風立ちぬ(2013) の まいか さんの口コミ・感想

風立ちぬ(2013) の まいか さんの口コミ・感想
作品情報
タイトル名 風立ちぬ(2013)
製作国
上映時間126分
劇場公開日 2013-07-20
ジャンルドラマ,戦争もの,アニメ,伝記もの,ロマンス,漫画の映画化
レビュー情報
宮崎アニメのなかで、もっとも美しい作品ではないかと思います。そこに「悪」の要因があるにせよ、その美しさを讃えずにはいられません。もっとも愛があふれた作品だろうとも思います。しかし、その愛こそが、大いなる「悪」なのでしょうね。ひたすら「善」を求める観客には拒絶されるでしょうが、そもそも美や愛は、かならずしも「善」であるわけではなく、ときとして大いなる「悪」だと言わざるをえません。宮崎本人の言葉を借りれば、この映画にあふれる美や愛こそが悪への誘惑=メフィストフェレスです。
まごうことなき「善」の映画など存在しない。それどころか、武器をもって闘ってきた宮崎アニメの過去作品のすべては、たえず「悪」を美化(あるいはエンタメ化)しつづけてきたはずです。その意味では、むしろ『風立ちぬ』こそが、その矛盾にもっとも向き合った作品だといえる。鈴木敏夫が意図したように、この矛盾にこそ、宮崎駿が描かねばならない真実があったのだといえます。
戦争技術者をあからさまなマッドサイエンティストとして描く紋切り型にくらべれば、むしろ慎ましく美しく生きた戦争技術者の生き様にこそ、真実の一端があるのかもしれない。一部のエリートが民衆の善良な生活を破滅させたとする紋切り型にくらべれば、むしろエリートの美しい技術を愚かなナショナリストたちが応用したという醜悪な実態にこそ、真実の一端があるのかもしれません。
では、科学技術者はいったいどうすればよいのか? その答えが映画のなかに用意されているわけではありません。強いていえば、その答えは、破壊し尽くされた飛行機の残骸を見つめる観客のほうに投げかけられています。
もともと久石譲の音楽は好きじゃないけれど、この映画の音楽は率直に美しく感じられました。荒井由実の曲も、死と飛行機の描写にティンパンアレーの透明なサウンドが重なり、さらには彼女のコンサバな姿勢までもが相俟って、まるであらたに意味付けされた楽曲のように生まれ変わっていました。
まいかさん [DVD(邦画)] 9点(2020-01-13 23:59:12)
まいか さんの 最近の口コミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2025-05-04ジュラシック・ワールド8レビュー6.13点
2025-05-03君たちはどう生きるか(2023)8レビュー5.90点
2025-04-26スター・ウォーズ7レビュー8.08点
2025-01-11花束みたいな恋をした8レビュー6.89点
2025-01-09セーラー服と機関銃7レビュー5.25点
2025-01-05ミステリと言う勿れ6レビュー6.85点
2024-11-16トップガン マーヴェリック9レビュー8.00点
2024-11-09トップガン6レビュー6.32点
2024-09-15記憶にございません!7レビュー5.51点
2024-09-15今日から俺は!!劇場版7レビュー5.73点
風立ちぬ(2013)のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS