1. ホランド
《ネタバレ》 これは理解するのが難しい作品でした。 ストレートに夫は連続殺人犯でジオラマで自らの成果を再現し保存することで征服欲を満たすと言うか最高の快楽を得ているというサイコサスペンス作品のようでもあり、やや変化球的に全てはヒロインの妄想、つまりは夫の重罪やデイヴと言う人物の存在という本作の核を成すパーツ自体が実は妄想でしたという作品のようでもあり、実は主人公はデイヴで彼がナンシーと語り合ううちに構築していった世界のようでもあり…。見る角度次第でいろいろ夢想できる作品に思えました。 とは言え、語り出しはヒロインの独白。彼女を中心に据えて観ていくのが正解だとは思います。詳細には触れないまでも、彼女は精神的に病んでいた過去があり、きっかけは分からないまでも夫との運命的な出逢いを通じて別天地であるホランドに移住した。それは事実のようですね。そしてホランドは(本作を観るまで知らなかった街ですが)一風変わったと言うか異国情緒溢れるテーマパークのような観光地。その町の名士の妻と言う立ち位置のヒロインには移住後も様々なプレッシャーがあったことでしょう。愛息とのやり取りを見ていると、幸せな親子と言うより閉塞感が感じられてしまう。しかも夫の存在や言動がそこに拍車をかける感じ。一見幸せな生活には一触即発の地雷が埋まっていたように思えてなりません。 夫の浮気を疑って結局は自らが浮気に走ってしまうヒロイン。彼女の弱さを象徴するエピソードでしょう。それ故に、今も尚精神的な不安定さは決して癒えていないように思えます。そんな彼女はデイブとの探偵ゴッコによって自ら率先して不安定な道を選んでしまったように思えます。 なんとも纏まりのない感想になってしまいましたが、感想が纏まらないのも本作のような所謂オープンエンド作品の楽しみ方ということでお許しを。あれやこれや考察する楽しみを味わえた作品に7点献上します。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-06-17 18:01:01)《新規》 |
2. シビル・ウォー アメリカ最後の日
《ネタバレ》 説明的なパートがまるでないという潔さによって、純粋に戦場(というより殺し合い)における狂気が浮き彫りにされている作品。その狂気とは、言うまでもなく武器を手にして殺し合う者の狂気であるとともに、自分なりの理屈によって只管記録し続けるカメラマンの狂気でもあり、時として無関心な者の狂気でもあります。様々な狂気がリアルな映像を伴って乱舞するスピーディな展開。ある種の緊張感を保って観賞することは出来ました。 ただし、手放しで称賛出来るという訳ではありません。胸クソ映画であることも間違いないです。いくらフィクションとは言え、こんな訳の分からん状況を描き出し、只管に虐殺シーンを連発し続けるのは正直なところ胸クソ悪過ぎ。リアル過ぎる(戦場を経験したことはないし経験したくもないので想像に過ぎませんが)殺戮シーンを次から次へと見せられるぐらいなら、血しぶきまみれのスプラッターの方が現実逃避の延長に思えて個人的にはマシです。設定が非現実的(これも確かな根拠はないのですが)なのに表現はリアルっていうのは反則に思えてどうにも受け入れ難いです。ま、すべて個人的趣味嗜好のレヴェルではありますけれど。 結局テーマは何だったんでしょ?ひとりの若き戦場カメラマンの卵が成長する姿を通じて、極限下における人間の姿を描いた作品?それとももっと社会派的に、現在のアメリカの闇(病みでもある)をシニカルに描いた作品?それともシンプルに戦場の悲惨さを描いた作品?どこまで掘り下げて観るべきか良く解らないところです。 ちなみに、クライマックスでベテランカメラマンが代わりに犠牲になるんじゃなくて、アドレナリン出まくって暴挙に出た若手カメラマンが犠牲になった方が教訓的になって良かったと思うのはベタ過ぎるでしょうか?どっちにしても、カオスな状況においては失われなくても良かった命がアッサリと失われていくことに変わりはありませんが。 と言う訳で、やっぱり個人的には超胸クソ映画と言う印象だけが残ってしまったのでそれなりの評価です。 あ、最後の大統領インタビュー。え?それでいいの?という一言インタビューでしたね。撃つ前にトドメさしてどうすんのよ?と思ってしまいました。 [インターネット(字幕)] 4点(2025-06-14 00:20:51)(良:1票) |
3. ベルベット・バズソー 血塗られたギャラリー
