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tottokoさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1998
性別 女性
自己紹介 周りに映画好きな人があまりいない環境で、先日はメリル・ストリープって誰?と聞かれてしまったりなのでこのサイトはとても楽しいです。
映画の中身を深く読み解いている方のレビューには感嘆しています。ワタシのは単なる感想です。稚拙な文にはどうかご容赦を。  

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721.  カポーティ 《ネタバレ》 
ノンフィクション「冷血」は稀代のルポルタージュである。その著者であるT・カポーティの人物をなぞろうとすれば、この著作を手がけた5年余りに絞ったのはしごく当然と思う。 本人も認めているように、この作家と一家惨殺犯の一人、ペリー・スミスとは魂のありようが似ている。恵まれなかった子供時代、容姿へのコンプレックス、言葉への敏感な感性、決して埋められない孤独感。 新聞記事で事件を知り、彼らを「飯のタネ」にしようと思いつく作家。地元保安官は眉をひそめ、友人らも若干引き気味なある種の厚かましさをもって殺人犯らと交流を持つカポーティ。「飯のタネ」ではあるのだけど、一方でペリーへの親近感や同情といった自分の心に気付いて動揺する彼。嘘や誇張で死刑囚の気持ちを引き寄せ、かと思えばセレブらとの社交パーティではへらへらと空騒ぎ。 なんとも複雑で繊細な有名作家の姿を、名優P・S・ホフマンは見た目や発声の仕方、仕草に至るまできっちり再現してみせた。取材対象に近づきすぎて、その処刑の場に立会い衝撃を受ける作家。目を宙に泳がせたり、薄皮を一枚被ったように顔つきを捉えどころ無くしたり、表情筋のわずかな動きで作家の心の空疎なことを表現しつくしたホフマンに圧倒された。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-04-21 14:47:42)
722.  フィラデルフィア・エクスペリメント(1984)
いやー、いかにもカーペンターが一枚咬んだ風情の、80年代ぽい屈託の無さでした。機材とかコンピュータ等が「いかにも」な仰々しさなのは御愛嬌としても、「宇宙戦艦ヤマト」のワープシーンのごとく放射線状のラインでもって”時空のひずみ”を表現しよう、とは無邪気すぎて涙が出そう。渦の中に艦や町が浮いていたのには笑ってしまった。 お話も特にひねりの無い真っ当な展開を見せます。返ってきたバレが年寄りになっている、とか実はナンシー・アレンが奴の娘であった、とかワタシのひねこびた発想にはかすりもしないのだった。 当時人気も出演作もトップレベルだった主役の二人。ナンシー・アレンはその後メグ・ライアンにすっかり株を奪われ、マイケル・バレも打ち上げ花火のように一瞬で輝きを失ってしまったなあ。もっとも彼はキャリア通してたくさん仕事は来ていたようだから、人柄が良いのかもしれないな。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2018-04-18 23:54:55)
723.  アリスのままで 《ネタバレ》 
ジュリアン・ムーアが迫真の演技ゆえ、見ているこちらはとても辛かった。思い出せない苦しみ、自分が壊れてゆく恐怖、社会にとって有用でなくなることへの絶望。目の輝きすら徐々に失ってゆくアリス、見守るだけのわたし。苦しい。 観客に苦痛を与えるだけでは映画作品にはならないわけで、監督はお話の軸を主にアリスと次女との関わりに持ってきています。次女はエリート一家の中で一人だけ毛色が違い、キャリア重視のアリスとも水と油のよう。だけど、日常が一変してからは徐々に距離が近くなる、その描写の一つ一つが印象的です。アリスがスピーチの原稿を床に落としてしまう場面。見てるこちらは「うっ」とひるみます。黄色いマーカーのチェック虚しく、同じ箇所を「二度読み」してしまうのではないかと。