181. クーリエ 最高機密の運び屋
《ネタバレ》 オレグ・ペンコフスキー。彼の名を現在生きている人間は記憶に留めておくべきだし、そりゃ旧ソ連の中においては裏切り者であっただろうけど彼の名誉が本国でも回復されることを切に願う。 国家って酷いもんだな。情報をリークする者もそれを受け渡す任についた者も、良いように使われた挙句積極的に救済されないんだもんな。KGBの酷薄なことはもとより、CIAだって大して変わらず国家ファーストで個人は顧みられないんだね。細かいことだけど、グレヴィル夫人に説明に訪れたCIAの女職員の華美な恰好にちょっとイラっとしました。そんなリッチな風体で夫の危機を告げられてもね。この辺も演出なのでしょうか。 サスペンスタッチの諜報劇は見ごたえありますし、特にKGBの探るような目つきは人から壁までおっかない。 ラストに流れるグレヴィル・ウィン本人の映像を見るに、失礼ながらCIAが「KGBが目を付けなさそうな人物」と評した像にぴったりなんですな。その点B・カンバーバッチだと知的な感じが否でも滲んでしまって、ベストなキャスティングとは言い難いと思ったなあ。ベネさんは大減量に臨んでの熱演でしたけども。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-08-11 22:21:45) |
182. ゴーストライダー
うん、この手の映画はどういう基準をもって評価したら良いのかな。アメコミだけあってドクロやら(しかも火吹きっぱなし。何故)派手なバイクやら顔色悪い怪物とかの世界観は10歳の米国少年なら喜びそうだけど。 面白いかと聞かれると、悪をやっつける筋書きは定石通りでそんなに面白くもないです。 もっともわたしとて何でコレを観たかっていうと、出演作を選ばないオスカー俳優ニコジーの無節操ぶりを確認する、というだけの理由なんですけどね。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-08-04 22:35:41) |
183. ザ・ハント(2020)
《ネタバレ》 おお、これがリアルな今の米国なのですね。J・ブラムお得意の切り口で見るカオスなアメリカを映した本作はまさに旬のモノといえます。 リベラル派も保守派も実に分かりやすくステレオタイプに描かれて、どちらもおちょくられてる。ぱっと見てすでに外見から、狩られる側はプアホワイト。肥満体型、銃愛好者、陰謀論者とわかりやすい。狩る側はセレブ、スーツ着用、アンチ差別主義、温暖化への高い問題意識、とこちらの分類もみごと。リベラル夫婦は差別はイケナイ、という主義の下「狩られる人間」を選別する際も黒人を入れなくては、と主張するのだった。もう何をか言わんや。 極端な二派の中で一人、ヒロインのクリスタルが中道でハッキリ言うとまともに見えて安心します。まともといってもアッサリ人を轢き殺して顔色一つ変えないんですけども。まあ強い。 二極に分断していがみ合うアメリカ社会の縮図をさくさくとなぎ倒す彼女がとにかく爽快。手法としてB級サバイバルアクションを選んだのは実に正解に感じます。 観客に主人公を絞らせない意外な序盤もパンチのある演出です。 終盤の女同士の格闘シーンは少し長いかも。どのくらいが吹き替えなのか分かんないけど、ヒラリー・スワンクもベティ・ギルピンも暴れてるうちだんだん疲れてきちゃってるのが妙にリアルでした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-07-30 21:54:53) |
184. スクリーマーズ
《ネタバレ》 いやあ、意外にも?引き込まれて観てしまいました。B級ならではのしょーもなさ感はふつふつとしてますけど面白いです。ブレードランナーやエイリアンといった一級クラスの重厚感とは比べ物にならないけれど、異星の風景や制御不能になったAI武器の怖さなどは、きちんと映画レベルの画を見せてくれます。 ・・にしても、発想が自由にぶっ飛んでいくのでこちらの予想のことごとく上を行かれる楽しさがこの作品の魅力。まさかねえ、思わんよ金属製の移動式丸ノコが人間の姿にそれも勝手に進化するなんてさ。「血が流れれば人間」の大前提も後半には引っくり返しちゃうしさ。敵に惚れたゆえ自身の使命と葛藤するなんて高度な感情まで獲得しちゃうなんてさあ。あ、それにNEB社と連合軍の関係はもとより、連合本部のシリウス切り捨てのサイドストーリーはどこ行ったの。 もう、伸び伸びと製作が自由。こりゃあ、無機物であるはずのぬいぐるみにも寄生できちゃってるのかもよ。地球危ういじゃん。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-07-28 22:51:15) |