《ネタバレ》 呪いの絵画とでも言いましょうか、魔力を秘めた絵画が関わる人々に悲劇を齎す、というプロットの作品は数多くあるように思えます。謂わば、洋の東西を問わず怪談噺の定番といったところですね。 本作はまさにそんな物語。赤黒い顔料は作者の血液、なんてのも一つの定番ですね。見ていると絵が動く、絵から何かが出て来る、これも定番。描かれた絵とは直接関係ない物まで操るなんて言うのは飛び道具?否、魔力ということになれば何でもありですから、それもまた定番的ですね。要は、ホラーとしては極めてオーソドックスです。意外性は殆どなく、立つべき人物にきっちり死亡フラグが立ち、予想通りにお亡くなりという図式です。 ただし、呪われた絵の作者の非業の人生はサラっと紹介されますが、何故に彼の描いた絵が呪われているのかは明示されません。そこそこの尺の作品なのでそこはもう少し掘り下げて欲しかったところです。書いた本人も断捨離中で大家さんに全て廃棄してくれとを言い遺していたということなので、何かしらの呪いを掛けていたことは間違いない訳ですし、父親を惨殺してさえも晴らせなかった幼少期の恨みつらみだけなのか?それともそれを上回るほどの何かがあったのか?これほどの魔力を発揮するのですから何かありそうなものです。 出演者が充実しているということもあって決して面白くない訳ではありません。楽しめなかったと言えばウソになります。ただ、もう一歩詰めが欲しかったと言うか、度肝を抜かれるような展開が欲しかったところです。残念。 ちなみに原題も邦題も何だかな~という感じ。原題じゃあまりに解りにくいから邦題はサブタイトルを追加したのかも知れませんが、ちょっとストレートというか説明的というかシックリ来ない感じがします。だったら原題そのままのほうが良いような気がしないでもなく…。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-06-10 17:37:44) |
4. クリープ2
《ネタバレ》 前作の後味の悪さを越えられるのか?という観点で観始めましたが、単に繰り返しではなく「もうこれで打ち止めだからね!」というスタンスが感じられました。 平たく言えば、前作は主人公(前作では名前が違ってたような?)の異常性がいつ発現するのか?どう発現するのか?という流れだったのが、今作では始めっから異常性大暴露。初対面のヒロインに、何ひとつ隠そうともせずに自らが凶悪で異常な殺人者であることをひけらかすアーロン。内面だけじゃなくて「男女の垣根を取り払うには全てを見せることが必要!」みたいに宣言してモザイクもボカシもなしにイキナリ全裸公開とはビックリ。(「次は私の番?」と応えるサラも全裸?かと思いきや胸チラ見せでストップというのは肩透かしでしたがw) 始めっから殺人鬼であることを晒しておいてこの後どうするの?サラのことは24時間は殺さないと宣言するし。と思って見ていたら、そもそもサラも相当イカレてる訳で、なんと言っても殺人鬼がボク殺人鬼、イヤならお金持って帰ってね、と宣言してるのに逃げないんだから正常な判断力は消え失せてます。 結局、結構普通な展開(異常ではありますが)でホラーアルアル的にラストを迎えます。スタートダッシュは凄まじかったけれどやや減速気味に終えた感じ。 ラスト、街中を闊歩するサラはどう考えてもアーロンの遺志を引き継いでいるようですね。やっぱ始めから変だったけどそれが表面化したみたいな。まさかサラがヒロインの「3」はないのでしょうけれど、前作に比べれば胸クソ度は少し下がり気味の1本でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-06-08 17:45:12) |
5. BECKY ベッキー
《ネタバレ》 痛快です。相手はニッくき極悪人。この際、何をやっちまっても構わないんじゃね?という相手。しかも、対するコチラは可愛い可愛い女の子。最初にワンちゃんが犠牲になったのは許し難い演出ですが、その後の父親とか婚約者の悲劇はお約束的。謂わばベッキー爆弾の導火線みたいなもんです。復讐の炎は燃え盛り、見事一件落着といった物語ですね。 まぁ、設定なり話の流れなりは決して奇を衒ったものでもなく、寧ろオーソドックスですね。極悪人の処理方法もそこそこグロくはありますが想定内。あ、最後の眉間撃ち抜きはちょっと意外、でもよく考えれば当然、てかあの大男は子どもに撃たれたことで人生清算出来て幸せだったかも、ぐらいに思えてしまう。 うら若き女の子にやらせる演技としては少なからず問題ありでは?