2521. ゆきゆきて、神軍
《ネタバレ》 私はこれほどまでに刺激的な映画を観たことがない。凄いの一言。奥崎謙三という人間は、類い稀なる人物だ。自らの暴力を「世間の間違いを暴くための暴力なら、それも必要」と、肯定する。キ印であることは、まず間違いない。しかし、同時にエンターテイナーとしても一流。カメラを意識し、常に最高のパフォーマンスをカメラの前で発揮してみせる。興奮しながらも、自分の言いたいことは、的確にしゃべっている。そして何より、もの凄い度胸の持ち主。「無理が通れば道理ひっこむ」まさにこれが証明されている感じ。戦時中、仲間殺しをしたと思われる人物をアポなしで訪問しては、ねじふせる。時には暴力、時には執拗なまでの詰問で。最初は相手方も口を堅く閉ざしているが、奥崎謙三の執念の詰問に、やがては重い口を割らざるを得ない状況に追いこまれる。この執念と技術が凄い。この人は、お金もうけをしようと思ったら、まず間違いなく成功するに違いない。このドキュメンタリーは、ものすごく良くできている。頭から最後まで、時間を忘れるほどにのめりこめた。暴力あり、暴言あり、泣きどころあり。そして反戦映画としての真面目な側面もありだ。とにかく観ていて血の騒ぐドキュメンタリーだった。正論をかざして正義感ぶったり、気が弱くて自分の言いたいこと言えなくて悩んでる人、綺麗なアメリカ戦争映画しか観たことない人、などなどは是非観てほしい。そして疑問に思ったのは、奥崎謙三氏の不思議なほどの喧嘩強さ。 痩せていているのに、何故だかめっぽう強い。喧嘩には度胸と喧嘩慣れが一番重要だと言うことを、奥崎謙三氏は体を張って教えてくれた。喧嘩に強くなりたいヤンキー諸君にも、非常にタメになる作品である。印象的なシーンを挙げてみる。それは、皇居でのお手製マークⅡによる街宣シーンだ。警官たちが車を取り囲むが、全く意に介していない。世の中で最強権力とされる国家権力を向こうに回しても、全く動じないのだ。この人に怖いものってあるんだろうか。私もこの人の様な度胸が欲しい。そういえば奥崎謙三氏、誰かに似ていると思ったら、ボクシング評論家のジョー小泉氏と軍事評論家の江畑謙介を足して二で割った感じの風貌である。どうりで喧嘩と戦争に強いハズだ。エンドロールで流れる激しい太鼓が素晴らしい。最後の最後まで完璧な演出。この映画を、知らぬ存ぜぬは許しません! [DVD(邦画)] 9点(2008-07-06 23:19:59)(笑:1票) (良:1票) |
2522. 女優(1947)
なんか冒頭からずっと退屈でした。 何故なのか、それは後から解りました。 理由は、溝口健二監督の『女優須磨子の恋』と同じ話だったからなんですね。 そういう点で全く話に新鮮味を感じなかったのが致命的でした。 しかし、この二作品、同じ年に配給されていたんですね。 驚きました。 当時、競作として話題にのぼったようですが。 [映画館(邦画)] 4点(2008-07-06 21:13:12) |
2523. 東京ギャング対香港ギャング
《ネタバレ》 鶴田浩二、高倉健、丹波哲郎の三大スター共演で、香港を舞台にしたギャング映画。 ところが、前半40分を経過しても、高倉健しか出てこない。 他の二人が出てこないのだ。 そうしている間に、高倉健演じる主人公らしき人物は、撃たれて死んでしまった(!)。 なんてことだ。 その後に、鶴田浩二と丹波哲郎が登場。 おいおい! 三大スター共演っていったって、三人が一緒に出てこないじゃないか! なんか騙された気分。 それはそうと、冒頭の高倉健が出てくるパートは、とても面白かった。 香港のダウンタウンを舞台にして繰り広げられる、ギャング間の白い粉と金の争奪戦。 いかにも石井輝男作品といった風情のBGMが流れ、興奮と期待が高まった。 そこでいきなり主人公が撃たれて死んでしまい、舞台は日本へ。 ここから一気につまらなくなった。 冒頭の高倉健が出てくる部分の雰囲気が、最後まで続けば間違いなく傑作となったであろう。 本作が石井輝男作品の代表作とは言われてない理由はそこにあるような気がする。 後半の尻すぼみが無ければ、石井監督の代表作と言われたに違いない。 それだけに不満が残る内容だった。 それにしても、鶴田浩二演じる男が、シャブ中だとは思いもしなかった。 ラストも丹波が生き残り、しかも刑事だったというオマケ付き。 なかなか面白い内容なのだが、やっぱり後半がどうも間延びしていた。 あー、もったいない作品だ。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-07-06 12:08:57) |
