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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2381
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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161.  ひとりぼっちの青春 《ネタバレ》 
70年代以降大作メロドラマを作るシドニー・ポラックがこんな異色作を撮っていたとは驚きですが、本作は間違いなく彼のベストフィルムです。でも、公開時にこの映画を観たら、きっとトラウマになったと思います。大恐慌時代のアメリカが舞台ですから、参加者には食べ物は確保できるという利点がありますけど、1か月以上続くダンスマラソンなんて想像を絶しています。すごい話です。参加者はダンスをしながら(みんな疲労困憊して体をゆすっているだけですが)バンド演奏、司会者付きで、自分たちの人生を観客に見せているような感覚におちいります。そしてレッド・バトンズは心臓発作で死んでしまうは、スザンナ・ヨークは発狂するは、最後にはジェーン・フォンダは自殺(?)してしまいますが、それでも競技は決着がつかずダンスマラソンは続くのです。“They Shoot Horses Don't They?(廃馬は射ち殺すんでしょ?)”は、マイケル・サラザンが最後に言うセリフですが、現在の社会情勢に通じるものがありませんか。悲しいことに、本作で名演技を見せてオスカーをとったギグ・ヤングは、その後史上唯一の自殺したオスカー受賞俳優になりました。
[DVD(字幕)] 9点(2009-04-02 21:26:34)
162.  アラビアのロレンス 《ネタバレ》 
実際のロレンスとは違うという批判があることは承知していますが、歴史上の特異な人物をここまで説得力を持って描いたデヴィッド・リーンの手腕は見事です。なんと言って良いのか迷うとこですが、この映画にはオーラのような迫力があることは確かです。どのシーンも切り取れば一幅の絵画になるような素晴らしい映像の乱れうち、後半のダマスカスで開かれるアラブ国民会議のシークエンスは何度観てもルネッサンス期の宗教画のごとき濃密な映像に感嘆します。ピーター・オトゥールの演じるロレンス像は、歴史上の人物としてはジョージ・C・スコットのパットン将軍、ケイト・ブランシェットのエリザベス1世と並ぶ「他の俳優が演じることが考えられない」名演技だと思います。ロレンスは現在の中東情勢には直接責任はないのですが、イスラエルで彼はどの様に評価されているか興味があります。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2009-03-29 13:28:44)
163.  未知への飛行 《ネタバレ》 
2時間近く上映時間があるのに、全く音楽を使わずに創られた映画というのは珍しいでしょう。それは徹底していて、ほとんど全編が会話と会議の場面ということもあって、効果音としてすら音楽がないのです。そして水爆の爆発を表現した「キーン」という電話回線が熔ける音は、映画史上に残る効果音です。とにかく緊張感が半端じゃない。ヘンリー・フォンダのアメリカ大統領演技は、鳥肌がたつほど素晴らしかったです。私が今まで観た中で一番怖い映画でした。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2009-03-07 20:18:21)(良:2票)
164.  蜘蛛女のキス 《ネタバレ》 
前半は刑務所内での舞台劇を観るような二人の囚人の対話が続きます。途中で明らかになりますが、刑務所長からモリーナは政治犯バレンティンをスパイする役目を負わされています。モリーナがバレンティンに語る空想の映画のストーリーは、バレンティンを裏切ることを命じられている自分の姿を投影しています。空想の中でしか生きられないホモの男と、現実を変革することに命をかける政治犯という全く対照的な二人が理解しあえるようになっていくのが素晴らしい。モリーナはバレンティンから獄外の同志への連絡を頼まれ苦悩の末引き受けますが、当局には密告せずおとりとして釈放されて前半とは打って変わって激動のラストへ突き進んでいきます。私はゲイの映画は苦手ですが、ウィリアム・ハートが演じる身を呈して真実の愛を貫こうとするモリーナの悲劇には圧倒されました。映画史上もっとも切ないオカマの演技です。
