1441. コールガール(1971)
《ネタバレ》 この映画、半分以上のシーンが夜の屋外と灯りの点いていない部屋の中で、ほとんど真っ暗というカットも幾つかあります。でも撮影監督が名手ゴードン・ウィリスなのでその深い闇が実に鮮やかに眼に残ります。デジタル・リマスター版で観れたのは幸いで、痛んだ古いプリントやビデオだとたぶん怒り狂うことになるでしょうね。『ゴッドファーザー』は言うまでもなく、コッポラやウディ・アレンに信頼されカメラを任されてきた名カメラマンなんですが、二回ノミネートされただけでオスカー撮影賞を受賞していないことは実に意外です。 この映画でのジェーン・フォンダの演技は、たしかに上手いけど主人公の性格付けがジェーン本人のキャラとほとんど同じ様な気がして、個人的にはあまり評価してません。70年代になってから彼女の演じるキャラはだいたい同じパターンの繰り返しみたいになってしまい、この年齢のときに『バーバレラ』みたいな殻を破ったキャラを演じて欲しかったと感じます。 ラストの結末に当時の女性観客からブーイングを喰らったそうですが、あそこで別れたらそれこそ凡百の映画と同パターンになっちゃうじゃないですか。ドナルド・サザーランドに着いていったからこそ、そこに良い味わいの余韻が残るんですよ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-03-30 21:28:56) |
1442. ムービー43
《ネタバレ》 レンタルDVDショップで流れていた予告編、ケイト・ウィンスレット、ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、リチャード・ギア、錚々たる面々が「こんな映画に出るんじゃなかった」「記憶を消してしまいたい」と口々に罵倒するんです。こんなに凄い顔ぶれが揃った映画があったんだ、インタビューをつないだ『デブラ・ウィンガーを探して』みたいなドキュメンタリーじゃなさそうだし、でもなんでみんなこんなに怒ってるんだろう? というわけで早速レンタルして観ましたが、ある意味でまさに衝撃作でございました。■ケイト・ウィンスレットとヒュー・ジャックマンという共にオスカーを狙える二大スターの初共演がこれとは、ちょっと悲しすぎませんかね。でも●●●●をぶら下げたジャックマンを観てしまったら、もう笑いが止まりませんでした。彼、けっこう楽しんでませんか? だけど、ラストで悲鳴を上げるケイトの表情は、どう見ても素のリアクションみたいですね。■そして全世界のヒット・ガールのファンたちに悲鳴を上げさせた問題作です。良く見ると、監督はエリザベス・バンクス、脚本も女性が書いたみたいで、たしかにこれは男性には映像化しずらいテーマですよね。クロエちゃんがこの試練を乗り越えて成長してくれることを期待してやみません。■でもそんなクロエちゃんどころじゃない『もっと仕事を選べよ大賞』受賞は、お前だハル・ベリー! 顔面破壊を通り越してもう人体破壊の域にまで達しています、でもいくら造りものとは言えあんなオッパイつけて情けなくないのかハル・ベリー!もうオスカー返上しろ!■いきり立って突っ込んでますけど、ジャンル映画の安いパロディものが流行っている昨今にしては、オリジナルを感じさせるネタが多いのでけっこう楽しめたのも事実です(オリジナルと言っても小学生が考える様なネタですけどね)。 これだけのセレブ達に恥をかかせたピーター・ファレリーなどの監督たち、これからハリウッドで飯を喰ってゆけるのか、ちょっと心配です… [DVD(字幕)] 6点(2014-03-10 20:28:46) |
1443. 黒いジャガー