結果そうならず、感動的な内容のスピーチになるのだけど、もうひとつ気付く仕掛けになっています。ああこれは先だっての次女の意見を取り入れたのだな、と。専門的な話は抜きにして、自分の今の気持ちを語った方が良い、と言っていたリディアを尊重したのだと。 病魔と闘う家族の姿を、飾らずリアルに描き実直であるとは思う。ただ、私は個人的にはアリスに自分の人生の幕を下ろす権利を渡してあげたかった。ここはこの脚本と意見の合わないところで、点数もつけづらいのだけど。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-04-16 17:48:28)(良:1票)
724.  悪魔の棲む家(1979) 《ネタバレ》 
オカルトの原点でもあり、「家モノ」の定義を確立した記念碑的作品とも聞きますが、印象としては怖がらせ要素を盛りすぎと思います。「ポルターガイスト」あり「エクソシスト」あり。虫がいっぱいの生理的嫌悪描写なんかは「サスペリア」のようでもあり。地下に先住民の墓地があるそうだが、先住民の祟りというのは神父の悪魔祓いでも応用が利くのだろうか。そんなことを思いつつ観続けたけれど、神父はエクソシストするわけでもなく、さらにスピリチュアルとはほど遠い現実の刑事まで出てきて殺人事件の観点から口を挟んでくる。これではホラーなのかサスペンスなのか見てるこちらは気持ちの持ち方が定まらず、集中できずじまい。先述の地下室に落っこちたお父さんはコールタール状のモノでどろどろになってましたが、それ何?怖くない。怖くないぞお。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2018-04-15 23:54:45)
725.  飛べ!フェニックス
面白かったです。タイトルから受ける爽やか青春モノのイメージとは地球半周くらい遠い、武骨な男達のサバイバルストーリーでした。ほんと、邦題もう少し重厚なものになんなかったかな。 突然の事故、生命の危機、錯綜する人間ドラマが次々と畳み掛けるように展開し、見てるこちらは身を乗り出しっぱなしでした。 「デキる」名優らを勢揃いさせ、惜しみなくストーリーから消してゆく。こういう怜悧な演出は印象も強烈に残り、このへん「大脱走」が頭をよぎります。アッテンボローもいるしで。(ちなみに彼は今作では副官に甘んじておるのですが、常にJ・スチュワートの意見を伺う自信の無さがかの脱出隊長とは間逆のキャラクターで、もうつくづく演技達者です) 命の瀬戸際にやられた時に露見する人間性。卑怯者もいれば崇高な者も、尊大な者も愚か者もいる。砂漠の中での人間模様に加え、”外部の敵”まで抜かりなく用意されてまったく息が抜けません。技術の低いCGに頼ったりしていない分、映像も製作年から想像されるほど古臭くなくリアリティを保っています。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-04-14 01:08:52)(良:1票)
726.  大統領の陰謀
ウォーターゲート事件の全貌を軸にしつつ、事件を追った若手記者二人の記者魂とも言うべき情熱がお話の大きな柱。さらに味わい深くしているのがW・ポスト紙の主幹、ベン・ブラッドリー氏であります。血気に逸る若手らに「まだ(ネタとして)弱い」とベテランの厳しいダメ出しを食らわせ続け、しかし敵の反攻に遭った時は「彼らを見捨てるな」と新聞社としての旗幟を鮮明にしてみせる。これぞ組織のトップ。演じたジェイソン・ロバーズも度量の大きさを感じさせ、納得のオスカー受賞でありますね。 若きダスティン・ホフマンとレッドフォード、意外にバランス良くタッグを組んでみせました。ホフマンのクセの強さに対し、レッドフォードの柔軟さが上手いこと中和作用したみたいです。ミスを主幹にどやされ、がっくりくる二人はほんとに若くて、ストーリーと関係ないところで感慨を深くしてしまうのでした。 憲法と報道の自由を守る。このワシントン・ポスト紙の理念こそが民主主義のチャンピオンたる米国の礎。"make America great again"と叫ぶ現合衆国大統領へ。アメリカの真の強さはこの映画が示しているのですよ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-04-08 00:30:34)
