ターミナル の やましんの巻 さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > タ行
 > ターミナル
 > やましんの巻さんのレビュー
ターミナル の やましんの巻 さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 ターミナル
製作国
上映時間128分
劇場公開日 2004-12-18
ジャンルドラマ,コメディ,ロマンス
レビュー情報
《ネタバレ》 別にトム・ハンクスが出演して、「空港」が重要な舞台になっているからと言うんじゃないけれど、この映画はやはり『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』との関連で語られるべきなんだと思う。設定も、物語にも、何のつながりはない。でもこの2本は、ひとつの〈主題〉において連続している。つまり、〈父〉という主題において。

あの作品のディカプリオ演じる主人公は、実の父親を“捨てる”ことで、トム・ハンクス扮するFBI捜査官という理想的な「父親(的存在)」を得る。つまり主人公は、父親を心の中で「殺す」ことによって、ようやく立ち直ることができたのだった(その後、主人公の父親は本当に死んでしまう…)。そして今回はトム・ハンクスが「息子」を演じ、亡き父親とのある“約束”を果たすために、空港内で何ヶ月も足留めを食らうという不条理な悲喜劇をサバイバルしていく。あきらかに『キャッチ・ミー~』で見捨てた父親との“和解”こそが、この映画ではめざされているのだ…(そう考えたなら、なぜキャサリン・ゼタ=ジョーンズの客室乗務員とのロマンス部分があれほど“淡白”な描かれ方だったかが、納得できる。あの老インド人同様、彼女もまた「自己犠牲」によって主人公を救う、人間の“善意”の象徴であり、こう言って良ければ主人公の「主語天使(!)的存在」として配されていたのだと)。

少年時代、母親が弟と妹を連れて家を出たというスピルバーグ。「自分は捨てられた」、という悲しみと、残された父親との確執は察するにあまりある。そして彼は、そういった心象を常に密かなモチーフとして、自作品にしのばせてきた。特に近年の作品には、ますます私小説ならぬ「私映画」的傾向が色濃くなってきたように思える(たとえば、“母に捨てられた子ども”の物語としての『A.I』…)。しかも、それをあくまで大ヒット狙いの商業映画として成立させようとしているところに、ヒットメイカーとして宿命づけられた彼の“困難さ”があるんだろう。でもぼくは今回のこの映画を、ひとりのアダルト・チルドレン(!)だった監督による、おかしくて悲しい、けれど「救い」に満ちた美しい〈ファミリー・ロマンス(家族の精神史〉だと信じて疑わないのです。
やましんの巻さん 8点(2005-01-21 17:26:02)(良:2票)
やましんの巻 さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2021-05-18ワンダーウーマン 198410レビュー5.92点
ワンダーウーマン10レビュー6.52点
2016-03-29アメリカン・スナイパー10レビュー6.94点
2014-10-29マネーボール10レビュー6.86点
2014-10-28ホワイトハウス・ダウン10レビュー6.58点
2014-10-22カウボーイ&エイリアン7レビュー4.74点
2014-04-05ラッシュ/プライドと友情10レビュー7.45点
2014-04-02ゼロ・グラビティ6レビュー7.63点
2013-11-22ペコロスの母に会いに行く10レビュー6.76点
2013-11-20三姉妹~雲南の子10レビュー7.75点
ターミナルのレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS