1. 関東テキヤ一家
《ネタバレ》 あくまでもテキヤであるというのがミソで、暴力団とは違う、という点を強調したいかのようです。ただその割には、お約束通り、血の気の多い人物は多いし、すぐに喧嘩だの殴り込みだのになりますし、そもそも商売のことをあまり考えているように見えないのですが。ラストは当然のように復讐の突撃ですしね。まあ、見る側が期待するのも結局そこなので、それが悪いということではありません。●ただしこの作品の重要価値は、当時の全日本女子プロレスがふんだんに登場するところでありまして。冒頭のクレジットで、まあちょろっと興行ネタに使われるくらいかな、と思っていたら、きちんとリングを組んで試合シーンもきちんとありますし、何とその後には、嫌がらせをする敵の組をレスラー姐さん方がリング上で痛めつけるというおまけつき(女子プロにボコボコにされる川谷拓三!)。そもそも、マッハ文朱以前の女子プロって、映像があるだけですでに貴重なのではないですかね。ここは実にお得でした。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2025-06-18 01:12:31)《新規》 |
2. COWBOY BEBOP カウボーイビバップ 天国の扉
えっと…結局、誰が何をしたかった話なのか、ほとんど理解も想像もできなかったのですが。テレビ版があろうがなかろうが、独立した形態で作品として発表する以上は、きちんと完結すべきです。一番まずいのは、各シーンがそれぞれ、何かとりあえず格好良い雰囲気のセリフを喋らせておけばよい、という感覚で作られていること。だから、全体が平坦かつ凡庸に見えてしまいます。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2025-06-17 01:04:52) |
3. 虹をつかむ男 南国奮斗篇
《ネタバレ》 先行映画作品に依存していない分、前作よりははるかにマシ。導入部はありがちすぎてつまらないが、キョンキョンが動き出してからはそれなりに活性化している。吉岡君にとっての年上の恋のお相手としても悪くないが、生活感というか日常描写みたいなものはもう少し切り出してくれなかったかな、とは思う(結局、家でごろごろしていただけでは?)。一方で、哀川翔が意外なほど結構な存在感を示しているため、この辺の衝突が処理しきれなかったと感じる。あと、着地部分も全体的にダレ気味で、かつてのこの監督にあった「切り上げの美学」が薄れていますね。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2025-06-16 00:22:51) |
4. 虹をつかむ男(1996)
《ネタバレ》 導入部で、まず、西田さんの(というか周りの人たちも含めて全部の)徳島弁が、絶望的に合っていない。また、映画を語る際の西田さんの口調が寅さんを意識しまくっているのも、輪をかけて合っておらず、むしろ痛々しい。●で、あれこれの映画ネタが組み込まれて映画愛みたいなものを表現しようとしているんですけど、そのまんまそれを流してみんなが(作中の登場人物が)それにうっとりするって、つまりそれらの先行作品に依存しているだけじゃん。「ニュー・シネマ・パラダイス」が偉大だったのは、映画愛は作中の人物自体がそれを体現していて、もっと言えば作中で上映される映画が何なのかまったく分からなくても作品世界に共鳴できたからです。それを引用していながらこっちではその真逆を行っているのって、これってギャグか、と思ってしまいます。●さらにまずいのは、次から次へとそれら先行作品のネタばらしをしまくっていることです。映画を見る楽しみを人々に伝えようとしていると思しき内容なのに、その発見の楽しみを奪ってどうするの。作中でも「禁じられた遊び」なんかは、冒頭の一瞬とテーマ曲だけで必要な呈示をしているわけで、だったらほかのシーンでもできたでしょ?●あと、まあ、倍賞千恵子や前田吟が「二重登場」をしている手抜きぶりについては、もはや突っ込む気力も起きません。●そんなわけで、とにかく、制作側の志の低さだけが徹頭徹尾感じられた内容でした。 [CS・衛星(邦画)] 1点(2025-06-09 00:31:51) |
5. 櫻の園(1990)
《ネタバレ》 導入部はごちゃごちゃした女子高生トークが繰り広げられるだけだったのですが、各人物の個性が際立ってくる中盤から、ぐいぐい面白くなってきました。杉山と倉田が双極的に存在感を発揮して主役の(一見地味な)志水の内面を引っ張り出すという、理想的な形が築かれていますね。終盤、舞台用のメイクや衣装で、最初の制服とは別人集団が形成されていくのも、絵面として良い感じです。ただし、火災報知器ネタは不要だったと思うし、また、この作品のポイントは、いろんなところを想像に委ねている点にあるので(職員会議でどうのこうのとか)、杉山の友人3人組の登場も、いらなかったんじゃないかな。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2025-06-06 00:37:06) |
6. 富士山頂(1970)
《ネタバレ》 撮り方は間違いなく誠実なのです。まず、工事ありきで始まるのではなく、大蔵省との予算取り折衝や発注説明会などのステップもきちんと描いています。いざ現場の準備に入ったら、とてつもないロケを駆使して、「ただ荷物を上げるだけ」がどれほど大変なのかということを存分に感じさせます。作業は黙々と行われ、余計な台詞もありません。裕ちゃんも勝新も、作為的に出番を作ることもなく、あくまでも「その中の一人」に徹していますし、それが逆に大自然の壮大さと課題の困難さを裏付けています。ですが、そのストイックさというか禁欲性のままに終わってしまったので(完成後のそれぞれの扱いがやたらそっけないところに顕著)、結局は超優秀な再現ドキュメンタリーにとどまったという気もします。この辺のバランスのとり方は本当に難しいですね。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2025-06-05 00:21:59) |
7. 懲役太郎 まむしの兄弟
《ネタバレ》 主人公2人が兄弟分ということであれこれやっていくのですが、とにかく徹底しているのは、この2人の脳内空っぽぶりというか、何も考えてなさというか、理性的判断がおよそゼロだということです。佐藤友美宅で最後に弟分が襲いかかるくだりなんて、誰も描こうとしないようなあまりの単細胞ぶりにクラクラします。しかし、敵方に何度叩かれてもしつこく食い下がる執念深さ(と生命力)だけは一流で、それがタイトルにもある呼称につながっていくわけですね。その辺でふと気づくと、この2人は常にペアルックであるのが、局所的に微妙にスタイリッシュ(?)で、ちょっと笑えます。あと、彫の光景にきちんと時間をとっているのは、なかなかポイントが高いと言えます。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2025-05-18 01:59:01) |
8. スペースポリス
宇宙人がハンバーガーショップを足がかりに地球征服を企む、という馬鹿馬鹿しい設定は一応魅力的なのですが、中身は何もありませんでした。ただの殴り書きかと思う脚本のスカスカさからどうしようもないのですが、全体で統一されている映像の汚さにもびっくり。この人たち、作っていて何かまずいと思わなかったんだろうか・・・。 [DVD(邦画)] 1点(2025-05-17 01:51:39) |
9. 大怪獣ガメラ
ガメラをどういう怪獣にしたいのかも分からないし(性能面においても内面においても)、それに対峙する人間側は、作戦も何もあったものではない。だから、戦闘映画にそもそもなっていない。価値があるとすれば、左卜全さんが登場していることと、浜村純さんに割と出番が多かったことと、吉田義夫さんが目立つ役で出ていること(最初だけですが)くらいかなあ・・・。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2025-05-12 21:26:54) |
10. 木枯し紋次郎
《ネタバレ》 さて、どれだけニヒルでクールな紋次郎が大活躍するのか、と思って見始めたら、いきなり三宅島流刑から始まる。しかもそこから延々展開されるサバイバルでアドベンチャーな光景の数々。何か別の作品を見ているのではないか、との疑問が湧き上がることしきりでした。中盤でやっとこさ島抜けが成功し、一般の時代劇っぽくなってきますが、前半とのギャップは埋めようがありませんでした。あと、ヒロインが江波杏子というのは曲者感満載で、全部自力で解決できそうな雰囲気すら漂っていて、どう見てもあんなに一途で真摯な人物像には合ってないような気がするのですが・・・。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2025-05-10 17:47:22) |
11. 幼な子われらに生まれ