727.  ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー 《ネタバレ》 
誰がどう見ても破綻確率100%の男女。身分の差はもとより、女は子持ちのうえパトロン有りの風俗業で男は不実ときたもんだ。あーダメでしょコレ。 ところが人間て不思議なもので条件がことごとく合わなくても、「コイツほんとに腹立つ」と思いながらも、”心が惹かれる”という生理現象が起こるのですね。私は女なのでマズイことにルースの気持ちがわからなくもないのだった。 生来がずるくて不誠実で、でも するっと人のフトコロに入り込んでくる軟派男のルパート・エヴェレットはハマリ役ともいえる仕事っぷりでした。アナカンで世間を騒がせた美貌は健在で、良家の子息という設定にもすんなり納まる。さすがです。対するミランダ・リチャードソンも、「そんなに男どもが騒ぐ美人かなあ」と序盤は思いましたが、愛憎に絡め取られて狂気を帯びてゆく様は迫真の演技でした。 彼女だけが裁かれたとは、この映画を観る限り実にやるせない感慨になります。恋愛の沙汰はやはり両成敗してもらいたいものですが。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-04-04 00:47:26)
728.  ファイナル・デスティネーション 《ネタバレ》 
運命づけられた死からは逃れられない。このコンセプトは、かの”オーメン”を思い出させます。あの陰鬱名画をジュヴナイル化したら実にスピーディでライトな展開となりました。半世紀前の映画は陰気にじわじわと怖かったですけど、今作はもう少し陽性?の暴力死であります。なんか運命の神様もムキになっているような。 友人一人目がやられた時の、水がスルスルと引っ込む描写はいらないと思うな。ああなるとオカルトっぽくて悪霊ネタみたくなる。ラストはドリフみたいなコミカルさだし、「怖がらせたい」のか冗談なのかわかんなくなっちゃって、この軸のブレは惜しい。 出色なのは飛行機事故のシーン。あそこはすごく出来の良い恐怖パニック演出で、導入部としてはA級作にも引けをとらない迫力でありました。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2018-03-30 00:18:19)(良:1票)
729.  モダン・タイムス
「機械化された経済社会への風刺」というのが有名な評価だけど、そこはほんの前半だけなのですね。舌鋒鋭い風刺作、というよりはむしろチャップリン十八番の、ほのぼのと元気づけられる作品に感じました。それに名曲"smile"の原典がチャップリン作曲で、この映画にあったとは。なんという多才な喜劇王か。 長引く不況下、必死に生きる庶民の姿は笑いにまぶしてはいてもやはり哀しい。でも実に屈託無く、起き上がりこぼしのようにめげないチャップリンに「元気を出して。笑って。」と言われて、劇中の彼女と同じく励まされる人はたくさんいることでしょう。ラストの二人の後姿は涙腺がじわじわきたせいで、ぼやけて見えたのでした。
[DVD(字幕)] 8点(2018-03-28 00:41:21)
730.  カルテット!人生のオペラハウス 《ネタバレ》 
脚本が何も紹介しなくても、その存在だけで刻んできた人生のひだや葛藤を醸し出すことのできる英国ベテラン俳優の実力を思い知らされます。逆に言うと彼らの存在におんぶされっぱなしのスクリプト、ともいえます。何せ「歌姫」として名高かったマギー・スミスの、その「音楽家」たる姿が一切示されないんだもの。歌っている姿は練習するとこが一瞬だけ、ついにはラストステージ上でも披露されることなく幕を閉じるというぶん投げぶりです。いや、やっぱりそこは芸事に人生を捧げてきた人たちが昇華する瞬間として、輝きを放つ舞台を設けるべきでした。我々も目撃者になりたかった。たとえ口パクでも、M・スミスだって演技者として歌姫像をまっとうしたかったはずでは。一見、しみじみといい話のようでいて、「元音楽家」にした必要性があまり無かったような。期待した音楽要素にスカされた感が残っちゃった。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2018-03-25 01:34:45)