185. 告発のとき
《ネタバレ》 こんなに原題とかけ離れた邦題もないのではないか。これではジョディ・フォスター主演のやつかな、と勘違いしてスルーする人もいるだろうし、第一制作の思いが全然伝わらない。 トミー・リー扮する父親は古いタイプの軍人。かつての自らの軍人としての経験・信条が未だに生きていると信じていたのでしょう、息子二人も軍人になった。父は息子に語るのでした「共に戦線で命を張った仲間を裏切るはずはない」「お前はちょっと神経質になっているだけだ」。 でも現在の戦争は彼の時代と大きく様変わりした。父たるトミー・リーは大きく見誤っていたのです。 かつてエラの谷で英雄になったダビデの物語。(これが原題ですね)幼い子にトミー父が語ったような「勇気をもって戦えば勝利することができるんだ」的理想論はもう通用しない。 戦争はより複雑化して残酷になって人間の心を粉砕してしまうということを、ラストに息子の同僚に聞かされているトミー・リー。彼のひしゃげた顔はむごくて見ていられなかった。 トミー父の傍に地元刑事であるシャーリーズ・セロンを置いてサポート役にしていることが、観ている側の理解を助けます。彼女もまた、職務において自身の判断の誤りで悲劇を回避することができなかったという重荷を負っています。そして幼い息子の「なぜ王様はこどものダビデを行かせたの?」という問いに答えられない。 なぜ国家は若者を殺すのか。敵はゴリアテではなくなっているのに。国旗を逆さに掲げたトミー父の絶望を思うとやり切れない。 誰も勝者のないイラク戦争の一端を、静かに深く掘り下げた作品でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-07-23 22:29:44) |
186. モーリタニアン 黒塗りの記録
《ネタバレ》 グアンタナモ収容所問題に切り込むは名優J・フォスターとB・カンバーバッチ、厳しさと優しさが交互に垣間見える「信念の人」ぶりは流石です。 欲を言うとジョディ扮する弁護士ナンシーのストーリーがもう少し欲しかったです。世間からの風当たりの強いことや部下の考えとの違い等、彼女側のドラマをもっとふくらませることができたのではと思うのですが。特に、依頼人がテロリストかもとの疑念を抱いて取り乱すテリとの口論の場面は丁寧に描いてほしかった。 法を遵守すべきとの信条は理解できるけれど、それがテロリストを解放することに繋がるのでは?という若い部下の問いに答えてほしい。 映画は結果として依頼人は無辜であるとして裁判に勝つのですが。もし依頼人が9・11のリクルーターであったとしたらナンシーどうすんの、どう思うのという疑問は残りました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-07-20 22:37:13) |
187. キング・オブ・コメディ(1982)
《ネタバレ》 やあ、怖いですねえ。こんなに怖い話なのにライトなタッチで描けているのが驚異的。 もうデ・ニーロの顔が怖いもん。なんかぬめっと粘着質な顔つき。このしつこさ。ちょっとリアルにその辺にいそうでざわざわしますね。 ジェリー・ルイスの被る迷惑なこと、心からお察ししますよね。きっと現実でも経験あるんじゃなかろうかこのリアルな演技を見るに。 自分の才能を信じるのは良いとしても、なぜだかこの手の人たちは下積みをすっ飛ばそうとする。ライブで客の前に立って力試しをしようとせずに、ジェリーのようなトップにいきなり押しかけるんですな。 この話ではイカレた奴に珍しくも相方、それも女がいてこれがまた自分の思いばかり通そうとする完全なるストーカー。デ・ニーロとはまた別種の暴力タイプでげんなりします。もっともこの女の頭の悪さがコメディ感に一役買っているのですが。 ラストは呆気にとられたのだけど、どなたかがパプキンの妄想であると指摘していて目から鱗が落ちました。ううむなるほど。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-07-16 19:01:52) |
