1. 変な家
《ネタバレ》 家の間取りとか好きだし勿論ホラー好きだしで観賞。元ネタは未見・未読です。 何ともJホラーですねぇ。結構見入ってはしまいましたが、山奥の集落の因習、家にかけられた呪い、秘密の儀式、隠された場所等々、最早伝統的とでも言いたくなるJホラーあるあるネタの大行進です。展開や演出で特にこの作品はここが凄い!というところは正直ないのでは?と思えてしまいました。ただ、キャスティング(特に佐藤二朗さん、川栄李奈さん、斉藤由貴さん)で雰囲気を高めてくれているので、他のJホラー作品と比べて決して見劣りなどはしませんし、寧ろ見応えはあると言っても良いのでは?(石坂浩二さんと根岸季衣さん、高嶋政伸さんはちょっと勿体なかったような) 謎の間取り。間取り図を見ないと気付けない仕掛け。魅力的なお膳立てなのにそこに繰り広げられる物語がちょっとばかり使い古され感の強いものだったのが残念。サイコサスペンス寄りに仕立ててくれたらもっと気に入ってたと思います。原作のテイストに寄せない訳にはいかなかったのでしょうね。 クライマックスは意外と盛り上がらなかったです。主人公が猟銃を突き付けられるけど相手は全然引き金を引かないとか(いくらなんでも待ち過ぎでしょ)、ヒロインの姉の夫が危ないのに誰も見てるだけで助けようとしないとか、松明持って乗り込んで来た村人たちが主人公たちの脱出を一切邪魔しなかったりとか。結局、焼け跡から唯一発見されなかった彼は何処に行ったのでしょう?母子は洗脳が解けずこれからも儀式を続ける?エンディングもイマイチもやっとしたままでした。 原作は原案として引き継ぐにせよ、無理にオカルトに寄せずに作れたらもっとオリジナリティも出せたように思える、少々残念な作品でした。 [インターネット(邦画)] 5点(2025-06-18 13:55:17)《新規》 |
2. PERFECT BLUE
《ネタバレ》 今更ながらに観賞。世間での高評価は知っていましたがイマイチ鑑賞意欲が上がらなかった作品でした。 妄想と悪夢、そして劇中劇を巧みに組み合わせた物語は好物分野。なので短い尺とも相まって集中して観ることが出来ました。サイコホラー、サイコサスペンスの佳作ですね。ありがちな(失礼!)設定と展開ですが見事にミステリアスでファンタジックな物語に仕上がっていると思います。 ただ、劇中劇が無理やりAVまがいの内容を捻じ込んだ作品だったり、いくら脱がせ上手のカメラマンとは言えイキナリのフルヌード写真集だったりは何だか客寄せ的シーンに過ぎないように思え、アニメだからこそみたいなところを武器にしているようでイマイチ不快でした。実写でやったら普通にポルノになりかねません。もっとも、妄想の方のヒロインが走り回ったり飛び回ったりとかは、実写でやったら笑ってしまいそうで、やっぱ実写はやめた方が良いとは思いますが。 そう、アニメだからこその作品ですね。このまま実写はNGでしょう。で、正直なところ一番自分に合わなかったのはアニメなんです。この絵面、ダメです。好きになれません。それが一番個人的には苦痛でした。なので低評価で失礼します。 [インターネット(邦画)] 4点(2025-06-17 21:44:15)《新規》 |
3. 恋文(2021)
《ネタバレ》 若気の至りで罪を犯した服役囚が、純朴な被害者の娘の手紙によって心から悔い改めて他人のために生きる道を選ぶ、というドラマは特に目新しい訳でもないものの、その手段が代書屋というのはユニークですね。他人への尽くし方は様々あれど、その人の心情を汲み取って自らの筆で表現するというのは簡単なようでいて極めて難しい。主人公に文才があったのかどうかは分かりませんが、この設定には惹かれました。 ただ、短編故の唐突感は止むを得ないとしても、被害者の娘が偶然にも当の被害者である母親への手紙を代筆して欲しいと彼を訪ねて来るというのはちょっと直接的過ぎたかも。まぁ観ていて十分想定内でしたけれど。そこのあたりにもう少しヒネリがあればなぁと思ってしまいました。 そして、ラストの意味深なカット。雇い主に呼ばれて目を離したわずかな間に姿を消してしまう依頼人。彼女は幻だったのでしょうか?それとも全ては主人公の脳内ワールドでの物語だったのか?そこの受け取り方で依頼人登場の唐突感は消え去り、全く別の解釈へと変わりそうです。あ、そうか!それが私の求めていたヒネリだったのかな?という解釈での評価点です。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-06-16 18:30:57)《新規》 |