731.  ラストベガス
ギャラ高なベテラン俳優を4人揃えました、っていう豪華な画ヅラ(だけ)が売り。元気なじーさん達が余生でバカ騒ぎというライトな話なので芝居も簡単。みんな小手先でやってのけてる感じ。バイトですか。 各人はちゃんとキャラ立ちしているし(ほんとそこはさすが)各々の人生描写も浅いながらそつなく抑えているので、まあ退屈こそしないんだけれどもいかんせん話がベタすぎ。この手の「まだ若いもんには負けん」的な話ちょっともう飽きたかな。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2018-03-22 00:02:54)
732.  JAWS/ジョーズ 《ネタバレ》 
御存知、スピルバーグがその名声を決定的にしたパニック映画の金字塔。数年ぶりに観ても面白い。“怖がらせ”にあたって、人の生理を熟知したかのような音楽やカット割り。「まさか」という気の持たせ方の技巧が洗練されているのです。船底からのぞく人の顔、不意を突いて出現する巨大ザメの迫力、その都度腰を抜かすほどびっくりしたものです。 水面下で近づくサメを「樽」で視覚化した手法もうまい。ぱっと見「樽」なんだけど、こいつがけっこうな速さで近づいてくる恐怖ったら。あえて観る者の脳内で「サメ」を想起させる、遠まわしでいて効果的な見せ方。うーん凄い。 さらに特筆なのは男達のドラマが胸熱に交錯する、物語性の高さですよね。遊泳禁止を訴える署長と学者は二人とも島外の人間で、経済優先の町長らと対立する図式は納得ですし、船に乗ってからの三人が角突き合いながらも徐々に(酒の力を借りながらだけど)戦友となってゆく描写も的確。特に人生を「vs サメ」に捧げたクイント役のロバート・ショウは圧巻。こういう武骨な俳優さんを近年見かけなくなったなあ、としみじみと思いました。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2018-03-18 23:17:43)(良:2票)
733.  コネクテッド
どんどん展開してゆくノンストップ感とか、派手なカースタント、すんなりとは落とさないクライマックスなど、娯楽作魂を熱く感じる作品です。何でも過剰気味なので、ご都合主義もやや濃い目。観ていてここをスルーできるかどうかで、楽しめるか否か人によって別れるとは思うけど。 主人公は常に動いていて状況がどんどん変わる忙しさ。にも関わらず、彼のキャラクターや置かれている人生状況等が手際よく説明されているあたり、脚本が巧みなのでしょう。オリジナルの「セルラー」も観てみたい。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-03-15 23:54:14)
734.  ロンドンゾンビ紀行 《ネタバレ》 
年寄りが年甲斐も無く銃を片手に敵と闘っちゃう趣向がほんとイギリスっぽい。じーさんもばーさんも武闘派。特にホーム園長のアラン・フォードのかっこ良いことったらない。ああなるべきだなあ人は。気概が人を作るのだ。ああ、よもや非業の死を遂げるのか、と涙ながらラストシーンを見守りましたが、次の瞬間快哉を叫ぼうとは。いやあ素晴らしい場面でした。 序盤の銀行強盗のくだりは、そうですねちょっと長いかも。メインのゾンビを客は待ってるので強盗が上手くいくかどうかは二の次ですしね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-03-14 01:22:29)(良:1票)
735.  ボーダーライン(2015) 《ネタバレ》 
ブラジル、南ア、メキシコ・・、麻薬戦争ものは色々観たけれど、殺戮描写がどんどん酷くなってゆく。ショックを通り過ぎて、げんなりの段階に私はなっていたところ。本作も、死体が次々とむごたらしく晒され続けて凄惨場面のオンパレード。残酷描写合戦になってしまうのか?と危惧したけれど、デル・トロとエミリー・ブラントという相反する柱を二本置いてしっかりとドラマにしました。 無秩序社会に染まって私怨で動く元検事と法治理念を捨てないケイト。ケイトはFBIではリーダーを務めていた、経験値の高い捜査官なのにメキシコマフィア相手の現場ではまるで女子学生のごとき扱い。そこがいかにヤバイか、端的に伝わります。エミリーは知的美人の女優さんですが、ほぼ全編すっぴんでグレーの丸襟Tシャツ姿で通し、ボサついた髪に顔あざをさらす、敢闘賞ものの熱演でありました。しかし相手はデル・トロ。言葉少なくともにじむ不気味さ、闇の気配。圧巻の殺人者な佇まいでした。(もっとも、同じ苦悩でも前へ進もうともがいていた”トラフィック”の彼の方が、今作の問答無用殺戮マシーンより私は好みですが)。 近づいたり離れたり、距離感が微妙にめまぐるしい二人。ラストは決定的でした。ケイトに合法捜査のサインを強要するアレハンドロ。我々も問われます。お前は法の理念に殉ずることができるのか、と。 かくして、ケイトの心はばきばきに折られ、アレハンドロが圧して終わるようにも見えるのですが。 でも、その直後丸腰のアレハンドロに向けた銃をケイトは下ろしました。僅かに残った彼女の信念の意地にも感じられ、それはそのまま監督の意志なのかな、と思いました。
[DVD(字幕)] 7点(2018-03-09 00:43:20)
736.  上海の伯爵夫人
クレジットに”written by Kazuo Ishiguro" とあって、おおなるほど、と膝を打ちました。抑制の効いた、品のある佇まいはまさにこの作家の筆致です。第二次大戦前の上海租界を舞台に、凋落したロシア貴族と元米国人外交官らが織り成す物語など、この人以外に誰が書けましょうか。 再現された上海の混沌として退廃なこと、時折挟まるロシア貴族の輝かしい時代の回想場面。猥雑さえ甘美な映像美に代える監督の手腕が冴えわたり、充足した視覚体験でありました。 元外交官のR・ファインズも伯爵夫人のN・リチャードソンも暗躍する日本人工作員の真田広之も、皆各々の矜持を維持して生きる様が高潔で観ていて心地よいのです。役者がみなハマった良いキャスティングだと思いました。 全編淡々としているようでいて、目を凝らすと底意地の悪い義母や義姉らはソフィアにとって人生の大きな棘だし、松田氏の怪しい動きにも心乱されたりと、水面下で大きなうねりは起きているのでした。クライマックスの群集混乱シーンは圧巻です。 そして忌々しいロシア貴族姉妹の余りの非情さに腹煮えたぎったワタシは、このラストに心から満足しました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-03-07 00:49:37)
737.  フローズン 《ネタバレ》 
ソリッド・シチュエーションのひとつでありますが、今作なかなか出色だと思うのですが。気付けば四角い箱の中に閉じ込められているとか、気付けば汚いトイレの中にいて眼前に死体ありとか、家にサイコパスがやって来るとか、これまで数々の“シチュエーション”があったけど、いずれも「現実に起こりうる」度が低い。そういう点では本作の度数は極めて高く、私は大いにビビりました。「うわあ、弱ったなあ」と。リフトから見えるスキー場の光景、すなわちゲレンデに森、鉄基が等間隔に並ぶ様は見慣れたものだし、宙吊りリフトの安定感の無さ=風に吹かれた時のけっこうな揺れやバーの冷たさまでが伝わる、この臨場感はかなりのものです。 そして各人に問われる「あなたならどうしますか」。私は飛び降りる派だったです。すぐ下が深雪に見えたんだもの。ああこれで私はこの話から消えました。ショック。前出レビュワーさんの「服を繋げて高さを稼げ」には目からウロコです。 あと、日本のスキー場には狼が生息していないことも切に希望します。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-03-04 00:37:01)
738.  雨月物語
私は日本人ですので、外国映画祭の審査員ほどにはジャパネスク・ロマンに「おおっ」とシビれたりしないのですが。でも、この映像の幽玄なこと湿度の高いこと、目を瞠りました。ストーリーは「まんが日本昔話」をいくつか合わせたようなもので、驚くほどの展開は無いんだけれど、件の名アニメを実写したらこうなるんだろうなあと思わせるほど雰囲気が似ています。 廃屋だったはずの朽木屋敷に誘われ、いつしか凛とした豪邸に落ち着いているとき、こちらもいつの間にやら幻惑されているのです。明かりの灯る夕刻や、先代の兜の発する気や、妖女そのものの京マチ子らに金縛りに遭わされました。怖く美しかった。 戦が庶民らにとっていかに苛酷であったか、その描写も容赦なく厳しい。里に残した妻が槍の犠牲になる場面は俯瞰ショットで音も無く、素っ気ないけれどとても恐ろしい。 妻が遭遇した残酷さ、弟夫婦らが辿る愚かさと不条理、そして主人公が出会う異界。「昔話」のテーマがてんこ盛りの、見事な映像作品でありました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2018-02-27 00:12:43)(良:1票)
739.  クーパー家の晩餐会 《ネタバレ》 
ちょっと出来の悪い群像劇ですねえ。各人物の担うパートの内容が浅すぎです。何故妻は夫を、娘は母を、妹は姉を嫌うのか、そこが描かれない。「仲が悪いです」という設定のみが提示され、片方が不機嫌に怒っている様子だけ見せられるのです。ダイアン・キートンはそんなに悪い妻にも母にも見えないですよ、こちらにしてみれば。 各人の思いが収斂してゆく様が群像劇の醍醐味なのに、何考えてんのかいまいち伝わらないキャラ達のせいでディナーの集まりの席も今ひとつ盛り上がらない。 あろうことか、各者の「わだかまり」が終盤にいきなり融和する、というほぼ破綻に近い脚本には非常に驚かされました。なぜダイアン・キートンは突然アフリカ行きに賛成したの?40年も反対してたのに。ティーンエイジの孫は労せずして彼女が出来、爺さんの惚れたウェイトレスはバツ一中年息子と良い雰囲気に、って一体なんでそうなるんだ。徹頭徹尾、物語に説得力が無い。 オリヴィア・ワイルドが新恋人を追って廊下を走る場面。蹴散らかしたバラがスローで散るあそこ、あれはドラマチックな演出のつもりなのでしょうか。人様のお見舞いの花束だろう、あの花は。この作り手のセンス、どうなんだ。公衆の面前で押し倒すほどのべったりキスシーンが多いのにも辟易させられました。そこ、病院の待合室だよなあ?どうなのこれ。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2018-02-23 00:44:57)(笑:1票)
740.  ラスト・ショー 《ネタバレ》 
50年代のテキサスが舞台。舞う砂埃。プールバーと映画館だけが娯楽という田舎。そして若者はやっぱり閉塞している。狭い共同体の中でせっせと恋情をもよおし、だけど色恋沙汰では未来は拓けない。お金持ちで美人の女の子は都会へ行くし、友人は軍隊へ。頼れる先人は死んでゆき、澄んだ魂の知的障害の子は無残な最期を迎える。膠着した現実を打破できぬまま、一人取り残されたソニーが向かうのはかつて不倫してたコーチの妻であるオバサン。なんてこった。こんなにやり切れないものか青春て。苦い苦いどこまでも。 この後アメリカはベトナム戦争を経験し、80'バブルもやってくる。ソニーはその頃どうしていただろう。 21世紀の今格差は広がり、アメリカの田舎の若者は車も持てなくなっている。繰り返す時代の流れ。71年当時に20年前の世相を描いたこの作品は全く不変の青春を見事に切り取ってみせ、少しも色褪せていない。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-02-16 17:57:25)(良:1票)
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