188. ビューティフル・ボーイ(2018)
《ネタバレ》 薬物中毒者がそう簡単に治癒しないだろうとわかっていても、何度も挫折するティモシー・シャラメを見ているのはつらい。心が折れてゆく父親や周囲の人間を見るのもまたつらい。なんてこった、と途方に暮れます。薬物の恐ろしさを啓蒙する役割をきっちり果たしている作品ではあります。 薬物はもちろんダメだけど、手を出すに至る心の問題や生きづらさが存在するはずで、そこを知りたいのに作中での掘り下げがちょっと足りない。ガールフレンドも立派な家のまともな育ちに見えますが。あんな普通の子もオーバードーズの危険に晒されているの?アメリカは? [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-07-06 23:29:28) |
189. トプカピ
泥棒映画の基本のキともいえる楽しさ。後の、一体いくつの作品がこの映画にインスパイアされたことか。 ちょっとずつ修正を余儀なくされる計画、間抜けな新入り、追う警察はピント外れ。計画の山場は堂々たる緊張感。あまりのズッコケなオチも含めて面白いなあと感心。 当時の異国情緒たっぷりなトルコ市街の映像も新鮮でした。屋外での大レスリング大会って、あんなに油でヌラヌラになるんだ・・。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-07-02 22:46:24) |
190. トレマーズ
《ネタバレ》 のどかでちょっと安い感じが真正B級作の佇まい。B級だからこそ発揮できるアイデア勝負の脚本がけっこう秀逸なんですな。 怪獣を4体用意してそれぞれ別のやり方でやっつけるんですが、4通りも考えるのって大変だと思うのよ。エライです。それにこの怪獣、人間の武器の使いようでちゃんと死んでくれるのがミソ。よし、やった、あと3体!という手応えがあって嬉しいです。こういうの珍しくないですか。超絶に強いのが一体で、そいつ相手に難儀するパターンが多い気がする。調べたわけではないけど。 「怪物の名前を何にするか」で議論するのんき描写のかたわら、電柱の上で発見される死体とか、老夫婦が地中に引きずり込まれる場面などは本当に怖い。何だこれ?って土をよけていったら車のフロント部がヘッドライトも煌々と現れて言葉を失う。やー、ここも巧いなあ。 必死のはずがなんかユルイ。この独特な空気。若きケビン・ベーコンがきっちりハマっています。 ハナからA級を目指さずにちゃんと低予算で作り上げようという気概の感じる快作です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-29 23:28:30) |
191. 最後の決闘裁判
《ネタバレ》 ああ、苦手な中世だ。科学も芽生えてなくて因習ギチギチで人間は争ってばかりの。さすがリドリー・スコット、画の力にかけては当代随一の手腕とセンスの監督です。眼前に広がる石造りの城も荒野も硬くて寒々しい中世ヨーロッパそのもの。画力だけで映画作品としての格の高さを感じます。 主演の三名の演技も良かった。各々の視点に沿って出来事を描く羅生門スタイルであるゆえ、それぞれが三パターンの演技を要求されるのですが、なかでもジョディ・カマーが見事。微妙な表情はちゃんと三通りに違い、三番目の‶本物のマルグリット”がやはりというか一番説得力のある造形でしたよね。 それにしても現代の人権感覚では何もかも理解しがたい話です。実事件とはいえ数百年も前のこと、この映画の解釈とは別の事情があったのかもしれない、とか色々考えさせられました。だって敗けたらマルグリットも火あぶりだなんて。なんでこんな滅茶苦茶な決闘裁判に臨むの二人とも。ああやだやだ中世こわい。 三パターンのドラマを観終えて思うはクソな男どもに搾取されるばかりのマルグリットの心の痛み。封建時代の根底に流れるあまりの男尊女卑の思想にはめまいがしそうになりました。こんな時代でも仲睦まじい夫婦もいたんだよねきっと?そんなお話を聞きたいな。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-06-25 18:14:08) |
192. カムバック・トゥ・ハリウッド!!