《ネタバレ》 有名な映画ですけど、観てみるとこれがなかなかのおバカ映画なんです。リチャード・ラウンドツリーはスチル写真なんかじゃカッコ良いのに、実際にはちょっと太めであまり強そうでもなく、これならこれならリメイク版のサミュエル・L・ジャクソンの方がはるかに様になっています。シャフトと言えば女にモテまくると言うのがお約束ですが、そっちの方だってどう見てもサミュエルに負けてますしね。敵ボスの行動も何を考えているのかイマイチ判りづらいし、肝心のシャフトまであっさり撃たれてダウンするときたら(もっとサブマシンガンで弾を浴びせられてあの程度の傷で済むのも凄いけど)、ちょっと脱力してしまいます。これもお約束ですけど白人刑事たちがあまりに無能でお人よしばかり、シャフトの無茶苦茶な行動ギャング戦争状態になった街を押しつけられて警察もちょっと可哀想になります。 でも何度聴いても『シャフトのテーマ』は鳥肌が立つほどカッコ良いし、『燃えよドラゴン』がアジア系ヒーローをハリウッドに誕生させたのと同様な功績を残した偉大なオリジナルのひとつであることは確かです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-02-14 22:35:19) |
1444. フェイク シティ ある男のルール
《ネタバレ》 またまた出ました腐敗したLA市警、という感じでハリウッド映画に於いてここが舞台になるともう必ずと言っていいほど堕落した警察組織という描かれ方ですね、ちょっと食傷気味です。まあ言ってしまえばありきたりのストーリーなんですが、主人公のキレやすい刑事にキアヌ・リーヴスを持ってきたところは良いアイデアではないでしょうか。この人は残念ながら演技力は乏しいのですが、彼の動きが鈍い表情が何を考えているのか判りにくいキャラに良くマッチしていました。チームの中で彼だけが内情を知らなかったという展開はちょっと不自然な感じがしたのはマイナス・ポイントでしょう。内部調査官の“Dr。ハウス”ことヒュー・ローリーの手の内で踊らされていただけだったというオチもちょっと強引過ぎでした。 それにしても、邦題の“ある男のルール”ってなんのことだったんでしょうかね、言葉の響きとしてはカッコ良いですけど。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-02-09 23:33:16)(笑:1票) (良:1票) |
1445. 紳士同盟(1960)
《ネタバレ》 プロットというか設定は『オーシャンと十一人の仲間』に酷似しています。舞台が英国で元将校ジャック・ホーキンスが集めた連中がかつての戦友じゃなくて軍を不名誉除隊となった互いに見ず知らず同士というのが『オーシャン』との大きな違いです。普通ならこの海千山千な男たちが持つ特殊技能や仲間内の確執で話を引っ張るものですが、親玉ホーキンスが飄々としているせいか実に淡泊なストーリー・テリングです。いつもそのいかつい顔を活かしたキャラが多いホーキンスも、こんなにとぼけた役もこなせるとは御見それいたしました。 犯行が露見するネタには「こんなことでばれるか?」とちょっと疑問が湧きますが、あのラスト・カットを見れば「ああこれがやりたくてこの映画を撮ったんだろうな」と思わせるようないい味がありました。 [DVD(字幕)] 6点(2014-01-19 22:24:40) |
1446. 牛乳屋フランキー
《ネタバレ》 天才喜劇俳優・フランキー堺のパフォーマンスを堪能すべし! 日本の映画俳優の中で彼ほどスラップスティックなコメディが上手い人は他にはいないし、今後も現れないでしょう。まあ何と言うか、彼の身体の動き自体がもうコメディのリズムになっているんです。映画自体は他愛のないストーリーですが、二役のフランキーが同時にフレームに映っているところが綺麗に合成されていて、この時代にこんなCG顔負けの技術が有ったとは驚きました。 そしてびっくりしたのが、石原慎太郎をパロった石山金太郎なる大学生の小説家を登場させて徹底的にコケにしているところです。だってこの監督中平康は同時期に『狂った果実』を撮っている人なんですから、ふつうここまで関係者をバカにしますかね。そのおちょくり方もけっこう辛辣で、書いている小説を読まれて「あんた小学校出てるの?」なんて酷評されたりするんです。けっこうこれが中平康の石原慎太郎に対する本音だったんじゃないでしょうか。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2014-01-11 23:26:57) |
1447. リミットレス
