261. お葬式
《ネタバレ》 伊丹十三の書き物やタレントぶりのファンであったので、この第一作にはとくに注目した。過剰な演技にはしる財津一郎に抑制を命じたように、この監督はもっと自分自身に抑制を命じるべきであったろう。香典が木へと飛んだり、高瀬春奈のおしりがアップになったりとかは、不要であるとおもう。もっとさりげなく、緑と風だけで十分にいい映画であったろう。なお、以後の伊丹映画は駄目だった。 [映画館(邦画)] 7点(2011-03-25 18:39:41) |
262. 浮雲(1955)
《ネタバレ》 私にとって『稲妻』が最高であり『めし』や『驟雨』も素晴らしい。『浮雲』はもちろん名作なのだが、一見陰気だし、腐れ縁というものもあまり直視したくない。ほんとうにせつない、セクシーな映画ではある。 [映画館(邦画)] 9点(2011-03-25 18:18:21) |
263. 東京日和
《ネタバレ》 旅先で行方不明になった奥さんは小舟の中にいた。そのとき主人公のカメラマンがそれにカメラを向けたというショットはないのに、のちに死んだ奥さんを回顧するシーンで、小舟の中に横たわる彼女の写真が出てくる。これがうまいが、それだけ。竹中の映画はスタティックすぎる。 [映画館(邦画)] 5点(2011-03-25 17:41:00) |
264. ミスティック・リバー
《ネタバレ》 映画館から出てきた観客が、後味悪い映画だと吐き捨てていた。強者の犯罪がおとがめなしである「ハッピーエンド」は、アメリカ支配の隠喩かとも思わせる。ならばこれがアカデミー賞を取ったのは、ほんらいすごいことではないだろうか。 [映画館(字幕)] 5点(2011-03-25 15:46:35) |
265. 蛇の卵
《ネタバレ》 昔ドイツで観た。いまや、原語の直訳である邦題ならびにDVDがあるとは知らなかった(といっても私はDVDを見る気がしない)。ベルイマンにしては観念性を抑制して、ナチの「卵」が目立ち始める20年代を描いている。 いい映画だと思った。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2011-03-25 15:25:50) |
266. ウエスト・サイド物語(1961)
《ネタバレ》 これはミュージカルファンでない私でも、素晴らしいと思えるものである。リタ・モレノは最高。ミュージカルは劇の舞台や俳優の身体をはるかに超え出る表象なのである。ということは、表象はこの場合なんらかのスタティックな代理・代行ではない、つまりシニフィエなきシニフィアンである。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-25 14:59:19) |
267. ニュー・シネマ・パラダイス
映画館で観たときからべたついてくる映画だなという感じがあった。映画を好きになるはずの映画、ということを押し付けるような感じと言おうか。子供をあしらっているが、子供にとって映画はむしろ怖いものである。この映画の否定派の感想をいろいろ聞きたい気がする(ここまで2011年のレビューで評点が4)。いま見直すとフェリーニ感もあるし切ない味も良くて、評点の変更(2024年)。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-25 11:46:46)(良:1票) |
268. カッコーの巣の上で
《ネタバレ》 この世のせいで精神を病める人が、この世から病院へ逃亡しても、病院がまたこの世の縮図であるという悪夢。ところで、特定の人物を悪者として描くのはいうまでもなく問題の単純化である。 [映画館(字幕)] 5点(2011-03-25 11:30:50) |
269. 無常
《ネタバレ》 若き日に大阪の『北野シネマ』で入れ込んで観たこういう映画をいま見直すとツライことになるだろう。映画ってそのときにしか(『北野シネマ』にしか)存在しないと思えた時代は幸福だった(のかどうか)。「これでいいのや、自然なんや」という田村亮の大胆な台詞が耳に残っている。 [映画館(邦画)] 8点(2011-03-25 10:32:00) |
270. 気狂いピエロ