という基本中の基本に目を瞑らなければ楽しめない作品ではありますが、そこのところの設定を外してしまったらオリジナリティの殆どが消えてしまう訳で、これはこれで良しと出来る者のみが楽しめる作品と思えました。で、私は楽しめたので続編も観るでしょう。 ちなみに、本作ではそもそもベッキーはどういう子なのか?とか、あのカギは何なんなの?といった重要事項がまるで明かされませんでした。想像してね?みたいにハグラカサレタ感じ。続編でその辺は明かされるのでしょうか?一応期待します。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-06-06 00:11:04)(良:1票) |
6. スラムドッグス
《ネタバレ》 これは最高!ピンポイントでハマりまくりました。 動物を擬人化して口パクで語らせる映画は数あれど、ここまでお下品で下ネタ満載なのってあったでしょうか?下ネタにしたって、大人の下ネタあり、中学生レベルあり、小学生レベルありとバラエティ豊か。勿論、一見ファミリー向け映画ですが、お子様と一緒に家族での観賞は絶対NG!だって、親が笑う度に子どもからの質問攻めにあって、お父さんもお母さんも気が気じゃなくなっちゃいますから。 下ネタ下ネタって言うと相当お下劣な作品と思うかも知れませんが、ちゃんと感動出来るシーンだってあります。でも、即座に下ネタ被されちゃいますから感涙はしません。やっぱお下劣です。一体全体、全部で何回ファックって単語が出て来たことやら。 犬やら動物が大好きな人は勿論、犬がそれほど好きでもない人でも、お下品系が大好きな方には超おススメしたい1本でした。 ちなみに、邦題より原題の方が好きかな。うん、ちょこっと捻ったタイトルよりシンプルな方が良いような気がします。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-06-02 23:22:51) |
7. スペース・シャーク
《ネタバレ》 Z級サメ映画の巨匠(の一人)、ダスティン・ファーガソン監督によるトンデモ映画ですね。 大作のパロディ(と言うか思いっきりコピー)だったり、自身の作品のネタを引用したり(殆どの人には伝わらんて)、いつも通りの作風です。(ここで「いつも通り」と言ってしまえる自分にも驚きますが) 要は、何故か運動能力を備えた宇宙植物(この時点で植物じゃなくて動物でしょ)と、これまた何故か植物由来の手足の生えた小型のサメ風生物(やっぱ植物じゃなくて動物でしょ)が、墜落事故で地球上に放り出されて何故か急成長して植物も動物も人間を襲うというお話です。 細かいことは言いっこなし。とは言え少しだけ綴らせていただくと…異様に長いオープニング&エンドロール。のみならずヒーリングビデオよろしく長回しの風景と出演者のフル尺ランニング。宇宙船内はお馴染みのゲーム的画面も長い。何という尺稼ぎ。宇宙船内の研究室の壁面が銃器で埋め尽くされている。宇宙船に衝突する隕石を地上から双眼鏡で発見して個人的判断で宇宙船と交信する人物。完全にPデター丸パクリの宇宙ザメが走り回るetc.…兎に角すべてがツッコミどころ。それを楽しむためのものなのだ、と割り切れる方だけが楽しめる作品。ある意味貴重な作品を生み出し続ける監督に+1です。 ちなみに、何故にエリック・ロバーツさん??(何かしら大人の事情でしょうか?) [インターネット(字幕)] 2点(2025-05-29 10:00:58) |
8. 密かな企み
《ネタバレ》 王道を行かんばかりの鉄板サスペンスものですね。何とも既視感のある設定。記憶喪失になってしまった妻。妻を案じる夫。あれ?でも、何だか様子が変?本当に夫?そこに登場する熱血刑事。胸に悲しみを抱えながらも必死に事件を追う。するとそれ見たことかの事件の裏側。あぁやっぱり夫は偽物だったのね。妻も気付いて何とかしようとするがお約束通りにバレてしまう。刑事は夫を追い詰めるが、お約束通りに逆に襲われて窮地に。妻も刑事も絶対絶命、さてどうやって窮地を脱するのか?!という物語でした。 ほぼ予想を裏切らない展開。ある意味安心して観ていられる作品。類似作との違いがあるとすれば、犯人が凶悪殺人鬼ストーカーだということぐらいかも知れません。ただし、正直なところ楽しめました。キャスティングと演出の妙でしょうか。こういう作品があってもいいんじゃないかと思わせてくれました。 強いて不満点を言わせていただくならば、犯人の犯行が杜撰というか無防備というか、そりゃ敏腕刑事の手にかかればすぐにバレちゃうよ、という程度なことと、敏腕刑事の抱える悲劇が作品の流れの中でイマイチ生かされていないこと、そして何より窮地に陥った妻と刑事が結構アッサリ逆転勝利することでしょうか。まぁ、どれをとってもかなり重要な点なんですが。 そのあたりの詰めにもう少し工夫と言うかオリジナリティが感じられれば、と思える少々残念な作品でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-05-20 17:30:17) |