《ネタバレ》 単に、それぞれ離婚した男女(すでに子あり)が再婚しました、という設定だけなのに、そこから生まれる心理の綾をどこまでも追求している。よって、先が読めないし、どこまでもじわっとした重みに覆われている。そのまま破綻なくまとめ上げた腕は見事でした。特に、一個のぬいぐるみで長女の世界が反転するあのシーンには唸りました。実の父の中では今でも自分はそこで止まっていることを容赦なく思い知らされ、埋めようのないギャップを突きつけられ、現実に引き戻される。それを台詞なしで表現しきっています。●ただし、全体としては、キーパーソン的役割が段々と長女に集中し、ややバランスを欠いていたかも。逆に、実娘や寺島しのぶとの関係は、もう少しいろいろ見たかったところでした。あと、田中麗奈はメイクが妙に若くて、40歳(という作中設定)には見えませんでした。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2025-05-02 00:35:48) |
12. 赤い天使
《ネタバレ》 序盤でいきなり発生する集団レイプも、前置きにすぎないかのようにあっさり置いていかれる。この先どこへ進むんだろう、という混沌の中で展開される軍医との情事未遂、そして患者への性的奉仕。それらが「当たり前のように淡々と」主人公の中で処理されているところに、くらくらしそうになる。そうしていつしか、軍医との関係性を通じて、戦闘や傷病や手術(そしてコレラまで!)などのくだりも含めた全部が、理知的で醒めた静かなる狂気ともいうべき中に収斂されていく。特段何も強調することなく、すべてを同一平面上に位置づけるこの懐の深さと、揺るぎなき創作精神。見ているうちに呆然となってしまいます。 [DVD(邦画)] 7点(2025-04-30 01:55:51) |
13. 同胞
《ネタバレ》 導入部で「あーよくある『田舎の人たちはみんないい人』系のやつかなー」と嫌な予感に襲われつつ、しかし序盤でそれを吹き飛ばしているのは、誰あろう、市毛良枝さん(当時25歳!)なのです。さらっとした台詞の一つ一つに、丁寧な重みが乗せられている。この存在感。それでいて方言女優としても完成形です。倍賞千恵子も押されています。●で、いざ公演をどうするということになるのですが、こういうときの定番(?)である、内部分裂とか謎の妨害勢力とかの方向には見向きもしない。目の前の会議の一つ一つで、その場にいる人を納得させるのがどれだけ難しいか、そこにきちんと向き合っている。そこに誠実性を感じます。●そして公演本番となるのですが、これはこれで面白いものの、結局、映画としての力ではなく、元の劇団の芝居の力だという気が・・・。●あと、序盤であれだけのインパクトを残しつつ画面から消えてしまった市毛さんですが、本番公演には地元に戻って駆けつけました!なんて感傷的な方向にはならない。東京で何とかしていることだけが1シーンでさらっと語られる。この辺のけじめのつけ方は、この頃の山田監督ならではです。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2025-04-28 01:42:48) |
14. 現代やくざ 与太者の掟
《ネタバレ》 とりあえずこれが、文太さんのやくざ映画初主演作ということになるのかな?中身については、文太さんを動かすために制作側が思いつくままを連ねていったという感じで、怪しげに登場した待田さんといきなりタメになってしまうし、孤独狼だったはずが弟分が何人もできてしまうし、なぜか安部徹が敵ボスポジションに据えられるし、なぜか手形パクリに手を出してしまうし、若山さんも強引に割って入るがごとく登場する。というわけで、一貫性は感じられませんが、それでも、後のやくざスター街道につながる文太さんの安定ぶりは大いに感じさせます。なおそれとは別に、山城新伍のしょぼい下っ端(ほとんど台詞もない)に無名な頃の石橋蓮司&小林稔侍という秘かな強力タッグが紛れ込んでいたりして、それも隠れた見どころだったりします。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2025-04-26 02:09:17) |
15. シャンティデイズ 365日、幸せな呼吸
《ネタバレ》 導入部の主人公の「絵に描いたような田舎者ぶり」の時点で、底の浅さが透けて見える。それと対置されるモデルも、いかにもな人工美人というだけで、内面は何も掘り下げられていない。というかこの2人だったら、敵役っぽいリサの方が単純に魅力的に見えてしまうのだが・・・。最後には「瞑想タイム」という趣向もあったりはしますが、そこに突っ込む気力もおきませんでした。とにかく、全体として制作側が自らハッピーオーラを振りまいてしまっているので、表現がそれに追いつかなくなっているのです。 [DVD(邦画)] 3点(2025-04-24 00:41:00) |