[ビデオ(字幕)] 9点(2009-02-17 23:19:29)(良:1票)
165.  ワイルドバンチ 《ネタバレ》 
時代背景を考えると、この映画は1913年の出来事なのです。1913年という年は、あのタイタニックが沈んだ年で、翌年には第1次世界大戦が勃発する様な時代です。パイクたちが使う武器も軍用拳銃コルトガバメントやライアットガンなど20世紀の武器で、米軍から奪った重機関銃まで登場します。ラストでソーントンがパイクの腰から西部劇でお馴染みのコルトピースメイカーを取り上げますが、パイクは劇中でこの銃は一度も抜きませんでした。ペキンパーは、パイクのコルトピースメイカーを消滅したフロンティア、19世紀を象徴させていると思います。ペキンパーのこだわった殺戮描写は、もはや西部劇というより戦争映画のレベルです。何度も観ましたが、6人がエンジェルの村を出てゆくのを村人が見送るシーンが抒情的で大好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2009-02-06 00:22:14)
166.  ジュリア 《ネタバレ》 
ドイツへ行く列車内のシークエンスは、結末が何となく解っていても緊張感に圧倒されてしまいました。結局この映画で何か動きがあるところはこの部分だけで、それなのに全編に漲るサスペンスは見事です。ダシール・ハメットを演じるジェイソン・ロバーツが実にカッコよかったです。「フレッド・ジンネマン監督作品にはずれなし」です。
[ビデオ(字幕)] 9点(2009-02-02 21:23:38)
167.  イースタン・プロミス 《ネタバレ》 
まぎれもない傑作です。「ヒストリー・オブ・バイオレンス」あたりからクローネンバーグは人が変ったように監督としての腕があがってます。どのカットにも緊迫感がみなぎっていて、それが最後まで途切れません。皆さんご指摘のように、全編で使われる武器が刃物だけというのも効果絶大です。この調子でいけば、クローネンバーグがオスカーを獲る日も近いでしょう。
[DVD(字幕)] 9点(2009-01-22 21:36:41)
168.  ジョン・ウィック:コンセクエンス 《ネタバレ》 
相変わらずぶっ飛んだ世界線の本シリーズもついに最終章(なのかな?)に突入です。冒頭で主席連合の上位に立つとされる首長がジョンにあっさりと射殺されてしまいますが、このジョンの行動にはちょっと説明がつかない感じがありました。代わって主席連合のトップに立つのがグラモン侯爵なる若造、彼が本作での最凶ラスボスという位置づけなのですが、貴族ぶった言動をするだけで最後まで銃を一発も撃つこともなくて悪役としては拍子抜けさせられます。そしてジョン・ウィックに絡む旧友二人がどちらもアジア人のドニー・イェンと我らが真田広之となります。盲目の暗殺者イェンの能力は超人と言うよりも超能力者というレベルですが、この人の動作やアクションには華というか男の色気の様なものすら感じさせられます。できればこのケインというキャラは真田に演じて欲しかった気もしますが、イェンの方がハリウッドではまだ格上ということなんでしょうね。まあ真田が演じたコウジというキャラも十分にカッコイイんですけど、彼に割り当てられるキャラはパターンが決まっているような気がするのは、自分だけでしょうか? 凱旋門のロータリーでの銃撃戦や200段の階段落ちなど、今作では体を張った見せ場が多かったかなと思います。キアヌ・リーヴスも、ローレンス・フィッシュバーンがプレゼントしてくれた完全にスーツスタイルの防弾着のおかげで、車にはねられても弾を喰らってもダメージが少ないという設定でしたが、いくら何でもこのスーツ無敵でしょ(笑)。キアヌは基本(?)に忠実で必ず相手の頭や顔に何度も弾をぶち込むのに、なんで敵の弾は頭部や顔面に当たらないのかな?すいません、野暮でした(笑)。 最近は『ミッション・インポッシブル』シリーズやジェイソン・ボーン作品群などシリーズになったアクションものが多いけど、その独特な世界線も含めてこの『ジョン・ウィック』シリーズが私には一番のツボでした。ジョン・ウィックよ安らかに眠れ!と哀悼の意を示すところですが、まさかの第五作目製作の噂が…それじゃあ『アウトレイジ』になっちゃうじゃん!