《ネタバレ》 脳細胞を100%活性化したら人間なにが出来るか、という命題には「透明人間になれたら何をする?」というお決まりの妄想にもつながる面白さがあります。そこを如何に巧みに映像として表現してくれるのかというところに興味が有りましたが、その才能を使って投資で金儲けに奔走するというお話しとは、ちょっと夢がない様な気がしました。脳細胞をフルに使えることのメリットは記憶や知識の断片をすべて活用できることだとしているのは判るけど、それが投資の成功につながるとはちょっと思えないんですがね、あれじゃほとんど超能力ですよ。 スピーディな映像はハンドカメラを使ったグラグラ揺れる画を多用されるよりもずっとマシですが、脚本のボロを隠すにはこういうスタイリッシュな撮り方は有効です。ブラッドリー・クーパーを追いかけてくる謎の男なんて陰の組織が背後にあるのかと思いきや、まさかボスがあれとは肩すかしも良いとこでした。けっきょくあの新薬自体についてはほとんど説明皆無で、映画の後半は薬をめぐって三つ巴の争奪戦になっちゃいます。その挙句に“脳のシナプスが進化した”というあのオチは賛否が分かれるところでしょう。続編を撮る気は満々という印象は有りましたね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-12-30 11:55:40)(良:1票) |
1448. ザ・ウォード/監禁病棟
《ネタバレ》 精神病院が舞台のサスペンス・ホラーなのでスコセッシとディカプリオが最後に組んだあの映画に似ているなと思い、そこで思考停止してそのまま鑑賞してしまったので、あのオチには「またヤラれた!」と叫びたくなりましたよ。この手の映画はふつうの監督なら色んな映像的な伏線を張りまくるものですけど、カーペンター御大がそんなせせこましい事に拘るはずもなく、客観映像でアレを見せられちゃったらふつうにこれは亡霊系のホラーだと思っちゃいますよね。もうこれは“信頼ならざる語り手”ならぬ“信頼できない監督”とカーペンターを呼びたくなりました(笑)。 映画の撮り方自体はカーペンターらしからぬオーソドックスな洗練さを感じますが、ファンとしてはそんなこじんまり纏まったカーペンターなんて求めていないと思いますよ、少なくとも私はそうです。あなたもいい歳で映画を撮るチャンスは少ないんだから、最後にド派手な花火を見せてください、期待してますよ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-12-27 20:24:23) |
1449. チャーリー
《ネタバレ》 伝記映画としては、チャップリンが自伝のために作家に人生を回想する、最後はオスカー受賞式のところで閉める、など非常にかっちりしたオーソドックスな撮り方がリチャード・アッテンボローらしいところです。正直なところ『ガンジー』の時の様な主人公に対する思い入れは感じられず、平凡な映画と言う印象は否めませんでした。でもこの映画の意義は、ロバート・ダウニー・Jrにチャールズ・チャップリンを演じる機会を与えてくれたことに尽きるんじゃないでしょうか。もう上手い、としか言いようがない素晴らしいパフォーマンスです、さすがに老年期のチャップリンについてはちょっと苦しいところがありましたが。 私生活の乱れで俳優キャリアの低迷時期が長かったのは残念ですが、この人は現在のハリウッドでも屈指の演技力を備えたアクターだと思うんですけど。まだまだ若いし、ダニエル・デイ=ルイスを超えられる可能性すら秘めた人だと思うんですけどね。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-12-26 22:16:30) |
1450. 狂えるメサイア
