461. 明治天皇と日露大戦争
《ネタバレ》 タイトルがイメージさせるほど、軍国主義的な内容には思えない。いや、たしかに軍国なのだが、それが真実であるか否かは別として、不当に好戦的なわけではない。世界中が植民地主義のこの時代の国の方針を、現代の倫理で断罪するのは、公正な視点とはいえないし。だからそういった意味で、この映画に不満はない。かえって明治天皇の性格が、良い人すぎるのでは、とも思う。 だが、戦争に勝利して国民が浮かれて、お祭り騒ぎをしているシーンで終わるこの映画の、最後のナレーションが「今こそ我らは日本民族の誇りと力を合わせて、今後の世界平和の発展に貢献すべきであろう。」というのは、さすがにこじつけが過ぎるような気もする。が、敗戦から十年ほどしか経っていない国と国民の、偽らざる思いなのだと考えておく事にする。 [DVD(邦画)] 6点(2012-05-28 18:59:10) |
462. ウエストワールド
《ネタバレ》 オールドウエスト、中世ヨーロッパ、古代ローマ、それぞれの世界が堪能できるテーマパークは、登場人物(動物も)が、全てコンピュータ制御のロボットで、絶対に人間に危害を加えないはずだった。ところがお定まりのコンピュータの誤動作で、人間たちが次々に殺されていく。 西部時代にいた主人公を執拗に追い詰めるのは、ガンマン406号。その強いガンマン、ユル・ブリンナーの黒シャツ姿は、荒野の七人の彼を彷彿とさせ、ちょっとずるい感じのイメージ作戦だ。そして、逃げても逃げても追いかけて来て、何度ダメージを負ってもしつこく迫り来る様は、まるでターミネーターのような恐ろしさ。 コンピュータに、何もかも任せてしまう事に警鐘を鳴らす映画は、いくつかあるが、これはちょっとエンターテイメント側によっている。殊に劇中の西部の酒場での乱痴気騒ぎなどは、何故だか懐かしい感じで楽しませてもらった。 とは言っても、何とか406号をやっつけた主人公が、力なくへたり込む姿にかぶせるテーマパークの宣伝文句が、逆説的な怖さを誘う。 [DVD(字幕)] 7点(2012-05-27 23:57:26)(良:1票) |
463. 武士道残酷物語
《ネタバレ》 戦国の世から続く飯倉家とその主君にまつわる話。宮仕えというのは、かくも辛く残酷なものか、と言いたいのかもしれない。 特に4番目の話の残虐さは、尋常ではない。『十三人の刺客』だったら、側近もろとも皆殺しになっているに違いない。ましてや、そこにいるのは錦之助なのだから、いつ殿様に斬りかかっちゃうかとドキドキしてしまった。 まあ、それはともかく、しかし今更、封建主義を批判しても仕方がない。というか、明治時代、現代の会社員の話を見ると、もはや、理不尽の元凶は殿様や、制度だけに起因するものではなくて、家臣側の心根も、そのように習性付けられてしまっているのではないか、と思えてくる。そこの所が恐ろしいといえば恐ろしい。 この映画が作られてからおよそ50年が経過して、今現在、会社組織と働く人の関係が一層おかしなことになっている。今こそ、新しい『残酷物語』が作れるのではないだろうか。今の働く人は、自ら被虐の人となってはいないだろうか? [DVD(邦画)] 6点(2012-05-26 07:45:43) |
464. クリフハンガー
《ネタバレ》 冒頭の女性落下シーンは、インパクトあった。最初に劇場で見た時には、座っているのに落っこちているような感覚を味わったものだ。20年も経っているのに、まだ怖ろしい。 しかし、その後の展開は、スタローンが超人過ぎるためか、あまりドキドキしない。まあ、彼なら何とか出来るんだろう、という感じである。これは、こういう類の映画としては、良くない事なんじゃないだろうか? しかし、真逆のことを言うようだが、あんな超人的な救助員がいるのか?という気がするのもまた事実。 [地上波(吹替)] 6点(2012-05-24 07:41:34) |
465. シェーン