[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-04-03 22:52:45)
169.  バタアシ金魚 《ネタバレ》 
ヤングマガジン連載中に愛読していましたが、あのほとんどサイコパスみたいで超自己中なカオルが主人公の漫画が、まさかこんなに瑞々しい青春映画になろうとは初見の時はびっくりした次第でした。今となっては貴重な高岡早紀のスク水姿を拝めるし、高岡早紀はもちろんのこと筒井道隆と浅野忠信のデビュー作というのも貴重なところです。生徒の服装や髪形を見るとけっこう平凡で真面目な高校の生徒たちという感じだけど、ビールを飲むし煙草はふかすわ高校生同士でラブホから出てくるわで、まさに今はやりの“不適切にもほどがある!”って感じで、現代の邦画界隈では炎上必至ですな。でも自分も通っていたのはごく普通の高校だったけど、部活の合宿なんかでよくビールなんか飲んでたよな、そんなに目くじら立てなくていいんじゃないかな。当時17歳の高岡早紀の演技はまさに美少女登場!でした、途中で激太りするところで二役(というか三役だったらしい)という演出にはやっぱびっくりしたな。そしてラストのワンカット・ワンシーンで撮られたカオルとソノコのプール内での乱闘は、何度観ても心に刺さります。 この作品は、誰もが覚えのある思春期特有の男の子・女の子のカリカリした感情の表現が今観ても新鮮で、最近の邦画の監督たちにも見習ってほしいものです。監督の松岡錠司はその後ドラマでの活躍がメインになった気がするけど、本作はやはり彼の最高傑作だろうと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2024-03-02 21:16:14)
170.  地獄門 《ネタバレ》 
長谷川一夫が演じるのは、後に出家して僧侶文覚として平安後期および鎌倉初期に活躍した遠藤盛遠です。この盛遠がいくら田舎武士とはいえやってることがムチャクチャ、その行動は匈奴か鮮卑族かと思うぐらい、自分の思い込みで独身と誤解した同僚の妻である袈裟を無理くりに奪おうとして夫や親族までも皆殺しにしようとするヤバい奴です。これを美男スターの代表である長谷川一夫が演じるのはミスキャストのような気がしていましたが、その眼力と風格でこなしてしまったという感があります。そのストーカー侍に狙われるのが京マチ子、この人はケバい顔つきのヴァンプ的なキャラというイメージがありますが、やはり平安美人を演じさせたら右に出る者はいないと断言しちゃいます。『羅生門』を超える妖艶さ、まさに“グランプリ女優”の称号に恥じません。もちろんカラーでスクリーンに映しだされたのはこれが初、さぞや当時の観客は魅了されたことでしょう。大映としてもこれが初のカラー映画、その色彩の鮮やかさは現代の眼で観ても息を飲むほどで、「自分は産まれてからこのかた、こんな美しいものを見たことがない」とまでジャン・コクトーが激賞したというのも納得です。 この映画は同じ『門』でも『羅生門』と較べれば最近では映画ジャーナリズムでも取り上げられることが滅多にない感じですが、後にも先にもアカデミー賞で二部門受賞した日本映画は本作だけなんですよ。決して忘れられてはいけない重要作なんだと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2024-02-26 22:49:03)
171.  ダイヤルMを廻せ! 《ネタバレ》 
グレース・ケリーはヒッチコックが思い描いた理想の女優、女優としてだけなく女性としても良からぬ感情を持っていたとさえ噂された存在、もっとも彼女には一顧だにされなかったけどね(笑)。そんなミューズがヒッチコック映画に出演したのは54年から55年にかけてのたった三本しかないけど、本作ではヒッチが彼女に密かに抱いていた妄想(?)をさらけ出した感がありますね。そんな風に言いたくなるほど本作での彼女の所作は優雅でセクシー、シミューズ姿でスワンに絞殺されかけるシーンは官能的でさえある。女性を絞殺するというのはヒッチの拘りが最も感じられるプロットでその集大成が『フレンジー』となるわけですが、ほんとはグレース・ケリーの絞殺シーンを撮ってみたかったんじゃないかな、実はヒッチコックは変態だったんですよ。 