9. ソフト/クワイエット
《ネタバレ》 全編ワンショットで撮影された超胸クソ映画。 ひとつには、最近では「カメ止め」でも話題になったワンショット撮影。予備知識なしで観始めたので、始めは「POV?」「目が疲れそ」みたいな印象でしたがそれがとんでもなかった。約1時間半の作品を見事に撮り切ってますね。これには脱帽でした。出演者さんたちも、台詞ひとつ取っても全部が全部アドリブってことはないでしょうし、立ち位置とかも目まぐるしく変わりますから動線を頭に叩き込んで演じ切ったのでしょう。相当キツカッタのでは?と察します。 もうひとつには、どうにもこうにも胸クソ悪過ぎる展開。そもそも、個人的には白人至上主義みたいなものを一切感じることがない環境で生活しているもんで、冒頭からヒロインの行動・言動に違和感というか拒絶感しか感じられず、小学校での少年とのやり取りにしても初会合の場でのやり取りにしてもスッキリしないものばかり。更にはメンバーの商店でのアジア系姉妹への異様な対応。それまでの経緯があるにしても異常です。割って入ったヒロインの夫もヘタレ過ぎ。そしてとうとう最悪の修羅場へ。やってることが全て犯罪なのにそれが正義と言わんばかりの傍若無人。こういう感覚、実際にあるのでしょうか?恐過ぎます。 ラスト、バンの中で遺体が動くカットから水面を長回しするカットで結末は予測出来ましたが、アナフィラキシーの妹は還る訳もなく、仮令4人のメンバーとヒロインの夫を刑務所送りに出来たとて姉の心に刻まれた傷は消えることはありえない訳で、いつか観た「ファニー・ゲーム」ほどの救いようのなさには届かないまでも、種類の違う相当な胸クソ悪さが残りました。 タイトルはこういった主義主張を社会に広めるにあたっての行動原理のようなものなのでしょうか?そのあたりもイマイチ理解に苦しむところです。 映像作品の制作レベル的には素晴らしいと思えますし、今も残り続ける差別主義をテーマにした作品としても見応えがあることは間違いないと思うのですが、どうにも胸クソ悪くてその分マイナス評価です。 [インターネット(字幕)] 6点(2025-05-18 15:51:05) |
10. レンフィールド
《ネタバレ》 シンプルに楽しいアクション・コメディ・ホラー。元ネタのエロティシズムは抑えられつつも、ちょっとばかりスプラッター風味が強いのでお子様には向きませんが、何も考えずに楽しむにはうってつけの1本ですね。 何よりも魅力なのはダブル主演のダブルニコラスさん。流石のケイジさんはドラキュラになりきっていて風貌はあのクリストファー・リーさんを彷彿させるお姿ながら、これぞニコラス・ケイジと言わんばかりのキレっぷり。お見事です。対するホルトさんもイイ味ですね。ご主人様にはどうにも逆らえない気弱なイケメン青年ではあるものの、迷いに迷いながらも過去を悔い「善」のために尽くそうとする健気な姿はピッタリの役どころ。ダブルニコラスさんあってこその作品になってます。 レベッカ巡査を演じるオークワフィナさんもいいですね。最初の登場時には矢鱈と突っ走るアジア系熱血女性警官としてなんだか取っ付きにくい雰囲気満々なのに、物語が進んで行くうちに何だか可愛らしくさえ思えて来て、ラストには最初とはまるで別人の優しい笑顔。このキャスティングも気に入りました。 元ネタのレンフィールドとは少々、てか相当異なる立ち位置設定で、登場人物をシンプルに纏めるためかかなりのアレンジですが、そもそもが創作と思えばそれもアリかなと。元ネタ通りにしちゃったら人は増えるは尺は延びるはという状況になっちゃいますね。約90分の尺なのも本作を大いに楽しむためにはベストではないかと。矛盾点とかは一切目を瞑りましょうという気にさせてくれました。 仕事選ばないんですか?と言いたくなって久しいニコラス・ケイジさんですが、これは出演して良かったですねと言いたくなる満足の1本でした。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-05-12 10:37:43) |
11. パペット大騒査線 追憶の紫影(パープル・シャドー)
《ネタバレ》 これはツボでした。一気に惹き込まれてしまった。少し前に観た「ソーセージパーティ」にも通じる面白さ。てか、アチラの方が少々激しいですが、似て非なる下品さエロさグロさ。一見セサミストリート的に見えなくもないのですが、お子様には決して見せないでください的なパペット劇です。 ストーリーとしてはキチンとしたミステリー・サスペンスですね。でも、そもそもが人間とパペットが共存しているもんだからマジには見えにくくなっている感じ。決して奇抜だとかユニークだとかではないまでも、結構正統派なストーリーです。 ただ、兎にも角にもお下品。なんせパペットだから(だからってのも変ですが)何でもあり。主人公が依頼人とイイ感じになっちゃって事務所で大発射するシーンなんて大笑いしつつも絶対実写はNGだと思い知らされ、依頼人が「氷の微笑」をパロってるシーンも本邦ではモザイク必至。でも、このシーンが重要なんです。露骨なパロディに唖然としつつも「え?もしや?」と思わせてくれる絶妙なエピソードになってました。 そして、観終えてよくよく考えればとんでもない悲劇だったりもします。真犯人の生い立ちと事件の動機が悲し過ぎますね。ただ、それでさえもパペットだから堪忍ね?とばかりにサラっと流されてしまいます。 何にも考えずに笑っても良し、じっくり考えてアメリカ社会を憂うのも良し、一粒でいろいろ味わえる佳作でした。NG集ならぬ種明かし集的なエンドロールも良かったです。原語でネイティブに理解出来ればもっと楽しめたかも。 あ、邦題はネタバレじゃん!本編観てからじゃないと解らないにせよ、これはどうなんだろ?振り返ってタイトルでまた笑わせてくれる意図だとか? [インターネット(字幕)] 8点(2025-05-04 10:04:22) |
12. フランケンシュタインの怪物の怪物
《ネタバレ》 正直言って込み入り過ぎていて判りにくく&解りにくく設定されている感じ。主演が本人役として出演していてモキュメンタリー風に進行して行く。ただし、劇中及び劇中劇に登場する人物と一人何役も演じている。主人公、主人公の父親、主人公の祖父、劇中劇の主人公の父親と彼が演じる怪物。特にメイクで明確に区別している訳でもないので、集中して観ていないと誰が誰だか判らなくなりそうです。 結局、主人公が自分の父親とは一体どんな人物でどんな仕事をして来たのかを探るうち、父親の本当の姿、父親がしたことを知ることになるといった流れなんですが、何せ判りにくいし解りにくいです。なんとなくウェス・アンダーソン風味がしないでもない演出なんですが、かなりの変化球に加え、そもそも何故フランケンシュタインの怪物なのか?更には何故怪物の怪物なのか?というところを考えてしまうと、基本的にはコメディと思われる作品がその実かなり深いところを狙ってるのかな?という疑問に繋がって来て益々意味不明に思えてしまいます。 まぁ、その時点で作り手の術中にハマってしまっているのかも知れませんね。純粋にコメディとして観賞するのが正解かも知れません。てか、そう受け止めることと致しました。 [インターネット(字幕)] 4点(2025-04-29 15:04:47) |
13. リミット・オブ・アサシン
《ネタバレ》 暗殺者の孤独、妻子がいたばかりに起きた悲劇、裏で彼を捨て駒の如く扱う組織への復讐、敵対する相手に芽生えるシンパシー。裏社会に生きる男を主役に据えたリベンジアクションに必要な要素は悉く兼ね備えた作品。あとはどう料理するかって感じですね。 本作では、凄腕暗殺者が妻子を自らの裏家業に巻き込んで失ってしまったショックによって非情さを失ってしまい(何で高額報酬で気持ちがなびいたかは不明、何で愛する妻を想いながらターゲットと寝たのかも不明)、結果感情的に流され本来の姿を失わされた相手によって殺されてしまうというのが一つ目の調理ポイント。そして組織によって蘇生して情報を聞き出され、お役御免となって再度殺されそうになったところで逆襲、余命24時間(薬物投与による副作用なのか埋め込まれた生命維持装置の寿命なのか不明)の間に組織の策略を阻止するというのが二つ目にして最大の調理ポイント。 そこにお決まりの逆転また逆転とか、主人公が知らなかった組織の非人間的な行為の露呈とか、思いがけない協力者の登場とか、いくつかのエッセンスが加わってくる訳ですが、スピーディな展開と派手なアクションシーンのおかげで大いに楽しませてくれるものの、肝心要の主人公の凄腕殺し屋感が弱いのです。