1. 人情紙風船
《ネタバレ》 入り浸っていた薄暗い『京一会館』(ローカルな話題で恐縮だが、今はなき名画座in京都)で、あの冒頭の暗い雨に続く眩しすぎる「陽光」にまず瞠目した(そもそも映画館の中の晴天は眩しい)。そして二人の主人公のそれぞれの物語が進行し、やがて次に雨になる時、この二人の主人公にそれぞれ決定的な局面が訪れる。能動的な髪結はのっぴきならない行動に出るし、他方受動的な浪人は士官の道が閉ざされ雨の中に立ち尽くす。その翌日のまた晴れた「陽光」のもと、二人の主人公は、この映画で唯一、同じ画面の中に入る(喧嘩で啖呵を切る髪結の姿と、それを縁側伝いに眺める浪人)、これがなんともいいのである。因みに、中国での小津安二郎とのツーショットが残されている、鬼才山中貞雄の早逝悲しすぎる。 [映画館(邦画)] 10点(2025-06-27 16:08:20) |
2. 日曜日が待ち遠しい!
《ネタバレ》 映画館で、このファニー・アルダンだけを観ていた感じ。あの「セラビ」(この軽やかさ良い!)を発しながら爽やかな「外部」を振りまく、元気よく。長身だから男にも体力的に負けない。で、探偵として、ややこしい人生模様・犯罪関係の「内部」に嬉々として顔を突っ込む。そのありようがいいのである、それだけである。正直、この映画のハナシはさっぱりわからない。いまどきのミステリーもののように、犯罪の人間関係を機能化しすぎで「こころ」が乏しい、という気がする。 [映画館(字幕)] 6点(2025-05-18 09:45:30) |
3. 日曜日には鼠を殺せ
《ネタバレ》 あのジンネマンのスペイン市民戦争がらみの「真面目な」抵抗映画的な作品である。映画なので敵の悪役の視点からけっこう描かれたりもする(常套表現だが、このことのみがそれなりに興味深い)。人の生死が問題になるような話なのに子供の起用がまったく迫力を欠くのは、この作品のつまらなさの一例である。 [DVD(字幕)] 3点(2012-04-22 00:04:23) |
4. ニュー・シネマ・パラダイス
映画館で観たときからべたついてくる映画だなという感じがあった。映画を好きになるはずの映画、ということを押し付けるような感じと言おうか。子供をあしらっているが、子供にとって映画はむしろ怖いものである。この映画の否定派の感想をいろいろ聞きたい気がする(ここまで2011年のレビューで評点が4)。いま見直すとフェリーニ感もあるし切ない味も良くて、評点の変更(2024年)。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-25 11:46:46)(良:1票) |
5. 人間蒸発
《ネタバレ》 「探す映画は探される」。探す主体こそがやがてまさに探される客体となるのは、何もこの映画に限ったことではない。この映画作り自体がはじめからそれを意図していたであろう、探すことをやめた時、見つかる重大なこと、があった! [映画館(邦画)] 8点(2011-03-14 20:43:50) |
6. 日本春歌考
《ネタバレ》 安保などをめぐる政治の季節の敗残兵世代に、60年代後半の新しい世代が対置される。当時この映画の宣伝の文脈で、荒木一郎が共演の「新感覚の」若者たちと共に「スター千一夜」でじゃれ合っていた。このインタビュー番組の「コミュニケーション」にろくに応じず、じゃれ合っていた、大人の理解をまったく超えた新しき存在として。それがなんともかっこ良かったのである。この映画が原点なのである、私の場合。ところで、大島渚の不幸な点は、この映画でも露呈したような、今やジェンダー論的に生き残れないような女性観にある。同じ松竹ヌーヴェルヴァーグでも吉田喜重とそこが違う。 [映画館(邦画)] 9点(2011-03-10 22:55:31) |