舞台劇が基のストーリーだけにミニマムな登場人物で、ヒッチ映画でも屈指のスピードのストーリーテリングです。また英国が舞台だけに登場キャラがみな上品で優雅、男性陣のスーツ姿も決まってます。グレース・ケリーも優雅で気弱そうなキャラだけど、しっかり不倫はしているというところは官能的ですね。そしてまるで連立方程式のように組み立てられている殺人計画・その破綻・鍵を巡るトリック、この複雑なプロットをこのスピードで観せられたらご都合主義的なところも気にならなくなります。スワンは庭から窓を通って侵入したと警察に思わせるはずでしたが、仮に殺害が成功しても室内に足跡が残っていないことから侵入経路を怪しまれることになったはずで、計画が失敗したからこそレイ・ミランドがケリーに罪を被せることに方向転換したのは咄嗟の反応だったわけですね。いわばプランBですらなかったわけで、これこそご都合主義と言えるでしょう。当時の英国の住宅事情は知るべくもないけど、全然別の家の鍵の見分けがつかないってあるんでしょうかね? 不倫をネタに脅迫してきた男を殺したという容疑でマーゴは死刑判決が下されるわけですが、これは死刑制度がある日本の眼から見てもあまりに厳しい司法判断ですね。けっきょく彼女は執行前日に真相が解明して助かります。これはちょうどこの頃冤罪で死刑執行されたティモシー・エヴァンス事件が英国では大問題化していたので、この悲惨な現実からのガス抜きのような効果があったのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2024-02-14 22:46:44)
172.  赤毛 《ネタバレ》 
製作当時はもう五社協定は雲散霧消しているわけですが、こうやって岩下志麻や乙羽信子が東宝映画で三船敏郎と共演しているのが観れるというのは珍しいことです。明治維新のときの赤報隊の史実をもとにしたオリジナル・ストーリーですが、穿った観方かもしれないけど70年安保闘争をカリカチュアしたような脚本であるような気がしてなりませんでした。官軍=佐藤栄作政権という図式で、宿場に突入してきた官軍が村人と対峙する絵面はまるで機動隊と衝突する学生デモ隊が彷彿されます。その村人たちも代官に反抗していたのは女郎屋の女たちと老師に扇動された若者だけで、半分以上の住民がこの騒動を眺めるだけの野次馬だったというのも意味深です。けっきょく赤報隊として官軍に利用されて果てる権三=三船敏郎なのですが、若者たちに詰め寄られて「理想と現実は違うものだ」と逃げを打つ老師=天本英世のセリフを聴くと、70年安保闘争後の無残な学生運動の成れの果てを予言していたようにすら感じます。 前半はとくに岡本喜八節が快調で、岡本映画常連の伊藤雄之助だけでなく三船敏郎までもがコミカルな演技を見せてくれます。権三が吃音気味というキャラ設定のおかげで、三船は普段は聴き取りにくいセリフ回しなんですが切れ切れに喋るおかげでいつもより耳に入りやすかったです。そして全編で効果的に使われるのが“ええじゃないか”節で、あの踊り狂う群衆の迫力は後年の珍作『ジャズ大名』の前振りみたいに感じました、もちろん今村昌平の『ええじゃないか』よりもずっと早いですね。コミカルな前半から打って変わって悲劇的な結末を迎えるわけですが、後半はちょっとテンポがもたつく感はありました。宿場に潜入していた幕府側の遊撃隊のエピソードは、ちょっと詰め込み過ぎた脚本のような感じでもたつきの原因だったと思います。とは言え個人的には珍しい三船敏郎のコメディ演技は堪能できたかなと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2024-02-11 22:09:40)
173.  マンダレイ 《ネタバレ》 