《ネタバレ》 日本の昔が侍だけの世界でなかったように、アメリカの西部開拓史というのは、ガンマンだけの世界ではない。むしろ、農地開拓の歴史が、アメリカを西へ押し広げたのだという。この映画は、最後に悪漢をカッコよく倒して、颯爽と去ってゆくガンマンをヒーローとして描いているように言われるが、実はその大半が、自ら耕す農民の正義と、新旧の世代の戦いを描いている。 シェーンは自分が銃で物事を解決する時代の側の人間であることを自覚して、それから抜け出そうと農民の社会に生きようとするが、結局は辺境の治安維持の不備によって、力を行使せざるを得ない状況に陥る。 彼がカッコイイのは、自らを傷つけながらも、新世代を無垢のままに守ったからだ。スターレットを直接守ったのはもちろんだが、その目の前で人を殺してしまったジョーイ少年を、銃の世界に引き込まぬようにか、一家の前から去るその潔さ! それにしてもライカー、インデアンから土地を守ったという、彼の言い分にも一理あると思ったが、やり方がダメすぎたな。 【追記】 何でもWikipediaによれば、ラストシーンに関して、シェーンの生死の議論があるそうで…。そう言われてみると、ラストのシェーン一人のカットは、モノクロかと思うほど色調も暗く、死を暗示させる。が、シェーンは馬を操っているし、何よりこれがシェーンの死を表現しているとしたら、わかりずら過ぎるし、悲しすぎる。 [DVD(字幕)] 8点(2012-05-24 01:43:29) |
466. ジーザス・クライスト・スーパースター
《ネタバレ》 冒頭、バスに乗って若い役者たちが、芝居を打つために砂漠の廃墟にやって来る。観客はいない。見る者ではなく、演じる者のための芝居。「演」がいつしかそのまま「生」になっている感じ。この演劇感。オリジナルが有名な舞台ミュージカルなだけはある、面白い演出だ。お芝居という設定を生かして、舞台演劇にあるような、制約を逆手にとったようなセット、小道具、演出を効果的に使っている。それは、ユダを追い詰める、時代考証などぶっ飛ばした戦車だったり、異端者ユダをマイノリティの代表選手、黒人が演じている事だったり、まるで舞台装置のような、城壁だったり、血と青空の対比を強調する、ガラスのボウルだったり…。 当然のことながら、基本的には新約聖書のお話。その解釈は、宗教的ではなく、史実的。奇跡もなく、遠藤周作の描くイエス像に近いこのストーリーは、現代の普通の(無宗教、雑食宗教の)日本人には受け入れやすいと思う。ユダヤを治めるローマの総督による裁判のシーンは、運命に従うジーザスと、彼をなじる民衆と、この裁判に疑問を持つピラトの、三つ巴のせめぎ合いがサスペンスフルで、私の大好きなシーンだ。なんて言うと、不謹慎のそしりを免れないかもしれないが、これが、無宗教者の楽しみ方だ。 実は他作品のレビューで「何かに魂を売り渡さなければ演じられない、という価値観は嫌い」等と書いた事があるが、演じたことによって何かを得る、感じ取る、という感じは否定しない、というより、そういうの好きである。物語の中で、ユダだけが、ジーザスの進む道とその結果、覚悟を知る人間だったわけだが、最後に帰らないジーザス役を思うのが、やはりユダ役の黒人青年とマリア役の女だけという、同じ構造を畳み掛けるような手法が見事。「終演後」に、帰りのバスに乗らないジーザス役の若者は、一体何を感じ、何を得たのか。見る側の私の気持ちは、ユダの問いと同じなのかも知れない。 あ、最後に言っておかねば。やはり、ロイド・ウエバーの音楽は素晴らしい。ユダヤの神官たちの「黒い」感じ、「ジーザスクラーイスト、スーパスター♪」という部分の聖なる感じ、「私はイエスがわからない」の限りなく優しい感じ、どれも見事!25歳の青年の作とは思えない。 [レーザーディスク(字幕)] 9点(2012-05-21 03:56:18) |
467. 情婦
《ネタバレ》 ラジオ番組で、戸田奈津子がオススメしていたので鑑賞しました。 弁護士が被告の無罪のために、妻を追い詰めていくのが、被告へのダメージになっている、という構図になっていて、皮肉で辛い裁判劇なのだな、なんて思っていた。その後の見事などんでん返し(しかも二重)で、気持良く騙されて、ミステリの醍醐味を味わった。戦時下に恋人を待つ歌で有名なデートリッヒが、ここで歌う歌のあまりの内容に苦笑。 そう言えば、妻を「名女優」と言っていたのに、回想シーンではタダの酒場の歌うたいだったのが、気にはなったのだが、それ以上の考えは及ばなかった、というのは、悔し紛れの言い訳か。 検察側の証人という題も、どんでん返しの後には、なんともひねりの効いたタイトルだと思った。そう考えると、もう一つ仕込まれたどんでん返しである「情婦」というタイトルもまた、見事な邦題だと思う。 [DVD(字幕)] 8点(2012-05-18 22:56:09) |