4. へんなおと〜A Strange Noise
《ネタバレ》 漱石の「変な音」をアレンジした人形劇。原作とは少々話の流れと言うか視点が異なるものの、原作と同様に他者の在り方を通じて主人公が命や生き方について気付いていく物語ですね。 基本モノクロの人形劇で、ラストに主人公の疑問が解消され、生きる喜びを感じ取るところで画面に広がるスクラッチアートのみがカラーになる。この演出は好きです。 ナレーションに合わせた人形の精緻な動きが素晴らしく、人形劇であることを途中忘れて観ていました。実写でもアニメでもなく人形劇で表現したことは正解だと思います。ストレートにテーマが表現されていると言うか、雑念なしに素直に作品世界に入って行くことが出来ました。 個人的には人形劇を見る機会は随分と減りましたが、改めて一つの表現手段として魅力的だなぁと感じた次第です。 [インターネット(邦画)] 7点(2025-06-13 14:00:29) |
5. 陳腐な男
《ネタバレ》 タイトルから始まって全編通じてスタイリッシュなタッチのアニメですね。理由は知らないのですが使用言語は英語。基本、日本語字幕というのはあまり見かけないような? 物語的にはオーソドックスな近未来SF。少子化とかで働き手が減る→ロボットが代わりに労働力に→人間がロボットに仕事を奪われる→ロボットに対する反感が増す→ロボットが駆逐される。そんな流れですね。本作の場合は、代用労働力としてのロボットを開発したのが子どもを産めない体質の女性であり、母親の気持ちで育て上げたロボットたちが無残に殺されていくことで廃棄責任者に恨みを募らせたものの、いざ復讐という段階で冷酷無比と思っていた相手が普通に働いている人間だったことを知って心が折れてしまう、いうところがポイントですね。 ビジュアルに惹かれたこともあって興味深く観賞出来ました。ただ、廃棄責任者を「陳腐」と断じる理由が今一つ見えて来ないです。「普通の」じゃなくて「陳腐な」としていることで、見下してるイメージになっているような?開発者の複雑な事情と心情からして、自らの子どものようなロボットを廃棄する男を蔑んでいるということでしょうか?個人的には、敢えて「陳腐」としない方が良かったように思えるところです。強過ぎるかも。 冒頭のカットは生き残っていたロボットが当局に射殺されるところなのでしょう。開発者と生き残った少女型の男性的ロボットが成長している姿?では一緒にいる女性は誰?そこから始まる回顧録は誰の記憶?すいません、理解力不足なのか解らず仕舞いでした。タイトルに?という点も含めての減点理由です。 [インターネット(邦画)] 4点(2025-06-13 13:18:59) |
6. ゴミ屑と花
《ネタバレ》 「ゴミ屋」という言葉を久しぶりに耳にした気がします。決して侮蔑軽蔑として使われていた表現ではなかったような気がするんだけどなぁ。でも、本作でそれを口にする人間は明らかに蔑んでいる感じ。直接経験したことは殆どないけれど、いろんな意味でキツイ仕事であることは間違いないです。かなり危ないし。分別の意識とかも大してなくてゴミは家から出したら知らないよ、というスタンスの人間がどんなに多いことか。 行政の職員として働いているのであれば待遇もまずまずでしょうけれど、今の時代は民間委託が主流。本作の二人も民間企業。決して特別厚遇されてはいないことでしょう。フィクションだし役者さんだし、とは知りつつも頭が下がる思いで観てました。 主人公は事故のPTSDで操縦出来なくなったようですが、元パイロット、でも今は操縦出来ないという履歴での再就職はきっと難しい。保有する資格を資格として使えないとなると厳しい気がします。で、彼が選んだのはゴミの収集員。家族との時間を大切にするには地元で働くのが一番。おそらくエッセンシャルワーカーだから、という理由で選んだ職ではないのでは?