《ネタバレ》 故双葉十三郎氏の『外国映画ぼくのベストテン50年』という500本の映画を紹介している本の中で、唯一リストアップされているケン・ラッセル映画が本作です。ケンちゃん映画から一本となって、『Tommy/トミー』や『恋人たちの曲/悲愴』ではなくて本作を選ぶという双葉さんのセンスにはびっくりです、この映画のどこが気に入ったんでしょうかね? 音楽家の伝記映画には拘りを持っているケンちゃんですがこの映画ではアンリ・ゴーティエというフランス人の彫刻家を取り上げています。作品が評価される直前に若くして第一次世界大戦で戦死してしまった彼の、20歳も年上のポーランド人女性との破天荒な恋愛生活と創作活動を描いています。この女性を演じるのがドロシー・テューティンで、たしか『クロムウエル』でヘンリエッタ王妃だった人ですが、そこそこ美形だったはずなのに醜女好きのケンちゃんに徹底的にブスにメイクをされてちょっと可哀想でした。ケン・ラッセル映画のヒロインにしては珍しいことに彼女は脱ぎません、その代わりにチョイ役出演のヘレン・ミレンが全裸演技で気を吐いています。当時20代半ばなのに、17年も後で撮られた『コックと泥棒、その妻と愛人』で見せたヌードとほぼ一緒の体型と言うのが、また凄い。若いころからムチムチ豊満だったんですね。はっきり言って本作では必然性の全くないシーンでヌードになっておりもうムダ脱ぎとしか言いようがないんですが、けっこう本人も脱ぐのが好きなんじゃないでしょうか。 デレク・ジャーマンが手掛けたナイト・クラブの頽廃的なセットと踊りなんかはケンちゃんらしさが良く出ていました。ふつうの感覚ではちょっと(大いに?)変ですが、まあこれは彼なりの純愛物語なんだと思いました。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-12-20 20:45:07) |
1451. 合衆国最後の日
《ネタバレ》 ロバート・アルドリッチが撮ったポリティカル・アクションですが、いろいろと突っ込みどころも多い作品です。アカ狩りの嵐を生き抜いてきたアルドリッジの熱いメッセージは伝わってくるんですけどね。■まずバート・ランカスター、味方を殺し過ぎ。金庫を開ける特技を持った男を射殺して後で苦労することになるけど、当直士官が金庫の番号を知っていると判っているなら、始めからこいつらを締めあげて聞き出そうとした方が良かったんじゃないかな。■離れた場所にある装置にキーを差し込んで同時にまわさないとミサイル発射は出来ない。つまりランカスター単独ではミサイルをぶっ放せないわけです。でも襲撃に参加した仲間は刑務所でリクルートしたカネ目当ての連中で、誰もランカスターの真の目的を知らなかったし彼の同志でもない。だから一度は発射寸前まで持って行けたけど、次は当然のごとくポール・ウィンフィールドに拒否されてお手上げ状態。こんな大それたことするなら、リーダーは目的をちゃんと配下に理解させとかなきゃダメでしょ。■政府と軍の不正義を暴き国民を覚醒させるというランカスターの高邁な目論見は判るんだけど、その取引材料が核ミサイルの発射というのはちょっと常軌を逸してるんじゃないでしょうか。もし発射したら間違いなくソ連も撃ち返してきて、けっきょく何千万人も米国民が死ぬことになるでしょう。政府高官も死ぬかもしれないけど、なんで国民が巻き添えにされなきゃいけないんですかね。と考えると、ランカスターはもう立派な狂人だと思います。■チャールズ・ダーニングの大統領は、アメリカ映画とは思えないほどリアルに人間味があって、これは良かったです。エア・フォース1内でテロリストを一人ずつ仕留めたり、戦闘機に乗ってエイリアンを攻撃する様なバカをやらないことだけでも評価が高い。ずっと大統領にため口をきくまるで幼なじみみたいな将軍を見て気がつきました。オマージュなのかパロディなのかは判断に悩みますが、これは『未知への飛行』のヘンリー・フォンダとダン・オハーリヒーの関係と良く似ていますね。ラストの二人の生死は『未知への飛行』とはまるっきり逆になっていますけどね。大統領のために泣くのはこの将軍だけ、他の高官たちは遠巻きにして近づこうともしないというラスト・カットはもう男泣きです。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-12-18 00:06:45) |
1452. 愚か者の船
