのパートはパーフェクト。というか十数年ぶりに観たら地下鉄の場面などは忘却していた。バス脱出成功!、で航空機につっこんでドカーンでもう一件落着の気分になっちゃうもんね。ひとカタルシス済んでる。バスだけでまとめてくれれば10点でした。 [DVD(字幕)] 8点(2013-09-05 01:02:33) |
1430. ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
《ネタバレ》 映画を観ながら感じる胸の痛みが、あの時現実に刻み込まれた記憶によるものなのか、少年が苛まれている姿を観ているからなのか区別がつかなくなるほどに、描写がリアル。電話の向こうの父の声、漏れ聞こえるパニック、あの日を当事者として過ごした人たちが観るには大変つらいことだろうと思う。 感受性が鋭敏な少年とその母親が、あまりの傷の大きさに自分ひとり立つのが精一杯で、相手を支えることなどできずに酷い言葉すら口をついて出る場面は特に辛い。こんな未曾有のトラウマをなんとか癒してゆくには人間の心が必要で、この映画は実に多数の人間を少年の周りに置く。サポート役に“完璧じゃない”じいちゃんを持ってきたのが良い。少年とじいちゃんコンビは最強のタッグ。個人的には、母親の先回りのお膳立ては要らないと思った。少年とじいちゃんとNY市民、これだけで充分。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-09-05 00:55:03) |
1431. ゴースト・オブ・マーズ
《ネタバレ》 カーペンターの熱意あふれる堂々たるB級作。もうほんと馬鹿馬鹿しさを超えた清々しさ。とても予算の少なさを感じる学園祭みたいなセットも、その説得力においては巨費を投じた「ジョン・カーター」(同じく火星舞台・BYディズニー)を数倍上回るのは何でだろう。作り手の愛だろうなやっぱり。未知ウィルスでパンクスタイルになっちゃう訳分からなさもまあ良かろう。そんな細かいことはどうでもいいんである。とにかく敵が来たらやっつけるべし逃げるべし。女隊長のりりしさ、J・ステイサムの下っ端感、パム姉さんの仰天生首等、見所は満載。これを観たからって得る物は何も無い。しかし何かが心に残る。(何?) [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-08-30 00:11:07)(笑:1票) |
1432. マーガレット・サッチャー/鉄の女の涙
《ネタバレ》 英国史上初の女性首相、男社会を闘い抜き、瀕死の英国経済を立て直し、旧ソ連をして“IRON LADY”と言わしめた女傑M・サッチャー。当時政治家としての彼女の存在感は凄かった。日本の首相は印象薄くても彼女のことは明瞭に思い出せる。彼女の生涯を二時間弱に詰め込むのはそもそも無理で、やっぱり諸々のエピソード紹介になってしまっている感がある。教科書のように出来事を短く次々つながれても、こちらとしては「それ知ってる」ことばかり、たとえば予算案をめぐって党内で揉める折、サッチャー氏が持論を強硬に展開し、「おお」と思ったところでその話は終わっちゃう。がくっ。ただ、家族とのエピソードは他国民が知りえないことで、どれほどが創作かはわからないけれど、かつての栄光無く、息子に会えなくてがっかりする老女の姿には胸が詰まる思いがした。なにしろメリル・ストリープがオスカー何本でも持ってけー、と言いたくなるような卓抜の芝居芸を見せる。ほんとに上手い。個人的には彼女の演技はシツコイなあ、といつも思うけれど。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-08-29 23:55:22) |
1433. 戦場のピアニスト
150分もの間ひたすら見せつけられるのは、ナチの残虐非道ぶりと一人のユダヤ人の男が逃げ隠れする様。これでもかこれでもか。ナチスの人を人とも思わない鬼畜な様はこれまでも数多のジャンルで描きつくされてきたけれど、ポランスキーの粘着質なタクトは克明にしつこく糾弾し続ける。気分は良くないしドラマの展開も意外性はほとんど無い。このピアニストさん、本当に「逃げてるだけ」なんですもん。けれど、実話の持つ衝撃の大きさ、覚悟を決めたうえでのピアノ演奏の芸術の崇高さ、作り手の「何が言いたいのか」が100%伝わる明確なメッセージ性、やはりどれをとっても一級品の作品であるかと思います。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-08-28 00:23:09) |
1434. 薔薇の素顔
