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FARGO/ファーゴ のクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 FARGO/ファーゴ
製作国
ジャンルサスペンス,コメディ,犯罪もの
レビュー情報
《ネタバレ》 1996年にアカデミー脚本賞を受賞した名作『ファーゴ』とタイトルと舞台を同じくしているものの、映画版と交錯する設定を一点だけ持つ以外は年代も登場人物も別物であり、本作は続編でもリメイクでもありません。そのため、映画版を未見であっても本作の鑑賞にあたって特に問題はなく、名作の看板を借りながらも間口の広い作品となっています。
主人公は田舎町で保険セールスマンをやってるレスター・ナイガード。レスターは40歳になった今でも高校時代のイジメっこから侮辱と暴力を受け続け、しかもそれに対して何もやり返せないという、超絶気の弱い男です。ただし一定の自尊心は残っているのか、「あんな奴と揉めても仕方ないから好きにさせてんだよ」なんて言って自分自身を納得させています。そんなレスターですが、病院の待合室で出会った謎の男(正体は殺し屋ローン・マルヴォ)から「あんた、そこまでされて怒らないの?」と言われ、「そのイジメっこ、代わりに俺が殺してあげようか」と冗談なのか本気なのか分からない提案を受けます。そして数日後、イジメっこが本当に殺されてしまうので驚くのですが、この一件をきっかけにレスターは本能のままに生きるマルヴォに感化され、それまで抑え込んできた自我が一気に開放されてどんどんバイオレンントな方向へと突き進んでいきます。稼ぎが悪いだの、役立たずだのとさんざん自分をバカにしてきた奥さんを撲殺し、イジメっこの巨乳の奥さんを寝取り、イケメンで金持ちで美人の奥さんをもらってる自分の弟を犯罪者に仕立て上げようとします。まさにやりたい放題なのですが、視聴者はアウトローと化したレスターの姿からある種の爽快感を得られます。
平凡な中年がバイオレンスに目覚めてむかつく連中を片っ端からなぎ倒していく様は『ブレイキング・バッド』のウォルター・ホワイトに通じるし、ルールや常識に囚われず自由に生きる殺し屋マルヴォは『ハウス・オブ・カード』のフランク・アンダーウッドを彷彿とさせます。むかつく相手を容赦なくなぎ倒すことで視聴者をスカっとさせるという傾向が近年のヒットドラマに見られますが(日本で大ヒットした『半沢直樹』も同様)、本作はその傾向をきっちりと踏まえて作られているので面白くて当然なのです。
さらには、イジメっこは隣町のマフィアに関係した人物だったことから、その殺害を抗争と勘違いしたマフィアが殺し屋を送り込み、殺し屋vs殺し屋の血みどろの展開を迎えます。ボンクラ中年が覚醒する物語と、殺人マシーンが暴れ回る話という、僕らの大好きなものがふたつもぶちこまれた超贅沢な内容で、中盤以降はドラマからまったく目が離せなくなります。
また、コーエン兄弟は脚本や演出に直接関与していないものの、兄弟特有のブラックなユーモアは本作でも健在であり、上記の通りかなりハードな内容でありながら語り口には独特の間があって、とんでもないところで笑わせてきます。この辺りの空気感の作り方も絶妙であり、秀作が多い近年の海外ドラマの中でも、本作は頭ひとつ抜けた出来だと思います。
ザ・チャンバラさん [DVD(吹替)] 9点(2016-05-25 00:33:03)
その他情報
作品のレビュー数 1件
作品の平均点 9.00点
作品の点数分布
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