《ネタバレ》 批評家からの評価も高く群像劇としての完成度は高いけど、なんか小ぢんまりと纏めましたという感じがする作品です。舞台が英米仏の豪華客船でなくて、いかにも二流感が溢れるドイツの客船としたところはうらぶれたムードが出ていて良かったです。 登場人物はみな善人かせこい悪人というわけですが、この連中は“fools”と呼んでしまうにはあまりにも普通の人間すぎる気がします。誰が「君たちは愚か者だ」と言っているのかというとそれは神様で、映画の冒頭とラストで観客に語りかける“神の子”マイケル・ダンが天上の代弁者ということなんでしょう。 この映画のいちばんの悪人は反ユダヤ主義に凝り固まったオーストリア人のホセ・ファラーになるんでしょうけど、彼の演技が魅力的なんで誰も憎む気にはなれないでしょう。シモーヌ・シニョレとオスカー・ウェルナーの悲恋がストーリー展開のメインではありますが、出番は少ないながらもヴィヴィアン・リーのエピソードにはすっかり喰われてしまったみたいです。リー・マーヴィンとのからみとその前後の狂おしいまでの演技、やっぱこの人は凄い女優だったんですよね。 [DVD(字幕)] 6点(2013-12-15 20:08:51) |
1453. 加藤隼戦闘隊
《ネタバレ》 意外にも旧帝国陸軍は広報・プロパガンダに関しては海軍よりもはるかに熱心だったそうです。戦艦大和・武蔵やゼロ戦の存在は国民には秘密にされていたこともあり、実は戦時中に一般国民にもっとも知名度が高かった戦闘機は陸軍の一式戦闘機「隼」だったそうです。この映画はその一式戦闘機の部隊を指揮した軍神加藤建夫中佐の戦歴を描いた戦意高揚映画ですが、単なるプロパガンダ映画と斬って捨てるには惜しい詩情を持っているのは確かです。 この映画のどこが凄いかと言うと、陸軍省後援なんだから当然ですが本物の軍用機を惜しげもなく飛ばして撮影しているところです。そりゃ隼の飛行はたっぷり拝めますが、その他にも97式戦闘機や97式爆撃機、そして鹵獲したP-40やバッファローと言った敵側の戦闘機まで実機を使っているのには驚かされます。中でも眼を瞠るのはラングーン空襲のシークエンスで、隼に護衛された97式爆撃機に敵機が襲いかかるシーンは『空軍大戦略』でハインケルにスピットファイアが突っ込んでくる空撮シーンとそっくりなんです。私は『空軍大戦略』のスタッフもきっと本作を観ていて影響を受けたんじゃないかと推測しています。 藤田進の加藤中佐は彼の最大の当たり役だったことは間違いなく、九州訛りが抜けない独特のセリフ回しがいかにも部下思いで傑出した統率力の持ち主だった加藤建夫らしくて良いんです(もっとも加藤建夫は北海道出身なのであんな訛りはなかったでしょうけど)。 ラストはもちろん史実通り戦死して終わるわけですが、なんとそこは字幕一枚で説明してお終いと言う呆気なさ。その代わり最後の出撃にいたるまで、前夜の部下たちとの世間話や離陸直前まで還りの遅い部下を心配している様子などを10分以上見せるちょっと独特な撮り方をしています。でもそこには不思議な余韻があって、私としては気に入りました。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-11-24 21:41:42)(良:1票) |
1454. 徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑
《ネタバレ》 思えば邦画の歴史の中でも60~70年代の東映で量産されたエログロ映画ほど、徹底して下品で扇情的なラインナップは無いんじゃなかろうか。時代が違うと言っても新東宝なんて子供騙しみたいなもんだし、日活ロマンポルノは比べるのが失礼なほど詩情に満ちた作品が多かったと思います。そんな東映エログロの中でもカルト中のカルトがついにDVD化されるという快挙を成し遂げました、世の中は成せばなるものなんですね(笑)。 だいたい、東大出のエリート社長が「次は牛裂きでいけ!」なんて指示をふつう出しますかね、さすがの牧口雄二監督も眼を白黒させたんじゃないでしょうか。というわけで社長の指令通り牛裂きで血みどろの極致を再現させた前半と、艶笑廓喜劇といった味わいの後半が見事に分離した怪作に仕上がったわけです。でも川谷拓三が絶品の後半パートはそれなりにエログロですが実に味わい深く、牧口雄二もほんとはこういう流れで全篇を撮りたかったんじゃないでしょうか。死んだ捨蔵の声が「これから気ぃつけて生きてゆくんよ」とおさとに語りかけるラストには思わず落涙でした。 [DVD(邦画)] 6点(2013-11-20 21:47:51) |