2524. ミー・マイセルフ 私の彼の秘密
《ネタバレ》 六本木にて鑑賞。 題材が「オカマ」と「記憶喪失」という、いかにもタイ映画なラブストーリー。 自分の好きになった男が記憶喪失で、記憶喪失になる前は、実はオカマだった・・・という内容。 内容的にはありがちで、陳腐なものだが、まとめかたがとにかくうまい。 後味がとても良く、観た後にすっきりできる作品である。 [映画館(字幕)] 7点(2008-07-05 15:11:30) |
2525. 十階のモスキート
《ネタバレ》 崔洋一、すごいな~ こんなに凄い監督とは思わなかった。 『月はどっちに出ている』を観て、凄い監督だと感激したけど、本作でその凄さを再認識した。 途中、しつこく挿入される濡れ場が唯一の邪魔だが、それ以外はほんといい味が出ている。 とっても映画的で、1980年代日本映画ならではの味わいが出ていると思う。 主演の内田裕也はかなりの熱演。 作品自体もパワーあふれる力作に仕上がっているので、手抜きが一切感じられない。 作り手の作品に対する意気込みが観ていて伝わってくるのだ。 崔洋一はまだ2本しか観ていないが、これからもじゃんじゃん観ていきたい。 (追記) それと、本作はテイスト的に長谷川和彦の『太陽を盗んだ男』に似ている気がする。 映像的感覚、破滅的顛末、時代背景など、いろんな部分で似た匂いを感じた。 『太陽を盗んだ男』はとても評価の高い作品だが、本作『十階のモスキート』もそれと同じくらい力のこもった作品で、もっと評価されてもいい気がする。 もちろん崔洋一の代表作である前出の『月はどっちに出ている』はこれら2作品を上回る素晴らしい魅力に満ちた傑作であるが。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-07-03 23:55:57) |
2526. トロピカル・マラディ
カンヌ映画祭監督賞受賞作品。 シネマート六本木にて鑑賞。 この日の4本目の鑑賞で疲れているせいもありましたが、後半は見事に観る気力が失せていきました。 このアピチャッポン・ウィーラセタクンという監督の作品は、とにかくラストが緩みすぎで苦手です。 前半はバンコク・ホモ・ストーリーで気分がダウン、中盤ではタイ式ホウ・シャオシェン作品の様な味わいでとても良かったのですが、後半でタイ式プレデターみたいになり、再度ダウン。 そして、ラストの間延びした緩みすぎフェイド・アウトにノックアウトされました。 お疲れさまでした・・・ [映画館(字幕)] 6点(2008-07-03 20:34:29) |
2527. 真昼の不思議な物体
《ネタバレ》 0点。 とりあえず結論から言うと、眠さとの闘いでした。 映画館を途中退出する人達もいたり、イビキが聞こえたりと、他の方々にとっても過酷な作品だったことが伺えました。 私は最後まで気合いで観ましたが、相当にシンドかったです、ハイ。 何がシンドイって、セミ・ドキュメンタリー風で、ただただ素人っぽい人に好き勝手なことをやらせて、しゃべらせるだけって内容だったことです。 こういう作品どこかで観たことあったなぁ・・・と、必死に記憶をたぐっていると、思い出しました! キューバ映画で『永遠のハバナ』という作品です。 このキューバ映画も、キューバの日常をただ綴っているだけなんですが、特別な味わいもなく、ほんと退屈なのです。 素人っぽい(もしくは素人)人達の日常生活やインタビューを聞いて面白いわけがありません。 少なくとも私は、そんなことに興味がないし、そんな内容で2時間は耐えられません。 [映画館(字幕)] 0点(2008-07-03 20:33:44) |
2528. 十字路
途中で登場する歯の抜けた汚いオヤジがいい! かなりの変態ぶりだ。 できればもっと触って欲しかった。 [映画館(邦画)] 5点(2008-07-03 20:32:47) |
2529. 殿方ご免遊ばせ
