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tottokoさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2000
性別 女性
自己紹介 周りに映画好きな人があまりいない環境で、先日はメリル・ストリープって誰?と聞かれてしまったりなのでこのサイトはとても楽しいです。
映画の中身を深く読み解いている方のレビューには感嘆しています。ワタシのは単なる感想です。稚拙な文にはどうかご容赦を。  

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161.  ウィリーズ・ワンダーランド 《ネタバレ》 
お金に追われて来る仕事は断らないニコラス・ケイジ。近年は出演作のクオリティとともに俳優としての評価が迷走している感がありましたが、自ら製作を買って出てこんな素っ頓狂なB級ホラーを作ってしまうとは。大したもんです。個人的に彼への評価が爆上がりしました。 何しろまれにみるストーリーの内容の無さ。悪魔付きゆるキャラロボットVSケイジ、それのみです。これがケイジが一方的にバカ強いので決着は割とあっさりとつく。じゃあ一体何をもってこのバカ映画が良いのかというと、無言の男N・ケイジのキャラのシュールさに尽きます。 クソがつくほど真面目で潔癖症と思しきこの男、1人で片づけるなんて無理でしょレベルに荒れたテーマパーク内をせっせと掃除し、突然襲い来る人形らに一切ビビることなく、それどころか過剰なまでにぼっこぼこに打ち倒す。 女の子を援けもするけど、休憩時間を遵守する方が優先するという予想斜め上の性格。 もう話の後半になると、このエナドリとピンボール大好きな変なTシャツを着た中年のおっさんに魅入られてること請け合いです。ただし一部の人に限るけど。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-10-10 14:39:53)
162.  レイニーデイ・イン・ニューヨーク 《ネタバレ》 
W・アレンの撮るNYは雨でも趣深い。過剰な湿度が大都会をしっとりと落ち着かせます。 今作、アレンに代わる多弁な文系男はティモシー・シャラメ。美形なので画になります。女の子とのロマンチックな雰囲気も、彼が務めてこそ。 シャラメ演じるギャツビーの周辺で発生する‶男と女のあれこれ”が軽快な喜劇仕立てで描かれ、恋愛哲学者たるアレン監督の面目躍如といったところです。べたつかずドライなアレン節がふんだんに堪能できます。純朴に見えるガールフレンドはなかなかに打算的だし、妻の不倫に取り乱すジュード・ロウがいれば、婚約者の笑い方に限界を感じるギャツビー兄と、愛憎あるあるオンパレードで楽しい。 思いもかけなかった自分のルーツを確認して晴れ晴れと(雨だけど)往く道を急転回してみせるギャツビーが、呆気にとられるくらいに身軽で鮮やかで羨ましいな。 排ガスも、夜中の消防車のサイレンも、娼婦も毒舌の過ぎる女の子も、全部ひっくるめて愛すべきニューヨーク。アレンのニューヨークはアレンにしか撮れない。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-08-20 22:36:27)
163.  MUD -マッド- 《ネタバレ》 
14歳。100%純な子どもではないけど、大人な割り切りや算段もできない時期。ジュヴナイルドラマにぴったりの年齢なのでした。今作はそんな多感な彼らを取り巻く環境、特に地域背景の描き方がとても秀逸に感じました。アーカンソーの片田舎ってだけで‶古き”南部の街がイメージされるうえ、主人公エリス少年の家はミシシッピ川のほとりのボートハウス。アメリカにこんな住環境があるんだ、と驚きます。もっとも行政からは撤去を求められているとのことだけど。 エリスは両親が離婚寸前だし友人のネックボーンも親がいなくて叔父と暮らしており、決して裕福でない彼らの青春もまた米国のリアルなのですね。 14歳の夏にエリスとネックボーンが遭遇する大人たちの人生ドラマ。いつか彼らも齢を重ねてこの頃を振り返ったら、その眩しさと若さに改めて思い至るのでしょうか。ああ年上の彼女にあっけなく振られたな、バカだったな俺。とかマッドって珍しいほどの純情一徹なやつだったな、でもそんな男にも打算てものがあったんだよね今なら分かる、とか30過ぎたエリスならこんな風に思い出すかな。 若いって、幼いって、「分かってない」けどでも理屈抜きに正しい。 ラストに愛も家も永遠不滅ではないのだと知る14歳の夏。ビターな通過点だけど大人へ向かうエリスたちに強さとしなやかさも感じる素敵な作品でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-07-02 18:55:19)
164.  ANNA/アナ(2019) 《ネタバレ》 
美しくて超強い無双のヒロインのアクションもの。ベッソンの十八番だけあって、ベテランならではのこなれた脚本とカメラが流石です。 なにしろ勢いがあるので、3年で無双スパイに仕上がる逸材がヤク中バカ男のところでDVにさらされてたのは不自然に感じるとか、KGBにスカウト(!)されるきっかけが海軍応募フォームだという雑な処理等、細部はほとんど気になりません。まあいいか、という感じです。 時間軸を戻してネタバレしながら展開する話はその都度驚かされて楽しかった。マッチョなKGBとインテリCIAを手玉に取る女殺し屋という構図も小気味よいですが、三者のさらに上を行く御大ヘレン・ミレンがラストをびしっと締めたのにはシビれました。角縁メガネで旧ソ連な髪形。しょっちゅう風邪気味のKGB女上官。この造形がすごく巧い。ルーク・Eが書類を指す手を一々払いのけるんですよね。鼻をすすりながら。酷薄に見えて実は、というのが話の肝です。ああしびれる。 新星サッシャ・ルスはアクションを吹き替えなしで、との志も高く頑張り屋さんのようです。現役モデルだけあって作中の衣装の着こなしやポージングは完全にプロです。この人の顔は角度や動きや服装で別人のように変わるのですね。演技はまだ固いですけどこの顔変化の特性を女優としてどう活かすかが楽しみです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-06-09 16:33:52)
165.  夏物語(1996) 《ネタバレ》 
これぞロメール翁の真骨頂と言いましょうか、よくこんな‶何も起こらないひと月”の話を‶人間を描く”それだけで引っ張って描けるなあ。 ロメール映画はいつでもどの作品でも画が素晴らしく美しい。本作は南仏の碧と紺の二層に分かれた海を背景に、陽射しと容姿端麗な若い男女ですもん。ああ眩しい。 画ヅラは美しいけれど展開している人間模様は少しばかりこじれた(こじれそうな)男女関係。撮り方を間違えたら安っぽい寸劇に堕ちそうな題材です。ロメールはいつもそうだけどさ。 優柔不断な男と彼を振り回す3人の女の子たち。彼女らは皆強気で積極的。フランスの女子ってあんなにガンガン行くのかしら。ガスパールときたらまあ、「どれも選べないわ」とばかり気弱っぽく体の前で腕を組んでああだこうだと理屈を並べる。マルゴにも言われてたけど、恵まれすぎじゃないですかお兄さん。 ロメールの凄いところは若い未熟な恋愛の模様を、今掬い取ってきたばかりのように新鮮な感性で見せること。迷っていじけてこだわって、自意識も強烈。ガスパールのような経験は実際にはなくとも、「たしかにあの頃はこんな感じ」と思い起こさせる力があります。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-06-03 00:17:39)(良:1票)
166.  15年後のラブソング 《ネタバレ》 
中年同士の恋愛もの、とくくるには「惚れた腫れた」感があっさりしていてべたつかず、そこがとても心地よかったです。 アラフォーともなると男でも女でも背負ってきた人生の事情がてんこ盛りで、その分互いに新しい出会いには臆病になるもんですわな。今作では病室でのタッカーの親族大集合の場面がソレで、なんかもう笑っちゃうやら気の毒やら。 主演二人が良いんですよ。イーサン・ホークもローズ・バーンも若々しくて、大人だけど迷走しているところなど共感のツボがたくさん。E・ホークは本作で初めて凄く良い役者に感じました。ハマリ役っていうんですねきっと。 あと、脇を務める熱狂的なタッカーファンのダンカン。この人の、熱に浮かされ気味の空回りっぷりがお話のアクセントになってて巧い作りです。どこの国でも熱心すぎるファンって、対象のアイドルからは(近い気分でいて)遠いモンなんですね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-03-13 23:18:38)