殺人ミステリーに濃い目のラブシーンあり、カーチェイスありと大サービスてんこ盛りの娯楽作。でも何だかなあ。人物の行動動機がよくわかんないから謎もすっきり解けない。B・ウィリスの色覚異常の件はなにか効いてましたっけ?あーそれにこの人セックス・アピール度すごく低いでしょ。B・ウィリスのベッドシーンが観たい人っているのかな。脱力もののブルースのにやけ顔と、すっぽんぽんエプロンという馬鹿演出にも応じるJ・マーチのなりふり構わなさが記憶に残る残念映画。 [ビデオ(字幕)] 3点(2013-08-22 00:14:15) |
1435. ミラーマスク
この美術センスが好きです。紙に描かれた細い線の華奢な世界が、CGで立体的になっても幽玄さを損なうことなく、独特の美しさです。空に浮かぶ巨人やでっかい黒の女王の顔だとか、「バロン」にもイメージは似てるんだけどこちらの方が小綺麗。アンティーク・ショップのような、密やかでどきどきする魅力があります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-08-22 00:04:59) |
1436. ターミナル
悲運に見舞われた男の感動実話だと思い込んでいたのは前宣伝のせい。コメディだったのかよー。全般に流れるファンタジー感、のれればいいんでしょうがワタシにはちょっとクサすぎた。何が嫌って、ビクター演じるT・ハンクスがフォレスト・ガンプみたいだったこと。英語が苦手な旧共産圏の人ってだけで、大人の男なわけじゃないですか。なんであんな風に必要以上におどおどしたりちょこちょこ歩きしたりの演技なの。非英語圏の人にシツレイな感じだわあとずっと思いながら観てしまった。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-08-21 23:55:42)(良:1票) |
1437. マスク(1994)
《ネタバレ》 ワタシはこれ楽しめる人種です。面白かったー。ジム・キャリーはこれでハリウッドでの席確保、本当にお見事。コミックの映像化というより、この人がコミック化しちゃってる。こんな映画はひょっとして初めてか?キャメロン・ディアスはもの凄く可愛いし、ラストでお面くわえて見切れて行くマイロもナイス。刑事の「どうかしてんのはお前のパジャマだ」に笑った。公僕のくせにそんな台詞。いや可笑しい。 [DVD(字幕)] 7点(2013-08-19 00:21:41) |
1438. ヒューゴの不思議な発明
《ネタバレ》 私の中に、ほんのちょっとだけ残っていた11才の少女の感性がこの映画にすっかり魅せられた。眼が嬉しい嬉しいと言っている。秘密の隠れ家を求める心が、駅の裏側という歯車と仕掛けで織り成された狭い空間に喜んでいる。時計盤の裏から見下ろすパリの夜景!素敵な外国の絵本を観ているよう。からくりを修理するというのはそのプロセスすら楽しい。部品をひとつひとつ探して、直ったら何が出てくるのか、わくわくする気持ち。そのわくわく感が、映画創世記のメリエス氏のわくわくとリンクする。大人が夢を取り戻した、その一助を担った子供心の誇らしさ。11才からだいぶ遠くへ来てしまったけれど、私はヒューゴとイザベルのすぐ隣にいられた。三人組の気分で。コメディパート担当の鉄道公安官と相棒マキシミリアン、彼らも良かった。なんだかキレイなんですよね。立ち姿も濃紺の制服も。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-08-19 00:03:20)(良:1票) |
1439. プロヴァンス物語/マルセルのお城
《ネタバレ》 前作の幸福感の裾野をさらに広げての続編、マルセル思春期へ突入。前半のマルセル初恋物語もどこかとぼけた味わいで好きだけど、やはり圧巻は後半大きな存在感を放つマルセルのお母さん。息子のために校長夫人相手に意外や政治力の高さを披露、丘へ週末ごとに出かける計画を立てる母。近道の幸運や、屋敷の主人の厚意を得られるのもひとえに彼女の慎ましい美徳がかの老紳士の心を捉えたから。親切な人あれば、意地悪な人もいて窮地に陥る一家のくだりでは、落ち込む父に貯金を打ち明けて場を和らげる母。かくも母は美しく優しく偉大で、彼女から幸せの磁場が発生しているかのようなマルセル家。今作でも幸せのおすそ分けをいただいた。だからラスト5分は画面がにじんで胸がつかえて言葉にならなかった。私は本当にこの映画の人たちが大好きだったのだ。 [ビデオ(字幕)] 9点(2013-08-18 23:17:10) |
1440. パニック・ルーム
初見の時はフィンチャーとは知らずに観て、「ふーん」と思う程度。このたびは映像に注目だ、と見直してみると、なるほど言われてみれば滑るようなカメラワーク、これって結構な高度な技だったのか。でもやっぱりお話はそんなに面白くはないなと再認識。ガスに火つけるってジョディなのになんだってそんな頭悪いことするんだろ。 [地上波(吹替)] 6点(2013-08-18 22:56:54) |