フランス映画のことを「理屈っぽい」とか「難しい」とか言う人がいるが、たぶんそういう風にいう人はフランス映画をあまり観ていない人だ。 本作を観れば、そんなフランス映画に対するイメージは間違っていることに気付くはず。 本作は、とてもスピーディで、明朗で、バカっぽくて、楽しくて、単純だ。 主演のBBことブリジット・バルドーは、やっぱり可愛い! キュートという言葉がまさにぴったりである。 そこにきて、完璧なスタイル。 腕も脚も細くて綺麗なのに、何故だか胸が大きい。 そして色白金髪。 BBを目当てで鑑賞したのだが、十分に満足できた。 ただし、この頃のBBは少し子供っぽすぎるかなぁ。 ゴダールの『軽蔑』辺りの頃の方が、色気とキュートさのバランスがとれているような感じがする。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-07-02 22:07:38) |
2530. 恋愛日記
トリュフォーの自伝的シリーズである“アントワーヌ・ドワネル”ものを除けば、トリュフォー作品の中では一番面白かったかも。 何故かっていうと、本作には“トリュフォー的ヌーヴェル・ヴァーグ”の残り香がプンプンと漂っていたから。 次から次へと女をナンパし、いとも簡単にベッドに落ち着く。 だけど、そこには深い意味はなく、ただ男として衝動的に動いているだけ。 話としてはただそれだけなんだけど、ヌーヴェル・ヴァーグ作品における秀作と同じように面白い。 最後に寝て、全てを知ってる女を演じた女優が一番魅力的だった。 主人公の男が最後に寝た女性に相応しい。 オープニングとエンドロールに出てくる水色の文字も特筆もの。 ネストール・アルメンドロスによる映像も、言わずもがな素晴らしかった。 本作には、フランス人女性のスレンダーな美しい脚が沢山登場する。 これは理屈ぬきに、見ていて楽しい。 足フェチの男性諸氏には是非オススメしたいフランス映画だ。 [DVD(字幕)] 7点(2008-07-01 21:23:31) |
2531. 月形半平太(1925)
フィルムセンターにて鑑賞。 断片的なフィルムなので評価のしようがない。 雨が降っているシーンなのか、フィルムの劣化が原因で雨が降っているのか、見分けがつかないシーンがあった。 というわけで、こんな変な部分しか印象に残りようのない断片的内容だった。 [映画館(邦画)] 3点(2008-06-30 19:30:18) |
2532. 大阪の宿
内容的には文句のつけようがない人情・庶民劇なのだが、何故だか眠かった。 これは、五所平之助監督との個人的相性の問題かもしれない。 [映画館(邦画)] 5点(2008-06-30 19:29:44) |
2533. 狂った一頁
日本で最初の実験映画であり、前衛映画と言われる貴重な作品。 フィルムセンターで鑑賞。 精神病院が舞台で、そこに住まう患者たちの妄想の世界を様々な手法を駆使して映像化したもの。 、、というのは、実は帰宅してから本で調べて理解できた内容であり、映画館で観ていた最中は眠くて仕方ないし、理解もできなかった。 、、ということを白状しておく。 [映画館(邦画)] 3点(2008-06-30 19:29:03) |
2534. 天一坊と伊賀之亮(1926)
天一坊と伊賀之亮。 なんか題名が凄い。 テンイチボーとイガノスケだ。 なんか麻雀みたい。 そして内容だが、よくわからない! 1970年代に監督自身が再編集したらしいが、それでもよくわからない! 主人公のギョロ目が凄い! ところで、天一坊と伊賀之亮は同一人物が演じたらしい。 つまり、一人二役でこなしたのだ。 どうりで二人ともギョロ目だったわけだ! [映画館(邦画)] 3点(2008-06-30 19:28:01) |
2535. サンライズ
内容的にはどうでもいい内容でした。 『イントレランス』や『カビリア』、そして『メトロポリス』辺りと比較しても、面白さ・インパクトの両面において劣っています。 “ムルナウのサンライズ”と聞いて、執念で探した本作ですが、期待が大きすぎたようです。 ここでの高評価を見る限り、どうも私はムルナウと相性が悪いようです。 [ビデオ(字幕)] 4点(2008-06-29 23:35:14) |
2536. メモリー ~君といた場所~