167.  悪い種子 《ネタバレ》 
わたしは‶ハキハキおりこうさん女児”が苦手でして、なんというか子供ながら計算してんなーというのが透けて見えるのがイヤなのです。ところが世間の大人たちからはこういう子は評価が高く、ホメられる存在なのですね。 本作のローダはまさしく典型で父親や大家のおばさんは彼女をべた褒めです。端から見抜いているのは品の良くない庭師のおっさんという。私はおっさんなのだな。 おっさんは果敢にも勝負を挑み、あえなく返り討ちに遭います。そこまで邪悪性を読み取れていなかったのですね。この場面恐ろしいです。 パティ・Mが巧くて、目の笑っていない笑顔とか本音を吐くときの恐ろしい顔つきとか、震えあがってしまいました。母親に追及されてごまかす時の良い子ぶりったら。ぱっと表情を切り替えて甘えて抱きついてくる・・寒気がします。 その寒気と闘うのが実の母親というのがまた可哀想で。わが子への愛情とで板挟みになるナンシー・ケリーも悲壮感たっぷりのやや大仰な演技で見せます。 ところでヘイズ・コードって良くないですね。しょぼくれたラストとオマケは作品には全くの蛇足です。インコの件で大家に死亡フラグが立った時点でエンドマークを出すべきでした。怖い映画としての完成度がより上がったでしょうに。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-12-18 23:47:41)(良:2票)
168.  ハッピー・デス・デイ 2U 《ネタバレ》 
続編はパワーダウン、という定説を覆す実に立派な2作目。B級だからとは決して侮れません。むしろ2作目3作目とコケていくA級大作よりずっと上等と言えるでしょう。 前作に盛り切れなかったディテールをより練り上げてきているのが感心です。というか前作がまるごと伏線です。1作目のエンドロールを見ながら「ところでなぜにタイムループするの?まあいいけど」とちらっと思ったのですが、まさか冒頭から物語の基盤である謎が氷解するとは。ちゃんと用意していたんだ。丁寧な仕事だなあ。 パラレルワールドの解釈も分かりやすいです。今度は時間軸プラス空間もズレる、その中でヒロインが成長する図は前作同様ですが描き方がより洗練されました。母親とのエピソードには不覚にも涙腺が緩みました。ハッピー・デス・デイでまさか泣くとは。 死の描写がキツイと思う向きもたくさんいるでしょうけど、‶爽やかさ”まで獲得した稀有なホラー続編の本作。自信をもっておすすめです。あ、1作目から観てね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-12-04 23:23:48)(良:1票)
169.  駅馬車(1939) 《ネタバレ》 
娯楽映画の大先輩。一体何本の後世作品に影響を与えたか、もはや計り知れない名作でありますね。本作が作品賞を他作品(風と共に去りぬ)に譲った40年のアカデミー賞はほんとに凄いラインナップ。熱かっただろうなあ。 8人にもなる主要人物のキャラ立ちが実にしっかりしています。今観るとステレオタイプにも感じるのは本作をお手本に量産されてきたからでしょう。 クライマックスのインディアン襲撃シーンは‶馬車が速い”ことを体感できます。これはどういうカメラマジックなのかしら。今のカーチェイスを観ているよりもよほど疾走感を演者と共に感じることができます。インディアンが追い付いてきて横並びになった時はとても緊張しました。‶マッドマックス4”を経験した今でも尚。 粋なラストも観客皆を幸せにしてくれる偉大な先駆作。J・ウェインやヒロインがタイプじゃなくとも大丈夫、楽しめます。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-11-20 23:40:31)
170.  天国は待ってくれる(1943) 《ネタバレ》 