468. アルマゲドン(1998)
《ネタバレ》 何事も無く帰還してるけど、絶対、耐熱タイルがぼろぼろ剥がれ落ちてて、機内は灼熱だろうな。 [地上波(吹替)] 4点(2012-05-14 13:38:41) |
469. 病院坂の首縊りの家
《ネタバレ》 人物相関が異常にややこしくてわかりづらい。まあそういう原作だし、それでも簡略化されているんだけど。これだけややこしい人物関係の中で、「この人が実はこの人の子供だった!」と言われても、「うーむ…」って感じだ。はたして、劇場で見た人は、一度で理解したのかな? 金田一耕助最後の事件ということで、渡米の相談の件、原作にあるからといって、これだけややこしいこと描かねばならぬ映画で、そんな尺勿体無いでしょう。それに貴恵ちゃんに、「佐田です」と言わせるイヤラシさ。もっと物語本体に尺と力を入れるべき。 [DVD(邦画)] 6点(2012-04-23 18:02:23) |
470. 女王蜂(1978)
《ネタバレ》 犬神家から、手毬唄、獄門島と、回を追うごとに残念になってきているので、この映画も覚悟して観たら、これ、意外に良い。 事件の終わりからの、「最後の謎解き」の部分に魅せられる仕掛けがあって、そこで明かされる物語に結構感動できました。 リアルタイム時は、横溝の本格推理に凝っていたため、事件自体のつまらなさと小物感を感じていたが、今見ると、神尾先生の切なさに涙が禁じえません。 [DVD(邦画)] 7点(2012-04-23 18:00:49) |
471. 獄門島(1977)
《ネタバレ》 話し的には「鬼頭家の一族」だけど、表面上は狂ってる人がいる割には、犬神家のように「本当に狂ってる感」が無く、異常な人物の異常な思いに突き動かされている事が、納得しずらい。犬神の爺さんのように、無理やりな遺言残せば、娘たちは殺さずに済んだんじゃないか? 公開当時に「犯人役を演じている○○」などと、バリバリなネタバレするワイドショーなどの対策か、本作は原作と違う犯人が売りの一つだった。でも見てみると、本来の犯人たちは、仕方なくででも、やる気でいたはずだ。だから、村長と医者は自分らがやるはずの殺人を、真犯人にやられてしまって相当驚いたはず。そういう所をもっと描写したら、犬神家の「後から飾り立て」に匹敵する、面白さが出たのではないだろうか? [DVD(邦画)] 5点(2012-04-23 17:59:11) |
472. 悪魔の手毬唄(1977)
《ネタバレ》 金田一耕助というのは、追っかけ追っかけ事件を解決する「防御率」の低い探偵として知られている。全部とは言わないが、彼の事件解決法は多くの場合、昔の事件の資料や証拠を現場ではない場所へ行って調べてくる、というもので、他の名探偵と比べると論理によって「コレコレこうだから、それしかありえない!」という推理の見事さがない。そこの所はミステリの醍醐味の一つだから、原作を選んだ時点での大きなハンデといえる。前作『犬神家』の場合は、そんなもの無くても、事件そのものに魅せられるドラマ(愛という普遍的テーマ)が有ったが、今回の事件は状況があまりに特殊で、そういう部分で感動を得るのは難しい。息子が異母兄妹と結婚する羽目になりそうでさあ大変、というのではちょっと心動かされない。 また、これを言ったら酷かもしれないが、事件とその周辺事情が前作ほどシンプルでないため、これだけの時間を使ってもまだ、描き足りない感じが残る。殺人を手毬唄になぞらえる意味とか、里子が入れ替わる部分とか。なにかバタバタとイベントをこなして、事件が解決したような感じ。まあ、それだけ原作に無駄が無いという事かも知れないが、2時間半の映画にするなら、それなりの収拾選択というか脚色・潤色が必要だったろう。 [DVD(邦画)] 6点(2012-04-23 17:57:55)(良:1票) |