《ネタバレ》 この映画を二度目観た映画館は、京都の『松竹座』で、この映画館も今はもう無い(というか、シネマコンプレックスに建て替えられた)。サミュエル・フラーも出ていること、海はシネスコの横の広がりに合っていること、ワンシーン・ワンショットを執拗に追求しラストは溝口健二へのオマージュのパンで終わること、ランボー絡みのアナーキーな内容が映画の快楽の炸裂であること、等々、いい気持ちになれた映画だが、もっといい気持ちになってもいいはずの映画である。だがそうならない、なぜだろう。ゴダールはエクスタシー向きのシネアストではない。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-24 22:46:24) |
271. 審判(1963)
《ネタバレ》 原作に忠実な「映画化」の部分もあるのだが、基本的には大胆に映画の側からカフカ世界を作っていて、それが成功している。 [映画館(字幕)] 8点(2011-03-24 22:13:38) |
272. 結婚哲学
《ネタバレ》 ラストの八方収まる視線のトリックは唖然とさせるほどのすばらしさである。視点の意味では、主人公のみが真実認識から遠い終わり方である、ということは、この主人公にも身を寄せていた観客が、高みの見物の座へ移り、映画の外へと笑いながら追い出されるのである。 [映画館(字幕)] 9点(2011-03-24 21:31:46) |
273. ゆれる
《ネタバレ》 吊り橋の文字通りのサスペンス(宙吊り)が効果的であったとは言い難い。西川監督作品は『ディア・ドクター』のほうがいい。 [映画館(邦画)] 3点(2011-03-24 20:58:31) |
274. 七人の侍
《ネタバレ》 若侍(木村功)が農家の娘(津島恵子)と契ったことを糾弾する集会が開かれようとしたときから降り出す雨は、集会を中止する(批判的思考を封じる)だけでなく、死闘の空間(こうなれば誰も逃げられない総力戦体制)を脚色する。そう考えるとモンダイな雨の映画であるが、この雨はいまや福島原発事故のことではないのか・・・・というふうに真面目にクロサワ映画を扱っても滑稽でしかないか。 [映画館(邦画)] 8点(2011-03-24 20:50:32) |
275. 犬神家の一族(1976)
当時ものすごい宣伝で、ついそれに負けて観たが、まったく駄目だった。それ以来、宣伝には警戒心を抱くクセがついた。市川崑(いい作品もあるのだが)の内容空疎な唯美主義にも警戒するようになった。 [映画館(邦画)] 2点(2011-03-24 20:31:47) |
276. ヒズ・ガール・フライデー
《ネタバレ》 字幕を追うのがたいへん。言葉だけの世界であることの「残酷さ」も売りになっていて、高所から落下した人物を見て「まだ動いている」。スクリューボールコメディの猛威。 [映画館(字幕)] 7点(2011-03-24 16:53:44) |
277. 人生のお荷物
『マダムと女房』は「モダン」という時代の話題と頑張って取り組んでいたが、この作品は気楽に、飄々とした五所平之助の持ち味を出している。余談だが、五所監督は松竹時代に映画界から去ろうとしていた成瀬巳喜男を引き止めた人である(いわば映画界の恩人)。 [映画館(邦画)] 6点(2011-03-24 12:26:11) |
278. シンドラーのリスト
《ネタバレ》 スピルバーグは混乱のシーンを手持ちカメラで揺らすクセがある。この作品ではナチの侵略シーン、『プライベートライアン』では冒頭シーン、『ET』でも。観客を馬鹿にするなと言いたい。混乱のシーンこそ固定カメラで見据えるべきではないか。 とにかく、『ショアー』のランズマン監督による批判ももっともである。 [映画館(字幕)] 3点(2011-03-24 12:04:20) |
279. 戦場のピアニスト
《ネタバレ》 ワルシャワ・ゲットー描写を正面に据えた珍しい作品であるとおもう。多分ゲットーの惨状はもっとひどいものだっただろう。力作だが、好きにはなれないのは内容上やむをえない。 [映画館(字幕)] 5点(2011-03-23 23:13:54) |
280. 太陽がいっぱい
《ネタバレ》 こういう犯罪者に身を寄せて行動を共にすることになる観客存在とは何なのだろう。観客は、一線を越えないだけの、想像上の犯罪者なのであるが、やっと、ラストシーンのアイロニーとともに映画の外へと押し出され、目が覚める。 [映画館(字幕)] 8点(2011-03-23 21:23:09) |