ドンファン爺ちゃんが地獄の受付で振り返る一代記。閻魔大王自ら受付やってるんだ(笑)。 というのはさておき、まあ憎めないヘンリー爺ちゃんの恋愛遍歴がキュートに綴られます。お金持ちで容姿端麗、幼少期からモテて困ってます(いや困ってない)、というイヤミ人生を愛嬌のあるユーモアで明るく仕立てたのはルビッチならではのセンス。 1エピソードにつき1回は笑わせられました。爆笑というより、くすくす笑いですね。主人公の祖父がまた一回りやんちゃでホント可笑しい。義理の父母のけんかとその仲をとりもつ召使いとか、息子の女遊びに気を揉む姿がかつての父親そっくりになっちゃってるヘンリーとか、人間観察に優れた書き手でないとこうもたくさん珠玉のエピソードを生み出せないと思います。色々あった愛妻との別れには泣けました。 なんと戦時中の作品なのですね。豪勢な邸内は灯火管制下の我が国とは比べるべくもなく、ただ圧倒されます。そしてお金持ちと一口に言っても、奥方の実家カンザスのお屋敷はニューヨークのヘンリー家と比べるとどことなく装飾が野暮ったい印象なんですよ。このへんの細かさにもハリウッド映画の凄みを感じました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-11-12 23:13:59)
171.  ホテル・ムンバイ 《ネタバレ》 
ホテル・ムンバイの中に連れて行かれたような凄まじい臨場感でした。回廊の中を逃げ惑い、非常階段を駆け下り、背後からあるいは頭上から雨あられと銃弾を浴びせられるような。実話だということで恐ろしさは五割増し、ダイ・ハードを観ていた時の‶ハラハラを楽しむ”心の余裕はゼロです。 そう、マクレーンのような絶対的ヒーローが実話にはいないのです。アーミー・ハマーが手縄をこっそりほどくことに成功しても活躍には至らない。「元」プロ軍人のロシア人ですら丸腰では戦えない。地元警官二人も犯人狙撃に成功しない。この ‶上手くいかなさ”が痛いほどに現実的なのです。 それなりの存在感を与えられていた人物が容赦なく死んでゆく。誰が生き残るか全く読めない。テロのリアルな恐ろしさがここにあります。 犯人らの余りに非道な行いには震えるほどの怒りを感じるけど、こんな凶行に及んだ彼らの目線も織り込んであって考えさせられます。絶望的な格差社会の底辺で貧困にあえぐ彼らの家族。希望したレストランが満席なくらいで機嫌を損ねる金持ちがいる一方で、水洗トイレすら知らずに育つ若者がいる。そしてそんな貧者の心に宗教をもって入り込んで人殺しの駒に使う指導者。悪いのは誰なのか。単純に答の出せない今世紀の大問題をも提起した作品でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-10-16 23:17:26)(良:2票)
172.  ミッドサマー 《ネタバレ》 
これまでのホラーの文法がことごとくハマらない演出が目を引きます。暗さは必須。なので夜に何かが起きることが定番でしたが、本作はほとんど昼間に事が起き、というか白夜の北欧が舞台なのでそもそも「夜の暗さ」をハナから排除しています。 廃墟とか不潔感が一切なくて、明るく清潔。色とりどりの花も木々の緑も人の笑顔も(一見)美しい。この白さ、光源の多さが暗がりよりもいっそう鮮血を禍々しく見せてしまうアンビバレンツ。 ヒロインも絶叫しません。恐怖で声が出るのは、‶それが怖いものだ”と「瞬時に」悟るからなのですね。今作ではF・ピュー演じるダニーは冒頭からじわじわと精神を追い詰められてゆきます。彼氏が信頼に足る人間ではないのではないか、参加者が減っている、変だな変だなと思いながら叫ぶ機会を逸しているのです。 そう、叫ぶというより慟哭する場面が終盤にあります。彼女の嘆きに共鳴する女たち。この芝居がかった正常とは思えない共感反応。親切そうな彼女らが実はガチでヤバイ、と気づいたときはすでに我々もダニーも時遅し。ラスト、完全に精神がぷっつりと逝ってしまったダニーの表情をなすすべなく見つめるしかありません。 監督はかの「ヘレディタリー」で趣味の悪さを明らかにしていますが、今作ではさらに見せ方が洗練されました。美術も一級です。 F・ピューは素朴な顔立ちで下半身がしっかり体型の、ぱっと見骨太健康女子です。それが北欧の白く華奢な腺病質ぽい連中に取り巻かれて、さしもの健康な肉体がじわじわと殺されるように見えました。フローレンスの起用は残酷さを際立たせるのに上手く機能したように思います。 アリ・アスターはもちろん「観なきゃ良かった」系の映画監督ではあるけど、テーマは抽象的ではなく分かり易いホラーです。観る者にやな思いをさせたあげく、自己満足のみの哲学系作品よりはよほど親切と言えるでしょう。現代ホラーの最高点に置くことのできる監督と思います。嫌だけど。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-09-10 23:58:50)(良:1票)