1455. 地下室のメロディー
《ネタバレ》 フランスのノワールには“仁義”“掟”“男同士の友情”といった臭みが目立つ映画が多いが、この映画には不思議とそういう要素が見られません。ジャン・ギャバンが出所して家に帰りつくと通りの名前が変わっていたという冒頭シークエンスには、そこはかとないユーモアすら感じさせてくれます。でも人物造形やその背景設定には粗と言うかポカが目立ちますね。だいいち、10億フランもの大金を強奪する計画を立てる切実感や成功させようとする高揚感といったものがこの犯人たちから欠けている様に思えます。アラン・ドロンがダクトを這ってゆく様な細部描写にはとても拘りを見せているのにね。でもこのシーンを甦らせた『ダイハード』よりもずっと面白い撮り方でした(ダクトの中にエアコンの空流が吹き抜けるところなんか、もう最高です)。ドロンがちょっかいを出す踊り子やギャバンの女房が伏線の様な存在なのかと思えば全然発展しないキャラでした、ってのも自分としては不満なところです。 と言うわけで、観ての通りでラスト・シーンがすべてというジャンルの映画でした、まあこれはこれで粋な5分間であることは確かです(でもあのカバンが水に沈むかなー、『あやしい伝説』でぜひ検証して欲しいです)。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-11-05 23:53:58) |
1456. 鷲は舞いおりた
《ネタバレ》 映画はずいぶん前に観てて、ぜひ原作を読んでみたいと思ったのに30年は経っているのにいまだに読んでいません。 この映画、良く考えたらジョン・スタージェス監督の遺作になるんですよね。原作のファンからは酷評されていることも判りますが、マイケル・ケインのシュタイナー大佐は観直してみるとそう悪くはない気がしてきました。世の中を達観した様なシニカルなキャラが、彼ら特殊部隊員たちの持っているゲルマン的な滅びの美学に良くマッチしているなと思います。 私の様なマニアはどうしても目が向いてしまうのですが、この映画は軍装や兵器の考証への拘りには目を見張るものがあります。シュタイナーがユダヤ人女性を助けようとするシーンでは、博物館にしかない様な実物の突撃砲まで登場するのには驚かされました(チラッとですけど)。でも?なのはポーランド軍の軍服の下に着ているのが降下猟兵のコスチュームではなく空軍のパイロットの制服であることで、原作もそうなんでしょうかね。 考証はこの様に満足できるものですが、肝心の脚本はけっこう粗い部分が目立ちます。撮影の都合があったんでしょうけど、いくら英軍の輸送機を使っていると言っても白昼に落下傘降下はふつうやらないでしょう。リーアム・デブリンのキャラも、人間味が溢れるというよりもこれじゃあ単なるバカみたいです。バカと言えばラリー・ハグマンたち米軍の描き方で、どうなんでしょうね、これは作品の緊張感を削ぐ悪効果しかないと感じますけど。ラストの改変もあるし、あまり原作の凄さを活かしきれていないという印象が強いです。 [映画館(字幕)] 6点(2013-09-26 21:24:21) |
1457. 俺たちは天使じゃない(1955)
《ネタバレ》 だってクリスマス映画ですもん、ゆる~くたっていいじゃないですか。でも緩いながらも、ボギー、ピーター・ユスチノフ、アルド・レイ、この三人の曲者を観てるだけでなんか幸せな気分になっちゃいます。三人の中でもいちばん良く喋るのがやはり我らがボギーで、彼は寡黙なヒーローよりもこういう肩の力を抜いたしゃべくり芝居の方が似合っている感じがします。 展開は原作の舞台をそんまんま映像化しちゃった様な撮り方なので視覚的な面白さはないですね。後半の殺人劇(?)も、英国のイーリング・コメディの様なブラックな笑いにつながってないのが残念と言えるでしょう。この分野のコメディは、やはり英国映画の方が上手いですね。でもラストは蛇のアドルフくんにも天使の輪っかがついたので、一点プラスさせていただきます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-13 23:01:55) |