この人ホントに非情なヒットマンなの?てな感じに見えてしまう。それは、彼の非情さを見せつけてくれるようなシーンがなかったのが一番の原因かと。組織の下っ端とかには滅法強いし非情ではあるものの、それはアクションシーンの中でのお話に限られるし、見逃してあげちゃったりもしてるし。 凄惨なシーンが多々登場する割には意外とライトな感じで鑑賞できる作品。決してキャスティングは悪くない、どころか寧ろ良いと思われるのに、今一つ浅いというかヒネリがないと言うか、シンプルな面白さは十分あるのに何だか勿体なさを感じた作品でした。 あ、ラストシーンは要らないと個人的には思いました。アレって観る者が想像すべき後日談的なもんじゃないかと。減点要素です。 [インターネット(字幕)] 6点(2025-04-24 00:15:04) |
14. アビゲイル
《ネタバレ》 吸血鬼映画と言うと年代的には長いこと「吸血鬼=ドラキュラ=クリストファー・リー」でした。その後、明確に転換点がある訳ではありませんが徐々に吸血鬼映画はヴァンパイア映画に遷移していき(あくまでも個人的なイメージです)、2000年代に入って「トワイライト」等に代表されるファッショナブルなラブストーリーへと変わって行った、みたいな(あくまでも個人的な)印象を持ってます。 そんな訳で、本作は予告編やら公式のあらすじで吸血鬼映画と言うよりバイオレンスホラーを予感して鑑賞しました。シチュエーションとしては少し前に観た航空機内を舞台にしたアレと殆ど同じですね。閉鎖空間に悪党が籠ってみたらまさかの難敵登場!みたいな。悪党が食い殺されていく快感的面白さは同様にあるのではないかと。 が、これをもってヴァンパイア映画としての面白さを満喫できるかと言うと何だか違和感が無きにしも非ず。何よりも美しくないです。流血頼み過ぎる。死に様に至っては爆発ですし。ハッキリ言ってキタナイ!流血の中にも美しさは意識して欲しかったところです。 なので、↑でも言いましたが、鑑賞前からイメージしていたバイオレンスホラー作品でした。そして、そう観る限りは十分とは言えないまでも楽しめました。十分じゃないというのは、例えば、何で犯行グループをわざわざこんな面倒なプロセス踏まないでも力ずくで餌食を集めりゃいいんじゃね?みたいに思えてしまう。手下をコントロール出来てないのも謎。要は、ビジュアル面とかキャスティング面での完成度に対して薄いなーと思えてしまうのです。 続編あり?TVシリーズのパイロット版?のようなエンディングですね。流れ的には、ヒロイン@誘拐犯が生き残ったのは普通にアビゲイルの感謝の念じゃないような。 などと様々考えて、高評価はどうかなぁと思える微妙な作品でした。 [インターネット(字幕)] 5点(2025-04-22 10:27:37)(良:1票) |
15. タイムカット
《ネタバレ》 タイムパラドックスものとしては少々粗いかな?という作品。謎の装置のスイッチを入れたら、姉が殺された時点にタイムトラベルしちゃったから助けなきゃ、でも助けたら姉の死後に生まれた自分の存在は消えちゃうかも、でも助けなきゃ!という物語。そこに、そもそもタイムマシンを作ったのはヒロイン姉の同級生の物理学オタクで、当時の恨みを晴らすべく20年間頑張って完成したタイムマシンで過去に遡って同級生たちを抹殺する、という物語か重なります。 姉の死を契機に生まれたヒロインには、姉を殺人鬼の魔手から救えば自らの存在が消えるかも知れないというジレンマがあり、それに対して殺人犯は過去を変えても自分の現状は変わらないのだと確信している。過去を変えれば未来も変わるというタイムパラドックスものの一つの定番に、過去を変えても時間軸が分岐するから現在には影響しないというもう一つの定番が重なり合い、さてどっちが本当でしょう?結果ヒロインは影響を垣間見つつも過去に遡って生きることを選ぶというもの。 ん?矛盾してる?作り手的には矛盾はしてないのですね。作り手はタイトル通りに「タイム」は「カット」出来るのだという原則で組み立てている模様。でも、なんか違和感。ヒロインは姉の救出後に戻った現在で、自らの存在が両親に認識されていないことを確認しますが、だったら何であなたは存在してるの?という疑問が生じます。時間が分岐しているのであれば、もともとのヒロインの過ごした時間も存在し続けているのですから両親は認識できる筈。存在しているのに認識されないってのは変なような気が。ここはきちんと整理して欲しかったところです。 とは言ってみたものの、この手の物理の原理原則の美味しいところ取りをしてややこしく組み立てている物語は好物。難いこと言わずにエンタメとして楽しむのであれば大いに楽しい作品です。矛盾個所は多々あるものの、総じて言えばお楽しみ感十分のライトなSF。いろいろ考えさせられたというのも作り手の策にハマった証拠ですね。うん、結果的には満足したので高評価。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-19 09:40:14) |