173.  ザ・バニシング-消失- 《ネタバレ》 
先にリメイク版の’93‶失踪”を鑑賞済みでした。枝葉末節を付け加えたせいでとんだ駄作になった米国版がどんな間違いをしたのか、手に取るように分かりました。 主人公の男がなぜ薬物入りコーヒーを飲んだのか、肝のここがオリジナルはちゃんと説明できています。じゅんじゅんと尺の四分の三も使って「真相を知ること」に男が絡めとられてしまっていることを訴えているのですもん。ゆえに殺人者のわなが甘美にも感じられてしまったのだろうと、彼の気持ちを察することが容易でした。 殺人者のサイコぶりの描写も丹念です。何度女性を車に引きこむことに失敗しても諦めない粘着性。誘い言葉を発音まで修正しつつ練習を繰り返す姿はまごうかたなく異常が漲り、観てて震えます。 被害者が奴の手に落ちる再現場面も怖くて上手い。キーホルダーがここにきて伏線として活きる巧みさ。「もう少しで」運命が違う方へ流れたかもしれない可能性多々。外国人でなかったら。「瓦」の文字に怪しむことができたら。「志村後ろ後ろ」じゃないですけど、観ている者にきりきりともどかしい思いをさせるシチュエーションの連続。 映画史のバッドエンド上位に輝くであろう救いの無いエンディング。凄く恐ろしく嫌なものを観ました。嫌なんだけど、その巧さが忘れがたい映画です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-24 23:00:10)(良:1票)
174.  さすらいのカウボーイ 《ネタバレ》 
この独特な詩情、唯一無二な味わい。こんな短い時間の中に男子の放浪への憧憬をしみじみと漲らせて余韻をも残します。ピーター・フォンダというメジャーネームの映画というより、駆け出し前衛作家の手による作品と言われた方がしっくりきます。特にぽわーと直前の映像が残ってかぶさってくる実験的な画とか。 構成も演出もシンプルで、説明を極力削った展開がクールです。どういう関係か分からないけどとりあえず一緒に旅する三人のうち一人が序盤に早々と殺されてしまう。かなりびっくりしましたけど、ここもその後の敵討ちも描写は素っ気ないほど。 全編にわたってトーンが渋めに抑えられています。旅に疲れた主人公の心情と重ねているような静かさ。若きP・フォンダが老成したかのような演技を見せます。妻の指摘は鋭い。「本当は彼と二人で旅に出たい。疲れたから帰ってきたくなっただけ。男同士なら気兼ねも無いもの。女房は色んなことを要求しすぎるものね」 そうなのかも。結婚は男子の翼を折ってしまうものなのかも。ちょっと忘れがたいメンズ・ムービーでありました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-08 22:12:57)
175.  リード・マイ・リップス
仏版トゥルー・ロマンスの感もちょっぴりあるけれど、でも男女の造型がクリスチャン&アラバマとだいぶ違う。カルラとポールは互いにツンデレを繰り返し、自分のために相手をうまいこと利用しようとする打算もあったりでカップルというにはとても危うい二人。こんな微妙な男女関係をサスペンスとミックスさせたラブストーリーに仕上げるとは、さすがにフランス映画だなあと感嘆。 特にカルラ演じたエマニュエル・ドゥヴォスが巧い。見た目は地味な事務員で職場の中でも軽んじられる立場に甘んじています。でもそれは外見だけで、理不尽なことにキレると反社会的行為スレスレ技で反撃をかますぐらい肝の据わったキャラなのでした。地味で非モテな女に案件をリードされて気圧されるヴァン・サン・カッセル、という痛快な構図が二度三度と繰り返され、まあポールもたいがい粗野で横暴なんだけどこの二人なかなか絶妙なバランスをキープしていて目が離せません。 現金略奪のストーリーもシンプルながらサスペンスフルなこと、冷や冷やの山盛りです。全般にわたって演出も構成も無駄が無くすっきりと観られる・・、と言いたかったところですが皆さんご指摘の通り「保護司のエピソードの唐突さ」がいかんとも。説明が極端に少ない分、びっくりの大きさも半端ないのではありますが。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-06-10 23:42:41)
176.  デジャヴ(2006) 《ネタバレ》 
名匠トニー・スコットの勇猛果敢な手腕の光る一本。冒頭の船爆発に至るシークエンスからして迫力あって掴みは万全。鍵を握る女の水死体や留守電に残された自身の声といった謎要素は一級のクライム・サスペンス展開を予想させ、ぞくぞくします。 ところが、トニー・スコットのタクトは凡百が予想する「D・ワシントン探偵のサスペンスフルドラマ」という構図を振り切り、突如SFタッチな‶AI過去モニタリング”をぶち込み、勢いに乗ってタイムマシン(!)にデンゼルを送り込むというおよそ予測不可能な力技を披露するのでした。いや監督アンタ凄いよ。 一言でいえば「荒唐無稽」で余すところなく表現可能なのですが、そんなつっこみは野暮に感じられるほどに監督は自信にあふれ堂々と揺ぎ無くタイムワープで話を完結させました。 「どうだい面白いだろう?あの4日前とのカーチェイスは自信作でね」と熱く語られているような、創作魂がごうごうと燃えさかっている本作。SFよりもサスペンスの方が好きな客(=わたし)にも、とても面白かったです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-05-16 23:10:40)(良:2票)
177.  心の旅路 《ネタバレ》 
なんとまあクラシカルな品の良さ。記憶喪失恋愛モノの原型ですね。展開も着地も予想できるベタっぷりですが、今どきやろうとしても突っ込みが入りそうなほどの奥ゆかしさ。 人物らが皆品下れず、苦労や困難に耐え忍ぶのです。登場時からずっと観客の「泥棒猫」視線を受けてきたキティ嬢の、まさかの潔い身の引きっぷりには驚きました。彼女の株が爆上がりした瞬間です。 そして構成の洗練されていること。古い映画にありがちな「だらだらして退屈」がありません。チャールズの記憶が戻った後はポーラには全く触れず、突然中盤に秘書として場に戻す。(ちょっとドアの画にタメがあるのが良いです)彼女の数年間の苦労についての描写を避け、さらりと台詞で語らせるのも「ああ苦労したんだねえ(涙)」とこちらの想像をかきたてる効果がありました。 何度も期待させてはポーラ(と鑑賞者)をがっかりさせる、じらし術のあんばいも程良かった。邦題でなんとなく敬遠してたけど、これは今も鑑賞に堪えうる立派な古典です。 それにしても妻の姿はおろか、スーツケースもネックレスも不発だったのにタバコ屋の婆さんが記憶の戻るきっかけって。いやなんでだよっとポーラの立場なら思うだろうなあ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-04-09 23:59:41)(良:1票)
178.  少年は残酷な弓を射る 《ネタバレ》 
色んな記事を見るに、衝撃的なこの作品を‶誰の立場で”観るかで感想がずいぶん違うものですね。わたしは子どもを育てた母親であるので、エヴァの身になって観ました。ケヴィンのように難易度の極めて高い子を育てるのは生半可なことじゃあありません。彼女は良くやったと思います。自分のキャリアを続けたい、こんな手のかかる子はしんどい。誰でも抱く辛さです。育児あるあるです。彼女なりに精一杯子に向き合ってるのに、キャパ以上の愛を要求されたってどうすりゃいいのでしょう。 なにせケヴィンはおっそろしく知的レベルが高い。そのうえマザーコンプレックスが強い。彼の母に対する想いは思慕というより執着で、立派なサイコパスといえると思います。あの「時計じかけのオレンジ」アレックス以来の大型物件です。(そういや年齢も同じだ) ケヴィンの狡猾さは幼少時から現れています。母親の失点(骨折事件)は他に漏らさず、秘密を共有しようとする。また、相手によって態度を変える。そんな子は集団の中にはしばしばいますが、たいていの場合大人には見透かされることがほとんど。でもケヴィンは天才的というか悪魔的というか最後まで父親をだまし通すことに成功しています。彼が生来の残酷な性質を見せるのは母親にだけ。捨てずにとってある幼い頃の絵本。求めていたのは母の愛、関心、承認。 ケヴィンの破壊願望がついに臨界点を超えたのは両親が離婚、親権は父親にと聞いたとき。とうとう母に見捨てられるのだと感じたのでは、と推測します。父親のことなどちょろい奴、と軽蔑していたでしょうし妹も憎らしいだけ。世界の全てを破壊してパトカーの中から母を見据える視線は「これでも俺を愛せるかい?」 子育てする全ての親を震撼させる展開でしたけど、エヴァが息子の悪魔性を凌駕するほどの強固な母性を見せるのがこの陰惨な話の唯一の光です。生き地獄に落とされようと、彼女の母性は枯渇することは無かった。かつての若き冒険家は、粛々と息子との運命を受け入れるやつれた母となりました。「分からなくなった」と憑き物が落ちたようなラストのケヴィンの表情が印象的です。 エズラ・ミラーの美貌がケヴィンのキャラクターにぴったりで、同じくどことなく俗人離れした顔つきのティルダ・スウィントンを母親にしたキャスティングの妙が光ります。よく似ているので、ああ親子なんだ、とすっと納得できます。全く別人種顔のJ・C・ライリーが父親というのもまた上手い。彼は最後まで「理解せず」の人でしたからね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-01-23 16:54:21)
179.  イコライザー 《ネタバレ》 
ヒーローが悪者をやっつけるB級モノってあまりタイプじゃなくて、これもさほど期待していなかったのだけどいやいやとても良かった。高得点につられて良かったです。レビュワーの皆さんありがとう。 まず人物造形が丁寧で良いです。D・ワシントン演じるロバートがどういう人間か。出勤前にしてすでに整えられた寝室、きちんと作られる朝食。スニーカーにブラシをかけて時計をチェック。冒頭2分で彼の人となりを説明し尽くす、これら無言のシーンがスマートです。 何かにつけ、行動に要した時間を計る習慣のロバート。彼が世直し的に悪い連中を成敗していくときのカタルシスったらハンパなく、今作の大きな見どころです。 もうすっかりオジサンのD・ワシントン。もっさりした立ち姿で決してK・リーヴスやT・クルーズのようなカッコ良さはないのですが、とにかく頭が切れて攻撃の要点を押さえた無駄の無い仕事をします。説教も殺しもなんという手際の良さ。いぶし銀という言葉がよぎります。時々笑顔を見せるのですが、これがいかにも善人そうで温かい表情なんですよ。傷ついた娼婦も心惹かれるってもんです。 その娼婦役のクロエ・G・モレッツ、人生いっぱいいっぱいの痛々しい演技が見事です。 敵となるロシアンマフィアの刺客の徹底した残酷ぶりも相手として不足なしでした。 思えば、一度も銃を使わなかったロバート。なるほど、彼自身が‶イコライザー(=致命的な武器)”ですもんね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-11-28 00:09:20)
180.  女は二度決断する 《ネタバレ》 
震えながら観ました。D・クルーガーの放つ凄まじい絶望感に。あまりに理不尽な展開に。ラストを見届けた後も震えが止まりません。 あのエンディングをどう思うか、色々なサイトでは是の人もいれば非の人も見受けられます。 痛いほどに思うのは、暴力は人の心を粉砕してしまうのだということ。D・クルーガーが演じるカティヤの真っ暗な瞳。以前は仲良かった友人のめでたい出産も、我が子をあやす友の幸福が逆にナイフとなってカティヤに刺さる場面は、二人の対比があまりに残酷でありました。まるで死者のように感情を失った顔のクルーガーの演技は辛くて見ていられないほどです。 復讐だけをよすがに日々息をしている彼女。犯人逮捕の一報で復讐の糸筋が見えたことで、彼女は戻ってきたのに。 連中だけを死なすこともできたのです。一度はそうしようとしたのです。だけどカティヤの心は修復不可能なほどに、希望を持てない死に体になっていたのでしょう。戦友である弁護士の上訴の勧めにも背を向け、再びやってきた生理にも新しい家族の可能性という希望などもはや抱けずあの決断をしたのだと思うと、私は「時が癒すからがんばろう」とは軽々に彼女に言えないのです。 傷だらけのカティヤをさらに鞭打った被告側の弁護人のことは一生許しません。許しませんとも。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-11-22 23:57:34)
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