ドックヴィルの集落を住民もろとも地上から抹殺したグレースと父親およびその手下たち、どうしてか相変わらずアメリカ南部をキャラバンの様に彷徨っていて、アラバマでマンダレイという綿花農場を通りかかる。そこでは今だに黒人奴隷が存在しており“意識高い女”系の気の病が再発したグレースはマンダレイに入り込んで奴隷を解放し、黒人たちに彼女が理解している民主主義なるものを教えて啓蒙して元奴隷たちが自立できるコミュニティを築こうと奮闘するのだが… ローレン・バコールやクロエ・セヴィニーなど『ドックヴィル』から続いて出演しているキャストもいるが、肝心のニコール・キッドマンとジェームズ・カーンの父娘など半分はラース・フォン・トリアーのオファーを蹴ったというか逃げられちゃったみたいですね。逃げなかった面々にしても、ほとんどセリフもない影の薄い役だったのは可哀想。『ドッグヴィルの告白』というドキュメンタリーを観ると、キッドマンなんかはもうトリアーのことボロクソに言ってましたな。代わってブライス・ダラス・ハワードとウィレム・デフォーの父娘となったわけですが、とくにデフォーはジェームズ・カーンより良い味出してました。彼はその後もトリアー作品にはチョコチョコ出演しているし、類は友を呼ぶというか気が合ったみたいです(笑)。 この映画は『ドッグヴィル』よりも、アメリカ合衆国というある意味奇妙な国家の闇というか負の歴史を前面に押し出しているところは好感が持てます。意識高い系の女・グレースの思考原理は学校で教えてもらったデモクラシーの理想そのもので、砂嵐の件など現実を見ようとしない理想論の欠陥が皮肉たっぷりに描かれています。黒人たちにしても俗にいう奴隷根性が丸出しで、”しいたげられた者は清く正しい“というステレオタイプを徹底的にコケにしています。実は“天敵がいなくて食糧・水にも不自由しない環境ではネズミはどこまで繁栄できるのか?”という事を研究した“ユニバース25”実験のことを思い浮かべてしまいました。これは4ツガイのラットが最高で2,200匹まで増えたけど日も経たずに全滅してしまったという有名な実験で、ネズミと人間を同一視するのは不適切かもしれないが、まさにこの映画でのマンダレイはネズミの天国と似たようなものなのかもしれません。またグレースの行動原理とマンダレイの関係は撮影当時の進行形だったイラク戦争の縮図そのものとも言えて、やっぱ欧州人じゃないと撮れないテーマだなとしみじみ感じました。 ラストで完全にドックヴィルの様に父の助けを借りてマンダレイも地上から抹殺しようとしていたグレイスだけど、15分遅れていた唯一の時計のせいで虐殺は回避されます。この時計は劇中で多数決で時刻合わせしたので遅れていたわけで、けっきょく民主主義が住民の生命を救うことになったというわけです、でも決して住民たちはそのことに気づくことはないであろうというのがある意味で痛烈な皮肉ですがね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-12-29 23:07:26)
174.  CURE キュア 《ネタバレ》 
時期的には被っていたかもしれないけど、こりゃ『セブン』に匹敵するような不快感というかおぞましさを観る者に与えてくれる映画ですな。萩原聖人のキャラの異様さは特筆ものですが、とくに劇中何度も繰り返される萩原=間宮の“質問に対して質問で返す”問答が不快感を増幅させてくれます。これは対人関係でやってはいけない相手を不愉快にさせるコミュニケーション上の悪手で、それをここまで計算づくで織り込んだ脚本は秀逸。いろいろとまぶされているメタファーも伏線でもなく、観客に色んな解釈をさせようとするストーリーテリングは、一から十まで説明する凡庸な邦画が目立つ中では光っています。ただ残念なのは間宮がだんだんと単に記憶障害を装っているだけの詐欺師的な人物に見えてくることで、せっかく確立した日本映画史に残るような不気味なキャラ像が薄れてしまった感がありました。ラストの一見何の違和感もないファミレスでの食事風景で閉めるなんかは、凡庸な映画監督にはできない勇気ある撮り方だったと思いました。今まで何本かは黒沢清の監督作を観ていますが、初めてこの人の才気を感じることができました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-12-26 23:38:23)(良:1票)
175.  大殺陣 雄呂血 《ネタバレ》 