16. バッド・バディ!私とカレの暗殺デート
《ネタバレ》 いいですね~♪ハッキリ言って中身はスカスカ。ストーリーがどうのこうのという内容ではありません。強いて言うなら、主人公の殺し屋(元殺し屋?)が、殺しは悪いことだから殺しを依頼する悪い奴を殺すという詭弁のようで単なる屁理屈というがポイント。そのくせ同じ血が流れてるのを本能適に嗅ぎ取った相手に心の底から恋をしてしまうというアホな純粋性。かなり無茶というか殆どコントです。 でも、だからこその楽しさってものに溢れてる訳で、難しいことを考えないで済むし、主人公もヒロインも概ね無敵だからピンチもピンチと受け取らずに済むし、いざとなれば敵さえ味方になるしで、完璧に無防備でエンジョイ出来るってもんです。 お約束とばかりに主人公が絶体絶命になったり、惹かれ合う二人が引き裂かれたりする心配なんかないこの手の作品は大好物。なので相当甘めの高評価です。 ちなみに邦題はちょっとどうですかね?原題のままとか原題の意訳が良かったような。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-04-16 16:53:51) |
17. ロマンティックじゃない?
《ネタバレ》 これでもかと言わんばかりの鉄板的ラブコメ作品ですね。数多ある名作ラブコメをパロっているようでいて本作こそが真のラブコメ的な作りになっている。安心・安定のラブコメです。ラブコメ好きの方は勿論のこと、ヒロインのように本当はラブコメ好きなのにラブコメ嫌いを装っている方も含め、大いに楽しめる作品だと思います。なので、心の底からラブコメ嫌いの方は視聴注意ですね。 かく言う私はラブコメ好き(ただし感情移入し過ぎるのであまり見ないようにしているというヒネクレ者)なので大いに楽しみました。結末が分かっていても楽しめてしまう。分かりますよね~、見え見えです。それでも楽しめるように丁寧に作られている作品。作り手のセンスに拍手です。 強いて言わせていただくならば、レベル・ウィルソンさんが美し過ぎ。確かに立派な体格ですがどっからどう見ても美形です。正直、彼女のことはあまり知らないのでライトな体型だった頃とかは分からないのですが、間違いなく美形です。対するアダム・ディバインさんは他の出演作のイメージが濃すぎて素直に美男子には見えないのですが、それでも優しくて気のいい好青年のオーラが出てます。なので、ちょっとお膳立てが揃い過ぎな感が否めません。 とは言え、そんなことに少々抵抗感があったとて本作のラブコメとしての完成度は下げられませんね。ハッピーエンド、しかも誰も不幸にならない完全なハッピーエンド。たまにはこういう作品を観ないとね。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-04-14 13:57:09)(良:1票) |
18. NIMIC/ニミック
《ネタバレ》 当たり前の日常。家族で一番早く起き、朝食用の茹で卵を作る。オーケストラのリハーサルに行き満足した演奏が出来ないまま帰路に着く。妻との間に、そして子どもたちとの間に何があるのか?冷めてもいなければ温かさもない日常。チェロの演奏もまた然り。日々リハーサルを積んでもそこには新たな喜びもなければ達成感もない。 そして、特に必要性もないまま唐突に発した「今何時?」という一言。聞かれた女はその時点で彼と同期する。或いは入れ替わり始める。そして、彼と同様に彼女もまた誰かに時間を聞く。その上で彼女は彼を追う。否、追っているようでいて追ってはいない。それは彼女は彼だから。自宅の鍵も所持している。夫として父親として家族に受け入れられる。更にはオーケストラにも受け入れられる。そのことは即ち彼が存在を失ったということなのか。しかし、彼は誰なのか判らないまでも少なくともそこに存在する。そして、もしかしたら彼女がそうだったように、彼もまた失った存在を取り戻すべくNIMICを求めるのでしょう。誰かに時間を訪ねるカットこそありませんが。もしかしたら連鎖を断ち切る?そんなことはなさそう。 タイトルの「NIMIC」はルーマニア語で「何もないこと」らしい。何もない彼女は全て揃っている(機能しているか否かは兎も角として)彼になり、彼はいったん「NIMIC」となって行く先を求める。存在は本質的には限りなく不安定かつ流動的であって、見極める間もなく移ろいでしまうものなのだ、といったメッセージなのでしょうか? 日々の生活の足元を揺るがされるような不気味さが漂う、単調ながら不安と期待が綯い交ぜになった短編作品でした。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-11 00:09:53) |