473. 犬神家の一族(1976)
《ネタバレ》 前半もの凄いテンポの良さで、ドンドンと事が進む。でも、というか、それ故なのか、「生卵!」などのギャグとか、謎解きの情緒的な部分とか、しっかり描く余裕があって、見事。 これは原作の優れた部分なのかどうか、もう忘れちゃったけど、これが「母子の愛の物語」であることが素晴らしい。故にメインテーマの曲名も「愛のテーマ」。息子のための殺人を、その息子自身が母のため後始末して回るなんて、すごい発想ではないか。そして、そこに(道徳的な正しさは別として)親子の愛情を見つけて、クローズアップした脚本、演出。この一点において、他の金田一モノを遙かに押さえて、ダントツの評価なのだと思う。 ところで、今回見直し気付いたが、逆さスケ"キヨ"が、「ヨキ・コト・キク」のヨキを表してたって、映画では言ってなかったんだな。同様に、この作品にはもの凄い記憶補正がかかってしまっていて、数々の細部の思い込みが入る。大流行した横溝作品として、同じ時期にたくさんの映像化作品があり、そこで描かれたものとごっちゃになるのだ。単体の映画としては、不幸な周辺事情なのかもしれない。 [DVD(邦画)] 8点(2012-04-23 17:56:24) |
474. 本陣殺人事件
《ネタバレ》 推理小説の映像的解説としては、かなり良く出来ていると思う。事件の細かい要素もちゃんと描写している。だが映像的解説すぎて、人間のドラマの部分が若干、稀薄。一柳賢蔵の性格を納得できるかどうかで、この物語はアリかどうか別れるのだと思う。そういう意味でも、残念な映画。予算が無かったのかも知れないが、もうちょっと時間をとって、人間を描けていたらと思う。 [DVD(邦画)] 5点(2012-04-23 17:55:24) |
475. 遥かなる山の呼び声
《ネタバレ》 「いつまでいられるんですか?」 「奥さん次第です。」 「武志が喜ぶわ。」 直接、自分の気持を表さない奥ゆかしさに、でも二人の気持ちが理解できる、見事な"表現"というものだと思う。 最後の列車内のシーン、護送される健さんの隣に座って、わざとらしい小芝居を演じて、「待っている」ことを知らせるシーンは泣かせる。あそこで演者自身が泣くところが「松竹的」で、ちょっとどうかとも思われるが、直前の窓の外でのやり取りを見ていたはずの刑事たちが、知らん顔を決め込むのもイイ。昔の人の「情」を感じる。そしてついに、その建前というか(あくまで隣席の世間話という)体裁をかなぐり捨てて、ハンカチを渡すという部分で、感動は頂点。ひょっとしてハンカチ、黄色いんじゃないか?なんて考えちゃった自分は、ちょっと下衆で恥ずかしいが、これこそ、黄色いハンカチ(リボン)で意味が通るのだが。 …ですので、個人的には、この最後のシーンのために、そこまでの"タメ"として、途中で描かれる「行かないで」の部分は、無かったほうがいいとも思う。 [DVD(邦画)] 7点(2012-04-15 09:20:33)(良:2票) |
476. 電人ザボーガー
《ネタバレ》 仮面ライダーを大真面目に見るタイプの自分としては、こんなふうな下らないギャグを途中に入れてくる演出にイラッとする。 片腕マシンガールで、この監督のセンスは嫌だと思ってはいたのだが、一旦挫折した中年ヒーローという設定にちょっと惹かれるものがあって、期待してみてしまったのだが…。そういう部分があまり深く描かれておらず、実際にはかなり簡単に、戦いに戻ってしまっていて…一言でいうと、「もっと真面目に作れ!」って事だろうか。 ところで、自分は本放送時に何回か見たはずなのだが、トランポリンで横向きに回転(側宙っていうのかな)していたのを見て、そればっかだなと思ったのを覚えている。エンディングに出てくる昔の映像を見ると、随分いろいろな部分をリメイクしたんだなと、思わされる。昔ハマった人には、分かるのかも。でも、薦めない。たぶんガッカリするだろうから。 [DVD(邦画)] 4点(2012-04-08 01:46:50) |
477. 墓石と決闘
