1. ナイアガラ
《ネタバレ》 生きていたジョセフ・コットンがマリリン・モンローを追いかけるクロス・カッティングのみを問題にしよう。観客をハラハラさせて引っ張り込むこの追いかけの並行編集という技法は、まさに当のフィクションの登場人物たちを呑み込む罠である。誇張を承知で言うのだが、この技法が、ベルトコンベアのごとく人物(ジョセフ・コットン)の理性を押し流す、復讐の殺人へと。ほんらい「普通に」妻を告発して投獄するという手があってそのほうが自らは無傷でいられるところだ(笑)。 [ビデオ(字幕)] 7点(2025-06-22 22:54:23) |
2. 嘆きのテレーズ
《ネタバレ》 作り手はじっくりと説得的に描き込む、それを受け手もじっくり堪能する、というフランス映画だ。ハリウッド調とは異なった、バッド・エンドのアイロニーなんかもいい。 [ビデオ(字幕)] 8点(2025-06-11 10:56:00) |
3. 夏物語(1996)
《ネタバレ》 特徴ある「三種類」の女性が相手でいずれも捨て難いとなれば(実はあの本命はケシカランが)どれかに絞れない、主人公の「優柔不断」となる。この「優柔不断」は本来どの選択肢もキープしておきたいという欲望の表れ、ということだろうが、しかしこの場合はむしろビョーキに近い。だからこそ、この「優柔不断」の贅沢を転覆する外的事情があのような目覚ましい解放となる。皮肉なものである、というか、こういうアイロニー味こそロメールだ。 [DVD(字幕)] 7点(2025-05-06 08:18:23) |
4. ナイト&デイ
《ネタバレ》 ドンパチにより死体でうようよの機内シーンで早くも『ショアー』における「死体の山」を思い浮べた。野暮は承知でやはりあえて言っておかなくてはならないでしょう、ひたすら快適な娯楽映画だからといって排除の暴力に無関心であっていいはずがないこと(もちろん「無関心」だからこそ「ひたすら快適」なのだが)や、どんな殺し合いがあってもおとがめなしに無傷で生き残る主人公はアメリカというものの隠喩であること、などを・・・というように受け取るよう挑発している映画だとはいえ。 [DVD(字幕)] 5点(2012-03-13 23:09:21) |
5. 浪華悲歌
《ネタバレ》 なかなか観るチャンスに恵まれなかったのが、ついに望みが叶った日は特別なものだった。照明だけでも凄い。山田五十鈴が無力な恋人と歩く薄闇の移動撮影のなかでふと顔が浮かび上がったりするのが哀しい。見終わったとき完璧だと思えた。 [映画館(邦画)] 9点(2011-03-16 19:24:31) |