先を読めないタイプの私でも、完全に読めてしまうくらいベタベタなタイ式ラブストーリー。 前半はCG全開でアクションがあり、やたらにうるさいキャラが登場して日本人にとっては厳しいギャグを連発したりと、映画館から途中退出したくなるほどの苦痛ぶりでした。 しかし、中盤からピュアなラブストーリーものへと変化します。 この変化の仕方がすごいのです! 日本映画にはないギアチェンジの急激さ! これはこれで面白いです。 日本やアメリカやヨーロッパといった映画大国の方程式を良い意味で覆すストーリーの転換ぶり。 これでこそ、わざわざ六本木まで観に来た甲斐があったってもんです。 前半の雰囲気と後半の雰囲気がまるで異なり、まるで二本立てで映画を観ているかのようでした。 前半はとにかくうるさくてギブアップ気味でしたが、後半はかなり盛り返します。 こういうピュアでベタベタなラブストーリーって結構好きですね~。 惜しむべくは、女優さんの方がイマイチだったことです。 主演俳優がかなりイケメンだっただけに、少しバランスが悪かったかなぁと。 まあ、これは女性に対する好みの問題でしょうけれども。 タイ式映画を手軽に楽しむには最適な作品だったと思います。 変に力まずに楽しく観ることができました。 なかなか映画好きでも東南アジア作品って観ている人が少ないような気がします。 タイはエンターテインメント大国で楽しい作品も多いですし、レベルが高い作品も多いので、もっと皆さんに観てもらいたいです! [映画館(字幕)] 7点(2008-06-28 21:20:21) |
2537. 裸足の伯爵夫人
本作には沢山の「俗物」的な人物が登場し、彼らはことごとく嫌悪の象徴として描かれています。 しかしながら、本作自体が俗物的であるのが何とも皮肉で、致命的であります。 それは人間に例えるならば、他人を非難している割には、その非難している人物そのものが非難されるべき人物であるかの様な状況です。 しかしながら、俗物的な作品であったとしても、それが面白いか面白くないかということとは別問題です。 本作は、脚本的にかなり楽しめました。 時間軸が交錯し、後半になるにつれ、物語ぐんぐんと引き込まれていきました。 最後もなるほどな~、と納得できましたし。 古き良きアメリカ映画は単純に楽しむことができさえすれば文句なしですね。 テクニカラーによるカラー映像も美しかったですし。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-06-28 08:41:06) |
2538. 野火(1959)
《ネタバレ》 第二次世界大戦末期、フィリピンで敗走する日本兵の顛末を描いた戦争映画。 敗残兵が絶望にまみれながら、ウロウロと彷徨うところは、さながらロード・ムーヴィーの様相を呈している。 食糧に飢えた敗残兵たちは、人間を殺し“サルの肉”と称して、人肉を食らう。 飢えと絶望に苦しむ人間にとっては、至極当たり前の行動の様に思う。 そういった極限の状態を、市川崑監督はモノクロ映像を通して、にくいまでに巧く撮りあげている。 ラスト。 人肉を食らうぐらいならば、死を覚悟で現地の“普通の人間が集う”場所へ一人向かう。 最後まで人間らしく生きることを肯定した内容だが、それはどうだろう。 生き残ることについて本能的に動くであろう状況において、そんな奇麗事が成立するのだろうか。 しかし、あくまで同胞を殺し、その肉を食らうことは否定すべき内容でもある。 極限の状況において、死を選択するのか、それとも人肉を食らって本能的に生き延びるのか。 その場に置かれない限りは、自分がどっちを選択するかは分からない。 こういったことまで考察させられる本作は、極めて問題提起性の高い作品で、傑出した戦争映画であり、異色な戦争映画とも言えるだろう。 いずれにしても、最初から最後までグイグイ引きこまれ、楽しめたのも事実。 市川崑監督の底力を感じ取ることができた作品だった。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-06-25 23:50:43) |
2539. わかれ雲
《ネタバレ》 神保町シアターにて鑑賞。 表題通り、「わかれ」というテーマを主題に描いたドラマだが、どうも結末がはっきりしない。 しかし、非常に強く印象に残ったシーンもあった。 それは、娘が父親の足をマッサージするシーン。 父親の足の上に娘が乗り、優しくマッサージし、それを鏡越しに父親が観て、娘の幸せを想う。 なんという素晴らしいシーンだろうか。 このシーンを観れただけでも、本作を観た価値はあったかもしれない。 [映画館(邦画)] 4点(2008-06-25 20:05:48) |
2540. 刑事(1959)
余韻がまったく残らなかった。 ただただ推理物としてのストーリーがせわしなく流れていくだけ。 とにかくスピーディでセリフも沢山飛び交うが、それだけだった。 [DVD(字幕)] 4点(2008-06-23 21:59:47) |