19. ロブスター
《ネタバレ》 近未来SFなんですね。未来の世界は今と違ってこれこれこうなっていますみたいな一つの定番。ここでは子孫を残せない独身者は社会悪、ということのようです。今の世界で常識化しつつある「多様性」とは真逆の世界。現実世界にシニカルな視線を向けたダークファンタジー、或いはダークコメディといったところでしょうか。 キライではありません。一見奇抜さを求めて思い付きのままに作られた作品のように思えなくもありませんが、考え抜かれたプロットに基いた作品であることは間違いないと思います。ただし、テーマが解りにくいことも間違いない感じ。おそらくは「愛」なのでしょうけれど、設定が設定なだけに少なからず歪んだ愛のような。 この世界では「似たもの同士こそが夫婦のあるべき姿」のようですね。意外と古風。ホテルでの一連のプロセスはそのフィルターということでしょう。支配人のカップルが理想型とも思えないあたりはコメディ要素かと。 で、生き残るためには、幸せになるためには、愛する人と同じ特性を身に着けなければならない。少々問題ありのキャラ設定である主人公は、愛するが故に自ら失明の道を歩んだのか。多分答えは「否」のように思えます。彼にはそこまで出来ないでしょう。そしてロブスターにされたかの如きエンドロール。 繰り返しますが嫌いではありません。敬愛する故デヴィッド・リンチ監督の描いた不条理劇を愛する私。不条理風なこの作風も嫌いではない訳です。だいぶ異なる作風ですが。 絶賛したいところです。ただ、冒頭の馬射殺と中盤の主人公の元兄の犬惨殺とウサギの受難には許し難いものがあります。愛するサメ映画の鉄則(ただし一部の作品にのみ通用)「犬は死にません」を見習って欲しい。これはいけません! まるで別人の如きコリン・ファレルさんの演技の素晴らしさ(太ったのは役作り?)の分を考慮しても、動物殺しのマイナスの方がデカいので7点止まりとさせていただきます。 (追記です) 書きたい小ネタは多々ありますが、どうしても書きたいのを追記します。 ①ホテルの従業員の女性がデヴィッドを助け「何でだか分からない」みたいなこと言いますが、そりゃ毎日あんなことやってたら情が移りますって。 ②プールのシーンの背泳ぎ。今まであんなに官能的な背泳ぎを見たことがないです。あぁなんと艶めか美しいこと。 [インターネット(字幕)] 7点(2025-04-10 18:45:11) |
20. ビーキーパー
《ネタバレ》 素晴らしい!これぞジェイソン君!彼は無敵で良いのです! 今回は終盤に怪我しちゃいましたが(よくよく考えればラスボスに弾を打ち込んでるのに防弾ベスト部分を撃って頭を狙わなかったのはラストバトルに向けてのお約束?)、そこに至るまでの間にも普通だったら(既に状況が普通じゃありませんが)せめて掠り傷ぐらい負ってるだろうに無傷でスルー。やっぱヒーローは無敵じゃなきゃいけません。お約束めいたピンチやら名誉の負傷やらは無用!これでいいのです。 今回は関係ない下っ端とかFBIとかもだいぶお亡くなりになっちゃいましたが、正義のためなら仕方ない?いやいや、ちょっとFBIとかヤリ過ぎちゃいましたね。でも、やっぱ仕方ないですね。てか、考えちゃいけないですね。 兎にも角にもジェイソンこそが正義!法令遵守に拘泥してたら正義は守れません。ジェイソン流のコンプライアンスですね。正しいです。 シリーズ化して何本も、とまではしないまでも2か3ぐらいまでは観たい作品。どうか無理せず同じ路線で。ちょっとだけ中身を変えてくれるだけで良いのです。うん、今回はヒロインとの間に色気なしでしたから少しだけその辺も足すとか。ジェイソン君のキレが維持されてる間に(まだまだ大丈夫ですよね)、是非とも楽しませて欲しいところです。期待! [インターネット(字幕)] 9点(2025-04-08 23:56:34)(笑:1票) (良:1票) |