伝説の坂東妻三郎版のオリジナルは未見ですが(何でも現在視聴できるのはオリジナルの30%程度らしい)、調べるとこのリメイク版は登場人物たちの設定自体はけっこう変更されているみたいです。いわば『切腹』のような武家社会の不条理が主人公の背景に織り込まれており、一介の武士である小布施拓馬=市川雷蔵が謹厳なサムライから武家社会の掟に翻弄されて剣鬼に堕ちてゆく壮絶なストーリーです。本作の雷蔵は同時期の『眠狂四郎』シリーズと被ってしまいがちですが、狂四郎よりもはるかに深みのあるキャラだったと思います。密かに思いを寄せられていた志乃=藤村志保が自分の追手に手籠めにされそうになって自害するのを見過ごしてしまうところなんて、わが身を守るためとは言っても狂四郎なら絶対にほっとかないだろうな。もちろん激しく後悔はするけど、そうやってどんどん自暴自棄になった挙句の無残な境遇になっている波江=八千草薫との再会、そしてラスト20分の壮絶極まりない闘いになだれ込むわけです。 オリジナル版ではどれくらいの人数だったのかは不明ですが(ジョセフ・フォン・スタンバーグはオリジナル公開当時に上映館に通い詰めて何人斬られたか数えたそうです)、どう考えても本作で雷蔵が相手にした人数は邦画史上空前絶後、ギネス記録に認定してほしいぐらいです。梯子や大八車もよく捕物帳ものなんかで見かけますが、なるほどこうやって使うのか、と納得した次第です。雷蔵は本来殺陣が上手くなかったそうですが、その息を切らして必死に太刀を振りまわすところにはかえってリアルが感じられました。終いには地面に横たわって刀を振り回す、なるほど多人数に囲まれた場合はこうやって足を薙ぎ払うというのは理にかなっているかもしれません、でもこんな殺陣は今まで観たことないです。 一応は敵を全滅させて八千草薫と向き合いストップモーションで終わるというオリジナルとは異なるエンディングですが、勝ったという高揚感にはほど遠いカタルシスなき無常観に満ちた幕の閉め方でした。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-11-30 23:50:55)
176.  シン・ウルトラマン 《ネタバレ》 
“怪獣vs超人バトル”というコンセプトだった元祖ウルトラマンの、“宇宙人であるウルトラマンと異星人の係わり”という隠れテーマに注目した映画化は良い着目点だなと思います。登場するザラブやメフィラスには“外星人”という呼称が使われていますが、ここは個人的には興味深かったところです。ザラブやメフィラスは人類というか日本政府に武力か知力かの違いはあっても特殊権益を求めていますが、これはロシア・英国・米国などが江戸幕府に開国を求めてきた幕末の情勢に似ているところがありませんか。つまり令和の時代に開国と言うか降伏を要求してきたのは、外人ならぬ外(星)人だった!なんてちょっと捻くれた観方かもしれませんがね(笑)。 樋口真嗣が監督なので正直期待感は低かったんですが、どうしてどうして、けっこう見応えがありましたね、庵野秀明が総監督なだけはあります。まさかのウルトラQの怪獣たちから物語が始まり、禍威獣ネロンガと禍威獣ガボラと元祖登場の怪獣の進化形が登場。びっくりしたのはガボラの造形で、頭部が完全にドリルなんだけどなんとそこがパックリ開いて元祖と同じようなひまわりの様な襟が開くところ、こんなこと良う考えつくわ!笑っちゃうのは「パゴス・ネロンガ・ガボラ、どれも頭部や背中の形状が違うだけで首から下の部位はどれも酷似している、まるでアタッチメントしているみたい」というセリフがあったことで、実はオリジナルではこの三体はバラゴンのスーツを順番に改造して撮影されていたというのは有名な話し、マニアは思わずニヤリとさせられる楽屋オチでした。禍威獣の登場はここまでであとはザラブやメフィラスそして偽ウルトラマンとの対決となるけど、やはり強烈だったのは巨大女・長澤まさみに尽きるでしょう。この巨大女のフィギュアを海洋堂あたりが販売すれば、けっこうヒットするんじゃないかな。やっぱこの映画では長澤まさみの存在感が光っていましたね。人間の姿形をしているとはいえ、ウルトラマンとメフィラスが居酒屋で一杯やりながら地球征服の密談をするなんてこれも爆笑、しかも割り勘とはね(笑)。あとメフィラス、お前好きなフレーズが多すぎだ、どんだけ日本語に詳しいんだよ! ザラブやメフィラスは中途半端に退場して地球とだけでなく太陽系自体を宇宙の秩序を守るために消滅させようとするのが、ウルトラマンの同僚であるゾフィーというかウルトラマンの故郷である光の星の意思であるというところは斬新な脚本かと思います。