《ネタバレ》 OKコラルの決闘のその後を描いているが、よく言われているような所謂『OK牧場の決斗』の続編というわけではない。 法律で裁くことのできない悪に対して、力で立ち向かうという方法に移行したアープだが、大事な部分が描かれない急展開で、若干不満が残る。懸賞金がなくなって去ってゆく仲間と同様に、金の力で多くの仲間を失ったアイク・クラントンの物語をもうちょっと掘り下げて見てみたかった。 「銃の時間」でもあるけど、同時に「金の時間」でもあった物語だ。 [DVD(字幕)] 5点(2012-04-07 07:16:55) |
478. OK牧場の決斗
《ネタバレ》 ジェームズが弟って事になっていて、決闘前に殺されてしまう、という改変は「荒野の決闘」同様だ。両派の確執をエスカレートさせて、決闘の気運を盛り上げる手段なのだろうが…。 今回のドク・ホリデイは随分と女のことで、悩んだりイジケたりして、「キラー」ドク・ホリディな感じがない。そのかわり、このドクは義理堅く、友達にするにはいいかも、なんて思わせる。ケイトがよりによって、ジョニー・リンゴによろめいちゃうのも、ドクに決闘の動機を持たせるためか。ちなみに、この映画のせいで、ケイトはドクの愛人と思われてるが、実際にはドクと結婚している身なので、あれは不倫だよな。 後の2本のOKコラル映画でも踏襲されている、決闘前にアープら一行が並んで現場へ向かうシーンがカッコいい。このシーンを創りだしたというのが、この映画の一番の功績かも。 今回見て気付いたが、ワイアット嫌いで有名なバージルの奥さん、アリー・アープが、ワイアットにきつく当たっているのを見て、妙に納得。 [DVD(字幕)] 6点(2012-04-06 01:12:56) |
479. CASSHERN
《ネタバレ》 僕らは生きているだけで何かを傷つけてしまっているということ、これが主人公が最後にわかったことって、ちょっと困った映画だな。僕らはまず赦し合うべきだった、というのは悪くはないが、これでは40点だ。 今までの物語が2時間もかけて語ってきたのは、人は、エゴによって人を傷つけること、掲げた理想のために大量破壊を行うこと。「生きているだけ」には見えない。だから「赦し合うべきだった」に説得力がない。赦し合うことに関する物語、たとえば、許すとはどういうことか、なぜ許せないのか、許すことの困難さ、などほとんど語られていない。 さて、他に気になるのは、最後キャシャーンとルナの思いは、光となって、宇宙を進み、どこかの星に「イナズマモノリス」となって突き刺さるが、ということは培養槽に落ちたイナズマも、誰かの思いだったのだろうか?誰のどんな思いだったのか? 原作アニメーションとあまりにも違いすぎる世界観に、公開当時大きな批判というか、落胆があった。今更だが、新造細胞というテクノロジーで人類に仇なす者が生まれ、「同じテクノロジーでそれをくい止めるものが生まれるが、異形の化け物として苦悩する」と考えると、この物語はキャシャーンと言うよりは、仮面ライダー(とくに平成の)にふさわしかったのではないか?なんて、最近思う。 スチームパンク的な世界観のメカ・美術設定、ちょっとあざとい、というか狙いすぎ。それに表現し切れないものは思い切って切るべき。たとえば、ミッチーの腕にある意味有りげな入れ墨っぽいもの。最初あれ、生き返った連中のと同じ縫合痕のように見えて、混乱した。 [DVD(邦画)] 4点(2012-03-31 03:16:19) |
480. エル・ドラド(1966)
《ネタバレ》 体の中に銃弾という爆弾を抱えて、時折発作に見舞われながら、危険な任務に向かっていく、というストーリーを見て、日本の古い刑事ドラマを思い出した。いや、こちらの方が古いんだけど。 本作では、撃った人間と撃たれた人間の間には、大したしこりも、ドラマチックなやりとりも無い感じが、非サスペンスフルで、拍子抜け。確かに、大事な場面で発作が起き、敵に身柄を拘束されるが、主人公ルールなのか、ウェインは縛られただけで、返される。 撃った人間は、最後ジョン・ウェインが危ないところを援護射撃で救い、「ありがとう」「私こそゴメン」で、メデタシメデタシ。どうなのかな?これは。 [DVD(字幕)] 4点(2012-03-29 05:38:58) |