1458. ランナウェイズ
《ネタバレ》 ランナウェイズかあ、いやーほんと懐かしいです。シェリー・カーリーとジョーン・ジェットにスポットを当てすぎた構成で、バンドそのものについては薄味な描写なのにはちょっと不満ですけど。いろいろ噂には聞いてたドロドロした内幕にもっと突っ込んで欲しかったものです。 ダコタ・ファニングとクリステン・スチュアートという今が旬の若手が、ここまで今までと違う危ないキャラを演じちゃうところが凄いところです。こういう演技上の冒険を厭わずやっちゃうのは、二人ともなかなかクレバーだということでしょう。そしてこの映画のにくいキャスティングは、いまや伝説となったかつての名子役テイタム・オニールをシェリーの母親役で引っ張り出してきてることでしょう。ミドルショットだけでアップもない本当にチョイ役もいいところなんですが、やはり名子役としてキャリアを始めたダコタとクリステンに「こんなになっちゃ、ダメだよ」と監督が忠告してる様な使い方でした(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-10 20:19:03) |
1459. ザ・クラフト
《ネタバレ》 学園ものホラーとしては、こじんまりとしているけど良くまとまった映画だと思います。魔法対決と言うから『ハリー・ポッター』シリーズみたいな派手な技が観れるかと期待しましたが、人体浮遊で盛り上がっている程度なのが可愛い。その分、他人に呪いをかけるとそれが凄いことになってしまうわけです。 蛇を持ってなんか言いたげにヒロインに近づく怪しい男や、オカルト書店の奥にある開かずの間など、思わせぶりなのにちっとも伏線になっていないなんて脚本書いた人は何をねらっていたのか首を捻ってしまいます。でも4人の女の子の個性がけっこう丁寧に描かれているから、まあ良しとしましょう。個性と言っても、F・バークのキャラと言うかメイクばかりが目立った気もしますけどね(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-08-21 23:28:00) |
1460. リチャード三世(1995)
《ネタバレ》 “1930年代の英国に舞台を替えたシェイクスピア劇”として良くこの映画は紹介されますが、でも違うんだよなー。たしかに流れる音楽や衣装や車は30年代風ですけど、この映画が描く英国は、決して50年前はヴィクトリア女王が統治していた英国ではないわけです。ましてヨーロッパや世界の情勢はまったく物語には関わってないし、いわば“脳内イングランド”とでも言いましょうか、それこそ西暦何年なんてことはなんの意味も持たない実に不思議な世界だと言えます。そんな“脳内イングランド”で繰り広げられる王族たちの死闘は、セリフ回しからしてもシェイクスピアの世界そのものでしょう。 E・ホークの『ハムレット』もそうでしたが、せっかく舞台を現代風にアレンジしたのなら、セリフやプロットももっと弄って欲しかったところです。 I・マッケランのリチャード三世は、もう心底キャラになりきるという才能の素晴らしい見本の様なものです。特に目を瞠ったのは、倒れたリチャードが振り向くと牙を生やしたイノシシの様な怪物顔に変わってしまうカットで、I・マッケランはこれがやりたくてこの映画を創ったんじゃないかと思うほどです。リチャードの最期は、『ダイハード』でのH・グル―バーの死にざまと同じ様な映像なので苦笑してしまいました。そしてリチャードの顔を見てるとどうも誰かに似てると気になってしょうがなかったのですが、観終わって気がつきました、東野英治郎でした(笑)。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-07-19 22:42:38) |