16. 炎上
《ネタバレ》 前半、まともな人がほとんど存在しない(鶴川君くらい?)折り重なりがもたらす迫力はかなりのもの。もっともらしいやりとりの一つ一つに、不協和音的な居心地の悪さがにじみ出ている。そしてそれが仲代達矢の登場によって、さらに高次元に引き揚げられる。それでさらに期待させるわけですが、そこからが何か失速気味でした。主人公は前半と(もっといえば入門時と)あまり違いがなくて、あのような行為に出る狂気がどこに宿っていったのかが分からない。また、不気味な脇キャラの行く末も、さほどのインパクトがありませんでした。あと、それとは別に、美術と映像関係は美しく、そこだけでも鑑賞できました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2025-04-22 01:28:52) |
17. こんにちは、母さん
《ネタバレ》 もう山田監督に新たに期待するものはないと思っていたし、しかもここへ来て吉永小百合が年老いた母親役って、一体どこまで依存するんだとも思っていたのだが、何と意外に悪くなかった。その母親が、どこまでも「普通の人」であるのがいいし、目立った何かをしないのもいい。だから、牧師とのささやかな恋愛未遂沙汰も、じわっとした重みを持ってくる。ほかの人もみんな「普通の人」ばかりだし、そう、この監督はいつも、そういうどうということのない人たちの平凡な市井の生活を大切にしてきたんだよね、ということも思い起こさせる。●空き缶集めの爺さんが、何だかんだで最後まで達者なのもいい。唐突な空襲話は余計だけどね。●監督の近時の作品でほとんど暴走気味だった説明台詞も、今回は何とか許容範囲内に収まっています。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2025-04-19 00:21:01) |
18. 悪い奴ほどよく眠る
《ネタバレ》 冒頭、延々と続く結婚式のシークエンスの迫力はなかなかなんだけど、その後がちょっと・・・中盤、西村晃がおかしくなっていくくだりで、「ちょっと長すぎるのでは?」となり、正体がばれた後も、やっぱり長すぎ。脚本担当がなぜか5人いるようなんだけど、それが悪い方に作用してしまったのでは、と思わなくもない。そもそも、主演が三船さんという時点で、異様に安定感があって、正体不明の謎めいた雰囲気とか、復讐ものに必須のある種の危うさなどとは逆方向に流れてしまいました(もっと若くて一見普通っぽい人にするべきでした)。●ただし、終盤、加藤武が正義感に燃える堅実サポート役というのは、結構新鮮だった気もします(笑)。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2025-04-18 01:04:34) |
19. あゝ海軍
《ネタバレ》 タイトルどおりの主人公の海軍生活の作品です。全体としてはエピソード羅列的な感じで、もっと引っ張れるはずのシーンでもさらっと先に行ってしまったりしますが、誠実な作りではあります。キーパーソンの何人かの戦死を伝聞や推測で済ませているところなどは、かえって重みを感じさせます。●吉右衛門と峰岸が同年代の友人というのに違和感があったのですが、この2人は一つ違いなだけ(しかも峰岸さんが年上)なのですね。さらに、宇津井健が偉そうに吉右衛門を叱り飛ばすのにも驚きましたが、宇津井さんが10歳以上上だったとは・・・。●あと、職務と命令に忠実な軍人である成田三樹夫さんというものが見られるのも貴重かも。 [DVD(邦画)] 5点(2025-04-17 01:23:43) |
20. 必殺女拳士
《ネタバレ》 何と千葉ちゃんと倉田さんが共演!さあ悦ちゃんにどんなアクションが!と期待が高まるのですが、何とまあ、まったく使い方が分かっていませんでした。まず、千葉ちゃんが悦ちゃんの父親という設定なのですが、スパルタを施すのはいいとしても、敵の襲撃であっさり退場してしまう。おいおい。で、敵の集団の中に倉田さんがいて、まあこれが隠れた善玉なのは誰でも分かりますが、その絡ませ方も実に中途半端です。あと、なぜか悦ちゃんが寺で山伏みたいな生活をしていることになっているのですが、わざわざそういう動きにくい服を着せているもんだから、アクションも映えていません。●ただしこの作品の価値は、蛾次郎さんを登場させて、しかも結構その出番が多いことなのです。悦ちゃんとのプチアクションっぽいシーンもありますし、啖呵バイまで見られますよ。 [DVD(邦画)] 4点(2025-04-15 02:12:33) |