1.《ネタバレ》 「なまけ怪獣 ヤメタランス登場」のエピソードである。TVドラマの脚本家として著名な小山内美江子氏による脚本で、怪獣を操る宇宙人の名前がササヒラーだったのは、小山内氏の本名が笹平だからというのは今回初めて知った。個人的には宮城県名物の笹かまぼこのイメージがある。
脚本家の名前としては著名だが、基本設定に一貫性が欠けるようなのは非常に困る。主人公の当初の見解によれば、宇宙人は「地球人の労働意欲をなくさせる病原菌」による「怠け病」を蔓延させているとのことで、これによって人類文明を崩壊させて地球を乗っ取るつもりと思われた。例によって宇宙人1人だけの小スケールの侵略だが、確かに1人でもできそうな方法ではある。 しかしその方向性がなぜか最後まで貫徹せず、途中から少しずつ話が違って来て変なことになる。最終的には「食いしん坊」の怪獣に食うだけ食わせて巨大化させ、その重さで地球を破壊するのが宇宙人の意図だとされていたが、それでは怠け病は関係なかったではないかということになる。子ども向け番組なのでコメディ調のエピソードがあること自体は構わないが、最低限の筋は通してもらいたかった。 なお怪獣は悪い奴ではなかったようだが、少年との関係性やその変化はあまり深掘りされず適当な扱いに見える。また寺院で撮影して鐘がゴーンとかいうのはどういう効果を期待したのか不明だった。
ドラマの面では、隊長が最後に言った「教訓」に学べというのが視聴者へのメッセージだったらしい。要は戦後に高等教育が大衆化する中で息の詰まりそうになっていた子どもらに向けて、現実には社会の全部が息苦しいわけでもなく、今回の主人公を見習って適当に息抜きすればいい、と勧めていたくらいに思っておく。 もう一つは、社会を地味に支える人々がいるからこそみんなが生きていけるのだ、という社会科教材的な意味があったかも知れない。MATは少数精鋭で本来任務が優先のため、市民への対応については警察と連携して当たることになっていたらしいが、今回はその警察その他の社会機構が機能せず、水道工事の苦情までがMATに寄せられていた。それはさすがに市民の側が甘え過ぎだろうが、MATが真面目に応対していたのは感心させられる。千葉県松戸市役所の「すぐやる課」(1969発足)の影響か。 【かっぱ堰】さん [DVD(日本ドラマ)] 4点(2025-05-10 16:03:19) 《新規》 |