でも、働くうちに感じた世間の冷たい目、その反対に感謝の目、そして指導役の年下の彼女の+アルファの働きぶり。そういったひとつひとつに触れて行くうちに単なる地元の職場ではなく自分の価値を再発見出来るような職場としての意識が芽生えたのでしょう。 30分という尺はベストだと思いました。エピソードを増やすことは簡単かも知れませんが(なんなら連続ドラマとか)、シンプルに纏めたのは正解だったと思います。(確かに居酒屋の一件は必要だったか微妙ですが)後味にあったかさが残る佳作に6点献上です。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-06-11 17:51:29)(良:1票) |
7. ひびき
《ネタバレ》 主人公(と言って良いのか?)のサラリーマンは兎に角ウザッ!よくぞ警備員さんは我慢したもんだ。(最後の方でキレ気味になるけど) まぁ、ここまで絡むと殆ど威力業務妨害だから警察呼んでもいいのにと思ったりもしたけれど、それじゃ映画にならない訳で。独り暮らしで孤独に働く警備員さんも、きっと思うところが数多あるのでしょう。愚痴られてばっかりだから愚痴りたくなったのかも。思いつめてる風なサラリーマンその2は新たな犠牲者か? 自分なりに思いついた本作のテーマは「みんな同じ」といった感じです。体よく言えば「世の中みんな悩んで苦しんで、でも支え合って生きてるんだよ」みたいな?作り手の思いとは違うかも知れませんが、そんな風に思えた1本でした。ラストがちょっと弱いかなぁ?短編であることを生かして、もう少し意表を突いて欲しかったところです。 [インターネット(邦画)] 5点(2025-06-09 13:07:58) |
8. 審判(2019)
《ネタバレ》 男子学生が偽AIロボットだったというあたりで、もしかしたら?と想像はつきましたが、単に種明かしだけで終わらせずラストの皮肉たっぷりのキメ台詞が良かったですね。社会への警鐘という程に大袈裟ではないところに好感が持てました。 AIの進歩が指し示す将来の社会を、数多ある大作とは異なる視点でミニマムに作り上げた作品。面接官のちょっとスベり過ぎじゃないかという感じのコメディ演出は余計だったかも知れませんね。そこが残念ではあるものの、短編としての起承転結は楽しむことが出来た1本でした。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-06-08 17:26:16) |
9. しずく
《ネタバレ》 「ヤングケアラー」についてソフトに語った短編。敢えて「ソフト」と評したのは、往々にして厳しい現実を前面に押し出してしまいがちなテーマを、ケアを受ける母親は優しさに溢れた存在として描かれ、ケアをする娘は我慢に我慢を重ねながらも決して逃げることのない強い存在として描かれ、更にはサポートするワーカーも職務に真摯に取り組む包容力のある存在だし、娘のダンススクール仲間の少年も優しさに満ちていてキチンと分別がある存在で、ある意味恵まれた環境と言っても良いでは?と思えるぐらいに描かれているからです。 斜に構えてしまえば理想論に彩られているように思ってしまいそうな作風。でも、本来あるべき姿を奇を衒うことなく表現していることに好感が持てました。社会問題の捉え方として、短編ならではのこの切り口もありだな、と思えた1本でした。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-06-08 17:17:09) |
10. ショウタイムセブン
《ネタバレ》 元ネタの「テロ、ライブ」は比較的最近観賞したので記憶に新しいところ。アチラに比べると随分と抑えた着地点ですね。切り口が違うと言うか、本作の場合はマスコミや報道の在り方に一石を投じるスタンスが若干強めに感じました。 とは言え結構無理筋。ひとりのキャスターの暴走がこんなにも止められないもんなのか?んな訳ないだろ、って思えてしまいます。で、そう思いだすと全てが茶番に思えてしまい、んな訳ないだろ!と何回ツッコミ入れてしまったことか。 テーマ的には奇しくも時宜に即したと言うか、若干の自虐性も感じさせつつ(映画産業とマスコミは別物と理解してはいます)、少なからずオーソドックスな事件の背景ではあるものの、結構思い切ったものだとは思います。