ハリウッドの老優に恩給を与えたくて作ったんだろうかこの映画。 デ・ニーロもM・フリーマンもトミー・リーもゆるっとラクだなあこんな脚本。役作りも大していらないし。 コメディならコメディでもっと振り切れてほしい。中途半端にトミー・リーの「老いた名優の哀愁」話なんて入れなくたっていい。すごく安易に感じる。 映画は正直4点評価なんだけど、デ・ニーロの小物プロデューサーぶりがやっぱり上手くて、その空とぼけた表情なんか観てて楽しかったのでプラス1点とします。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-06-24 23:52:45) |
193. パーフェクト・ケア
《ネタバレ》 アメリカの後見人制度が社会問題になっている、と報道されていたのはつい最近だったと思うんだけど。早くも映画にしてしまうとは。ハリウッドって時事ネタの掴みが早いなあ。時事ネタと言ってしまうには、しかし行われていることはかなりえげつない犯罪行為と言っていいと思う。 親切づらで高齢者を食い物にして財産を巻き上げるロザムンド・パイクの怪物ぶりが炸裂する前半は、恐ろしくて肝が冷えました。 でもロシアン・マフィアが登場してからは、マーラの超人ぶりはチャーリーズ・エンジェルかスティーブン・セガール並みの不死身の強さ。そうなると映画のリアリティも一気に削がれてしまいました。 善意をベースに法を味方にできていることが悪徳後見人らの手強いところ。安易な犯罪モノの娯楽映画にするのでなく、現実に打てる手立てで対抗する(そして勝つ)ドラマが観たかったです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-06-19 21:33:36)(良:1票) |
194. カトマンズの男
半世紀前のフランス映画にこんなに力いっぱい振り切れたギャグシネマがあったとは。なんというか開いた口がふさがらないほどのはっちゃけぶり。海に落ちたベルモンド、なぜかクレーンで吊り上げられたと思ったら船の排気筒に突っ込まれて真っ黒け。コロコロコミックみたいだ。 そんな程度(失礼)のずっこけを撮りに本当にわざわざカトマンズへロケしに行く、その熱量には畏れ入ります。カトマンズはタイトルにあるけれどほんの少しの滞在のみ。むしろ香港の濃ゆい街が目に刺さって金と赤のハレーションを起こしそうです。 ウルスラ・アンドレス、当代きっての人気女優もよく走ってお馬鹿映画を盛り立てています。大笑いはできなかったけど、制作の熱さがひしひし伝わる映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-06-18 16:23:55) |
195. コリーニ事件
《ネタバレ》 ドイツ人資産家老人が殺された。犯人は逃げもせずに捕まるけれど、弁護士にも一切動機を話さない。導入部からして一級のサスペンスの様相。さらにその後の展開は予測不能かつ衝撃的でした。レオパルト戦車並に重量級の、まさにドイツにしか作れない映画です。 凡百の脚本ならば被害者のマイヤー氏が元ナチ親衛隊長であったことが判明したくだりで、状況は急転回し(傍聴席や検察側の動揺ぶりでも空気の変化は手に取るように分かる)‶1942年に何があったのか”を見せることでコリーニ氏の情状が酌量されて終幕となっていたことでしょう。 しかしここから話が二転するのには唸りました。 被告も若き弁護士(移民二世のトルコ人なんですね、これがまた)も観ている我々も、求めるのは「正義」のみ。戦後ドイツがずっと取り組んできた清算すべき課題が事件に大いに絡んでくるとは。ドレーアー法・・、知らなかった。衝撃を覚えました。 話の横糸となるライネン弁護士の人間関係も丁寧に織り込んであって、ドラマに厚みを持たせます。恩人を告発することの葛藤、恋人との亀裂、望まぬ師弟対決、とかなり盛りだくさんで穏やかじゃありません。そのうえ人種差別も顔を出します。 そしてフランコ・ネロの演技が素晴らしかった。台詞がほとんど無いにも関わらず、彼の瞳はあまりに多弁で圧倒的でした。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2023-06-14 23:46:39) |
196. ライフ(2017)