オリジナルでもウルトラマンを倒したゼットンが登場しますが、ゼットンが生命体ではなくマシーンだという設定も良かったな。 ウルトラマンの造形は、カラータイマーが無かったが、エネルギーの消費量は赤い縞の色変によって判るという設定、やはりCGの効用でオリジナル版のスーツの弛みが無い姿は見惚れてしまいますね。飛翔するところもカッコいいけど、飛び立つときの「シュワッチ」がなかったのはちょっと寂しかったかな。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-11-21 23:26:56)
177.  舞妓はレディ 《ネタバレ》 
舞台となる下八軒は京都五花街の一つである上七軒のもじりですね。つまり架空の花街なんですが、ファンタジーを基調としたミュージカルですからセットで撮影されるミュージカルとしては完全に人工的な夢世界の設定でもあるわけです。周防正行の今までの作品には、劇中でのバック・ミュージックの使い方のセンスにはミュージカル風味が感じられていたので、ついにミュージカル映画を手掛けたということには驚きはあまりなかったが、タイトルが『マイ・フェア・レデイ』のダジャレとはびっくり。内容もまさにイライザとヒギンズ教授のストーリーを京都の花街の舞妓に兌換するというアイデアはなかなか奇抜ですな。「京都の雨はたいがい盆地に降る」なんて『マイ・フェア・レデイ』の“スペインの雨”をパロったような歌もありましたが、だんだんと独自の世界線が展開されていたと思います。やはりこの映画は800人の中からオーデイションを突破した上白石萌音の存在無くして成立しないでしょう。その後に紅白歌合戦にも出場したぐらい歌手としても活躍していますけど、その歌唱力は半端ありません。あのテーマソングは、初めて聞いた時から頭から離れない中毒性があります。長谷川博己を始め他の出演者の皆さんもほんとお上手、もっとも高嶋政宏だけはほとんど怪演でしたけどね(笑)。まだ芸能界デビューして間がない頃の上白石は仕込み時代の春子の野暮ったさが似合っていたけど、舞妓になってからの可憐さは思わず瞠目してしまいました、まさしくアイドル誕生です。こういう観る者を愉しませてくれるミュージカル映画がもっと日本映画には必要なんじゃないでしょうか。 YouTubeにアップされている京都花街の動画を観ると、「ここは本当に日本なのか?」と絶句するぐらい外国人観光客であふれかえっています。みんな舞妓や芸妓が現れると群がって写真を撮りまくり、でも彼女らは誰も視界に入っていないかの様に凛とした歩みでお茶屋に入ってゆきます。今や彼女らはファッションモデルで、京都の小路はランナウェイなんだなと感じた次第です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-11-15 23:42:14)
178.  恋しくて(1987) 《ネタバレ》 
いやぁ、何度観てもホロリとさせられる80年代青春映画の金字塔、ジョン・ヒューズでないと書けないストーリーです。日本人には想像つかないようなアメリカの高校生活、生徒たちがグレードはともかくとして普通に自家用車を運転している、自分らの頃は自転車がせいぜい、原付で通学する奴もいなかったな。エリック・ストルツが演じるキースは現代日本で言うところのいわゆるキモオタって感じでしょうけど、イケメンすぎて実感がないですな。この超鈍感男や男依存体質のリー・トンプソンを始めあまり感情移入できないキャラばかりが登場するので、メアリー・スチュアート・マスターソンがあまりにいじらしくて可哀そう。ストルツとマスターソンの関係は幼なじみみたいなものなんだろうけど、あそこまで彼女の心情に気が付かないなんて、この男ゲイなのかとすら思えてきますよ。今は怪優的な立ち位置の名バイプレーヤーであるイライアス・コティーズがやばいパンク高校生を演じていますが、彼にも当たり前ですけど若い頃があったんですね。ストルツの父親(『ビバリーヒルズ・コップ』のタガート刑事です)も息子に自分の主張を押し付けるだけの頑固おやじのようでいて、最後にはいい親父だったことを見せるところはベタですけどやっぱいいよね。泣きながら歩くマスターソンをストルツが追いかけるラストは、まさに感動の名シーンです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-11-12 23:26:27)(良:1票)