が、イマイチ軽く仕上がってしまったなと言う感じでした。 まぁ主演の阿部さんあっての作品ということは、既にご指摘もあるとおり私も同感です。阿部さんのキャラあってこそ成り立っている作品と言い切って良いでしょうね。その存在感に+1です。 ちなみに、「テロ、ライブ」が元ネタということなんですが、個人的にはもっと最近観賞した「ミッドナイト・マーダー・ライブ」の方を連想してしまい、オチを取り違えて途中まで観てしまったので尚更に勝手に混乱してしまいました。思えば生中継モノもいろいろ出揃いましたね。次はどんなのが出て来るのか楽しみでもあります。 [インターネット(邦画)] 5点(2025-06-04 00:11:00)(良:1票) |
11. あるいは、ユートピア
《ネタバレ》 謎の生物って巨大なダイオウグソクムシなのかしら?劇中の台詞にあるけど、ナウシカのオームじゃないみたいな気が。主人公の遊び相手が巨大化したとか?ある意味、終盤で告白してることは本当なのかも知れませんね。「自分が連れて来た」みたいな告白。 とするとこれは主人公の妄想の世界とも受け取れます。現実だとすれば怪獣モノかファンタジーか。妄想だとすれば、現実に苦悩する一人の若者の現実逃避の妄想劇とか。 いずれにしてもソリッドシチュエーションサスペンスとして楽しめる作品ですね。舞台劇的な密室劇。コメディ要素は必要なんでしょうか?その分、尺が長過ぎになっている感がしないでもありません。 テーマは人の生き様?命?ラストの最後の晩餐に突入して来た自衛隊(米軍との合同チーム?)は、必ずしも救済ではなかったようですね。結局誰も真の平穏を得られなかった。命さえも失ってしまう者さえいた。そこに残ったのは絶望だけだったのでしょうか? やっぱり妄想劇ではないように思えて来ました。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-06-03 09:44:14) |
12. トゥルボウ
《ネタバレ》 結局「トゥルボウ」って何だったんだろう?否、正確には「トゥル」かな?「トゥル坊」なのかな? 一見水中の動物(何類というか失念)のようでいて土中に生息。しかも金属音で土柱化してせり上がる?と言うことは本体は太くて長いとか?パーツを刈り取ってるとか?謎。 テーマ性云々と言うより、メインの物体のビジュアルで意表を突く感じの作品に思えました。この監督さんの他作でも感じたことです。てか残念ながらテーマがイマイチ解らんです。 主人公の陰鬱な雰囲気(そりゃ仕事見つからんかも)から何とはなしに見えて来る将来。「トゥルボウ」が少しでも明るい未来に導いてくれるのか?おじさんとの出逢いで彼の未来が開かれていくのか?やっぱり解らんです。 食べたくはなりませんが、エンドロールのお洒落な感じが良かったです。やっぱビジュアル主体の作品に思えてしまいますけれど、そこに+1です。 [インターネット(邦画)] 5点(2025-06-03 09:30:58)(良:1票) |
13. 世界の果てという名の家
《ネタバレ》 思いっきりネタバレしてしまうと、SFではない、とも言えそうな気が。男の見る世界はVRの世界。現状でも実現出来そうな世界。成長した息子の姿だって徹底的に情報収集すれば、現在の技術でも実現可能なんじゃないかと。要はどこまで主人公についてリサーチ出来るかってことのような気が。息子と触れ合う触覚だって実現出来そう。 とは言え、僅か10分余りの尺でアイディア一発(失礼!)で撮り上げたところは賞賛すべきじゃないかと思います。この物語を長尺化して魅力的に制作出来るかと言うと難しいかも知れませんが、短編作品としては十分楽しめました。 強いて個人的に言えば、イマイチ納得出来ないのは招かねざる客である息子を殺害した犯人への対応。逃げてる場合じゃないでしょ。徹底的に復讐すべきでは?などと思ってしまうのは無粋なだけかなぁ? ラストの男泣きは何だったのでしょう?復讐出来なかった自分の情けなさ?世界の果てと言う名の家への出禁になってしまった、つまりは息子に会えなくなってしまったことへの絶望?うん、やっぱりもう少し尺延ばして語って欲しかったような気もします。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-06-01 18:13:53) |