《ネタバレ》 かなり立派なSF作品だとは思うんですけども。重量級の役者陣はきちんと個性のある演技をしているし、映像技術は一級レベル。無重力のステーションの中を空を切って移動する画など、ほんとに宇宙空間でロケしたかのようで心躍る映像体験であります。 クリオネ型の火星由来エイリアンの気色悪さも出色の出来。壁に沿って移動する時なんかピタピタと音がして、その質感のリアルたるや。(もっとも大きくなってからは、かのギーガーエイリアンほどのインパクトはないけれど) SFスリラーとして評価するなら及第点だと思うのですが、致命的なことにこの映画至る所が「観たことある」なのです。限定空間に入り込んだ凶悪異生物、防疫にこだわる検疫官、望みを託した船外作業の失敗、救命艇での脱出・・。このプロットで思い当たる作品て、複数挙げられますよね。 例えば「宇宙服の冷却材ってヘルメット内に漏れ出すんだ?」といった細かい演出の工夫はあるけれど、お話そのものが過去作の焼き直しなので新たな楽しさをもたらしてくれるものではないのでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-06-12 18:45:44) |
197. 暴走特急
《ネタバレ》 わたしはコレが初セガール。大体彼の出てる作品はどういう展開を見せるのか想像つくのでパスしてたのだけど、ここの点数が高いので初めてセガールワールドにお邪魔しました。 顔が大きいのは見てわかるけど、けっこう声も高いんだね。そして噂に違わぬ無双ぶり。何の心配もせずに観られますね。撃たれても貫通すれば問題ない、ってもう任せたよ。 何もできずにライバックに丸投げの軍上層部の体たらくぶりも、彼の名にビビる敵側もセガールの太鼓持ちみたい。そういう映画だけども。 そうだ冒頭の同僚カップル、列車の個室では全裸にならないほうがいいと思うよ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-06-10 23:41:22) |
198. エール!
《ネタバレ》 終盤近く、校内発表での無音。ここがこの映画の白眉と言っていいでしょう。観る者は度肝を抜かれると同時に、初めて理解できるのです。ポーラの両親と弟の世界を。彼らとポーラの間にある大きな溝を。 娘の喉元に手を当てて「歌」を感じようとする父親。試技の際に手話で歌を家族に伝えようとするポーラ。互いに歩み寄ろうとする彼らの姿は感動的でした。 正直、中盤くらいまでは互いの自己主張が強すぎなうえ、家族間でのあけすけな性関連の描写がどうにも受け付けなかったのです。ややげんなりしながらも最後まで観て良かったな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-06-07 23:06:49) |
199. プルートで朝食を
《ネタバレ》 いやもう、キリアン・マーフィー渾身のおネエぶりにただただ脱帽。終盤へ向かうにつれだんだんメイクの腕が上がって?、ゴージャス美人に仕上がってんの。この完成度の高さよ。 キリアン扮するキトゥンはナイーブでとても優しい。このタイプの人にありがちな迫害にも遭いますが、いつも健気に明るい。痛々しいほどに。ただ、全体の筆致は軽くさくさくと展開し、キトゥンにしても幼なじみの友人たちとはずっと良い関係だし実父とも和解できたりするのですよね。ラストの妙な明るさは不思議なくらい。 喜劇と言うにはつらく、でも悲劇という言葉もキトゥン自身が否定しそうな、ちょっとどこに観方を置いたらいいのかわかんなくなるような不思議な感触のお話でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-06-03 23:26:06) |
200. ディープ・ブルー(1999)
《ネタバレ》 レニー・ハーリンてわたしのイメージでは”火薬量は多いけど緊迫しない爆破パニックもの”の監督でして、簡単に言うとB級娯楽作の定番請負人なのですが、でもわりと大物を使うんだよな。 今作もきっちりセオリー踏襲、どかどか火薬大爆発に加えて大量の水ときたもんだ。海水がなだれ込んできて人物らが逃げ惑っても緊張感が今一つ湧かないのがレニー・ハーリン印。海水流入の扉を3,4人で閉められるとも思えないし、女博士は必然もなしに下着姿になるしで。基地の構造もさっぱり分かんないので逃げた先のシャフトがどこにどう繋がってんのやら。そっちで合ってるの?まあいいけど。 ところでこの映画「誰が生き残るか」視点でいくと相当の意外性があります。そんな意外性で驚きを稼ぐのはやめてほしい気もするけどな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-05-31 23:30:42) |