179.  コーマ 《ネタバレ》 
『ジュラシック・パーク』の原作者としても有名なマイケル・クライトンは映画監督・脚本家としても活動しましたが彼は生涯で四作しか監督していません。本作はその一本ですけど、個人的には本作がいちばん面白いと思っています。クライトンと同じく医師資格を持つロビン・クックのベストセラーが原作、学生時代に洋書屋に行ったらこのペーパーバックが山の様に積まれていたのを思い出します。医療がテーマですので、まさにクライトンの本領発揮という感じの病院内の描写がリアル。とくにジェヌヴィエーヴ・ビジョルドが解剖死体が詰め込まれた部屋に逃げ込むシークエンスは、さすがにゾワッときました。恋人役のマイケル・ダグラスは、病院内の政治的な動きや自身の立身にしか興味がない様な、いつもの脂ぎったキャラです。こいつが実は病院の闇勢力に取り込まれていて、ビジョルドを裏切っているんじゃないかと疑わせる演出は上手いですね。サスペンス映画としても、ハラハラドキドキ濃度は一級品じゃないでしょうか。でもラストで突然彼がヒーローになる展開だけは、なんか唐突過ぎて解せませんでした。因みに、クライトンが60年代に弟ダグラスと共著で小説を上梓していますが、その時に使ったペンネームは“マイケル・ダグラス”だったそうです、奇遇ですねえ。謎の研究所の目的はなんと臓器の競り売り、謎めいた看護婦の役目が競りのディーラーだったという展開は、笑えて来るほどシュールでした。疑問点としては、いくら大病院と言っても年間で10人以上も脳死昏睡者が発生したら世間でも大問題、そりゃ遺族が黙っちゃいないと思うんですけどね、医療過誤訴訟を山ほど抱えて病院が潰れちゃうのは間違いないでしょう。70年代はアメリカでもまだ医療過誤訴訟は流行ってなかったのかな?
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-10-12 21:18:47)
180.  座頭市物語 《ネタバレ》 
寅さんシリーズには負けるけど、日本映画史上屈指の長寿シリーズの記念すべき第一作です。いい歳して座頭市ものをじっくり観るのは初めての自分、市がヤクザだという事すら認識していませんでした。タイトルロールを観て伊福部昭が音楽担当と知ってちょっとびっくり、でも確認すると全作とは言わずとも座頭市シリーズではかなりの作品に参加していたんですね。時代劇での伊福部昭サウンドは、東宝特撮とはまた違った重厚さがあります。 26作も製作されたので後期のまるで超能力者みたいな市のイメージしかなかったんですけど、本作での勝新太郎はもう惚れ惚れするぐらい深みのある人物像で、その演技には圧倒されます。盲者である市が周囲の事物を感知できるのは鋭い聴覚と嗅覚が成せる業という描写にもけっこう説得力があり、現代的に言ううと市は絶対音感の持ち主というわけですね。意外と居合の技を見せるシーンは少なく、初めて抜くのは開幕三十分は過ぎてから。そして“座頭市と言えば仕込み杖”というイメージがあるけど、本作ではドスを杖代わりにしていて、終いにはそのドスも「平手御酒の供養に埋めてくれ」と言って小坊主に渡して捨ててしまう。こういうところはラストでバッジを投げ捨てる『ダーティハリー』と一緒で、まさかこれが大ヒットしてシリーズ化されるとは予想してない撮り方みたいな感じがします。平手御酒=天知茂の哀愁が込められた演技もまた素晴らしく、自分が今までに観た時代劇での天知茂のベストアクトです。 26本も製作されているのでとても生きているうちに全作観れる気がしませんが、機会がありましたら他の作品も観てみたいと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-09-14 22:23:08)(良:1票)
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