14. お母さんが一緒
《ネタバレ》 これは強烈な家族ドラマですね。多少のデフォルメはあるにせよ、結構な割合の家族で似たり寄ったりの諍いはあることでしょう。一つひとつの台詞が見事に三姉妹のキャラを表現していて、自分なりに想像するこの家族の昔からの在り様や家族関係を、まっこと当を得て表現しているものと思わせてくれます。 と、ここまで書いてみて、既にレビューされているお二人が殆ど書き尽くしてくださっているので重複は自粛します。(勝手に乗っかってスイマセン) これだけワンパターン的に繰り返される悪口雑言に全く飽きることなく、それどころか次はどうなるのと期待までさせてくれる脚本と演出、そして出演者の演技。これは脱帽でした。満足。 [インターネット(邦画)] 8点(2025-05-31 10:29:09) |
15. お願いだから、唱えてよ
《ネタバレ》 短編でラストのヒネリがポイントとなる作品なので、そこんところはネタバレ無しが良さそうですね。と言っても、ラストのヒネリ部分は容易に先読み可能。それまでのベタなコメディ感から一気にほのぼの系へと転換するので子気味良しと言ったところか。舞台劇然とした雰囲気は結構好きです。 出来ればクレームして来た少々変人風の隣人が絡んでも良かったのでは?最初の騒ぎでクレームしといて、その後もっと騒々しいのに再登場しないのも変ですし。コンパクトに纏めるのには要らなかったのかな?でも、だとしたら最初の登場も要らないような…? [インターネット(邦画)] 5点(2025-05-30 11:41:13) |
16. 愚鈍の微笑み
《ネタバレ》 60分というやや短めの作品にも関わらず、やたらデカ文字のオープニングに約5分、3人の登場人物にそれぞれ約5分のほぼワンカットの紹介的映像。その後やっとタイトルが。ラストはラストでオープニングのほぼ繰り返しのエンドロールに約5分。それだけで合計20分以上なので正味は40分弱の作品。正直なところ、その時間配分と映像表現、更にはオープニングから鳴り響く不安を煽られるようなジャジーなサックスソロという演出意図は、今一つ私には理解出来ませんでした。 物語はかなりシンプル。楽しい非日常を楽しむ女性たちに突然降り注ぐ恐ろしい非日常。その時、彼女たちは一体何を選択するのか?日常を離れ、自由気儘に過ごしていた時間を何としてでも持続させようとし、迫り来る爆音や振動も無いものとすべく努める彼女ら。しかし、現実は待ってくれない。それではどう受け入れる?さっさと自衛隊員に従って避難する?でも、それって力任せに現実に連れ戻されることになる。じゃあ、この苦難を運命として受け入れる?大好きな人たちと運命を共にすることが最良にして最期の決断? 最初に述べた矢鱈ロングカットの演出には馴染めませんでしたが、作品そのもののテーマ性と言うか観る者に投げかけて来るスタイルは好物です。トリプル主演の3人にも三人三様の魅力。手放しで高評価は出来ないまでも馴染めない部分も含めて魅力ある1本でした。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-05-30 10:52:59) |
17. 愛に乱暴
《ネタバレ》 原作未読です。 主人公の桃子は、どう考えてもとんでもないストレスに晒されて生活しているに違いないのに、整理整頓清潔な暮らしに励み、義母に心から優しく接し、ゴミ捨て場が汚れていれば率先して清掃し、手作り石鹸教室では懇切丁寧に指導する。嫌な顔ひとつせず疲れた顔を見せることもなく、彼女の暮らしぶりは主婦として妻として模範的としか言いようのないもの。それなのに報われない。何故? 報われないどころか、可愛がっている飼い猫は姿を消す、ゴミ捨て場では不審火、手作り石鹸教室で提案した新企画は無視、更には夫の不倫等々、日々の小さなストレスが蓄積しているところに大きなストレスの波が覆い被さる。そりゃ錯乱してしまうでしょう。 ところが、桃子のストレスが怒りに転じてピークに達したところで明らかになる過去。え?そうだったの?他人のこと言えないじゃん!という新事実。放った矢が巡り巡って自分に当たってしまった構図。ハッピーエンド?エンドロールの背景に鳴る靴音は新たな船出?違うんだろうなぁ…。 主演の江口のりこさんが素晴らしいです。甲斐甲斐しい妻のパートでは可愛らしく、怒りに震えるパートでは底知れぬ恐ろし気な迫力。難しい役どころを見事に演じ切ってますね。次の主演作が楽しみです。 タイトルの「愛に乱暴」って、シンプルに主人公の生き様なのでしょうか?日々の暮らしは丁寧に。でも、愛については乱暴に。日々の暮らしには冷静に対処(夫も認めている)出来ているけれど、こと愛に関しては激情的になってしまう。そんな彼女のキャラクター?夫については「乱暴」じゃなくて「乱雑」な気がします。 ちなみに、本作は神奈川県綾瀬市のフィルムコミッションを活用。個人的に馴染みのある土地故、ご当地映画的楽しみも出来て一粒で二度美味しかったです。なので、そこに+1! [インターネット(邦画)] 7点(2025-05-29 21:51:06) |
18. 侵入者たちの晩餐(TVM)
《ネタバレ》 バカリズムという人の書く脚本は、彼の芸風をそのまま映し出したようなおかしみがありますね。細かいと言うか、誰でも思ってても気付かないようなことを取り込んで、しかもそれがキチンと観る者に伝わるように表現出来ている。勿論、万人に受ける訳ではないのでしょうけれど(寧ろ嫌う人もいるかも)、私にはピンポイントでハマってしまいます。 なので、普通に考えたらバカバカしい設定と展開、そして演出なんですが、比較的短めの尺とは言え始終(大笑いじゃないです、クスクスと)笑いっぱなしで過ごせました。よくよく考えれば、同氏の他作(映画であれ連続TVドラマであれ)と殆ど同じような作風(出演者も)なんですが、何せ基本的に芸風が好きなので本作についても高評価です。ラストのちょっとしたどんでん返しもいいですね。いや~面白かった。 [インターネット(邦画)] 8点(2025-05-29 09:34:30) |
19. 少し未来のある部屋で
《ネタバレ》 ひとつ間違うとコメディになってしまいそうなシチュエーション。もっとも、多様性が常識化した今の時代に、これをコメディにしたらさぞかし怒られるでしょうけれど。 男性による出産という設定は、SFの世界では既視感がないこともないような。ただ、本作では出産願望のある男性が実はゲイであるというひとひねりがあります。そして、突然訪れたお腹の子の父親には彼なりの苦しみがある。決して単純な話にはならない変化球的展開が新しく、物語に厚みを持たせてくれてます。 現実問題として、人工子宮による男性の出産って、倫理的な問題とかいろいろ障壁があるでしょうけれど実現可能なように思えてしまいます。現状では、出産そのものは女性に限られたお話(勿論原因は男性にもあることは承知していますが)、という前提があってこその不妊治療だったりする訳で、もし本作のように男性による出産が前提条件に加わったならば、当事者の思いは一体どうなることやら。決してコメディにはなり得ない深刻な問題ですね。 短編だからこその問題提起。結末までは示されない中、考えさせられるものはありました。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-05-27 22:14:14) |
20. 帰り道
《ネタバレ》 戦後派の自分としては想像の域を出るものではありませんが、どんな思いを抱いていようと徴用され戦地に送り込まれる前日の苦しみは皆同じでしょう。本作については、必ずしもセクシャルマイノリティをテーマにした作品ではなく、極限の心理状態における愛する人への偽らざる感情を描いたものではないかと。 とは言え、ゲイの学生にスポットを当てていることは確か。戦時下であれば特に風当たりは強く、到底カミングアウトなど出来なかったことでしょう。そうじゃなくても不安定な精神状態なのに、性病検査で全裸になって並ばされているのですからより一層心は乱れてしまいます。 極限状況における恋心を少々角度を変えて捉えた意欲作。わずか10分の尺の中で大いに語ってくれました。 [インターネット(邦画)] 6点(2025-05-27 21:40:12) |